特許第6307600号(P6307600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6307600無線通信システム、無線通信装置、及び、可動柵制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307600
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信装置、及び、可動柵制御システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20180326BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20180326BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B61L23/00 Z
   B61B1/02
   G01S13/34
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-520849(P2016-520849)
(86)(22)【出願日】2014年5月20日
(86)【国際出願番号】JP2014063362
(87)【国際公開番号】WO2015177871
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加島 謙一
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−052556(JP,A)
【文献】 特開2004−077519(JP,A)
【文献】 特開2014−061796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/00−15/00
B61L 1/00−99/00
G01S 7/00− 7/42
13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線通信装置と、前記第1の無線通信装置との間で無線通信を行う第2の無線通信装置とを備え、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置の一方が移動体に設けられ、他方が固定された無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第2の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する第1のモードにおいて、前記受信強度が第1の値以上であることを検出すると、前記第2の無線通信装置との間のデータ伝送を停止し前記第1のモードを終了して、前記移動体が停止したか否かを判定する第2のモードに移行し、前記第2のモードにおいて前記移動体の停止を検出した場合、前記第2のモードを終了して、前記第2の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに、
前記第1の無線通信装置は、周波数信号を生成する発振部と、送信信号を送信する送信部と、受信信号を受信する受信部とを備え、前記発振部は、前記第1のモードにおいて周波数一定の搬送波信号を生成して前記送信部へ出力し、前記第2のモードにおいて一定周期で周波数が変動する距離測定用信号を生成して前記送信部へ出力することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第2の無線通信装置との間でデータ伝送を開始すると、第1のモードで動作し、前記第2のモードにおいて前記移動体の停止を検出した場合、前記第2のモードを終了して、前記第2の無線通信装置にデータ伝送を再開する信号を送信し、前記第2の無線通信装置との間でデータ伝送を再開するとともに、
前記第2の無線通信装置は、前記第1のモードにおける前記第1の無線通信装置とのデータ伝送を停止した後、前記第1の無線通信装置から前記データ伝送を再開する信号を受信すると、前記第1の無線通信装置とのデータ伝送を再開することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第1のモードにおいて、前記受信信号の受信強度が第1の値以上であることを検出すると、前記第2の無線通信装置にモード切替要求を送信し、前記第2の無線通信装置との間のデータ伝送を停止し前記第1のモードを終了し、
前記第2の無線通信装置は、前記第1の無線通信装置とのデータ伝送を開始した後、前記第1の無線通信装置から前記モード切替要求を受信するとデータの送信を停止することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項3項に記載の無線通信システムであって、
前記第2の無線通信装置は、前記第1の無線通信装置から前記モード切替要求を受信してデータの送信を停止した後、前記データ伝送を再開する信号を所定時間以上受信しない場合は、前記第1の無線通信装置とデータ伝送を行うモードに切り替わることを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第2のモードを終了した後、前記第2の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第2の値以下であるか否かを判定する第3のモードに移行し、前記第3のモードにおいて前記受信強度が第2の値以下であることを検出すると、前記第3のモードを終了し、前記第1のモードに移行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第2のモードにおいて前記移動体の停止を検出し、かつ、前記第1のモードで最後に検出した前記受信強度が第1の値以上である場合に、前記第2のモードを終了することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第2のモードにおいて前記移動体の停止を検出しなかった場合、前記第2のモードを終了して、前記第1のモードに移行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の無線通信システムであって、
さらに、駅のホームに設けられ扉が開閉する可動柵装置と、前記第1の無線通信装置と通信し、前記可動柵装置の扉の開閉を制御する制御装置とを備え、
前記第1の無線通信装置は、前記第2のモードの終了後、前記制御装置に対し、前記可動柵装置の扉の開動作を指示する扉開指示情報を送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項に記載の無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第2のモードにおいて、前記移動体の停止を検出するとともに、前記移動体の停止位置が所定の範囲内であるか否かを判定し、前記停止位置が所定の範囲内である場合に、前記第2のモードを終了して、前記制御装置に対し、前記扉開指示情報を送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項に記載の無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第2のモードにおいて、前記移動体の停止を検出するとともに前記移動体の停止位置を検出し、前記第2のモードを終了後、前記制御装置又は前記第2の無線通信装置に対し、前記停止位置の情報を送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、変調信号供給部と、受信データ抽出部と、距離データ抽出部とを備え
記変調信号供給部は、前記第1のモードにおいて、送信データに基づき変調信号を生成して前記送信部へ供給し、前記第2のモードにおいて、送信データに基づく変調信号の生成を停止し、
前記受信データ抽出部は、前記第1のモードにおいて、前記受信部から伝送された信号に基づき、受信データを抽出し、
前記距離データ抽出部は、前記第2のモードにおいて、前記受信部から伝送された信号に基づき、前記移動体と前記固定された無線通信装置との間の距離データを抽出することを特徴とする無線通信システム。
【請求項12】
他の無線通信装置との間で相対的な移動を行い、前記他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置であって、
前記無線通信装置は、前記他の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する第1のモードにおいて、前記受信強度が第1の値以上であることを検出すると、前記他の無線通信装置との間のデータ伝送を停止し前記第1のモードを終了して、前記相対的な移動が停止したか否かを判定する第2のモードに移行し、前記第2のモードにおいて前記相対的な移動の停止を検出すると、前記第2のモードを終了して、前記他の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに、
前記無線通信装置は、周波数信号を生成する発振部と、送信信号を送信する送信部と、受信信号を受信する受信部とを備え、前記発振部は、前記第1のモードにおいて周波数一定の搬送波信号を生成して前記送信部へ出力し、前記第2のモードにおいて一定周期で周波数が変動する距離測定用信号を生成して前記送信部へ出力することを特徴とする無線通信装置。
【請求項13】
請求項12に記載の無線通信装置であって、
前記第2のモードを終了した後、前記他の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第2の値以下であるか否かを判定する第3のモードに移行し、前記第3のモードにおいて、前記受信強度が第2の値以下であることを検出すると、前記第3のモードを終了し、前記第1のモードに移行することを特徴とする無線通信装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の無線通信装置であって
調信号供給部と、受信データ抽出部と、距離データ抽出部とを備え
記変調信号供給部は、前記第1のモードにおいて、送信データに基づき変調信号を生成して前記送信部へ供給し、前記第2のモードにおいて、送信データに基づく変調信号の生成を停止し、
前記受信データ抽出部は、前記第1のモードにおいて、前記受信部から伝送された信号に基づき、受信データを抽出し、
前記距離データ抽出部は、前記第2のモードにおいて、前記受信部から伝送された信号に基づき、前記他の無線通信装置との間の距離データを抽出することを特徴とする無線通信装置。
【請求項15】
列車に備えられた第1の無線通信装置と、
前記第1の無線通信装置と無線により通信を行うデータ伝送モードと、前記列車の停止を無線により検出するレーダーモードとを切り替えて動作する第2の無線通信装置と、
駅のホームに設けられ扉が開閉する可動柵装置と、
前記第2の無線通信装置から前記扉の開動作を指示する扉開指示情報を受信すると、前記扉を開くように制御する制御装置と、備え
前記第2の無線通信装置は、前記第1の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する第1のモードにおいて、前記受信強度が第1の値以上であることを検出すると、前記第1の無線通信装置との間のデータ伝送を停止し前記第1のモードを終了して、前記列車が停止したか否かを判定する第2のモードに移行し、前記第2のモードにおいて前記列車の停止を検出した場合、前記第2のモードを終了して、前記第1の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに、
前記第2の無線通信装置は、周波数信号を生成する発振部と、送信信号を送信する送信部と、受信信号を受信する受信部とを備え、前記発振部は、前記第1のモードにおいて周波数一定の搬送波信号を生成して前記送信部へ出力し、前記第2のモードにおいて一定周期で周波数が変動する距離測定用信号を生成して前記送信部へ出力することを特徴とする可動柵制御システム。
【請求項16】
請求項15に記載の可動柵制御システムであって、
前記第2の無線通信装置は、前記レーダーモードで前記列車の停止を検出した後、前記データ伝送モードで前記第1の無線通信装置から前記扉の開動作を要求する信号を受信すると、前記扉開指示情報を前記制御装置に送信することを特徴とする可動柵制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の停止検出機能とデータ通信機能とを有する無線技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術においては、列車の停止状態や停止位置を判定するために、例えば、駅ホーム内のレール付近に、間隔を空けて複数のICタグが設置され、列車の車両底部または側面に、ICタグの情報を読み取るためのICタグリーダーが設置される。これらのICタグには、位置情報が記録されている。駅のホームに進入した列車は、ICタグリーダーを用いて、無線でICタグの情報を読み取ることにより、刻々と、その位置を判定する。そして、列車が停止すると、停止判定とともに停止位置が所定の範囲内であるか否かを判定する。このように、地上側に列車の位置判定用専用設備を設け、列車側で位置を判定していた。
【0003】
また、列車側と地上側との間でデータ伝送(データ通信)を行うために、列車側と地上側に無線通信装置を設置している。駅ホームには、ホーム上の安全を監視するための監視カメラが設置されており、地上側無線通信装置が、データ伝送として、例えば監視カメラで撮影した画像情報を列車側へ無線送信する。尚、画像情報は列車の運転席に表示される。こうして、運転士が、乗降客の安全を確認できるようになっている。下記の特許文献1には、プラットホームに監視カメラを設置し、撮像した画像を列車に送信するプラットホーム監視システムが開示されている。
【0004】
また、近年、乗客がホームから転落する事故や列車との接触事故を防止する目的で、可動式のホームドア(可動柵)が設けられるようになっている。可動柵付近の映像も監視カメラで撮影され、列車側へ無線送信されて、列車の運転席に表示される。運転士は、乗降客の安全を確認したうえで、可動柵を開閉するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−264811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、背景技術においては、データ伝送のために列車側と地上側に無線通信設備を設け、さらに、列車の停止判定のために専用の地上側設備が必要であり、地上側設備の設置費用が大きくなっていた。
本発明の目的は、移動体側(例えば列車等)と固定位置側(例えば地上設備等)との間の無線通信を用いて、データ伝送と移動体の停止判定を行うことのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための、本発明に係る無線通信システムの代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
第1の無線通信装置と、前記第1の無線通信装置との間で無線通信を行う第2の無線通信装置とを備え、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置の一方が移動体に設けられ、他方が固定された無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記第2の無線通信装置との間でデータ伝送を行い、かつ前記移動体の停止を検出するための無線送受信を行う無線送受信部を備え、前記第2の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する第1のモードにおいて、前記受信強度が第1の値以上であることを検出すると、前記第2の無線通信装置との間のデータ伝送を停止し前記第1のモードを終了して、前記移動体が停止したか否かを判定する第2のモードに移行し、前記第2のモードにおいて前記移動体の停止を検出した場合、前記第2のモードを終了して、前記第2の無線通信装置との間でデータ伝送を行うことを特徴とする無線通信システム。
【0008】
また、上記の課題を解決するための、本発明に係る無線通信装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
他の無線通信装置との間で相対的な移動を行い、前記他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置であって、
前記他の無線通信装置との間でデータ伝送を行い、かつ前記移動の停止を検出するための無線送受信を行う無線送受信部を備え、前記他の無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する第1のモードにおいて、前記受信強度が第1の値以上であることを検出すると、前記他の無線通信装置との間のデータ伝送を停止し前記第1のモードを終了して、前記相対的な移動が停止したか否かを判定する第2のモードに移行し、前記第2のモードにおいて前記相対的な移動の停止を検出すると、前記第2のモードを終了して、前記他の無線通信装置との間でデータ伝送を行うことを特徴とする無線通信装置。
【0009】
また、上記の課題を解決するための、本発明に係る無線通信方法の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
移動体に設けられた車上無線通信装置と、地上無線通信装置との間で行われる無線通信方法であって、
前記車上無線通信装置と前記地上無線通信装置との間で無線によりデータ伝送中に、受信信号の受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する第1のステップと、
前記受信強度が第1の値以上であることを検出した後、前記車上無線通信装置と前記地上無線通信装置との間のデータ伝送を停止し、前記移動体が停止したか否かを無線により判定する第2のステップと、
前記移動体の停止を検出した後、前記車上無線通信装置と前記地上無線通信装置との間で無線によりデータ伝送を行う第3のステップと、
を備えることを特徴とする無線通信方法。
【0010】
また、上記の課題を解決するための、本発明に係る可動柵制御システムの代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
列車に備えられた第1の無線通信装置と、
前記第1の無線通信装置と無線により通信を行うデータ伝送モードと、前記列車の停止を無線により検出するレーダーモードとを切り替えて動作する第2の無線通信装置と、
駅のホームに設けられ扉が開閉する可動柵装置と、
前記第2の無線通信装置から前記扉の開動作を指示する扉開指示情報を受信すると、前記扉を開くように制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする可動柵制御システム。
【0011】
また、上記の課題を解決するための、本発明に係る通信装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
列車に備えられた車上無線通信装置との間で無線通信し、駅のホームに設けられ扉が開閉する可動柵装置の、前記扉の開動作を制御する制御装置との間で通信する通信装置であって、
前記車上無線通信装置との間で無線により通信を行うデータ伝送モードと、前記列車の停止を無線により検出するレーダーモードとを切り替えて動作し、
前記レーダーモードで前記列車の停止を検出した後、前記データ伝送モードで前記車上無線通信装置から前記扉の開動作を要求する信号を受信すると、前記制御装置に前記扉の開動作を指示する扉開指示情報を送信することを特徴とする通信装置。
【0012】
また、上記の課題を解決するための、本発明に係る可動柵装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
駅のホームに設けられ扉が開閉可能な可動柵装置であって、
列車に備えられた車上無線通信装置との間で無線により通信を行うデータ伝送モードと、前記列車の停止を無線により検出するレーダーモードとを切り替えて動作する通信装置と通信を行う制御装置を備え、前記制御装置は、前記通信装置から前記扉の開動作を指示する扉開指示情報を受信すると、前記扉を開くように制御することを特徴とする可動柵装置。
【発明の効果】
【0013】
上述のように構成すると、移動体側と固定側との間の無線通信を用いて、データ伝送と移動体の停止判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における無線通信システムの構成図である。
図2】本発明の実施形態における無線通信システムの動作概要を説明する図である。
図3】本発明の実施形態における無線通信システムの通信シーケンス図である。
図4】本発明の実施形態における無線通信システムの通信フォーマットである。
図5】本発明の実施形態における地上無線通信装置の構成図である。
図6】本発明の実施形態における地上無線通信装置のデータ伝送動作を説明する図である。
図7】本発明の実施形態における地上無線通信装置の距離測定動作を説明する図である。
図8】車両停止状態検出処理や距離測定処理を説明する図である。
図9】車両移動状態検出処理や距離測定処理を説明する図である。
図10】本発明の実施形態における地上無線通信装置の処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態における無線通信システムの構成図である。
図1において、10は地上無線通信装置であり、車両100の停止位置付近であって、車両100の走行に障害とならない位置、例えば車両100の上方の位置や線路脇に固定して設けられている。50は、駅ホーム(プラットホーム)である。図1は、車両100が、地上無線通信装置10の方向へ進行し、駅ホーム50に停止しようとしている状態を示す。
【0016】
また、20は、駅ホーム50や車両100の状況を撮像する監視カメラである。30は、駅ホーム50に設けられ、扉が自動で開閉可能な可動柵である。40は、地上無線通信装置10と通信可能であって、可動柵30の扉の開閉等を制御する制御装置である。110は、移動体である車両100に設けられ、地上無線通信装置10との間で無線通信を行う車上無線通信装置である。120は、車両100に設けられた操作表示装置、120aは運転士である。尚、制御装置40は監視カメラ20を制御し、撮影映像を受信・記録しても良いが、監視カメラ20の制御や映像受信・記録を行う装置は制御装置40と別に設けられていても良い。
【0017】
地上無線通信装置10と監視カメラ20と可動柵30は、制御装置40と通信接続されている。車上無線通信装置110は、操作表示装置120と通信接続されている。地上無線通信装置10と車上無線通信装置110とは、それぞれのアンテナ10aとアンテナ110aとを介して、無線通信(データ伝送動作とレーダー動作)を行うことが可能である。
【0018】
レーダー動作(レーダーモード)とは、地上無線通信装置10から、車両100へ電磁波を送信し、車両100で反射された電磁波を受信して、送受信された電磁波の時間差や周波数を解析することにより、地上無線通信装置10と車両100との間の距離や車両100の移動速度を測定し、車両100の停止を検出する動作である。詳細は、図8図9を用いて後述する。
【0019】
地上無線通信装置10のアンテナ10aは、車上無線通信装置110のアンテナ110aとの間で電磁波を送受信でき、かつ、車両100で反射された電磁波を受信でき、かつ、それら以外の方向からの電磁波受信を抑制できるように、指向性を有することが好ましい。アンテナ10aは、地上無線通信装置10が設置される駅の軌道の方向等を考慮して、向きや指向性が決定される。
【0020】
アンテナ10aは、レーダー動作において、例えば40m先において半径3m程度の範囲内に収まるビーム状の電磁波を送信できる指向性を有する。アンテナ10aを、レーダー動作用のアンテナとデータ伝送用のアンテナは同一であることが好ましいが、2つのアンテナで構成してもよい。アンテナ10aは、地上無線通信装置10と分離して設けてもよい。
【0021】
同様に、車上無線通信装置110のアンテナ110aは、地上無線通信装置10のアンテナ10aとの間で電磁波を送受信でき、かつ、それ以外の方向からの電磁波受信を抑制できるように、指向性を有することが好ましい。アンテナ110aは、車上無線通信装置110と分離して設けてもよい。
【0022】
図2は、本発明の実施形態における無線通信システムの動作概要を説明する図である。
図2(a)は、車両100と駅ホーム50等との位置関係を示す。図2(a)において、車上無線通信装置110のアンテナ110aは、車両100の前部に設置され、地上無線通信装置10のアンテナ10aは、車両100の走行に障害とならない位置に設置されている。また、車両100の前部には、地上無線通信装置10からの距離測定用電磁波を反射する反射部材(例えば反射板)が設置されていることが好ましい。車両100の先頭部分が停止目標50aで停止したときに、アンテナ10aとアンテナ110aは、所定の距離を空けて位置するようになっている。
【0023】
図2(b)は、地上無線通信装置10で受信する電磁波(つまり、車上無線通信装置110から受信する受信信号)の受信強度を示す。受信強度としては、距離を反映できる指標であればよく、例えば、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)や、受信電界強度等を用いることができる。
【0024】
駅ホーム50に入線してきた車両100は、80〜60km/hの速度で停止目標50aから約200m程度の位置に到達し、さらに、60〜10km/hの速度で停止目標50aから約20m程度の位置に到達する。この間、車両100の車上無線通信装置110から送信された電磁波の受信強度が所定の大きさ(第1の値)以上になるまで、地上無線通信装置10は、車上無線通信装置110との間のデータ伝送(データ通信)を継続する(第1のモード)。つまり、車上無線通信装置110から送信された電磁波の受信強度が第1の値になるのは、停止目標から約20m程度である。
【0025】
車上無線通信装置110からの電磁波の受信強度が第1の値以上になると、地上無線通信装置10は、データ伝送動作からレーダー動作に切り替わり、距離測定レーダーとして動作する(レーダーモード:第2のモード)。すなわち、地上無線通信装置10は、車両100が10〜0km/hの速度で停止目標50aの位置に到達するまで、レーダーモードになり、レーダー電磁波を車両100に向けて送信する。
【0026】
レーダー電磁波は、車両100が停止するまでの間に、微小時間間隔で繰り返し送信され、車両100との間の距離が、繰り返し測定される。車両100が停止するまでの間、測定された距離は、次第に小さくなる。車両100が停止すると、測定距離に変化が無くなるので、地上無線通信装置10は、この状態を停車状態と判断する。停車状態になると、地上無線通信装置10は、再びデータ伝送モードに切り替わり、車上無線通信装置110との間でデータ伝送を行う(第3のモード)。
【0027】
第3のモードのデータ伝送において、例えば、車両100から送信された可動柵装置30の扉(ドア)の開又は閉指示情報が、車上無線通信装置110から地上無線通信装置10へ無線送信され、地上無線通信装置10から制御装置40へ送信される。制御装置40は、受信した開又は閉指示情報に基づき、可動柵装置30の扉の開又は閉を行う。
【0028】
また、駅ホーム50上の可動柵装置30の扉の開閉状況等が監視カメラ20で撮像されると、この画像情報が、監視カメラ20から制御装置40を介して地上無線通信装置10へ送信され、地上無線通信装置10から車上無線通信装置110へ無線送信される。車上無線通信装置110で受信した画像情報は、車両100の操作表示装置120に送信されて表示される。表示された画像情報は、運転士120aにより、異常発生の有無をチェックされる。
【0029】
第3のモードにおいて、車両100が再び進行を開始して移動状態になると、車上無線通信装置110のアンテナ110aは、地上無線通信装置10のアンテナ10aの位置を通り過ぎる。すると、地上無線通信装置10は、車上無線通信装置110からの電磁波を受信することができず、地上無線通信装置10で受信する受信強度が所定の第2の値以下(例えばゼロ)になる。受信強度が第2の値以下になると、地上無線通信装置10は、上記第1のモードに戻る。
【0030】
図3は、本発明の実施形態における無線通信システムの通信シーケンス図である。
本実施形態においては、この無線通信システムでの使用周波数は、駅側の地上無線通信装置10や車両側の車上無線通信装置110とも、送信1波、受信1波であり、60GHz帯(例えば、60GHz)の電磁波を用いる。60GHz帯の電磁波を用いると、データ伝送と距離測定の両方を行うことが容易になる。なお、60GHz帯以外の電磁波、例えば、24GHz帯や76GHz帯の電磁波を用いることも可能である。
【0031】
図3に示すように、地上無線通信装置10の初期状態は、第1のモードの待受状態(ステップS1)である。図3の例は、車上無線通信装置110が、地上無線通信装置10をポーリング呼び出し信号により呼び出し(ステップS2)、ポーリング応答信号による応答(ステップS3)のあった地上無線通信装置10と通信接続する方式である。
【0032】
図4は、本発明の実施形態における無線通信システムの通信フォーマットである。
図4(a)は、ポーリング呼び出し信号のフォーマットであり、送信元である車上無線通信装置110を特定する識別子である装置番号、車両100を特定する識別子である列車番号、データを含むように構成される。このデータには、地上無線通信装置10へデータの返答を要求するコマンド(データ返答要求)が含まれる。
【0033】
図4(b)は、ポーリング応答信号のフォーマットであり、送信元である地上無線通信装置10を特定する識別子である装置番号、該地上無線通信装置10が設けられた駅を特定する識別子である駅番号、該地上無線通信装置10が設けられたホームを特定する識別子であるホーム番号、データを含むように構成される。このデータには、ポーリング呼び出し信号のコマンド(データ返答要求)に対するACK応答が含まれる。このACK応答は、返答データの送信準備終了を意味する。
【0034】
図4(c)は、車上無線通信装置110から地上無線通信装置10へ伝送されるデータ伝送信号のフォーマットであり、車上無線通信装置110を特定する識別子である装置番号、車両100を特定する識別子である列車番号、装置状況、伝送データを含むように構成される。
【0035】
図4(d)は、地上無線通信装置10から車上無線通信装置110へ伝送されるデータ伝送信号のフォーマットであり、送信元である地上無線通信装置10を特定する識別子である装置番号、該地上無線通信装置10が設けられた駅を特定する識別子である駅番号、該地上無線通信装置10が設けられたホームを特定する識別子であるホーム番号、装置状況、伝送データを含むように構成される。
【0036】
こうして、車上無線通信装置110と地上無線通信装置10との間で、無線回線の接続を実現する。回線接続の有無を確認する為に、ポーリング呼び出し信号は、継続して繰り返し送信され、間欠的なデータ伝送の間においても送信される。
【0037】
図3において、車両100と停止目標50aとの間の距離が、約200mから約20mの間(つまり第1のモードの間)、第1のモードの車上無線通信装置110は、間欠的に、図4(a)に示すフォーマットのポーリング呼び出し信号“呼”(ステップS2)を繰り返し送信し、地上無線通信装置10からのポーリング応答信号“応”(ステップS3)を待つ待受状態となる。
【0038】
車上無線通信装置110からの”呼”(ステップS2)を受信すると、地上無線通信装置10は、ポーリング呼び出し信号に含まれる情報に基づき、通信相手である車上無線通信装置110の装置番号、列車番号を認識し、その妥当性を確認する。妥当と判定した場合、地上無線通信装置10は、自身の待受状態を解除し、データの送信準備が完了していることを意味するポーリング応答信号“応”(ステップS3)を、図4(b)に示すフォーマットで送信する。
【0039】
ポーリング応答信号“応”を受信すると、車上無線通信装置110は、ポーリング応答信号に含まれる情報に基づき、通信相手である地上無線通信装置10の装置番号、駅番号、ホーム番号を認識し、その妥当性を確認する。妥当と判定した場合、車上無線通信装置110は、地上無線通信装置10に対し、図4(c)に示すフォーマットでデータを送信する(ステップS4)。このデータには、処理継続を示すコマンドが含まれている。
【0040】
地上無線通信装置10は、車上無線通信装置110からのデータを受信すると、図4(d)に示すデータ伝送フォーマットを用いて、データ“了”(ステップS5)を送信する。データ“了”は、ステップS4のデータを受信できたことを意味する。
【0041】
データ“了”(ステップS5)を送信した後、車上無線通信装置110と地上無線通信装置10は、ポーリング送信(ステップS2)からデータ“了”(ステップS5)までの、伝送モードにおける通信プロトコルを繰り返す。第1のモードは、車両100が停止目標50aに対し約20mに近づくまで継続される。第1のモードにおいて、地上無線通信装置10は、車上無線通信装置110からデータ受信したときに、受信強度(受信レベル)が所定の大きさ(第1の値)以上であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0042】
受信強度が第1の値であるときの車両100の位置は、停止目標50aから約20mの位置である。受信強度が大きくなるほど、車両100の位置は停止目標50aに近い。受信強度と車両100の位置との関係は、予め測定して調べておく。
なお、受信強度による距離測定の精度は、レーダーモードによる距離測定の精度よりも低い。本実施形態では、車両100が停止位置に近づいたときにレーダーモードによる距離測定を行うことで、停止検出及び距離測定の精度を向上させている。
【0043】
第1のモードにおいて、車上無線通信装置110からのポーリング呼び出し信号又は伝送データ(ステップS7)の受信強度が第1の値以上になると(ステップS8のRSSI判定)、つまり、車両100と停止目標50aとの間の距離が約20m以下になると、地上無線通信装置10は、レーダーモードへの切替を要求するモード切替要求(ステップS9)を、図4(d)に示すデータ伝送フォーマットを用いて、車上無線通信装置110へ送信するとともに、自身もレーダーモード(第2のモード)へ切り替わる。すなわち、地上無線通信装置10は、車両100との間の距離を測定する距離測定動作(レーダー動作)を行うようになる(ステップS10)。
【0044】
モード切替要求(ステップS9)を受信した車上無線通信装置110は、第2のモードへ切り替わり、ポーリング呼び出し信号の送信を停止して、待受状態になる(ステップS11)。
【0045】
レーダーモードへ切り替わった地上無線通信装置10は、車両100が停止目標50aに近づき停止するまでの間、レーダー動作を行う。レーダー動作では、地上無線通信装置10は、車両100と停止目標50aとの間の距離が一定の値になるまで(つまり、車両100の停止を判定するまで)、電磁波を送信し(ステップS12)、その反射波を検出する動作を繰り返し行う。
【0046】
車両100が停止すると、繰り返しのレーダー動作により地上無線通信装置10が検出する距離に変化が無くなる。これにより、地上無線通信装置10は、車両100の停止を検出する(ステップS13)。また、地上無線通信装置10は、車両100との間の距離を測定することにより、車両100の停止位置を検出する。
【0047】
車両100の停止を検出すると、地上無線通信装置10は、レーダー動作を停止し、第3のモードに切り替わり、待受状態(ステップS11)となっている車上無線通信装置110へ、図4(d)に示すデータ伝送フォーマットを用いて、“停車完了”データを送信する(ステップS14)。つまり、地上無線通信装置10は、車上無線通信装置110を伝送モードへ復帰させる制御信号を送信する。その後、第3のモードに切り替わった地上無線通信装置10は、車上無線通信装置110から送信される伝送データを待ち受ける待受状態になる(ステップS15)。
【0048】
“停車完了”データを受信した車上無線通信装置110は、自身の待受状態を解除して(ステップS16)、第3のモードに切り替わる。そして、前述したステップS2〜S5と同様に、ポーリング呼び出し信号“呼”(ステップS17)からデータ伝送“了”(ステップS20)までの動作を繰り返し行う。
【0049】
ステップS13で取得された車両100の停止位置情報は、地上無線通信装置10から車上無線通信装置110及び/又は制御装置40へ送信される。車上無線通信装置110へは、ステップS20のデータ伝送により送信される。車上無線通信装置110や制御装置40では、車両100の停止位置が許容範囲内にあるか否かや、正しい停止位置からのずれの大きさが判断される。そして、第3のモードにおいて、地上無線通信装置10は車上無線通信装置110に対して監視カメラ20で撮影された映像を伝送する。
【0050】
次に、停車していた車両100が出発し、車上無線通信装置110と地上無線通信装置10とが通信できない状態になると、車上無線通信装置110からのポーリング呼び出し信号“呼“に対して、地上無線通信装置10からのポーリング応答信号”応”が無い状態が続く。この状態が所定時間続くことにより、車上無線通信装置110は、それまでの通信相手であった地上無線通信装置10との間の通信が終了したことを認識し、その地上無線通信装置10に関する情報(地上無線通信装置10の装置番号や、駅番号や、ホーム番号)をリセットし、第1のモードに切り替わる。そして、ポーリング呼び出し信号による“呼”動作を繰り返し行う。
【0051】
また、地上無線通信装置10においても、車上無線通信装置110からのポーリング呼び出し信号を受信できない状態が続く。この状態が所定時間続くことにより、それまでの通信相手であった車上無線通信装置110との間の通信が終了したことを認識し、その車上無線通信装置110に関する情報(車上無線通信装置110の装置番号や、列車番号)をリセットし、第1のモードに切り替わる。そして、ポーリング呼び出し信号の待受状態になる。
【0052】
車両100が駅ホーム50に停止せず通過する場合は、地上無線通信装置10は、車両100の停止を検出できないので、第2のモードから第3のモードに切り替わることはない。車両100が駅ホーム50を通過すると、地上無線通信装置10は、車両100からの反射波を検出できなくなる。地上無線通信装置10は、第2のモードにおいて、車両100からの反射波を検出できない状態が所定時間以上続くと、車両100が駅ホーム50を通過したと判定し、第2のモードから第1のモードに切り替わる。
【0053】
一方、通過した車両100に設置された車上無線通信装置110は、第2のモードにおいて、地上無線通信装置10からの“停車完了”データ(ステップS14)を受信できない状態が所定時間以上続くと、車両100が駅ホーム50を通過したと判定し、それまでの通信相手であった地上無線通信装置10に関する情報をリセットし、第2のモードから第1のモードに切り替わる。
【0054】
図5は、本発明の実施形態における地上無線通信装置の構成図である。
地上無線通信装置10は、地上無線通信装置10の制御や各種のデータ処理を行う制御部11、搬送周波数信号を生成する発振部12、搬送周波数信号や送信信号を送信する送信部13、送信データ(この例ではNRZ(Non Return to Zero)信号)に基づく変調信号を送信部13へ供給する変調信号供給部(変調ドライバ)14、受信信号を受信する受信部15、受信部15で受信した受信信号から受信データを抽出する受信データ抽出部16、受信部15で受信した受信信号から距離データを抽出する距離データ抽出部18、受信部15で受信した受信信号を受信データ抽出部16と距離データ抽出部18へ分配する分配器17を含むように構成される。
【0055】
発振部12は、PLL(Phase Locked Loop)発振器を含むように構成され、制御部11からの信号11s2により、データ伝送モード(第1及び第3のモード)又はレーダーモード(第2のモード)になるように制御される。発振部12は、データ伝送モードにおいては、発振部12の出力周波数が一定の状態の搬送周波数を維持する。つまり、周波数一定の搬送波信号を生成する。レーダーモードにおいては、発振部12の出力周波数が、後述する図8に示すような三角波形(時間対周波数特性が三角形)となる。つまり、一定周期で周波数が変動する距離測定用信号を生成する。
【0056】
制御部11は、FFT処理部11aとデータ変換部11bとを備える。FFT処理部11aは、レーダーモードにおいて、受信部15で受信し、距離データ抽出部18で抽出された距離データに基づき、車上無線通信装置110と地上無線通信装置10との間の距離を算出する。データ変換部11bは、データ伝送モードにおいて、受信部15で受信し、受信データ抽出部16で抽出された受信データを、外部装置へ送信可能なデータに変換する。FFT処理部11aとデータ変換部11bは、信号処理用のFPGAとして構成することができる。
【0057】
制御部11は、ハードウエア構成としては、CPU(Central Processing Unit)と制御部11の動作プログラム等を格納するメモリを備えており、CPUは、この動作プログラムに従って動作する。
【0058】
送信部13は、発振部12からの出力信号を、後述する変調器13bとダウンコンバータ15cに分配する分配器13a、変調信号供給部14からの変調信号により搬送周波数信号を変調する変調器13b、変調器13bの出力信号を増幅する送信増幅器13c、送信アンテナ13dを含むように構成される。
【0059】
受信部15は、受信アンテナ15a、受信アンテナ15aの出力信号を増幅する受信増幅器15b、受信増幅器15bの出力信号に含まれる搬送周波数信号を除去するダウンコンバータ15cを含むように構成される。
【0060】
送信部13と受信部15とを含むように、無線送受信部が構成される。無線送受信部は、車上無線通信装置110との間でデータ伝送を行い、かつ車両100の停止を検出するための無線送受信を行う。
【0061】
受信データ抽出部16は、受信データ抽出に必要な周波数以外の周波数成分を除去するIFフィルタ16a、IFフィルタ16aの出力信号を増幅するIF増幅器16b、IF増幅器16bの出力信号に対し包絡線検波を行う包絡線検波器16c、包絡線検波器16cの出力信号に対し波形整形を行う波形整形器16dを含むように構成される。
【0062】
距離データ抽出部18は、距離データ抽出に必要な周波数以外の周波数成分を除去する低域IFフィルタ18a、低域IFフィルタ18aの出力信号を増幅する低域IF増幅器18b、さらに余分な周波数成分を除去する低域IFフィルタ18c、アナログ信号をデジタル化するA/D変換器(アナログデジタル変換器)18dを含むように構成される。
【0063】
なお、本実施形態においては、車上無線通信装置110は、距離測定機能が不要なので、上述した車上無線通信装置110の構成から、距離データ抽出部18や分配器17やFFT処理部11aを除去した構成により実現することができる。
【0064】
図6は、本発明の実施形態における地上無線通信装置のデータ伝送動作を説明する図である。まず、第1及び第3のモードにおけるデータ伝送のための送信動作を説明する。
制御部11においてデータ伝送モード(例えばASK変調モード)が選択されると、制御部11から、“L”レベルの信号11s1と信号11s2が出力される。信号11s1により、変調ドライバ14には“L”レベルの情報が伝達される。変調ドライバ14は、“L”レベルの情報を受けると、変調器13bに対する変調信号の供給を行う。この変調信号により、変調器13bでは、入力された信号を変調する。
【0065】
また、信号11s2により発振部12には“L”レベルの情報が伝達される。“L”レベルの情報を受けると、発振部12は、周波数が固定された搬送波信号を生成する。生成された搬送波周波数信号は、分配器13aに入力され、分配器13aの出力は二つの回路系統に分けられる。一方の搬送波周波数信号は、変調器13bに入力される。変調器13bの出力は、送信増幅器13cで所定の値まで増幅された後、送信アンテナ13dから輻射される。その際、変調器13bでは、変調ドライバ14に入力されたNRZ信号に従い、搬送波のレベルを通過させ又は減衰させて変調する。このNRZ信号が、伝送データとなる。この一連の動作が、ASK変調方式によるデータ伝送の送信動作となる。
【0066】
次に、第1及び第3のモードにおけるデータ伝送のための受信動作を説明する。
車上無線通信装置110から送信された電波は、受信アンテナ15aにて受信され、受信増幅器15bで所定の値まで増幅された後、ダウンコンバータ15cに入力される。ダウンコンバータ15cにおいて、分配器13aから出力された信号(他方の搬送波周波数信号)と混合され、分配器17に入力される。分配器17から分配された受信信号は、IFフィルタ16aに入力され、必要な帯域成分のみに整形された後、IF増幅器16bで所定のレベルまで増幅される。IF増幅器16bで増幅された受信信号は、包絡線検波器16cと波形整形器16dにより、データとして抽出される。抽出されたデータは、信号16ds1として制御部11のデータ変換部11bへ出力され、データ変換部11bによりデータ伝送用インタフェースに変換され、地上無線通信装置10から外部装置へ伝送される。
【0067】
また、制御部11は、波形整形器16dから入力された信号16ds2により、地上無線通信装置10で受信した受信信号のレベル、つまり、受信強度を判定する。第1のモードにおいては、制御部11は、受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する。受信強度が第1の値以上でないと判定した場合は、データ伝送モード(第1のモード)を継続し、信号受信と受信強度の判定を繰り返す。受信強度が第1の値以上であると判定した場合は、レーダーモード(第2のモード)への切り替えを行い、制御部11から出力される信号11s1と信号11s2を“H”レベルにする。
【0068】
また、第3のモードにおいては、制御部11は、受信強度が第2の値以下であるか否かを判定する。受信強度が第2の値以下でないと判定した場合は、データ伝送モード(第3のモード)を継続し、信号受信と受信強度の判定を繰り返す。受信強度が第2の値以下であると判定した場合は、第3のモードから第1のモードへ切り替える。
【0069】
なお、本実施形態においては、車上無線通信装置110は、データ伝送モード(第1のモードと第3のモード)において、上述した地上無線通信装置10の動作と同様の動作を行う。ただし、受信強度が第1の値以上であるか否かの判定や、受信強度が第2の値以下であるか否かの判定を行う必要はない。
【0070】
図7は、本発明の実施形態における地上無線通信装置の距離測定動作を説明する図である。まず、第2のモードにおける距離測定のための送信動作を説明する。
制御部11においてレーダーモードが選択されると、制御部11から、“H”レベルの信号11s1と信号11s2が出力される。信号11s1により、変調ドライバ14には“H”レベルの情報が伝達される。変調ドライバ14は、“H”レベルの情報を受けると、変調器13bに対し、送信データに基づく変調信号の供給を停止する。これにより、変調器13bでは、分配器13aから入力された信号をそのまま通過させる。
【0071】
また、信号11s2により、発振部12には“H”レベルの情報が伝達される。“H”レベルの情報を受けると、発振部12は、周波数が一定の間隔で掃引される搬送波信号を生成する(図8のft参照)。生成された掃引周波数信号は、分配器13aに入力され、その出力は二つの回路系統に分けられる。一方の掃引周波数信号は、変調器13bに入力される。変調器13bの出力は、送信増幅器13cで所定の値まで増幅された後、送信アンテナ13dから輻射される。その際、変調器13bでは、入力された掃引周波数信号を、減衰させずにそのまま通過させる。この一連の動作が、車両100との間の距離測定のための送信動作となる。
【0072】
次に、第2のモードにおける距離測定のための受信動作を説明する。
車上無線通信装置110で反射された電波は、受信アンテナ15aにて受信され、受信増幅器15bで所定の値まで増幅された後、ダウンコンバータ15cに入力される。ダウンコンバータ15cにおいて、分配器13aから出力された信号(他方の掃引周波数信号)と混合され、分配器17に入力される。分配器17から分配された受信信号は、低域IFフィルタ18aに入力され、必要な帯域成分のみに整形された後、低域IF増幅器18bで所定のレベルまで増幅される。低域IF増幅器18bで増幅された受信信号は、低域IFフィルタ18cで余分な周波数成分を取り除かれ、A/D変換器18dにてディジタル化される。A/D変換器18dの出力に基づき、制御部11のFFT処理部11aにおいて、車両100と地上無線通信装置10との間の距離が算出される。
【0073】
制御部11は、FFT処理部11aにおいて算出した距離について、前回の算出距離と今回の算出距離との差が0(ゼロ)になったか否か、つまり、車両100が停止したか否かを判定する。車両100が停止していないと判定した場合は、レーダーモードを継続し、距離測定動作(距離測定のための送信動作及び受信動作)を繰り返す。車両100が停止したと判定した場合は、データ伝送モード(第3のモード)への切り替えを行い、制御部11から出力される信号11s1と信号11s2を“L”レベルにする。また、制御部11は、車両100からの反射波を検出できなくなった場合は、車両100が駅ホーム50を通過したと判定し、レーダーモード(第2のモード)からデータ伝送モード(第1のモード)に切り替える。
【0074】
図8は、地上無線通信装置10の、レーダーモードにおける車両停止状態検出処理や距離測定処理を説明する図である。
図8(a)は、車両100が停止した状態において、地上無線通信装置10から無線送信される信号の送信周波数ftと、周波数ftの送信信号が車両100で反射された後、地上無線通信装置10で受信されるときの受信周波数frとを示す。縦軸は周波数、横軸は時間の推移である。図8(a)に示すように、周波数ftの送信信号を送信後、周波数frの受信信号を受信するまでに時間差があるので、送信周波数ftと受信周波数frとの間に差分(ビート)周波数fbが生じる。
【0075】
図8(b)は、差分周波数fbの時間推移を示す。縦軸は差分周波数fbの大きさ、横軸は時間の推移である。図8(b)に示すように、車両100が停止した状態において、差分周波数fbは、図8(a)で送信周波数ftと受信周波数frとが交わる点において周期的に減少するものの、それ以外の点においては、一定の大きさを維持する。したがって、例えば、図中の81と82における差分周波数fbの大きさは、同じである。つまり、差分周波数fbの大きさが、周期的に減少するものの、ほとんどのタイミングで同じであれば、車両100が停止していると判定できる。
【0076】
また、差分周波数fbの大きさは、周波数ftの送信信号を送信後、周波数frの受信信号を受信するまでの時間に比例する。すなわち、差分周波数の大きさは、車両100と地上無線通信装置10の間の距離に比例する。したがって、差分周波数の大きさに基づき、車両100と地上無線通信装置10の間の距離を算出することができる。周波数差fbと、車両100と地上無線通信装置10の間の距離との対応関係は、予め測定して求めておく。
【0077】
図9は、地上無線通信装置10の、レーダーモードにおける車両移動状態検出処理や距離測定処理を説明する図である。
図9(a)は、車両100が移動中の状態において、地上無線通信装置10から無線送信される信号の送信周波数ftと、周波数ftの送信信号が車両100で反射された後、地上無線通信装置10で受信されるときの受信周波数frとを示す。縦軸は周波数、横軸は時間の推移である。図9(a)に示すように、送信周波数ftの送信信号を送信後、周波数frの受信信号を受信するまでに時間差があることに起因する周波数差fbと、車両100が地上無線通信装置10に接近するときのドップラー効果に起因する周波数差fd(ドップラーシフト周波数)とにより、送信周波数ftと受信周波数frとの差分周波数が生じる。
【0078】
図9(b)は、差分周波数の時間推移を示す。縦軸は差分周波数の大きさ、横軸は時間の推移である。図9(b)に示すように、車両100が移動中の状態において、差分周波数は、送信周波数の三角波形の上昇部分では小さく、下降部分では大きい。したがって、例えば、図中の91と92における差分周波数の大きさは、異なる。つまり、差分周波数の大きさが、異なる大きさを周期的に繰り返せば、車両100が移動中であると判定できる。
【0079】
また、前述したように、差分周波数の大きさに基づき、車両100と地上無線通信装置10の間の距離を算出することができる。車両100が移動中の状態では、例えば、図9(b)の91と92における差分周波数の大きさを加算した後、2等分することにより、時間差があることに起因する周波数差fbを得ることができる。この周波数差fbに基づき、車両100と地上無線通信装置10の間の距離を得ることができる。
【0080】
そして、前回測定した距離と、今回測定した距離とが異なっている場合は、車両100が移動中の状態であると判定することができる。また、前回測定した距離と、今回測定した距離とが同じ場合は、車両100が停止状態であると判定することができる。
【0081】
このように、車両100と地上無線通信装置10の間の距離は、差分周波数fbの大きさに基づき算出できる。また、車両100が移動中の状態であるか、それとも停止状態であるかは、前回測定した距離と今回測定した距離との差、又は、差分周波数fbの大きさの時間的推移に基づき、判定することができる。本実施形態では、車両100が移動中の状態であるか否かを、前回測定した距離と今回測定した距離との差に基づき判定する。
【0082】
図10は、本発明の実施形態における地上無線通信装置の処理を説明する図である。この処理は、制御部11により制御される。
地上無線通信装置10は、電源ON時(デフォルト)において、データ伝送モード(第1のモード)で動作開始する(図10のステップS31)。データ伝送モードにおいて、制御部11は、受信データ抽出部16を動作させ、データ変換処理を行う。地上無線通信装置10と車上無線通信装置110との間の無線送受信が始まり、地上無線通信装置10がデータ受信すると(ステップS32)、制御部11は、波形整形器16dの出力信号16ds2のレベル、つまり受信強度としての受信信号レベルが、所定の第1の値以上であるか否かを判定する(ステップS33)。このデータ受信には、ポーリング呼び出し信号の受信も含まれる。
【0083】
このとき、地上無線通信装置10と車上無線通信装置110との間の距離が遠い場合には、受信信号レベルが低くなる。受信信号レベルが第1の値以上でない場合(ステップS33でNo)、制御部11は、ステップS32の処理に戻り、受信信号レベルが第1の値以上となるまで、すなわち、地上無線通信装置10と車上無線通信装置110との間の距離が、所定の距離以下になるまで、データ受信(ステップS32)と受信信号レベル確認(ステップS33)を繰り返す。
【0084】
このように、第1のモードにおいて、地上無線通信装置10は、車上無線通信装置110との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する。このデータ伝送(第1のモード)において、車上無線通信装置110と地上無線通信装置10との間で、各種データが無線送信される。地上無線通信装置10で受信されたデータは、制御装置40へ送信され、制御装置40で解析される。
【0085】
受信信号レベルが第1の値以上である場合(ステップS33でYes)、つまり、地上無線通信装置10と車上無線通信装置110との間の距離が所定の距離以下の場合には、制御部11は、データ伝送を停止し、当該地上無線通信装置10を、レーダーモード(第2のモード)に切り替える(ステップS34)。
【0086】
すなわち、地上無線通信装置10は、第1のモードにおいて、受信強度が第1の値以上であることを検出すると、車上無線通信装置110との間のデータ伝送を停止し、第1のモードを終了して、車両100が停止したか否かを判定する第2のモードに移行する。
【0087】
レーダーモードにおいて、制御部11は、距離データ抽出部18を動作させ、地上無線通信装置10と車上無線通信装置110との間の距離を算出するFFT処理を行う(ステップS35)。制御部11は、距離測定処理を、数μ秒〜数秒の間隔で周期的に繰り返し行い、前回の測定距離が今回の測定距離と同じであるか否かを判定する(ステップS36)。
【0088】
前回の測定距離が今回の測定距離と同じでない場合は(ステップS36でNo)、今回の距離測定ができていたか否かを判定する(ステップS42)。今回の距離測定ができていた場合は(ステップS42でYes)、ステップS35に戻り、距離測定処理を行う。今回の測定距離ができていなかった場合は(ステップS42でNo)、車両100が停止せずに通過したと判定し、後述のステップS41に移行し、それまで通信相手であった車上無線通信装置110の装置番号や列車番号等の情報を消去、つまりリセットする。その後、第1のモードのステップS32に移行する。
【0089】
前回の測定距離が今回の測定距離と同じである場合は(ステップS36でYes)、制御部11は、車両100が停止していると判定し、レーダーモードからデータ伝送モード(第3のモード)に切り替える。
【0090】
このとき、制御部11は、ステップS33の受信信号レベル確認において最後に検出した受信信号レベルが第1の値以上であったことと、車両100が停止していること(ステップS36でYes)とが、両方成立していることを条件にして(ステップS37)、データ伝送モード(第3のモード)に切り替え、データ伝送を再開する(ステップS38)。こうすることにより、車両100が停止していることの検出精度を高くすることができ、安全性を向上させることができる。
【0091】
このように、地上無線通信装置10は、第2のモードにおいて車両100の停止を検出した後、第1のモードで最後に検出した受信強度が第1の値以上であった場合に、第2のモードを終了して、車上無線通信装置110との間でデータ伝送を行う第3のモードへ移行する。
【0092】
車両100が停止状態にあるときのデータ伝送モード(第3のモード)では、双方向の無線伝送回線が構築されるため、地上無線通信装置10から車上無線通信装置110への映像データ伝送(ステップS39)や、車上無線通信装置110から地上無線通信装置10への情報データ伝送(ステップS39)が可能になる。
【0093】
例えば、地上無線通信装置10は、車両100が停止状態になったことの情報や、車両100の停止位置が所定の範囲内であるか否かの情報や、車両100の停止位置を示す情報を、車上無線通信装置110や制御装置40へ伝送することができる。
【0094】
また、例えば、運転士120aが車両100のドアを開ける車両ドア開指示を行い、この車両ドア開指示を、操作表示装置120が受け付けると、可動柵装置30の扉の開動作を要求する要求情報(第1扉開指示情報)が、操作表示装置120から車上無線通信装置110へ送信され、さらに、車上無線通信装置110から地上無線通信装置10へ無線送信される。この第1扉開指示情報は、扉の開動作を指示する第2扉開指示情報として、地上無線通信装置10から制御装置40へ送信され、これを解読した制御装置40は、可動柵装置30へ扉開指示制御信号を送信する。扉開指示制御信号を受信した可動柵装置30は、可動柵装置30の扉を開ける動作を行う。
【0095】
このとき、地上無線通信装置10は、車両100の停止位置が所定の範囲内である場合に、第2扉開指示情報を、制御装置40へ送信するようにするのが好ましい。このようにすると、車両が正常な停止位置にないにも拘わらず可動柵30の扉の開動作を行うことを防止できる。
【0096】
また、例えば、監視カメラ20で撮影した駅ホーム50の状況等の動画映像情報は、制御装置40を介して、地上無線通信装置10から車上無線通信装置110へ無線送信される。その動画映像情報は、車上無線通信装置110から操作表示装置120へ伝送され、操作表示装置120で表示される。また、車両100の車両情報は、車上無線通信装置110から地上無線通信装置10へ伝送される。
【0097】
また、例えば、運転士120aが車両100のドアを閉じる車両ドア閉指示を行い、この車両ドア閉指示を、操作表示装置120が受け付けると、可動柵装置30の扉の閉動作を要求する第1扉閉指示情報が、操作表示装置120から車上無線通信装置110へ送信され、さらに、車上無線通信装置110から地上無線通信装置10へ無線送信される。この第1扉閉指示情報は、扉の閉動作を指示する第2扉閉指示情報として、地上無線通信装置10から制御装置40へ送信され、これを解読した制御装置40は、可動柵装置30へ扉閉指示制御信号を送信する。扉閉指示制御信号を受信した可動柵装置30は、可動柵装置30の扉を閉じる動作を行う。
【0098】
車両100が停止状態にあるときのデータ伝送モード(第3のモード)においても、車両100が移動状態にあるときのデータ伝送モード(第1のモード)と同様に、制御部11は、受信データ抽出部16を動作させ、データ変換処理を行う。しかし、第3のモードでは、車上無線通信装置110との間のデータ伝送において(ステップS39)、地上無線通信装置10がデータ受信すると、制御部11は、受信信号レベルが第2の値以下(図10の例ではゼロ)であるか否かを判定する(ステップS40)。
【0099】
車両100が駅ホーム50から出発し、地上無線通信装置10と車上無線通信装置110との間で通信できない位置に到達すると、データ伝送が不可能になり、受信信号レベルが第2の値以下(例えばゼロ)になる。制御部11は、受信信号レベルが第2の値以下でない場合(ステップS40でNo)は、ステップS39に戻りデータ受信して、受信信号レベルが第2の値以下であるか否かを判定する(ステップS40)。
【0100】
受信信号レベルが第2の値以下である場合(ステップS40でYes)は、制御部11は、それまで通信相手であった車上無線通信装置110の装置番号や列車番号等の情報を消去、つまりリセットし(ステップS41)、第1のモードに移行して、車上無線通信装置110からのポーリング呼び出し信号を待つ待受状態になる。そして、車上無線通信装置110から信号を受信すると(ステップS32)、受信信号レベルが第1の値以上であるか否かをチェックする(ステップS33)。
【0101】
このように、地上無線通信装置10は、第2のモードを終了した後、車上無線通信装置110との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第2の値以下であるか否かを判定する第3のモードに移行し、第3のモードにおいて受信強度が第2の値以下であることを検出すると、第3のモードを終了し、第1のモードに移行する。
【0102】
また、車両100が駅ホーム50から出発した後において、車上無線通信装置110は、地上無線通信装置10からの受信信号レベルが所定値以下(例えばゼロ)になるのを契機にして、第1のモードに移行し、操作表示装置120のモニタ電源をOFFする。これにより、駅ホーム50の状況を映していたモニタに表示されるノイズ画面を消す。また、車上無線通信装置110は、それまで通信相手であった地上無線通信装置10の装置番号や駅番号やホーム番号等をリセットして、新たなポーリング呼び出しを開始する。
【0103】
このように、本実施形態では、車両100の停止を、レーダーモードからデータ伝送モード(第3のモード)へのモード切替の条件としているので、レーダーモード(第2のモード)において車両100の徐行状態、つまり車両100が移動している状態で、運転士120aが誤って車両100のドア開指示(つまり可動柵装置30の扉開指示)を行った場合でも、地上無線通信装置10は、レーダーモード状態であるので、可動柵装置30の扉開指示情報を受信することがない。よって、運転士120aの誤操作による扉開動作を防止でき、安全性を向上することができる。
【0104】
なお、図10の例では、地上無線通信装置10の制御部11が、レーダーモード(第2のモード)からデータ伝送モード(第3のモード)へのモード切替を行うよう制御したが、この切り替えを、運転士120aが行うようにすることも可能である。この場合は、車両100が停止したことを運転士120aが確認した後、操作表示装置120を用いて、データ伝送モード(第3のモード)へのモード切替を指示する。この指示を受けて、制御部11は、データ伝送モード(第3のモード)へ切り替える。
【0105】
本実施形態によれば、少なくとも次の効果を得ることができる。
(1)車両に設けられた車上無線通信装置との間でデータ伝送を行い、かつ車両の停止を検出するための無線送受信を行う無線送受信部を備え、車上無線通信装置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第1の値以上であるか否かを判定する第1のモードにおいて、受信強度が第1の値以上であることを検出すると、データ伝送を停止し第1のモードを終了して、車両が停止したか否かを判定する第2のモードに移行し、第2のモードにおいて車両の停止を検出した後、第2のモードを終了して、車上無線通信装置との間でデータ伝送を行うように、地上無線通信装置を構成したので、地上無線通信装置がデータ伝送動作と車両停止検出動作を行うことができ、地上側設備の設置費用を節減できる。
(2)さらに、第2のモードを終了した後、車上無線通信装置置との間でデータ伝送を行うとともに受信信号の受信強度が第2の値以下であるか否かを判定する第3のモードに移行し、第3のモードにおいて受信強度が第2の値以下であることを検出すると、第3のモードを終了し第1のモードに移行するように、地上無線通信装置を構成したので、車両が停止状態から移動状態へ移行したときに、第1のモードに移行することが容易である。
(3)第2のモードにおいて車両の停止を検出し、かつ、受信強度が第1の値以上であった場合に、第2のモードを終了するように、地上無線通信装置を構成したので、誤ってデータ伝送モード(第3のモード)に移行することを防止できる。したがって、誤って第3のモードに移行した後、車両が移動状態にあるにも拘わらず可動柵の扉の開動作を行うことを防止できる。
(4)第2のモードにおいて車両の停止を検出しなかった場合、第2のモードを終了して、第1のモードに移行するように構成したので、車両が停止せずに駅を通過する場合にも対応できる。
(5)第2のモードの終了後、制御装置に対し、可動柵の扉の開動作を可能にする扉開信号を送信するように、地上無線通信装置を構成したので、車両が移動状態にあるにも拘わらず可動柵の扉の開動作を行うことを防止できる。
(6)第2のモードにおいて、車両の停止を検出するとともに、車両の停止位置が所定の範囲内であるか否かを判定し、停止位置が所定の範囲内である場合に、第2のモードを終了するように、地上無線通信装置を構成したので、車両が正常な停止位置にないにも拘わらず可動柵の扉の開動作を行うことを防止できる。
(7)地上無線通信装置が、発振部と、送信部と、変調信号供給部と、受信部と、受信データ抽出部と、距離データ抽出部とを備え、データ伝送モードと距離測定モード(レーダーモード)において、発振部と送信部と受信部とを共用するように構成したので、データ伝送機能と距離測定機能の両機能を実現することが容易になる。
(8)車上無線通信装置と、この車上無線通信装置と無線により通信を行うデータ伝送モードと、列車の停止を無線により検出するレーダーモードとを切り替えて動作する地上無線通信装置と、駅のホームに設けられ扉が開閉する可動柵装置と、地上無線通信装置から扉の開動作を指示する扉開指示情報を受信すると扉を開くように制御する制御装置とを備えるように可動柵制御システムを構成したので、地上側設備の設置費用を節減しつつ、列車の停止検出に基づき可動柵の扉制御を確実に実施できる。
(9)地上無線通信装置は、レーダーモードで列車の停止を検出した後、データ伝送モードで車上無線通信装置から扉の開動作を要求する信号を受信すると、扉開指示情報を制御装置に送信するように可動柵制御システムを構成したので、可動柵の扉の開動作を、列車の停止検出した場合にのみ確実に実施できる。
(10)地上無線装置を、車上無線通信装置との間で無線により通信を行うデータ伝送モードと、前記列車の停止を無線により検出するレーダーモードとを切り替えて動作し、レーダーモードで列車の停止を検出した後、データ伝送モードで車上無線通信装置から扉の開動作を要求する信号を受信すると、可動柵装置の制御装置に扉の開動作を指示する扉開指示情報を送信するように構成したので、地上側設備の設置費用を節減しつつ、列車の停止検出に基づき可動柵の扉制御を確実に実施できる。
(11)可動柵装置が、列車に備えられた車上無線通信装置との間で無線により通信を行うデータ伝送モードと、前記列車の停止を無線により検出するレーダーモードとを切り替えて動作する地上無線通信装置と通信を行う制御装置を備え、前記制御装置を、扉の開動作を指示する扉開指示情報を受信すると、可動柵の扉を開くように制御するように構成したので、地上側設備の設置費用を節減しつつ、列車の停止検出に基づき可動柵の扉制御を確実に実施できる。
【0106】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能である。
【0107】
前記実施形態では、地上無線通信装置において、受信強度を調べてレーダーモードに移行し、車上無線通信装置との間の距離測定を行って車両の停止を検出し、車両の停止を検出すると、データ伝送を開始するとともに受信強度を調べて車両の移動有無を検出するように構成したが、これらの動作を、車上無線通信装置において行うように構成することも可能である。
【0108】
また、前記実施形態では、車上無線通信装置からポーリング呼び出し信号を送信し、地上無線通信装置から応答するように構成したが、この逆の構成、つまり、地上無線通信装置からポーリング呼び出し信号を送信し、車上無線通信装置から応答するように構成することも可能である。
【0109】
また、前記実施形態では、第1のモードにおいて、車上無線通信装置と地上無線通信装置との間の距離が大きい場合にも、車上無線通信装置からポーリング呼び出し信号を繰り返し送信するように構成したが、車上無線通信装置と地上無線通信装置との間の距離が近づいたときに、第1のモードを開始するように構成してもよい。
例えば、車上無線通信装置と地上無線通信装置との間の距離が大きいときにレーダーモードを用い、地上側無線通信装置がレーダーモードで列車を検出すると、車上無線通信装置に呼び出し信号を送信し、それに応じて車上無線通信装置と地上無線通信装置とが通信(特に地上無線通信装置による受信強度測定)を開始してもよい。なお、この場合、地上無線通信装置は第3のモード後(列車通過後)は、レーダーモードに復帰することになる。
【0110】
また、列車の運転士による操作に基づいて、第1のモードを開始するように構成してもよい。例えば車上無線通信装置や操作表示装置の操作に基づいて、車上無線通信装置が呼び出し信号を送信し、それに応じて地上無線通信装置と車上無線通信装置とが通信(特に地上無線通信装置による受信強度測定)を開始してもよい。
【0111】
また、列車が他の位置検出センサ等により自車両が駅ホームに近づいたことを検出すると、第1のモードを開始し、車上無線通信装置が呼び出し信号を送信し、それに応じて地上無線通信装置と車上無線通信装置とが通信(特に地上無線通信装置による受信強度測定)を開始してもよい。
【0112】
また、前記実施形態では、地上無線通信装置は、車両の停止を検出し、且つ、停止位置が所定の範囲内である場合に、車上無線通信装置から受信した扉開指示情報を制御装置へ送信する例を説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、車上無線通信装置が地上無線通信装置から許可信号を受信しない限り、車両のドアの開動作を禁止するように構成してもよい。許可信号は、例えば上記停車完了の信号(図3のS14)である。車上無線通信装置は、この許可信号を受信しない限り、操作表示装置等に対して、運転士による車両ドアの開指示を受け付けないように制御する信号を出力する。その結果、車上無線通信装置が許可信号を受信しない限り、車両ドアは開かない。この許可信号は列車が所定の範囲内に停止しないと地上無線通信装置から車上無線通信装置に送信されないように構成することで、列車が誤って停止位置から大きく(所定範囲以上)離れて停止してしまった場合には車両のドアと可動柵のドアの両方が開かないため、安全性が向上する。
【0113】
また、前記実施形態では、可動柵装置と制御装置を別の構成としたが、両者を一体の構成としてもよい。例えば、制御装置を可動柵装置内に組み込み、制御装置を可動柵装置の一構成部分としてもよい。
【0114】
また、前記実施形態では、移動体が列車である場合を例にあげて説明したが、本発明は列車以外にも適用できることはいうまでもない。例えば、バス、自動車、船舶、飛行機など所定のエリアに停止する移動体であればよい。この場合、地上無線通信装置は、移動体が前記所定のエリアに停止したことを検出する。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、列車の停止判定技術、位置判定技術等に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
10…地上無線通信装置、10a…アンテナ、11…制御部、11a…FFT処理部、11b…データ変換部、12…発振部、13…送信部、13a…分配器、13b…変調器、13c…送信増幅器、13d…送信アンテナ、14…変調信号供給部(変調ドライバ)、15…受信部、15a…受信アンテナ、15b…受信増幅器、15c…ダウンコンバータ、16…受信データ抽出部、16a…IFフィルタ、16b…IF増幅器、16c…包絡線検波器、16d…波形整形器、17…分配器、18…距離データ抽出部、18a…低域IFフィルタ、18b…低域IF増幅器、18c…低域IFフィルタ、18d…A/D変換器、20…監視カメラ、30…可動柵装置、40…制御装置、50…駅ホーム、50a…停止目標、100…車両、110…車上無線通信装置、110a…アンテナ、120…操作表示装置、120a…運転士。
図1
図2
図3
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図9
図10