【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
本発明は、イオンの生成を、不連続の大気インターフェースの周期と同期させることが、イオン生成が連続的で、不連続の大気圧インターフェースの周期と独立して動作する、従前のシステムと比較して、感度が改善され、溶媒使用量が低減され、霧化ガス使用量が低減され、サンプリング効率が改善されたシステムを提供することと認識する。このように、本発明のシステムは、より高感度で、より高効率な質量分析計を提供する。特に、本発明のシステムは、研究所の外での使用および、試料の現場、例えば、犯罪現場、食品加工施設または空港での検問所での使用に十分に適合する。
【0009】
ある態様において、本発明は、試料イオンを生成する質量分析プローブ、不連続の大気インターフェースおよび質量アナライザを含む、試料を分析するためのシステムを提供し、ここで、前記システムは、イオンの形成が前記不連続の大気インターフェースの周期と同期させるように構成される。ある実施形態において、前記プローブは、スプレー放射体および高電圧源を含み、前記プローブは、前記高電圧源が、前記スプレー放射体により放出されたスプレーと接触しないように構成される。ある実施形態において、前記イオンは、誘導電荷により生成される。
【0010】
他の態様において、本発明は、質量分析プローブを使用して、試料中の検体のイオンを生成する工程、前記イオンを不連続的に質量アナライザに導入する工程、および、前記イオンを分析する工程を含む、試料を分析するための方法を提供し、ここで、前記生成工程は、前記質量アナライザへの前記イオンの導入工程と同期される。不連続の大気圧インターフェースおよび、イオンを不連続的に質量アナライザに導入する方法は、米国特許出願特願12/622,776に記載されており、その内容全体は、参照により本願明細書に援用される。
【0011】
前記質量分析プローブは、当該分野において公知の任意のプローブであり得る。ある実施形態において、前記プローブは、大気圧直接イオン化技術により動作する。大気圧直接イオン化/サンプリング法を利用する典型的な質量分析法としては、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI;Takatsら、Science,306:471−473,2004、および、米国特許第7,335,897);リアルタイムにおける直接分析(DART;Codyら、Anal.Chem.,77:2297−2302,2005)、大気圧誘電体バリア放電イオン化(DBDI;Kogelschatz,Plasma
Chemistry and Plasma Processing,23:1−46,2003、および、PCT国際公開番号WO2009/102766)、ならびに、エレクトロスプレー支援レーザー脱離/イオン化(ELDI;Shiea et al.,J.Rapid Communications in Mass Spectrometry,19:3701−3704,2005)が挙げられる。これらの参考文献それぞれの内容全体は、参照により本願明細書に援用される。特定の実施形態において、前記大気圧直接イオン化技術は、脱離エレクトロスプレーイオン化である。
【0012】
他の実施形態において、前記プローブは、エレクトロスプレーイオン化により動作する。他の実施形態において、前記プローブは、紙スプレープローブである(国際特許出願番号PCT/US10/32881)。他の実施形態において、前記プローブは、低温プラズマプローブである。このようなプローブは、米国特許出願特願12/863,801に記載されており、その内容全体は、参照により本願明細書に援用される。
【0013】
他の実施形態において、前記システムは、さらに、霧化ガス供給源を含む。ある実施形態において、前記霧化ガス供給源は、ガスのパルスを供給するように構成される。一般的に、前記ガスパルスはまた、イオン形成および前記不連続の大気インターフェースの周期と同期される。
【0014】
ある実施形態において、イオンを不連続的に質量アナライザに導入する工程は、大気圧インターフェースに連結された弁を開ける工程(ここで、弁を開けることにより、実質的に大気圧におけるイオンを、減圧下の質量アナライザに移動させる)、および大気圧インターフェースに連結された弁を閉じる工程(ここで、を閉じることにより、実質的に大気圧におけるイオンの減圧下の質量アナライザへの更なる移動を防止する)を含む。
【0015】
前記質量アナライザは、質量分析計またはハンドヘルドの質量分析計用でもよい。典型的な質量アナライザとしては、四重極イオントラップ、直線型イオントラップ、円筒型イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴トラップまたはオルビトラップ(orbitrap)が挙げられる。
【0016】
本発明の他の態様は、試料を、装置を通して流す工程、前記流れる試料と接触しない供給源から電圧をパルスして、前記流れる試料と誘導的に相互作用し、これにより、試料イオンを生成する工程を含む、試料イオンを形成する方法を提供する。ある実施形態において、前記装置は、大気圧直接イオン化技術、例えば、脱離エレクトロスプレーイオン化により動作するプローブである。他の実施形態において、前記プローブは、エレクトロスプレーイオン化により動作する。他の実施形態において、前記プローブは、紙スプレープローブである。他の実施形態において、前記プローブは、低温プラズマプローブである。
【0017】
本発明の他の態様は、質量分析プローブから試料スプレーを生成する工程、前記試料スプレーと接触しない供給源から電圧をパルスして、前記試料スプレーと誘導的に相互作用し、これにより、試料イオンを生じさせる工程、および、前記電圧のパルスを、不連続の大気インターフェースの周期と同期させる工程を含む、質量分析プローブからの試料イオン生成を不連続の大気インターフェースの周期と同期させるための方法を提供する。本発明の方法は、さらに、霧化ガスをパルスして、試料と相互作用させる工程を含む。前記工程において、前記ガスパルスはまた、イオン形成および前記不連続の大気インターフェースの周期と同期される。
【0018】
発明の他の態様は、物理的な接触をすることなく、エレクトロスプレー/ナノエレクトロスプレー/紙スプレーのチップ上に高電圧を印加するための方法を提供する。前記誘導された高電圧により、エレクトロスプレー/ナノエレクトロスプレー/紙スプレー中の液滴を破裂させ(国際特許出願番号PCT/US10/32881)、スプレーの周波数は、印可された電位の周波数である。本発明の方法は、低温プラズマプローブと共に使用されてもよい。このようなプローブは、米国特許出願特願12/863,801に記載されており、その内容全体は、参照により本願明細書に援用される。
【0019】
本発明の他の態様は、試料スプレーにパルス状の電圧を前記スプレーと接触しない電極から印加して、前記スプレーにおいて陽イオンおよび陰イオンの両方を生じさせる工程を含む、試料スプレーにおいて陽イオンおよび陰イオンの両方を生じさせる方法を提供する。前記方法は、さらに、前記陽イオンおよび前記陰イオンのマススペクトルを記録する工程を含んでもよい。記録工程は、質量分析計が前記試料を受けている間に、前記質量分析計の極性を切り替える工程を含んでもよい。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
試料を分析するためのシステムであって、
試料イオンを生成する質量分析プローブ;
不連続の大気インターフェース:および、
質量アナライザ
を含み、
前記システムは、イオン形成が前記不連続の大気インターフェースの周期と同期されるように構成される、
システム。
(項目2)
前記プローブが、スプレー放射体および高電圧源を含み、
前記プローブは、前記高電圧源が、前記スプレー放射体により放出されたスプレーと接触しないように構成される、項目1記載のシステム。
(項目3)
イオンが、誘導電荷により生成される、項目2記載のシステム。
(項目4)
前記プローブが、大気圧直接イオン化技術により動作する、項目1記載のシステム。
(項目5)
前記大気圧直接イオン化技術が、脱離エレクトロスプレーイオン化である、項目4記載のシステム。
(項目6)
前記プローブが、エレクトロスプレーイオン化により動作する、項目1記載のシステム。(項目7)
前記プローブが、ナノエレクトロスプレーイオン化により動作する、項目1記載のシステム。
(項目8)
前記プローブが、低温プラズマプローブである、項目1記載のシステム。
(項目9)
前記プローブが、紙スプレープローブである、項目1記載のシステム。
(項目10)
前記質量アナライザが、質量分析計またはハンドヘルドの質量分析計用である、項目1記載のシステム。
(項目11)
前記質量アナライザが、四重極イオントラップ、直線型イオントラップ、円筒型イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴トラップおよびオルビトラップからなる群から選択される、項目10記載のシステム。
(項目12)
さらに、霧化ガス供給源を含む、項目1記載のシステム。
(項目13)
前記霧化ガス供給源が、ガスのパルスを供給するように構成される、項目12記載のシステム。
(項目14)
前記ガスパルスがまた、イオン形成および前記不連続の大気インターフェースの周期と同期される、項目13記載のシステム。
(項目15)
試料を分析するための方法であって、
質量分析プローブを使用して、試料中の検体のイオンを生成する工程;
前記イオンを不連続的に質量アナライザに導入する工程;および、
前記イオンを分析する工程を含み、
前記生成工程が、前記アナライザへの前記イオンの導入工程と同期される、
方法。
(項目16)
誘導電荷を使用して、イオンを生成する、項目15記載の方法。
(項目17)
前記プローブが、大気圧直接イオン化技術により動作する、項目15記載の方法。
(項目18)
前記大気圧直接イオン化技術が、脱離エレクトロスプレーイオン化である、項目17記載の方法。
(項目19)
前記プローブが、エレクトロスプレーイオン化により動作する、項目15記載の方法。
(項目20)
前記プローブが、ナノエレクトロスプレーイオン化により動作する、項目15記載の方法。
(項目21)
前記プローブが、低温プラズマプローブである、項目15記載の方法。
(項目22)
前記プローブが、紙スプレープローブである、項目15記載の方法。
(項目23)
前記不連続的に導入する工程が、
大気圧インターフェースに連結された弁を開ける工程であって、ここで、前記弁を開けることにより、実質的に大気圧におけるイオンを、減圧下の前記質量アナライザに移動させる工程;および、
大気圧インターフェースに連結された前記弁を閉じる工程であって、ここで、前記弁を閉じることにより、実質的に大気圧における前記イオンの、減圧下の前記質量アナライザへの更なる移動を防止する工程
を含む、項目15記載の方法。
(項目24)
分析工程が、質量アナライザを提供して、前記試料中の検体のマススペクトルを生成する工程を含む、項目15記載の方法。
(項目25)
前記質量アナライザが、四重極イオントラップ、直線型イオントラップ、円筒型イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴トラップおよびオルビトラップからなる群から選択される、項目23記載の方法。
(項目26)
試料イオンを形成する方法であって、
試料を、装置を通して流す工程;
前記流れる試料と接触しない供給源から電圧をパルスして、前記流れる試料と誘導的に相互作用させ、これにより、試料イオンを生じさせる工程
を含む、方法。
(項目27)
前記装置が、質量分析プローブである、項目26記載の方法。
(項目28)
前記プローブが、大気圧直接イオン化技術により動作する、項目27記載の方法。
(項目29)
前記大気圧直接イオン化技術が、脱離エレクトロスプレーイオン化である、項目28記載の方法。
(項目30)
前記プローブが、エレクトロスプレーイオン化により動作する、項目27記載の方法。
(項目31)
前記プローブが、ナノエレクトロスプレーイオン化により動作する、項目27記載の方法。
(項目32)
前記プローブが、低温プラズマプローブである、項目27記載の方法。
(項目33)
前記プローブが、紙スプレープローブである、項目27記載の方法。
(項目34)
質量分析プローブからの試料イオン生成を不連続の大気インターフェースと同期させるための方法であって、
質量分析プローブから試料スプレーを生成する工程;
前記試料スプレーと接触しない供給源から電圧をパルスして、前記試料スプレーと誘導的に相互作用させ、これにより、試料イオンを生じさせる工程;および、
前記電圧のパルスを、前記不連続の大気インターフェースの周期と同期させる工程
を含む、方法。
(項目35)
さらに、霧化ガスをパルスして、前記試料と相互作用する工程を含み、ここで、前記ガスパルスがまた、イオン形成および前記不連続の大気インターフェースの周期と同期される、項目34記載の方法。
(項目36)
前記プローブが、大気圧直接イオン化技術により動作する、項目34記載の方法。
(項目37)
前記大気圧直接イオン化技術が、脱離エレクトロスプレーイオン化である、項目36記載の方法。
(項目38)
前記プローブが、エレクトロスプレーイオン化により動作する、項目34記載の方法。
(項目39)
前記プローブが、ナノエレクトロスプレーイオン化により動作する、項目34記載の方法。
(項目40)
前記プローブが、低温プラズマプローブである、項目34記載の方法。
(項目41)
前記プローブが、紙スプレープローブである、項目34記載の方法。
(項目42)
試料スプレーにおいて陽イオンおよび陰イオンの両方を生じさせる方法であって、
前記スプレーと接触しない電極から、試料スプレーにパルス状の電圧を印加して、前記スプレーにおいて陽イオンおよび陰イオンの両方を生じさせる工程を含む、
方法。
(項目43)
さらに、前記陽イオンおよび前記陰イオンのマススペクトルを記録する工程を含む、項目42記載の方法。
(項目44)
記録工程は、質量分析計が前記試料を受けている間に、前記質量分析計の極性を切り替える工程を含む、項目42記載の方法。