特許第6307524号(P6307524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6307524PDE4阻害薬としての、4−アミノ置換縮合ピリミジン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307524
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】PDE4阻害薬としての、4−アミノ置換縮合ピリミジン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/70 20060101AFI20180326BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20180326BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20180326BHJP
   C07D 239/94 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C07D239/70CSP
   C07D405/04
   C07D401/04
   C07D239/94
   A61K31/517
   A61P43/00 111
   A61P19/02
   A61P17/00
   A61P29/00 101
   A61P29/00
   A61P1/04
   A61P35/00
   A61P27/02
   A61P11/00
   A61P3/00
   A61P25/18
   A61P25/02
   A61P25/00
   A61P17/06
   A61P19/06
   A61P1/00
   A61P37/06
   A61P37/02
   A61P13/08
   A61P11/06
   A61P37/08
   A61P1/16
   A61P35/02
   A61P3/04
   A61P3/10
   A61P3/06
   A61P9/10 101
   A61P9/12
   A61P25/24
   A61P25/28
   A61P25/22
   A61P25/16
【請求項の数】16
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2015-555612(P2015-555612)
(86)(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公表番号】特表2016-506940(P2016-506940A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2014000273
(87)【国際公開番号】WO2014117947
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】13000565.5
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/760,207
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390035404
【氏名又は名称】グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(72)【発明者】
【氏名】コーネッツキ・インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】クラーン・トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘスリンガー・クリスティアン
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−521398(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0293343(US,A1)
【文献】 特表2008−514678(JP,A)
【文献】 特表2008−536890(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/016596(WO,A1)
【文献】 特表2004−529140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[式中、
Gは、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニル、または場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表すか;あるいは、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する8〜10員の複素縮合環の一部である、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し;
Zは、互いに独立に、(C−C)アルキル、(C−C)ヒドロキシアルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、−S(C−C)アルキル、ハロゲン、ヒドロキシルまたはシアノを表し、上記のアルキルは、分岐状であるか直鎖状であり、そして置換されていてもよく;
Qは、置換基Xで置換されそして場合により少なくとも1つの置換基Xで置換されたフェニル、ピリミジルまたはピラジニルを表し;
Xは、互いに独立に、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルコキシ、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、−NH、−NH(C−C)アルキル、−N((C−C)アルキル)、N−ピロリジニル、N−ピペリジニル、N−モルホリニル、−NH−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−NH、−C(O)−NH(C−C)アルキル、−C(O)−N((C−C)アルキル)、−S(O)−NH2、−S(C−C)アルキル、−S(O)−(C−C)アルキルまたは−S(O)−(C−C)アルキルを表し、ここで上記のアルキル鎖は、分岐状であるか直鎖状であり、置換されていてもよく;
は、L−CO基を表し;
Lは、結合、(C−C)アルキレン、(C−C)アルケニレン、−O−(C−C)アルキレン、−NH−(C−C)アルキレンまたは−NR−(C−C)アルキレンを表し、上記アルキレンまたはアルケニレンは各々、1つまたは2つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよく、または上記アルキレンまたはアルケニレンは、1つまたは2つ以上の(C−C)アルキル基で置換されていてもよく、または上記アルキレンまたはアルケニレンにおいて、CH単位は酸素原子によって置き換えられていてもよく;
は、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキルを表し;
およびRは、互いに独立に、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキルを表し;
nは、1または2を表し;
Kは、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルまたはシアノを表し;そして
mは、0、1、2、3または4を表す]
のピリミジン化合物(ただし、2−(4−((2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)酢酸、4−(4−((2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)ブタン酸、および3−(4−((2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)プロパン酸は除く)、
あるいはその薬理学的に認容可能な塩、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ化合物、水和物または溶媒和物。
【請求項2】
Zが、互いに独立に、CH、OCH、CF、CHF、CHF、OCF、OCHF、OCHF、SCH、Cl、F、OHまたはCNを表し;
が、L−CO基を表し;
Lが、結合またはメチレンを表し、ここでメチレンは1つまたは2つのハロゲン原子で置換されていてもよく;
が、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキルを表し;
が、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキルを表し;
Kが、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキル、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシルまたはシアノを表すことを特徴とする、
請求項1に記載のピリミジン化合物。
【請求項3】
Gが、以下の基G1〜G9から選択される、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し
【化2】
(式中、星印(*)を付けた部位は、ピリミジン環の2位における結合部位を示し;kは、0、1または2を表す);
Qが、以下の基Q1〜Q13
【化3】
(式中、星印(*)を付けた部位は、窒素との結合部位を示し、
pは0、1、2、3または4を表し;
Xは、互いに独立に、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルコキシ、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、−NH、−NH(C−C)アルキル、−N((C−C)アルキル)、N−ピロリジニル、N−ピペリジニル、N−モルホリニル、−NH−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−NH、−C(O)−NH(C−C)アルキル、−C(O)−N((C−C)アルキル)、−S(O)−NH2、−S(C−C)アルキル、−S(O)−(C−C)アルキルまたは−S(O)−(C−C)アルキルを表し、ここで上記のアルキル鎖は、分岐状であるか直鎖状であり、置換されていてもよく;
Lは、結合またはメチレンを表し、ここでメチレンは1つまたは2つのハロゲン原子で置換されていてもよい)
から選択されることを特徴とする、
請求項1または2に記載のピリミジン化合物。
【請求項4】
pが0または1を表すことを特徴とする、請求項に記載のピリミジン化合物。
【請求項5】
Gが、G1、G2、G3またはG4から選択される、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し;そして、
Qが、請求項3に定義される化学基Q2、Q3、Q8またはQ9を表すことを特徴とする、
請求項3または4に記載のピリミジン化合物。
【請求項6】
Gが、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルG1を表し;そして、
Qが、化学基Q1、Q2またはQ3を表すことを特徴とする、
請求項3または4に記載のピリミジン化合物。
【請求項7】
Gが、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルG1を表し;そして、
Qが、化学基Q2を表すことを特徴とする、
請求項3または4に記載のピリミジン化合物。
【請求項8】
Gが、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルG1を表し;そして、
Qが、化学基Q3を表すことを特徴とする、
請求項3または4に記載のピリミジン化合物。
【請求項9】
nが1を表すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
【請求項10】
nが2を表すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
【請求項11】
mが0を表すことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のうちの1つに定義される少なくとも1種の化合物を含有する医薬。
【請求項13】
請求項1〜11のうちの1つで定義される化合物を含む、PDE4酵素の阻害により治療できる状態または疾患の治療のための医薬であって、上記化合物が一般式(I)により表される形態に、またはそれらの酸もしくは塩基の形態に、または生理学的に認容可能な塩の形態に、またはそれらの溶媒和物の形態にある医薬。
【請求項14】
上記化合物が、そのラセミ化合物もしくはその純粋な立体異性体の形態に、または任意の混合比の立体異性体の混合物の形態にある、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
PDE4酵素の阻害により治療できる状態または疾患が以下の群:
関節、皮膚および眼の炎症性疾患、胃腸の疾患および病訴、内部器官の炎症性疾患;増殖性疾患、上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、線維性スペクトルの疾患、癌、代謝性疾患、精神障害、および末梢または中枢神経系の疾患、
から選択される、請求項13または14に記載の医薬。
【請求項16】
前記の関節の炎症性疾患が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風および変形性関節症を含み;
前記の皮膚の炎症性疾患が、乾癬、アトピー性皮膚炎および扁平苔癬を含み;
前記の眼の炎症性疾患が、ブドウ膜炎を含み;
前記の胃腸の疾患および病訴が、消化器官の炎症性疾患を含み;
前記の内部器官の炎症性疾患が、ループス腎炎、慢性前立腺炎および間質性膀胱炎を含むSLE(全身性エリテマトーデス)を含み;
前記の増殖性疾患が、良性の前立腺肥大を含み;
前記の上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞が、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症および肺炎を含み; 前記の線維性スペクトルの疾患が、肝線維症、全身性硬化症および強皮症を含み;
前記の癌が、血液癌、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫および神経膠腫を含み;
前記の代謝性疾患が、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症および脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)を含み、
心疾患が、動脈硬化および肺動脈性高血圧症を含み;
前記の精神障害が、統合失調症、うつ病、双極性うつ病または躁うつ病、認知症、記憶喪失および全般性不安障害(GAD)を含み;そして
前記の末梢または中枢神経系の疾患が、パーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中および筋萎縮性側索硬化症を含む、
請求項15に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の置換縮合ピリミジン化合物、およびそれらの医薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のピリミジン化合物が特定のホスホジエステラーゼ(PDEsと省略される)を阻害するために好適であることが知られている。ホスホジエステラーゼ、またはより正確には3’,5’−シクロヌクレオチドホスホジエステラーゼは、二次メッセンジャーcAMP(環状アデノシン一リン酸)およびcGMP(環状グアノシン一リン酸)の5’−AMP(5’−アデノシン一リン酸)および5’−GMP(5’−グアノシン一リン酸)への加水分解を触媒する酵素である。ホスホジエステラーゼの阻害は従って、細胞プロセスを調節する機構を示すものであり、疾患状態を軽減または治療するために使用することができる。
【0003】
例えばWO95/01338(A1)(特許文献1)には、炎症性呼吸器疾患、皮膚病ならびに他の増殖性、炎症性およびアレルギー性の疾患を治療するために適切なPDE阻害剤をどのように使用できるかが記載されている。WO 95/01338(A1)は、さらに、そのようなPDE阻害剤を、TNFおよびロイコトリエンの過剰放出に基づく疾患、例えば、関節炎スペクトル(関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症および他の関節炎状態)からの疾患の治療に応用できることを提案している。該国際公開はさらに、免疫系の疾患(例えばAIDS)、ショックの症状ならびに胃腸系における全般性の炎症(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)、上気道(咽頭外側隙、鼻)および隣接領域(副鼻腔洞、眼)におけるアレルギー性および/または慢性の免疫学的な有害反応に基づく疾患、例えば、アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎、慢性鼻炎/副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎および鼻ポリープ、しかしまた、PDE阻害薬によって治療できる心臓の疾患、例えば心不全、またはPDE阻害薬の組織弛緩効果で治療できる疾患、例えば腎臓結石に伴う腎疝痛および尿管疝痛用の医薬としての適切なPDE阻害薬の使用を提案している。
【0004】
ホスホジエステラーゼは、11個の遺伝子ファミリー(PDE1−11)を包含する酵素群であり、これらは特にそれらのcAMPおよびcGMPへの親和性が異なる。
【0005】
適切な物質での個々の遺伝子ファミリーの阻害が、幅広い研究の対象となっている。公知のPDE5阻害薬はシルデナフィルであり、これは、商標名バイアグラ(商標)で市販されており、主に勃起不全の治療に使用される。
【0006】
セカンドメッセンジャーcAMPが多くの炎症過程に重要な役割を果たし、PDE4が炎症過程を制御する細胞で強く発現しているという発見(特にSchudt, C.et al.(1995).PDE isoenzymes as targets for anti−asthma drugs. European Respiratory Journal 8,1179−1183(非特許文献1)参照)が、抗炎症効果を有するPDE4阻害薬の開発をもたらしてきた。抗炎症性効果を有するそのようなPDE4阻害薬の1つは、例えばロフルミラスト(Daxas(登録商標)の商標で知られる)であり、これはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療用の薬剤として承認された。しかしながら、ロフルミラストの所望の抗炎症効果に加えて、嘔吐、下痢および頭痛などの副作用が観察され、これがヒトにおける用量を制限している。
【0007】
ヒトにおける望ましくない副作用は、他のPDE4阻害薬でも観察され、従って、このような医薬の治療域(治療濃度域)は比較的狭い。従って、副作用が少なく、そしてより良好な治療濃度域を有するPDE4阻害薬の提供が望ましい。
【0008】
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)はcAMP特異的であり、4つの異なるサブタイプ(PDE4A、PDE4B、PDE4CおよびPDE4D)を含む。以下に記載のように、副作用がさほど重篤でないかまたは副作用を有さず、従ってこれらの化合物の治療域が著しく増加しているサブタイプ選択的なPDE4阻害薬、上記全てのPDE4B選択的阻害薬を発見するための努力がなされている。
【0009】
PDE4Dの阻害は、望ましくない副作用、例えば下痢、吐き気および嘔吐の発生に関連する(これに関しては以下を参照:Mori,F.et al.(2010). The human area postrema and other nuclei related to the emetic reflex express cAMP phosphodiesterases 4B and 4D. Journal of Chemical Neuroanatomy 40,36−42;Press,N.J.(非特許文献2);Banner K.H(2009).PDE4 inhibitors− A review of the current field. Progress in Medicinal Chemistry 47,37−74(非特許文献3);Robichaud,A.et al.(2002).Deletion of phosphodiesterase 4D in mice shortens α2−adrenoceptor−mediated anesthesia, a behavioral correlate of emesis. The Journal of Clinical Investigation 110,1045−52(非特許文献4);またはLee et al.,(2007).Dynamic regulation of CFTR by competitive interactions of molecular adaptors. Journal of Biological Chemistry 282,10414−10422)(非特許文献5);またはGiembycz,M.A.(2002).4D or not 4D − the emetogenic basis of PDE4 inhibitors uncovered? Trends in Pharmacological Sciences 23,548(非特許文献6))。
【0010】
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19(2009)p.3174−3176において発表された「Discovery of selective PDE4B inhibitors」という表題の論文(非特許文献7)において、Kenji等はPDE4B選択性を示す35個のピリミジン化合物を開示している。リストに挙げられた化合物のいくつかは、PDE4Dに対してよりもPDE4Bに対して10倍またはそれよりも高い阻害活性を示すと述べられている。
【0011】
Kenji等によって調べられた化合物は実質的に、US2006/0293343A1(特許文献2)に記載された一般式に包含される。US2006/0293343A1は以下の一般式で表され、抗炎症効果を有する、特定の薬学的に有効なPDE4阻害ピリミジン化合物を開示している:
【0012】
【化1】
[式中、
Arは、場合により置換されているフリル、チエニル、トリアゾリル、チアゾリル、オキサゾリルまたはベンゾチアゾリルを示し;
Eは、単結合またはメチレンを示し;
Ar21は、場合により置換されているフェニルまたはナフチルを示し;
およびRは、各々の場合において互いに独立に、水素、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル(これらの各々は場合により置換されていてもよい)を示し;そして
は、水素または場合により置換されているアルキルを示す。]
Kenji等の論文において、著者は、種々の構造−活性の関係の試験を記載しており、これは特に、ピリミジン環上の5位および6位における置換基(5位における置換基は、US2006/0293343A1から得られる上記一般式のRに相当し、6位の置換基はRに相当する)の影響を議論している。当該論文からは、アリル、エチル、シアノまたはホルミル基がピリミジン環の5位に結合した場合に、非常に有効かつ選択的なPDE4B化合物が得られることが推認できる。しかしながら、同一の位置により大きな化学基が存在すると、試験化合物の阻害活性が減少する。ピリミジン環の6位における置換基のあり得る変更に関して、著者は、この位置でメチルがエチルで置き換えられると、化合物の活性が増加し選択性が低下することを確認している。従って、著者は、ピリミジン環の5位および/または6位での変化が、ピリミジン化合物の活性および選択性に影響を及ぼすと論じている。著者は、立体効果を示唆しているが、しかしながら、選択性がどのように阻害活性を失わずに影響を受け得るかに関するさらなる情報は与えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO95/01338A1
【特許文献2】US2006/0293343A1
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Schudt, C. et al. (1995). PDE isoenzymes as targets for anti−asthma drugs. European Respiratory Journal 8, 1179−1183
【非特許文献2】Mori, F. et al. (2010). The human area postrema and other nuclei related to the emetic reflex express cAMP phosphodiesterases 4B and 4D. Journal of Chemical Neuroanatomy 40, 36−42; Press, N.J.
【非特許文献3】Banner K. H (2009). PDE4 inhibitors − A review of the current field. Progress in Medicinal Chemistry 47, 37−74
【非特許文献4】Robichaud, A. et al. (2002). Deletion of phosphodiesterase 4D in mice shortens α2−adrenoceptor−mediated anesthesia, a behavioral correlate of emesis. The Journal of Clinical Investigation 110, 1045−52
【非特許文献5】Lee et al., (2007). Dynamic regulation of CFTR by competitive interactions of molecular adaptors. Journal of Biological Chemistry 282, 10414−10422)
【非特許文献6】Giembycz, M.A. (2002). 4D or not 4D − the emetogenic basis of PDE4 inhibitors uncovered? Trends in Pharmacological Sciences 23, 548
【非特許文献7】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19 (2009)p.3174−3176において発表された「Discovery of selective PDE4B inhibitors」という表題の論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この従来技術に基づき、現在の目的は、好ましくはPDE4B選択的な化合物を見出すこと(すなわち、PDE4Bをより大きな程度阻害し、PDE4Dサブタイプを阻害しないかまたはほとんど阻害しない活性化合物を見出すこと)であった。このようなPDE4B選択性の利点は、上記のように、種々の副作用が生じない(生じるべきである)か、または小程度にしか生じないこと、および従って、薬学的に活性な成分のより大きな治療域(=治療濃度域)が得られる(得られるべきである)ことである。薬学的に活性な成分もしくは医薬の治療域は、その治療用量と毒性もしくは望ましくない効果を導くであろう用量との間にギャップを示す。治療域が大きくなるほど、特定の毒性もしくは望ましくない効果の発生がより稀になるかもしくはより可能性が低くなり、従って、薬学的に活性な成分もしくは医薬はより安全かつより認容可能になる。治療域は多くの場合、治療濃度域または治療指数とも呼ばれる。これらの名前は、本願では同義語として使用される。
【0016】
本発明者等は今回、所望の阻害およびPDE4B選択的特性を示し、従来の対応のピリミジン化合物より優れたピリミジン化合物を見出した。これらは従って、PDE4酵素、特にPDE4B酵素の阻害が有利な疾患および状態の治療に特に好適である。
【0017】
従って、本発明は、以下の式(I)
【0018】
【化2】
[式中、
Gは、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニル、または場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表すか、あるいは、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する8〜10員の複素縮合環の一部である、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し;
Gは、好ましくは、以下の基G1〜G9から選択される、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニル、または場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し
【0019】
【化3】
(式中、星印(*)を付けた部位は、ピリミジン環の2位における結合部位を示す);
Gは、特に好ましくは、G1、G2、G3またはG4から選択される、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し;Gは、最も特に好ましくはG1を表し;
Zは、互いに独立に、(C−C)アルキル、(C−C)ヒドロキシアルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、−S(C−C)アルキル、ハロゲン、ヒドロキシルまたはシアノを表し、上記のアルキルは、分岐状であるか直鎖状であり、そして置換されていてもよく;Zは、好ましくは、互いに独立に、CH、OCH、CF、CHF、CHF、OCF、OCHF、OCHF、SCH、Cl、F、OHまたはCNを表し;
kは、0、1、2を表し;kは好ましくは、0または1を表し;
Qは、置換基Xで置換されそして場合により少なくとも1つの置換基Xで置換されたフェニル、ピリミジルまたはピラジニル基(好ましくはフェニル)(Xは好ましくはパラ位において結合されている)を表し;Qは、好ましくは、以下の基Q1〜Q13から選択され;
【0020】
【化4】
(式中、星印(*)を付けた部位は、窒素での結合部位を示し;
pは、0、1、2、3または4を表し;pは好ましくは0または1を表す);
Qは、特に好ましくは、基Q2、Q3、Q8またはQ9を表し;最も特に好ましくは、基Q2またはQ3を表し;
Xは、互いに独立に、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルコキシ、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、−NH、−NH(C−C)アルキル、−N((C−C)アルキル)、N−ピロリジニル、N−ピペリジニル、N−モルホリニル、−NH−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−NH、−C(O)−NH(C−C)アルキル、−C(O)−N((C−C)アルキル)、−S(O)−NH2、−S(C−C)アルキル、−S(O)−(C−C)アルキルまたは−S(O)−(C−C)アルキルを表し、ここで上記のアルキル鎖は、分岐状であるか直鎖状であり、置換されていてもよく;
は、L−CO基を表し;
Lは、結合、(C−C)アルキレン、(C−C)アルケニレン、−O−(C−C)アルキレン、−NH−(C−C)アルキレンまたは−NR−(C−C)アルキレンを表し、上記アルキレンまたはアルケニレンは各々、1つまたは2つ以上のハロゲン原子(特にフッ素)で置換されていてもよく、または上記アルキレンまたはアルケニレンは、1つまたは2つ以上の(C−C)アルキル基(好ましくはメチルまたはエチル)で置換されていてもよく、または上記アルキレンまたはアルケニレンにおいて、CH単位は酸素原子によって置き換えられていてもよく;Lは好ましくは結合またはメチレンを表し、ここでメチレンは1つまたは2つのハロゲン原子(特にフッ素)で置換されていてもよく;
は、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキル(好ましくは(C−C)アルキル)を表し;Rは、好ましくは、水素を表し;
およびRは、互いに独立に、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキル(好ましくは(C−C)アルキル)を表し;
nは、1または2を表し;
Kは、(C−C)アルキル、好ましくは(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、好ましくは(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキル、好ましくは(C−C)ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルまたはシアノを表し;そして
mは、0、1、2、3または4を表す]
で表されるピリミジン化合物、ならびにその薬理学的に認容可能な塩、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ化合物、水和物または溶媒和物に関する。
【0021】
一般式(I)の好ましい化合物は、一般式(I’)(式中、GはG1を表す):
【0022】
【化5】
の化合物である。
【0023】
実施態様A]において、本発明は、一般式(I−A)で表されるピリミジン化合物に関する:
【0024】
【化6】
[一般式(I−A)において、化学基GおよびQならびに置換基KおよびRは一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表す]。式(I−A)の好ましいピリミジン化合物は、式中、QがQ1、Q2またはQ3を表し、GがG1、G2、G3またはG4を表す、ピリミジン化合物である。式中、GがG1を表し、RがHを表す上記の式(I−A)の化合物が、特に好ましい。
【0025】
実施態様B]において、本発明は、一般式(I−B)で表されるピリミジン化合物に関する:
【0026】
【化7】
[一般式(I−B)において、化学基GおよびQならびに置換基KおよびRは一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表す]。式(I−B)の好ましいピリミジン化合物は、式中、QがQ1、Q2またはQ3を表し、GがG1、G2、G3またはG4を表す、ピリミジン化合物である。式中、GがG1を表し、Rが水素を表す上記の式(I−B)の化合物が、特に好ましい。
【0027】
実施態様C]において、本発明は、一般式(I−C)で表されるピリミジン化合物に関する:
【0028】
【化8】
[一般式(I−C)において、化学基GおよびL、置換基K、XおよびRならびに添え字pは、一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表す]。式(I−C)の好ましいピリミジン化合物は、式中、GがG1、G2、G3またはG4を表す、ピリミジン化合物である。式中、GがG1を表し、Rが水素を表す上記の式(I−C)の化合物が、特に好ましい。
【0029】
実施態様D]において、本発明は、一般式(I−D)で表されるピリミジン化合物に関する:
【0030】
【化9】
[一般式(I−D)において、化学基GおよびL、置換基K、XおよびRならびに添え字pは、一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表す]。式(I−D)の好ましいピリミジン化合物は、式中、GがG1、G2、G3またはG4を表す、ピリミジン化合物である。式中、GがG1を表し、Rが水素を表す上記の式(I−D)の化合物が、特に好ましい。
【0031】
実施態様E]において、本発明は、一般式(I−E)で表されるピリミジン化合物に関する:
【0032】
【化10】
[一般式(I−E)において、化学基Qならびに置換基K、ZおよびRは、一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表し;そしてkは0、1、2、3、4または5を表し、kは好ましくは1、2または3を表す]。式(I−E)の好ましいピリミジン化合物は、式中、QがQ1、Q2またはQ3を表す、ピリミジン化合物である。式中、QがQ1を表し、Rが水素を表すか、あるいは、QがQ2を表し、Rが水素を表すか、あるいはQがQ3を表し、Rが水素を表す、上記に定義されるような式(I−E)の化合物が、特に好ましい。
【0033】
実施態様F]において、本発明は、一般式(I−F)で表されるピリミジン化合物に関する:
【0034】
【化11】
[一般式(I−F)において、化学基Qならびに置換基K、ZおよびRは、一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表し;そしてkは0、1、2、3、4または5を表し、kは好ましくは1、2または3を表す]。式(I−F)の好ましいピリミジン化合物は、式中、QがQ1、Q2またはQ3を表す、ピリミジン化合物である。式中、QがQ1を表し、Rが水素を表すか、あるいは、QがQ2を表し、Rが水素を表すか、あるいはQがQ3を表し、Rが水素を表す、上記に定義されるような式(I−F)の化合物が、特に好ましい。
【0035】
Gが、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する8〜10員の複素縮合環の一部である、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表す場合、以下の構造G10〜G13が好ましい
【0036】
【化12】
従って、本発明はまた、一般式(I−A)の化合物であって、式中、GがG10、G11、G12またはG13を表し、化学基Qならびに置換基KおよびRが一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表す化合物に関する。式(I−A)の好ましいピリミジン化合物は、QがQ1、Q2またはQ3を表し、GがG10、G11、G12またはG13を表すものである。
【0037】
本発明はさらに、一般式(I−B)の化合物であって、一般式(I−B)中、GがG10、G11、G12またはG13を表し、化学基Qならびに置換基KおよびRが一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表す化合物に関する。式(I−B)の好ましいピリミジン化合物は、QがQ1、Q2またはQ3を表し、GがG10、G11、G12またはG13を表すものである。
【0038】
本発明はさらに、一般式(I−C)の化合物であって、一般式(I−C)中、GがG10、G11、G12またはG13を表し、化学基L、置換基K、XおよびRおよび添え字pが一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表す化合物に関する。式(I−C)の好ましいピリミジン化合物は、GがG10、G11、G12またはG13を表すものである。
【0039】
本発明はさらに、一般式(I−D)の化合物であって、一般式(I−D)中、GがG10、G11、G12またはG13を表し、化学基L、置換基K、XおよびRおよび添え字pが一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表す化合物に関する。式(I−D)の好ましいピリミジン化合物は、GがG10、G11、G12またはG13を表すものである。
【0040】
本発明はさらに、一般式(I−E)の化合物であって、一般式(I−E)中、GがG10、G11、G12またはG13を表し、化学基Qならびに置換基K、ZおよびRが一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表し;そして、kが0、1、2、3、4または5を表し、kが好ましくは1、2または3を表す化合物に関する。式(I−E)の好ましいピリミジン化合物は、QがQ1、Q2またはQ3を表すものである。式中、QがQ1を表し、Rが水素を表すか、あるいは、QがQ2を表し、Rが水素を表すか、あるいはQがQ3を表し、Rが水素を表す、上記に定義されるような式(I−E)の化合物が、特に好ましい。
【0041】
本発明はさらに、一般式(I−F)の化合物であって、一般式(I−F)中、GがG10、G11、G12またはG13を表し、化学基Qならびに置換基K、ZおよびRが一般式(I)に関して記載された定義を有し、そしてmは0、1または2を表し、mは好ましくは0または1を表し;そして、kが0、1、2、3、4または5を表し、kが好ましくは1、2または3を表す化合物に関する。式(I−F)の好ましいピリミジン化合物は、QがQ1、Q2またはQ3を表すものである。式中、QがQ1を表し、Rが水素を表すか、あるいは、QがQ2を表し、Rが水素を表すか、あるいはQがQ3を表し、Rが水素を表す、上記に定義されるような式(I−F)の化合物が、特に好ましい。
【0042】
別段の規定がない限り、用語(C−C)アルキルは、1〜6個の炭化水素基からなる分岐状および非分岐状のアルキル基を意味すると理解される。(C−C)アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル(tert−ブチル)、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチルが挙げられる。(C−C)アルキル基が好ましく、(C−C)アルキル基が特に好ましく、特にメチル、エチルおよびプロピルである。別段の規定がない限り、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルの定義には、個々の基の全ての可能な異性体が包含される。
【0043】
別段の規定がない限り、ハロアルキル基は、少なくとも1つの水素がハロゲン原子、好ましくはフッ素、塩素、臭素、特に好ましくはフッ素で交換されているアルキル基であると理解される。ハロアルキル基は、分岐状であっても非分岐状であってもよく、場合により一置換または他置換されていてもよい。好ましいハロアルキル基は、CHF、CHF、CF、CH−CHF、CH−CHF、CHCFである。(C−C)ハロアルキル基が好ましく、(C−C)ハロアルキル基が特に好ましく、(C−C)ハロアルキル基が最も特に好ましく、特にCHF、CHF、CF、CH−CHF、CH−CHFおよびCHCFである。
【0044】
別段の規定がない限り、ハロアルコキシ基は、少なくとも1つの水素がハロゲン原子、好ましくはフッ素、塩素、臭素、特に好ましくはフッ素で交換されているアルコキシ基であると理解される。ハロアルコキシ基は、分岐状であっても非分岐状であってもよく、場合により一置換または他置換されていてもよい。好ましいハロアルコキシ基は、OCHF、OCHF、OCF、OCH−CFH、OCH−CFH、OCHCFである。(C−C)ハロアルコキシ基が好ましく、(C−C)ハロアルコキシ基が特に好ましく、(C−C)ハロアルコキシ基が最も特に好ましく、特にOCHF、OCHF、OCF、OCH−CFH、OCH−CFH、OCHCFである。
【0045】
別段の規定がない限り、用語(C−C)アルケニルは、2〜6個の炭化水素原子からなり少なくとも1つの二重結合を有する分岐状および非分岐状のアルキル基を意味すると理解される。(C−C)アルケニルの例には、エテニル(ビニルとも呼ばれる)、プロパ−1−エニル、プロパ−2−エニル(アリルとも呼ばれる)、ブタ−1−エニル、ブタ−2−エニル、ブタ−3−エニル、ペンタ−1−エニルおよびヘキサ−1−エニルが挙げられる。(C−C)アルケニルという表現には、全ての可能な異性体、すなわち、構造異性体(structural isomersまたはstructural isomers)および立体異性体((Z)および(E)異性体)が含まれる。
【0046】
別途規定しない限り、炭素環という用語は、好ましくは、炭化水素基からなる3〜7員環を意味すると理解され、当該環は飽和であっても不飽和であってもよい。
【0047】
別途規定しない限り、ヘテロ芳香族という用語は、炭化水素基からなり、好ましくは5〜7員であり、1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含む芳香族複素環を意味すると理解され、上記ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄、好ましくは窒素および/または酸素からなる群から選択される。ヘテロ芳香族の例としては、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、チアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピリダジン、ピラジン、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジンおよびキナゾリンが挙げられる。
【0048】
それらの優れた薬理学的活性により、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物は、PDE4酵素の阻害が有利である種々の疾患または状態の治療に適している。
【0049】
このような状態および疾患は特に、
−関節の炎症性疾患、特に、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風、変形性関節症;
−皮膚の炎症性疾患、特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬;
−眼の炎症性疾患、特に、ブドウ膜炎;
−胃腸の疾患および病訴、特に、消化器官の炎症性疾患、中でも、クローン病、潰瘍性大腸炎、および胆嚢および胆管の、偽ポリープおよび若年性ポリープの、急性および慢性炎症;
−ループス腎炎、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎を含む、内部器官の炎症性疾患、特にSLE(全身性エリテマトーデス);
−増殖性疾患、特に、良性の前立腺肥大;
−上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症、肺炎;
−線維性スペクトルの疾患、特に、肝線維症、全身性硬化症、強皮症;
−癌、特に、血液癌、とりわけ、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、特に、CLLおよびCML(慢性リンパ性および慢性骨髄性白血病)、ALLおよびAML(急性リンパ性および急性骨髄性白血病)、および神経膠腫;
−代謝性疾患、特に、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症、脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)、および心疾患、特に、動脈硬化、PAH (肺動脈性高血圧症);
−精神障害、特に統合失調症、うつ病、特に、双極性うつ病または躁うつ病、認知症、記憶喪失、全般性不安障害(GAD);および
−末梢または中枢神経系の疾患、特にパーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、
である。
【0050】
式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明の化合物の利点の1つは、これらが選択的PDE4B阻害薬であることである。この選択性の利点は、PDE4D酵素が例えば阻害されないか、または部分的にのみ阻害されるという事実にあり、従ってこのような選択的PDE4B阻害薬は、副作用を生じないかまたは生じる副作用は著しく減少されている。望ましくない副作用は、例えば、嘔吐および悪心であり、特に、不快、嘔吐および吐き気である。本発明の化合物の治療域は、従って、有利である。
【0051】
従って、本発明はまた、上記の形態に、または、その酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の、少なくとも1種の本発明化合物を含む医薬組成物(医薬)を提供する。
【0052】
従って、本発明はまた、医薬として、特にPDE4酵素、特にPDE4B酵素の阻害により治療できる状態または疾患の治療のための医薬として使用するための、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の、本発明による化合物を提供する。
【0053】
本発明はまた、関節の炎症性疾患、特に、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風、変形性関節症;および/または皮膚の炎症性疾患、特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬;および/または眼の炎症性疾患、特に、ブドウ膜炎;胃腸の疾患および病訴、特に、消化器官の炎症性疾患、中でも、クローン病、潰瘍性大腸炎、および胆嚢および胆管の、偽ポリープおよび若年性ポリープの、急性および慢性炎症;ループス腎炎、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎を含む、内部器官の炎症性疾患、特にSLE (全身性エリテマトーデス);および/または増殖性疾患、特に、良性の前立腺肥大;上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS (急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症、肺炎;線維性スペクトルの疾患、特に、肝線維症、全身性硬化症、強皮症;癌、特に、血液癌、とりわけ、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、特に、CLLおよびCML(慢性リンパ性および慢性骨髄性白血病)、ALLおよびAML(急性リンパ性および急性骨髄性白血病)、および神経膠腫;代謝性疾患、特に、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症、脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)、および心疾患、特に、動脈硬化、PAH (肺動脈性高血圧症);精神障害、特に統合失調症、うつ病、特に、双極性うつ病または躁うつ病、認知症、記憶喪失、全般性不安障害(GAD);および/または末梢または中枢神経系の疾患、特にパーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療用医薬として使用するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の、本発明による化合物を提供する。
【0054】
本発明はまた、関節の炎症性疾患(特に、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風、変形性関節症)の、皮膚(特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬)の、または眼(特に、ブドウ膜炎)の炎症性疾患、上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症、肺炎の;代謝性疾患、特に、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症、脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)、および/または心疾患、特に、動脈硬化およびPAH(肺動脈性高血圧症)の治療用医薬として使用するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の、本発明による化合物を提供する。
【0055】
本発明はまた、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、乾癬、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、ぜん息、2型糖尿病および/またはメタボリックシンドロームの治療用医薬として使用するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の、本発明による化合物を提供する。
【0056】
本発明はまた、関節の炎症性疾患、特に、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風、変形性関節症;皮膚の炎症性疾患、特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬;眼の炎症性疾患、特に、ブドウ膜炎;胃腸の疾患および病訴、特に、消化器官の炎症性疾患、中でも、クローン病、潰瘍性大腸炎、および胆嚢および胆管の、偽ポリープおよび若年性ポリープの、急性および慢性炎症;ループス腎炎、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎を含む、内部器官の炎症性疾患、特にSLE (全身性エリテマトーデス);増殖性疾患、特に、良性の前立腺肥大;上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症、肺炎;線維性スペクトルの疾患、特に、肝線維症、全身性硬化症、強皮症;癌、特に、血液癌、とりわけ、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、特に、CLLおよびCML(慢性リンパ性および慢性骨髄性白血病)、ALLおよびAML(急性リンパ性および急性骨髄性白血病)、および神経膠腫;代謝性疾患、特に、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症、脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)、および心疾患、特に、動脈硬化、PAH(肺動脈性高血圧症);精神障害、特に統合失調症、うつ病、特に、双極性うつ病または躁うつ病、認知症、記憶喪失、全般性不安障害(GAD);および/または末梢または中枢神経系の疾患、特にパーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用を提供する。
【0057】
好ましくは本発明は、関節(特に、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風、変形性関節症)の、皮膚(特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬)のまたは眼(特に、ブドウ膜炎)の炎症性疾患の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0058】
好ましくは本発明は、胃腸の疾患および病訴、特に、消化器官の炎症性疾患、中でも、クローン病、潰瘍性大腸炎、および胆嚢および胆管の、偽ポリープおよび若年性ポリープの、急性および慢性炎症の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0059】
好ましくは本発明は、ループス腎炎、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎を含む、内部器官の炎症性疾患、特にSLE(全身性エリテマトーデス)の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0060】
好ましくは本発明は、増殖性疾患、特に、良性の前立腺肥大の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0061】
好ましくは本発明は、上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症および肺炎の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0062】
好ましくは本発明は、線維性スペクトルの疾患、特に、肝線維症、全身性硬化症および強皮症の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0063】
好ましくは本発明は、癌、特に、血液癌、とりわけ、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、特に、CLLおよびCML(慢性リンパ性および慢性骨髄性白血病)、ALLおよびAML(急性リンパ性および急性骨髄性白血病)、および神経膠腫の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0064】
好ましくは本発明は、代謝性疾患、特に、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症、脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)、および心疾患、特に、動脈硬化、PAH(肺動脈性高血圧症)の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0065】
好ましくは本発明は、精神障害、特に統合失調症、うつ病、特に、双極性うつ病または躁うつ病、認知症、記憶喪失および全般性不安障害(GAD)の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0066】
好ましくは本発明は、末梢または中枢神経系の疾患、特にパーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中およびALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0067】
特に好ましいのは、以下:
関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、乾癬、COPD(慢性閉塞性肺疾患)およびぜん息、
の疾患または状態の1つまたは2つ以上の治療用医薬を製造するための、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の使用である。
【0068】
本発明はまた、上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、関節の炎症性疾患、特に、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風、変形性関節症;皮膚の炎症性疾患、特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬;眼の炎症性疾患、特に、ブドウ膜炎;胃腸の疾患および病訴、特に、消化器官の炎症性疾患、中でも、クローン病、潰瘍性大腸炎、および胆嚢および胆管の、偽ポリープおよび若年性ポリープの、急性および慢性炎症;ループス腎炎、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎を含む、内部器官の炎症性疾患、特にSLE(全身性エリテマトーデス);増殖性疾患、特に、良性の前立腺肥大;上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症、肺炎;線維性スペクトルの疾患、特に、肝線維症、全身性硬化症、強皮症;癌、特に、血液癌、とりわけ、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、特に、CLLおよびCML(慢性リンパ性および慢性骨髄性白血病)、ALLおよびAML(急性リンパ性および急性骨髄性白血病)、および神経膠腫;代謝性疾患、特に、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症、脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)、および心疾患、特に、動脈硬化、PAH(肺動脈性高血圧症);精神障害、特に統合失調症、うつ病、特に、双極性うつ病または躁うつ病、認知症、記憶喪失、全般性不安障害(GAD);および/または末梢または中枢神経系の疾患、特にパーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療のための方法も提供する。
【0069】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、関節(特に、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風、変形性関節症)の、皮膚(特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬)の、または眼(特に、ブドウ膜炎)の炎症性疾患の治療のための方法が好ましい。
【0070】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、胃腸の疾患および病訴、特に、消化器官の炎症性疾患、中でも、クローン病、潰瘍性大腸炎、および胆嚢および胆管の、偽ポリープおよび若年性ポリープの、急性および慢性炎症の治療のための方法が好ましい。
【0071】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、ループス腎炎、慢性前立腺炎および/または間質性膀胱炎を含む、内部器官の炎症性疾患、特にSLE(全身性エリテマトーデス)の治療のための方法が好ましい。
【0072】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、または式(I)に由来する式および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、増殖性疾患、特に、良性の前立腺肥大の治療のための方法が好ましい。
【0073】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症および/または肺炎の治療のための方法が好ましい。
【0074】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、線維性スペクトルの疾患、特に、肝線維症、全身性硬化症および/または強皮症の治療のための方法が好ましい。
【0075】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、癌、特に、血液癌、とりわけ、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、特に、CLLおよびCML(慢性リンパ性および慢性骨髄性白血病)、ALLおよびAML(急性リンパ性および急性骨髄性白血病)、および神経膠腫の治療のための方法が好ましい。
【0076】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、代謝性疾患、特に、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症、脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)、および心疾患、特に、動脈硬化、PAH(肺動脈性高血圧症)の治療のための方法が好ましい。
【0077】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、精神障害、特に統合失調症、うつ病、特に、双極性うつ病または躁うつ病、認知症、記憶喪失および/または全般性不安障害(GAD)の治療のための方法が好ましい。
【0078】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、末梢または中枢神経系の疾患、特にパーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中および/またはALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療のための方法が好ましい。
【0079】
上記の形態に、またはその酸もしくは塩基の形態に、または薬学的に安全な、特に生理学的に認容性の塩の形態に、または、その溶媒和物、特に水和物の形態にあり、場合により、そのラセミ化合物、その純粋な立体異性体、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体の、特にエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種の治療的に有効な量を投与することを特徴とする、ヒトにおける、以下の疾患または状態:
関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、乾癬、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、ぜん息およびまた2型糖尿病およびメタボリックシンドローム、
の1つまたは2つ以上の治療のための方法が好ましい。
【0080】
ヒトまたは患者に投与すべき活性成分の量は変動し、患者の体重、年齢および病歴に、ならびに投与の種類、病気の兆候ょび重症度にも依存する。慣例的に、体重1kg当たり、0.1〜5000mg/kg、特に1〜500mg/kg、好ましくは2〜250mg/kgの、式(I)、(I’)の一般構造の、および式(I)に由来する式(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)または(I−F)のサブ構造の本発明による化合物の少なくとも1種が投与される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.一般式(I)のピリミジン化合物
[式中、
Gは、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニル、または場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表すか;あるいは、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する8〜10員の複素縮合環の一部である、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し;
Zは、互いに独立に、(C−C)アルキル、(C−C)ヒドロキシアルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、−S(C−C)アルキル、ハロゲン、ヒドロキシルまたはシアノを表し、上記のアルキルは、分岐状であるか直鎖状であり、そして置換されていてもよく;
Qは、置換基Xで置換されそして場合により少なくとも1つの置換基Xで置換されたフェニル、ピリミジルまたはピラジニルを表し;
Xは、互いに独立に、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルコキシ、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、−NH、−NH(C−C)アルキル、−N((C−C)アルキル)、N−ピロリジニル、N−ピペリジニル、N−モルホリニル、−NH−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−NH、−C(O)−NH(C−C)アルキル、−C(O)−N((C−C)アルキル)、−S(O)−NH2、−S(C−C)アルキル、−S(O)−(C−C)アルキルまたは−S(O)−(C−C)アルキルを表し、ここで上記のアルキル鎖は、分岐状であるか直鎖状であり、置換されていてもよく;
は、L−CO基を表し;
Lは、結合、(C−C)アルキレン、(C−C)アルケニレン、−O−(C−C)アルキレン、−NH−(C−C)アルキレンまたは−NR−(C−C)アルキレンを表し、上記アルキレンまたはアルケニレンは各々、1つまたは2つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよく、または上記アルキレンまたはアルケニレンは、1つまたは2つ以上の(C−C)アルキル基で置換されていてもよく、または上記アルキレンまたはアルケニレンにおいて、CH単位は酸素原子によって置き換えられていてもよく;
は、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキルを表し;
およびRは、互いに独立に、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキルを表し;
nは、1または2を表し;
Kは、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルまたはシアノを表し;そして
mは、0、1、2、3または4を表す]、
ならびにその薬理学的に認容可能な塩、ジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ化合物、水和物または溶媒和物。
2.Zが、互いに独立に、CH、OCH、CF、CHF、CHF、OCF、OCHF、OCHF、SCH、Cl、F、OHまたはCNを表し;
が、L−CO基を表し;
Lが、結合またはメチレンを表し、ここでメチレンは1つまたは2つのハロゲン原子(特にフッ素)で置換されていてもよく;
が、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキルを表し;
が、水素または分岐状もしくは直鎖状(C−C)アルキルを表し;
Kが、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキル、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシルまたはシアノを表すことを特徴とする、
上記1に記載のピリミジン化合物。
3.Gが、基G1〜G9(式中、星印(*)を付けた部位は、ピリミジン環の2位における結合部位を示し;kは、0、1または2を表す)から選択される、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し;
Qが、基Q1〜Q13
(式中、星印(*)を付けた部位は、窒素との結合部位を示し、
pは0、1、2、3または4を表し;
Xは、互いに独立に、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルコキシ、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、−NH、−NH(C−C)アルキル、−N((C−C)アルキル)、N−ピロリジニル、N−ピペリジニル、N−モルホリニル、−NH−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)−NH、−C(O)−NH(C−C)アルキル、−C(O)−N((C−C)アルキル)、−S(O)−NH2、−S(C−C)アルキル、−S(O)−(C−C)アルキルまたは−S(O)−(C−C)アルキルを表し、ここで上記のアルキル鎖は、分岐状であるか直鎖状であり、置換されていてもよく;
Lは、結合またはメチレンを表し、ここでメチレンは1つまたは2つのハロゲン原子で置換されていてもよい)
から選択されることを特徴とする、
上記1または2に記載のピリミジン化合物。
4.nが1を表すことを特徴とする、上記1〜3のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
5.nが2を表すことを特徴とする、上記1〜3のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
6.mが0を表すことを特徴とする、上記1〜5のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
7.pが0または1を表すことを特徴とする、上記3〜6のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
8.Gが、G1、G2、G3またはG4から選択される、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルまたは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換された6員のヘテロ芳香族を表し;そして、
Qが、上記3に定義される化学基Q2、Q3、Q8またはQ9を表すことを特徴とする、
上記3〜7のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
9.Gが、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルG1を表し;そして、
Qが、化学基Q1、Q2またはQ3を表すことを特徴とする、
上記3〜7のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
10.Gが、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルG1を表し;そして、
Qが、化学基Q2を表すことを特徴とする、
上記3〜7のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
11.Gが、場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されたフェニルG1を表し;そして、
Qが、化学基Q3を表すことを特徴とする、
上記3〜7のいずれか1つに記載のピリミジン化合物。
12.上記1〜11のうちの1つに定義される少なくとも1種の化合物を含有する医薬。
13.PDE4酵素の阻害により治療できる状態または疾患の治療のための医薬として使用するための、上記1〜11のうちの1つで定義される化合物であって、場合により、それらのラセミ化合物、それらの純粋な立体異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーの形態に、または、任意の混合比の立体異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物の形態にある、上記の形態に、またはそれらの酸もしくは塩基の形態に、または生理学的に認容可能な塩の形態に、または、それらの溶媒和物の形態にある、化合物。
14.PDE4酵素の阻害により治療できる状態または疾患が以下の群:
関節、皮膚および眼の炎症性疾患、胃腸の疾患および病訴、内部器官の炎症性疾患;増殖性疾患、上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞、線維性スペクトルの疾患、癌、代謝性疾患、精神障害、および末梢または中枢神経系の疾患、
から選択される、上記13に記載の医薬として使用するための化合物。
15.前記の関節の炎症性疾患が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、痛風および変形性関節症を含み;
前記の皮膚の炎症性疾患が、乾癬、アトピー性皮膚炎および扁平苔癬を含み;
前記の眼の炎症性疾患が、ブドウ膜炎を含み;
前記の胃腸の疾患および病訴が、消化器官の炎症性疾患、中でも、クローン病、潰瘍性大腸炎、および胆嚢および胆管の、偽ポリープおよび若年性ポリープの、急性および慢性炎症を含み;
前記の内部器官の炎症性疾患が、ループス腎炎、慢性前立腺炎および間質性膀胱炎を含むSLE(全身性エリテマトーデス)を含み;
前記の増殖性疾患が、良性の前立腺肥大を含み;
前記の上昇した粘液産生を伴う呼吸器系または肺疾患、気道の炎症および/または閉塞が、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、ぜん息、肺線維症、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、閉塞性睡眠時無呼吸、嚢胞性線維症、慢性静脈洞炎、気腫、咳、肺胞炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、肺水腫、気管支拡張症および肺炎を含み; 前記の線維性スペクトルの疾患が、肝線維症、全身性硬化症および強皮症を含み;
前記の癌が、血液癌、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、特に、慢性リンパ性および慢性骨髄性白血病、急性リンパ性および急性骨髄性白血病、および神経膠腫を含み;
前記の代謝性疾患が、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満/肥満症および脂肪肝疾患(アルコール誘発性でない)を含み、
心疾患が、動脈硬化および肺動脈性高血圧症を含み;
前記の精神障害が、統合失調症、うつ病、双極性うつ病または躁うつ病、認知症、記憶喪失および全般性不安障害(GAD)を含み;そして
前記の末梢または中枢神経系の疾患が、パーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中および筋萎縮性側索硬化症を含む、
上記14に記載の医薬として使用するための化合物。
【0081】
本発明はさらに、以下のステップを含む、QがQ1を表し、R=Hである(n=1である場合、対象の化合物はR=Hを有する式(I−C)の化合物に相当し、n=2である場合、対象の化合物はR=Hを有する式(I−D)の化合物に相当する)一般式(I)で表される本発明化合物を製造するための方法(01)に関する:
ステップ(i):溶剤、例えばエタノールまたはジメチルホルムアミドにおける、および塩基(例えば、ナトリウムエタノレート、トリエチルアミンまたは炭酸セシウムの存在下における、約50℃〜約130℃の範囲の温度での、一般式(II)のアミジン化合物と、一般式(III)のβ−ケトエステルとの反応による、式(IV)の4−ヒドロキシピリミジン化合物の形成;
【0082】
【化13】
ステップ(ii):溶剤における、塩素化剤を用いた式(IV)の4−ヒドロキシピリミジン化合物の塩素化による化合物(V)の形成(ここで前記塩素化剤はオキシ塩化リンであることができる);
【0083】
【化14】
ステップ(iii):溶剤における、および場合により塩基、酸または遷移金属触媒の存在下における、式(V)の4−クロロピリミジン化合物と式(VI)のアニリンとの反応による式(VII)の化合物の形成;
【0084】
【化15】
ステップ(iv):水を含んでいてもよい有機溶剤における式(VII)の化合物の酸もしくは塩基エステル開裂による、式(I)の標的化合物の形成。
【0085】
方法(01)のステップ(i)、すなわち、式(IV)の4−ヒドロキシピリミジン化合物を形成するための、一般式(II)のアミジン化合物と一般式(III)のβ−ケトエステルとの反応は、縮合反応である。一般式(III)のβ−ケトエステルはまた、互変異性エノール型で存在することもできる。縮合反応は一般に知られている(例えばChemistry − A European Journal 2008, 14, 6836−6844参照)。例えば、一般式(II)および一般式(III)の化合物を、塩基、例えばトリエチルアミンまたはナトリウムエトキシドの存在下で、溶媒としてのエタノールにおいて、約70℃〜約90℃の範囲内の温度で反応させることにより、一般式(IV)の化合物を形成することができる。
【0086】
方法(01)のステップ(ii)は、標準的な方法による、一般式(IV)の4−ヒドロキシピリミジンのヒドロキシル基の塩素化である(例えば、Journal of the Chemical Society 1951, 1218−1221;Bioorganic & Medicinal Chemistry 2010, 18, 2704−2712参照)。例えば、一般式(V)の化合物は、一般式(IV)の4−ヒドロキシピリミジンをオキシ塩化リンと、およそ20℃〜およそ100℃の範囲内の温度で、好ましくはおよそ50℃〜およそ100℃の温度で反応させることにより、製造することができる。
【0087】
方法(01)のステップ(iii)、すなわち、一般式(VII)の化合物を形成させるための、一般式(V)の4−クロロピリミジン化合物の、一般式(VI)の対応アニリンとの反応は、溶媒においておよび場合により塩基の存在下で芳香族求核置換の標準的な方法により行われる。適切な溶媒は、当業者に公知である。そのような溶媒の例は、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドである。適切な塩基の例は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム溶液および炭酸セシウムまたは炭酸カリウムである。上記反応は、約20℃〜約200℃の範囲にある温度で行うことができる。上記反応は、好ましくは、50℃〜200℃の範囲の温度で行われる。あるいは、一般式(VII)の化合物は、一般式(V)および一般式(VI)の化合物を、酸、例えば塩酸、および溶媒としてのジメチルホルムアミドの存在下で、または方法(02)に記載されるような、パラジウム触媒クロスカップリング反応の条件下で反応することにより得ることもできる。
【0088】
方法(01)のステップ(iv)におけるエステル開裂(エステル加水分解)は、公知の方法によって行われる。エステル開裂は、例えば、「P.G.M. Wuts, T.W. Greene in Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Edition, 2007, pages 538−616, Wiley−Interscience」によって記載されている。それらは、例えば、酸または塩基(例えば、アルカリ水酸化物、例えば水酸化リチウムまたはナトリウム)の存在下で、可変的な割合の水を添加し得る有機溶媒において、加水分解的に行うことができる。他のよく用いられるエステル開裂の方法は、一般的に知られている方法による、例えばジクロロメタンにおけるトリフルオロ酢酸を用いる、tert−ブチルエステル(R=tert−ブチル)の酸触媒開裂、またはベンジルエステルの水素化分解を伴う。
【0089】
同様に本発明は、以下のステップを含む、一般式(I)の本発明化合物(QはQ1を表し、Rは水素を表す(n=1である場合、標的化合物はR=Hを有する式(I−C)の化合物に相当し、n=2である場合、標的化合物はR=Hを有する式(I−D)の化合物に相当する)を製造するための方法(02)に関する:
ステップ(i’):
【0090】
【化16】
溶媒(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシド)において、 および場合により塩基(例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム溶液、炭酸セシウムまたは炭酸カリウム)の存在下において、約20℃〜約200℃、好ましくは約50℃〜約130℃の範囲の温度で、式(VIII)の化合物を式(VI)の化合物と反応させて式(IX)の化合物を形成させること;
ステップ(ii’):鈴木カップリンまたはStilleカップリングの条件下で、式(IX)の化合物を化合物G−Mと反応させて式(VII)の化合物を形成させること
【0091】
【化17】
(ここで、化合物G−MにおけるGは本発明の化合物に関して記載された意味を有し、Mは以下の意味を有する):
鈴木カップリングの場合、MはB(OH)(ボロン酸)、B(OR(ボロン酸エステル)または場合により(C−C)アルキル置換された1,3,2−ジオキサボロラン(例えば、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン;ピナコールボロン酸エステル)を表し、Stilleカップリングの場合、MはSnR(例えば、M=Sn(CH、SnBn、トリメチルスタニルまたはトリブチルスタニル化合物)を表す;
ステップ(iii’):ステップ(iv)に関する方法(01)に記載された方法により式(I)の標的化合物を形成するための、式(VII)の化合物の酸または塩基エステル開裂。
【0092】
方法(02)のステップ(i’)、すなわち、式(IX)の化合物を製造するための一般式(VIII)の2,4−ジクロロピリミジン化合物と適切なアニリン(VI)との反応は、芳香族求核置換の公知の方法によって行われる。上記反応は、例えば、溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドにおいて、塩基、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム溶液、炭酸セシウムまたは炭酸カリウムの添加を伴ってもしくは伴わずに、約20℃〜約200℃、好ましくは約50℃〜約130℃の範囲の温度で、実施することができる。
【0093】
方法(02)のステップ(ii’)、すなわち、Stilleもしくは鈴木カップリング反応条件下での反応は、公知の方法によって行われる(Tetrahedron 2005, 61, 2245−67を参照)。鈴木カップリングは、例えば、触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)錯体または[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)錯体および塩基(例えば、炭酸セシウム)の存在下で、溶媒または溶媒ブレンド(例えば、ジオキサンもしくはアセトニトリル/水ブレンド)において実施することができる。
【0094】
別段の定めがない限り、上記方法(01)および(02)において使用されるかまたは反応される化合物の一般式における基RおよびRは、以下のように定義される:
Rは脱離基(例えば、メチル、エチル、tert−ブチルまたはベンジル)を表し、そして
は(C−C)アルキル、好ましくはメチルおよびブチルを表す。
【0095】
他の全ての化学基、置換基および添え字は、式(I)の化合物に関して与えられた意味を有する。
【0096】
本発明の化合物を以下の表に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
前記表において、Meはメチルを表し、Etはエチルを表し、Bdは結合を表す。
【0101】
本発明の化合物は、以下に記載の方法において製造することができる。
【0102】
以下では、下記の略語を使用する:eq.=当量の;APCI=大気圧化学イオン化;BINAP=2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル;calc.=計算された;BOP=(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;DMAP=N,N−ジメチルピリジン−4−アミン;DMF=N,N−ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;ES−MS=エレクトロスプレー質量分析法;NMP=N−メチル−2−ピロリドン;f.=found;h=時間;min=分;R=保持時間;tert=三級の;THF=テトラヒドロフラン;TOFMS=飛行時間形質量分析計。
【0103】
別段に定めがない限り、以下の分析HPLC法を使用した:
【0104】
方法1:
カラム:Agilent Zorbax Extend, 1.8μm、4.6x30mm
検出:254nm(または215nm)
溶媒A:水/0.1%ギ酸
溶媒B:アセトニトリル/0.1%ギ酸
勾配:
【0105】
【表4】
【0106】
方法2:
カラム:Ascentis Express C18, 2.7μm, 3cmx2.1mm
カラム温度:30℃
インジェクション容積:1μl
系デッドタイム:0.2分
検出:MM−ES+APCI+DAD(254nm)
溶媒A:水/0.1%ギ酸
溶媒B:メタノール/0.1%ギ酸
勾配:
【0107】
【表5】
【0108】
方法3:
ハードウェア:Coupled Agilent 1290 Infinity UHPLC−TOF system
カラム:Agilent Zorbax SB−C18, Rapid Resolution HD, 1.8μm
検出:Agilent 6224 飛行時間形質量分析計
イオン源:Dual ESI
溶媒A:水/0.1%ギ酸
溶媒B:アセトニトリル/0.1%ギ酸
UV:190−400nm
カラム温度:80℃
勾配:
【0109】
【表6】
【0110】
一般的手順no.1(GP1):
2M炭酸ナトリウム溶液(0.53ml、5.0当量)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(8.0mg,0.03当量)を、1,2−ジメトキシエタン(4.4ml)におけるtert−ブチル2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート(0.217mmol,1.0当量)およびボロン酸(0.326mmol,1.5当量)の溶液に連続的に添加し、混合物をアルゴン雰囲気下マイクロ波において1時間120℃に加熱した。反応混合物を冷却し、ボロン酸(0.326mmol,1.5当量)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(8.0mg,0.03当量)を再度添加した。該混合物をその後、マイクロ波においてさらに1時間120℃に加熱した。室温に冷却後、水(5ml)を添加することにより、反応を終了させた。生成物をジクロロメタン(3x8ml)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で溶剤を除去した。粗製生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0111】
一般的手順no.2(GP2):
GP1により得られた生成物(1当量)を、トリフルオロ酢酸(50当量)と混合し、室温で30分間撹拌した。その後、酸を減圧下で留去し、得られた生成物を高真空下で乾燥した。
【0112】
例1:2−(4−(2−(3,4−ジフルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.2)
1a)tert−ブチル 2−(4−(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)アセテート
NMP(570ml)における2,4−ジクロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(21.60g,114mmol)、tert−ブチル2−(4−アミノフェニル)アセテート(24.87g,120mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(39.8ml,229mmol)を、80℃で一晩撹拌した。冷却後、混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。その後有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で小容積に濃縮した。残渣をクロマトグラフィーに付し[シリカゲル、0−90%の酢酸エチルを有するヘキサン]、そのように得られた粗製生成物をヘキサン/酢酸エチル中に結晶化させた。黄色固体。収量:8.5g(理論値の21%)。
【0113】
1b)tert−ブチル 2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート
DMAP(373mg,3.1mmol)を、THF(200ml)におけるtert−ブチル 2−(4−(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)アセテート(11.0g,30.6mmol)およびジ−tert−ブチル−ジカルボネート(7.45ml,32.1mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で6時間撹拌した。その後、溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン/ヘキサン中で撹拌した。固体をろ過し、ジクロロメタン/ヘキサンで洗浄し、乾燥した。白色固体。収量:10.5g(理論値の75%)。
LC−MS(方法1):R=2.95min,m/z:[M+H]=460
【0114】
1c)2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−(3,4−ジフルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
3,4−ジフルオロフェニルボロン酸(77mg,0.489mmol)、2M炭酸ナトリウム溶液(0.8ml)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(11mg,0.010mmol)を、保護ガス下で連続的に、エチレングリコールジメチルエーテル(7ml)におけるtert−ブチル 2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート(150mg,0.326mmol)の溶液に添加した。その後、混合物をマイクロ波において1時間120℃に加熱した。混合物を水(8ml)を添加することにより処理し、ジクロロメタンで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、小容量に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 60;ヘキサン/酢酸エチル9:1]により精製した。収量:150mg(理論値の86%)。
LC−MS(方法3):R=1.12min,m/z:[M+H]=538.3
【0115】
1d)2−(4−(2−(3,4−ジフルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
トリフルオロ酢酸(0.5ml)を、ジクロロメタン(2.3ml)における1c)からのエステル(190mg、0.353mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。その後、溶媒を留去し、残渣を水(10ml)および2M炭酸ナトリウム溶液(2ml)と混合した。15分間撹拌した後、2N水性塩酸でpHを2に調節し、抽出をジクロロメタン/メタノール(9:1)で行った。合わせた有機相を塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウム溶液で乾燥し、小容量に濃縮した。残渣をジエチルエーテル(10ml)およびエタノール(0.5ml)とともに撹拌し、ろ過し、少量のエーテルで再洗浄し、そして乾燥した。白色固体。収量:93mg(理論値の69%)。
LC−MS(方法3):R=0.67min,m/z:[M+H]=382.1
【0116】
例2:2−(4−(2−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.3)
2a)2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
tert−ブチル−2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート(150mg,0.326mmol)および3−フルオロ−4−メトキシフェニルボロン酸(83mg,0.489mmol)を、手順1c)と類似の方法により反応させた。収量:150mg(理論値の84%)。
LC−MS(方法3):R=1.09min,m/z:[M+H]=550.3
【0117】
2b)2−(4−(2−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
表題化合物を、2a)からのエステル(146mg,0.267mmol)から、手順1d)と類似の方法で製造した。白色固体。収量:52mg(理論値の50%)。
【0118】
LC−MS(方法3):R=0.55min,m/z:[M+H]=394.2
例3:2−(4−(2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.4)
3a)2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
例1c)と類似の方法で、tert−ブチル2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート(150mg,0.326mmol)および3−クロロ−4−メトキシフェニルボロン酸(91mg,0.489mmol)から製造した。白色固体。収量:140mg(理論値の76%)。
LC−MS(方法3):R=1.12min,m/z:[M+H]=566.2
【0119】
3b)2−(4−(2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
例1d)と類似の方法で、3a)からのエステル(140mg,0.247mmol)から製造した。白色固体。収量:79mg(理論値の78%)。
LC−MS(方法3):R=0.59min,m/z:[M+H]=410.1
【0120】
例4:2−(4−(2−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.5)
4a)2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
例1c)と類似の方法におけるtert−ブチル2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート(150mg,0.326mmol)と4−(ジフルオロメトキシ)フェニルボロン酸(91mg,0.489mmol)の反応。収量:140mg(理論値の76%)。
LC−MS(方法3):R=1.09min,m/z:[M+H]=568.3
【0121】
4b)2−(4−(2−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
例1d)と類似の方法において、手順4a)により得たエステル(430mg,0.758mmol)を、表題化合物に変換した。淡黄色の固体。収量:183mg(理論値の59%)。
LC−MS(方法3):R=0.57min,m/z:[M+H]=412.1
【0122】
例5:2−(4−(2−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.6)
5a)2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
手順1c)と類似の方法で製造した。白色固体。収量:160mg(理論値の84%)。
【0123】
5b)2−(4−(2−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
例1d)の手順と類似の方法における、5a)からのエステル(150mg,0.256mmol)の反応。白色固体。収量:93mg(理論値の85%)。
LC−MS(方法3):R=0.72min,m/z:[M+H]=430.1
【0124】
例6:2−(4−(2−(4−エトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.7)
6a)2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−(4−エトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
例1c)の手順と類似の方法において、tert−ブチル2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート(150mg,0.326mmol)および4−エトキシフェニルボロン酸(81mg,0.489mmol)から製造した。収量:110mg(理論値の62%)。
【0125】
6b)2−(4−(2−(4−エトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
例1d)と類似の方法で、6a)において得られたエステル(0.110mg,0.202mmol)から製造した。収量:75mg(理論値の87%、塩酸塩)。
LC−MS(方法3):R=0.55min,m/z:[M+H]=390.2
【0126】
例7:2,2,2−トリフルオロ酢酸付加塩としての2−(4−(2−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.8)
tert−ブチル2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート(100mg,0.217mmol)を、GP1に記載のように、4−メトキシフェニルボロン酸と反応させた。カラムクロマトグラフィー[シリカゲル;5−10%酢酸エチルを有するシクロヘキサン]による精製後に得られた生成物(93mg;LC−MS(方法3):R=0.98min)を、GP2に記載のように、トリフルオロ酢酸(0.766ml,8.77mmol)を用いて脱保護した。収量:96mg。
LC−MS(方法3):R=0.49min,m/z:[M+H]=376.2
【0127】
例8:2,2,2−トリフルオロ酢酸付加塩としての2−(4−(2−(4−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.9)
GP1に記載されるような、tert−ブチル 2−(4−(tert−ブトキシカルボニル(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)アミノ)フェニル)アセテート(100mg,0.217mmol)と4−クロロフェニルボロン酸との反応により、カラムクロマトグラフィー[シリカゲル;3−5%酢酸エチルを有するシクロヘキサン]後に、72mgの中間体(LC−MS(方法3):R=1.14min)が得られ、これをその後、GP2に記載のような、トリフルオロ酢酸(0.519ml,6.73mmol)との処理により、標的化合物に変換した。収量:87mg。
LC−MS(方法3):R=0.62min,m/z:[M+H]=380.1
【0128】
例9:2−(4−(2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.10)
9a)2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール
3−クロロベンズイミダミドヒドロクロリド(1.00g,5.23mmol)およびトリエチルアミン(0.73ml,5.23mmol)を、エタノール(5.2ml)における2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルエステル(0.744g,5.23mmol)の溶液に添加し、混合物を80℃で4時間撹拌した。その後、反応混合物を室温に冷却した。析出物をろ過し、エタノールで洗浄し、真空下で乾燥した。白色固体。収量:436mg(理論値の34%)。
LC−MS(方法1):R=1.76min,m/z:[M+H]=247.1/249.2,[M+H]=245.3/247.1
【0129】
9b)4−クロロ−2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン
2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(100mg,0.41mmol)およびオキシ塩化リン(1.62ml,17.38mmol)を90℃に加熱すると、最初の懸濁液の溶液への変化が生じた。1時間後、反応混合物を室温に冷却し、水(20ml)を滴加した。氷浴を用いる冷却により、温度を40℃にした。その後、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム溶液でアルカリ性にし、その後ジクロロメタンで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を除去した。白色固体。収量:86mg(理論値の80%)。
LC−MS(方法1):R=3.10min,m/z:[M+H]=265.1/267.2
【0130】
9c)2−(4−(2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
2滴の濃塩酸を、DMF中の4−クロロ−2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(84mg,0.317mmol)および2−(4−アミノフェニル)酢酸(48mg,0.317mmol)に添加し、混合物を100℃で一晩撹拌した。反応混合物を真空下で小容量に濃縮し、残渣をクロマトグラフィー[シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル0−100%]によって精製した。このように得られた生成物をその後真空オーブン中で乾燥し、溶媒の残りを除去した。収量:36mg(理論値の30%)。
LC−MS(方法1):R=1.89min,m/z:[M+H]=380.3/382.4,[M+H]=378.2/380.3
【0131】
例10:4−(2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸(化合物no.11)
10a)4−(2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸メチルエステル
ジオキサン(2.5ml)における4−クロロ−2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(100mg,0.377mmol)、4−アミノ安息香酸メチルエステル(57mg,0.377mmol)、炭酸セシウム(184mg,0.566mmol)およびBINAP(18mg,0.028mmol)の溶液を窒素でフラッシングし、その後酢酸パラジウム(II)(4mg,0.19mmol)と混合し、その後窒素雰囲気下で90℃に2時間加熱した。室温に冷却後、固体をろ過し、ジオキサンで洗浄した。ろ液を小容量に濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル0−100%]により精製した。白色固体。収量:90mg(理論値の63%)。
LC−MS(方法1):R=2.77min,m/z:[M+H]=380.3/382.1,[M+H]=378.2/380.0
【0132】
10b)4−(2−(3−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸
THF(2ml)における手順10a)からの生成物(86mg,226mmol)を、水酸化リチウム(22mg,0.906mmol)と混合し、室温で18時間撹拌した。その後、真空下で溶媒を留去し、残渣を酸性化して、固相抽出(SAXカートリッジ)により精製した。.収量:75mg(理論値の91%)。
LC−MS(方法1):R=2.18min,m/z:[M+H]+=366,[M+H]=364
【0133】
例11:2−(4−(2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.12)
11a)2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−オール
ナトリウムエトキシド溶液(21wt.%,43.9ml,118mmol)を、エタノール(100ml)における3−クロロベンズイミダミドヒドロクロリド(5.61g,29.4mmol)および2−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(4.70ml,29.4mmol)に0℃で添加し、混合物をその後90℃で一晩撹拌した。溶媒を留去し、残渣を氷水で希釈し、ろ過した。ろ過ケーキを水で洗浄し、その後真空オーブン中で乾燥した。ベージュの固体。収量:4.97g(理論値の62%)。
LC−MS(方法1):R=1.93min,m/z:[M+H]=261.1/263.1,[M+H]=259.1/261.0
【0134】
11b)4−クロロ−2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン
2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−オール(1.00g,3.84mmol)およびオキシ塩化リン(4.0ml,42.9mmol)を90℃に30分間加熱した。その後還流凝縮器を外し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。氷水を添加し、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、ジクロロメタンで抽出を行った。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で小容量に濃縮した。淡黄色の固体。収量:0.96g(理論値の90%)。
LC−MS(方法1):R=3.21min,m/z:[M]=279.1/281.3
【0135】
11c)2−(4−(2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸エチルエステル
手順10a)と類似の方法で、4−クロロ−2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン(715mg,2.56mmol)および(4−アミノフェニル)酢酸エチルエステル(482mg,2.69mmol)から製造した。黄色固体。収量:908mg(理論値の84%)。
LC−MS(方法1):R=2.24min,m/z:[M+H]=422.2/424.2,[M+H]=420.2/422.1
【0136】
11d)2−(4−(2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
11c)からのエチルエステルを、室温でTHF/水混合物において水酸化リチウムと混合することにより、遊離酸に変換した。ベージュの固体。
LC−MS(方法1):R=1.70min,m/z:[M+H]=394.2/396.2,[M+H]=392.0/394.1
【0137】
例12:4−(2−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸(化合物no.13)
12a)4−(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸エチルエステル
炭酸セシウム(6.20g,19.04mmol)、BINAP(592mg,0.95mmol)および酢酸パラジウム(II)(178mg,0.79mmol)を、保護ガス雰囲気下で、無水1,4−ジオキサン(60ml)における2,4−ジクロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(3.00g,15.87mmol)および4−アミノ安息香酸エチルエステル(2.62g,15.87mmol)の溶液に添加し、混合物を100℃で2時間撹拌した。その後、反応混合物をシリカゲル上に注ぎ、ジクロロメタンで溶離させた。白色固体。収量:978mg(理論値の19%)。
【0138】
LC−MS(方法2):R=3.85min,m/z:[M+H]=318.2
13C−NMR(101MHz,DMSO−d6,δppm):14.2,21.1,27.8,34.3,60.2,117.7,122.3,123.8,130.1,144.6,155.1,158.7,165.4,177.7
【0139】
12b)4−(2−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸エチルエステル
炭酸セシウム(1.33g,4.09mmol)およびPdCl(dppf)(ジクロロメタンとの1:1錯体、82mg、0.10mmol)を、アルゴン雰囲気下で、無水1,4−ジオキサン(4ml)における塩素化合物12a)(316mg,0.99mmol)および3−フルオロ−4−メトキシフェニルボロン酸(156mg,0.99mmol)の溶液に添加し、混合物を最初に90℃で1.5時間撹拌し、その後室温で16時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルカラムに注ぎ、以下の溶媒で溶離させた[シリカゲル60(40g);シクロヘキサン(200ml)、ジクロロメタン(500ml)、シクロヘキサン/酢酸エチル1:1(250ml)]。白色固体。収量:207mg(理論値の51%)。
【0140】
LC−MS(方法2):R=3.9min,m/z:[M+H]=408.3
13C−NMR(101MHz,DMSO−d6,δppm):14.7,21.7,27.7,34.4,56.5,60.7,114.0,114.9,115.0,117.0,119.8,123.3,124.6,124.6,130.3,131.6,131.6,145.1,149.2,149.3,150.5,152.9,156.4,160.8,160.8,165.9,173.6
【0141】
12c)4−(2−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸
1N水酸化ナトリウム溶液(1.57ml,1.57mmol)を、メタノール(5ml)および1,4−ジオキサン(3ml)におけるエチルエステル13b)(194mg,0.49mmol)に添加し、混合物を30分間還流すると、最初の懸濁液が溶液へ変化した。1N塩酸(2.31ml)の添加後、沈殿物が析出し、これをろ過し、水およびジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥した。白色固体。収量:166mg(理論値の89%)。融点:>260℃。
【0142】
LC−MS(方法2):R=3.5min,m/z:[M+H]=380.2
13C−NMR(101MHz,DMSO−d6,δppm):21.2,27.3,33.9,56.0,113.5,114.4,116.4,119.4,123.8,124.1,130.0,131.1,131.2,144.3,148.7,148.8,150.1,152.5,156.0,160.3,160.3,167.0,173.1
【0143】
例13:4−(2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸(化合物no.14)
13a)4−(2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸エチルエステル
塩素化合物12a)(318mg,1.00mmol)および3−クロロ−4−メトキシフェニルボロン酸(186mg,1.00mmol)から、手順12b)と類似の方法で製造した。白色固体。収量:268mg(理論値の63%)。
【0144】
LC−MS(方法2):R=4.1min,m/z:[M+H]=424.2
13C−NMR(101MHz,DMSO−d6,δppm):14.2,21.1,27.2,33.9,56.2,60.2,112.6,116.5,119.3,121.0,122.8,127.6,128.7,129.8,131.4,144.6,155.9,160.1,165.4,173.1
【0145】
13b)4−(2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸
標的化合物を、エチルエステル13a)(229mg,0.54mmol)から、手順12c)と類似の方法で合成した。白色固体。収量:194mg(理論値の91%)。融点:>260℃。
【0146】
LC−MS(方法2):R=3.7min,m/z:[M+H]=396.2
13C−NMR(101MHz,DMSO−d6,δppm):21.2,27.4,33.2,56.3,112.7,117.0,120.1,121.2,124.6,128.0,129.0,129.4,130.0,143.5,156.3,156.5,158.8,166.9,170.3
【0147】
例14:4−(2−(3,4−ジフルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸(化合物no.15)
14a)4−(2−(3,4−ジフルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸エチルエステル
4−(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸エチルエステル(318mg,1.00mmol)および3,4−ジフルオロフェニルボロン酸(158mg,1.00mmol)を、手順13b)と類似の方法で反応させた。白色固体。収量:305mg(理論値の77%)。
【0148】
LC−MS(方法2):R=4.4min,m/z:[M+H]=396.2
13C−NMR(101MHz,DMSO−d6,δppm):14.2,21.1,27.3,33.8,60.2,115.9,116.1,117.2,117.4,117.6,119.4,122.9,124.3,124.4,129.9,135.7,144.4,148.1,148.2,149.4,149.5,150.5,150.7,151.9,152.0,156.0,159.4,165.4,173.1
【0149】
14b)4−(2−(3,4−ジフルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸
例12c)の手順と類似の方法における、エチルエステル14a)(286mg,0.72mmol)の反応。白色固体。収量:154mg(理論値の58%)。融点:>260℃。
【0150】
LC−MS(方法2):R=3.9min,m/z:[M+H]=368.2
13C−NMR(101MHz,DMSO−d6,δppm):21.2,27.3,33.8,115.9,116.1,117.1,117.5,117.6,119.5,124.0,124.3,124.4,130.0,135.6,135.7,135.7,135.7,144.1,148.1,148.3,149.4,149.5,150.6,150.7,151.9,152.0,156.1,159.4,167.0,173.1
【0151】
例15:2−(4−(2−フェニル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.16)
15a)2−(4−(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
NMP(46ml)における2−(4−アミノフェニル)酢酸tert−ブチルエステル(2.00g,9.66mmol)および2,4−ジクロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(1.74g,9.20mmol)を80℃で一晩撹拌した。室温に冷却後、酢酸エチル(200ml)を添加し、混合物を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をメタノールおよびヘキサンと撹拌した。固体をろ過し、真空下で乾燥した。褐色固体。収量:1.3g(理論値の39%)。
【0152】
15b)2−(4−(2−フェニル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
16a)からのピリミジン(36mg,0.100mmol)、フェニルボロン酸(15mg,0.120mmol)、炭酸セシウム(49mg,0.150mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5.8mg,0.005mmol)を、マイクロ波反応器において、アセトニトリル/水混合物(1.3ml,3:1)中で125℃に30分間加熱した。室温に冷却後、混合物を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を小容量に濃縮し、残渣(51mg)をトリフルオロ酢酸/水(1.0ml,9:1)と混合し、室温で1時間撹拌した。その後、トリフルオロ酢酸を真空下で除去し、粗製生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。白色固体。
LC−MS(方法1):R=1.34min,m/z:[M+H]+=346,[M+H]=344
【0153】
例16:2−(4−(2−(3−フルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.17)
16a)2−(4−(2−(3−フルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
2−(4−(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル(108mg,0.30mmol)および3−フルオロフェニルボロン酸(50mg,0.36mmol)から、手順15b)と類似の方法で製造した。白色固体。
LC−MS(方法1):R=1.6min,m/z:[M+H]=364(ES
【0154】
例17:2−(4−(2−(4−ブロモフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.1)
17a)2−(4−ブロモフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール
メチル−2−オキソシクロペンタンカルボキシレート(3.12ml,25.1mmol)を、ジオキサン(170ml)における4−ブロモベンズイミダミド(5.00g,25.1mmol)の溶液に、室温で滴加した。その後、反応混合物を90℃で一晩撹拌した。冷却後、析出した固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄して、乾燥した。ベージュの固体。収量:2.20g(理論値の30%)。
LC−MS(方法3):R=0.60min,m/z:[M+H]=291.0/293.0
【0155】
17b)2−(4−ブロモフェニル)−4−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン
2−(4−ブロモフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(3.00g,11.9mmol)およびオキシ塩化リン(44ml)を、保護ガス雰囲気下、90℃で3時間撹拌した。冷却後、撹拌しながら混合物をゆっくりと氷水に導入した。それをNaCOおよびNaHCOで中和し、その後ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、小容量に濃縮した。残渣を20mlのジエチルエーテルで懸濁し、ろ過し、10mlのジエチルエーテルで洗浄し、その後、クロマトグラフィー[シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=9:1]によって精製した。淡いグレーの固体。収量:2.20g(理論値の60%)。
LC−MS(方法3):R=1.00min,m/z:[M+H]=309.0/311.0
【0156】
17c)2−(4−(2−(4−ブロモフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸メチルエステル
2−(4−ブロモフェニル)−4−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(1.00g,3.23mmol)およびメチル(4−アミノフェニル)アセテート(0.64g,3.88mmol)、炭酸セシウム(2.63g,8.08mmol)、BINAP(300mg,0.49mmol)および酢酸パラジウム(II)(70mg,0.32mmol)を、無水1,4−ジオキサン(35ml)において、保護ガス雰囲気下、90℃で24時間撹拌した。その後、酢酸エチルを反応混合物に添加し、それを水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥した。小容量への濃縮後に、残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル、ジクロロメタン/ジエチルエーテル=50:1]によって精製した。淡い褐色の固体。収量:250mg(理論値の18%)。
LC−MS(方法3):R=0.78min,m/z:[M+H]=438.1/440.1
【0157】
17d)2−(4−(2−(4−ブロモフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
手順17c)からの生成物(240mg,0.548mmol)および水酸化リチウム(26mg,1.096mmol)を、THF/水混合物(2:1,1.8ml)中、室温で24時間撹拌した。その後、混合物を5mlの水で希釈し、1M塩酸でpH1〜2に調節し、ジクロロメタン/THF(4:1)で抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム溶液で乾燥し、ろ過し、小容量に濃縮した。そのようにして得られたベージュの固体から、真空下で、溶媒の残りを除去した。収量:220mg(理論値の95%)。
LC−MS(方法3):R=0.64min,m/z:[M+H]=424.1/426.1
【0158】
例18:2−(4−(2−(3−ブロモフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.18)
例17と類似の方法で製造した。固体生成物。
LC−MS(方法3):R=0.66min,m/z:[M+H]=424,1/426,1
【0159】
例19:2−(4−(2−(ベンゾフラン−5−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸(化合物no.2−1)
19a)2−(4−(2−(ベンゾフラン−5−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル
例1c)と類似の方法で、2−(4−(2−クロロ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸tert−ブチルエステル(250mg,0,695mmol)およびベンゾフラン−5−イルボロン酸(168mg,1,043mmol)から製造した。収量:200mg(理論値の65%)。
LC−MS(方法3):R=0.79min,m/z:[M+H]=442.2
【0160】
19b)2−(4−(2−(ベンゾフラン−5−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イルアミノ)フェニル)酢酸
手順19a)により得られた生成物(200mg,0,453mmol)をギ酸(1,4ml;98〜100%)で処理し、室温で3日間撹拌した。ギ酸を真空下で除去した。メタノール(3ml)およびジエチルエーテル(3ml)を残物に添加すると、析出が生じた。析出物を分離し、ジエチルエーテルで洗浄し、超高真空下で乾燥した。白色固体。収量:93mg(理論値の53%)。
LC−MS(方法3):R=0.52min,m/z:[M+H]=386.2
【0161】
例20:4−(2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イルアミノ)安息香酸(化合物no.19)
20a)4−(2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イルアミノ)安息香酸メチルエステル
例10a)と類似の方法で、4−クロロ−2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン(81mg,0,29mmol)および4−アミノ安息香酸メチルエステル(46mg,0,30mmol)から製造した。無色固体。収量:65mg(理論値の62%)。
LC−MS(方法1):R=2.62min,m/z:[M+H]=394.2/396,2,[M−H]=392.1/394.1
【0162】
20b)4−(2−(3−クロロフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イルアミノ)安息香酸
手順20a)により得られた生成物を、例10b)と類似の方法で反応させた。この手順から逸れて、標的化合物を沈澱により塩酸塩として精製した。収量:58mg(理論値の82%、塩酸塩)。
【0163】
LC−MS(方法1):R=2,04min,m/z:[M+H]=380.2/382.2,[M−H]−−=378.1/380.2
【0164】
【表7】
【0165】
生物学的活性
A.本発明化合物の生物学的活性:
1.hPDE4B1の活性を決定するための、cAMP HTRF(登録商標)アッセイを用いたPDE4B IC50値の決定
ヒトPDE4B1の酵素活性における前記化合物の阻害効果を、3’,5’−アデノシン一リン酸(cAMP)から形成される5’−AMPの定量によって測定する。Sf9細胞中で発現するヒト組換え酵素、およびHTRF(ホモジニアス時間分解蛍光)検出法を、上記アッセイで用いる。
【0166】
試験化合物または水(コントロール)を、ヒト組換えPDE4B1酵素(4.8U)と、44.4mM tris−HCl、5.28mM MgCl2、2.64mM DTTおよび0.044% Tween20(pH7.8)からなるバッファーにおいて混合する。cAMP酵素基質(最終濃度40nM)を添加後に、混合物を室温で30分間インキュベートする。その後、蛍光アクセプター(cAMPと結合したDye2)、蛍光ドナー(ユーロピウムクリプテートと結合した抗cAMP抗体)および非特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン;最終濃度1mM)を添加する。60分後、残ったcAMPの量と相関する蛍光転移を、マイクロプレートリーダー(Rubystar、BMG)を用いてλex=337nm、λem=620nmおよびλεm=665nmで測定する。酵素活性を、665nmにおける測定シグナルおよび620nmにおける測定シグナルから形成される商から計算する。結果を、コントロール(PDE4阻害剤なし)の酵素活性の阻害パーセントとして表す (文献:N. Saldou et al., Comparison of recombinant human PDE4 isoforms: interaction with substrate and inhibitors, Cell. Signal. Vol. 10, No. 6, 427−440, 1998)。ベースとなるコントロールの測定に関しては、酵素を除く。平均の結果を表5に示す。
【0167】
2.hPDE4D2の活性を決定するための、cAMP HTRF(登録商標)アッセイを用いたPDE4D IC50値の決定
試験化合物または水を、ヒト組換えPDE4D2酵素(0.75U)と、1.5 mM MgClおよび1%BSA(ウシ血清アルブミン)を追加的に添加したHBSSバッファー(Invitrogen)において混合する。更なる手順および評価を、PDE4BのcAMP HTRF(登録商標)アッセイの上記記載と全く同じように実施する。
【0168】
【表8】
【0169】
2.PDE4DおよびPDE4Bに関するIC50値の商からの、選択性の決定
【0170】
【数1】
PDE4Dに関するIC50値を上記のように決定した。
【0171】
表5に挙げたIC50 PDE4B値と上記方法によって決定したPDE4D IC50値を、商を計算するために使用した。
【0172】
以下の化合物に関して、10を超える商が算出された:2、5、7、8、10、14および17。
【0173】
以下の化合物に関して、50を超える商が算出された:3および4。
【0174】
B.比較実験
Kenji等(2009)(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19 (2009) p.3174−3176における)からの化合物no.28 (以後、化合物no.S1と呼ぶ)および化合物no.1(以後、化合物no.S2と呼ぶ)を再合成し、cAMP HTRF(登録商標)アッセイにおいて試験した。
【0175】
【化18】
以下の結果が得られた:
【0176】
【表9】