(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。
本発明は、例えば半導体製造装置で用いられる基板処理方法に関するものである。特に反応性ガスを、ICP方式によりプラズマ状態とさせ、それによって得られた高い反応性を有する反応種(反応性活性種)によって基板表面の所定の有機薄膜(レジスト、レジスト膜)を剥離するドライアッシング工程に関するものである。
【0010】
本発明の好ましい実施例においては、半導体製造装置、基板処理装置として用いられるアッシング装置により、半導体装置の製造方法、及び基板処理方法が実現される。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係るアッシング装置を説明するための概略横断面図であり、
図2は、本発明の好ましい実施形態に係るアッシング装置を説明するための概略縦断面図である。
図1、
図2に示されるように、アッシング装置10は、EFEM(Equipment Front End Module)100と、ロードロックチャンバ部200と、トランスファーモジュール部300と、アッシング処理がなされる処理室として用いられるプロセスチャンバ部400とを備えている。
【0011】
EFEM100は、FOUP(Front Opening Unified Pod)110、120及びそれぞれのFOUPからロードロックチャンバへウエハを搬送する第1の搬送部である大気ロボット130を備える。
FOUPには25枚のウエハが搭載され、大気ロボット130のアーム部がFOUPから5枚ずつウエハを抜き出す。
【0012】
ロードロックチャンバ部200は、ロードロックチャンバ250、260と、FOUPから搬送されたウエハ600をロードロックチャンバ250、260内でそれぞれ保持するバッファユニット210、220を備えている。バッファユニット210、220は、ボート211、221とその下部のインデックスアセンブリ212、222とを備えている。ボート211と、その下部のインデックスアセンブリ212は、θ軸214により同時に回転する。同様に、ボート221と、その下部のインデックスアセンブリ222は、θ軸224により同時に回転する。
【0013】
トランスファーモジュール部300は、搬送室として用いられるトランスファーモジュール310を備えており、先述のロードロックチャンバ250、260は、ゲートバルブ311、312を介して、トランスファーモジュール310に取り付けられている。トランスファーモジュール310には、第2の搬送部として用いられる真空アームロボットユニット320が設けられている。
【0014】
プロセスチャンバ部400は、処理室として用いられるプラズマ処理ユニット410、420と、その上部に設けられたプラズマ発生室430、440とを備えている。プラズマ処理ユニット410、420は、ゲートバルブ313、314を介してトランスファーモジュール310に取り付けられている。
【0015】
プラズマ処理ユニット410、420は、ウエハ600を載置するサセプタテーブル411、421を備えている。サセプタテーブル411、421をそれぞれ貫通してリフターピン413、423が設けられている。リフターピン413、423は、Z軸412、422の方向に、それぞれ上下する。
【0016】
プラズマ発生室430、440は、反応容器431、441をそれぞれ備えている。
反応容器431、441の外部には、後述する共振コイルが設けられている。共振コイルに高周波電力を印加して、後述するガス導入口から導入されたアッシング処理用の反応ガスをプラズマ状態とする。そのプラズマを利用してサセプタテーブル411,421上に載置されたウエハ600上のレジストをアッシング(プラズマ処理)する。
【0017】
更に、各構成に電気的に接続されるコントローラ500を有する。コントローラ500は各構成の動作を制御する。
【0018】
以上のように構成されたアッシング装置10においては、FOUP110、120からロードロックチャンバ250、260へとそれぞれウエハ600が搬送される。この際、まず、
図2に示されるように、大気ロボット130が、FOUPのポッドにツィーザを格納し、5枚のウエハをツィーザ上へ載置する。このとき、取り出すウエハの高さ方向の位置に合わせて、大気ロボットのツィーザ及びアームを上下させる。
ウエハをツィーザへ載置した後、大気搬送ロボット130がθ軸131方向に回転し、バッファユニット210、220のボート211、221にそれぞれウエハを搭載する。このとき、ボート211、221のZ軸230方向の動作により、ボート211、221は、大気搬送ロボット130から25枚のウエハ600をそれぞれ受け取る。25枚のウエハを受け取った後、ボート211、221の最下層にあるウエハがトランスファーモジュール部300の高さ位置に合うよう、ボート211、221をZ軸230方向にそれぞれ動作させる。
【0019】
ロードロックチャンバ250、260においては、ロードロックチャンバ250、260内にバッファユニット210、220によって、それぞれ保持されているウエハ600を、真空アームロボットユニット320のフィンガー321に搭載する。θ軸325方向で真空アームロボットユニット320を回転し、さらにY軸326方向にフィンガーを延伸し、プラズマ処理ユニット410、420内のサセプタテーブル411、421上にそれぞれ移載する。
【0020】
ここで、ウエハ600を、フィンガー321からサセプタテーブル411、421へ移載する際のアッシング装置10の動作を説明する。
【0021】
真空アームロボットユニット320のフィンガー321とリフターピン413、423との協働により、ウエハ600を、サセプタテーブル411、421上にそれぞれ移載する。また、逆の動作により、処理が終了したウエハ600をサセプタテーブル411、421から、真空アームロボットユニット320によって、ロードロックチャンバ250、260内のバッファユニット210、220にウエハ600をそれぞれ移載する。
【0022】
図3はプラズマ処理ユニット410の詳細を示した図である。尚、先述のプラズマ処理ユニット420は、プラズマ処理ユニット410と同じ構成である。また、プラズマ処理ユニット420が有する先述のサセプタテーブル421は、サセプタテーブル411と同じ構成である。
【0023】
プラズマ処理ユニット410は、半導体基板や半導体素子に乾式処理でアッシングを施すICP方式のプラズマ処理ユニットである。プラズマ処理ユニット410は、
図3に示すように、プラズマを生成するためのプラズマ発生室430、半導体基板などのウエハ600を収容する処理室445、プラズマ発生室430(特に共振コイル432)に高周波電力を供給する高周波電源444、及び高周波電源444の発振周波数を制御する周波数整合器446を備えている。例えば、架台としての水平なベースプレート448の上部に前記のプラズマ発生室430を配置し、ベースプレート448の下部に処理室445を配置して構成される。また、共振コイル432と外側シールド452とで、螺旋共振器が構成される。
【0024】
プラズマ発生室430は、減圧可能に構成され且つプラズマ用の反応ガスが供給され、反応容器431と、反応容器の外周に巻回された共振コイル432と、共振コイル432の外周に配置され且つ電気的に接地された外側シールド452とから構成される。
【0025】
反応容器431は、高純度の石英硝子やセラミックスにて筒状に形成された所謂チャンバである。反応容器431は、軸線が垂直になるように配置され、トッププレート454と、トッププレート454とは異なる方向に設けられた処理室445によって上下端が気密に封止される。
トッププレート454は反応容器431のフランジ431b、及び外側シールド452の上端に支持されている。
【0026】
トッププレート454は、反応容器431の一端を塞ぐ蓋部454aと、蓋部454aを支持する支持部454bを有する。蓋部454aは、先端部431aに接触する部分から経方向内側の面であり、支持部454bはフランジ431b及び外側シールド452に支持されている部分である。
蓋部454aのほぼ中央には、ガス導入口433が設けられている。
先端部431aの外周、フランジ431b、と支持部454bとの間にはOリング453が設けられ、プラズマ発生室430を気密にするよう構成している。
【0027】
反応容器431の下方の処理室445の底面には、複数(例えば4本)の支柱461によって支持されるサセプタ459が設けられている。サセプタ459には、サセプタテーブル411及びサセプタ上のウエハを加熱する基板加熱部としてのヒータ463が具備される。
サセプタ459の下方に、排気板465が配設される。排気板465は、ガイドシャフト467を介して底板469に支持され、底板469は処理室445の下面に気密に設けられる。昇降板471がガイドシャフト467をガイドとして昇降自在に動くように設けられる。昇降板471は、少なくとも3本のリフターピン413を支持している。
【0028】
図3に示されるように、リフターピン413は、サセプタ459のサセプタテーブル411を貫通する。そして、リフターピン413の頂には、ウエハ600を支持する支持部414が設けられている。支持部414は、サセプタ459の中心方向に延出している。リフターピン413の昇降によって、ウエハ600をサセプタテーブル411に載置し、あるいはサセプタテーブル411から持ち上げることができる。
底板469を経由して、昇降駆動部(図示略)の昇降シャフト473が昇降板471に連結されている。昇降駆動部が昇降シャフト473を昇降させることで、昇降板471とリフターピン413を介して、支持部414が昇降する。
尚、
図3においては、支持部414が取り付けられた状態のリフターピン413が図示されている。
【0029】
サセプタ459と排気板465の間に、バッフルリング458が設けられる。バッフルリング458、サセプタ459、排気板465で第一排気室474が形成される。円筒状のバッフルリング458は、通気孔が多数均一に設けられている。従って、第一排気室474は、処理室445の処理空間と仕切られる。また通気孔によって、処理空間と連通している。尚、処理空間とは、基板を処理する空間をいう。
【0030】
排気板465に、排気連通孔475が設けられる。排気連通孔475によって、第一排気室474と第二排気室476が連通される。第二排気室476には、排気管480が連通されており、排気管480には、上流から圧力調整バルブ479、排気ポンプ481が設けられている。ガス排気部は、排気管480、圧力調整バルブ479、排気ポンプ481から構成される。ガス排気部は、第二排気室476を介して処理室445に接続されている。
【0031】
反応容器431の上部のトッププレート454には、ガス供給ユニット482から伸長され且つ所要のプラズマ用の反応ガスを供給するためのガス供給管455が、ガス導入口433に付設されている。ガス導入口433は円錐状であり、処理室に近くなるほど直径が大きくなる。ガス供給ユニット482(ガス供給部)は、上流側から順に、ガス源483、流量制御部であるマスフローコントローラ477、開閉弁478を有している。ガス供給ユニット482は、マスフローコントローラ477及び開閉弁478を制御することで、ガスの供給量を制御する。
【0032】
また、マスフローコントローラ477及び圧力調整バルブ479によって供給量、排気量を調整することにより、処理室445の圧力が調整される。
【0033】
図4(a)には、本発明の好ましい実施形態に係るバッフル板460周辺が示されている。
図4(b)には、比較例に係るバッフル板460周辺が示されている。
【0034】
本発明の好ましい実施形態に係るバッフル板460は、
図4(a)に示されているように、例えば石英からなる第一のバッフル板460aと、第二のバッフル板460bから構成される。
第一のバッフル板460aは、反応容器431内であって、共振コイル432の上端とガス導入口433の間に設けられている。また、第二のバッフル板460bは、第一のバッフル板460aと共振コイル432の上端の間に設けられている。すなわち、第一のバッフル板460aと第二のバッフル板460bは、共振コイル432の上端とガス導入口433の間に空間を介して重ねるように設けられている。また、第一のバッフル板460aと第二のバッフル板460bはサセプタテーブル411とガス導入口433の間に設けられている。
【0035】
また、第一のバッフル板460aと、第二のバッフル板460bは、略同一形状であって、孔の無い板形状である。また、反応容器431の内周に沿った形状としている。即ち、反応容器431の内周が円状であればそれぞれのバッフル板の端部も円状としている。言い換えれば、反応容器431の内周に沿って、バッフル板を円盤状としている。
【0036】
このような構成とすることで、トッププレート454と第一のバッフル板460aの間を流れるガス流路と反応容器431の内周に沿って反応容器431とバッフル板の端部の間を流れるガス流路が形成される。ガス導入口433から供給されたガスは、各ガス流路を経由して供給されるため、反応容器431の中央に供給されたガスが集中しない。すなわち、ガスが第一のバッフル板460aと第二のバッフル板460bを介して供給されるので、
図4(a)の破線矢印で示されているように、ガスの流れができ、共振コイル432の上端付近(
図4(a)A−Aライン)でガスが略垂直に落ちることになる。よって、ガスのロスが無い。
【0037】
一方、比較例に係るバッフル板460は、
図4(b)に示されているように、一枚のバッフル板460で構成される。比較例に係るバッフル板460においては、
図4(b)破線矢印で示されているように、ガス導入口433からバッフル板460外周に向けて斜めにガス流路が形成され、共振コイル432上端付近(
図4(b)A−Aライン)でガスが拡散されてしまう。すなわち、電解強度の弱い領域にガスが拡散されてしまうので、弱いプラズマ生成につながってしまうことになる。
【0038】
ここで、ICP方式プラズマ生成装置の場合、共振コイル432に近いほどプラズマを生成するための電界が強いことが知られている。従って、電界の強い場所、即ち共振コイル432に近い場所にガスを集中させることで、プラズマの生成効率を高くすることができる。また、このような場所においては高いエネルギーがあり、且つ寿命の長いプラズマが生成される。
すなわち、少なくとも2枚のバッフル板460a、460bを設けることで、矢印のように、ガスを共振コイルに近い反応容器431の内壁に沿って流れるようにし、電界の強い場所、即ち共振コイル432に近い場所にガスを集中させることで、プラズマの生成効率を高くすることができる。また、このような場所においては高いエネルギーがあり、且つ寿命の長いプラズマが生成される。
【0039】
次に、バッフル板460a、460bの取付け構造について
図5を用いて説明する。
図5はバッフル板460a、460b及びトッププレート454を拡大した図であり、バッフル板460a、460bの取付け構造を説明する図である。
まず、
図5(a)を用いて固定機構について説明する。
トッププレート454に差し込まれたボルト491を、中央に穴の空いた第一のカラー492、第一のバッフル板460aに設けた固定用穴、中央に穴の空いた第二のカラー493、第二のバッフル板460bに設けた固定用穴に順次差込み、固定用ボルト494にて固定する。
第一のカラー492は金属製(例えばアルミ合金)であり、トッププレート454とカラー492をグランド設定となるように構成している。
固定機構は、バッフル板460の周方向に、少なくとも3箇所に均等に設ける。
【0040】
続いて、バッフル板460a、460b、トッププレート454、反応容器431との間の位置関係について、
図5(b)を用いて説明する。
図5(b)に記載のように、トッププレート454の蓋部454aと、第一のバッフル板460aの内、蓋部454aと向かい合う面との距離をGAP(a)とする。GAP(a)は1mmから5mm、より望ましくは2mmから4mmとなるよう設定する。
第一のバッフル板460aと第二のバッフル板460bと対向する面の距離を、GAP(b)とする。GAP(b)は30mmから50mmとする。
バッフル板460の直径と反応容器の間の距離は0.1から10mmとし、具体的には、バッフル板を基板の直径より小さい269mmとし、反応容器431の内周を275mmとしている。
【0041】
第一のバッフル板460aとガス導入口433の距離は、第一のバッフル板460aと蓋部454aとの間に異常放電が起きない程度の距離とし、特にガス導入口433付近に異常放電が起きない程度の距離としている。
【0042】
ここで言う異常放電とは、例えば次のような現象をいう。
放電が容易となるArガスを処理ガスに添加した場合、共振コイル432から発生する電界の影響を受け、第一のバッフル板460aと蓋部454aとの間に放電が起きてしまう。特に、ガス導入孔433付近は、処理ガスが留まりやすい領域であるため、放電が起こりやすい。
この放電の原因は、Arガスを添加したことによるものと推測される。Arガスは放電を容易とする性質であるため、共振コイル432から発生する電界が弱電界の距離であっても、処理ガスが放電してしまうと考えられる。
【0043】
放電した場合、次の問題が起きることが考えられる。
一つは、ガス導入口433近辺で発生するプラズマがガス供給管455に入り込むため、ガス供給管455をエッチングしてしまう点である。エッチングすることにより、パーティクルが発生する可能性がある。特にガス供給管455を金属で形成した場合、処理室445が金属汚染され、基板処理に悪影響を及ぼすことが考えられる。
二つ目として、第一のバッフル板460aと蓋部454aとの間に発生したプラズマがOリング431aに接触し、Oリング431aの劣化を促進させる恐れがある。
【0044】
上記放電を抑制するために、発明者等は鋭意研究の結果、処理ガスの流速を上げることで放電を抑制することを見出した。
具体的には、第一のバッフル板460aと蓋部454aとの間の距離を狭小化している。このような構造とすることで、第一のバッフル板460aと蓋部454aとの間の圧力を高めることができ、その結果ガスの流速を早くすることができる。
【0045】
続いて、第二のバッフル板460bと共振コイル432との位置関係について説明する。第二のバッフル板460bは、第二のバッフル板460bの内、サセプタテーブル411と向かい合う面が、共振コイル432の上端(A−Aライン)より上の高さに位置するようにする。言い換えれば共振コイル432の上端と第一のバッフル板460aとの間に位置するよう構成される。
このような構成とすることで、ガスが共振コイル432の近傍を流れるため、効率の良いプラズマ生成が可能となる。
更には、プラズマの拡散、失活を防止し活性反応種を下流のウエハにできるだけ多く供給することが可能となる。第二のバッフル板460bを共振コイル432の上端に近づけることで、プラズマ発生領域の体積を小さくすることが可能となり、単位体積当りのプラズマ密度を増加させることができる。従って、活性反応種を出来るだけ多く下流に運ぶことを可能にする。
以上のように、バッフル構造が構成される。
【0046】
ここで、ガスの流速にについて
図6を用いて説明する。
図6は流速分布図である。
図6(a)は比較例に係るバッフル板460を用いた例であって、バッフル板を一枚で設定した場合である。(b)は本実施形態に係るバッフル板460を用いた例であって、バッフル板を460a、460bの二枚で設定した場合である。
比較例のバッフル板460を一枚で用いた例においては、ガス導入口433付近で流速が低く、バッフル板460と蓋部454aの間で流速が高いことがわかる。更には、渦巻状にガスが滞留していることがわかる。このことから、バッフル板460と蓋部454aの間でガスが異常放電することが推測される。
一方、本実施形態に係るバッフル板460を二枚で用いた例においては、第一のバッフル板460aと蓋部454aの間にガスが滞留しないので放電を抑制できることがわかる。
【0047】
図7にRF電力とバッフル板460、放電の関係を示した図を示す。
縦軸は共振コイル432に印加するRF電力である。バッフル板460が無い状態、バッフル板460が一枚の状態、バッフル板460が2枚の状態でそれぞれ正常放電限界電力を計測した。正常放電限界電力とは、異常放電が発生しない電力である。
このときのプロセス条件は、次の通りである。
雰囲気:PR−GAS(CH4:10%、Ar:90%)
流量:0.2〜3.0slm
圧力:50〜250mTorr
【0048】
この図からもわかるように、バッフル板460が無い状態では、1000Wまでは正常放電が可能である。また、バッフル板460が1枚の状態では、3000Wまでは正常放電が可能である。また、バッフル板460が2枚の状態では、4900Wまでは正常放電が可能である。
【0049】
ICP方式プラズマ生成装置の場合、RF電力が高いほど効率よくプラズマ状態とすることができるため、異常放電が発生しない範囲で、且つRF電力が高い状態が望ましい。従って、バッフル板が無い状態やバッフル板が1枚の状態より、バッフル板が2枚の状態が望ましい。
【0050】
共振コイル432は、所定の波長の定在波を形成するため、一定波長モードで共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、共振コイル432の電気的長さは、高周波電源444から供給される電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)又は半波長もしくは1/4波長に相当する長さに設定される。例えば、1波長の長さは、13.56MHzの場合、約22メートル、27.12MHzの場合、約11メートル、54.24MHzの場合、約5.5メートルになる。
共振コイル432は、絶縁性材料にて平板状に形成され且つベースプレート448の上端面に鉛直に立設された複数のサポートによって支持される。
【0051】
共振コイル432の両端は電気的に接地されるが、共振コイル432の少なくとも一端は、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に当該共振コイルの電気的長さを微調整するため、可動タップ462を介して接地される。
図3中の符号464は他方の固定グランドを示す。さらに、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に共振コイル432のインピーダンスを微調整するため、共振コイル432の接地された両端の間には、可動タップ466によって給電部が構成される。
【0052】
すなわち、共振コイル432は、電気的に接地されたグランド部を両端に備え且つ高周波電源444から電力供給される給電部を各グランド部の間に備え、しかも、少なくとも一方のグランド部は、位置調整可能な可変式グランド部とされ、そして、給電部は、位置調整可能な可変式給電部とされる。共振コイル432が可変式グランド部及び可変式給電部を備えている場合には、後述するように、プラズマ発生室430の共振周波数及び負荷インピーダンスを調整するにあたり、より一層簡便に調整することができる。
【0053】
外側シールド452は、共振コイル432の外側への電磁波の漏れを遮蔽するとともに、共振回路を構成するのに必要な容量成分を共振コイル432との間に形成するために設けられる。外側シールド452は、一般的には、アルミニウム合金、銅又は銅合金などの導電性材料を使用して円筒状に形成される。外側シールド452は、共振コイル432の外周から、例えば5〜150mm程度隔てて配置される。
【0054】
高周波電源444の出力側にはRFセンサ468が設置され、進行波、反射波等をモニタしている。RFセンサ468によってモニタされた反射波電力は、周波数整合器446に入力される。周波数整合器446は、反射波が最小となるよう周波数を制御する。
【0055】
コントローラ470は、
図1におけるコントローラ500に相当するものであり、単に高周波電源444のみを制御するものではなく、アッシング装置10全体の制御を行っている。コントローラ470には、表示部であるディスプレイ472が接続されている。ディスプレイ472は、例えば、RFセンサ468による反射波のモニタ結果等、アッシング装置10に設けられた各種検出部で検出されたデータ等を表示する。
【0056】
例えば、アッシング工程時やアッシング工程前のプラズマ生成時におけるプラズマ処理中に処理条件を変動した場合(ガス種を増やす等)など、ガス流量やガス混合比、圧力が変化する場合があり、高周波電源444の負荷インピーダンスが変動してしまう場合がある。このような場合でも、アッシング装置10は周波数整合器446を有するため、ガス流量やガス混合比、圧力の変化にすぐに追従して高周波電源444の発信周波数を整合することができる。
【0057】
具体的には次の動作が行われる。
プラズマ生成時、共振コイル432の共振周波数に収束される。このとき、RFセンサ468が共振コイル432からの反射波をモニタし、モニタされた反射波のレベルを周波数整合器446に送信する。周波数整合器446は、反射波電力がその反射波が最小となるよう、高周波電源444の発信周波数を調整する。
【0058】
続いて、本発明の基板処理方法(フォトレジスト除去方法)を一工程として採用する半導体製造方法について、
図8を用いて説明する。
図8には、本発明の基板処理方法を採用し、アッシング装置10等を用いて半導体装置(半導体デバイス)を製造する工程が説明されている。
【0059】
図8には、アッシング装置10を用いて基板(ウエハ600)を処理する工程であって、本発明の実施形態に係る基板処理方法が示されている。
本発明に係る基板の処理方法においては、
図8に示されるように、基板を処理室に搬入する工程である搬入工程S100と、基板を加熱する工程である加熱工程S200と、反応ガスを供給し、基板を処理する工程である処理工程S300と、基板を処理室から搬出する搬出工程S400と、を少なくとも含む一連の工程を経て基板が処理される。
【0060】
搬入工程S100では、レジストの塗布されたウエハ600が処理室445に搬入される。加熱工程S200では、搬入工程S100で処理室445内に搬入されたウエハ600が加熱される。処理工程S300では、処理室445内に少なくとも水素成分とアルゴン成分とを含む反応ガスが供給される。例えば、PR-GAS(CH4とアルゴンの混合ガス)が供給される。
更に、処理室に供給された反応ガスをプラズマ状態としてウエハ600が処理される。搬出工程S400では、処理されたウエハ600が、処理室445から搬出される。
【0061】
以下、アッシング装置10を用いての基板処理の一例について、より具体的に説明する。
アッシング装置10の各部の動作は、コントローラ470によって制御される。
【0062】
<搬入工程S100>
搬入工程S100では、真空アームロボット320のフィンガー321が、処理室445へウエハ600を搬送する。すなわち、ウエハ600を搭載したフィンガー321が、処理室445に進入し、フィンガー321が、上昇されたリフターピン413にウエハ600を載置する。リフターピン413の先端は、サセプタテーブル411から浮いた状態で維持される。ウエハ600は、リフターピン413上に、つまりサセプタテーブル411から浮いた状態で受け渡される。この際、ウエハ600は、例えば室温に保持されている。
【0063】
〔加熱工程S200〕
加熱工程S200では、ウエハ600はサセプタテーブル411から浮いた状態で保持されており、サセプタテーブル411のヒータ463により加熱される。ウエハ温度は、サセプタテーブル411とウエハ600との間の距離で制御されている。
この加熱工程S200においては、ウエハ600の温度を200℃以上400℃以下とする。
【0064】
〔処理工程S300〕
反応ガスを供給する処理工程S300では、ガス導入口433へ反応容器431から反応ガス(アッシングガス)が、プラズマ発生室430に供給される。供給される反応ガスは、少なくとも水素成分とアルゴン成分とを含む反応ガスが供給される。
【0065】
処理室445が所定の条件となった後、供給された反応ガスが、共振コイル432によってプラズマ状態とされる。すなわち、反応ガスを供給する工程において反応ガスが供給された後、高周波電源444が、共振コイル432に電力を供給し、共振コイル432内部に励起される誘導磁界によって自由電子を加速し、ガス分子と衝突させることでガス分子を励起してプラズマを生成する。そして、このプラズマ状態とされた反応ガスにより、基板処理が行われ、レジストが除去される。
【0066】
本実施形態では、処理工程S300で用いられる反応ガスとして、少なくとも水素成分とアルゴン成分とを含む反応ガスが供給される。ここではArガスを用いているが、より具体的には、水素にN2ガス、Heガスからなる群から選択された少なくとも1つのガスからなる希釈ガスが添加されてなるガスを用いることができる。
【0067】
〔搬出工程S400〕
搬出工程S400においては、アッシング処理工程の終了後、リフターピン413が上昇する。真空アームロボット320のフィンガー321がリフターピン413上の処理済ウエハ600を掬い上げ、トランスファーチャンバ部310を経由して、ロードロックチャンバ部210、もしくはロードロックチャンバ220に搬送する。
【0068】
本実施形態ではアッシング処理を例に説明したが、それに限るものではなく、エッチング処理、膜の改質処理や成膜処理など、プラズマを用いた処理で実施可能である。
【0069】
また、本実施形態ではバッフル板を2枚用いる例を説明したが、それに限るものではなく、コイル上端とガス導入口との間に複数枚用いればよい。
【0070】
以上のように、本実施形態によって反応容器431の内壁に沿ってガスを流すことができ、電界の強い領域にガスを供給することが可能となって、プラズマの生成効率を高くすることができる。また、高いエネルギーであり、且つ寿命の長いプラズマが生成される。
従って、高いアッシングレートでの処理が可能となり、その結果装置全体のスループットを高くすることができる。
【0071】
本発明は、特許請求の範囲に記載した通りであり、さらに次に付記した事項を含む。
【0072】
〔付記1〕
コイルを外周に設け、筒状で構成される反応容器と、前記反応容器の端部に設けられた蓋部と、前記蓋部に設けられたガス導入口と、前記ガス導入口と前記コイルの上端の間に設けた第一の板と、前記第一の板と前記コイルの上端の間に設けた第二の板と、前記反応容器の内、前記蓋部と異なる方向に設けられた基板処理室と、前記基板処理室に接続されたガス排気部と、を有する基板処理装置。
【0073】
〔付記2〕
前記反応容器の先端部の外周にOリングを有する付記1記載の基板処理装置。
【0074】
〔付記3〕
コイルを外周に設け、筒状で構成される反応容器と、前記反応容器の端部に設けられた蓋部と、前記蓋部に設けられたガス導入口と、前記ガス導入口と前記コイルの上端の間に設けた第一の板と、前記第一の板と前記コイルの上端の間に設けた第二の板と、前記反応容器の内、前記蓋部と異なる方向に設けられた基板処理室と、前記基板処理室に接続されたガス排気部と、を有する基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法であって、前記ガス導入口から導入されたガスを前記第一の板と第二の板を介して前記コイル近傍に導く工程と、前記コイルによって前記ガスをプラズマ状態とし、前記基板処理室に載置された基板を処理する工程と、前記ガス排気部によりガスを排気する工程とを有する半導体装置の製造方法。
【0075】
〔付記4〕
コイルを外周に設け、筒状で構成される反応容器と、前記反応容器の端部に設けられた蓋部と、前記蓋部に設けられたガス導入口と、前記反応容器の内、前記蓋部と異なる方向に設けられた基板処理室と、前記基板処理室に接続されたガス排気部とを有する基板処理装置に用いるバッフル構造であって、前記ガス導入口と前記コイルの上端の間に第一の板と第二の板を積層して配置するバッフル構造。
【0076】
〔付記5〕
コイルを外周に設け、筒状で構成される反応容器と、前記反応容器の端部に設けられた蓋部と、前記蓋部に設けられたガス導入口と、前記反応容器の内、前記蓋部と異なる方向に設けられた基板処理室と、前記基板処理室に接続されたガス排気部とを有する基板処理装置に用いるバッフル構造であって、第一の板と第二の板を空間を介して重ねるようバッフル構造を形成し、前記バッフル構造の高さは前記ガス導入口と前記コイルの上端間の距離より低くなるよう構成するバッフル構造。