(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記デバイスは眼球装着デバイスであり、前記高分子材料は凹面および凸面を有し、前記凹面は、角膜表面上に取り外し可能に装着されるように構成され、前記凸面は、前記凹面が装着された時に、眼瞼の動きに適合するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
前記高分子材料はチャネルを含み、前記チャネルは、前記凹面が眼球上に装着された時に、前記電極が該チャネルを介して涙液に曝されるように、位置付けられる、請求項4に記載のデバイス。
前記高分子材料は、前記電極の付近に電解質吸収性シリコンヒドロゲルを含み、前記凹面が眼球上に装着された時に、前記電極を、前記シリコンヒドロゲルを通って拡散した涙液内の電解質に曝す、請求項4に記載のデバイス。
前記センサ電極に印加される前記電圧は、前記生成された電流をAC電流にする周期的に変動するAC電圧であり、前記コントローラは、さらに、前記AC電圧を生成し、前記AC電流を測定するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
導電率センサの第1電極および第2電極に、前記第1および第2電極間の流体試料セルを占める涙液の導電度に関連した電流を前記電極間に生成するのに十分な電圧を印加するステップであって、前記導電率センサは、眼球装着デバイス内に埋め込まれた基板上に配置され、前記導電率センサは、前記流体試料セルを画定するトレンチが内部に形成されたフレームを備え、前記トレンチは、第1側壁および第2側壁を備え、前記第1電極は前記第1側壁上に形成され、前記第2電極は前記第2側壁上に形成され、前記第1および第2電極は、前記流体試料セルの両側に配置される、ステップと、
前記生成された電流を測定するステップと、
前記眼球装着デバイスの前記基板上に配置されたアンテナを使用して、前記測定された電流を示すステップと、
を含む、方法。
前記第1および第2電極に前記電圧を印加するステップは、前記生成された電流をAC電流にする周期的に変動するAC電圧を、前記センサ電極に印加することを含む、請求項15に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0024] 以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成する添付の図面が参照される。図面において、同様の符号は、文脈上特段の記載がない限り、通常、同様のコンポーネントを特定する。詳細な説明、図面および請求の範囲内に記載される例示的な実施形態は、限定を意図したものではない。本明細書内に示す主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態も利用することができ、他の変更を加えることもできる。本明細書内に概略的に記載され、かつ図面内に図示される本開示の態様は、多種多様な構成で配置、置換、組み合わせ、分離、および設計することができ、それらの全てが本明細書内で明確に意図されていることが容易に理解されよう。
【0011】
I.概要
[0025] 小さい試料体積から導電率の測定を行う際に有益なナノリットルスケールの流体試料セルを備える浸透圧センサが開示される。このような浸透圧センサを製作する方法も本明細書に開示される。一例の用途において、センサは、高分子材料から形成される身体装着デバイスまたは植込み可能なデバイス内に埋め込まれた後、生体内での浸透圧測定を行うために使用され得る。例えば、コンタクトレンズに類似の眼球装着デバイスは、電力、通信、および多様な論理機能を提供するための埋め込み電子機器を装備し得る。浸透圧センサは、コンタクトレンズに含まれてもよく、電子機器は、センサを動作させて読み取り値を取得し、結果を伝達することができる。眼球装着デバイス内のチャネルにより、センサが涙液に曝され、その後、涙液の導電率が測定されることで浸透圧の指標が提供され得る
【0012】
[0026] コンタクトレンズは、眼球への接触装着が容易になるように成形された高分子材料から形成され得る。基板は、高分子材料内に埋め込まれ、電子機器は、基板上に実装され得る。例えば、基板は、涙液の特性を測定し、アンテナを使用して外部の読取装置に結果を伝達するように構成された電子機器を備え得る。コンタクトレンズは、測定および通信機能を実行する電子機器に電力供給するためのエネルギ収集システム(例えば、光電池または無線周波数エネルギ収集アンテナ)も備え得る。いくつかの例において、アンテナおよびセンサの両方にはチップが接続され、これらの全てが、眼球装着デバイスの高分子材料内に埋め込まれた基板上に配置され得る。チップは、(i)チップに電力供給するDC電圧を提供するためのループアンテナまたは光電池から収集されたエネルギを調整し、(ii)センサを動作させて測定を行い、(iii)アンテナを使用して結果を伝達するように、構成され得る。
【0013】
[0027] したがって、ドライアイ疾患は、上述した眼球装着電子機器プラットフォーム内に含まれる好適なセンサを使用して、涙液の特性を測定することにより、診断および/または監視することができる。導電率は、電解質(例えば、塩)の濃度に応じて変わるため、涙液導電率は、溶質濃度の良好な指標であり、ゆえに、ドライアイ状態の有効な指標である。眼球装着プラットフォーム用の導電率センサは、コンタクトレンズが眼球上に装着されている間、涙液に曝される2つ以上の電極を備え得る。これらの電極は、試料体積の両側を形成するように配置され得る。涙液の導電率は、電極に電圧を印加し、結果として得られた電流を測定することにより特定され得る。その後、この結果はアンテナを使用して伝達され、それにより、センサシステムは、リアルタイムで生体内測定を行い、結果を伝達することができる。
【0014】
[0028] 所与の導電率測定について、所与の電圧に応答して生成された電流は、電極の幾何学的配置および電極間に位置付けられた流体試料の体積に応じて左右され得る。導電率測定は、2つの電極間の分離距離が電極全体を通して実質的に一定となるように位置付けられた電極を使用して行われ得る。そのようにしなければ、導電率測定は、両電極の最も近い領域間にある流体試料の部分に左右されてしまうことがある。さらに、電極は、これら電極の幾何学的配置を経時的に保存し、様々な時間に得られた測定値を互いに比較することができるように、剛性の筐体またはフレームに実装され得る。
【0015】
[0029] いくつかの実施形態において、流体導電率は、電極にAC電圧を印加し、結果的に得られた電極間の電流を測定することによって、測定することができる。AC電圧は、流体内の電気分解を抑制し、また、2つの電極に電荷担体が蓄積するのを防ぐために、DC電圧の代わりに使用され得る。さらに、開示されるセンサは、眼球を被覆する涙膜の厚さよりも数倍大きな深さを有する涙液試料体積を含み得る。結果として、電極間の電界は、涙膜の厚さのばらつきによって大きな影響を受けない。
【0016】
[0030] 電極は、プラチナ、パラジウム、炭素、銀、金、他の好適な導電性材料、および/またはそれらの組み合わせから形成することができる。フレームは、フォトレジストをパターニングし、トレンチをエッチングすることによって内部にトレンチが形成されたシリコンウェーハから形成され得る。その後、電極がトレンチの両側に(例えば、堆積により)パターニングされ得る。シリコンウェーハは、これにより、2つの電極の幾何学的配置を固定する構造的なフレームを提供する。
【0017】
[0031] 身体装着デバイスは、さらに、AC電圧ジェネレータ、電流センサ、およびアンテナを備え得る。AC電圧ジェネレータは、電極にAC電圧を印加し得る。電流センサは、電極を介して結果として得られた電流を測定し得る。アンテナは、測定された電流をこのアンテナを使用して外部の読取装置に示すために使用され得る。その後、外部の読取装置(または、別のデバイス)は、その電流測定値を使用して、流体導電率および/または流体の他の性質を特定することができる。
【0018】
II.眼科用電子機器プラットフォームの例
[0032]
図1は、外部の読取装置180と無線で通信する眼球装着デバイス110を備えたシステム100のブロック図である。眼球装着デバイス110の露出領域は、眼球の角膜表面に接触して装着されるように形成された高分子材料120から成る。基板130は、高分子材料120内に埋め込まれ、電源140、コントローラ150、バイオインタラクティブ電子機器160、および通信アンテナ170のための実装面を提供する。バイオインタラクティブ電子機器160は、コントローラ150によって動作させられる。電源140は、コントローラ150および/またはバイオインタラクティブ電子機器160に動作電圧を供給する。アンテナ170は、眼球装着デバイス110に対し、情報を送信および/または受信するように、コントローラ150によって動作させられる。アンテナ170、コントローラ150、電源140、およびバイオインタラクティブ電子機器160は、全て、埋め込まれた基板130上に位置付けられ得る。眼球装着デバイス110は、電子機器を含み、かつ、眼球に接触して装着されるように構成されるため、本明細書においては、眼科用電子機器プラットフォームとも呼ばれる。
【0019】
[0033] 接触装着を容易にするために、高分子材料120は、湿った角膜表面に(例えば、角膜表面を被覆する涙膜との毛細管力によって)付着(「装着」)するように構成された凹面を有し得る。それに加え、またはその代わりに、眼球装着デバイス110は、角膜表面と高分子材料との間の凹湾曲に起因する真空力によって、付着されてもよい。眼球に対して凹面側で装着される一方、高分子材料120の外向き表面は、眼球装着デバイス110が眼球に装着されている間、眼瞼の動きと干渉しないように形成される凸湾曲を有し得る。例えば、高分子材料120は、コンタクトレンズと同様に成形された実質的に透明で湾曲した高分子ディスクであり得る。
【0020】
[0034] 高分子材料120は、コンタクトレンズまたは角膜表面への直接的な接触を伴う他の眼科用途における使用目的で採用されるような材料等の1つ以上の生体適合性材料を含み得る。高分子材料120は、任意で、部分的にそのような生体適合性材料から形成されてもよく、あるいは、そのような生体適合性材料を使用した外側コーティングを含んでもよい。高分子材料120は、角膜表面を湿らせるように構成された材料(ヒドロゲル等)を含むことができる。いくつかの実施形態において、高分子材料120は、着用者の快適性を高めるために、変形可能な(「非剛体の」)材料であってもよい。いくつかの実施形態において、高分子材料120は、(例えば、視力矯正用途向けの)所定の視力矯正屈折力を提供するように成形されてもよい。
【0021】
[0035]基板130は、バイオインタラクティブ電子機器160、コントローラ150、電源140、および、アンテナ170を実装するのに適した1つ以上の表面を含む。基板130は、チップベースの回路(例えば、接続パッドへのフリップチップ実装による回路)用の実装プラットフォーム、および/または、導電性材料(例えば、金、プラチナ、パラジウム、チタン、銅、アルミニウム、銀、金属、他の導電性材料、それらの組み合わせ等)をパターニングして電極、インタコネクト、接続パッド、アンテナ等を作るためのプラットフォームのいずれのプラットフォームとしても採用することができる。いくつかの実施態において、実質的に透明な導電性材料(例えば、インジウムスズ酸化物)を基板130上でパターニングし、回路、電極等を形成することができる。例えば、アンテナ170は、金または別の導電性材料のパターンを、基板130上に堆積、フォトリソグラフィ、電気めっき法等により形成することによって形成され得る。同様に、コントローラ150とバイオインタラクティブ電子機器160との間のインタコネクト151、および、コントローラ150とアンテナ170との間のインタコネクト157は、それぞれ、基板130上に導電性材料の好適なパターンを堆積させることによって形成され得る。フォトレジスト、マスク、堆積技術および/またはめっき技術の使用を含む(これらに限定されない)超微細加工技術を組み合わせて採用して、基板130上で材料をパターニングすることができる。
【0022】
[0036] 基板130は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)等の比較的剛性のある材料、あるいは、高分子材料120内で回路および/またはチップベースの電子機器を構造的に支持するように構成された別の材料であり得る。あるいは、眼球装着デバイス110は、単一の基板の代わりに、一組の接続されていない基板を用いて構成されてもよい。例えば、コントローラ150と、バイオインタラクティブ電子機器160内含まれるセンサとが1つの基板上に実装され、アンテナ170が別の基板に実装され、これら2つの基板がインタコネクト157を介して電気的に接続されるようにしてもよい。別の例では、基板130は、アンテナ170のそれぞれ分離し、重なり合ったコイル状部分をそれぞれ支持する別個の隔壁を備え得る。例えば、アンテナ170は、眼球装着デバイス110の周りをそれぞれの半径で円周方向に巻回し、並列および/または直列に接続された複数の巻き線に分割される。個々の巻き線が互いに対して容易に動くようにすることで眼球装着デバイス110の可撓性を高め、かつ巻き線の結束を防止するために、個々の巻き線は、それぞれ、アンテナの巻き線に実質的に対応し得る基板130の分割された部分上に実装され得る。
【0023】
[0037] いくつかの実施形態において、バイオインタラクティブ電子機器160(および基板130)は、眼球装着デバイス110の中心から離れて位置決めされ、それにより、眼球の中央感光領域への光の透過との干渉を回避することができる。例えば、眼球装着デバイス110が凹湾曲したディスク状に成形されている場合、基板130は、ディスクの周辺部(例えば、外周付近)に埋め込まれ得る。しかし、いくつかの実施形態では、バイオインタラクティブ電子機器160(および基板130)は、眼球装着デバイス110の中心領域内または中心領域付近に位置決めされてもよい。それに加え、またはその代わりに、バイオインタラクティブ電子機器160および/または基板130は、入射する可視光に対し実質的に透明で、眼球への光透過に対する干渉を軽減するようにしてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、バイオインタラクティブ電子機器160は、表示命令に従って、眼球で受けられる光を放出および/または透過する画素アレイ164を備え得る。これにより、バイオインタラクティブ電子機器160は、任意で、眼球装着デバイス110の着用者に対し、例えば、画素アレイ164に関する情報(例えば、文字、記号、点滅パターン)を表示するなどして、知覚可能な視覚的刺激を生成するように、眼球装着デバイスの中心に位置決めされ得る。
【0024】
[0038] 基板130は、埋め込み電子コンポーネント用の実装プラットフォームを提供するのに十分な半径方向の幅寸法を有する平坦なリングとして成形され得る。基板130は、眼球装着デバイス110の輪郭に影響を与えずに高分子材料120内に埋め込められるのに十分な薄さを有し得る。基板130は、この基板上に実装される電子機器を支持するのに適した構造的安定性を提供するのに十分な厚さを有し得る。例えば、基板130は、直径が約10ミリメートル、半径方向の幅が約1ミリメートル(例えば、外半径が内半径よりも1ミリメートルほど大きい)、厚さが約50マイクロメートルのリングとして成形され得る。基板130は、任意で、眼球装着デバイス110の眼球装着面(例えば、凸面)の曲率に合わせられてもよい。例えば、基板130は、内半径および外半径を画定する2つの円形セグメント間の仮想円錐の表面に沿って成形され得る。そのような場合、仮想円錐の表面に沿った基板130の表面は、その半径で、眼球装着面の曲率と略一致した傾斜面を画定する。
【0025】
[0039] 電源140は、周囲エネルギを収集し、コントローラ150およびバイオインタラクティブ電子機器160に電力供給するように構成される。例えば、無線周波数エネルギ収集アンテナ142は、入射する無線放射からエネルギを捕捉することができる。それに加えて、またはその代わりに、太陽電池144(光電池)により、入射する紫外線、可視光、および/または、赤外線からエネルギを捕捉してもよい。さらに、慣性環境発電システム(inertial power scavenging system)を備えて、周囲の振動からエネルギを捕捉してもよい。エネルギ収集アンテナ142は、任意で、外部の読取装置180に情報を伝達するためにも使用される二重用途アンテナであってもよい。つまり、通信アンテナ170の機能と、エネルギ収集アンテナ142の機能とは、同一の物理アンテナによって実施することができる。
【0026】
[0040] 整流器/調整器146を使用して、捕捉されたエネルギを、コントローラ150に供給される安定したDC供給電圧141へと調整することができる。例えば、エネルギ収集アンテナ142は、入射した無線周波数放射を受け得る。アンテナ142の引込線上の多様な電気信号は、整流器/調整器146に出力される。整流器/調整器146は、多様な電気信号をDC電圧に整流し、整流後のDC電圧を、コントローラ150を動作させるのに適したレベルに調整する。それに加え、またはその代わりに、太陽電池144からの出力電圧を、コントローラ150を動作させるのに適したレベルに調整してもよい。整流器/調整器146は、周囲エネルギ収集アンテナ142および/または太陽電池144内の高周波数変動を軽減するための1つ以上のエネルギ蓄積デバイスを備えてもよい。例えば、1つ以上のエネルギ蓄積デバイス(例えば、コンデンサ、インダクタ等)は、整流器146の出力に並列に接続されてDC供給電圧141を調整し、ローパスフィルタとして機能するように構成され得る。
【0027】
[0041] コントローラ150は、DC供給電圧141がコントローラ150に供給されると作動し、コントローラ150内の論理が、バイオインタラクティブ電子機器160およびアンテナ170を動作させる。コントローラ150は、バイオインタラクティブ電子機器160を、眼球装着デバイス110の生物環境と相互作用するように動作させるように構成された論理回路を含み得る。相互作用には、分析物バイオセンサ162等の、バイオインタラクティブ電子機器160の1つ以上のコンポーネントを使用し、生物環境からの入力を得ることが含まれ得る。それに加え、またはその代わりに、相互作用には、画素アレイ164等の1つ以上のコンポーネントを使用して、生物環境に出力を提供することが含まれ得る。
【0028】
[0042] 一例において、コントローラ150は、分析物バイオセンサ162および/または導電率センサ163を動作させるように構成されたセンサインタフェースモジュール152を備える。分析物バイオセンサ162は、例えば、作用電極および参照電極を備えた電流測定電気化学センサであり得る。電圧は、作用電極と参照電極との間に印加され、作用電極において分析物に電気化学反応(例えば、還元反応および/または酸化反応)を起こさせることができる。電気化学反応は、作用電極を介して測定され得る電流測定用電流を生成し得る。電流測定用電流は、分析物濃度に依存し得る。したがって、作用電極を介して測定される電流測定用電流の量は、分析物濃度の指標を提供することができる。導電率センサ163は、例えば、2つの電極が試料体積を囲む二極センサであり得る。2つの電極に(例えばセンサインタフェース152により)電圧が印加され、結果として生じた試料セルを通る電流が測定され得る。したがって、電流は、試料体積を占める流体の導電率の基準を提供する。導電率は、さらに、溶質濃度(浸透圧)の推定に使用することができる。これは、流体の溶質濃度は、一般的に、導電率測定によって示されるイオン濃度に関連するためである。
【0029】
[0043] コントローラ150は、任意で、画素アレイ164を動作させるためのディスプレイドライバモジュール154を備え得る。画素アレイ164は、マトリックス状に配置された、別個にプログラム可能な光透過、光反射、および/または、光放出画素のアレイであり得る。個々の画素回路は、任意で、液晶技術、微小電子機械技術、放射ダイオード技術等を含み、ディスプレイドライバモジュール154からの情報に従って、選択的に光を透過、反射、および/または、放出することができる。このような画素アレイ164は、任意で、2つ以上の画素の色(例えば、赤、緑、および青色画素)を含み、視覚的コンテンツをカラー描画することもできる。ディスプレイドライバモジュール154は、例えば、画素アレイ164内の別個にプログラムされた画素にプログラミング情報を提供する1つ以上のデータラインと、このプログラミング情報を受信する画素グループを設定するための1つ以上のアドレス指定線を備え得る。眼球上に位置付けられたこのような画素アレイ164は、画素アレイからの光を目で知覚可能な焦点面へと誘導するための1つ以上のレンズを備えてもよい。
【0030】
[0044] コントローラ150は、アンテナ170を介して情報を送信および/または受信するための通信回路156も備え得る。通信回路156は、任意で、アンテナ170によって送信および/または受信される搬送周波数の情報を変調および/または復調するための1つ以上の発振器、ミキサ、周波数注入器等を備え得る。場合により、眼球装着デバイス110は、アンテナ170のインピーダンスを、外部の読取装置180によって感知可能な態様で変調することにより、バイオセンサからの出力を示すように構成される。例えば、通信回路156は、アンテナ170からの後方散乱放射の振幅、位相、および/または、周波数の変動を引き起こし、この変動が読取装置180によって検出され得る。
【0031】
[0045] コントローラ150は、インタコネクト151を介してバイオインタラクティブ電子機器160に接続される。例えば、コントローラ150が集積回路内に実装されてセンサインタフェースモジュール152および/またはディスプレイドライバモジュール154を形成する論理素子を含む場合、パターニングされた導電性材料(例えば、金、プラチナ、パラジウム、チタン、銅、アルミニウム、銀、金属、それらの組み合わせ等)により、チップ上の端子をバイオインタラクティブ電子機器160に接続させることができる。同様に、コントローラ150は、インタコネクト157を介してアンテナ170に接続される。
【0032】
[0046] なお、
図1に示すブロック図は、説明の便宜上、機能モジュールに関連して記載されている。しかし、眼球装着デバイス110の実施形態は、単一のチップ、集積回路、および/または物理的コンポーネント内に実施される1つ以上の機能モジュール(サブシステム)を含んで構成されてもよい。例えば、整流器/調整器146は電力供給ブロック140内に図示されているが、整流器/調整器146は、コントローラ150の論理素子および/または眼球装着デバイス110内の埋め込み電子機器の他の機構も含むチップ内に実施されてもよい。したがって、電源140からコントローラ150に供給されるDC供給電圧141は、チップ上のコンポーネントに、同一チップ内に位置付けられる整流器/調整器コンポーネントによって供給される供給電圧であり得る。すなわち、電力供給ブロック140およびコントローラブロック150として示された
図1の機能ブロックは、物理的に別個のモジュールとして実施されなくてもよい。さらに、
図1に示される機能モジュールの1つ以上は、互いに電気接続される別個にパッケージ化されたチップとして実施されてもよい。
【0033】
[0047] それに加え、またはその代わりに、エネルギ収集アンテナ142および通信アンテナ170は、同一の物理アンテナとして実施されてもよい。例えば、ループアンテナは、入射する放射を電力生成のために収集することも、後方散乱放射を介して情報を伝達することもできる。
【0034】
[0048] 外部の読取装置180は、眼球装着デバイス110に対して無線信号171を送受信するためのアンテナ188(または複数から成る一組のアンテナ)を備える。外部の読取装置180は、また、メモリ182と通信するプロセッサ186を有する計算システムも備える。メモリ182は、プロセッサ186によって読み取り可能な磁気ディスク、光ディスク、有機メモリおよび/または任意の他の揮発性(例えば、RAM)もしくは不揮発性(例えば、ROM)記憶システム(これらに限定されない)を含み得る非一時的なコンピュータ可読媒体である。メモリ182は、(例えば、分析物バイオセンサ162からの)センサ読み取り値、(例えば、眼球装着デバイス110および/または外部の読取装置180の挙動を調節するための)プログラム設定等のデータの指標を格納するデータ記憶部183を備え得る。メモリ182は、プロセッサ186により実行されるプログラム命令184も含み、この命令184によって特定された処理を外部の読取装置180に実行させ得る。例えば、プログラム命令184は、外部の読取装置180に眼球装着デバイス110から伝達された情報(例えば、分析物バイオセンサ162からのセンサ出力)の検索を可能にするユーザインタフェースを提供させることができる。外部の読取装置180は、また、眼球装着デバイス110に対して無線信号171を送受信するようにアンテナ188を動作させるための1つ以上のハードウェアコンポーネントも備え得る。例えば、発振器、周波数注入器、エンコーダ、デコーダ、増幅器、フィルタ等は、プロセッサ186からの命令に従ってアンテナ188を駆動することができる。
【0035】
[0049] 外部の読取装置180は、無線通信リンク171を提供するのに十分な無線接続性を有するスマートフォン、携帯情報端末(digital assistant)、または、他の携帯型計算デバイスであり得る。外部の読取装置180は、例えば、通信リンク171が、携帯型計算デバイスでは通常使用されない搬送波周波数で動作する場合などにおいて、携帯型計算デバイスに接続され得るアンテナモジュールとして実施することもできる。場合によっては、外部の読取装置180は、無線通信リンク171が低電力の割当で動作することが可能になるように着用者の眼球の比較的近くに着用されるように構成される特殊用途デバイスである。例えば、外部の読取装置180は、ネックレス、イヤリング等のジュエリー内に一体化されたり、帽子、ヘッドバンド、スカーフ、眼鏡等の頭部付近に着用される服飾商品またはアクセサリ内に一体化されたりすることもできる。
【0036】
[0050] いくつかの実施形態において、システム100は、コントローラ150および電子機器160に電力供給するために、眼球装着デバイス110に非連続的(「断続的」)にエネルギを供給するように動作し得る。例えば、無線周波数放射171は、センサ電子機器160を動作させ、かつその動作の結果を伝達するのに十分な時間にわたり、眼球装着デバイス110に電力供給するべく供給されてもよい。そのような例では、供給された無線周波数放射171は、外部の読取装置180から眼球装着デバイス110にフィードバック(例えば、センサ測定値)を要求するための呼び掛け信号とみなされ得る。眼球装着デバイス110に対し、(例えば、このデバイスを一時的に作動させるために無線周波数放射171を供給することにより)定期的に呼び掛けを行うことにより、外部の読取装置180は、眼球装着デバイス110に連続的な電力供給を行わずに、ある期間にわたる一組の測定値(または他のフィードバック)を蓄積することができる。
【0037】
[0051]
図2Aは、眼球装着電子デバイス210(または、眼科用電子機器プラットフォーム)の一例を示す上面図である。
図2Bは、
図2Aに示した眼球装着電子デバイスの例の側面図である。なお、
図2Aおよび
図2Bの相対的寸法は、必ずしも縮尺通りではなく、例示した眼球装着電子デバイス210の構成の記載にあたって、単に説明を目的として描画されたものである。眼球装着デバイス210は、湾曲したディスクとして成形された高分子材料220から形成される。眼球装着デバイス210は、ループアンテナ270、コントローラ250、および高分子材料220内に埋め込まれた基板230上に実装された導電率センサ260を備え得る。
【0038】
[0052] 高分子材料220は、眼球装着デバイス210が眼球に装着されている間、入射光を眼球まで透過させることができるように実質的に透明な材料であり得る。高分子材料220は、検眼における視力矯正用および/または化粧用コンタクトレンズを形成するのに採用されるものと同様の、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(polyHEMA)、シリコーンヒドロゲル、これらの組み合わせ等の生体適合性材料であり得る。高分子材料220は、一方の側に、眼球の角膜表面上に装着するのに適した凹面226を有するように形成され得る。ディスクの反対側には、眼球装着デバイス210が眼球に装着されている間、眼瞼の動きと干渉しない凸面224を有し得る。円形の外側縁228は、凹面226と凸面224とを接続する。高分子材料220は、多様な方法で湾曲した形状に形成され得る。例えば、視力矯正コンタクトレンズを形成するのに採用されるような技術と同様の、熱成形、射出成形、スピンコーティング等の技術を採用して、高分子材料220を形成することができる。
【0039】
[0053] 眼球装着デバイス210は、およそ1センチメートルの直径および約0.1〜0.5ミリメートルの厚さといった、視力矯正用および/または化粧用コンタクトレンズと同様の寸法を有し得る。ただし、これらの直径および厚さの値は、単に説明を目的として提示するものである。いくつかの実施形態において、眼球装着デバイス210の寸法は、着用者の眼球の角膜表面のサイズおよび/もしくは形状に応じて、ならびに/または、高分子材料220内に埋め込まれた1つ以上のコンポーネントを収容するべく、選択することができる。
【0040】
[0054] 眼球装着デバイス210が眼球に装着されている時には、凸面224は、外向きに周囲環境に面し、凹面226は、内向きに角膜表面に面する。したがって、凸面224は、眼球装着デバイス210の外側の上面であるとみなされ、凹面226は、内側の底面であるとみなされ得る。
図2Aに示される「上面」図は、凸面224側に面している。
【0041】
[0055] 基板230は、高分子材料220の中心領域221から離れた、外側周辺部222に沿って位置付けられるように、高分子材料220内に埋め込まれ得る。基板230は、平坦な円形リング(例えば、中心孔を有するディスク)として成形され得る。基板230の(例えば、半径方向の幅に沿った)平坦面は、(例えば、フリップチップ実装により)チップ等の電子機器を実装し、導電性材料を(例えば、フォトリソグラフィ、堆積、めっき法等の超微細加工技術により)パターニングして、電極、アンテナ、および/またはインタコネクトを形成するためのプラットフォームとして機能する。基板230および高分子材料220は、共に、共通の中心軸を中心にして、略円筒対称であり得る。基板230は、例えば、約10ミリメートルの直径、約1ミリメートルの半径方向幅(例えば、外半径が内半径よりも1ミリメートルほど大きい)、および約50マイクロメートルの厚さを有し得る。ただし、これらの寸法は、例示のみを目的として提示され、本開示をいかようにも限定するものではない。基板230は、
図1に関連して上述した基板130と同様に、様々なフォームファクタを想定して実施され得る。
【0042】
[0056] コントローラ250は、導電率センサ260およびループアンテナ270を動作させるように構成された論理素子を含むチップであり得る。コントローラ250は、同様に基板230上に位置付けられるインタコネクト257によりループアンテナ270に電気的に接続される。同様に、コントローラ250は、インタコネクト251によりセンサ260に電気的に接続される。インタコネクト251、257、ループアンテナ270、およびセンサ260内に含まれる導電性電極は、堆積、フォトリソグラフィ等の材料を精密にパターニングするためのプロセスによって、基板230上にパターニングされた導電性材料から形成され得る。基板230上にパターニングされる導電性材料としては、例えば、金、プラチナ、パラジウム、チタン、炭素、アルミニウム、銅、銀、塩化銀、不活性材料から形成される導電体、金属、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0043】
[0057] ループアンテナ270は、平坦な導電性リングを形成するように基板の平坦面に沿ってパターニングされた導電性材料の層である。いくつかの例において、高分子材料の曲率に沿ってさらなる可撓性を付与するために、ループアンテナ270は、並列または直列に電気的に連結された複数の実質的に同心の部位を含み得る。各部位は、眼球装着デバイス210の凸面/凹面曲率に沿って独立して屈曲することができる。いくつかの例において、ループアンテナ270は、完全なループを成さずに形成されてもよい。例えば、アンテナ270は、
図2Aに例示するように、コントローラ250およびセンサ260用の空間を設けるための切欠きを有し得る。ただし、ループアンテナ270は、基板230の平坦面の周りを一周以上完全に巻回する導電性材料から成る連続したストリップとして構成することもできる。例えば、複数の巻き数を有する導電性材料のストリップを、基板230の、コントローラ250およびセンサ260とは反対側にパターニングすることができる。そのような巻回されたアンテナの端部(例えばアンテナ引込線)間のインタコネクトは、コントローラ250まで基板230を貫通し得る。
【0044】
[0058]
図2Cは、眼球10の角膜表面22に装着されている時の眼球装着電子デバイス210の例を示す側断面図である。
図2Dは、例示された眼球装着デバイス210の露出面224、226を囲む涙膜層40、42を強調して示す拡大側断面図である。なお、
図2Cおよび2Dの相対寸法は、必ずしも縮尺通りではなく、例示した眼球装着電子デバイス210の構成の記載にあたって、単に説明を目的として描画されたものである。例えば、眼球装着デバイスの全体的な厚さは、約200マイクロメートルであり得る一方、涙膜層40、42の厚さはそれぞれ約10マイクロメートルであり得るが、この比率は図面中に反映されないこともある。例示を可能にし、かつ説明を容易にするために、一部の側面が誇張されている。
【0045】
[0059] 眼球10は、上眼瞼30と下眼瞼32とを眼球10の上で合わせるように動かすことにより覆われる角膜20を含む。入射光は、角膜20を通して眼球10で受けられ、そこで光は眼球10の感光要素(例えば、杆体および錐体)へと光学的に誘導されて、視覚を刺激する。眼瞼30、32の動きにより、涙膜は、眼球10の露出した角膜表面22全体にわたって分散される。涙膜は、眼球10を保護および潤滑するために涙腺から分泌される水溶液である。眼球装着デバイス210が眼球10に装着されると、涙膜は、(凹面226に沿った)内層40と(凸面224に沿った)外層42とで、凹面226および凸面224の両方を被覆する。涙膜層40、42は、約5〜10マイクロメートルの厚さであり、合わせて約5〜10マイクロリットルを占め得る。
【0046】
[0060] 涙膜層40、42は、眼瞼30、32の動きによって、角膜表面22および/または凸面224の全体にわたって分散される。例えば、眼瞼30、32がそれぞれ上下に動くと、少量の涙膜が角膜表面22および/または眼球装着デバイス210の凸面224の全体にわたって広がる。また、角膜表面22上の涙膜層40は、凹面226と角膜表面22との間の毛細管力によって、眼球装着デバイス210の装着を容易にもする。
【0047】
[0061]
図2Cおよび
図2Dの側断面図に示されるように、基板230は、基板230の平坦な実装面が凸面224の隣接部分に略平行になるように傾斜され得る。基板230は、(高分子材料220の凹面226により近い)内向き面232と、(凸面224により近い)外向き面234とを有する平坦なリングである。基板230は、実装面232、234のいずれかもしくは両方に実装された電子コンポーネントおよび/またはパターニングされた導電性材料を有し得る。
図2Dに示すように、導電率センサ260、コントローラ250、および導電性のインタコネクト251は、外向き面234上に実装される。ただし、基板230上に位置付けられた電子機器、電極等は「内向き」面232または「外向き」面234のどちらかに実装されればよい。さらに、いくつかの実施形態では、一部の電子コンポーネントが一方の面(例えば、232)に実装され、他の電子コンポーネントが反対の面(例えば、234)に実装され、これら2つの面の間は、基板230を貫通する導電性材料により接続され得る。
【0048】
[0062] 導電率センサ260は、フレームコンポーネント263、265上に実装された2つの電極264、266を備える。電極264、266は、インタコネクト251を介してコントローラ250に接続される。例えば、各電極264、266は、センサ260が基板230上に位置決めされた時に、基板230上に形成された対応する導電性パッドと接触する(例えば、フレームコンポーネント263、265上に一体的に形成される)基板に面した導電性パッドに電気的に接続され得る。フレームコンポーネント263、265は、基板230の外向き実装面234から法線方向に延在する。電極264、266は、それぞれが、基板230の平坦面(および凸面224の隣接部分およびこの隣接部分上に位置する涙膜層42)に対して垂直に延在する高さを有するように、フレームコンポーネント263、265の側壁上に形成される。いくつかの例において、試料体積262の高さ(例えば、電極264、266の高さ)は、涙膜コーティング42の厚さよりも大きくてよく、涙膜外層42の厚さの数倍大きくてよい。例えば、涙膜の外層42の局所的に近接した領域に垂直な方向において試料体積262の深さは、50マイクロメートルよりも大きくてよく、一方、涙膜外層は、約5〜10マイクロメートルの厚さであり得る。結果として、試料体積262は、例えば電極264、266を局所的に囲む電界に影響し得る、涙膜の厚さの変動の影響を比較的受けにくい。
【0049】
[0063] 2つの電極264、266は、導電率センサ260の試料体積262の両側を画定する。試料体積262(または試料セル)は、2つの電極264、266によって境界が定められる。例えば、電極264、266および/またはフレームコンポーネント263、265は、トレンチの側壁を画定することができ、トレンチは、導電率センサ260用の流体試料体積であり得る。凸面224上に形成されたチャネルにより、試料体積262が外層42からの涙液に曝され得る。したがって、角膜表面22に装着されている間、試料体積262は、凸面224を被覆している外層42からの涙液によって占められ、その涙液の導電率がセンサ260によって測定され得る。実用において、コントローラ250は、電極264、266に電圧を印加し、電極263、265を介して電流を測定することができる。コントローラ250は、アンテナ270を使用して、測定結果の指標(例えば、測定された電流の指標)を外部の読取装置に伝達することができる。印加された電圧および測定された電流を使用して、試料体積262を占める涙液の導電率を特定することができる。
【0050】
[0064] 所与の電圧が印加された場合、電流の程度が高いほど、比較的大きい導電率を示し、これは、涙液内イオン濃度が高いこと(さらには、浸透圧が高いこと)に対応する。眼球装着デバイス210によって伝達された測定結果は、浸透圧を特定するのに使用され得る。このような特定は、部分的に、センサ測定値を浸透圧値にマッピングするルックアップテーブルに基づいて、および/または、1つ以上のセンサ測定値と既知の浸透圧読み取り値との間の関係を構築する較正情報に基づいて行われ得る。さらに、導電率測定値は、温度に伴う試料体積262内の流体の導電度の変化を考慮して、温度に対して較正され得る。
【0051】
[0065] センサ260の試料体積262を露出させるチャネルは、高分子材料230のプラズマエッチングを含む多様な技術によって形成され得る。他の例では、高分子材料230は、涙膜からの溶質を吸収し、この溶質を、高分子材料を通ってセンサ電極264、266間の領域に拡散させるように構成され得る。拡散された溶質は、その後、試料領域内のイオン濃度に影響を与え、これにより、導電率測定が容易になり得る。そして、この導電率測定に基づいて、涙膜導電率(さらには、浸透圧)が推定され得る。
【0052】
III.身体装着流体導電率センサ
[0066]
図3Aは、流体導電率を測定するように構成されたシステム300を示す機能ブロック図である。システム300は、外部の読取装置340によって電力供給される埋め込み電子コンポーネントを有する身体装着デバイス310を備える。一例において、身体装着デバイス310は、上述した眼球装着デバイス110、210と同一または同様であってよい。身体装着デバイス310は、植込み可能な構成を含む、生体内の試料流体にアクセスするように他の身体位置に装着されるように構成されたフォームファクタで実施されることもできる。したがって、身体装着デバイス310は、内部に電子機器が埋め込まれ、1つ以上の装着面を備えた封入型生体適合性高分子材料を備え得る。いくつかの例において、身体装着デバイス310は、歯、皮膚表面、粘膜、皮下領域上、組織内領域(interstitial region)内、または、生体内の流体導電率が測定され得る別の領域内に装着されるように構成された装着面を備え得る。
【0053】
[0067] 身体装着デバイス310は、外部の読取装置340からの無線周波数放射341を捕捉するためのアンテナ312を備える。身体装着デバイス310は、埋め込み電子機器を動作させるための電力供給電圧330、332を生成するための整流器314、エネルギ蓄積部316、および調整器318を備える。身体装着デバイス310は、センサインタフェース321によって駆動される第1電極322および第2電極323を有する導電率センサ320を備える。センサ電極322、323は、流体試料によって占められ得る試料体積324の境界を形成するように位置付けられる。身体装着デバイス310は、アンテナ312のインピーダンスを変調することにより、センサ320から外部の読取装置340に結果を伝達するためのハードウェア論理326を備える。(
図3Aにおいてスイッチとして符号表示される)インピーダンス変調器327は、ハードウェア論理326からの命令に従ってアンテナインピーダンスを変調するために使用され得る。
【0054】
[0068] 導電率センサ320は、電極322、323に電圧を印加し、電流を測定することによって、導電率を測定する。印加される電圧は、例えば、センサインタフェース321内のAC電圧ジェネレータによって生成されるAC電圧であり得る。印加された電圧に応答して、試料体積324を占める流体は、電極322、323間に電流を通し、この電流が、センサインタフェース321内の電流センサを使用して測定され得る。測定された電流は、試料体積324を占める流体内のイオン濃度に応じて決まり、このイオン濃度は、溶質濃度に関連する。したがって、測定された電流(または導電率)を使用して、試料体積324内の流体の浸透圧を推定することができる。
【0055】
[0069]
図3Bは、導電率試料体積324の一例を示す。電極322、323は、身体装着デバイス310に埋め込まれた基板302からそれぞれ法線方向に延在するフレームコンポーネント304、306の側壁に沿って位置付けられ得る。試料体積324は、基板302から法線方向に延在する(
図3B中、符号hで示される)高さ、2つの電極322、323間に延在する(
図3B中、符号wで示される)幅、および、電極322、323に沿って基板302と平行に延在する(
図3B中、符号lで示される)長さを有する3次元領域である。2つのフレームコンポーネント304、306の側壁と、これらの側壁上に配置される電極322、323は、各電極322、323の局所的に近接して対向する部位が互いに対して実質的に平行になるように、配置され得る。さらに、2つのフレームコンポーネント304、306(および電極322、323)は、2つの電極間の分離距離(つまり、幅w)が試料体積324の全体にわたって全長および全高に沿って実質的に一定であるように配置され得る。
【0056】
[0070] したがって、試料体積324の全体積は、長さ、幅、および高さの積により求められる。一例において、幅は、約50マイクロメートルであり、高さは約60マイクロメートルであり、長さは約3000マイクロメートルであり、この寸法は、約9ナノリットルの試料体積に対応する。比較として、眼球を被覆する涙液の全体積は、約5〜10マイクロリットルであるため、試料体積324は、涙液の全体積よりもかなり少なくてよい。上記の長さ、幅および高さの寸法は、例示のみを目的として提示される。いくつかの例では、高さは50〜100マイクロメートルであってよく、幅は100マイクロメートル未満であってよく、長さは、全体積が約100ナノリットル未満になるような長さであってよい。他の寸法もまた可能である。
【0057】
[0071] 2つのフレームコンポーネント304、306は、基板302上に実装されるトレンチ構造の側壁であり得る。電極322、323は、2つの側壁を被覆するようにトレンチ上に導電性材料をパターニングすることにより形成され得る。製作技術の一例を、
図6を参照して後述する。
【0058】
[0072] いくつかの例において、センサインタフェース321は、AC電圧を電極322、323に印加し、試料体積324の分極作用の軽減を助けるように構成される。例えば、DC電圧が印加されると、試料体積324中のイオンは電極表面に移動する。このような例において、電極表面におけるイオンの蓄積と電気化学反応の発生は、分極抵抗を導入することによって、センサ結果を偏らせる。したがって、センサインタフェース321は、例えば、センサ電極322、323間にAC電圧を印加し、これら電極322、323の一方または両方を介して電流を測定し得る。よって、センサインタフェース321は、調整器318からの電圧332によって電力供給されるAV電圧ジェネレータを備え得る。電流測定を行うと、センサインタフェース321は、ハードウェア論理326に出力を提供し、これにより、アンテナ312は後方散乱放射343を使用して読取装置340に測定された電流を示す。
【0059】
[0073] 整流器314、エネルギ蓄積部316、および電圧調整器318は、受けた無線周波数放射341からエネルギを収集するように動作し得る。無線周波数放射341は、アンテナ312の引込線上に無線周波数電気信号を生じさせる。整流器314は、アンテナ引込線に接続され、無線周波数電気信号をDC電圧に変換する。エネルギ蓄積部316(例えば、コンデンサ)は、整流器314の出力に接続され、整流器314からのDC電圧の高周波数成分をフィルタ除去する。調整器318は、DC電圧を受け、ハードウェア論理324および導電率センサ320を動作させるための供給電圧330、332を出力する。デジタル供給電圧330、332は、およそ1.2V、およそ3Vといったデジタル論理回路を駆動するのに適した電圧であり得る。外部の読取装置340(または、周囲放射等の別のソース)から無線周波数放射341を受けることにより、供給電圧330、332がセンサ320およびハードウェア論理324に供給される。電力供給を受けている間、センサ320およびハードウェア論理324は、導電度(さらには、浸透圧)を示す電流を生成および測定し、その結果を伝達するように構成される。
【0060】
[0074] 外部の読取装置340は、(例えば、ルックアップテーブル、較正情報等を使用して、アンテナ312のインピーダンスをセンサ320からの出力に関連付ける予めプログラムされた関係に従って)後方散乱信号343をセンサ結果に関連付ける。読取装置340は、その後、示されたセンサ結果(例えば、導電率値および/または浸透圧値)を、ローカルメモリおよび/または(例えば、ネットワークを介して外部メモリと通信することにより)外部メモリに格納し得る。
【0061】
[0075] いくつかの実施形態において、別個の機能ブロックに示された1つ以上の機構は、単一チップ上で実施(「パッケージ化」)されてもよい。例えば、眼球装着デバイス310は、整流器314、エネルギ蓄積部316、電圧調整器318、センサインタフェース321、およびハードウェア論理324が、単一のチップまたはコントローラモジュール内にパッケージ化された状態で実施されてもよい。そのようなコントローラは、ループアンテナ312およびセンサ電極322、323に接続されたインタコネクト(「リード」)を有し得る。そのようなコントローラは、ループアンテナ312で受けられたエネルギを収集し、電流測定用電流を発生させるのに十分な電圧を電極322、323間に印加し、電流測定用電流を測定し、測定された電流を(例えば、後方散乱放射343によって)アンテナ312を介して示すように動作する。
【0062】
[0076]
図4Aは、身体装着デバイス内のセンサを動作させて涙液導電率を測定するプロセス400を示すフローチャートである。無線周波数放射は、埋め込まれた導電率センサを含む身体装着デバイス内のアンテナで受けられる(402)。受けられた放射に起因する電気信号は、整流および調整されて、導電率センサおよび関連するコントローラに電力供給する(404)。例えば、整流器および/または調整器は、アンテナ引込線に接続されて、導電率センサ、コントローラ、および/または他の生物相互作用電子機器に電力供給するためのDC供給電圧を出力する。試料流体に占められた試料体積を囲む電極に電圧が印加される(406)。例えば、(例えば、イオン移動により)試料流体中に電流を流すのに十分なAC電圧が電極に印加され得る。電流は、試料体積を囲む電極を介して測定される(408)。例えば、コントローラは、電極に電圧を印加する一方、結果として生じた電流を測定する。測定された電流は、アンテナにより無線で示される(410)。例えば、後方散乱放射は、アンテナインピーダンスを変調することにより、センサ結果を示すように操作され得る。
【0063】
[0077]
図4Bは、外部の読取装置を動作させて身体装着デバイス内の導電率センサに呼び掛けを行い、流体導電率を測定し、浸透圧を特定するプロセス420を示すフローチャートである。無線周波数放射は、外部の読取装置から身体装着デバイスに実装された導電率センサに送られる(422)。送られた放射は、センサに電力供給して測定を実行し、その結果を伝達させるのに十分な放射であり得る(422)。例えば、電気化学センサに電力供給するために使用される無線周波数放射は、
図3に関連して上述したような、外部の読取装置340から身体装着デバイス310に送られる放射341と同様であってよい。その後、外部の読取装置は、導電率センサによる測定値を示す後方散乱放射を受ける(424)。例えば、後方散乱放射は、
図3に関連して上述したような、身体装着デバイス310から外部の読取装置340に送られる後方散乱信号343と同様であってよい。外部の読取装置によって受けられた後方散乱放射は、その後、浸透圧値と関連付けられる(426)。場合によって、特定された浸透圧値は、外部の読取装置メモリおよび/またはネットワーク接続されたデータ記憶部に格納され得る。
【0064】
[0078] 例えば、センサ結果(例えば、測定された電流)は、後方散乱アンテナのインピーダンスを変調することにより、後方散乱放射内で暗号化され得る。外部の読取装置は、後方散乱放射の周波数、振幅、および/または位相ずれに基づいて、アンテナインピーダンスおよび/またはアンテナインピーダンスの変化を検出することができる。センサ結果は、その後、眼球装着デバイス内で採用された暗号化ルーチンを逆転することによってインピーダンス値をセンサ結果と関連付けることにより、抽出され得る。したがって、読み取り装置は、検出されたアンテナインピーダンス値を測定された電流値に対してマッピングすることができる。その後、電流値は、ルックアップテーブルまたは所定の関係(例えば、較正関係)に基づいて、浸透圧値に関連付けられ得る。場合によっては、浸透圧値は、浸透圧と測定された電流と間のスケーリングに影響を与える様々な要因(試料流体の温度、印加されたAC電圧の大きさ、印加されたAC電圧の周波数、および/または試料体積のフォームファクタ(例えば、電極領域に対する電極間隔の比)を含む)を考慮して特定され得る。
【0065】
[0079]
図5Aは、トレンチ532の側壁に沿って形成された電極510、512を有する導電率センサ500の一例の実施形態を示す底面図である。トレンチ532は、基板530内に形成され、電極510、512を支持するための実質的に平行な側壁を提供する。基板530は、例えば、シリコンウェーハであってよい。電極510、512は、トレンチ532の側壁上に堆積された導電性材料(例えば、プラチナ、パラジウム、金、銀、それらの組み合わせ等)から形成され得る。トレンチは、第1端部514から第2端部516までコイル状に延在する長さを有する。トレンチ532の全体積(例えば、長さ、幅、および高さの積)は、約10ナノリットル等、100ナノリットル未満であってよい。トレンチ532の全長に沿って、2つの電極510、512は、実質的に一定の分離距離(例えば、トレンチの幅)を有し、この分離距離は、約50マイクロメートルであり得る。トレンチ532の深さ、つまりは電極510、512の高さも、全長にわたり実質的に均一であり、この深さは、約50〜100マイクロメートルであり得る。2つの電極510、512は、基板530内の2つの内向きの側壁に沿った導電性の高い金属から成る実質的に連続したストリップから形成され得る。電極510、512は、側壁上に形成された電極510、512と一体的に形成され得る実装パッド520、522にそれぞれ電気的に接続され得る。接続パッド520、522により、導電率センサ500は、この導電率センサ500が実装される基板上にある対応する接続パッドに電気的に接続される。したがって、
図5Aの底面図は、基板に実装される側のセンサ500を図示している。
【0066】
[0080]
図5Bは、トレンチ572の側壁に沿って形成された電極550、552を有する導電率センサ540の実施形態の別の例を示す底面図である。
図5Aの導電率センサ500と同様に、トレンチ572も基板570内に形成され、第1端部556から別の端部554までの長さに沿って延在し、このトレンチにおいて、2つの電極550、552は、導電性の実装パッド560、562に電気的に接続される。トレンチ572の全体積、高さ、幅、および長さは、センサ500のトレンチ532の寸法と同一または同様であってよい。しかし、
図5Aに関連して上述した導電率センサ500とは異なり、
図5Bの導電率センサ540は、湾曲したコイル状のフォームファクタで実施される。センサ540の湾曲したフォームファクタにより、尖った角がなくなるため、対向する電極550、552間の分離距離(例えば、トレンチ幅)をより一定にすることができる。結果として、対向する電極560、562の局所的に近接した部分間の分離距離は、トレンチ572の長さを通して実質的に一定であり得る。角が無いことで、角に関連し得る電界効果も小さくなる。このような効果は、例えば、角を囲む領域において、導電率測定を歪曲させるおそれのある局所的に増大した電界強度に関連し得る。
【0067】
[0081] センサ内の電極間(センサ500内の電極510、512間またはセンサ540内の電極550、552内)の実質的に一定した分離距離は、より正確で反復可能な導電率測定を提供することができる。分離距離が一定でない場合、導電率測定(つまり、電流測定)は、試料体積全体を通して均等に作用する電流の程度ではなく、試料体積内の分離距離の最も近い部分を通る電流により影響を受け得る。
【0068】
IV.導電率構造例の組み立て
[0082]
図6Aは、一例の実施形態に従い、製作中の導電率センサ600を示す上面図である。導電率センサ600は、いくつかの点において、
図5Aに関連して上述した導電率センサ500と同様であり得る。導電率センサ600は、基板630内に形成されたトレンチ632を備える。基板は、例えば、シリコンウェーハであり得る。トレンチ632は、流体によって占められ得る試料体積を画定する。対向する電極610、612は、これらの電極610、612が試料体積の両側に位置付けられるように、トレンチ632の側壁上に配置される。トレンチ632は、
図5Aに関連して上述した導電率センサ500のトレンチ532と同様に、コイル状に延在する。2つの接続パッド620、622は、2つの電極610、612に電気的に接続され、対応する導電性パッドへの導電率センサ600の実装(例えば、フリップチップ実装)を容易にする。
図6Aに示すように、基板630は、この基板630内でトレンチ632に隣接して形成されたチャネル634a〜dも備える。チャネル634a〜dのそれぞれは、トレンチ632の一部分に局所的に平行な方向に延在する。後述するように、隣接チャネル634a〜dは、基板630からのセンサ600の取り外しを容易にする。例えば、センサ600が基板630内に製作された後、基板630は、切断パターン605に沿ってダイシングされ得る。等方性エッチング剤により隣接チャネル634a〜dのそれぞれの下方に形成されるキャビティは、拡張し、同様にエッチング剤によりトレンチ632の下方に形成されたキャビティと結合し、センサ600を含むダイシングされる構造は、基板630(例えば、ウェーハ)から分離され得る。
【0069】
[0083]
図6B〜6Nは、一例の実施形態に従って導電率センサを製作する段階を示す断面図である。
図6B〜6Nの断面図は、
図6Aの断面図線601に沿って、
図6Aに示す一例のセンサ600の製作を示している。
図6B〜6Nに示す図は、概して、導電率センサ600用のトレンチ構造および電極を作るために展開される順次形成される複数の層を図示するために、(線601に沿った)断面図で示される。フォトレジスト、導電性材料等の層は、超微細加工、ならびに/または、例えば電気めっき法、フォトリソグラフィ、堆積、および/もしくは蒸着加工プロセス等の製造技術によって形成され得る。さらに、多様な段階で、方向性および等方性エッチング剤、ならびに選択的にエッチング可能な材料が使用される。ワイヤ、電極、接続パッド等を形成するために、材料を特定の配置にパターニングするためのフォトレジストおよび/またはマスクを使用して、多様な材料がパターンに従って形成され得る。ただし、
図6B〜6Nに関連して図示および説明される多様な層および構造の相対的な厚さを含む寸法は、縮尺通りに図示されていない。むしろ、
図6B〜6Nの図面は、説明のみを目的として、多様な層の順序を概略的に示すものである。
【0070】
[0084]
図6Bは、加工基板630を示している。加工基板630は、堆積、フォトリソグラフィ等により、材料の層を受けるのに適した実質的に平坦な表面を有し得る。例えば、加工基板630は、半導体素子の製作および/またはマイクロエレクトロニクスで使用されるものと同様のウェーハ(例えば、シリコンウェーハ)であってよい。加工基板630は、結晶構造で配置された半導体材料(例えば、シリコン)であり得る。例えば、加工基板630は、研磨面を有するシリコンウェーハであってよく、約500マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0071】
[0085]
図6Cは、加工基板630上に形成された層640を示している。層640は、等方性エッチング剤(例えば、XeF
2)によるエッチングに耐性がある一方、反応性イオンエッチングには影響を受けやすい二酸化ケイ素(SiO
2)または別の選択的にエッチング可能な材料を含み得る。層640は、化学蒸着法により形成され、硬化され、または硬化されずに、例えば、約1マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0072】
[0086]
図6Dは、耐エッチング層640上にパターニングされたポジティブフォトレジスト層642を示している。フォトレジスト層642は、マスクを使用したフォトリソグラフィまたは別の技術によってパターニングされ得る。フォトレジスト層642は、例えばAZ−4620等の好適なマイクロエレクトロニクス用の化学薬品から形成され、5マイクロメートルの厚さでパターニングされ得る。別の活性フォトレジストを使用してもよい。フォトレジスト層642は、トレンチの形成を望まない基板630の領域上にパターニングされ得る。つまり、フォトレジスト層642を受けない領域は、後の製作動作においてトレンチが作られる領域であり得る。
【0073】
[0087]
図6Eは、反応性イオンエッチング(RIE)によるエッチング後の層644の残存パターンを示している。パターニングされたフォトレジスト層642(
図6D)により覆われていた層640の領域は、パターン644として残る。フォトレジスト層642は、(例えば、アセトンで洗浄するなどして)剥離され得る。層640の材料がSiO
2である例では、SiO
2をエッチングするためにCE
4/O
2が使用され得る。フォトレジスト層642の下の領域は、RIE動作後も残り、パターニングされた層644になる。
【0074】
[0088]
図6Fは、基板630においてパターン644により露出された領域へのトレンチ632、634cの形成を示している。トレンチは、例えば、BCl
3/Cl
2を使用した異方性の深反応性イオンエッチング(DRIE)により形成することができる。トレンチ632、634cは、例えば、約60マイクロメートルの深さd1に形成され得る。トレンチの深さd1は、例えば、DRIEの適用時間に基づいて制御され得る。幅W1は、トレンチ632のコイル状構成に起因したトレンチ632の隣接部位間の分離を示し、約30マイクロメートルであり得る。トレンチ632の幅W2は、約50マイクロメートルであり得る。トレンチ632と隣接したトレンチ634cとの間の分離距離W3は、約60マイクロメートルであり得る。隣接したトレンチ634cの幅W4は、約100マイクロメートルであり得る。上述した寸法は、例示のみを目的として提示される。上記例示した値の比率や、他の値を含む他の寸法例もまた使用可能である。
【0075】
[0089]
図6Gは、パターン644上への追加材料の適用後の層646を示している。追加材料は、層640を形成するのに使用されたものと同一の選択的にエッチング可能な材料、つまり、等方性エッチング剤に耐性がある一方、反応性イオンエッチング剤の影響を受けやすいSiO
2等の材料であり得る。追加材料は、化学蒸着法によってパターン644上に形成され得る。結果として生じた層646は、トレンチ632、634cの露出面上で実質的に均一な厚さを有し得る。例えば、側壁648a〜c上およびトレンチ632、634cの底部上の層646の厚さは、約0.5マイクロメートルであり得る。予めパターン644が形成されていた領域内では、層646は、約1.5マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0076】
[0090]
図6Hは、トレンチ底部650a〜cを露出させるための反応性イオンエッチング(RIE)後の別の材料のパターン647を示している。層646の材料がSiO
2である例では、CF
4/O
2を使用した反応性イオンエッチングを使用してSiO
2をエッチングし、トレンチ632、634cの底部650a〜cの両方を露出させることができる(これにより、トレンチ以外の領域に残存する材料の厚さも減少し得る)。RIE動作は、材料の異方性除去を提供し、側壁650a〜c上の材料がこのRIE動作によって実質的に乱されないように、加工基板630に対して実質的に法線方向から適用され得る。したがって、RIE動作後は、トレンチの側壁650a〜cおよび基板630のトレンチ以外の領域は、材料のパターン647によって覆われる一方、トレンチ632、634cの底部は露出される。
【0077】
[0091]
図6Iは、第2のトレンチ形成動作を示している。トレンチ632、634cの底部を露出した後、異方性DRIEを使用して、(例えば、BCl
3/Cl
2を使用して)トレンチ632、634cの深さを増加することができる。増加後の深さd2は、例えば、約20マイクロメートルであり得る。
【0078】
[0092]
図6Jは、パターン647上にパターニングされたネガティブフォトレジスト層654を示している。ネガティブフォトレジスト層654は、例えば、NR9であってよく、マスクを使用して、約6マイクロメートルの厚さにパターニングされ得る。ネガティブフォトレジスト654は、後続の工程において基板630からリフトオフされることにより、ネガティブフォトレジスト654がパターニングされた領域を再び露出させることができる。
【0079】
[0093]
図6Kは、トレンチ632、634cの露出された底部652a〜cに適用された等方性エッチング剤によって形成されたキャビティ656a〜cを示している。例えば、露出されたシリコンは、XeF
2を使用した等方性気相エッチングによりエッチングされ得る。パターン647およびネガティブフォトレジスト654の材料は、等方性エッチング剤に対して耐性があり得るため、これらの材料によって覆われた領域は、乱されない。等方性エッチング剤によって加工基板630内に作られたキャビティ656a〜cは、
図6Kに示したように、互いに結合するほどに大きく拡張され得る。等方性エッチング中にキャビティ656a〜cを結合させることにより、センサ600の完成時に、加工基板630からトレンチ構造を取り外すことが容易になる。
【0080】
[0094]
図6Lは、トレンチ構造上に形成された導電層658を示している。導電層658は、パラジウムおよび金の層をスパッタリングすることにより、それぞれ20ナノメートルおよび200ナノメートルの厚さに形成され得る。ただし、層658には、プラチナ、チタン、クロム、パラジウム、金、銀、それらの組み合わせ等の他の導電性材料の組み合わせが含まれてもよい。導電層658は、トレンチの側壁上に配置され、2つの対向する電極610、612を形成する。さらに、導電層658は、ネガティブフォトレジスト654に被覆されていない基板630の上面の領域に導電性の実装パッド620、622を形成する。
【0081】
[0095]
図6Lに示すように、スパッタリング形成された導電性材料は、キャビティ656aの底部上に形成された材料662によって例示されるように、キャビティの底部に沿っても形成され得る。しかし、等方性エッチングで形成されたキャビティ656a〜cの形状は、それぞれのトレンチの幅よりも大きい幅を有することにより、確実にキャビティの少なくとも一部分が導電層658によって被覆されないようになっており、導電層658が途切れることにより、トレンチ632の側壁上の導電性電極610、612が電気的に分離される。例えば、いずれのトレンチからも見通し線の届かないキャビティ656cの上縁660は、導電性材料658によって被覆されない。結果として、それぞれのトレンチの側壁に沿って形成された導電層(つまり、電極610、612)は、トレンチ632底部を介して互いに電気的に接続されない。
【0082】
[0096]
図6Lは、
図6Kに関連して上述した等方性エッチング手順の結果として、隣接するトレンチ内に形成されたキャビティ間の結合点664a〜bを示している。例えば、トレンチ632から発生したキャビティ656bは、拡張して、キャビティ結合部664bでトレンチ634cから発生したキャビティ656cと結合する。
【0083】
[0097]
図6Mは、ネガティブフォトレジスト654がリフトオフされ、従前までネガティブフォトレジスト654により覆われていた部分が露出した状態を示している。リフトオフ後、製作された構造は、トレンチ632の対向する側壁上に位置付けられた、電気的に切断された対向電極610、612と、電極610、612のそれぞれに接続された接続パッド620、622とを含む。センサ600は、ライン605に沿ってダイシングされ、加工基板630から分離される。
図6Mからわかるように、隣接したトレンチ634cおよびその底部に形成されたキャビティ656cにより、センサ600のダイシングおよび取り外しが可能になっている。
【0084】
[0098]
図6Nは、機械研磨後のダイシングされたセンサ600を示している。特に、トレンチ632の底部から拡張した重なりキャビティによって形成された加工基板630の側面は、粗く、かつ/または不均一な表面を有し得る。この表面は、その後、機械的プロセスによって(電極610、612に干渉することなく)研磨され、センサ600のための平滑な底面670が作られ得る。底面670は、センサにおいて、実装面672に対し、センサの反対側にあり得る。完成したセンサ600が基板上に実装されると、実装面672は基板に対向し、平滑な底面670は、基板とは反対の外側を向くように位置決めされ得る。
【0085】
[0099] 基板600は、完成すると、身体装着デバイス内に組み込まれ得る。例えば、センサ600は、上述した眼球装着デバイス110、210と同様の眼球装着デバイス内に、導電性端子620、622を該デバイス内に埋め込まれた基板上の対応するパッドにフリップチップ実装することにより、組み込まれ得る。パッドに接続されたコントローラは、AC電圧を電極610、612に印加し、トレンチ632によって形成された試料体積を流れる電流を測定し、アンテナを使用して電流測定値を無線で示すことにより、センサ600を動作させ得る。
【0086】
[00100]
図7は、導電率センサを製造するためのプロセス700の一例を示すフローチャートである。ブロック702において、トレンチがウェーハ内に形成される。例えば、選択的にエッチング可能な材料および/またはフォトレジストの組み合わせを、トレンチを形成するべき領域を選択的に露出させるべくパターニングし、深反応性エッチングを使用して、シリコンウェーハ内にトレンチをエッチングすることができる。ブロック704において、選択的にエッチング可能な材料は、トレンチの側壁上にパターニングされる。例えば、選択的にエッチング可能な材料(例えば、SiO
2)は、トレンチ構造上にパターニングされ、トレンチの底部は、異方性の反応性イオンエッチングにより露出され、側壁上には選択的にエッチング可能な材料が残り得る。ブロック706において、トレンチの底部は、等方性エッチング剤によりエッチングされ、トレンチの幅を超えて延在するキャビティをウェーハ内に形成する。場合によっては、基板内に形成された隣接するトレンチの底部から形成されたキャビティは、結合するように互いに向けて拡張し得る。ブロック708において、導電層は、電極がトレンチの各側壁上に形成されるように、トレンチ上に形成されることができ、これらの電極は、キャビティによって、トレンチの底部で互いに電気的に分離される。例えば、導電層は、トレンチ上にスパッタリングされ、この構造のうちスパッタリング源への見通し線のない部分は、導電層により被覆されずに残る。ブロック710において、ウェーハはダイシングされ、導電率センサから分離され得る。ブロック712において、導電率センサは、基板に実装され得る。例えば、導電率センサは、例えば、
図1〜3に関連して上述した眼科用および/または身体装着センサプラットフォームと同様に、コントローラおよびアンテナも含む基板上の導電性パッド上にフリップチップ実装され得る。ブロック714において、基板は、眼球装着(または身体装着)デバイス内に実装され得る。例えば、基板は、体表に装着するように構成された高分子材料によって部分的または全体的に封入され得る。
【0087】
V.さらなる実施形態
[00101] 特に留意すべき点として、電子機器プラットフォームは、眼球装着デバイスまたは眼科用デバイスとして本明細書において例示されたが、導電率センサの構成用として開示されたシステムおよび技術は、他の背景においても適用することができる。例えば、流体導電率が生体内測定されるような背景、および/もしくは、流体導電率が比較的小さい試料体積から測定されるような背景、または、小さいフォームファクタ(例えな、植込み可能なバイオセンサ、または他の電子機器プラットフォーム)に制限されるような背景では、本明細書に記載されるシステムおよびプロセスを採用することができる。一例において、導電率センサを備える植込み医療デバイスは、生体適合性材料内に封入され、ホスト内に植え込まれ得る。植込み可能な医療デバイスは、導電率測定値(例えば、電流読み取り値)の指標を出力するように構成された回路を備え得る。読み取り値および/または制御デバイスは、植込み可能な医療デバイスと通信して、電流測定値を特定することができる。
【0088】
[00102] 例えば、いくつかの実施形態において、電子機器プラットフォームは、歯装着デバイス等の身体装着デバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、歯装着デバイスは、眼球装着デバイス110、眼球装着デバイス210、および/または身体装着デバイス310の形態をとってもよく、またはそれらと同様の形態であってもよい。例えば、歯装着デバイスは、生体適合性高分子材料、または本明細書に記載される高分子材料もしくは透明な高分子のいずれかと同一または同様の透明な高分子と、本明細書に記載される基板または構造のいずれかと同一または同様の基板または構造と、を備え得る。このような構成において、歯装着デバイスは、この歯装着デバイスを着用しているユーザの流体(例えば、唾液)の導電率を測定するように構成され得る。
【0089】
[00103] さらに、いくつかの実施形態において、身体装着デバイスは、皮膚装着デバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、皮膚装着デバイスは、眼球装着デバイス110、眼球装着デバイス210、および/または身体装着デバイス310の形態をとってもよく、またはそれらと同様の形態であってもよい。例えば、皮膚装着デバイスは、生体適合性高分子材料、または本明細書に記載される高分子材料もしくは透明な高分子のいずれかと同一または同様の透明な高分子と、本明細書に記載される基板または構造のいずれかと同一または同様の基板または構造と、を備え得る。このような構成において、身体装着デバイスは、この身体装着デバイスを着用しているユーザの流体(例えば、汗、血液)の導電率を測定するように構成され得る。
【0090】
[00104]
図8は、一例の実施形態に従って構成されるコンピュータ可読媒体を示す。一例の実施形態において、一例のシステムは、1つ以上のプロセッサ、1つ以上の形態のメモリ、1つ以上の入力デバイス/インタフェース、1つ上の出力デバイス/インタフェース、および、1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムに上述したような多様な機能、タスク、能力等を実行させる機械可読命令を備え得る。
【0091】
[00105] 上述したように、いくつかの実施形態において、開示された技術は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に機械可読フォーマットで符号化されたコンピュータプログラム命令、または他の非一時的な媒体もしくは製品上で符号化されたプログラム命令によって実施され得る。
図8は、本明細書で提示される実施形態の少なくともいくつかに従って構成された、
図4A〜4Bおよび
図7に関連して図示および上述したプロセスを含む、計算デバイス上でコンピュータプロセスを実行するためのコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品の例の概念的な部分図を概略的に示している。
【0092】
[00106] 一実施形態において、一例のコンピュータプログラム製品800は、信号搬送媒体802を使用して提供される。信号搬送媒体802は、1つ以上のプロセッサにより実行されると、
図1〜7を参照して上述した機能性または該機能性の一部を提供し得る1つ以上のプログラム命令804を含み得る。いくつかの例において、信号搬送媒体802は、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、デジタルテープ、メモリ等の(これらに限定されない)非一時的なコンピュータ可読媒体806を含み得る。いくつかの実施において、信号搬送媒体802は、メモリ、読出し/書込み用(R/W)CD、R/W DVD等の(これらに限定されない)コンピュータ記録可能媒体808であり得る。いくつかの実施において、信号搬送媒体802は、デジタルおよび/またはアナログ通信媒体(例えば、光ファイバケーブル、導波管、有線通信リンク、無線通信リンク)等の(これらに限定されない)通信媒体810であり得る。したがって、例えば、信号搬送媒体802は、無線形態の通信媒体810により搬送され得る。
【0093】
[00107] 1つ以上のプログラム命令804は、例えば、コンピュータ実行可能なおよび/または論理実施可能な命令であり得る。いくつかの例において、計算デバイスは、コンピュータ可読媒体806、コンピュータ記録可能媒体808、および/または通信媒体810の1つ以上によって計算デバイスに搬送されたプログラム命令804に応答して多様な動作、機能、または行為を提供するように構成される。
【0094】
[00108] 非一時的なコンピュータ可読媒体806は、互いに距離を置いて配置され得る複数のデータ記憶要素の間で分散され得る。格納された命令の一部または全部を実行する計算デバイスは、超微細加工コントローラまたは別の計算プラットフォームであり得る。その代わりに、格納された命令の一部または全部を実行する計算デバイスは、距離を置いて配置されるサーバ等の計算システムであり得る。
【0095】
[00109] 本明細書において、多様な態様および実施形態を開示したが、他の態様およ
び実施形態も当業者には明らかであろう。本明細書で開示された多様な態様および実施形態は、例示を目的としており、限定を意図したものではない。本発明の真の範囲は、以下の請求の範囲により示されるものである。