(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
ライン圧を元圧としてプライマリ圧、及びセカンダリ圧を調圧する両調圧タイプの無段変速機において、ライン圧を低くすることができると、ライン圧を生成するオイルポンプの吐出圧を低くすることができ、オイルポンプを駆動する駆動源の燃費を向上することができる。ライン圧と、プライマリ圧及びセカンダリ圧のうち高圧側のプーリ圧とを同圧とすると、オイルポンプを駆動する駆動源の燃費をさらに向上することができる。
【0005】
ライン圧と、例えばセカンダリ圧とを同圧とする場合には、ライン圧が入力される入力ポート、及びセカンダリプーリにセカンダリ圧を供給する出力ポートの開口面積を最大とする。これにより調圧弁においてライン圧を減圧せずに、ライン圧をセカンダリ圧として出力ポートを介してセカンダリプーリシリンダ室に供給する。調圧弁を調圧状態からライン圧とセカンダリ圧とが同圧となる同圧状態にするときは、ライン圧をセカンダリ圧以下に下げてゆき、同圧とする。調圧状態において、セカンダリ指示圧よりセカンダリ実圧が高い状態では、調圧弁のスプールは、ドレン側に調圧ポイントがあり、その状態でライン圧を下げても入力ポートと出力ポートとは連通しない。特に、油温が低く、油の粘度が高い場合には、スプールの動作が遅く、調圧弁の膠着状態を崩すための時間が長くなり、ポートの開口面積を素早く大きくすることができない。
【0006】
これに対し、調圧弁のスプールに信号圧をかけることで、スプールを作動させてポートの開口面積を大きくすることができる。
【0007】
しかし、ライン圧とセカンダリ圧との差圧が大きい状態で、ポートの開口面積を大きくすると、セカンダリ圧の変動が大きくなり変速ショックが発生するので、ライン圧とセカンダリ圧との差圧が十分に小さくなってから入力ポートと出力ポートとを連通させることが望ましい。ライン圧がセカンダリ圧と同圧となったことは、ライン圧を検出するライン圧センサを設けることで検知することができる。
【0008】
しかし、ライン圧センサを用いずに、プライマリ圧を検出するプライマリ圧センサとセカンダリ圧を検出するセカンダリ圧センサとからの信号に基づいてライン圧を推定する場合がある。このような無段変速機においては、入力ポートと出力ポートとが連通していない状態で、ライン圧とセカンダリ圧とを同圧とする場合には、実際にはライン圧が指示圧に応じて低下しても、推定されるライン圧は指示圧に応じて低下していないと判定され、ライン圧の指示圧がさらに低下し、ライン圧がさらに低下し、ライン圧がセカンダリ圧よりも低くなることがある。その後、調圧弁の膠着状態が崩れ、ポートの開口面積が大きくなると、セカンダリ圧とライン圧との差圧に応じてセカンダリ圧が急激に低下し、無段変速機が変速し、大きな変速ショックが発生するおそれがある。このように、ポートの開口面積を大きくするタイミングが遅くなると、大きな変速ショックが発生するおそれがある。
【0009】
本発明はこのようなことに鑑みてなされたものであり、ライン圧センサを設けておらず、ライン圧と例えばセカンダリ圧とを同圧とする場合に、セカンダリ圧の急変による変速ショックの発生を抑制することを目的とする。
【0010】
本発明のある態様に係る油圧制御装置は、第1プーリ、第2プーリ間に動力伝達部材を掛け回して構成される無段変速機に供給する油圧を制御する油圧制御装置であって、ライン圧が入力される入力ポートと、第2プーリの油室に第2プーリ圧を供給する出力ポートと、油室から第2プーリ圧を排出するドレンポートと、パイロット圧に応じて移動し、第2プーリ圧を調圧するスプールとを有する調圧弁と、パイロット圧を制御するソレノイド弁と、第2プーリ圧、及び第1プーリの第1プーリ圧に基づいてライン圧を制御するライン圧制御部と、ライン圧と第2プーリ圧とを同圧にする場合に、パイロット圧を設定圧から一時的に変更する油圧制御部と、を備える。
【0011】
本発明のある態様に係る油圧制御装置は、第1プーリ、第2プーリ間に動力伝達部材を掛け回して構成される無段変速機に供給する油圧を制御する油圧制御装置であって、ライン圧が入力される入力ポートと、第2プーリの油室に第2プーリ圧を供給する出力ポートと、油室から第2プーリ圧を排出するドレンポートと、パイロット圧に応じて移動し、第2プーリ圧を調圧するスプールとを有する調圧弁と、パイロット圧を制御するソレノイド弁と、前記第2プーリ圧
の実圧、及び第1プーリの第1プーリ圧
の実圧に基づいてライン圧を制御するライン圧制御部と、ライン圧と第2プーリ圧とを同圧にする
同圧制御中に、パイロット圧を設定圧から一時的に
高くする油圧制御部と、を備える。
【0012】
また、本発明の別の態様に係る油圧制御方法は、第1プーリ、第2プーリ間に動力伝達部材を掛け回して構成される無段変速機に供給する油圧を制御する油圧制御装置の制御方法であって、油圧制御装置は、ライン圧が入力される入力ポートと、第2プーリの油室に第2プーリ圧を供給する出力ポートと、油室から第2プーリ圧を排出するドレンポートと、パイロット圧に応じて移動し、第2プーリ圧を調圧するスプールとを有する調圧弁と、パイロット圧を制御するソレノイド弁と、を備え、制御方法では、第2プーリ圧
の実圧、及び第1プーリの第1プーリ圧
の実圧に基づいてライン圧を制御し、ライン圧と第2プーリ圧とを同圧にする
同圧制御中に、パイロット圧を設定圧から一時的に
高くする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では図面等を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は本実施形態におけるベルト式無段変速機10の油圧制御装置を示す概略構成図である。ベルト式無段変速機(以下「無段変速機」という。)10は、プライマリプーリ11と、セカンダリプーリ12と、ベルト13と、CVTコントロールユニット20(以下「CVTCU」という。)と、油圧コントロールユニット30とを備える。無段変速機10は、両調圧式の無段変速機である。
【0015】
なお、無段変速機10の変速比は、プライマリプーリ11の回転速度をセカンダリプーリ12の回転速度で除した値であり、変速比が大きい場合を「Low」、小さい場合を「High」とし、変速比がLow側へ変更されることをダウンシフト、High側へ変更されることをアップシフトという。
【0016】
プライマリプーリ11は、入力軸11dと一体となって回転する固定円錐板11bと、固定円錐板11bに対向配置されてV字状のプーリ溝を形成するとともに、プライマリプーリシリンダ室11cへ作用する油圧によって軸方向へ変位可能な可動円錐板11aとを備える。プライマリプーリ11は、前後進切り替え機構3、ロックアップクラッチを備えたトルクコンバータ2を介してエンジン1に連結され、エンジン1の回転が入力される。
【0017】
ベルト13は、プライマリプーリ11及びセカンダリプーリ12に巻き掛けられ、プライマリプーリ11の回転をセカンダリプーリ12に伝達する。
【0018】
セカンダリプーリ12は、出力軸12dと一体となって回転する固定円錐板12bと、固定円錐板12bに対向配置されてV字状のプーリ溝を形成するとともに、セカンダリプーリシリンダ室12cへ作用する油圧に応じて軸方向へ変位可能な可動円錐板12aとを備える。セカンダリプーリ12は、アイドラギア14及びアイドラシャフトを介してディファレンシャル4に連結されており、このディファレンシャル4に回転を出力する。
【0019】
エンジン1の回転は、トルクコンバータ2、前後進切り替え機構3を介して無段変速機10へ入力され、プライマリプーリ11からベルト13、セカンダリプーリ12を介してディファレンシャル4へ伝達される。
【0020】
CVTCU20は、インヒビタスイッチ23、アクセルペダルストローク量センサ24、油温センサ25、プライマリプーリ回転速度センサ26、セカンダリプーリ回転速度センサ27、プライマリ圧センサ28、セカンダリ圧センサ29等からの信号や、エンジンコントロールユニット(ECU)21からの入力トルク情報に基づいて、予め記憶されている変速線を参照して変速比を決定し、油圧コントロールユニット30に指令を送信して、無段変速機10を制御する。
【0021】
油圧コントロールユニット30は、CVTCU20からの指令に基づいて応動する。油圧コントロールユニット30は、プライマリプーリ11及びセカンダリプーリ12に対して油圧を給排し、可動円錐板11a及び可動円錐板12aを回転軸方向に往復移動させている。これにより無段変速機10の変速比が変更される。
【0022】
油圧コントロールユニット30は、レギュレータバルブ31と、調圧弁32と、調圧弁33とを備える。
【0023】
レギュレータバルブ31は、ソレノイド弁31aを有し、油圧オイルポンプ34から圧送された油圧を、CVTCU20からの指令(例えば、デューティ信号など)に応じて所定のライン圧に調圧する。
【0024】
調圧弁32は、レギュレータバルブ31によって調圧されたライン圧を所望のプライマリ圧に制御する制御弁である。調圧弁32は、CVTCU20からの指令(例えば、デューティ信号など)に応じてソレノイド弁32aによって作り出されたパイロット圧に基づいて、ライン圧からプライマリ圧を作り出す。
【0025】
調圧弁33は、レギュレータバルブ31によって調圧されたライン圧を所望のセカンダリ圧に制御する制御弁である。調圧弁33は、CVTCU20からの指令(例えば、デューティ信号など)に応じてソレノイド弁33aによって作り出されたパイロット圧に基づいて、ライン圧からセカンダリ圧を作り出す。調圧弁33について
図2を用いて説明する。
【0026】
調圧弁33には、ライン圧が入力される入力ポート40と、セカンダリプーリシリンダ室12cにセカンダリ圧を供給する出力ポート41と、セカンダリプーリシリンダ室12cからセカンダリ圧を排出するドレンポート42とが形成されている。調圧弁33は、出力ポート41と、入力ポート40、またはドレンポート42との間に形成される流路の流通面積を変更するスプール43を備える。調圧弁33ではスプール43によって入力ポート40、またはドレンポート42の開口面積が変更されることで、出力ポート41と、入力ポート40、またはドレンポート42との間に形成される流路の流通面積が変更される。
【0027】
調圧弁33には、スプール43の移動方向における一方の端部にパイロット室44が形成され、もう一方の端部にフィードバック室45が形成される。パイロット室44には、CVTCU20からの指令に応じてソレノイド弁33aによって作り出されたパイロット圧が入力される。パイロット室44には、スプール43をフィードバック室45側へ付勢するバネ46が設けられている。フィードバック室45には、セカンダリ圧の一部がフィードバック圧として入力される。
【0028】
スプール43は、バネ46、及びパイロット圧による押し力と、フィードバック圧による押し力とに応じて移動し、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積、及び出力ポート41とドレンポート42との間に形成される流路の流通面積を変更する。バネ46、及びパイロット圧による押し力がフィードバック圧による押し力よりも大きい場合には、スプール43はフィードバック室45側へ移動し、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が大きくなり、流通面積に応じてライン圧が調圧されてセカンダリプーリシリンダ室12cにセカンダリ圧として供給される。バネ46、及びパイロット圧による押し力がフィードバック圧による押し力よりも小さい場合には、スプール43はパイロット室44側へ移動し、出力ポート41とドレンポート42との間に形成される流路の流通面積を大きくし、セカンダリプーリシリンダ室12cから油圧が排出され、セカンダリ圧が低下する。
【0029】
本実施形態の無段変速機10は両調圧式であるが、プライマリ圧の指示圧、及びセカンダリ圧の指示圧に対して実プライマリ圧、及び実セカンダリ圧が振動し、変速比が振動する(変更される)ことがある。この原因として、実プライマリプーリ圧、及び実セカンダリ圧の変動、つまりプライマリプーリシリンダ室11c、及びセカンダリプーリシリンダ室12cの油量の変化が挙げられる。この油量の変化を素早く収束させることで、変速比の振動を抑制することができる。油量の変化を素早く収束させるために、調圧弁33において、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が最大となるように入力ポート40の開口面積を最大にし、セカンダリプーリシリンダ室12cへの供給油量を多くし、ライン圧とセカンダリ圧とを同圧にする同圧制御を実行することが考えられる。つまり、両調圧式の無段変速機10を、ライン圧を減圧せずに直接、セカンダリプーリシリンダ室12cに供給する片調圧式として用いることが考えられる。
【0030】
ライン圧は、プライマリ圧、及びセカンダリ圧の元圧となるため、通常、ばらつきを考慮して、プライマリ圧、及びセカンダリ圧よりも高く設定されているが、同圧制御を実行することで、同圧制御を実行していない場合よりもライン圧を低くすることができる。そのため、油圧オイルポンプ34の吐出圧を低くすることができ、油圧オイルポンプ34を駆動するための駆動源、例えばエンジン1における燃費を向上することができる。
【0031】
ライン圧とセカンダリ圧とを同圧とする場合に、ライン圧とセカンダリ圧との差圧が大きい状態で、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が大きくなると、セカンダリ圧が急変し、変速ショックが大きくなる。そのため、ライン圧とセカンダリ圧との差圧が小さい状態で、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積を大きくする必要があり、ライン圧とセカンダリ圧との差圧が小さくなっていることを検知する必要がある。
【0032】
本実施形態では、ライン圧センサを設けていないため、ライン圧を直接検出することができず、プライマリ圧センサ28によって検出されるプライマリ圧とセカンダリ圧センサ29によって検出されるセカンダリ圧とに基づいてライン圧は推定される。
【0033】
しかし、スプール43によって入力ポート40と出力ポート41とが連通しておらず(流通面積ゼロ)、出力ポート41とドレンポート42とが連通している場合、または入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が小さい場合には、ライン圧の指示圧を低下させ、ライン圧を低下させても、ライン圧の低下に従ってセカンダリ圧が低下しないことがある。そのため、セカンダリ圧に基づいて推定されるライン圧が低下していない、または低下が遅いと判定され、ライン圧の指示圧がさらに低下し、ライン圧がセカンダリ圧よりも低くなることがあり、ライン圧とセカンダリ圧との差圧が大きくなることがある。
【0034】
この状態で、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が大きくなると、セカンダリ圧が急減し、大きな変速ショックが発生する。このような現象は、特に油温が低く、油の粘性が高い場合、またはアップシフト時など、調圧弁33が膠着状態となった場合に生じることが多い。
【0035】
アップシフトでは、プライマリ圧が高くなり、プライマリプーリ11のプーリ溝が狭くなり、ベルト13がプライマリプーリ11側に引かれることによってセカンダリプーリ12の可動円錐板12aが軸方向に後退し、セカンダリプーリシリンダ室12cから油圧が排出される。このとき、調圧弁33では、セカンダリプーリシリンダ室12cから排出される油圧の一部がフィードバック圧としてフィードバック室45に供給され、パイロット圧、及びバネ46による押し力よりも、フォードバック圧による押し力が大きくなり、スプール43がパイロット室44側へ移動することで、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が小さくなる。そのため、アップシフト時に上記する現象が発生し易くなる。
【0036】
そこで、本実施形態では、以下で説明する同圧制御を実行している。
図3は同圧制御を説明するフローチャートである。
【0037】
ステップS100では、CVTCU20は、無段変速機10が変速中であるかどうか判定する。処理は変速中である場合にはステップS101に進み、変速中ではない場合には本制御を終了する。
【0038】
ステップS101では、CVTCU20は、アップシフトであるかどうか判定する。処理はアップシフトである場合にはステップS102に進み、ダウンシフトである場合には本制御を終了する。
【0039】
ステップS102では、CVTCU20は、変速比が所定変速比よりも大きいかどうか判定する。所定変速比は、セカンダリ圧がプライマリ圧よりも高くなる変速比であり、予め設定されており、例えばスロットル開度が3/8以上となる変速比である。処理は、変速比が所定変速比よりも大きい場合にはステップS103に進み、変速比が所定変速比以下である場合には本制御を終了する。
【0040】
ステップS103では、CVTCU20は、同圧制御における初期設定を行う。具体的には、後述するパイロット圧増加時期、及び所定増加値を予め設定された初期時間、及び初期増加量に設定する。
【0041】
ステップS104では、CVTCU20は、同圧制御の実行条件を満たすかどうか判定する。CVTCU20は、ステップ101、ステップS102の条件に加えて、例えばセカンダリ圧が設定された所定圧よりも高く、かつエンジン回転速度が設定された所定回転速度よりも高い場合に同圧制御の実行条件を満たすと判定する。処理は、同圧制御の実行条件を満たす場合にはステップS105に進み、同圧制御の実行条件を満たさない場合には本制御を終了する。
【0042】
ステップS105では、CVTCU20は、タイマのカウントを開始する。
【0043】
ステップS106では、CVTCU20は、ライン圧を低下する。具体的には、CVTCU20は、ライン圧の指示圧を単位時間当たり所定低下量で低下させ、ライン圧を低下する。所定低下量は予め設定されている。これにより、ライン圧は徐々に低下する。
【0044】
ステップS107では、タイマのカウントがパイロット圧増加時期となったかどうか判定する。パイロット圧増加時期は、ライン圧の低下を開始してから後述するステップS115において更新されるまでは、ステップS103によって設定された初期時間であり、後述するステップS115によって更新された場合には、更新された時間である。カウントがパイロット圧増加時期となると、処置はステップS108に進む。
【0045】
ステップS108では、CVTCU20は、セカンダリ圧センサ29からの信号に基づいてセカンダリ圧を検出する。
【0046】
ステップS109では、CVTCU20は、基礎パイロット圧(設定圧)に、所定増加量を加算して、パイロット圧を増加する。基礎パイロット圧は、同圧制御を実行しない場合のパイロット圧であり、予め設定されている。所定増加量は、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積を大きくするように設定される値であり、例えば入力ポート40と出力ポート41とが連通していない場合には、少なくとも入力ポート40と出力ポート41とが連通し、また入力ポート40と出力ポート41とが既に連通している場合には、流通面積をさらに大きくする値である。具体的には、所定増加量は、ライン圧の低下を開始してから後述するステップS114によって更新されるまでは、ステップS103によって設定された初期増加量であり、後述するステップS114によって更新された場合には、更新された増加量である。なお、所定増加量は、油温センサ25によって検出される油温に基づいて補正されてもよく、その場合、油温が低くなると所定増加量は大きくなる。
【0047】
ステップS110では、CVTCU20は、セカンダリ圧センサ29からの信号に基づいてパイロット圧を増加した場合のセカンダリ圧を検出する。
【0048】
ステップS111では、CVTCU20は、パイロット圧を低下させて、パイロット圧を基礎パイロット圧とする。
【0049】
本実施形態では、ステップS109〜ステップS111において、パイロット圧を一時的に増加させて、その時のセカンダリ圧を検出する。ライン圧がセカンダリ圧よりも高い場合には、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が大きくなることで、セカンダリ圧が一時的に増加する。
【0050】
ステップS112では、CVTCU20は、パイロット圧を一時的に増加した場合のセカンダリ圧と、増加する前のセカンダリ圧との偏差を算出する。
【0051】
ステップS113では、CVTCU20は、偏差がゼロよりも大きいかどうか判定する。つまり、パイロット圧を一時的に増加した場合に、セカンダリ圧が増加したかどうか判定する。処理は、偏差がゼロよりも大きい場合にはステップS114に進み、偏差がゼロ以下である場合にはステップ116に進む。なお、ばらつきを考慮した所定量を設定し、偏差と所定量とを比較し、ここでの判定を行ってもよい。
【0052】
ステップS114では、CVTCU20は、偏差をパイロット圧に換算し、換算した値を所定増加量として更新する。CVTCU20は、次回のパイロット圧を一時的に増加する場合の所定増加量を偏差に基づいて更新する。
【0053】
ステップS115では、CVTCU20は、次回のパイロット圧増加時期を更新する。具体的には、CVTCU20は、ライン圧が、パイロット圧を一時的に増加した際の最大セカンダリ圧になっていると仮定して推定ライン圧を設定し、推定ライン圧を所定低下量で低下させる予測ライン圧がパイロット圧を一時的に増加する前のセカンダリ圧と同圧となるまでの時間を算出し、算出した時間を現在設定されているパイロット圧増加時期に加算することでパイロット圧増加時期を更新する。これにより、その後の処理において、タイマのカウントが、更新されたパイロット圧増加時期となると、パイロット圧が一時的に増加される。
【0054】
ステップS116では、CVTCU20は、パイロット圧を最大パイロット圧とし、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積を最大にする。これによって、ライン圧は調圧弁33によって減圧されずにセカンダリプーリシリンダ室12cに供給される。
【0055】
ステップS117では、CVTCU20は、タイマをリセットする。
【0056】
なお、同圧制御では、パイロット圧を最大パイロット圧とした後に、ライン圧の指示圧を一旦低下させ、セカンダリ圧がライン圧の指示圧とともに低下したことを確認することで、ライン圧とセカンダリ圧とが同圧となっていることを確認している。
【0057】
次に同圧制御について
図4のタイムチャートを用いて説明する。
【0058】
時間t0において、同圧制御を開始し、ライン圧を低下させ、タイマのカウントを開始する。
【0059】
時間t1において、タイマのカウントがパイロット圧増加時期となると、パイロット圧が一時的に増加する。ライン圧がセカンダリ圧よりも高いので、パイロット圧が一時的に高くなり、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が大きくなることで、セカンダリ圧が一時的に高くなる。
【0060】
時間t2において、パイロット圧を一時的に増加した場合の最大セカンダリ圧を推定ライン圧として設定し、
図4において破線で示すように、推定ライン圧から所定低下量で低下させる予測ライン圧がセカンダリ圧と等しくなる時間を算出し、次回のパイロット圧増加時期を更新する。
【0061】
時間t3において、タイマのカウントが更新されたパイロット圧増加時期となると、再びパイロット圧を一時的に増加する。ライン圧がセカンダリ圧よりも高いため、セカンダリ圧は高くなるが、ここでは、ライン圧が低下しており、セカンダリ圧はライン圧よりも高くならないので、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積を大きくしてもセカンダリ圧の増加は制限される。
【0062】
時間t4において、次回のパイロット圧増加時期が更新される。ここでは、推定ライン圧と実際のライン圧とが一致し、予測ライン圧、及び実際のライン圧はともに所定低下量で低下する。そのため、時間t4において予測ライン圧に基づいて更新されるパイロット圧増加時期は、実際にライン圧とセカンダリ圧とが等しくなる時間となる。
【0063】
時間t5において、タイマのカウントが更新されたパイロット圧増加時期となると、再びパイロット圧を一時的に増加する。ライン圧とセカンダリ圧とが同圧となっているので、パイロット圧を一時的に増加させても、セカンダリ圧は高くならない。その後、パイロット圧を最大パイロット圧とし、タイマのカウントをリセットする。また、ライン圧の指示圧を一旦低下させ、増加させることで、セカンダリ圧はライン圧とともに低下し、増加する。
【0064】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0065】
同圧制御において、ライン圧とセカンダリ圧とを同圧にする場合に、パイロット圧を基礎パイロット圧から一時的に高くすることで、例えば油温が低く、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が小さい場合などに生じる調圧弁33の膠着状態を崩すことができる。これにより、ライン圧とセカンダリ圧との差圧が大きくなった後に入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が大きくなることを抑制することができ、セカンダリ圧の変動を抑制し、変動による変速ショックの発生を抑制することができる。
【0066】
パイロット圧を一時的に増加した場合のセカンダリ圧と、増加する前のセカンダリ圧との偏差がゼロ以下である場合に、ライン圧とセカンダリ圧とが同圧になると判定する。ライン圧が低下し、ライン圧とセカンダリ圧との偏差がゼロ以下の場合には、少なくとも同圧制御のためにライン圧が低下していると判定することができる。そのため、このタイミングで入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積が大きくなった場合でも、セカンダリ圧の変動を小さくすることができ、変速ショックの発生を抑制することができる。
【0067】
次回のパイロット圧増加時期が遅くなると、ライン圧がセカンダリ圧よりも低くなり、セカンダリ圧とライン圧との偏差が大きくなるおそれがある。その後に、パイロット圧が一時的に増加すると、セカンダリ圧が急減して変速比が変更され、変速ショックが大きくなるおそれがある。また、パイロット圧を一時的に増加することで、セカンダリ圧が一時的に増加し、変速比が一時的にLow側に変更されるので、パイロット圧を一時的に増加する回数は少ない方が望ましい。本実施形態では、パイロット圧を一時的に増加したときのセカンダリ圧の最大圧を推定ライン圧として設定し、推定ライン圧と、ライン圧の指示圧における所定低下量とに基づいて、次回のパイロット圧増加時期を設定することで、次回のパイロット圧増加時期が遅くなることを防止することができ、パイロット圧増加時期の遅れによる変速ショックを防止することができる。また、変速比がLow側に変更される回数を少なくしつつ、ライン圧がセカンダリ圧と等しくなるタイミングを求めることができ、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積を大きくする際に変速ショックが発生することを抑制することができる。
【0068】
推定ライン圧から所定低下量で低下する予測ライン圧と、セカンダリプーリ圧とが等しくなる時間を次回のパイロット圧増加時期として設定する。これにより、ライン圧とセカンダリ圧とが等しくなるタイミングを求めることができ、入力ポート40と出力ポート41との間に形成される流路の流通面積を大きくする際に変速ショックが発生することを抑制することができる。
【0069】
調圧弁33では、セカンダリ圧の一部がフィードバック圧として作用し、フィードバック圧、及びパイロット圧に基づいてスプール43が移動する。このような調圧弁33においては、アップシフト時にセカンダリプーリシリンダ室12cから排出されるセカンダリ圧の一部がフィードバック圧として作用し、出力ポート41とドレンポート42とが連通する。そのため、同圧制御を実行する場合に、ライン圧を低減させても、調圧弁33が膠着状態となり、セカンダリ圧センサ29によって検出したセカンダリ圧はライン圧に応じて低下せず、ライン圧が低下していないと誤判定される。そして、ライン圧の指示圧がさらに低下し、セカンダリ圧とライン圧との差圧が大きくなり、その後、入力ポート40と出力ポート41とが連通した場合には、セカンダリ圧の変動が大きくなり、大きな変速ショックが発生する。これに対して、本実施形態の同圧制御を実行することで、調圧弁33の膠着状態を崩すことができ、入力ポート40と出力ポート41とが連通する際に、セカンダリ圧の変動を抑制し、変動によって大きな変速ショックが発生することを抑制することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0071】
上記実施形態において、ライン圧の指示圧を増加させる必要が生じた場合には、タイマのカウントを停止し、ライン圧の指示圧が増加した時間に基づいて次回のパイロット圧増加時期を遅らせてもよい。これにより、パイロット圧を一時的に増加する回数を少なくすることができる。
【0072】
また、上記実施形態において、タイマのカウントに応じた予測ライン圧と、実際のセカンダリ圧とを比較し、予測ライン圧が実際のセカンダリ圧となったタイミングでパイロット圧を一時的に増加させてもよい。これによっても同様の効果を得ることができる。
【0073】
上記実施形態では、タイマを用いて次回のパイロット圧増加時期を設定したが、パイロット圧を一時的に増加した場合のセカンダリ圧の増加量に基づいて次回のパイロット圧増加時期を設定してもよい。具体的には、今回のパイロット圧増加時期におけるライン圧の指示圧から、セカンダリ圧の増加量分、ライン圧の指示圧が低下した時をパイロット圧増加時期とし、パイロット圧を一時的に増加する。これにより、パイロット圧が一時的に増加する回数を少なくすることができる。
【0074】
上記実施形態では、パイロット圧を一時的に増加し、偏差がゼロ以下の場合に、ライン圧とセカンダリ圧とが同圧であると判定したが、パイロット圧を一時的に増加した場合に変速比がLow側に変更されない場合に、ライン圧とセカンダリ圧とが同圧になると判定してもよい。これによっても、ライン圧とセカンダリ圧とが同圧となるかどうか判定することができる。
【0075】
上記実施形態では、ライン圧とセカンダリ圧とを同圧する同圧制御について説明したが、ライン圧とプライマリ圧とを同圧する場合に、上記制御を適用してもよい。
【0076】
なお、上記同圧制御をチェーン式無段変速などに用いてもよい。また、パイロット圧を低下することで、入力ポートと出力ポートとが連通する調圧弁を用いてもよく、その場合には、同圧制御においてパイロット圧を一時的に低下する。
【0077】
本願は2014年2月20日に日本国特許庁に出願された特願2014−30506に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。