【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様として、
−モーター潤滑油タンクとモーターとの間に潤滑油を循環させるステップ、
−洗浄ループ内で上記モーター潤滑油タンクからの汚染された潤滑油を輸送するステップ、を備え、上記洗浄ループ内の輸送は、
−汚染された潤滑油に少なくとも一つの液体分離助剤を添加するステップ、
−上記液体分離助剤を有する汚染された潤滑油を三相遠心分離機に供給するステップ、
−分離機内で潤滑油から汚染物質を連続的に分離し、分離機の液体軽相出口から浄化された潤滑油を備える第一液体相を連続的に排出し、分離機の液体重相出口から固体汚染物質を備える第二液体相を連続的に排出し、三相分離機のコンベヤスクリューの助けによってスラッジ出口からスラッジ相を連続的に排出するステップ、
−浄化された油を備える第一液体相を輸送して潤滑油タンクに戻すステップ、
を備える、モーター潤滑油の連続浄化のための方法が提供される。
【0007】
同様に、本発明の第二態様として、モーター潤滑油の連続浄化のためのシステムが提供され、このシステムは、
−潤滑油タンク、モーター、及び油タンクとモーターとの間で潤滑油を循環させるための手段、
潤滑油から汚染物質を分離するための三相遠心分離機であって、分離ディスクのスタックを有する分離空間、この分離空間内へと延在する汚染された潤滑油用の分離機入口、分離空間から延在する浄化された潤滑油用の液体軽相出口、分離空間から延在する液体重相出口、を含むローターを備える分離機であって、当該分離機は更に、ローター内に含まれ、スラッジ相を分離機のスラッジ出口の方及びその外部に搬送するために配置されたコンベヤスクリューが提供される、三相遠心分離機、
−潤滑油タンクから分離機入口に汚染された潤滑油を輸送するための手段、及び浄化された油を分離機の液体軽相出口から潤滑油タンクに輸送して戻すための手段、
分離機入口の上流で汚染された油に少なくとも一つの液体分離助剤を添加するための手段、を備える。
【0008】
モーター潤滑油は、ディーゼルエンジン等の様々な内燃機関エンジンの潤滑用の組成物である。この油は、可動部分を滑り易くするためのものでよく、しかしまたモーターの洗浄、冷却、腐食抑制のためのものでもよい。モーター潤滑油は石油系化学物質及び非石油系合成化学物質に由来し得る。この油は、添加剤を含む、または含まない、純粋な鉱油、半分若しくは完全に合成油、または動物油若しくは植物油でよい。
【0009】
上記油内の汚染物質は煤及びナノ粒子を備え得る。
【0010】
従って潤滑油タンクはバッファタンク等の潤滑油用のタンクである。このタンクは約20m
3等の10m
3超の体積を有し得る。
【0011】
汚染された潤滑油は三相遠心分離機に供給される。三相遠心分離機は液体混合物を第一密度の液体軽相、第一密度より大きな第二密度の液体重相、及びスラッジ相等の三相に分離するために配置された遠心分離機に言及する。スラッジ相は多かれ少なかれ固体相であり得るが、少量の液体を含み得る。三相分離機のローターは更にコンベヤスクリューを含む。このスクリューはローターの回転速度と異なる回転速度で動かされるように配置され得る。コンベヤスクリューはスラッジ相、即ち、液体相よりも大きな密度を有する分離された相、を分離機のスラッジ出口の方に搬送するためのものである。スラッジ出口は、ローターの回転軸から分離空間の外半径よりも小さな半径上に提供され得る。コンベヤスクリューは、汚染物質相を、半径方向に内部へ、そしてスラッジ分離機出口に向けて搬送するためにさらに配置され得る。この配置によって、スラッジ相内の粒子濃度は非常に高くなることができる。三相分離機はその一つの上端でのみ吊るされ得り、スラッジ出口は上記上端の反対側の端部に位置し得る。
【0012】
分離ディスクまたはプレートは円錐台状であるか、任意の他の適切な形状を有してよい。
【0013】
三相分離機は、約5000G〜約7000Gの範囲内の力の下などの、少なくとも5000Gの力の下で動作するために配置され得る。
【0014】
本発明は、三相分離機がモーター潤滑油から汚染物質を洗浄するための洗浄ループ内で使用され得るという見識に基づいている。分離機内での分離の前に少なくとも一つの液体分離助剤を加えることによって、分離助剤及び汚染物質を備える液体相は液体相として排出され得り、洗浄されたモーター潤滑油は第二液体相として排出され得り、一方で、三相分離機の分離チャンバの外縁に蓄積された固体はスクリューコンベヤによってスラッジ出口の方へ、そしてスラッジ出口から外に連続的に搬送され得る。従って、本方法及びシステムはタンクが接続されたモーターが未だに運転中であっても油の連続浄化を提供し、分離機は例えば分離機の内部を洗浄するために停止することなく連続的に運転し得る。
【0015】
換言すると、本発明はモーターループ内でモーター潤滑油タンクからモーターへ潤滑油を連続的に循環させることと、同時に分離ループ内で分離機に潤滑油を連続的に循環させることを提供する。
【0016】
本方法及びシステムは油のより良好な洗浄を提供するので、モーターはより効率的に運転し得り、モーターの摩耗が減少し、モーター潤滑油の消費は低減され得る。従って、シリンダライニング内の研磨粒子が減少することでモーターは保護され得り、フィルタの消費は減少し得り、モーター潤滑油の寿命は劇的に延び得る。
【0017】
本発明の実施形態では、固体汚染物質の少なくとも50%が分離機の液体重相出口から第二液体相内に排出される。これは分離機、即ち、上記第一態様に従って規定された分離ディスク及びスクリューコンベヤの両方を備える三相分離機の性質によって有利であり得る。
【0018】
例として、固体汚染物質の少なくとも95%等、約95−97%等、少なくとも97%等の少なくとも75%は、分離機の液体重相出口から第二液体相内に排出され得る。
【0019】
従って、汚染物質の主要分画は高密度の液体相内に排出されてよく、コンベヤスクリューは分離チャンバの外縁に蓄積または積み上がり得る高密度の任意のスラッジ相を排出するために使用され得る。
【0020】
本発明の実施形態では、液体分離助剤は潤滑油の密度より大きな密度を有する。
【0021】
液体分離助剤はポリマーを備え得る。例えば、ポリマーは40℃で1.0〜1.1g/cm
3の密度を有するポリヒドロキシアルコキシレートであり得る。
【0022】
液体分離助剤は意図された用途のために所望の特性を油に与える添加剤を含んでよく、そのうち油の密度は40℃で0.85〜1.05g/cm
3の範囲内である。液体分離助剤の選択は浄化されるモーター潤滑油に更に依存し得る。分離助剤の選択は汚染物質の種類にも依存し得る。
【0023】
液体分離助剤は水を含んでも含まなくてもよく、水溶性であってもなくてもよい。分離助剤は更に油中に不溶性であり得る。汚染粒子の量に依存して、より大量のまたはより少量の分離助剤が添加される。分離助剤は汚染物質粒子の凝集沈殿(flocculation)を起こす物質を含み得り、これにより遠心分離でより簡単に除去可能なより重い粒子が生じる。また分離助剤は化学結合または表面化学結合によって粒子を引き付ける、または結合し得る。
【0024】
本発明の実施形態では、少なくとも一つの液体分離助剤がラベルされる。分離助剤は例えば放射性同位元素を備える放射性ラベルで、または分光的に検出される蛍光化合物(蛍光色素分子)若しくは非蛍光化合物(発色団)等の任意の他の適切な色素でラベルされ得る。従って、分離助剤は放射性同位体、蛍光色素分子、及び発色団からなる群から選択されたラベルでラベルされ得る。
【0025】
液体分離助剤はラベルされたポリマーを備え得る。従って液体分離助剤は放射性ラベル、蛍光色素分子、または発色団でラベルされたポリマーを備え得る。
【0026】
ラベルされた液体分離助剤を用いることは、それによって液体軽相出口を介して排出される浄化された潤滑油中に存在する液体分離助剤の量がない、または殆どないという制御が提供されるという点で有利である、即ちそれはその後モーターに輸送されるモーター潤滑油内に存在する分離助剤がない、または殆どないことを制御し得る。
【0027】
最終的に、本方法は浄化された油を備える第一液体相を潤滑油タンクに輸送して戻す際にラベルされた液体分離助剤の量を測定するステップを備え得る。仮にその量が所定の値を超える場合、分離機または分離プロセスに異常が存在することを示し得る。
【0028】
本システムは浄化された油を潤滑油タンクに輸送して戻している最中にラベルされた液体分離助剤の量を測定するための手段を備え得る。本手段は例えばガイガーカウンター等の放射性同位体からの電離放射線を測定するための検出器を備え得る。本手段は、ラベルされた液体分離助剤の種類に依存して、蛍光色素分子または発色団を分光的に検出するための検出器を備え得る。
【0029】
本発明の実施形態では、少なくとも一つの液体分離助剤を汚染された潤滑油に添加するステップは、三相遠心分離機に供給する前に、汚染された潤滑油と液体分離助剤を混合するステップを更に備える。
【0030】
従って、本システムは添加された液体分離助剤を汚染された油に混合するための混合器を分離機入口の上流に更に備え得る。
【0031】
この混合器は静的混合器または動的混合器であり得る。
【0032】
これによって分離機内の分離効率が更に高まり得る。しかし追加的な液体分離助剤は分離機に入口で添加され得る。入口自体が汚染されたモーター潤滑油と分離助剤の十分な混合を提供し得る。
【0033】
従って、液体分離助剤及び油は、二相分離機の入口に接続された何らかの混合器内で、または浄化前の独立した混合操作で、混合され得る。
【0034】
本発明の実施形態では、モーター潤滑油タンク及びモーター間の潤滑油の循環の流速は、洗浄ループにおける流速よりも、65倍超速い、80倍超速い、100倍超速いなど、50倍を超えて速い。
【0035】
従って分離機は油システムの「腎臓」として働くべきであり、モーター潤滑油のより大きな流れがタンクとモーターとの間を連続的に循環する一方で、より小さな流れが洗浄ループ内を連続的に循環する。
【0036】
流速は流れている液体の量に比例し得る。
【0037】
従って、実施形態では、モーター潤滑油タンクとモーターとの間の潤滑油の循環内を流れる液体の体積は、洗浄ループ内の流速よりも、65倍超、80倍超、100倍超など、50倍を超えて大きい。
【0038】
本発明の実施形態において、汚染された潤滑油の温度は、三相分離機における分離中に少なくとも70℃である。
【0039】
好ましくは、上記温度は約80〜98℃の範囲内であり、より好ましくは、上記温度は約80〜95℃の範囲内である。例として、モーター潤滑油は約95℃の温度を有してよい。汚染された潤滑油の温度はモーターの温度に依存し得る。即ち、モーターの動作中に熱が生じ、従って汚染された潤滑油がモーターによってつくられた温度に加熱される。
【0040】
本発明の実施形態において、モーター潤滑油タンクからの汚染された潤滑油を洗浄ループ内で輸送するステップは、潤滑油タンク内の第一位置から汚染された潤滑油を取り出すステップを備え、更に、モーター潤滑油タンクとモーターとの間で潤滑油を循環させるステップは、潤滑油タンク内の第一位置以外の第二位置から潤滑油を取り出すステップを備える。
【0041】
更に、浄化された油を備える第一液体相は、油タンクの第二位置付近の位置へと潤滑油タンクに輸送されて戻され得る。
【0042】
更に、汚染された潤滑油はモーターから第一位置付近の油タンクに輸送され得る。
【0043】
結果として、本システムは、潤滑油が潤滑油タンク内の第一位置から洗浄ループへと取り出されるように配置され得る。第一位置はタンクの底部、またはタンクの一側に配置され得る。更に、モーターに輸送されるモーター潤滑油は、その後、別の第二の位置から取り出され得る。この第二位置はタンクの上または第一位置と反対側の一側に位置し得る。結果として、第一位置がタンクの底部にある場合には第二位置は上部であってよく、第一位置がタンクの一側にある場合、第二位置は第一位置が位置している側と反対側にあってよい。
【0044】
更に、油タンクとモーターとの間のループ内において、油は第二位置付近の位置からタンクから取り出されてよく、モーターを通過した油、即ち汚染された油は、油タンク内の第一位置付近の位置に戻されてよい。そのような構成は、タンク内の大半の汚染された油が分離機へと輸送されること、更に、モーターに輸送された油がタンク内で最もきれいな油であることを容易にし得る。
【0045】
本発明の実施形態において、モーター潤滑油タンクとモーターとの間で潤滑油を循環させるステップは、油がモーターに供給される前に潤滑油を冷却するステップを備える。
【0046】
従って、本システムはタンクからモーターへと輸送されたモーター潤滑油を冷却するための冷却器を備え得る。更に、本システムは、冷却器の下流ではあるがモーターの上流に、自動フルフローフィルタ等のフィルタを備え得る。フィルタは更にモアッティフィルタ(Moatti−filter)であり得る。これはモーターに供給される油の浄化を更に補助し得る。フィルタからの汚染物質は、フィルタリジェクトラインを介してモーター潤滑油タンクへと、例えば、そこから洗浄ループへとモーター潤滑油が取り出されるタンク内の位置へと戻され得る。
【0047】
本発明の実施形態において、本方法は、潤滑油タンクが接続されているモーターの動作中に連続的に実行される。
【0048】
本システムは潤滑油タンクに接続されたモーターを更に備え得る。モーターは少なくとも1MWの効果を有し得る。モーターは更にディーゼルエンジンであり得る。更に、モーターは2行程エンジンまたは4行程エンジンであり得る。
【0049】
本方法は、モーター潤滑油内の酸汚染物質を中和する添加剤の添加を更に備え得る。そのような添加はモーター潤滑油タンクに対してであり得る。従って、本システムはモーター潤滑油タンクと接続された、油内の酸汚染物質を中和する添加剤の添加のための手段を備え得る。
【0050】
しかしながら、添加は、そのような添加剤を備える未使用の油を、タンクに添加する等、システムに添加することによって行われ得る。
【0051】
油内の酸汚染物質を中和する添加剤は、TBN(全塩基価(total base number))添加剤であり得る。
【0052】
本方法はモーター潤滑油内の酸汚染物質を中和する少なくとも一つの添加剤の濃度を測定するステップを備え得り、その濃度が所定の値より低い場合には、本方法はモーター潤滑油内の酸汚染物質を中和する少なくとも一つの添加剤を添加するステップを備え得る。
【0053】
この添加は、モーター潤滑油タンクに対して行われ得る。
【0054】
更に、三相分離機は、流入する油及び分離助剤を円滑に加速するための入口装置を備え得る。これは、それによって油及び粒子の分離がさらに容易となる点で、利点であり得る。
【0055】
流入する油及び分離助剤のための入口菅は、従って、そのような入口装置で排出し得る。入口装置または分配器は、吸込路を介して分離チャンバへと導かれた際に、穏やかに液体を加速し得る。入口装置は、回転軸Rのまわりに配置された中央円錐状受け構造を備え得る。この構造はn入口菅から油及び分離助剤を受けるための中央受けゾーンを備え得る。入口装置は、液体混合物を上記受けゾーンから分離チャンバに向けるための入口チャネルを更に備え得る。入口チャネルは受けゾーンの外縁から上記円錐状受け構造の外表面を螺旋状に下降して延在し得る。
【0056】
入口チャネルは円錐状受け構造の底部へとはるばるねじれ得る。従って、入口チャネルはねじれて、かつ/またはS状構造の最初を形成し得る。このチャネルは円錐構造の周りで、完全ではなく螺旋状になってよく、または完全にらせん構造の周りを完全に一周し得る。例として、少なくとも一つの入口チャネルは、円錐構造の一周の約四分の一等の円錐構造の完全な一周の半分未満を螺旋状になり得る。例えば分離機の入口菅が固定され、入口装置が回転する、即ち、それが液体を穏やかに加速するのを補助する場合、ねじれた入口チャネルが有利である。
【0057】
例として、入口装置は、三つ、四つ、五つ、または六つの入口チャネル等の少なくとも二つの入口チャネルを備え得る。入口装置は、少なくとも十の入口チャネル等の少なくとも六つの入口チャネルを備え得る。
【0058】
例として、入口装置が回転軸Rの周りを反時計方向に回転するためのものである場合、入口装置の入口チャネルは、中央受けゾーンから円錐状受け構造の外表面を螺旋状に時計方向に下降し得り、その逆も同様である。
【0059】
入口装置は椀状形状を有してよく、中央円錐状受け構造は上記椀状形状内の中央に位置し、上記椀状形状の底部から延在する。入口チャネルは上記円錐状受け構造の底部から放射状に延在し得り、上記椀状形状の内側を上昇し得る。入口装置は実質的に円形断面を有してよく、入口チャネルは、円形断面の外縁の接線と実質的に垂直な方向に、分離チャンバへの出口に位置してよい。入口装置の円形外縁の接線と実質的に垂直な方向に出口を残す入口チャネルを有することは、それによって分離チャンバに入る際に液体に好ましい加速が与えられる点で有利である。
【0060】
本発明は更に、
−潤滑油からの汚染物質を分離するための三相遠心分離機であって、この分離機は、分離ディスクのスタックを有する分離空間、この分離空間内へと延在する汚染された潤滑油用の分離機入口、分離空間から延在する浄化された潤滑油用の液体軽相出口、分離空間から延在する液体重相出口、を含むローターを備え、当該分離機は更に、ローター内に含まれ、スラッジ相を分離機のスラッジ出口の方及びその外部に搬送するために配置されたコンベヤスクリューが提供される、三相遠心分離機、
−潤滑油タンクから分離機入口に汚染された潤滑油を輸送するための手段、及び浄化された油を分離機の液体軽相出口から潤滑油タンクに輸送して戻すための手段、
−分離機入口の上流で汚染された油に少なくとも一つの液体分離助剤を添加するための手段、を備える潤滑油タンク用の洗浄キットを提供する。
【0061】
そのようなキットは、従って、別の洗浄システムに既に接続されていてもいなくてもよい既存のモーター潤滑油タンクに追加され得る。