特許第6307675号(P6307675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307675
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】標的タンパク質に結合する核酸断片
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20180402BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180402BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20180402BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20180402BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20180402BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20180402BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180402BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   C12N15/00 HZNA
   C12N15/00 A
   C40B40/06
   C12P19/34 A
   C12Q1/68 A
   C12Q1/68 Z
   A61K31/7115
   A61P43/00 111
   A61P37/02
【請求項の数】26
【全頁数】100
(21)【出願番号】特願2013-544308(P2013-544308)
(86)(22)【出願日】2012年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2012079611
(87)【国際公開番号】WO2013073602
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-253357(P2011-253357)
(32)【優先日】2011年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-148962(P2012-148962)
(32)【優先日】2012年7月2日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「機能性人工塩基を導入した第2世代DNAアプタマーの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】508098800
【氏名又は名称】タグシクス・バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(72)【発明者】
【氏名】平尾 一郎
(72)【発明者】
【氏名】平尾 路子
(72)【発明者】
【氏名】山重 りえ
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂之
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/066737(WO,A1)
【文献】 遺伝子医学MOOK,2009年,Vol. 15,pp. 167-173
【文献】 Nucl. Acids Res.,2009年,Vol. 37, No. 2,e14, pp. 1-9
【文献】 Cytometry Res.,2009年,Vol. 19, No. 2,pp. .9-17
【文献】 Meth. Mol. Biol.,2010年,Vol. 634,pp. 355-369
【文献】 Annu. Rev. Med.,2005年,Vol. 56,pp. 555-583
【文献】 Biosens. Bioelectr.,2008年,Vol. 23,pp. 1819-1824
【文献】 Anal. Chem.,2010年,Vol. 82,pp. 1851-1857
【文献】 Nat. Rev.,2006年,Vol. 5,pp. 123-132
【文献】 Nat. Meth.,2006年,Vol. 3, No. 9,pp. 729-735
【文献】 Nucl. Acids Res.,2009年,Vol. 37, No. 2,e14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/115
C12N 15/09
C40B 40/06
A61K 31/7115
A61K 48/00
A61P 9/00
A61P 43/00
A61P 37/02
C12Q 1/68
C12N 9/00
C07H 21/02−21/04
G01N 33/15
G01N 33/50
G01N 33/53
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号25〜73、55〜166(ただし、配列中のnを7-(2-thienyl)-3H-imidazo[4,5-b]pyridine-3-ylとする)、175、177、179、181、183、198、201、202、205〜209、211、212及び229〜278からなる群から選択されるいずれか一の塩基配列を含む、血管内皮細胞増殖因子を標的物質とする核酸アプタマー。
【請求項2】
請求項に記載のいずれか一の塩基配列、その5′末端側に隣接する配列番号1で示される塩基配列及びその3′末端側に隣接する配列番号2で示される塩基配列からなる、請求項に記載の核酸アプタマー。
【請求項3】
配列番号167〜174(ただし、配列中のnを7-(2-thienyl)-3H-imidazo [4,5-b]pyridine-3-ylとする)、186,188、190、192、194、214〜222及び279〜328からなる群から選択されるいずれか一の塩基配列を含む、インターフェロンγを標的物質とする核酸アプタマー。
【請求項4】
請求項に記載のいずれか一の塩基配列、その5′末端側に隣接する配列番号1で示される塩基配列及びその3′末端側に隣接する配列番号2で示される塩基配列からなる、請求項に記載の核酸アプタマー。
【請求項5】
転写又は複製可能な非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を包含する一本鎖核酸ライブラリーであって、
前記非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子は、
天然型ヌクレオチドと人工塩基対合可能な人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドとで構成され、かつ
5′末端及び3′末端に位置し、それぞれが共通する既知塩基配列からなるプライマー結合領域、
該プライマー結合領域間に位置する中央領域、及び
前記中央領域の少なくとも一方の末端に前記プライマー結合領域に隣接するように配置され、当該中央領域の塩基配列上の特定の位置に配置された一以上の人工塩基の位置情報と連関する天然型ヌクレオチドで構成される識別部位
前記一本鎖核酸ライブラリー。
【請求項6】
前記非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子における非天然型ヌクレオチドの含有率が全ヌクレオチドの20%以下である、請求項5に記載の一本鎖核酸ライブラリー。
【請求項7】
核酸アプタマーの製造方法であって、
本鎖核酸ライブラリーと標的物質とを溶液中で混合して一本鎖核酸分子と標的物質の複合体を形成させる複合体形成工程、
前記複合体を回収する複合体回収工程、
前記回収された複合体から一本鎖核酸分子を回収する一本鎖核酸分子回収工程、
前記回収された一本鎖核酸分子を核酸増幅法によって増幅する増幅工程、
記増幅工程後に得られた核酸分子を核酸アプタマーに調製する核酸アプタマー調製工程、及び
得られた核酸アプタマーの塩基配列を決定する塩基配列決定工程
を含み、
ここで、前記一本鎖核酸ライブラリーは、天然型ヌクレオチドと、人工塩基対合可能な人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドとで構成される転写又は複製可能な非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を含み、
該一本鎖核酸分子は、5′末端及び3′末端に位置し、かつそれぞれが共通する既知塩基配列からなるプライマー結合領域、及び該プライマー結合領域間に位置する中央領域を含み、
また、前記塩基配列決定工程は、
天然型ヌクレオチドを基質として前記プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記得られた核酸アプタマーを核酸増幅法により増幅する第一増幅工程、
前記第一増幅工程後に得られる天然型ヌクレオチドのみで構成された増幅産物から単一クローンを得るクローニング工程、
天然型ヌクレオチド及び非天然型ヌクレオチドを基質として前記プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記選択された一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する第二増幅工程、
前記クローニング工程で得られた単一クローンをプローブとして前記第二増幅工程後に得られる増幅産物から単一クローン由来の一本鎖核酸分子を単離する一本鎖核酸分子単離工程、及び
前記一本鎖核酸分子単離工程で単離された単一クローン由来の一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する塩基配列決定工程
を含む前記製造方法。
【請求項8】
核酸アプタマーの製造方法であって、
一本鎖核酸ライブラリーと標的物質とを溶液中で混合して一本鎖核酸分子と標的物質の複合体を形成させる複合体形成工程、
前記複合体を回収する複合体回収工程、
前記回収された複合体から一本鎖核酸分子を回収する一本鎖核酸分子回収工程、
前記回収された一本鎖核酸分子を核酸増幅法によって増幅する増幅工程、
前記増幅工程後に得られた核酸分子を核酸アプタマーに調製する核酸アプタマー調製工程、及び
得られた核酸アプタマーの塩基配列を決定する塩基配列決定工程
を含み、
ここで、前記一本鎖核酸ライブラリーは、天然型ヌクレオチドと、人工塩基対合可能な人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドとで構成される転写又は複製可能な非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を含み、
該一本鎖核酸分子は、5′末端及び3′末端に位置し、かつそれぞれが共通する既知塩基配列からなるプライマー結合領域、該プライマー結合領域間に位置する中央領域、及び該中央領域の少なくとも一方の末端に前記プライマー結合領域に隣接するように配置され、当該中央領域の塩基配列上の特定の位置に配置された一以上の人工塩基の位置情報と連関する天然型ヌクレオチドで構成される識別部位を含み、
また、前記塩基配列決定工程は、
天然型ヌクレオチドを基質として前記プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記得られた核酸アプタマーを核酸増幅法により増幅する第一増幅工程、
前記第一増幅工程後に得られる天然型ヌクレオチドのみで構成された増幅産物から単一クローンを得るクローニング工程、
前記クローニング工程後に得られる単一クローンの塩基配列を決定する塩基配列決定工程、及び
前記単一クローンの塩基配列における識別領域の塩基配列に基づいて当該単一クローンの鋳型となった非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の塩基配列上の人工塩基の位置を決定する人工塩基位置決定工程
を含む前記方法。
【請求項9】
核酸アプタマー調製工程で調製された核酸アプタマーを新たな一本鎖核酸ライブラリーとして用いて、前記複合体形成工程から核酸アプタマー調製工程までを新たに1回以上繰り返す反復工程をさらに含む、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記繰り返し回数が15回以下である、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記核酸アプタマーがDNAアプタマー又はRNAアプタマーである、請求項10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記核酸アプタマーがRNAアプタマーのときに、前記増幅工程が逆転写ステップ、DNA増幅ステップ及び転写ステップを含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記人工塩基が7-(2-thienyl)-3H-imidazo[4,5-b]pyridine-3-yl、2-nitropyrrole-1-yl、及び2-formyl-1H-pyrrole-1-ylから選択される、請求項12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記人工塩基の人工塩基対合可能な誘導体を含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
天然型ヌクレオチドと、人工塩基対合可能な人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドとで構成される転写又は複製可能な異なる複数の非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子群の中から選択される一の非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法であって、
それぞれの非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子は、5′末端及び3′末端に位置し、それぞれが共通する既知塩基配列からなるプライマー結合領域、及び該プライマー結合領域間に位置する中央領域を含む構造を有し、
天然型ヌクレオチドを基質としてプライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記選択された非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する第一増幅工程、
前記第一増幅工程後に得られる天然型ヌクレオチドのみで構成された増幅産物から前記選択された非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の単一クローンを得るクローニング工程、
天然型ヌクレオチド及び非天然型ヌクレオチドを基質として前記プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記選択された一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する第二増幅工程、
前記クローニング工程で得られた単一クローンをプローブとして前記第二増幅工程後に得られる増幅産物から単一クローン由来の一本鎖核酸分子を単離する一本鎖核酸分子単離工程、及び
前記一本鎖核酸分子単離工程で単離された単一クローン由来の一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する塩基配列決定工程
を含む前記方法。
【請求項16】
前記一本鎖核酸分子単離工程において、固相担体に固定化したプローブを用いる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記一本鎖核酸分子単離工程で単離された単一クローン由来の一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチドを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
天然型ヌクレオチドと、人工塩基対合可能な人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドとで構成される転写又は複製可能な異なる複数の非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子群の中から選択される一の非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法であって、
それぞれの非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子は、5′末端及び3′末端に位置し、それぞれが共通する既知塩基配列からなるプライマー結合領域、該プライマー結合領域間に位置する中央領域、及び前記中央領域の少なくとも一方の末端に前記プライマー結合領域に隣接するように配置され、当該中央領域の塩基配列上の特定の位置に配置された一以上の人工塩基の位置情報と連関する天然型ヌクレオチドで構成される識別部位を含む構造を有し、
天然型ヌクレオチドを基質として、プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記選択された非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する第増幅工程、
前記第一増幅工程後に得られる天然型ヌクレオチドのみで構成された増幅産物から前記選択された非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の単一クローンを得るクローニング工程、
前記クローニング工程後に得られる単一クローンの塩基配列を決定する塩基配列決定工程、及び
前記単一クローンの塩基配列における識別領域の塩基配列に基づいて当該単一クローンの鋳型となった非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の塩基配列上の人工塩基の位置を決定する人工塩基位置決定工程
を含む前記方法。
【請求項19】
前記人工塩基が7-(2-thienyl)-3H-imidazo[4,5-b]pyridine-3-yl、2-nitropyrrole-1-yl、及び2-formyl-1H-pyrrole-1-ylからなる群から選択される、請求項1518のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記人工塩基の人工塩基対合可能な誘導体を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子群を構成する一本鎖核酸分子がDNA又はRNAである、請求項1520のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
一本鎖核酸分子がRNAのときに、請求項15に記載の第一〜第増幅工程又は請求項18に記載の第一増幅工程が逆転写ステップ、DNA増幅ステップ及び転写ステップを含む、請求項1521のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1又は2に記載の核酸アプタマーを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子の機能阻害用医薬組成物。
【請求項24】
請求項3又は4に記載の核酸アプタマーを有効成分とするインターフェロンγの機能阻害用医薬組成物。
【請求項25】
請求項1又は2に記載の核酸アプタマーを用いて、試料中に存在する血管内皮細胞増殖因子を検出する方法。
【請求項26】
請求項3又は4に記載の核酸アプタマーを用いて、試料中に存在するインターフェロンγを検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工塩基を含む核酸ライブラリーを用いた機能性核酸、特に核酸アプタマー、とりわけDNAアプタマーの効率的な作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低分子化合物に代わる医薬又は診断薬の新たな有効成分として核酸アプタマーがsiRNA等の他の機能性核酸と共に注目されており、その医療応用に向けて様々な研究及び開発が世界各国で進められている。
【0003】
核酸アプタマーは、それ自身が有する立体構造によってタンパク質等の標的物質と強固、かつ特異的に結合し、その機能を阻害又は抑制することができる機能性核酸である。医薬品として利用される核酸アプタマーの代表的な例としては、2004年にFDAによって承認された血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を標的とする加齢黄斑変性症治療用の修飾RNAアプタマー(Macugen)が知られている。
【0004】
一方、核酸アプタマーは、20種類のアミノ酸から成るタンパク質である抗体と比較して、構成する塩基の種類が4種類しかなく、しかもこれらの4種類の塩基の化学的・物理的性質が非常に似ていることからそのバリエーションが限られ、核酸アプタマーの性能に限界があるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、1種類又は2種類の天然型塩基にリンカーを介して置換基を結合した修飾天然型塩基を核酸アプタマー分離のための核酸ライブラリーに用いる方法が報告されている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1〜3)。このような修飾天然型塩基を含む修飾核酸アプタマーとして、タンパク質を検出可能な核酸チップへの応用を目指した診断分野に利用可能なDNAアプタマーも知られている(非特許文献3)。しかし、修飾核酸アプタマーは、1種類又は2種類の修飾天然型塩基を導入しているので、核酸アプタマー全体の約25%以上の塩基が修飾天然型塩基に置換されることになる。その結果、アプタマーの製造率は上がるものの、アプタマーの選択性の低下や細胞毒性の問題が新たに生じてしまう。それ故、現在までのところ修飾天然型塩基を有する修飾核酸アプタマーは、診断用に限られており、治療薬として承認されたものは無い(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平09-502354
【特許文献2】WO1992014842
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shoji A., et al., J. Am. Chem. Soc., 129, 1456-1464 (2007)
【非特許文献2】Vaught J.D., et al., J. Am. Chem. Soc., 132, 4141-4151 (2010)
【非特許文献3】Gold L., et al., PLoS One, 5, e15004 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来法で得られる核酸アプタマーよりも標的物質との特異性及び結合性が高い核酸アプタマー、特にDNAアプタマーを効率的に製造する方法を開発し、提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記核酸分子を有効成分とする医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、天然型ヌクレオチドで構成される一本鎖核酸分子に人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを導入することによって、天然型ヌクレオチドのみで構成される核酸アプタマーよりも標的物質への結合能が高い核酸アプタマーを取得できることを見出した。この人工塩基は、相補性により対合し得る他の人工塩基を有することから、核酸の複製や転写においても機能できる。それ故、PCR等の従来の核酸増幅法による核酸ライブラリーの増幅が可能となる。このような核酸の複製や転写で機能し得る人工塩基については、既に知られていた(I. Hirao I., et al., Nature Methods, 3, 729-735 (2006); Hirao I., et al., J. Am. Chem. Soc., 129, 15549-15555 (2007); Kimoto M., et al., Nucleic Acids Res., 37, e14 (2009); Kimoto M.,et al., J. Am. Chem. Soc., 132, 15418-15426 (2010); Kimoto M., et al., Expert Rev. Mol. Diagn., 11, 321-331 (2011); Malyshev D.A., et al., J. Am. Chem. Soc., 131, 14620-14621 (2009); Malyshev D.A., et al., Chemistry, 16, 12650-12659 (2010); Yang Z., et al. , Nucleic Acids Res., 35, 4238-4249, (2007); Z. Yang, et al., J. Am. Chem. Soc., 133, 15105-15112 (2011))が、その人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを含む核酸アプタマーについては、これまで全く知られていなかった。その理由の一つとして、核酸ライブラリー中の非天然型ヌクレオチドを含む核酸アプタマーの塩基配列を決定する方法が全く確立されていなかったことが挙げられる。そこで、本発明者らは、非天然型ヌクレオチドを含む核酸分子を包含するライブラリーにおける個々の塩基配列を決定する方法も新たに開発した。
【0011】
本発明は、上記開発結果に基づくものであって、具体的には以下の発明を提供する。
【0012】
(1)天然型ヌクレオチドと人工塩基対合可能な人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドとを含み、かつ転写又は複製可能な核酸アプタマー。
【0013】
(2)前記人工塩基がDs、Pn、及びPaからなる群から選択される、(1)に記載の核酸アプタマー。
【0014】
(3)前記人工塩基が人工塩基対合可能な前記人工塩基の誘導体を含む、(2)に記載の核酸アプタマー。
【0015】
(4)前記非天然型ヌクレオチドの含有率が全ヌクレオチド数の20%以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の核酸アプタマー。
【0016】
(5)前記核酸がDNA又はRNAである、(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸アプタマー。
【0017】
(6)血管内皮細胞増殖因子を標的物質とする、(1)に記載の核酸アプタマー。
【0018】
(7)配列番号25〜73、80〜104、106〜109、111、155〜166(ただし、配列中のnをDsとする)、175、177、179、181、183、198、201、202、205〜209、211、212及び229〜278からなる群から選択されるいずれか一の塩基配列を含む、(6)に記載の核酸アプタマー。
【0019】
(8)(7)に記載のいずれか一の塩基配列、その5’末端側に隣接する配列番号1で示される塩基配列及びその3’末端側に隣接する配列番号2で示される塩基配列からなる、(7)に記載の核酸アプタマー。
【0020】
(9)インターフェロンγを標的物質とする、(1)に記載の核酸アプタマー。
【0021】
(10)配列番号167〜174(ただし、配列中のnをDsとする)、186,188、190、192、194、214〜222及び279〜328からなる群から選択されるいずれか一の塩基配列を含む、(9)に記載の核酸アプタマー。
【0022】
(11)(10)に記載のいずれか一の塩基配列、その5’末端側に隣接する配列番号1で示される塩基配列及びその3’末端側に隣接する配列番号2で示される塩基配列からなる、(10)に記載の核酸アプタマー。
【0023】
(12)天然型ヌクレオチドと人工塩基対合可能な人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドとで構成される転写又は複製可能な非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を含む一本鎖核酸ライブラリー。
【0024】
(13)前記非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子における非天然型ヌクレオチドの含有率が全ヌクレオチドの20%以下である、(12)に記載の一本鎖核酸ライブラリー。
【0025】
(14)一本鎖核酸分子の5’末端及び3’末端に位置し、それぞれが共通する既知塩基配列からなるプライマー結合領域、及び当該プライマー結合領域間に位置する中央領域を含む、(12)又は(13)に記載の一本鎖核酸ライブラリー。
【0026】
(15)前記中央領域の少なくとも一方の末端に前記プライマー結合領域に隣接するように配置され、当該中央領域の塩基配列上の特定の位置に配置された一以上の人工塩基の位置情報と連関する天然型ヌクレオチドで構成される識別部位をさらに含む非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子からなる、(14)に記載の一本鎖核酸ライブラリー。
【0027】
(16)核酸アプタマーの製造方法であって、(12)〜(15)のいずれかに記載の一本鎖核酸ライブラリーと標的物質とを溶液中で混合して一本鎖核酸分子と標的物質の複合体を形成させる複合体形成工程、前記複合体を回収する複合体回収工程、前記回収された複合体から一本鎖核酸分子を回収する一本鎖核酸分子回収工程、前記回収された一本鎖核酸分子を核酸増幅法によって増幅する増幅工程、及び前記増幅工程後に得られた核酸分子を核酸アプタマーに調製する核酸アプタマー調製工程を含む前記製造方法。
【0028】
(17)核酸アプタマー調製工程で調製された核酸アプタマーを新たな一本鎖核酸ライブラリーに用いて、前記複合体形成工程から核酸アプタマー調製工程までを新たに1回以上繰り返す反復工程をさらに含む、(16)に記載の製造方法。
【0029】
(18)繰り返し回数が15回以下である、(17)に記載の製造方法。
【0030】
(19)前記核酸アプタマーがDNAアプタマー又はRNAアプタマーである、(16)〜(18)のいずれかに記載の製造方法。
【0031】
(20)前記核酸アプタマーがRNAアプタマーのときに、前記増幅工程が逆転写ステップ、DNA増幅ステップ及び転写ステップを含む、(19)に記載の製造方法。
【0032】
(21)前記人工塩基がDs、Pn、及びPaから選択される、(16)〜(20)のいずれかに記載の製造方法。
【0033】
(22)前記人工塩基が人工塩基対合可能な前記人工塩基の誘導体を含む、(21)に記載の製造方法。
【0034】
(23)(14)に記載の一本鎖核酸ライブラリーから選択される非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法であって、天然型ヌクレオチドを基質としてプライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記選択された一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する第一増幅工程、前記第一増幅工程後に得られる天然型ヌクレオチドのみで構成された増幅産物から単一クローンを得るクローニング工程、天然型ヌクレオチド及び前記非天然型ヌクレオチドを基質として前記プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記選択された一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する第二増幅工程、前記クローニング工程で得られた単一クローンをプローブとして前記第二増幅工程後に得られる増幅産物から単一クローン由来の一本鎖核酸分子を単離する一本鎖核酸分子単離工程、及び前記一本鎖核酸分子単離工程で単離された単一クローン由来の一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する塩基配列決定工程を含む前記方法。
【0035】
(24)前記一本鎖核酸分子単離工程において、固相担体に固定化したプローブを用いる、(23)に記載の方法。
【0036】
(25)前記一本鎖核酸分子単離工程で単離された単一クローン由来の一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチドを含む、(23)又は(24)に記載の方法。
【0037】
(26)(15)に記載の一本鎖核酸ライブラリーから選択される非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法であって、天然型ヌクレオチドを基質として、前記プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて前記選択された一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する第増幅工程、前記増幅工程後に得られる天然型ヌクレオチドのみで構成された増幅産物から単一クローンを得るクローニング工程、前記クローニング工程後に得られる単一クローンの塩基配列を決定する塩基配列決定工程、及び前記単一クローンの塩基配列における識別領域の塩基配列に基づいて当該単一クローンの鋳型となった一本鎖核酸分子の塩基配列上の人工塩基の位置を決定する人工塩基位置決定工程を含む前記方法。
【0038】
(27)前記人工塩基がDs、Pn、及びPaからなる群から選択される、(23)〜(26)のいずれかに記載の方法。
【0039】
(28)前記人工塩基が人工塩基対合可能な前記人工塩基の誘導体を含む、(27)に記載の方法。
【0040】
(29)前記一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子がDNA又はRNAである、(23)〜(28)のいずれかに記載の方法。
【0041】
(30)一本鎖核酸分子がRNAのときに、(23)に記載の第一〜第増幅工程又は(26)に記載の第一増幅工程が逆転写ステップ、DNA増幅ステップ及び転写ステップを含む、(2)〜(29)のいずれかに記載の方法。
【0042】
(31)(1)〜(5)のいずれかに記載の核酸アプタマー及び/又は(16)〜(22)に記載の製造方法で得られる核酸アプタマーを有効成分とし、当該核酸アプタマーの標的物質の機能を阻害する医薬組成物。
【0043】
(32)(6)〜(8)のいずれかに記載の核酸アプタマーを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子の機能阻害用医薬組成物。
【0044】
(33)(9)〜(11)のいずれかに記載の核酸アプタマーを有効成分とするインターフェロンγの機能阻害用医薬組成物。
【0045】
(34)(1)〜(5)のいずれかに記載の核酸アプタマー及び/又は(16)〜(22)に記載の製造方法で得られる核酸アプタマーを用いて試料中に存在するその核酸アプタマーが結合する標的物質を検出する方法。
【0046】
(35)非修飾の天然型リボヌクレオチドと、人工塩基対合可能な人工塩基を有する非天然型リボヌクレオチドを含み、かつ複製可能なデオキシリボザイム又は転写可能なリボザイム。
【0047】
(36)前記人工塩基がDs、Pn、及びPaからなる群から選択される、(35)に記載のリボザイム。
【0048】
(37)前記人工塩基が人工塩基対合可能な前記人工塩基の誘導体を含む、(35)に記載のリボザイム。
【0049】
(38)(12)〜(15)のいずれかに記載の一本鎖核酸ライブラリー、及びプライマー結合領域に結合するプライマーセットを含む核酸アプタマー、デオキシリボザイム又はリボザイム製造用キット。
【0050】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願2011-253357号、2012-148962号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0051】
本発明の核酸アプタマーの製造方法によれば、標的物質との特異性及び結合性が高い核酸アプタマー、特にDNAアプタマーを効率的に製造することができる。
【0052】
本発明の塩基配列決定方法によれば、これまで確立されていなかった非天然型ヌクレオチドを含み得る一本鎖核酸ライブラリーから選択される一本鎖核酸分子の塩基配列を決定すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】人工塩基の具体例を示す図である。
図2】一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子の構造を示す概念図である。
図3】核酸アプタマーの製造方法の工程フローを示す。
図4】ランダムライブラリー法の工程フローを示す。
図5】プレデターミン法の工程フローを示す。
図6-1】IonTorrent PGMにより解析したクローンとその数の内訳を示す。図中、太字下線は識別部位をしめす。識別部位から予想されるDsの位置を小文字「n」で示す。
図6-2】IonTorrent PGMにより解析したクローンとその数の内訳を示す。図中、太字下線は識別部位を示す。識別部位から予想されるDsの位置を小文字「n」で示す。
図7】IonTorrent PGMにより得られたクローン間のモチーフアライメントを示す。サンプル名の欄においてカッコ内の数字は、リード(read)数(クローンの数)を示す。識別部位は、下線で、また識別部位から予想されるDsの位置を太字Dsで、また、9種の配列においてGGGDsTTGGNGGGGDsGTCGG(Nは任意の天然型塩基)に相同性のある配列を斜体で示した。
図8】実施例2において、SPR解析に用いたDNAアプタマーの全長とコントロール配列(VEGF binding DNA 64)を示す。太字・下線は、識別配列を、小文字は、プライマー結合領域を、そして太字は、Ds又はDsを天然型塩基に置換した部分をそれぞれ示す。T* = Biotin-dT。 VEGF binding DNA 64は、コントロール配列で、太字斜体配列領域はセレクションでCompetitorに使用した配列に相当する。
図9】全長DNAアプタマーのセンサグラムを示す。
図10】大腸菌を用いたクローニング法により決定した5ラウンド後のドープセレクションで得られた28クローンの塩基配列を示す。塩基配列中、「D」は「Ds」を示す。
図11】5ラウンド後のドープセレクションで得られたDNAのIonTorrent PGMによる解析結果を示す。横軸に示す塩基配列において、「D」は「Ds」を示す。
図12】全長及び切り詰めたDNAアプタマーのセンサグラムを示す。
図13】VEGF165及びそれ以外のタンパク質との相互作用解析を示す。
図14】大腸菌を用いたクローニング法により決定した8ラウンド後のランダムセレクションで得られた59クローンの塩基配列を示す。カッコ内の数字は同一クローン数を示す。クローン配列のランダム領域中、太字で示した塩基は、相同性のある塩基間で、一塩基の変異が見られた箇所である。人工塩基Dsの位置同定に使用したビオチン化プローブ(3’-プローブ配列-5’)5種類も図中に示した。
図15】実施例8に記載のVEGF-165に対する1回目のSELEXにより得られた各クローンのVEGF-165に対する結合を示すSPRセンサグラムを示す。(A〜C)2.5 nM、5 nM、10 nMのVEGF-165をインジェクションした場合のSPRセンサグラムである。(D)VG20Ds-57の各種タンパク質への結合解析を示す。センサグラムは、SPRに結合させたDNA断片の分子量、インジェクションするタンパク質の分子量、SPRに結合させたDNA断片の固定化量(RU)で規格化した。インジェクションの時間は480秒で、解離時間は480秒である。インジェクションから930秒後(解離時間が450秒経過後)の値を、表9に示した。
図16A】VEGF-165に対する2回目のDoped SELEXにより得られた配列を示す。4ラウンドのDoped SELEXにより得られた配列のうち、上位50位の配列のセレクションでドープにした45塩基部分を示している。太字は、VG20の配列から変異した塩基部分である。
図16B】VGd1-2Ds-47の配列と予測された二次構造を示す。4ラウンドのDopedセレクションにより得られた配列において、人工塩基以外のDoped配列部分で、その塩基が99%以上、96%以上の保存率を示すものは、それぞれ丸、八角形で示した。小文字は、セレクション時のPrimer領域配列に由来する塩基である。
図17A】VGd1-2Ds-47と、既存の抗VEGF-165アプタマーの各タンパク質への結合をSPRにより解析した結果を示す。
図17B】各種VGd1-2Ds-47変異体の予測二次構造におけるDsの位置とVEGF-165に対する結合能(KD)を示す。
図18】各種VGd1-2Ds-47変異体のVEGF-165に対する結合を示すSPRセンサグラムである。2.5 nM(A)、5 nM(B)、10 nM(C)、20 nM(D)のVEGF-165をインジェクションした場合のSPRセンサグラムである。
図19】実施例11に記載のIFN-γに対する1回目のSELEXにより得られた各クローンのIFN-γに対する結合を示すSPRセンサグラムを示す。(A〜C) 50 nM, 100 nM, 150 nMのIFN-γをインジェクションした場合のSPRセンサグラムである。(D) IF07bDs-57の各種タンパク質への結合解析を示す。センサグラムは、SPRに結合させたDNA断片の分子量、インジェクションするタンパク質の分子量、SPRに結合させたDNA断片の固定化量(RU)で規格化した。インジェクションの時間は480秒で、解離時間は480秒である。インジェクションから930秒後(解離時間が450秒経過後)の値を、表9に示した。
図20A】IFN-γに対する2回目のDoped SELEXにより得られた配列を示す。4ラウンドのDoped SELEXにより得られた配列のうち、上位50位の配列のセレクションでドープにした45塩基部分を示している。太字は、IF07bの配列から変異した塩基部分である。
図20B】IFd1-3Ds-49の配列と予測された二次構造を示す。4ラウンドのDopedセレクションにより得られた配列において、人工塩基以外のDoped配列部分で、その塩基が99%以上、96%以上の保存率を示すものは、それぞれ丸、八角形で示した。小文字は、セレクション時のPrimer領域配列に由来する塩基である。
図21A】IFd1-3Ds-49と、既存の抗IFN-γアプタマーの各タンパク質への結合をSPRにより解析した結果を示す。
図21B】各種IFd1-3Ds-49変異体の予測二次構造におけるDsの位置とIFN-γに対する結合能(KD)を示す。
図22】各種IFd1-3Ds-49変異体のIFN-γに対する結合を示すSPRセンサグラムを示す。 50 nM(A)、100 nM(B)、150 nM(C)のIFN-γをインジェクションした場合のSPRセンサグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
1.核酸アプタマー
1−1.概要
本発明の第1の実施形態は、核酸アプタマーである。本発明の核酸アプタマーは、天然型ヌクレオチドと非天然型ヌクレオチドとを含み、従来法で得られる核酸アプタマーよりも標的物質との特異性及び結合性が高い性質を有し得る。
【0055】
1−2.定義
本明細書で使用する一般的な用語の定義について以下で説明する。
【0056】
本明細書において「核酸」又は「核酸分子」とは、原則としてヌクレオチドを構成単位とし、それらがホスホジエステル結合によって連結した生体高分子をいう。
【0057】
本明細書において「天然型ヌクレオチド」とは、自然界に存在するヌクレオチドであって、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンのいずれかの天然型塩基を有するデオキシリボヌクレオチドから構成されるDNA、及びアデニン、グアニン、シトシン及びウラシルのいずれかの天然型塩基を有するリボヌクレオチドから構成されるRNA、又はそれらの組み合わせが挙げられる。天然型ヌクレオチドのみで構成される核酸(分子)を、本明細書では天然型核酸(分子)とする。
【0058】
本明細書において「非天然型ヌクレオチド」とは、その塩基が人工塩基で構成されている自然界に存在しないヌクレオチドをいう。本発明における非天然型ヌクレオチドを構成するリン酸基及び糖は、天然型ヌクレオチドのリン酸基及び糖と構造的に同一である。
【0059】
本明細書において「人工塩基」とは、天然型ヌクレオチドを構成する天然型塩基に類似の性質を有する人工的に構築された塩基類似体であって、天然型塩基と同様に、人工塩基対合を形成することのできる相手となる塩基類似体(本明細書では、以降「相補的人工塩基」とする)を有する。本明細書において「人工塩基対合」とは、天然型塩基のアデニンとチミン、アデニンとウラシル、又はグアニンとシトシンのように、一対の相補的人工塩基が互いに形成する塩基対合をいう。人工塩基対合は、天然型塩基間の塩基対合に見られる水素結合を介した化学的結合、人工塩基間の分子構造に基づく嵌合を介した物理的結合、及び疎水性相互作用を介したスタッキング効果を含む。
【0060】
人工塩基が有する「天然型塩基に類似の性質」には、人工塩基対合による相補性によって核酸の複製又は転写(逆転写を含む)が可能な性質を含む。人工塩基は、天然型塩基と同様に、人工塩基対合において排他的選択性を有する。したがって、基質ヌクレオチドに一対の相補的人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドが存在すれば、非天然型ヌクレオチドを含む核酸分子であっても人工塩基間の相補性によって天然型ヌクレオチドと同様に正確な複製や転写ができる。それ故、非天然型ヌクレオチドを含みながら、PCR等の核酸増幅法によるDNA分子の増幅や、in vitro転写法でのRNA分子の増幅が可能となる。
【0061】
上記人工塩基の具体例を図1に示す。aは、Ds(7-(2-thienyl)-3H-imidazo[4,5-b]pyridine-3-yl;本明細書では「Ds」とする)、bは、Pn(2-nitropyrrole-1-yl;本明細書では「Pn」とする)、cは、Pa(2-formyl-1H-pyrrole-1-yl;本明細書では「Pa」とする)、dは、P(2-amino-imidazo[1,2-a]-1,3,5-triazin-4(8H)-one;本明細書では「P」とする)、eは、Z(6-amino-5-nitro-2(1H)-pyridone;本明細書では「Z」とする)、fは、5SICS(6-methylisoquinoline-1(2H)-thione;本明細書では「5SICS」とする)、gはNaM(3-methoxynaphthalen-2-yl;本明細書では「NaM」とする)、及びhはMMO2(2-methoxy-4-methylphenyl;本明細書では「MMO2」とする)が挙げられる。これらの人工塩基において、Dsの相補的人工塩基には、Pn、及びPaが挙げられる。Pの相補的人工塩基には、Zが挙げられる。5SICSの相補的人工塩基には、NaM、及びMMO2が挙げられる。
【0062】
なお、人工塩基は、複製や転写の際、相補的人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドが基質に含まれない場合には、相補的人工塩基と構造的に及び/又は性質的に近い天然型塩基と代替的に塩基対合することができる。この場合、鋳型となった核酸分子における非天然型ヌクレオチドは、複製又は転写後に天然型ヌクレオチドに置換されることとなる。例えば、Dsの場合、A又はTに置換されることが知られている。
【0063】
本明細書において、「核酸アプタマー」とは、核酸で構成されるアプタマーであって、水素結合等を介した一本鎖核酸分子の二次構造、さらに三次構造に基づいて形成される立体構造によって標的物質と強固、かつ特異的に結合し、標的物質の生理活性等の機能を特異的に阻害又は抑制する能力を持つリガンド分子をいう。したがって、核酸アプタマーは、標的物質の機能阻害剤となり得る。本明細書において「標的物質の機能阻害」とは、標的物質が有する触媒機能又は遺伝子発現制御機能(転写、翻訳、輸送等の制御を含む)、アポトーシス制御機能のような生物学的機能を阻害又は抑制することをいう。
【0064】
核酸アプタマーは、一般に、RNAのみで構成されるRNAアプタマーとDNAのみで構成されるDNAアプタマーが知られているが、本明細書における核酸アプタマーを構成する核酸は、特に限定はしない。例えば、DNAアプタマー、RNAアプタマー、DNAとRNAの組み合わせで構成されるアプタマー等を含む。安定性、化学合成における製造コスト、及びアプタマー製造における工程数を考慮した場合、DNAアプタマーは、より好適である。
【0065】
本明細書において「標的物質」とは、核酸アプタマー、デオキシリボザイム又はリボザイムの結合対象となり得る物質をいう。標的物質の種類は、核酸分子が結合し得る物質であれば、特に制限はしない。例えば、ペプチド(オリゴペプチド、又はポリペプチド)、核酸、脂質、糖(糖鎖を含む)、又は低分子化合物が挙げられる。好ましくはペプチド、より好ましくはポリペプチド、すなわちタンパク質である。また、天然由来の物質、化学合成物質、遺伝子組換え物質等いずれであってもよい。
【0066】
1−3.構成
本発明の核酸アプタマーは、天然型ヌクレオチドと非天然型ヌクレオチドとを含み、かつ転写又は複製可能なポリヌクレオチドで構成される。
【0067】
本発明の核酸アプタマーに含まれる非天然型ヌクレオチドは、その塩基が人工塩基で構成される。人工塩基は、上記性質を有するものであれば、その種類は特に制限しない。例えば、前記人工塩基の具体例として列挙した人工塩基や後述する人工塩基の誘導体が挙げられる。
【0068】
本発明の核酸アプタマーにおける非天然型ヌクレオチドの含有率は、その核酸アプタマーを構成する全ヌクレオチド数の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下であればよい。全長100塩基以下の核酸アプタマーの場合、通常は一核酸アプタマーあたりに非天然型ヌクレオチドを1〜20個有していれば、本発明の効果を奏し得る。
【0069】
非天然型ヌクレオチドが一核酸アプタマーあたりに複数含まれる場合、各非天然型ヌクレオチドが有する人工塩基は、同一であって及び/又は異なっていてもよい。ただし、人工塩基が異なる場合には、同一の相補的人工塩基を有する二以上の人工塩基を混在させないように留意する。複製又は転写の過程で相補的人工塩基を介して当初の人工塩基が他の人工塩基に置換される可能性があるからである。例えば、核酸アプタマーがPn及びPaを有する非特異的ヌクレオチドを含む場合、複製過程でそれぞれの相補的人工塩基であるDsを介してPnとPaの位置が置換され得るからである。
【0070】
本発明の核酸アプタマーを構成する非天然型ヌクレオチドの塩基は、前記例示した人工塩基の誘導体であってもよい。「人工塩基の誘導体」とは、人工塩基の一部が他の原子団又は他の官能基で置換された塩基類似体であって、人工塩基の相補的人工塩基との相補性を保持している。
【0071】
例えば、前記Dsの誘導体としては、以下の式(1)で示すDs誘導体が挙げられる。
【化1】
【0072】
式中、R及びR’は、それぞれ独立に、以下の式(2)で示すいずれかである。
【化2】
【0073】
【0074】
式中、n1=2〜10、n2=1又は3、n3=1,6又は9、n4=1又は3、n5=3又は6、R1= Phe(フェニルアラニン), Tyr(チロシン), Trp(トリプトファン), His(ヒスチジン), Ser(セリン) 又はLys(リジン)、R2, R3, R4=Leu(ロイシン),Leu,Leu、又はTrp,Phe,Pro(プロリン)である。
【0075】
また、Pnの誘導体としては、以下の式(3)で示す人工塩基誘導体が挙げられる。
【化3】
【0076】
式中、Rは、以下の式(4)で示すいずれかである。
【化4】
【0077】
【0078】
式中、n1=1,3、n2=2〜10、n3=1,6,9、n4=1,3、n5=3,6、R1= Phe, Tyr, Trp, His, Ser, Lys、R2, R3, R4=Leu,Leu,Leu、又はTrp,Phe,Proである。
【0079】
さらに、Paの誘導体としては、以下の式(5)で示す人工塩基誘導体が挙げられる。
【化5】
【0080】
式中、Rは、以下の式(6)で示すいずれかである。
【化6】
【0081】
【0082】
式中、n1=1,3、n2=2〜10、n3=1,6,9、n4=1,3、n5=3,6、R1= Phe, Tyr, Trp, His, Ser, Lys、R2, R3, R4=Leu,Leu,Leu、又はTrp,Phe,Proである。
【0083】
上記誘導体は、相補的人工塩基との間で人工塩基対合によって核酸の複製又は転写(逆転写を含む)が可能である。
【0084】
また、本発明の核酸アプタマーを構成する天然型ヌクレオチドの一部は、修飾されていてもよい。ここでいう「修飾」とは、核酸の構成単位であるヌクレオチド又はその構成要素であるヌクレオシドの一部又は全部が他の原子団又は他の官能基で置換されることをいう。具体的には、例えば、糖修飾、塩基修飾、又はリン酸修飾が挙げられる。
【0085】
糖修飾とは、ヌクレオシドを構成するリボース部の修飾である。例えば、リボヌクレオシドを構成するリボース部の修飾であって、2′位のヒドロキシ基における置換が挙げられる。具体的には、例えば、ヒドロキシ基を、メトキシ基に置換した2′-O-メチルリボース、エトキシ基に置換した2′-O-エチルリボース、プロポキシ基に置換した2′-O-プロピルリボース、若しくはブトキシ基に置換した2′-O-ブチルリボース、ヒドロキシ基をフルオロ基に置換した2′-デオキシ-2′-フルオロリボース又はヒドロキシ基を2′-O-メトキシ-エチル基に置換した2′-O-メトキシエチルリボースが該当する。又は、ヌクレオシドの(デオキシ)リボース部の他糖への置換等が挙げられる。具体的には、例えば、リボース部のアラビノース、2′−フルオロ−β-D-アラビノース、リボースの2′ヒドロキシ基と4′位の炭素原子をメチレンで架橋したリボース誘導体、リボース環の4位の酸素を硫黄に置換したリボース誘導体への置換が該当する。又は、リボフラノース環上の酸素原子(リボースの4位の酸素原子)が硫黄に置換したものも含まれる。
【0086】
塩基修飾とは、ヌクレオシドを構成する塩基部の修飾である。例えば、塩基部への官能基の置換若しくは付加、又は塩基部の塩基類似体への置換が挙げられる。具体的には、例えば、シトシンの5位にメチル基が置換した5-メチルシトシン、シトシンの5位にヒドロキシ基が置換した5-ヒドロキシシトシン、ウラシルの5位にフルオロ基が置換した5-フルオロウラシル、ウラシルの4位の酸素原子がチオ基に置換した4-チオウラシル若しくはウラシルの5位にメチル基が置換した5−メチルウラシルやウラシルの2位の酸素原子がチオ基に置換した2-チオウラシルのような修飾ピリミジン、アデニンの6位にメチル基の置換した6-メチルアデニン、グアニンの6位にチオ基が置換した6-チオグアニンのような修飾プリン又は他の複素環塩基等が該当する。
【0087】
本発明のアプタマーの塩基長は、限定はしないが、10〜100塩基の範囲内であることが好ましい。より好ましくは15〜80塩基の範囲内である。
【0088】
本発明の核酸アプタマーは、天然型及び非天然型のヌクレオチドで構成されるが、天然型ヌクレオチドのみで構成されるポリヌクレオチドと同様に、複製又は転写(逆転写を含む)が可能である。これは、前述のように、非天然型のヌクレオチドが有する人工塩基が相補的人工塩基と人工塩基対合する相補性によって、核酸アプタマーの複製又は転写において天然型塩基と同様の機能を果たし得るからである。したがって、通常の核酸増幅方法やin vitro転写法により核酸アプタマーをクローニングすることができる。
【0089】
1−4.製造方法
本発明の核酸アプタマーは、非天然型ヌクレオチドを包含するが、その非天然型ヌクレオチドが有する人工塩基は、前述の性質を有することから、核酸増幅の工程で、基質ヌクレオチドに一対の相補的人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを追加することによって、一本鎖核酸ライブラリーから所定の製造工程を経ることで製造することができる。以下、本発明の核酸アプタマーの製造方法について説明する。
【0090】
1−4−1.一本鎖核酸ライブラリー
本明細書において「一本鎖核酸ライブラリー」とは、核酸アプタマーの候補分子を包含する同一の及び/又は異なる複数の一本鎖核酸分子で構成されるプールをいう。ただし、一本鎖核酸分子において、その全部又は一部の塩基が互いに対合することによって二本鎖を形成した分子が含まれていてもよい。
【0091】
本発明の一本鎖核酸ライブラリーは、その全部又は一部が非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子で構成される。
【0092】
本明細書において「非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子」とは、天然型ヌクレオチドと非天然型ヌクレオチドとを含む一本鎖核酸分子をいう。非天然型ヌクレオチドは、人工塩基の相補的人工塩基との相補性を保持している前述の人工塩基の誘導体であってもよい。
【0093】
非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子における非天然型ヌクレオチドの含有率は、その核酸分子を構成する全ヌクレオチド数の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチドを複数含む場合、各非天然型ヌクレオチドが有する人工塩基は、同一であって及び/又は異なっていてもよい。例えば、DsとPn、Ds誘導体とPn、Ds誘導体とPn誘導体、DsとPa、Ds誘導体とPa、又はDs誘導体とPa誘導体のように、互いに相補的な一対の異なる人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを含有させることができる。ただし、人工塩基が異なる場合には、同一の相補的人工塩基を有する二以上の人工塩基を混在させないように留意する。複製又は転写の過程で相補的人工塩基を介して当初の人工塩基が他の人工塩基に置換される可能性があるからである。例えば、非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子がPa及びPnを有する非特異的ヌクレオチドを含む場合、複製過程でそれぞれの相補的人工塩基であるDsを介してPaとPnの位置が置換され得るからである。
【0094】
一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子は、一本鎖DNA分子又は一本鎖RNA分子のいずれであってもよい。本発明の核酸アプタマーの製造方法においてDNAアプタマーを製造する場合には、一本鎖DNA分子で構成される一本鎖核酸ライブラリーを、RNAアプタマーを製造する場合には、一本鎖RNA分子で構成される一本鎖核酸ライブラリーを使用する。
【0095】
一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子は、図2で示す一次構造を有することができる。図2A及びBで示すように、一本鎖核酸分子は、いずれもその5′末端側及び3′末端側にプライマーが結合するプライマー結合領域(201、203)と、それら2つのプライマー結合領域間に位置する中央領域(202)とを含む。
【0096】
プライマー結合領域は、天然型ヌクレオチド、非天然型ヌクレオチド又はその組み合わせで構成される。
【0097】
プライマー結合領域の塩基長は、15〜40塩基長、中央領域の塩基長は、20〜80塩基である。したがって、一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子の塩基長は、50〜160塩基の範囲内である。
【0098】
5′末端側及び3′末端側のプライマー結合領域は、一本鎖核酸ライブラリーを構成する各一本鎖核酸分子間でそれぞれ共通する既知塩基配列からなり、5′末端側(201)は、フォワードプライマー(204)に対応する塩基配列で、3′末端側(203)は、リバースプライマー(205)に相補的な塩基配列で構成される。各プライマーの塩基配列は、プライマーが分子内で二次構造を形成しにくい配列であること及び/又はフォワードプライマーとリバースプライマーどうしが塩基対合によって連続する二本鎖領域を形成しない配列であること、それぞれのTm値が40〜80℃、45〜75℃、又は50〜65℃の範囲内にあること、両プライマーのTm値が大きく異ならないこと、及び各プライマーのGC含量が40〜60 %、又は45〜55 %であることが好ましい。
【0099】
中央領域(202)は、全部若しくは一部がランダムな塩基配列、又は特定の塩基配列からなる。
【0100】
中央領域の塩基配列は、原則として、その全部がランダムな塩基配列(202において斜線で示す)である。特に、本発明の核酸アプタマーの製造方法において一本鎖核酸ライブラリーを初回ラウンドに使用する場合には、核酸アプタマーの選択幅を拡大するためにもランダムな塩基配列であることが好ましい。この場合、中央領域に非天然型ヌクレオチドを全く含まない一本鎖核酸分子が一本鎖核酸ライブラリー中に含まれていてもよい。このような非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の中に非天然型ヌクレオチドを含まない一本鎖核酸分子を包含する一本鎖核酸ライブラリーを本発明の核酸アプタマーの製造方法に用いることによって、非天然型ヌクレオチドを含む本発明の核酸アプタマーよりも標的物質に強固に結合する天然型ヌクレオチドのみで構成された核酸アプタマーが製造され得る可能性があるため、核酸アプタマーの製造方法としては、よりその目的に資するからである。
【0101】

中央領域が「特定の塩基配列」からなる場合とは、例えば、所定の選択圧を受けた一本鎖核酸分子における塩基配列をいう。ここで、「所定の選択圧を受けた一本鎖核酸分子」とは、例えば、本発明の製造方法が後述する反復工程を含む場合に、反復工程後の一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子が該当する。
【0102】
一本鎖核酸ライブラリーの一形態として、中央領域の一部がランダムな塩基配列からなる一本鎖核酸分子で構成されたものであってもよい。「中央領域の一部がランダムな塩基配列」とは、例えば、中央領域の塩基配列において、所定の位置の塩基配列が予め特定されており、それ以外の他の塩基がランダムな一本鎖核酸分子及び/又は所定の位置の塩基が人工核酸で構成されており、それ以外の他の塩基がランダムな一本鎖核酸分子が挙げられる。具体的には、例えば、図2Bで示す中央領域の少なくとも一方の末端に識別部位(206)を含む非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子が挙げられる。「識別部位」(206)とは、中央領域において、前記プライマー結合領域に隣接するように配置され、その塩基配列が予め決定された部位を言う。この識別部位は天然型塩基を有する1〜10個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜5個の天然型ヌクレオチドで構成され、その塩基配列は、当該中央領域の塩基配列上の特定の位置に予め配置された一以上の人工塩基(207)の位置情報と連関する。「人工塩基の位置情報と連関する」とは、中央領域の所定の位置に導入した人工塩基の位置を示すタグ配列として機能することをいう。例えば、中央領域の5’末端に配置される識別部位の塩基配列がAGである場合には、中央領域の5’末端から10番目の塩基がDsであることを示すという具合である。このように識別領域は、天然型ヌクレオチドで構成され、かつプライマー結合領域に隣接する既知塩基配列で構成されていることから、増幅工程後であってもその塩基配列は維持され、タグ配列として機能し得る。人工塩基の位置情報は、識別部位の塩基数、塩基配列、5′末端側及び/又は3′末端の配置位置、又はそれらの組み合わせにより、無数に設定することが可能である。したがって、中央領域に1又は2以上の人工塩基を配置させることもできる。このような非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子からなる一本鎖核酸ライブラリーは、後述する一本鎖の塩基配列を決定する方法の一形態において有用である。
【0103】
一本鎖核酸ライブラリーの調製は、当該分野で公知の方法に従って適宜調製すればよい。例えば、核酸合成機を利用して一本鎖核酸ライブラリーを化学合成によって調製する方法が挙げられる。具体的には、一本鎖DNAライブラリーを調製するのであれば、DNAシンセサイザーを用いて、塩基配列の合成プログラムを入力しておくことで、そのプログラムに従って目的の一本鎖核酸ライブラリーを得ることができる。例えば、プライマー結合領域は、所定の塩基配列となるように入力し、中央領域は、ランダムな塩基配列となるようにプログラムしておけばよい。その際、核酸合成の基質として4種の天然型ヌクレオチドに1種以上の非天然型ヌクレオチドを追加することによって、非天然型ヌクレオチドが導入された非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を含む一本鎖核酸ライブラリーを得ることができる。
【0104】
また、前述の中央領域の一部がランダムな塩基配列からなる一本鎖核酸ライブラリーの調製も前記と同様に、プライマー結合領域及び中央領域の所定の位置(例えば、識別部位及びそれに連関する人工塩基導入位置)が所定の塩基となるようにプログラムを入力し、その他の中央領域は、ランダムな塩基配列となるように合成プログラムを入力しておけばよい。
【0105】
一本鎖核酸ライブラリーを構成する各核酸分子の合成は、ライフサイエンスメーカーに委託してもよい。
【0106】
核酸アプタマーの製造方法が後述する反復工程を含む場合、2ラウンド目以降に使用する一本鎖核酸ライブラリーは、その反復工程直前のラウンドで得られた一本鎖核酸分子に基づいて調製すればよい。
【0107】
一本鎖核酸ライブラリーは、核酸アプタマー候補を包含するライブラリーであることから、一本鎖核酸ライブラリーを構成する各一本鎖核酸分子は、原則としてセルフフォールディングによる高次構造を形成している。
【0108】
1−4−2.製造工程
本発明の核酸アプタマーの製造方法における工程フローを図3に示す。この図が示すように、本発明の核酸アプタマーの製造方法は、複合体形成工程(301)、複合体回収工程(302)、一本鎖核酸分子回収工程(303)、増幅工程(304)及び核酸アプタマー調製工程(305)を必須の工程として含む。また、反復工程(306)を任意の工程として含むことができる。また、製造する核酸アプタマーがDNAアプタマーの場合には、複合体回収工程(302)が固定化ステップ(307)を含み、さらに、製造する核酸アプタマーがRNAアプタマーの場合には、増幅工程(304)が逆転写ステップ(308)、DNA増幅ステップ(309)及び転写ステップ(310)を含む。
【0109】
上記核酸アプタマーの製造方法は、基本的には従来のSELEX法(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法(WO1991019813;WO1994008050;Lauhon C.T. and Szostak J.W., 1995, J. Am. Chem. Soc., 117: 1246-1257;Zhao X., et al., 2006, Nucleic Acids Res., 34: 3755-3761;Fan X., et al., 2004, J. T. Lis, 101: 6934-6939;Jeong S., et al., 2010, Oligonucleotides, 20: 155-161)と呼ばれるin vitroセレクション法(試験管内選別法)に基づく。特にRNAアプタマーを製造する場合には、従来のSELEX法に準じて行うことができる。しかし、従来のSELEX法では、複合体回収工程における複合体を回収する方法として、(1)疎水性相互作用を利用して標的物質であるタンパク質をニトロセルロースフィルターにトラップすることにより複合体を回収する方法、(2)ゲル電気泳動時のゲル移動度のシフトによって複合体を回収する方法、又は(3)標的物質を予め担体等に固定化し、これをDNAライブラリーと混合する方法が採用されていた。それ故、DNAアプタマーを製造する場合、(1)の方法では、RNAよりも疎水性が高いDNAが単体でニトロセルロースフィルター上に非特異的に吸着されてしまう問題があり、また(2)の方法では、複数種類の異なる配列からなるDNAライブラリーはそのバンドが乱れやすくなるという問題があり、さらに、(3)の方法では、固相担体のみに結合したDNAまでも得られてしまうという問題があった。
【0110】
そこで、本発明の核酸アプタマーの製造方法では、本発明者らが開発した改変型SELEX法を用いることで非特異的吸着に基づくバックグラウンドを極力低減すると共に、標的物質に極めて強固、かつ特異的に結合する核酸アプタマー、特にDNAアプタマーを製造することができる。
【0111】
以下、上記各工程及びステップについて、具体的に説明する。
【0112】
(1)複合体形成工程
「複合体形成工程」(301)とは、一本鎖核酸ライブラリーと標的物質とを溶液中で混合し、一本鎖核酸分子と標的物質の複合体を形成させる工程である。
【0113】
本工程において、「複合体」とは、一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子、具体的には核酸アプタマーの候補である一本鎖核酸分子と、標的物質とが結合して形成される核酸−標的物質複合体をいう。
【0114】
本工程で使用する溶液は、核酸と標的物質とが複合体を形成できる溶液であれば、その種類、性質は特に制限しない。好ましくは水又は水溶液である。水溶液の場合、pHは、5.0〜9.0、好ましくは6.0〜8.0、より好ましくは6.5〜7.6の範囲であればよい。また、塩濃度は、最終濃度で20〜500 mM、好ましくは50〜300 mM、より好ましくは90〜180 mMの範囲であればよい。好ましい水溶液は、バッファである。例えば、上記pH範囲が適応範囲であるpH緩衝液(例えば、リン酸バッファ、クエン酸−リン酸バッファ、トリス−塩酸バッファ又はHEPESバッファ)に、適当な塩(例えば、NaCl、CH3COOK)を最終塩濃度が上記範囲となるように添加したものである。具体的には、例えば、PBSバッファ(1.1 mM KH2PO4、155 mM NaCl、3 mM Na2HPO4、pH 7.4)が挙げられる。上記pHバッファの組成は、例えば、Sambrook, J. et. al.,(2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual Third Ed., Cold SpringHarbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の公知組成に基づいて、必要に応じて微調整すればよい。
【0115】
上記溶液は、必要に応じて、さらに還元剤や界面活性剤を含んでいてもよい。
【0116】
還元剤には、例えば、DTT(ジチオトレイトール)や2-メルカプトエタノールが挙げられる。溶液中の還元剤の最終濃度は、0.5〜10 mM、好ましくは1〜5 mMの範囲であればよい。
【0117】
また、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤が好ましい。例えば、Nonidet P40(NO-40)、Triton X-100、Triton X-114、Brij-35、Brij-58、Tween-20、Tween-40、Tween-60、Tween-80、n-オクチル-β-グルコシド、MEGA-8、MEGA-9、MEGA-10が挙げられる。溶液中の界面活性剤の最終濃度は、容量/容量(V/V)で0.005 %〜0.1 %、好ましくは0.01 %〜0.08 %の範囲であればよい。
【0118】
さらに、本工程で使用する溶液は、競合物質を含んでいてもよい。本明細書において、「競合物質」とは、核酸アプタマーの候補である一本鎖核酸分子との間で標的物質との結合を競合し合う物質をいう。競合物質が前記溶液に含まれることで、より強固に標的物質に結合する核酸アプタマーを製造することが可能となる。競合物質の種類は、一本鎖核酸分子と標的物質をめぐって競合し得る物質であれば、特に制限はしない。例えば、核酸、ペプチド、脂質、糖、又は低分子化合物が挙げられる。目的の核酸アプタマーである一本鎖核酸分子と同様の性質を有する物質、例えば、標的物質上の結合部位が同じであるような物質が好ましい。そのような物質としては、目的の一本鎖核酸分子に類似の塩基配列を有する核酸分子(一本鎖核酸分子及び/又は二本鎖核酸分子)が該当する。具体的には、例えば、標的物質が転写調節因子である場合、その転写調節因子が本来結合するゲノム配列上の塩基配列等が相当する。競合物質が核酸分子である場合には、競合物質が標的物質と複合体を形成した場合であっても、その核酸分子が、一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子と共通するプライマー結合領域(201、203)を持たないようにデザインしておくことで、後述する増幅工程(304)で増幅されなくなることから、試料中から除去することができる。
【0119】
複合体を形成させるためには、一本鎖核酸ライブラリーと標的物質とを、9:1〜1:9、好ましくは1:1(容量:容量)で混合し、4〜40℃、好ましくは15〜37℃の範囲内で、5分〜30分以上、例えば、10分〜1時間程度、好ましくは20分〜40分程度インキュベートすればよい。
【0120】
形成された複合体は、次の複合体回収工程(302)前に洗浄してもよい。溶液中で標的物質と複合体を形成しなかった遊離状態の一本鎖核酸分子を洗浄によって除去又は低減することで、遊離一本鎖核酸分子の非特異的結合によるバックグラウンドをより低減することができるからである。複合体の洗浄は、標的物質の種類、複合体の分子サイズや特性に基づいて、当該分野で公知の方法を用いて行えばよい。例えば、標的物質がタンパク質の場合、分子サイズにより核酸のみが通過する限外濾過膜を用いて複合体を遊離の一本鎖核酸から分離することができる。洗浄用バッファの組成は、上記複合体形成に用いたバッファと同様の組成でよい。また、複合体形成に用いたバッファと同様に、洗浄用バッファにも還元剤や界面活性剤を含んでいてもよい。還元剤や界面活性剤の濃度や組成は、複合体形成に用いたバッファと同様でよい。もっとも、この段階で、遊離一本鎖核酸を除去せずとも、又は完全に除去できなくとも、続く、複合体回収工程(302)や一本鎖核酸分子回収工程(303)においても洗浄操作により、残存する遊離一本鎖核酸を除去することができる。したがって、洗浄は、必要に応じて行えばよい。
【0121】
(2)複合体回収工程
「複合体回収工程」(302)とは、前工程後の溶液から複合体を回収する工程をいう。
【0122】
RNAアプタマーを製造する場合、本工程は、従来のSELEX法(WO1991019813;WO1994008050;Lauhon C.T. and Szostak J.W.,前述;Zhao X., et al., 前述;Fan X., et al., 前述;Jeong S., et al.,前述)に準じて回収すればよい。しかし、DNAアプタマーを製造する場合には、従来のSELEX法では、本工程において前述の問題があった。そこで、本発明の核酸アプタマーの製造方法では、本発明者らが開発した改変型SELEX法に基づく複合体回収工程によって複合体を回収することが好ましい。
【0123】
改変型SELEX法に基づく複合体回収工程では、複合体形成工程後の溶液に固相担体を混合して、複合体をその固相担体に固定化する固定化ステップ(307)を含む。
【0124】
(2−1)固定化ステップ
「固相化ステップ」(307)とは、複合体形成工程後の溶液に固相担体を混合して、複合体をその固相担体に固定化するステップである。
【0125】
本発明において「固相担体」とは、固体状態の担体であって、例えば、磁気ビーズ、高分子多糖支持体、シリカ、ガラス、金属、プラスチック、セラミックス、天然又は合成樹脂、又はそれらの組み合わせを含む。固相担体表面は、親水性であることが好ましい。この場合、固相担体自体が親水性であってもよいし、固相担体が疎水性でその表面を親水性コーティング処理したものであってもよい。担体の形状は、特に限定はしない。ビーズのような球体又は略球体形状の粒子は、結合表面積が大きく操作性も高いことから、本ステップにおける固相担体の形状として、特に好ましい。
【0126】
本ステップにおいて、「固定化」とは、複合体を固相担体と連結させることをいう。複合体の固相担体への固定化は、標的物質及び/又は固相担体に吸着させた結合子を介して行われる。
【0127】
本明細書において、「結合子」とは、標的物質と固相担体の連結を介在する分子をいう。結合子は、結果的に標的物質及び固相担体間の連結を介在することができれば、単一分子のみならず、二以上の連結する異なる分子も包含し得る。結合子の具体例としては、例えば、ビオチン及びアビジン又はストレプトアビジンからなる結合子、前記ビオチンにさらにレクチンが結合したレクチン−ビオチン及びアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンからなる結合子、一以上の抗体のみからなる結合子、又は抗体及びプロテインA、G又はLからなる結合子が挙げられる。
【0128】
結合子は、標的物質、固相担体又はその両方に吸着されている。ここでいう「吸着」とは、結合子を標的物質又は固相担体に化学的吸着、物理的吸着及び/又は親和力によって固定化することをいう。ここでいう化学的吸着は、共有結合、イオン結合、水素結合のような化学結合を含み、また物理的吸着は、クーロン力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、CH-π相互作用を含む。
【0129】
結合子が標的物質又は固相担体の一方にのみ吸着されている場合、その結合子は、結合子が吸着されていない相手側の物質を特異的に認識し、結合することができる。例えば、固相担体に結合子が吸着されている場合、その結合子は標的物質を特異的に認識し、結合する。より具体的には、例えば、抗体又は抗体と結合したプロテインAが結合子として固相担体に吸着されている場合、その抗体は、標的物質を特異的に認識し、結合する。それ故、標的物質と固相担体を溶液中で混合することによって、標的物質と固相担体とが結合子を介して連結される。複合体形成工程後の標的物質は、その一部又は全部が核酸アプタマーの候補である一本鎖核酸分子と複合体を形成している。したがって、この工程により、複合体を固相担体に固定化することができる。
【0130】
結合子が標的物質及び固相担体のそれぞれに吸着されている場合、それらの結合子(便宜的に、以降、標的物質に吸着された結合子を「第1結合子」、固相担体に吸着された結合子を「第2結合子」という)は、互いに特異的に結合することができる。例えば、標的物質に第1結合子であるビオチンが、固相担体に第2結合子であるアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンが、それぞれ吸着されている場合、標的物質と固相担体を溶液中で混合することによって、ビオチンとアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンが互いに特異的に結合する。その結果、標的物質と固相担体がビオチン及びアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンの結合を介して連結される。
【0131】
標的物質や固相担体への結合子の吸着方法は、標的物質、固相担体及び/又は結合子の種類によって異なる。それぞれの種類や目的に応じて当該分野で公知の方法によって適宜吸着させればよい。標的物質及び固相担体のいずれに結合子を吸着させる場合であっても、本ステップ及び次の回収工程における操作で容易に解離しない方法で吸着させることが好ましい。
【0132】
吸着方法の例として、標的物質や固相担体が官能基を有する場合には、例えば、その官能基と共有結合が可能な活性官能基(例えば、アルデヒド基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、チオール基、シアノ基、ニトロ基)を有する結合子か、又はそのような活性官能基を導入した結合子を用いて、両官能基間の求核的付加反応、求核置換反応若しくは求電子置換反応のような化学反応による共有結合を介して、標的物質や固相担体に結合子を吸着させることができる。官能基どうしを化学反応により共有結合させる方法は、当該分野では周知の技術である。例えば、標的がタンパク質の場合、ビオチンを結合子としてタンパク質を吸着させる場合には、ビオチンにN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)などを用いて活性エステル基を導入した後、タンパク質のアミノ基と当該エステル基との間でアミド結合を形成させることによって、タンパク質をビオチン吸着させることができる。標的物質にビオチンを吸着させる場合には、各種ビオチン化試薬がメーカーから市販されており、それらを利用してもよい。
【0133】
また、標的物質が抗原であり、かつ第1結合子がその抗原のエピトープを特異的に認識し、結合する抗体である場合、適当な溶液中で両者を接触させることによって、アフィニティー結合により第1結合子を標的物質に吸着させることができる。
【0134】
標的物質に結合子を吸着させる場合は、複合体形成工程後、本ステップ前の適当な時期、例えば、複合体形成工程後に得られる複合体を含む溶液に対して、上記いずれかの吸着方法により標的物質に結合子を吸着させればよい。また、固相担体に結合子を吸着させる場合は、少なくとも本ステップにおいて複合体を含む溶液と固相担体を混合する前に、上記いずれかの吸着方法により固相担体に結合子を吸着させればよい。具体的には、例えば、標的物質であるタンパク質に第1結合子としてビオチンを、また固相担体である磁気ビーズに第2結合子としてストレプトアビジンを、それぞれ吸着させる場合、タンパク質へのビオチン吸着は、複合体形成工程後に得られる複合体を含む溶液に対して、例えば、市販のビオチン化試薬を用いて添付にプロトコルに従い吸着させればよい。また、磁気ビーズへのストレプトアビジンの吸着は、複合体形成工程とは独立に、予め磁気ビーズに公知の方法を用いてストレプトアビジンを吸着させておけばよい。例えば、磁気ビーズがTosyl基やエポキシ基を有する場合には、ストレプトアビジンと混合するだけで、そのままストレプトアビジンの1級アミノ基と共有結合により吸着させることができる。また、磁気ビーズがカルボキシル基を有する場合には、カルボジイミドによる活性化によってストレプトアビジンの1級アミノ基と共有結合により吸着させることができる。これらは当該分野で周知の方法である。
【0135】
固定化ステップ後に形成された複合体を複合体−固相担体の状態で溶液から回収するには、固相担体の特性に基づいた方法を用いる。固相担体の特性とは、磁力、比重、蛍光、発光、親和力等の固相担体に特有の性質をいう。例えば、固相担体が磁気ビーズであれば、溶液中の複合体−固相担体を、磁石を用いて回収した後、複合体形成工程で使用したバッファと同様の組成のバッファを用いて洗浄し、標的物質や固相担体に非特異的に吸着した一本鎖核酸を洗浄、除去することで、回収すればよい。また、固相担体が高分子多糖支持体、シリカ、金属又はガラスであれば、遠心によって複合体−固相担体を沈殿させ、上清を除去した後、バッファを用いて洗浄することで、同様に複合体−固相担体を回収すればよい。さらに固相担体が蛍光物質を担持した高分子多糖支持体等であれば、FACSのような蛍光検出器によって、回収すればよい。
【0136】
なお、本ステップでは複合体を形成していない遊離状態の標的物質も固相担体に固定化される。しかし、後述する増幅工程において、複合体から標的物質を除去して一本鎖核酸を回収する際に、このような複合体を形成していない標的物質も同時に除去されることから特に問題とはならない。
【0137】
(3)一本鎖核酸分子回収工程
「一本鎖核酸分子回収工程」(303)とは、回収された複合体から一本鎖核酸分子を回収する工程である。
【0138】
一本鎖核酸分子を回収する方法は、複合体から核酸を回収する当該分野で公知の方法に基づいて行えばよい。通常、この方法は、複合体中の標的物質の種類によって異なる。例えば、標的物質がタンパク質のようなペプチドの場合、アルカリ法やフェノール/クロロホルム法のようなタンパク質変性法によってタンパク質を凝固、除去することによって、目的の一本鎖核酸分子を回収することができる。また、標的物質が脂質又は低分子化合物の場合、例えば、溶出バッファを加えた後、加熱処理をして核酸の構造を破壊する、又は溶出バッファにキレート剤を添加した状態、若しくは溶出バッファのpHを結合バッファと変えた状態で加熱処理をして核酸の構造を破壊することによって、標的物質と核酸との結合を解離させた後、アルコール沈殿法等によって解離した一本鎖核酸分子を回収することができる。
【0139】
前記複合体回収工程(302)において、固定化ステップを経由した場合には、複合体は、複合体−固相担体の状態で回収されることから、必要に応じて複合体の溶出を行う。溶出方法は、結合子の種類によって異なる。例えば、結合子が抗体である場合には、複合体−固相担体を酸処理等によって解離させた後、必要に応じてアルカリを加え、中和処理を行うことによって、複合体−固相担体から複合体を溶出することができる。また、結合子がビオチン及びアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンである場合、7 M以上の尿素及び/又は2 M以上のβ-メルカプトエタノールを含む溶液中で加熱処理することによって、ビオチンとアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンの結合を解離させ、複合体を溶出することができる。さらに、標的物質が糖鎖修飾された物質で、結合子がレクチンである場合、グルコース等の糖を添加することによって複合体を溶出することができる。これらの方法は、当該分野で公知の方法に従い、適宜行えばよい。その後、溶出された複合体から一本鎖核酸分子を回収する方法は、前述の通りである。
【0140】
本工程で洗浄に用いるバッファには、複合体形成工程で使用したバッファと同様の組成のバッファを使用することができる。さらに、バッファは、必要に応じてDTTや2-メルカプトエタノールのような還元剤や、Nonidet P40(NO-40)、Triton X-100又はTween-20のような非イオン性の界面活性剤を含んでいてもよい。溶液中の界面活性剤の最終濃度は、容量/容量(V/V)で0.005 %〜0.1 %、0.01 %〜0.08 %の範囲であればよい。洗浄は、上記バッファを用いて1〜数回行えばよい。2〜3回行うことが好ましい。洗浄温度や洗浄時間は、特に限定はしないが、15〜50℃、又は20〜40℃で、10分〜1時間行えばよい。
【0141】
(4)増幅工程
「増幅工程」(304)とは、前記一本鎖核酸分子回収工程で回収された一本鎖核酸分子を、核酸増幅法によって増幅する工程である。
【0142】
「核酸増幅法」とは、プライマーとポリメラーゼ等の酵素を用いて鋳型となる核酸を増幅する方法をいう。
【0143】
本工程では、製造する核酸アプタマーがDNAアプタマーの場合とRNAアプタマーの場合とでその工程が多少異なる。すなわち、DNAアプタマーの場合には、DNA増幅ステップ(309)のみで足りるが、RNAアプタマーの場合には、DNA増幅ステップ(309)に加えて、逆転写ステップ(308)及び転写ステップ(310)を必要とする。
【0144】
(4−1)DNA増幅ステップ
「DNA増幅ステップ」(309)は、DNAアプタマー及びRNAアプタマーにおける製造方法の増幅工程において共通するステップであって、DNA(cDNAを含む)を鋳型として、プライマーとDNAポリメラーゼ等の酵素を用いて、その鋳型DNAの特定領域を複製し、増幅するステップである。本ステップで用いるDNA増幅法は、当該分野で公知のいずれかの方法を使用すればよい。例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法、ICAN(等温遺伝子増幅)法等が挙げられる。好ましくは、PCR法である。
【0145】
前記反応で用いられるDNAポリメラーゼは、使用する核酸増幅方法によって適宜定められるが、通常は、熱耐性DNAポリメラーゼを使用する。このような耐熱性核酸ポリメラーゼは、TaKaRa社、New England Biolab社、Roche社、Life Technologies社、Roche社、Promega社等の各メーカーから様々な種類のものが市販されており、それらを利用することもできる。
【0146】
DNA増幅法の反応条件は、増幅させるポリヌクレオチドの長さ、鋳型用DNAの量、プライマーのTm値、使用するDNAポリメラーゼの至適反応温度及び至適pH等を勘案して決定すればよい。例えば、PCR法であれば、一本鎖核酸分子を構成する5′末端側プライマー結合領域(201)に対応する配列をフォワードプライマー(204)に、3′末端側プライマー結合領域(203)に相補的な配列をリバースプライマー(205)に用いればよい。このとき、リバースプライマーを標識子で標識しておくことによって、その標識子に基づいて、増幅反応後の反応溶液から増幅産物である二本鎖核酸を選択的に分離、精製したり、その後、その二本鎖核酸のうち目的の一本鎖核酸に相補する他方の一本鎖核酸をその標識子に基づいて分離、除去することができるので便利である。
【0147】
本ステップにおいて留意すべき点として、DNA増幅、すなわちDNAの複製に用いる基質組成が挙げられる。通常のDNA増幅法では、4種の天然型デオキシリボヌクレオチド(dATP、dGTP、dCTP、dTTP;以下、これらをまとめて「dNTP」とする)が基質として使用される。しかし、本ステップにおいては、dNTPに加えて、さらに非天然型デオキシリボヌクレオチド及びそのヌクレオチドが有する人工塩基の相補的人工塩基を有する非天然型デオキシリボヌクレオチドを基質として用いる。いずれの非天然型デオキシリボヌクレオチドを用いるかは、本製造方法で使用した一本鎖核酸ライブラリーが包含する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子に含まれる非天然型ヌクレオチドによる。例えば、一本鎖核酸ライブラリーがDsを有する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖DNA分子を包含する場合、本ステップで使用する基質には、前記dNTPに加えて、Ds及びその相補的人工塩基であるPn又はPaをそれぞれ有する非天然型デオキシリボヌクレオチドを使用する。前述のように、本明細書における人工塩基は、天然型塩基に類似の性質として、人工塩基対合による相補性によって核酸の複製又は転写(逆転写を含む)が可能である。それ故、一対の相補的人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを基質ヌクレオチドに添加することで、非天然型ヌクレオチドを含むDNA分子であってもDNA増幅法によるDNA分子の増幅が可能となる。
【0148】
PCRを変性、アニーリング及び伸長の3ステップで行う場合、各ステップの温度と反応時間は、例えば、熱変性ステップを90℃〜98℃で30秒〜1分間、アニーリングステップを50℃〜60℃で30秒〜1分間、伸長ステップを70℃〜75℃で40秒〜2分間程度行えばよい。また、サイクル数は、通常、10サイクル〜40サイクルでよい。好ましくは15サイクルから20サイクルである。
【0149】
本ステップ後に得られた増幅DNAは、必要に応じて精製してもよい。精製方法は、当該分野で公知のいずれの方法であってもよい。例えば、エタノール沈殿法やスピン式ゲル濾過カラムを用いた精製方法が挙げられる。
【0150】
(4−2)逆転写ステップ
「逆転写ステップ」(308)は、RNAアプタマーにおける製造方法の増幅工程に特有のステップであって、RNAを鋳型として、プライマーと逆転写ポリメラーゼ等の酵素を用いて、cDNAを生成するステップである。RNAアプタマーの製造方法において、本ステップは、前記DNA増幅ステップ(309)の前に実行される。
【0151】
本ステップで用いる逆転写方法は、当該分野で公知のいずれかの方法を使用することができる。例えば、Sambrook, J. et. al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Ed., Cold SpringHarbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の逆転写方法に準じて行えばよい。
【0152】
本ステップにおいて留意すべき点として、逆転写反応に用いる基質組成が挙げられる。通常の逆転写反応では、前記DNA増幅ステップと同様にdNTPが基質として使用される。しかし、本ステップにおいては、dNTPに加えて、さらに鋳型となるRNA分子に含まれる非天然型リボヌクレオチドが有する人工塩基及びその相補的人工塩基を有する非天然型デオキシリボヌクレオチドを基質として用いる。いずれの非天然型デオキシリボヌクレオチドを用いるかは、本製造方法で使用した一本鎖核酸ライブラリーが包含する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子に含まれる非天然型ヌクレオチドによる。例えば、一本鎖核酸ライブラリーがDsを有する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖RNA分子を包含する場合、本ステップで使用する基質には、dNTPに加えて、Ds及びその相補的人工塩基であるPn又はPaをそれぞれ有する非天然型デオキシリボヌクレオチドを使用する。前述のように、本明細書における人工塩基は、人工塩基対合による相補性によって核酸の逆転写が可能である。それ故、一対の相補的人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを基質ヌクレオチドに添加することで、非天然型ヌクレオチドを含むRNA分子からもcDNA分子の生成が可能となる。
【0153】
本ステップで得られたcDNAは、前記DNA増幅ステップ(309)に供される。
【0154】
(4−3)転写ステップ
「転写ステップ」(310)は、RNAアプタマーにおける製造方法の増幅工程に特有のステップであって、プライマーとRNAポリメラーゼ等の酵素を用いて、DNAからRNAを転写するステップである。RNAアプタマーの製造方法において、本ステップは、前記DNA増幅ステップ後に実行される。
【0155】
本ステップで用いる転写方法は、当該分野で公知のいずれかの方法を使用することができる。例えば、in vitro RNA転写法が挙げられる。また、前記DNAを導入した大腸菌等の形質転換体を用いて、当該分野で公知の技術によって発現誘導処理を行い、その形質転換体から目的のRNAを回収してもよい。これらの転写方法の具体的方法は、例えば、Sambrook, J. et. al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Ed., Cold SpringHarbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の転写方法に準じて行えばよい。
【0156】
本ステップにおいて留意すべき点として、転写反応に用いる基質組成が挙げられる。通常の転写反応では4種の天然型リボヌクレオチド(ATP、GTP、CTP、UTP;以下、これらをまとめて「NTP」とする)が基質として使用される。しかし、本ステップにおいては、NTPに加えて、さらにDNA分子に含まれる非天然型デオキシリボヌクレオチドが有する人工塩基及びその相補的人工塩基を有する非天然型リボヌクレオチドを基質として用いる。いずれの非天然型リボヌクレオチドを用いるかは、本製造方法で使用した一本鎖核酸ライブラリーが包含する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子に含まれる非天然型ヌクレオチドによる。例えば、一本鎖核酸ライブラリーがDsを有する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖DNA分子を包含する場合、本ステップで使用する基質には、NTPに加えて、Dsの相補的人工塩基であるPn又はPaをそれぞれ有する非天然型リボヌクレオチドを使用する。前述のように、本明細書における人工塩基は、人工塩基対合による相補性によって核酸の逆転写が可能である。それ故、一対の相補的人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを基質ヌクレオチドに添加することで、非天然型ヌクレオチドを含むDNA分子からもRNA分子の転写が可能となる。
【0157】
(5)核酸アプタマー調製工程
「核酸アプタマー調製工程」(305)とは、前記増幅工程後に得られた核酸分子を核酸アプタマーに調製する工程である。
【0158】
前記増幅工程後の核酸分子は、核酸分子がDNAの場合には、通常、標的物質と特異的に結合する一本鎖核酸分子(核酸アプタマー)と、それに相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸分子とが塩基対合した二本鎖核酸の状態で存在している。また、核酸分子がRNAの場合には、一本鎖核酸分子として得られるものの、必ずしも本発明の核酸アプタマーの構造を形成していない。そこで、本工程では、核酸分子がDNAの場合には、二本鎖核酸を一本鎖に調製した後に、また核酸分子がRNAの場合には得られた一本鎖核酸分子を、それぞれセルフフォールディングさせて標的物質との結合活性を有する本発明の核酸アプタマーの調製を行う。
【0159】
核酸分子がDNAの場合、二本鎖核酸の一本鎖化は、一般に熱変性によって行われる。熱変性は、60〜90℃の範囲で行えばよい。このとき変性時に使用する溶液中に1〜7Mの尿素が含まれていてもよい。その後、変性ゲルを用いて電気泳動を行い、目的のサイズのバンドをゲルから溶出して精製する等の当該分野で公知の方法によって二本鎖の一本鎖化とその精製を行うことができる。
【0160】
なお、二本鎖核酸の一本鎖化後には、目的の核酸アプタマーを形成し得る一本鎖核酸分子と、それに相補的な塩基配列を有する対となる一本鎖核酸分子が混在する。そこで、本工程では、目的の核酸アプタマーを形成する一本鎖核酸分子をセルフフォールディングさせる前に、相補的な塩基配列を有する不要な一本鎖核酸分子を分離・除去してもよい。目的の一本鎖核酸分子のみを選択的に分離するには、例えば、前述のように、リバースプライマーを標識子で標識しておくことによって、達成できる。具体的には、例えば、ビオチンで標識したリバースプライマーを用いてPCRを行った後、エタノール沈殿法等によって反応液中の増幅された二本鎖核酸を回収した後、その懸濁液にストレプトアビジンを添加して、ビオチン−ストレプトアビジン複合体を形成させ、これによって二本鎖核酸を分離、精製する。その後、精製された二本鎖核酸を変性させて、一本鎖化し、変性ゲル電気泳動でその両鎖の移動度の違いによってフラクション化して、目的の一本鎖核酸分子のみをゲルより分離、精製することができる。
【0161】
一本鎖核酸分子をセルフフォールディングさせるためには、例えば、一本鎖核酸分子に加熱・冷却処理を行えばよい。具体例を挙げると、一本鎖核酸分子を複合体形成工程で使用したバッファ(例えば、PBSバッファ)に溶解し80〜98℃、好ましくは85〜95℃で30秒〜5分、好ましくは30秒〜3分熱変性させた後、室温等に放置して徐冷するか又は段階冷却することによって分子内高次構造を形成させればよい。段階冷却は、例えば、熱変性後、一旦50〜70℃で1分〜20分程度冷却させた後、さらに温度を15〜35℃に下げて冷却すればよい。
【0162】
本工程によって、標的物質に特異的に結合する本発明の核酸アプタマーを製造することができる。
【0163】
(6)反復工程
「反復工程」(306)とは、核酸アプタマー工程で調製された核酸アプタマー又はその候補である一本鎖核酸分子を新たな一本鎖核酸ライブラリーに用いて、複合体形成工程から核酸アプタマー調製工程まで(本明細書では、以降、これらの一連の工程を「ラウンド」と称する)を新たに1回以上繰り返す工程である。
【0164】
本工程は、任意工程である。しかし、核酸アプタマー調製工程後に、標的物質との特異性がより高い核酸アプタマーを絞り込むためには、本工程を1ラウンド以上繰り返すことが好ましい。具体的には、例えば、1ラウンド(1回)以上、好ましくは1〜15ラウンド、1〜8ラウンド、又は1〜5ラウンドである。
【0165】
本工程の各ラウンドにおいて、複合体形成工程で使用する一本鎖核酸ライブラリーは、原則として直前のラウンドの核酸アプタマー調製工程で得られる一本鎖核酸分子のプールを新たな一本鎖核酸ライブラリーとして用いる。各ラウンドで使用する一本鎖核酸ライブラリーには、必要に応じて、各ラウンドにおけるそれぞれの工程、すなわち複合体形成工程から核酸アプタマー調製工程の諸条件は、初回条件と同一であってもよいし、異なっていてもよい。ラウンドの条件が異なる場合として、例えば、各ラウンドで使用する溶液やバッファの組成を変更することが挙げられる。具体的には、ラウンド前半のバッファは、洗浄条件をマイルドにして核酸アプタマー候補をより多く獲得し、ラウンド後半のバッファには、3 M程度の尿素を混和して洗浄条件を厳しくすることで標的物質により強固に結合する一本鎖核酸分子のみを分離することができる。さらに、複合体形成工程における標的物質と一本鎖核酸ライブラリーの濃度を各ラウンドで変更することもできる。例えば、ラウンドを重ねる毎に標的物質と一本鎖核酸ライブラリーの濃度を低くして、複合体形成条件をより厳しくすることによって、標的物質により強固に結合する核酸アプタマーのみを分離することができる。
【0166】
2.塩基配列決定方法
本発明の第2の実施形態は、一本鎖核酸ライブラリーから選択される一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法である。
【0167】
前記第1実施形態に記載の核酸アプタマーの製造方法で得られた核酸アプタマーを化学合成によって大量製造するには、その塩基配列を決定する必要がある。塩基配列の決定には、同一塩基配列を有する単一クローンが必要となるが、前記製造工程後に得られる核酸アプタマーは、異なる複数の核酸アプタマーのクローンを包含し得ることから、製造された核酸アプタマーの単一クローンを調製しなければならい。天然型ヌクレオチドで構成される従来の核酸アプタマーであれば、得られた核酸アプタマーが異なる複数のクローンであっても、当該分野で公知の通常の核酸クローニング技術を用いて単一クローン化した後に、塩基配列を決定することができた。具体的には、例えば、得られた核酸アプタマーの各クローンを適当なクローニングベクター内に挿入後、そのベクターを大腸菌等に導入し、形質転換体として単一クローンを単離した後、その単一クローンに基づいたサイクルシークエンス反応等によって、塩基配列を決定する方法が挙げられる。
【0168】
本発明の核酸アプタマーは、人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを含む。非天然型ヌクレオチドを含む核酸分子の塩基配列決定方法自体は、公知の技術である(Hirao I.,et al., Nature Methods, 3, 729-735 (2006); Kimoto M., et al., Nucleic Acids Res., 37, e14 (2009))。しかし、その方法に供するためには、天然型ヌクレオチドのみで構成される従来の核酸分子と同様に、非天然型ヌクレオチドを含む核酸分子の単一クローンを調製する必要がある。ところが、非天然型ヌクレオチドは、大腸菌等の生体内には存在しないため、非天然型ヌクレオチドを含む本発明の核酸アプタマーの単一クローン化には従来のクローニング技術が使用できない。それ故、非天然型ヌクレオチドを含み得る単一クローン又は複数の異なるクローンからなる一本鎖核酸ライブラリーから選択される一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法は、これまで確立されていなかった。
【0169】
本発明者らは、今回、前記非天然型ヌクレオチドを含み得る一本鎖核酸ライブラリーから選択される一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法として、ランダムライブラリー法とプレデターミン法の2つの方法を新たに開発した。これらの方法を用いれば、前記核酸アプタマーの製造方法後に得られる核酸アプタマーの塩基配列を決定することができる。以下、それぞれの方法について、説明する。
【0170】
2−1.ランダムライブラリー法
「ランダムライブラリー法」は、前記本発明の一本鎖核酸ライブラリーから選択される一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法である。この方法で対象となる一本鎖核酸分子は、図2Aで示す中央領域(202)の全部が、非天然型ヌクレオチドを含み得るランダムな塩基配列からなる。
【0171】
ランダムライブラリー法の工程フローを図4に示す。この図が示すように、ランダムライブラリー法は、第一増幅工程(401)、クローニング工程(402)、第二増幅工程(403)、一本鎖核酸分子単離工程(404)、及び塩基配列決定工程(405)を必須工程として含む。このうち第二増幅工程(403)は、第一増幅工程(401)及びクローニング工程(402)とは独立した工程である。したがって、第一増幅工程(401)前、クローニング工程(402)後、又は第一増幅工程(401)及びクローニング工程(402)と平行して、実行することができる。以下、各工程について具体的に説明する。
【0172】
(1)第一増幅工程
「第一増幅工程」(401)とは、天然型ヌクレオチドを基質として、一本鎖核酸ライブラリーから選択された一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する工程である。
【0173】
本工程の基本的手順は、前記第1実施形態の「1−4.製造方法」における「1−4−2.製造工程(4)増幅工程」に記載の手順に準ずる。すなわち、一本鎖核酸ライブラリーから選択された一本鎖核酸分子を公知の核酸増幅法によって増幅する工程であって、その塩基配列決定の対象となる一本鎖核酸分子がDNAの場合には、DNA増幅ステップのみを行い、RNAの場合には、逆転写ステップ、DNA増幅ステップ及び転写ステップを行う。
【0174】
そこで、ここでは前述した前記第1実施形態の「1−4−2.製造工程(4)増幅工程」と同一の方法については省略し、異なる点についてのみ以下具体的に説明する。
【0175】
前記本発明の一本鎖核酸ライブラリーから選択された一本鎖核酸分子は、前述のように図2で示す構造を有する。5′末端側及び3′末端側のプライマー結合領域(201、203)は、既知塩基配列からなるため、フォワードプライマー(204)及びリバースプライマー(205)からなるプライマーセットを用いて、一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅することができる。
【0176】
本工程の特徴として、たとえ塩基配列決定の対象となる一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチドを含む場合であっても、核酸増幅法に使用する基質として天然型ヌクレオチドのみを使用する点が挙げられる。すなわち、DNA増幅ステップであれば、DNAの複製に用いる基質にdNTPのみを、逆転写ステップであればRNAからの逆転写に用いる基質にdNTPのみを、及び転写ステップであればDNAからRNAの転写に用いる基質にNTPのみを使用する。前述のように人工塩基は、複製や転写の際、基質に相補的人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドが含まれない場合には、相補的人工塩基と構造的に及び/又は性質的に近い天然型塩基と代替的に塩基対合して天然型ヌクレオチドに置換される。それ故、塩基配列決定の対象となる一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子であっても、本工程では、天然型ヌクレオチドのみから構成される一本鎖核酸分子が増幅産物として得られる。
【0177】
(2)クローニング工程
「クローニング工程」(402)とは、前記第一増幅工程後に得られる増幅産物から単一クローンを得る工程である。
【0178】
第一増幅工程後に得られる増幅産物は、前述のように天然型ヌクレオチドのみで構成される。したがって、前記一本鎖核酸ライブラリーから選択された一本鎖核酸分子が複数の異なるクローンからなる場合であっても、当該分野で公知の通常の核酸クローニング技術を用いて単一クローン化が可能である。例えば、得られた核酸アプタマーの各クローンを適当なクローニングベクター内に挿入後、そのベクターを大腸菌等に導入し、形質転換体として単一クローンを単離する方法が挙げられる。このようなクローニング方法は、例えば、Sambrook, J. et. al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Ed., Cold SpringHarbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の方法に準じて行えばよく、また各メーカーから市販されている各種クローニングキット等を利用することもできる。
【0179】
(3)第二増幅工程
「第二増幅工程」(403)とは、天然型ヌクレオチド及び前記非天然型ヌクレオチドを基質として、前記プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて、前記選択された一本鎖核酸分子を核酸増幅法により増幅する工程である。
【0180】
本工程の基本的手順も、第一増幅工程と同様に、前記第1実施形態の「1−4.製造方法」における「1−4−2製造工程(4)増幅工程」に記載の手順に準ずる。すなわち、一本鎖核酸ライブラリーから選択された一本鎖核酸分子を公知の核酸増幅法によって増幅する工程であって、その塩基配列決定の対象となる一本鎖核酸分子がDNAの場合には、DNA増幅ステップのみを行い、RNAの場合には、逆転写ステップ、DNA増幅ステップ及び転写ステップを行う。
【0181】
ただし、第一増幅工程が核酸増幅法に使用する基質として天然型ヌクレオチドのみを使用したのに対して、本工程は、天然型ヌクレオチド及び前記非天然型ヌクレオチドを基質として選択された一本鎖核酸分子を増幅する点で異なる。すなわち、本工程は、前記第1実施形態の「1−4−2.製造工程(4)増幅工程」に記載の手順に、より近い方法と言える。
【0182】
本発明の一本鎖核酸ライブラリーが包含する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子に含まれる非天然型ヌクレオチドに応じて、その非天然型ヌクレオチド及びそれと対となる非天然型ヌクレオチドを天然型ヌクレオチドと共に基質に使用する。したがって、一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子であれば、本工程後には、その非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子が増幅産物として得られることになる。
【0183】
(4)一本鎖核酸分子単離工程
「一本鎖核酸分子単離工程」(404)とは、クローニング工程で得られた単一クローンをプローブとして前記第二増幅工程後に得られる増幅産物から単一の一本鎖核酸分子を単離する工程である。
【0184】
本工程では、まず、クローニング工程で得られた単一クローンをプローブに調製する。
【0185】
前記単一クローンは、一本鎖核酸ライブラリーがDNAの場合には通常二本鎖DNAとして得られる。そこで、この二本鎖DNAを一本鎖に調製する。二本鎖DNAの一本鎖化は、一般に熱変性によって行われる。熱変性は、60〜90℃の範囲で行えばよい。このとき変性時に使用する溶液中に1〜7Mの尿素が含まれていてもよい。その後、変性ゲルを用いて電気泳動を行い、目的のサイズのバンドをゲルから溶出して精製する等の当該分野で公知の方法によって二本鎖DNAの一本鎖化とその精製を行うことができる。
【0186】
続いて、二本鎖のうちの一方のDNA鎖をプローブとして分離する。核酸アプタマーをコードするセンス鎖、それに相補的な塩基配列を有するアンチセンス鎖のいずれを用いてもよい。好ましくはアンチセンス鎖である。二本鎖のうちの一方のDNA鎖を分離する方法は、前述した方法を用いればよい。すなわち、フォワードプライマー又はリバースプライマーのいずれか一方を標識子で標識しておき、当該標識に基づいて一方のDNA鎖をプローブとして分離、精製する方法が挙げられる。具体的には、例えば、アンチセンス鎖を分離するには、ビオチンで標識したリバースプライマーを用いてPCRを行った後、エタノール沈殿法等によって反応液中の増幅された二本鎖DNAを回収し、その懸濁液にストレプトアビジンを添加して、ビオチン−ストレプトアビジン複合体を形成させ、これによって二本鎖核酸を分離、精製する。その後、精製された二本鎖核酸を変性させて、一本鎖化し、変性ゲル電気泳動でその両鎖の移動度の違いによってフラクション化して、目的のアンチセンス鎖をゲルより分離、精製することができる。
【0187】
一方、一本鎖核酸ライブラリーがRNAの場合には一本鎖RNAとして得られる。ところが、第二増幅工程後に得られる増幅産物も同じ一本鎖RNAであり、両者は相補的関係にないことから、プローブとして利用できない。また、RNA自体が不安定で分解されやすいという問題も伴う。そこで、クローニング工程で得られた単一クローンがRNAの場合には、逆転写によって一旦二本鎖DNAにした後に、上記と同様の方法で、二本鎖DNAの一本鎖化とその精製を行ってもよい。逆転写反応については、前記逆転写ステップに記載の方法に準じて行えばよい。
【0188】
続いて、前記調製した単一クローン由来の一本鎖核酸をプローブとして、第二増幅工程後に得られる増幅産物から単一の一本鎖核酸分子を単離する。同一の一本鎖核酸ライブラリーを鋳型とする第一増幅工程後の増幅産物と第二増幅工程後の増幅産物中には、同一の一本鎖核酸分子由来の増幅産物を含み得る。これらは、原則として同一の塩基配列を有する。ただし、非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の場合、第一増幅工程後の増幅産物では、非天然型ヌクレオチドが天然型ヌクレオチドに置換されていることから、同一の一本鎖核酸分子由来であっても両増幅産物の塩基配列は異なる。しかしながら、増幅産物全体としての塩基配列の相同性は、極めて高い。それ故、クローニング工程によって単一クローン化された第一増幅工程後の増幅産物をプローブとすれば、一本鎖核酸ライブラリーが異なる複数の一本鎖核酸分子を包含する場合であっても、またその一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子であっても、塩基配列決定の試料として十分量の単一クローンを単離することができる。本工程は、そのような原理に基づく。
【0189】
調製したプローブを用いて、第二増幅工程後に得られる増幅産物から単一の一本鎖核酸分子を単離する方法は、当該分野で公知の方法を用いればよい。例えば、Sambrook, J. et. al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Ed., Cold SpringHarbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の方法に準じて行うことができる。より効率的に単離するためにプローブを固相担体に固定化しておき、第二増幅工程後の増幅産物中の目的の一本鎖核酸分子とハイブリダイズさせ、単離してもよい。プローブの固相担体への固定化や目的の一本鎖核酸分子の単離には、第1実施形態の「1−4.製造方法」における「1−4−2.製造工程(2)複合体回収工程」に記載の方法を利用してもよい。
【0190】
この工程では、天然型ヌクレオチドのみから構成される一本鎖核酸分子、非天然型ヌクレオチド含有一本鎖ヌクレオチドにかかわらず、塩基配列決定の対象となる一本鎖核酸分子を単一クローンとして単離することができる。
【0191】
(5)塩基配列決定工程
「塩基配列決定工程」(405)とは、前記一本鎖核酸分子単離工程で単離された単一クローンの一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する工程である。
【0192】
本工程は、当該分野で公知の塩基配列決定方法を用いることができる。人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドを含むDNAの塩基配列を決定する方法は、公知技術である。例えば、Hirao I.,et al., Nature Methods, 3, 729-735 (2006); Kimoto M., et al., Nucleic Acids Res., 37, e14 (2009)に記載の方法に準じて行えばよい。この塩基配列決定方法は、天然型ヌクレオチドのみからなる従来のDNA分子の塩基配列も決定できることから、前記一本鎖核酸分子単離工程で単離された単一クローンの一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子であっても、また天然型ヌクレオチドのみからなる核酸アプタマーであってもその配列を決定することができる。
【0193】
以上の工程によって、これまで手段のなかった非天然型ヌクレオチドを含み得る一本鎖核酸ライブラリーから選択される一本鎖核酸分子の塩基配列を決定することができる。
【0194】
2−2.プレデターミン法
「プレデターミン法」は、識別部位を有し、かつ予め設定された特定の位置にのみ非天然型ヌクレオチドを含む非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子からなる一本鎖核酸ライブラリーより選択される一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する方法である。この一本鎖核酸ライブラリーを構成する各非ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子における識別部位は、天然型ヌクレオチドで構成されており、また、その塩基配列は、一本鎖核酸分子の中央領域の塩基配列上で予め設定された人工塩基の位置情報と連関している。本方法は、非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を天然型ヌクレオチドのみで構成される一本鎖核酸分子に置換し、従来技術で単一クローン化し塩基配列を決定した後、識別部位の塩基配列に基づいて、天然型ヌクレオチドに置換された、人工塩基を有する非天然型ヌクレオチドの位置を決定することによって、目的の非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の塩基配列を決定する。
【0195】
プレデターミン法の工程フローを図5に示す。この図が示すように、プレデターミン法は、第増幅工程(501)、クローニング工程(502)、塩基配列決定工程(503)及び人工塩基位置決定工程(504)を必須工程として含む。以下、各工程について具体的に説明する。
【0196】
(1)第増幅工程
プレデターミン法の「第増幅工程」(501)、天然型ヌクレオチドを基質として、前記プライマー結合領域に結合するプライマーセットを用いて選択された非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を、核酸増幅法により増幅する工程である。
【0197】
本工程の基本的手順は、前記第1実施形態の「1−4.製造方法」における「1−4−2.製造工程(4)増幅工程」に記載の手順に準ずる。すなわち、一本鎖核酸ライブラリーから選択された非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を公知の核酸増幅法によって増幅する工程であって、その塩基配列決定の対象となる一本鎖核酸分子がDNAの場合には、DNA増幅ステップのみを行い、RNAの場合には、逆転写ステップ、DNA増幅ステップ及び転写ステップを行えばよい。
【0198】
本方法で塩基配列決定の対象となる一本鎖核酸分子は、全て非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子である。しかしながら、本工程では、前記ランダムライブラリー法における第一増幅工程と同様に、核酸増幅法に使用する基質として天然型ヌクレオチドのみを使用する。すなわち、DNA増幅ステップであれば、DNAの複製に用いる基質にdNTPのみを、逆転写ステップであればRNAからの逆転写に用いる基質にdNTPのみを、及び転写ステップであればDNAからRNAの転写に用いる基質にNTPのみを使用する。その結果、塩基配列決定の対象となる一本鎖核酸分子が非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子であっても、増幅反応過程で非天然型ヌクレオチドが天然型ヌクレオチドに置換され、天然型ヌクレオチドのみから構成される一本鎖核酸分子が増幅産物として得られることとなる。
【0199】
(2)クローニング工程
「クローニング工程」(502)とは、前記増幅工程後に得られる天然型ヌクレオチドのみで構成された増幅産物から単一クローンを得る工程である。
【0200】
増幅工程後に得られる増幅産物は、前述のように天然型ヌクレオチドのみで構成される。したがって、前記一本鎖核酸ライブラリーから選択された非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子が複数の異なるクローンからなる場合であっても、天然型ヌクレオチドのみに置換されたことにより、当該分野で公知の通常の核酸クローニング技術を用いた単一クローン化が可能となる。例えば、得られた核酸アプタマーの各クローンを適当なクローニングベクター内に挿入後、そのベクターを大腸菌等に導入し、形質転換体として単一クローンを単離する方法が挙げられる。このようなクローニング方法は、例えば、Sambrook, J. et. al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Ed., Cold SpringHarbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の方法に準じて行えばよく、また各メーカーから市販されている各種クローニングキット等を利用することもできる。
【0201】
(3)塩基配列決定工程
「塩基配列決定工程」(503)とは、前記クローニング工程後に得られる単一クローンの塩基配列を決定する工程である。本工程は、公知の技術に準じて行えばよい。例えば、単一クローンの形質転換体から調製した単一クローンを、サイクルシークエンス反応等を介した公知技術によって塩基配列を決定することができる。具体的な例を挙げれば、単一クローンの形質転換体からミニ・プレパレーション法等の公知技術によりDNAを調製後、ABI社のBig Dye Terminator Cycle Sequencing Kit等の市販のキットを用いて、シーケンサーによって塩基配列を決定すればよい。
【0202】
(4)人工塩基位置決定工程
「人工塩基位置決定工程」(504)とは、前記単一クローンの塩基配列における識別部位の塩基配列に基づいて当該単一クローンの鋳型となった一本鎖核酸分子の塩基配列上の人工塩基の位置を決定する工程である。
【0203】
塩基配列決定工程によって決定された一本鎖核酸分子の塩基配列は、4種(ATGC)の天然型塩基のみで構成された塩基配列である。しかし、本方法の第増幅工程で塩基配列決定に供した一本鎖核酸分子は、全て非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子であることから、実際の塩基配列には中央領域の特定の位置に人工塩基が配置されている。本工程では、塩基配列決定工程後の一本鎖核酸分子の塩基配列における識別部位の塩基配列に基づいて、第増幅工程で天然型塩基に置換された塩基配列上の塩基を、元の人工塩基に修正して、塩基配列決定に供した非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の実際の塩基配列を決定する。
【0204】
識別部位は、非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子の5′末端側及び/又は3′末端側のプライマー結合領域に隣接する中央領域の末端部に配置されており、その塩基配列も予め決定されている。また、天然型ヌクレオチドで構成されていることから第増幅工程〜塩基配列決定工程間で、その塩基配列は変わることなく維持される。さらに、識別部位の塩基配列は、中央領域の塩基配列上で予め設定された人工塩基の位置情報と連関していることから、識別部位の塩基配列が判明すれば、その一本鎖核酸分子の中央領域におけるどの位置に人工塩基が配置されているか若しくは配置されていたかが必然的に決定できる。
【0205】
3.抗血管内皮細胞増殖因子核酸アプタマー
本発明の第3の実施形態は、抗血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor:以下「VEGF」と略称する)核酸アプタマーである。
【0206】
VEGFは、血管新生促進因子として機能する増殖因子であって、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)の原因因子の1つとして知られている。加齢黄斑変性は、成人において視機能の低下や中途失明等の深刻な症状をもたらす進行性網膜疾患で、網膜における血管新生の進行に伴い病態が悪化し、重症化することが判明している(Martin A. et al., 2003, Medicinal Research Reviews, Vol. 23, No. 2: 117-145;Ferris III, F.L. et al., 1984, Archives of Ophthalmology, Vol. 102, Issue 11: 1640-1642)。
【0207】
本発明の抗VEGF核酸アプタマーは、VEGFを標的物質として強固かつ特異的に結合し、VEGFの有する血管新生機能を抑制する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖DNA分子で構成されるDNAアプタマー(以下、「抗VEGF-DNAアプタマー」とする)である。本発明の抗VEGF-DNAアプタマーは、前記第1実施形態に記載の核酸アプタマーの製造方法によって製造し、前記第2実施形態に記載のランダムライブラリー法又はプレデターミン法によって、その塩基配列を決定したものである。
【0208】
本発明の抗VEGF-DNAアプタマーは、配列番号25〜73、80〜104、106〜109、111、155〜166(ただし、配列中のnをDsとする)、175、177、179、181、183、198、201、202、205〜209、211、212及び229〜278からなる群から選択されるいずれか一の塩基配列を含む。また、この配列番号25〜73、80〜104、106〜109、111、及び155〜166(ただし、配列中のnをDsとする)、198、201、202、205〜209、211、及び212で示される領域は、図2で示す本発明の核酸アプタマーにおいて、主に中央領域(202)に相当する。それ故、これらの塩基配列の5’末端側に配列番号1で示される塩基配列、及びその3’末端側に配列番号2で示される塩基配列がそれぞれ隣接してなる核酸アプタマーも本発明の抗VEGF-DNAアプタマーとして好ましい。
【0209】
4.抗インターフェロン-γ核酸アプタマー
本発明の第4の実施形態は、抗インターフェロン-γ(以下「IFN-γ」と略称する)核酸アプタマーである。
【0210】
本発明の抗IFN-γ核酸アプタマーは、IFN-γを標的物質として強固かつ特異的に結合し、IFN-γの有する細胞障害性T細胞誘導活性を抑制する非天然型ヌクレオチド含有一本鎖DNA分子で構成されるDNAアプタマー(以下、「抗IFN-γ-DNAアプタマー」とする)である。本発明の抗IFN-γ-DNAアプタマーは、前記第1実施形態に記載の核酸アプタマーの製造方法によって製造し、前記第2実施形態に記載のプレデターミン法によって、その塩基配列を決定したものである。
【0211】
本発明の抗IFN-γ-DNAアプタマーは、配列番号167〜174(ただし、配列中のnをDsとする)、186、188、190、192、194、214〜222及び279〜328からなる群から選択されるいずれか一の塩基配列を含む。
【0212】
5.医薬組成物
本発明の第5の実施形態は、医薬組成物である。
【0213】
5−1.構成
本発明の医薬組成物は、前記第3実施形態に記載の標的物質機能抑制剤を少なくとも一つ含有する。また、本発明の医薬組成物は、製薬上許容可能な担体を含むことができる。「製薬上許容可能な担体」とは、製剤技術分野において通常使用する医薬組成物の製剤化や生体への適用を容易にし、前記標的物質機能抑制剤の効果を維持するために、その作用を阻害又は抑制しない範囲で添加される物質をいう。担体には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、乳化剤、流動添加調節剤、潤滑沢剤又は界面活性剤が挙げられる。
【0214】
「賦形剤」としては、例えば、単糖、二糖類、シクロデキストリン及び多糖類のような糖(具体的には、限定はしないが、グルコース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン及びセルロースを含む)、金属塩(例えば、リン酸ナトリウム若しくはリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム)、クエン酸、酒石酸、グリシン、低、中、高分子量のポリエチレングリコール(PEG)、プルロニック、或いはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0215】
「結合剤」としては、例えば、トウモロコシ、コムギ、コメ、若しくはジャガイモのデンプンを用いたデンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0216】
「崩壊剤」としては、例えば、前記デンプンや、カルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、アルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム又はそれらの塩が挙げられる。
【0217】
「充填剤」としては、例えば、前記糖及び/又はリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム、若しくはリン酸水素カルシウム)が挙げられる。
【0218】
「乳化剤」としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
【0219】
「流動添加調節剤」及び「滑沢剤」としては、例えば、ケイ酸塩、タルク、ステアリン酸塩又はポリエチレングリコールが挙げられる。
【0220】
このような担体は、必要に応じて適宜使用すればよい。本発明の薬物組成物は、上記の添加剤の他、必要に応じて矯味矯臭剤、溶解補助剤(可溶化剤)、懸濁剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、吸収促進剤(例えば、第4級アンモニウム塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等)、増量剤、付湿剤、保湿剤(例えば、グリセリン、澱粉等)、吸着剤(例えば、澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等)、崩壊抑制剤(例えば、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等)、コーティング剤、着色剤、保存剤、抗酸化剤、香料、風味剤、甘味剤、緩衝剤等を含むこともできる。
【0221】
「界面活性剤」としては、例えば、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、脂肪アルコールスルフェート、脂肪酸及び硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテル、さらに、スルホン化ナフタレン及びナフタレン誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルコール及び脂肪アルコール/エチレンオキシドの縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル、リグノ亜硫酸廃液、及びメチルセルロースが該当する。
【0222】
本実施形態の医薬組成物は、一医薬組成物中に上記担体を一以上包含することが可能である。
【0223】
さらに、本発明の医薬組成物は、本発明の核酸が有する薬理効果を失わない範囲において、他の薬剤を含有することもできる。例えば、抗生物質を所定量含有していてもよい。
【0224】
本発明の医薬組成物の剤形は、有効成分を不活化させない形態であって、投与後、生体内でその薬理効果を発揮し得る形態であれば特に限定しない。通常は、投与方法及び/又は処方条件によって異なる。
【0225】
例えば、経口投与に適した剤形としては、固形剤(錠剤、丸剤、舌下剤、カプセル剤、ドロップ剤、トローチ剤を含む)、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤等を挙げることができる。さらに固形剤は、必要に応じ、当該分野で公知の剤皮を施した剤形、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠とすることができる。
【0226】
非経口投与は、全身投与及び局所投与に細分され、局所投与は、組織内投与、経表皮投与、経粘膜投与及び経直腸的投与にさらに細分されるが、医薬組成物も、それぞれの投与方法に適した剤形にすることができる。全身又は組織内投与に適した剤形としては、例えば、液剤である注射剤が挙げられる。経表皮投与又は経粘膜投与に適した剤形としては、例えば、液剤(塗布剤、点眼剤、点鼻剤、吸引剤を含む)、懸濁剤(乳剤、クリーム剤を含む)、粉剤(点鼻剤、吸引剤を含む)、ペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、硬膏剤等を挙げることができる。経直腸的投与に適した剤形としては、例えば、坐剤等を挙げることができる。
【0227】
薬物を植物に投与する場合には、薬剤組成物の剤形は、液体、固体(半固体を含む)又はその組み合わせが挙げられる。溶液剤、油性分散液剤、エマルション剤、懸濁製剤、粉剤、散剤、ペースト剤、ゲル剤、ペレット剤、錠剤及び粒剤とすることができる。
【0228】
なお、上記各剤形の具体的な形状、大きさについては、いずれもそれぞれの剤形において当該分野で公知の剤形の範囲内にあればよく、特に限定はしない。
【0229】
5−2.製造方法
本発明の医薬組成物を製造するには、原則として当該分野で公知の製剤化方法を応用すればよい。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Merck Publishing Co.,Easton,Pa.)に記載の方法を参照することができる。
【0230】
例えば、注射剤の場合には、第2の実施形態の核酸分子を製薬上許容可能な溶媒に溶解し、必要に応じて製薬上許容可能な担体を加え、当該分野で慣用されている方法により製造することができる。
【0231】
「薬学的に許容可能な溶媒」としては、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。これらは、殺菌されていることが望ましく、必要に応じて血液と等張に調整されていることが好ましい。
【0232】
5−3.投与方法
本実施形態の医薬組成物は、目的とする疾患等の治療又は予防のために製薬上有効な量を生体に投与することができる。投与する対象となる生体は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0233】
本発明の医薬組成物は、全身投与又は局所的投与のいずれであってもよい。疾患の種類、発症箇所又は進行度等に応じて適宜選択することができる。発症箇所が局部的な疾患であれば、注射などにより発症箇所及びその周辺に直接投与する局所的投与が好ましい。治療すべき箇所(組織又は器官)に本発明の核酸分子を十分量投与することができ、また他の組織に影響を及ぼしにくいからである。一方、治療箇所を特定できない場合や発症が全身性の疾患の場合には、限定はしないが、静脈注射等による全身投与が好ましい。血流を介して本発明の核酸分子を全身に行き渡らせることで、診断で発見できない病変部にも投与が可能となるからである。
【0234】
本発明の医薬組成物は、有効成分が失活しないあらゆる適当な方法で投与することができる。例えば、非経口(例えば、注射、エアロゾル、塗布、点眼、点鼻)又は経口のいずれであってもよい。好ましくは、注射である。
【0235】
注射による投与の場合、注入部位は、特に限定しない。有効成分である核酸分子が標的物質に結合してその機能を抑制することができれば、いずれの部位であってもよい。例えば、静脈内、動脈内、肝臓内、筋肉内、関節内、骨髄内、髄腔内、心室内、経肺、経皮、皮下、皮内、腹腔内、鼻腔内、腸内又は舌下等が挙げられる。好ましくは、静脈内注射又は動脈内注射等の血管内への注射である。前述のように血流を介して本発明の医薬組成物を全身に行き渡らせることが可能であり、また侵襲性も比較的低いからである。
【0236】
6.標的物質検出方法
本発明の第6の実施形態は、前記第1実施形態に記載の核酸アプタマーを用いた標的物質の検出方法である。
【0237】
6−1.構成
第1実施形態に記載の核酸アプタマーは、その核酸分子の標的物質と極めて強固に、かつ特異的に結合し得るため、核酸分子のその性質を利用して、試料中に存在する標的物質を検出することができる。
【0238】
第1実施形態に記載の核酸アプタマーと標的物質間の結合を利用した方法であれば、検出方法自体は公知の検出方法を用いればよい。例えば、SPR法、水晶振動子マイクロバランス法、比濁法、比色法又は蛍光法を利用することができる。
【0239】
SPR(表面プラズモン共鳴)は、金属薄膜にレーザー光を照射すると特定の入射角度(共鳴角)において反射光強度が著しく減衰する現象をいう。SPR法は、この現象を利用した測定方法で、センサ部である金属薄膜表面上の吸着物を高感度に測定することができる。本発明においては、例えば、予め第1実施形態の核酸アプタマーを金属薄膜表面上に固定化しておき、その金属薄膜表面上に試料を通過させ、当該核酸分子と標的物質との結合によって生じる試料通過前後の金属表面上の吸着物の差を検出することにより試料中の標的物質を検出することができる。SPR法には、置換法、間接競合法等が知られるがいずれを用いてもよい。
【0240】
QCM(水晶振動子マイクロバランス:Quartz Crystal Microbalance)法は、水晶振動子に取り付けた電極表面に物質が吸着すると、その質量に応じて水晶振動子の共振周波数が減少する現象を利用した方法である。この方法を用いたQCMセンサは、水共振周波数の変化量によって極微量な吸着物を定量的に捕らえることができる。本発明においては、電極表面に、前記SPR法と同様に予め核酸分子を固定化しておき、試料を電極表面に接触させることによって、核酸分子と標的物質との結合により生じる水共振周波数の変化量から試料中の標的物質を定量的に検出することができる。本技術は、当該分野において周知である。例えば、Christopher J., et al.(2005) Self-Assembled Monolayers of a Form of Nanotechnology, Chemical Review,105:1103-1169を参照すればよい。
【0241】
比濁法は、溶液に光を照射し、溶液中に浮遊する物質によって散乱する散乱光の減衰又はその溶液を通過した透過光を、比色計等を用いて光学的に計測することにより溶液中の物質量を測定する方法である。本発明においては、試料中に第1実施形態の核酸アプタマーを添加する前後の吸光度を計測することによって、試料中の標的物質を定量的に検出することができる。
【0242】
また、標的物質に対する抗体と併用することにより標的物質を検出することもできる。例えば、ELISA法のサンドイッチ法を応用した方法を用いてもよい。この方法では、まず、固相担体に第1実施形態の核酸アプタマーを固定しておき、次に試料を加えて、試料中に存在する標的物質と前記核酸分子とを結合させる。続いて、試料を洗い流した後、抗標的物質抗体を加えて標的物質に結合させる。洗浄後、適当な標識をした二次抗体を用いて抗標的物質抗体を検出することにより、試料中の標的物質を検出することができる。固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック又は試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。
【0243】
7.触媒酵素(デオキシリボザイム、リボザイム)
本発明の第7の実施形態は、触媒酵素である。
【0244】
7−1.構成
「デオキシリボザイム」とは、DNA触媒とも呼ばれる触媒活性を有するDNA分子である。また、「リボザイム」とは、リボ酵素とも呼ばれる触媒活性を有するRNA分子である。基質としての標的物質であるRNA分子や低分子化合物等に特異的に結合し、その標的RNA分子を切断又は連結したり、酸化や還元等の化学反応を触媒する機能を有する。
【0245】
本発明のデオキシリボザイムは、天然型デオキシリボヌクレオチドと非天然型デオキシリボヌクレオチドとを含み、かつ複製可能なポリヌクレオチドで構成される。
【0246】
本発明のリボザイムは、天然型リボヌクレオチドと非天然型リボヌクレオチドとを含み、かつ転写又は複製可能なポリヌクレオチドで構成される。
【0247】
本発明のデオキシリボザイム又はリボザイム(本明細書においては、以降、しばしば「(デオキシ)リボザイム」とする)に含まれる非天然型ヌクレオチドは、その塩基が人工塩基で構成される。人工塩基は、第1実施形態に記載した人工塩基の性質を有するものであれば、その種類は特に制限しない。例えば、前記人工塩基の具体例として列挙した人工塩基や後述する人工塩基の誘導体が挙げられる。
【0248】
本発明の(デオキシ)リボザイムにおける非天然型ヌクレオチドの含有率は、その(デオキシ)リボザイムを構成する全ヌクレオチド数の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下であればよい。全長100塩基以下の(デオキシ)リボザイムの場合、通常は一(デオキシ)リボザイムあたりに非天然型ヌクレオチドを1〜4個有していれば、本発明の効果を奏し得る。
【0249】
非天然型ヌクレオチドが一(デオキシ)リボザイムあたりに複数含まれる場合、各非天然型ヌクレオチドが有する人工塩基は、同一であって及び/又は異なっていてもよい。ただし、人工塩基が異なる場合には、同一の相補的人工塩基を有する二以上の人工塩基を混在させないように留意する。複製又は転写の過程で相補的人工塩基を介して当初の人工塩基が他の人工塩基に置換される可能性があるからである。例えば、(デオキシ)リボザイムがPn及びPaを有する非特異的ヌクレオチドを含む場合、複製過程でそれぞれの相補的人工塩基であるDsを介してPnとPaの位置が置換され得るからである。
【0250】
本発明の(デオキシ)リボザイムを構成する非天然型ヌクレオチドの塩基は、第1実施形態に例示した人工塩基の誘導体であってもよい。
【0251】
7−2.(デオキシ)リボザイムの製造方法
本発明のデオキシリボザイムの製造方法は、複合体形成工程、複合体回収工程、一本鎖核酸分子回収工程、DNA増幅工程、デオキシリボザイム調製工程、及び触媒活性確認工程を必須の工程として含む。また、反復工程を任意の工程として含むことができる。
【0252】
本発明のリボザイムの製造方法は、複合体形成工程、複合体回収工程、一本鎖核酸分子回収工程、逆転写工程、DNA増幅工程、転写工程、リボザイム調製工程、及び触媒活性確認工程を必須の工程として含む。また、反復工程を任意の工程として含むことができる。
【0253】
上記工程のうち複合体形成工程、複合体回収工程、一本鎖核酸分子回収工程及び反復工程は、前記核酸アプタマーの製造方法における複合体形成工程、複合体回収工程、一本鎖核酸分子回収工程及び反復工程にそれぞれ準じて行うことができる。また、逆転写工程、DNA増幅工程及び転写工程は、前記核酸アプタマーの製造方法における増幅工程中の逆転写ステップ、DNA増幅ステップ及び転写ステップにそれぞれ準じて行えばよい。さらに、(デオキシ)リボザイム調製工程は、前記核酸アプタマーの製造方法における核酸アプタマー調製工程と同様に、得られた一本鎖核酸分子をセルフフォールディングさせて、標的物質との結合活性ならびに酵素活性を有する本発明の(デオキシ)リボザイムを調製すればよい。触媒活性確認工程は、(デオキシ)リボザイムの触媒活性を確認する工程であって、(デオキシ)リボザイムの標的物質である基質を触媒しているか否かを反応産物としての基質の状態を公知技術で確認すればよい。
【0254】
8.核酸アプタマー、デオキシリボザイム又はリボザイム製造用キット
本発明の第8の実施形態は、第1実施形態に記載の核酸アプタマー又は、第7実施形態に記載のリボザイムを製造するためのキットに関する。
【0255】
本発明のキットは、第1実施形態に記載の非天然型ヌクレオチド含有一本鎖核酸分子を含む一本鎖核酸ライブラリー及び当該一本鎖核酸ライブラリーを構成する一本鎖核酸分子のプライマー結合領域に相補的な配列を有するプライマーセットを含む。さらに、そのキットの使用説明書を包含することもできる。
【実施例】
【0256】
<実施例1:VEGF-165に結合するDNAアプタマーの作製(1)>
(1)人工塩基Dsを中央領域の特定部位に含む一本鎖DNAライブラリーの調製
人工塩基Dsを中央領域の特定部位に含む一本鎖DNAライブラリー(全長97塩基又は98塩基)は、まず、人工塩基Dsを中央領域中の1カ所から3カ所の任意の特定位置に設定した22種類のDNAライブラリー配列(下記参照)をそれぞれ化学合成してゲル精製した後、合成した各種DNAライブラリーをそれぞれ等量ずつ混合し、本発明の核酸アプタマー製造方法における最初のライブラリーとして用いた。また、中央領域中のどの位置にDsが配置されているかを各種一本鎖DNAが混合された状態でも識別できるようにするため、中央領域の5′末端側でPCR用のプライマー結合領域の直後に識別部位としての2塩基又は3塩基のタグ配列を組み込んだ。これにより、PCRによりDNA断片中の人工塩基を天然型塩基に置き換えた後でも、シーケンス解析を行うことにより、そのDNA断片がどのライブラリー由来のものか、そして、どの位置に人工塩基が組み込まれていたかを判断できる。
【0257】
下記に化学合成した22種類のDNAライブラリー配列を示す。
【0258】
N43Ds-01:
5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(AA)NNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号3
N43Ds-02:
5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(AT)NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号4
N43Ds-03:
5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(AG)NNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号5
N43Ds-04:
5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(TA)NNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号6
N43Ds-05:
5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(TT)NNNNNNNNNNDsNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号7
N43Ds-06:
5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(TG)NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNDsNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号8
N43Ds-07:
5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(TC)NNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号9
N43Ds-08:
5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(GA)NNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号10
N43Ds-09: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(GT)NNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号11
N43Ds-10: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(CA)NNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号12
N43Ds-11: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(CT)NNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNDsNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号13
N43Ds-12: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(CAG)NNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号14
N43Ds-13: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(CAT)NNNNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号15
N43Ds-14: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(TAT)NNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号16
N43Ds-15: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(TTA)NNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号17
N43Ds-16: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(GCT)NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号18
N43Ds-17: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(CCA)NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号19
N43Ds-18: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(CCT)NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号20
N43Ds-19: 5’-TGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(GGA)NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号21
N43Ds-20: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(GGT)NNNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号22
N43Ds-21: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(CGA)NNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号23
N43Ds-22: 5’-CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(CGT)NNNNNNNNNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNDsNNNNNNNNNNNNNGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC-3′;配列番号24
上記配列において、N=A, G, C又はTであり、5′側の固定配列(5′側のPCR用プライマー配列に相当)はCTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC(配列番号1)、3′側の固定配列(3′側のPCR用プライマー配列である配列番号149の相補的配列に相当)はGCATGACTCGAACGGATTAGTGACTAC(配列番号2)、そして、カッコ内の配列は識別部位を表す。
【0259】
(2)VEGF-165へ結合するDsを含む一本鎖DNAアプタマーの製造
上述(1)で調製した一本鎖DNAライブラリーと標的タンパク質human VEGF-165(Peprotech)を用いて、磁気ビーズを利用した核酸タンパク質複合体の固定化法により、以下の手順で、VEGF-165へ結合するDNAアプタマーを単離した。
【0260】
A.セレクション1ラウンドの操作
(i) 標的タンパク質とDNAライブラリーとの結合
一本鎖DNAライブラリーをPBS溶液(1.1 mM KH2PO4、155 mM NaCl、3 mM Na2HPO4、pH 7.4)に溶解して、DNAの分子内での高次構造を形成させるために、フォールディング処理(90 ℃、3分間→60 ℃、3分間→25 ℃)を行った。その後、Nonidet P-40を含むPBS溶液と混合してNonidetP-40の最終濃度が0.05%になるように調製し、磁気ビーズに非特異的に吸着する核酸断片をライブラリーから除くため、その核酸溶液を0.2 mgのストレプトアビジン磁気ビーズ(Hydrophilic Streptavidin Magnetic Beads、NEB)と混合して、室温下、30分間転倒混和した。磁気スタンドと遠心操作により磁気ビーズを取り除いた後の上清液を、標的タンパク質であるVEGF-165と混合し、25℃で30分間インキュベーションすることでDNA-タンパク質複合体を形成させた。
【0261】
(ii)標的タンパク質に結合したDNA配列の選別
上述の混合溶液中に9%容量の10 mM EZ-link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Thermo Scientific)水溶液を添加して(最終濃度 0.83 mM)、25℃で15分間インキュベーションすることにより、タンパク質のビオチン化を行った。未反応のビオチン化試薬をマイクロコン50(ミリポア)を用いた限外濾過によって取り除いた後、その溶液をストレプトアビジン磁気ビーズと混合して室温で10分間インキュベーションすることにより、DNA-タンパク質複合体を磁気ビーズに固定化した。その後、タンパク質や磁気ビーズに非特異的に吸着した核酸を洗浄するために、磁気ビーズを40 mlの0.05% Nonidet P-40を含むPBS溶液 (緩衝液A)に懸濁し、37℃で30分間インキュベーションする操作を2〜3回繰り返した。洗浄後の磁気ビーズに400 μlの溶出液 (100 mMクエン酸ナトリウム pH 5.0、7 M 尿素、3 mM EDTA)を加えて、90℃で5分間加熱することにより、タンパク質-DNA複合体を解離させた。そして、その溶出液から、フェノール・クロロホルム抽出、イソプロピルアルコール沈殿操作によりタンパク質に結合していたDNAを回収し、PCRによる次のセレクションラウンドのライブラリー調製時の鋳型とした。
【0262】
(iii)一本鎖DNAライブラリーの調製(増幅)
次のラウンドに用いる一本鎖DNAのライブラリーは、各セレクションラウンド後のDNAを鋳型として、ビオチン修飾されたプライマーを用いてPCR増幅を行い、その後、ストレプトアビジンとの結合を利用したゲルシフトによって一本鎖化されたDsを含むDNA断片を分離し、ゲルからそのDNA断片を溶出して回収することで調製した。PCRは Invitrogen社のAccuPrime Pfx DNAポリメラーゼを用いて400 μl容量で行い、その反応組成は1×AccuPrime Pfx reaction mix (各種 dNTP 0.3 mM、MgSO44 1mM含有)、1 μM 5′-プライマー(配列下記参照)、1 μM 3′-プライマー(配列下記参照)、0.1 mM dNTPs (N=A,G,C,T)(最終濃度0.4 mM)、0.5 mM MgSO4(最終濃度1.5 mM)、50 μM dDsTP、50 μM Diol1-dPxTP、0.05 U/μl AccuPrime Pfx DNAポリメラーゼであり、PCRのサイクル条件は、(94℃ 30秒-50℃ 30秒-65℃ 2分)×13-19サイクルである。
【0263】
5′-プライマー: 5′- CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC-3′(配列番号1)
3′-プライマー: 5′-BGTAGTCACTAATCCGTTCGAGTCATGC-3′(配列番号148;B=ビオチン修飾したT)
PCR溶液からエタノール沈殿によりDNAを回収した後、SA緩衝液(10 mM Tris-HCl pH 7.6, 50 mM NaCl, 1 mM EDTA)をPCR 溶液0.1 mlあたり 5 μl加えて溶解し、75℃で3分間加熱することで一本鎖状態に変性した。この溶液に、PCR 溶液0.1 mlあたり12.5 μgのストレプトアビジン(5 mg/ml SA緩衝液、2.5 μl)を加えて、25℃で30分間インキュベーションすることにより、ビオチン-アビジン複合体を形成させた。同容量の10 M尿素-1×TBE溶液を加えた後、7 M 尿素を含む6% ポリアルアミド変性ゲルにより、増幅された一本鎖DNAライブラリーを分離し、ゲルから溶出・回収されたライブラリーを次のラウンドのライブラリーとして用いた。
【0264】
B.反復工程における選択ラウンドの条件
各ラウンドのセレクション条件を表1に示した。
【表1】
【0265】
最初のラウンドには、化学合成により調製した22種類のDNAライブラリー配列を等量ずつ混合したものを直接用いており、分子種総数は300 pmol、すなわち約2×1014分子である。タンパク質-DNA複合体形成条件を厳しくするために、徐々にタンパク質とDNAの濃度を低くするとともに、8ラウンド目には、タンパク質-DNAライブラリーを混合する時に、競合するDNA分子として、これまでにVEGFへ結合するDNAアプタマーとして報告のあるDNA断片(5′-TGTGGGGGTGGACGGGCCGGGTAGA-3′)(配列番号147)をCompetitorとして過剰量加えた。また、7ラウンド目では、40 mlの緩衝液Aでの洗浄を2回行った後に、3 M尿素を含む緩衝液 A (1 ml、室温で15分間)で転倒混和する操作を加えて、さらに洗浄条件を厳しくした。8ラウンド目では尿素存在下での洗浄操作を2回繰り返した。
【0266】
(3)セレクションにより得られたDNAアプタマー配列の決定
セレクションにより得られたDNAアプタマー配列の決定は、下記の2つの方法を用いて行った。
【0267】
(i)大腸菌を用いたクローニング法によるDNAアプタマー配列の決定
最終ラウンド(8ラウンド)後のセレクションで回収した一本鎖DNAの一部を鋳型として、人工塩基Dsを天然塩基に置き換えるPCRを行い、そのPCR産物を従来法によりクローニングした。具体的には、1 μMの各プライマー(5′-プライマー:5′- CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC-3′(配列番号1)と3′-プライマー:5′-GTAGTCACTAATCCGTTCGAGTCATGC-3′(配列番号149))と20 nMの鋳型一本鎖DNA存在下、Clontech社の1×Titanium Taq PCR buffer中、0.3 mM dNTPs (N=A,G,C,T)、50 μM dPa′TP、1×Titanium Taqの反応組成で、5 サイクルのPCR(20μl容量)を行った。本PCRではdPa′TP を意図的に添加しているが、これは、人工塩基Dsが隣接配列によっては天然型塩基基質のみでは増幅されにくい場合があり、その天然型塩基への置換効率の違いを低減するために、Dsに代えて天然型塩基に置換されやすいPa′をDsに相補した位置に、1サイクル目のPCRで取り込ませるためである。PCRサイクル条件は、94℃ 1分→(94℃ 30秒―68℃ 2分)×5サイクル→75℃ 10分である。PCR産物の一部(4μl)をTOPO TA クローニングキット(インビトロジェン)により大腸菌(Top10)にクローニングし、各クローン由来のプラスミドを回収し、各クローンのシーケンシングを決定した。決定したクローンの配列のうち、プライマー配列の間が45〜46塩基であり、タグ配列を有する35クローンの塩基配列、14種を表2に示す。
【表2】
【0268】
人工塩基Dsの位置は、タグ配列によって分類されたDNAライブラリーの配列に基づき決定した。一番クローン数が多かったのは、cN43Ds-21-04の配列であったが、その一方で、cN43Ds-08-07に含まれるGGGDsTTGGAGGGGDsGTCGG配列と類似したモチーフが、その他のクローン間で保存され、含まれていることがわかった。また、タグ配列から予想された人工塩基Dsの位置の塩基配列は、ほとんどがA又はTに置換されていることがわかった。また、人工塩基Dsの相当する位置の配列は、A又はTの変異として得られたことは、セレクションを通じたPCR中でも人工塩基が保持されていることを強く示唆している。
【0269】
(ii)次世代シークエンサー(Life Technologies社;Ion Torrent The Personal Genome MachineTM(PGMTM))によるDNAアプタマー配列の決定
上述(i)で示した天然塩基を人工塩基に置き換えるPCRを100 μl容量で行い、得られたPCR産物をWizard(R)SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製した。精製後のDNAをIon Fragment Library Kit(Life Technologies)により、添付の説明書に記載された方法でライブラリー化した。 得られたDNAライブラリーは、Ion Library Quantification Kit(Life Technologies)を用いて定量し、所定の濃度まで希釈したのち、Ion XpressTM Template Kit v2.0(Life Technologies)を用いて処理することで、Life Technologies社のThe Personal Genome MachineTM (PGMTM)解析用の鋳型DNAを調製した。そして、Ion Sequencing Kit(Life Technologies)を用いて、イオントレントPGMTMによるシーケンシングを行い、得られた総リード数をCLCBio社のCLC Genomics Workbench (version 4.7.2)を用いて解析した。具体的には、Dsを含むライブラリー配列については、5′-プライマー 25塩基・タグ配列(各種)・43塩基からなる配列・3′-プライマーの部分配列6塩基(GCATGA)を連続して含み、かつ同一配列のリード数が2以上のものを、また、Dsを含むライブラリーの相補配列については、3′-プライマー 27塩基・43塩基からなる配列・タグ配列(各種)・5′-プライマーの部分配列6塩基(GTGGAC)を連続して含み、かつ同一配列のリード数が2以上のものをそれぞれ解析対象の配列として選別し、合計数14094のリード配列をさらに解析した。図6−1及び6−2にライブラリー毎で上記条件を満たしたリード解析数、及び、人工塩基Dsが該当する部分以外が同一配列であったリード数が3以上であったものを選択して示す。
【0270】
その結果、イオントレントPGMTMによって解析されたクローン配列も、クローニングで解析されたクローン配列も同様の傾向を示すことが分かった。クローニング法で確認された配列のほとんどは、イオントレントPGMTMによるクローンの解析結果からも確認できた。イオントレントPGMTMで解析された配列のうち、もっともクローン数が多かったものは、クローニング法でもっとも多く得られたクローン、cN43Ds-21-04と同じ配列であるN43Ds-21-1であった。また、GGGDsTTGGNGGGGDsGTCGG(N=任意の天然型塩基)のモチーフを含む配列についても多く確認され、このうち50以上のリード数が確認できた配列は13種類あった(図7)。
【0271】
<実施例2 VEGF-165へ結合するDNAアプタマーの結合解析(1)>
本実施例では、GEヘルスケア社のBIACORE3000を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)の測定により、実施例1で得られたクローンから、代表的なクローンとしてN43Ds-08-1、N43Ds-09-1、N43Ds-20-1、N43Ds-21-1を選択し、全長DNA断片(DNAアプタマー)のVEGF-165への結合能を解析した。
【0272】
まず、本発明の核酸アプタマーの製造方法で得られた各クローン配列に基づき、5′-末端にビオチン化されたTが付加されたDsを含む一本鎖DNA断片(全長98及び99-mer)、及びDsを天然型塩基A、T、若しくはGに置換したDNA断片を化学合成とゲル精製により調製した。図8にその配列を示す。そして、SPRのセンサーチップにはストレプトアビジンがコートされたSAチップ(GE ヘルスケア)を用い、DNA断片をチップへ不可逆的に固定化後、VEGFへの結合を解析した。コントロールとして、VEGFへ結合するDNAアプタマーとして報告のあるDNA断片(VEGF binding DNA 64、64mer)も調製して、同様にして結合を解析した。なお、SPRの測定条件は、ランニングバッファ:緩衝液A、設定温度:25℃で行った。
【0273】
各DNA断片のセンサーチップへの固定化は、50 nMとなるようにPBS溶液で希釈したDNA溶液をフォールディング処理(90 ℃、3分間→60 ℃、3分間→25 ℃)した後、最終濃度0.05%になるようにNonidet P40を加えた。そのDNA溶液を流速5 μl/minで10 μl(2分間相当)インジェクションすることで、SAチップに固定化した。また、固定化後、流速20 μl/minで、50 mM NaOH 溶液をインジェクション(5 μl 、5回)行うことにより、SAチップに非特異的に吸着されているDNA断片を洗浄した。固定化されたDNA断片とVEGF-165との相互作用検出は、100 nM、150 nM及び200 nMのVEGF-165溶液 (緩衝液Aにより希釈、dimer換算)をKinetic Injectionモードによってインジェクションすることでモニターした。測定条件は、流速20μl/min、タンパク質インジェクションは3分間である。チップの再生(結合タンパク質の解離及びDNAのリフォールディング)は、 50 mM NaOHの溶液を5 μl(15秒相当)インジェクション後、チップのプライム処理を行い大量の緩衝液Aを流すことで行った。各DNA断片のセンサグラムは、センサーチップに対するバルク効果や非特異的吸着によるレスポンス値を差し引くために、DNAを固定化していないセルをレファレンスのセルとして、そのレスポンス値を各DNA断片のセンサグラムから差し引いた。その結果を図9に示す。
【0274】
本測定の結果、センサグラムの波形から、DNA断片とVEGF-165の特異的な結合以外にも、弱い非特異的な結合もみられることがわかった。この場合には、カーブフィッティングによる結合速度(ka)、解離速度(kd)に基づく解離定数(Kd=kd/ka)の算出は難しいと判断し、各DNA断片の結合の強さの評価は、タンパク質インジェクション終了後のタンパク質解離段階においてどれだけ解離されにくいかを指標として比較することにした。具体的には、インジェクション終了後、23秒後のレスポンス値 (RU)を100%として、さらに200秒経過後のレスポンス値(RU)から、どれだけ結合が保持されている割合を求め、100 nM、150 nM、200 nMで得られた割合を平均して、結合保持率Retention(%)を算出した。その算出結果を表3に示す。
【表3】
【0275】
すべてのクローンにおいて、人工塩基Dsを含むDNA断片の方が、人工塩基Dsを天然型塩基に置換したDNA断片よりも、VEGF-165の結合保持率が高いことがわかった。特にN43Ds-09-1は、他のDNA断片に比べて強い結合を示すだけでなく、DsをGやA/Tに置換した場合の結合保持率の低下が、他のDNA断片に比べて大きかった。この結果から、N43Ds-09-1のVEGF-165への結合は、Dsの有無に依存しており、Dsを天然型塩基に置換した場合には、特にその解離速度(kd)が大きくなることが明らかになった。
【0276】
<実施例3:N43Ds-09-1の配列を基にしたドープセレクション(1)>
本実施例では、実施例1、2で得られた、VEGF-165に人工塩基Dsに依存して強く結合するDNA断片N43Ds-09-1について、全長98-mer中のどの部分が標的タンパク質との結合に関与しているかを調べるために、ドープセレクションを行った。
【0277】
(1)ドープセレクションに用いたDNAライブラリーの調製
ドープセレクションに用いたDNAライブラリーは、N43Ds-09-1の配列の3つのDsの塩基、及び、プライマー領域は固定し、それ以外のタグ配列を含めた天然塩基配列部分は、62.5%が元の塩基、37.5%が元の塩基と異なる塩基(3種類の塩基が12.5%ずつ)、となるようにして化学合成し、ゲル精製により調製した。配列は下記の通りである。
【0278】
N43Ds-09-1-Dope
5’-ctgtcaatcgatcgtatcagtccacgtctaagta(Ds)ggtggg(Ds)ttggcgggg(Ds)tgtcggatatacttt gacgcatgactcgaacggattagtgactac-3’
(大文字固定配列:小文字 Doped配列)
a= A: 62.5%; G: 12.5%; C: 12.5%, T:12.5%
g= A: 12.5%; G: 62.5%; C: 12.5%, T:12.5%
c= A: 12.5%; G: 12.5%; C: 62.5%, T:12.5%
t= A: 12.5%; G: 12.5%; C: 12.5%, T:62.5%
(2)VEGF-165へ結合するDsを含むssDNAアプタマーのドープセレクション
(1)で調製したDNAライブラリーと標的タンパク質human VEGF-165(Peprotech)を用いて、磁気ビーズを利用した核酸タンパク質複合体の固定化法により、実施例1に示した「A.セレクション1ラウンドの操作」と同様の手順でVEGF-165へ結合するDNAアプタマーを単離した。
【0279】
A.ドープセレクションラウンドの条件
各ラウンドのセレクション条件を表4に示した。
【表4】
【0280】
最初のラウンドには、化学合成により調製したDNAライブラリーN43Ds-09-1-Dopeをそのまま300 pmol用いて実施した。実施例1と同様、セレクションラウンドが進むごとにタンパク質-DNA複合体形成条件を厳しくするために徐々にタンパク質とDNAの濃度を低くするとともに、3、4及び5ラウンド目には、タンパク質-DNAライブラリーを混合する時に競合するDNA分子(Competitor)として、これまでにVEGFへ結合するDNAアプタマーとして報告のあるDNA断片(5′-TGTGGGGGTGGACGGGCCGGGTAGA-3′;配列番号147)を過剰量加えた。また、4ラウンド目では、40 mlの緩衝液Aでの洗浄を2回行った後に、3 M尿素を含む緩衝液 A (1 ml、室温で15分間)で転倒混和する操作を加えて、さらに洗浄条件を厳しくした。5ラウンド目では、この操作を2回繰り返した。
【0281】
(3)ドープセレクションにより得られたDNAアプタマー配列の解析
ドープセレクションにより得られたDNAアプタマー配列の解析は、実施例1と同様にして、最終ラウンド(5ラウンド)後のセレクションで回収したDNAを用いて下記の2つの方法を用いて行った。
【0282】
(i)大腸菌を用いたクローニング法によるDNAアプタマー配列の同定
実施例1と同様の方法で、決定したクローンの配列のうち、プライマー配列の間が45塩基であった28クローンの塩基配列、25種を図10に示す。
【0283】
(ii)次世代シークエンサー(Life Technologies社Ion Torrent The Personal Genome MachineTM(PGMTM))によるDNAアプタマー配列の同定
PGMによるシーケンスは、実施例1と同様の方法で行った。得られた総リード数をCLC Genomics Workbench (version 4.7.2)を用いて解析し、Dsを含むライブラリー配列については、5′-プライマーの25塩基・45塩基からなる配列・3′-プライマーの部分配列6塩基(GCATGAC)を連続して含むリード(総数:2474)、及びDsを含むライブラリーの相補配列については、3′-プライマー 27塩基・45塩基からなる配列・5′-プライマーの部分配列6塩基(GTGGAC)を連続して含むリード(総数:2365)を選択し、合計数 4839のクローン配列についてさらに解析した。45塩基中の各位置における塩基組成を算出した結果を図11に示す。
【0284】
(i)及び(ii)の両手法で解析した結果、共通して、N43Ds-09-1の元の配列中のモチーフ、GGGDsTTGGNGGGGDsTGTCGG (N=A,G,C,T)からなる配列(配列番号105)が非常によく保存されていることがわかった。このモチーフと類似配列を含むクローンが実施例1のセレクションでも多く得られており(図7)、このモチーフがVEGF-165への結合に重要であることが示唆された。
【0285】
<実施例4:ドープセレクションにより得られたモチーフを含むDNA断片の結合解析(1)>
本実施例では、GEヘルスケア社のBIACORE3000を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)の測定により、実施例3で同定されたGGGDsTTGGNGGGGDsTGTCGGモチーフ(配列番号105)を含むようにN43Ds-09-1を切り詰めたDNA断片(35mer)、Ds-09-1-DsDsDs、及びその変異体のDNA断片について、VEGF-165への結合能を解析した。
【0286】
A.SPRによる各種DNA断片のVEGF-165への結合解析
SPRの測定条件は、実施例2と同様、ランニングバッファ:緩衝液A、設定温度:25℃で行った。本実施例で解析に用いたDNA断片6種を表5に示す。
【表5】
【0287】
Ds-09-1-ADsDs、Ds-09-1-DsADs、Ds-09-1-DsDsA、Ds-09-1-AAAは、Ds-09-1-DsDsDsの人工塩基Dsをすべて、若しくは一か所ずつ天然型塩基Aに置換したものである。Ds-09-1-mDsDsDsは、ドープセレクションで保存されている割合が低かった塩基部分において、2か所を頻出頻度が高い塩基に置換したDs-09-1-DsDsDs変異体のDNA断片である。また、比較のため全長98merのN43Ds-09-1、及び人工塩基Dsを天然型塩基に置換した全長のDNA断片、N43Ds-09-1(AT)とN43Ds-09-1(G)、及びコントロールとして、VEGFへ結合するDNAアプタマーとして報告のあるDNA断片35 mer(VEGF binging DNA 35)も同一条件下で測定した。実施例2の全長の結合解析と同様、SAチップ(GE ヘルスケア)にDNA断片を直接固定化するため、それぞれのDNAの末端にはビオチン化されたTを付加して化学合成し、ゲル精製により調製した。各DNA断片のセンサーチップへの固定化は、25 nMとなるようにPBS溶液で希釈したDNA溶液をフォールディング処理(90 ℃、3分間→60 ℃、3分間→25 ℃)した後、最終濃度0.05%になるようにNonidet P40を加えた。そのDNA溶液を流速5 μl/minで5μl(1分間相当)インジェクションすることで、SAチップに固定化した。また、固定化後、流速20 μl/minで、 50 mM NaOH 溶液をインジェクション(5 μl、5回)行うことにより、SAチップに非特異的に吸着されているDNA断片を洗浄した。
【0288】
固定化されたDNA断片とVEGF-165との相互作用検出は、12.5 nM、25 nM、37.5 nM、50 nM、62.5 nM、及び75 nMのVEGF-165溶液 (緩衝液Aにより希釈、dimer換算)をKinetic Injectionモードによってインジェクションすることでモニターした。測定条件は、流速20μl/min、タンパク質インジェクションは6分間である。チップの再生(結合タンパク質の解離及びDNAのリフォールディング)は、 50 mM NaOHの溶液を5 μl(15秒相当)インジェクションした後、チップのプライム処理を行い、大量の緩衝液Aを流すことで達成した。DNA断片のセンサグラムは、センサーチップに対するバルク効果や非特異的吸着によるレスポンス値を差し引くために、DNAを固定化していないセルをレファレンスのセルとして、そのレスポンス値を各DNA断片のセンサグラムから差し引いた。その結果を図12に示す。全長を35merに切り詰めたDs-09-1-DsDsDsは、全長のN43Ds-09-1(Ds)と同様に、VEGF-165に強く結合することがわかった。また、Ds-09-1-DsDsDsに含まれる3つのDs塩基のうち、5′-末端側に位置するDsを天然塩基Aに置き換えたDNA断片Ds-09-11-ADsDsも、強く結合することがわかった。一方、5′-末端側から2番目、3番目のDsをAに置き換えたDNA断片(Ds-09-1-DsADs又はDs-09-1-DsDsA)、及び人工塩基DsをすべてAに置換したDNA断片(Ds-09-1-AAA)は、Ds-09-1-DsDsDs及びDs-09-1-ADsDsと比較してVEGFインジェクション後のVEGFの解離が速くなり、結合が弱くなることがわかった。またDNA断片Ds-09-1-mDsDsDsは、VEGFインジェクション後のレスポンス(RU)は他のDNA断片と比べて低かったが、VEGFインジェクション後のVEGFの解離は、Ds-09-1-DsDsDsやDs-09-1-ADsDsと同様に遅いことがわかった。
【0289】
短い断片でのSPR測定では、全長のDNA断片と比較して、弱い非特異的な結合が無視できるレベルであり、Ds-09-1-DsDsDs、Ds-09-1-ADsDs、Ds-09-1-mDsDsDsについては、Biacore3000の付属のBiaEvalutaionソフトにより、1:1 bindingの反応モデルでカーブフィッティングを行い、解離定数(Kd)を算出することができた。Ds-09-1-DsDsDsのKd値は 4 nM、Ds-09-1-ADsDsのKd値は1 nM、Ds-09-1-mDsDsDsのKd値は50 nMであった。また、結合の弱いDs-09-1-DsAD、Ds-09-1-DsDsA、Ds-09-1-AAAについてはフィッティングが難しく、正確なKd値は算出できなかったが、100 nMより大きいことがわかった(表5)。
【0290】
また、実施例2と同様に、各DNA断片の結合の強さを、タンパク質インジェクション終了後のタンパク質解離段階において、どれだけ解離されにくいかを指標とした比較も行った。具体的には、インジェクション終了後、16秒後のレスポンス値 (RU)を100%として、さらに300秒経過後のレスポンス値(RU)からどれだけ結合が保持されている割合を求め、37.5 nM、50 nM、62.5 nM、75 nMで得られた割合を平均して、結合保持率Retention(%)を算出した(図10、表5)。その結果、短く切り詰めたDs-09-1-DsDsDs、Ds-09-1-ADsDs、及びDs-09-1-mDsDsDsは結合保持率が90%以上で、98mer全長のDs-09-1の結合保持率とほぼ同じであった。
【0291】
以上の結果から、GGGDsTTGGNGGGGDsTGTCGG(配列番号105)を含み、短く切り詰めたDNA断片35merは、モチーフ中のDs塩基に依存してVEGFから解離しにくくなると同時に、強くVEGFに結合することがわかった。
【0292】
B.切り詰めたDNA断片のVEGF-165への結合選択性解析
本セレクションで得られたアプタマー35merのVEGF-165への結合選択性を調べるために、VEGF-165のサブタイプであるVEGF-121(Peprotech)及びhuman EGF (Peprotech)、human α-thrombin (Enzyme Research Laboratories )に対するDs-09-11-DsDsDs及びDs-09-11-ADsDsの結合能を調べた。 VEGF-165への結合解析と同様にして、Ds-09-11-DsDsDs及びDs-09-11-ADsDsを固定化したSAチップに、各種タンパク質(75 nM)をインジェクションした場合のセンサグラムを図13に示した。Ds-09-11-DsDsDs及びDs-09-11-ADsDsともにVEGF-165以外のタンパクにはほとんど結合せず、本実験のセレクションで得られた人工塩基を含むアプタマーがVEGF-165に選択的に結合することがわかった。
【0293】
<実施例5:人工塩基Dsを中央領域にランダムに含む一本鎖DNAライブラリー(ランダムライブラリー法)によるセレクション>
本実施例では、人工塩基Dsを含む一本鎖DNAライブラリーとして、人工塩基Dsをランダムに組み込んだランダムライブラリーを用いて、VEGFに結合するDNAアプタマーのセレクションを行った。
【0294】
(1)人工塩基Dsをランダムに組み込んだ一本鎖DNAライブラリーの調製
人工塩基Dsをランダムに組み込んだ一本鎖DNAライブラリー(N45.26mixDs-3)の化学合成は、中央領域45塩基からなる配列について、人工塩基Dsのアミダイトが6%、天然型塩基4種等量ずつのアミダイトが94%の割合となるように混合して調製したアミダイトを用いることで行った。この条件で合成したライブラリーの理論上の組成は、Dsを含まずに天然型塩基からなるライブラリーが全体の6.2%、任意の位置にDsを1塩基含むライブラリーが全体の17.7%、Dsを2塩基含むライブラリーが全体の24.9%、Dsを3塩基含むライブラリーが22.8%、Dsを4塩基含むライブラリーが15.3%、Dsを5塩基含むライブラリーが8.0%、残り約2%のライブラリーがDsを6塩基以上含む、と考えられる。N45.26mixDs-3の配列(全長89-mer、カッコ内の領域はPCRプライマーのための固定配列)を以下に示す。
【0295】
5’-(ACGCATGAACAAACTTGCTTG)NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN(GGAGTACGCAGAAGTTTCATTGT)-3′(配列番号114)
(N=A,G,C,T(94%)又はDs(6%))
(2)VEGF-165へ結合するDsを含むssDNAアプタマーのセレクション
前記(1)のDNAライブラリーと標的タンパク質human VEGF-165(Peprotech)を用いて、磁気ビーズを利用した核酸タンパク質複合体の固定化法により、実施例1に示した<セレクション1ラウンドの操作>と同様にして、VEGF-165へ結合するDNAアプタマーを単離した。なお、(iii)のライブラリーの調製では、PCRのサイクル条件は(94℃ 30秒-50℃ 30秒-65℃ 2分)×15-25サイクルであり、5′-プライマーと3′-プライマーには下記の配列を使用した。
【0296】
5′-プライマー: 5′- ACGCATGAACAAACTTGCTTG-3′(配列番号112)
3′-プライマー: 5′-BACAATGAAACTTCTGCGTACTCC-3′ (B=ビオチン修飾したT) (配列番号150)
<セレクションラウンドの条件>
各ラウンドのセレクション条件を表6に示した。
【表6】
【0297】
最初のラウンドには、化学合成により調製したDNAライブラリーを直接用いており、分子種総数は300 pmol、すなわち約2×1014分子である。タンパク質-DNA複合体形成条件を厳しくするために、徐々にタンパク質とDNAの濃度を低くするとともに、複合体を洗浄するステップ数を増やした。
【0298】
(3)セレクションラウンド毎のライブラリーのシークエンス解析
人工塩基Dsを含むDNAのシーケンス解析では、通常のダイターミネーターによるシーケンス反応中に人工塩基Dsに相補的な基質としてddPa′TP若しくはdPa′TPを加えると、シーケンスパターンが異なってくることから、シーケンスの鋳型に用いたDNA断片中の人工塩基Dsの有無を推測することができる。そこで、各セレクションラウンド後に調製した一本鎖DNAライブラリーを鋳型に用いて、ddPa′TP若しくはdPa′TP存在下でシーケンス解析を行い、セレクション過程を通して人工塩基Dsがどれだけ保持されているのかを解析した。
【0299】
具体的には、DNAのシーケンシング反応は、全量10 μlスケールにて、市販のBigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)のCycle Sequencing Mix 2μlに、キット添付のv1.1用 Sequencing Buffer(×5)1μl、シーケンスプライマーとして(2 pmol、5′-ACAATGAAACTTCTGCGTACTCC-3′;配列番号113)と各ラウンド後PCR増幅して調製した一本鎖DNA断片(0.15 pmol程度)、ddPa′TP若しくはdPa′TP(500 pmol)を加え、25サイクルのPCR(96℃10秒、50℃5秒、60℃4分)を行った。未反応のダイダーミネーターをCentriSepスピンカラム(Applied Biosystems)で反応溶液から取り除き、残りの溶液を減圧下で乾燥した。残存物にBlue-Dextranを希釈したホルムアミド溶液を3 μl加えて、その一部をABI377DNAシーケンサーにより解析した。解析に用いたゲル組成は、6%ポリアクリルアミド−6 M尿素ゲルである。配列のピークパターンは、Applied Biosystems PRISMシークエンシング解析v3.2ソフトウエアを用いて解析した。シーケンスパターンを解析した結果から、4ラウンド以降、特定の配列群が濃縮されてきていることがわかった。天然型塩基配列だけからなるアプタマーもライブラリーに含まれているため、ddPa′TP存在下でシーケンスが人工塩基に相補する位置で止まるパターンとはならなかったが、ddPa′TP存在下とdPa′TP存在下のシーケンスパターンは、すべてのラウンドにおいて違いが認められた。通常、天然型塩基だけからなる配列の場合には、ddPa′TP存在下とdPa′TP存在下でもシーケンスパターンに有意な違いは認められない。したがって、本セレクションで得られたライブラリーの中には、少なくとも人工塩基Dsは保持された配列が存在することが推測された。
【0300】
(4)セレクションにより得られたDNAアプタマー配列の同定
(3)のシーケンス結果から、天然型塩基配列だけからなるアプタマーも8ラウンド後のライブラリーに含まれていることが示唆されたため、実施例1の(3) (i)の手法の前に、人工塩基Dsを含むDNA断片を濃縮する操作を行い、Dsを含むDNAアプタマーの配列決定を行った。
【0301】
人工塩基Dsを含むDNA断片を濃縮する操作は、Nucleic Acid Research (2009)Kimoto et al.に記載した方法に準じて行い、論文中のFAM-hx-dPxTPの代わりに、Biotin-dPxTPを用いて同様の操作を行った。具体的には、8ラウンド後に増幅した1本鎖DNAライブラリー 1pmolを鋳型として、dDsTP、Biotin-dPxTP 50μM存在下、AccuPrime Pfx DNAポリメラーゼを用いてPCR5サイクルで増幅し、Dsを含む一本鎖DNA断片をDs-(Biotin-dPx)塩基対を含む二本鎖DNAとした。PCR組成と条件は、Diol1-dPxTPをBiotin-dPxTPに置換した点、PCRのプライマーにビオチン化されていないプライマー(5′-ACAATGAAACTTCTGCGTACTCC-3′(配列番号113)及び5′- ACGCATGAACAAACTTGCTTG-3′(配列番号112))を使用した点以外は、実施例1の(2) (iii)と同様である。そして、PCR溶液を、マイクロコン10(ミリポア)を用いた限外濾過により、1×Binding 溶液 (20 mM TrisHCl、pH7.6、0.5 M NaCl、10 mM MgCl2) にバッファ交換し、PCR産物に取り込まれていない未反応のBiotin-dPxTPをPCR溶液から取り除いた。その溶液(約45μl)を、セレクションで使用していたストレプトアビジン磁気ビーズ(40 μl分)と25℃15分間インキュベーションし、Ds-(Biotin-dPx)塩基対を含む二本鎖DNAを磁気ビーズに固定化した。1×Binding 溶液でビーズを洗浄して、Ds-(Biotin-dPx)塩基対を含まないDNA断片を取り除いた後、回収した磁気ビーズに20 mM NaOH溶液を12μl加えて室温で5分間ほど放置することにより、二本鎖DNAを一本鎖DNAとしてDsを含むDNA断片を溶液中に遊離させた。80 mM HCl溶液を3 μl加えて中和した後、磁気スタンドを利用してDNA断片を含む溶液を回収し、実施例1の(3)(i)の手法の鋳型DNAとした。
【0302】
(5)クローニング法によるDNAアプタマー配列の同定
上述のDNA溶液の一部を鋳型として、人工塩基Dsを天然塩基に置き換えるPCRを行い、そのPCR産物を従来法によりクローニングした。具体的には、DNA溶液4 μlを鋳型として、1 μMの各プライマー(5′-ACAATGAAACTTCTGCGTACTCC-3′(配列番号113)及び5′- ACGCATGAACAAACTTGCTTG-3′(配列番号112))の存在下、タカラ社の1×ExTaq pre mixに最終濃度が50 μMとなるようにdPa′TPを加えて、PCR(20 μl容量)を行った。PCRサイクル条件は、(94℃ 30秒―50℃ 30秒―65℃ 2分)×10サイクル→75℃ 5分である。PCR産物の一部(4 μl)をTOPO TA クローニングキット(インビトロジェン)により大腸菌(Top10)にクローニングし、各クローン由来のプラスミドを回収し、各クローンの塩基配列を決定した。決定したクローンの配列のうち、プライマー配列の間が45塩基である59クローンの塩基配列、27種をアライメントした結果を図14に示す。
【0303】
同定された配列の相同性を解析した結果、中央領域中で塩基変異が2カ所から3カ所含む相同配列グループが5種類あり、なかには人工塩基Dsが本クローニング法によって、天然型塩基T又はAに置換されたと推測される塩基変異も確認できた。
【0304】
<実施例6:製造方法により得られたアプタマーにおける人工塩基Dsの位置の同定>
本実施例では、実施例5で得られた5種類のグループからなるアプタマーの配列中に、人工塩基Dsが含まれているか、またその配列中の位置の同定を行った。
【0305】
A.DNAライブラリーからプローブに相補的なDNA断片の単離
5種類のグループ配列にそれぞれ特異的になるようにデザインした24塩基からなるDNA断片のプローブ配列を図14中に示す。これらのプローブは、5′末端をビオチン化標識した化学合成・簡易精製済みのものをインビトロジェン社から購入して使用した。8ラウンド後に得られたDNA断片をdDsTPとDiol1-dPxTPでPCR増幅して調製した一本鎖DNAライブラリーを100 nM/ 1×Binding 溶液となるように調製し、その溶液 130μlをストレプトアビジン磁気ビーズ(50 μl分)と室温で10分間インキュベートすることで、ストレプトアビジンに結合するDNA断片を取り除いた。その後、回収したDNA溶液20μlを各ビオチン化プローブ(5 μM、1μl)と混合した後、アニーリング操作(90℃ 3分- 0.1℃/秒で徐冷-55℃15分)後、1×Binding 溶液に置換したストレプトアビジン磁気ビーズ(5μl分)と混合し、55℃で5分間インキュベートすることでビオチン化プローブ及びプローブに相補的にハイブリダイズしたDNA断片を磁気ビーズに固定化した。磁気スタンドを利用して溶液を取り除き、プローブにハイブリダイズしていない余剰のDNA断片を取り除いた後、磁気ビーズを150μlの1×Binding 溶液で5回洗浄した。そして、洗浄後の磁気ビーズに滅菌水10μl添加し、75℃で5分間加熱した後に溶液を回収することで、各プローブにハイブリダイズしたDNA断片を回収した。
【0306】
B.プローブにより回収したDNA断片のDNAシーケンシング
回収したDNA断片を用いて、以下の3種類(i)〜(iii)の方法によって、DNAシーケンシングを行った。なおシーケンシングの方法は、変更点が明記されている以外は、実施例5の(3)に示した方法と同様にして行った。
【0307】
(i)回収したDNA溶液4 μlを用いて直接0.05 mM dPa′TP存在下でシーケンス
(ii)回収したDNA溶液2 μlを用いてdDsTP、Diol1-dPxTPの存在下、Accuprim Pfx DNAポリメラーゼを用いて15サイクルのPCRで増幅後、ゲル精製により回収した断片を10 μlの水に溶かし、その溶液1-2 μlを用いて0.05 mM dPa′TP存在下、0.05 mM ddPa′TP存在下でシーケンス(回収したDNAが人工塩基Dsを保持していれば、DsはPCR中も保持される)
(iii)回収したDNA溶液2 μlを用いて0.05 mM dPa′TP存在下、ExTaqDNAポリメラーゼを用いて15サイクルのPCRで増幅後、ゲル精製により回収した断片を10μlの水に溶かし、その溶液1〜2μlを用いて0.05 mM dPa′TP存在下、0.05 mM ddPa′TP存在下でシーケンス(回収したDNAが人工塩基Dsを保持していれば、DsはPCR後にA若しくはTに置換される)
なお、(ii)及び(iii)に関しては、人工塩基Ds側のシーケンス(シーケンスプライマーとして、Sequencing Primer 2: 5′-ACAATGAAACTTCTGCGTACTCC-3′(配列番号113)を使用)だけでなく、Pa′基質の非存在下、人工塩基Diol1-Px側のシーケンス(シーケンスプライマーとしてSequencing Primer1:5′- ACGCATGAACAAACTTGCTTG-3′(配列番号112))も行った。(i)〜(iii)のシーケンスパターンから、8ラウンド後のライブラリーから回収したDNAのうち、クローニング法によってアプタマーの配列中でA/Tの塩基変異がみられた箇所は、(A)Dsが完全に保存されているか、(B)一部天然型塩基A若しくはTに置換されてはいるがDsが一定の割合で保持されている、ということが分かった。したがって、本実施例で示した手法によって、ランダムに導入したDsの位置を同定することが可能であった。また、実施例1、実施例3で示したように、Dsの導入位置を予め特定したセレクションの場合でも、次世代シーケンサーの配列解析からDsの導入位置は、ほとんどがA/Tに置換されていた。したがって、本実施例の結果から、次世代シーケンサーによる大量の配列群を解析すれば、中央領域中に組み込まれていて、かつ選択の過程で保存されたDsの位置は、セレクション後に同定可能であり、Dsをランダムな位置に組み込んだDNAをライブラリーに使用した場合でも選択が十分可能であることが確認できた。
【0308】
<実施例7:各種dPnTP誘導体の調製>
実施例1、3、5では、Dsを第5番目の塩基としてセレクションライブラリーに使用したが、Pn塩基はPCRで機能するDsの相補塩基であることから、Pnを第5番目の塩基としてライブラリーを調製し、セレクションすることも可能である。そして、人工塩基Pnのプロピニル基の先に、様々な置換基を導入することも可能である。本実施例では、明細書中に示した各種dPnTP誘導体の調製を示す。
【0309】
(1) 試薬及び溶媒
試薬及び溶媒は、標準的な供給業者から購入し、さらに精製することなく使用した。1H-NMR(300MHz)、31P-NMR(121MHz)、及び13C-NMR (75 MHz)スペクトルは、BRUKER AV300核磁気共鳴スペクトロメーター上に記録した。合成したヌクレオシド誘導体とヌクレオシド5′-三リン酸は、Gilson HPLCシステムで精製を行った。高分解能マススペクトル(HR-MS,FAB)は、JEOL JM 700若しくは、JEOL GC mateスペクトルメーター上に記録した。エレクトロスプレイ-イオン化マススペクトル(MS,ESI)は、Waters2690LCシステムを伴ったWaters ZMD 4000マスシステム若しくはWaters UPLC-MS (H class)システム上に記録した。
【0310】
(2) dPnTPの合成
(2-1) 1-(2-デオキシ-3-O-アセチル-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロールの合成
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロール(200 mg,0.75 mmol)をピリジンで共沸した後、ピリジン(7.5 ml)を加え、4,4′-ジメトキシトリチルクロリド(280 mg,0.83 mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール,200:1,v/v)で精製して1-(2-デオキシ-5-O-ジメトキシトリチル-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロールを365 mg(86%)得た。1-(2-デオキシ-5-O-ジメトキシトリチル-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロール(160 mg,0.28 mmol)をピリジンで共沸した後、ピリジン(2.8 ml)を加え、無水酢酸(53 μl,0.56 mmol)を加えて反応溶液を室温で12時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮しトルエンで共沸した後、塩化メチレン28 mlに溶解させた。この反応溶液にジクロロ酢酸(280 μl)を0℃で加えて15分間、氷冷下で撹拌した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液を反応溶液に加えて分液し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムで精製して1-(2-デオキシ-3-O-アセチル-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロールを78 mg(89%)得た。
【0311】
(2-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロール 5′-三リン酸の合成
1-(2-デオキシ-3-O-アセチル-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロール (31 mg,0.1 mmol)をピリジンで共沸した後、ピリジン (100 μl)とジオキサン(300 μl)を加えた後、2-クロロ-4H-1,3,2-ベンゾジオキサホスホリン-4-オン (110 μl,1Mジオキサン溶液)を加えて10分間室温で撹拌した。トリ-n-ブチルアミン (100 μl)とビス(トリブチルアンモニウム)ピロフォスフェート (300 μl,0.5M DMF溶液)を反応溶液に加えて10分間撹拌した。ヨウ素/ピリジン (2.0 ml,1% ヨウ素のピリジン:水,98:2,v/v溶液)を加えて15分間撹拌後、5% NaHSO3 (150 μl)を加えて反応溶液を濃縮した。水(5.0 ml)を加えて室温で30分撹拌後、28%アンモニア水を20 ml加えて室温で2時間撹拌した。反応溶液を濃縮、凍結乾燥した後、DEAE Sephadex A-25イオン交換カラムクロマトグラフィー(50 mMから1.0 M TEABの直線勾配で溶出)とRP-HPLCで精製し、目的とする1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロール 5′-三リン酸を(31 μmol,31%)得た。
【0312】
(2-3) 化合物の物性値
(2-3-1) 1-(2-デオキシ-3-O-アセチル-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロール
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 7.90 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.30 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.60 (t,1H,J = 6.4 Hz),5.22 (m,2H),4.13 (m,1H),3.65 (m,2H),2.62 (ddd,1H,J = 3.1,6.1,14.3 Hz),2.43 (m,1H),2.08 (s,3H),2.00 (s,3H). HR-MS (FAB,3-NBA matrix) for C14H17N2O6(M+H) calcd. 309.1087,found 309.1066.
(2-3-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-プロピニル-2-ニトロピロール 5′-三リン酸
1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.74 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.35 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.76 (t,1H,J = 6.1 Hz),4.63 (m,1H),4.24 (m,3H),3.21 (q,20H,J = 7.3 Hz),2.64 (ddt,1H,J = 5.2,13.9 Hz),2.49 (ddt,1H,J = 6.2,14.0 Hz),1.99 (s,3H),1.28 (t,29H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.16 (d,1P,J = 19.8 Hz),-10.66 (d,1P,J = 20.0 Hz),-22.58 (t,1P,J = 20.0 Hz). MS(ESI) for C12H17O14N2P3(M-H)- calcd. 504.97,found 504.82 (M-H)-.UV(10 mM sodium phophate buffer,pH 7.0) λmax = 373 nm (ε 9500).
(3) NH2-C1-dPnTPの合成
(3-1)1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-(トリフルオロアセタミド)-1-プロピニル)-2-ニトロピロール (TFA-NH-C1-dPn)の合成
無水酢酸(4.6 ml,33 mmol)の塩化メチレン(30 ml) 溶液を、プロパギルアミン(1.0 ml,15 mmol),塩化メチレン(30 ml),ピリジン (3.7 ml)の溶液に0℃で加えた。反応溶液を室温で12時間攪拌した。生成物を塩化メチレンと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を5%炭酸水素ナトリウムで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を減圧下で濃縮した後、TFA-NHリンカーを得た(925 mg)。TFA-NH-linker (227 mg,1.5 mmol)を1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール (354 mg,1.0 mmol),CuI (30 mg,0.16 mmol),Pd(PPh34(58 mg,0.05 mmol),TEA (209 μl,1.5 mmol)のDMF(5.0 ml)溶液に加えた。反応溶液を室温で12時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。TFA-NH-C1-dPn (330 mg ,88%)はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%のメタノール/塩化メチレン溶液で溶出)ならびにRP-HPLC(35-50% CH3CN in H2O,12 min)で精製して得た。
【0313】
(3-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-アミノ-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (NH2-C1-dPnTP)の合成
TFA-NH-C1-dPnヌクレオシド(75 mg,0.2 mmol)をピリジン、トルエンで共沸乾燥した後、proton sponge(66 mg,0.3 mmol)を加えて(CH3O)3PO(1.0 ml)に溶解した。POCl3 (26 μl,0.26 mmol)を加えて0℃で1時間攪拌した。反応溶液にtri-n-butylamine(240 μl)と ピロリン酸ビス(トリ-n-ブチルアンモニウム)(2.0 ml,0.5 M DMF solution)を加えて30分攪拌後、0.5M 炭酸トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB)(1ml)と水(10 ml)を加えた。反応溶液を室温で1時間攪拌した後、反応溶液を凍結乾燥した。残渣にH2O(10 ml)を加えた後、28% NH4OH(40 ml)を加えて室温で1時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、NH2-C1-dPnTP(54 μmol,27%)は、DEAE sephadex A-25 イオン交換カラムクロマトグラフィー(eluted with 50 mM to 1.0 M TEAB linear gradient)とRP-HPLC (28% CH3CN in 100 mM TEAA,15 min)で精製して得た。
【0314】
(3-3) 化合物の物性値
(3-3-1) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[3-(トリフルオロアセタミド)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール (TFA-NH-C1-dPn)
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ10.04 (s,1H),7.98 (s,1H),7.34 (s,1H),6.54 (t,1H,J = 5.5 Hz),5.27 (d,1H,J = 4.4 Hz),5.10 (t,1H,J = 4.9 Hz),4.22 (bs,3H),3.84 (m,1H),3.67-3.54 (m,2H),2.44 (m,1H),2.26 (m,1H). HRMS (FAB,3-NBA matrix) for C14H15F3N3O6(M+H)calcd. 378.0913,found 378.0882.
(3-3-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-アミノ-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (NH2-C1-dPnTP)
1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.96 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.32 (d,1H,J = 2.2 Hz),6.67 (t,1H,J = 6.4 Hz),4.55 (m,1H),4.24-4.12 (m,3H),3.91 (s,2H),3.11 (q,16H,J = 7.3 Hz),2.58 (dt,1H,J = 6.3 and13.8 Hz),2.41 (ddd,1H,J = 1.6,4.8,and 14.0 Hz),1.19 (t,24H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -8.51 (bs,1P),-10.70 (d,1P,J = 19.4 Hz),-22.19 (t,1P,J = 19.9 Hz). MS(ESI) for C12H18O14N3P3(M-H)-calcd. 520.20,found,520.24.UV(10 mM sodium phophate buffer,pH 7.0) λmax = 364 nm (ε 10,600).
(4) NH2-C3-dPnTPの合成
(4-1) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-トリフルオロアセタミド-1-ペンチニル]-2-ニトロピロールの合成
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール (373 mg,1.05 mmol) のDMF溶液(5.3 ml) にヨウ化銅(I) (32 mg,168 μmol) 及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(61 mg,53 μmol) を加え、さらにトリエチルアミン (220μl,1.6 mmol) を加えて、アルゴン雰囲気下、室温で攪拌した。5-トリフルロアセタミド-1-ペンチン1) (283 mg,1.6 mmol) のDMF溶液 (3.0 ml) をこの溶液に滴下し、室温で19時間攪拌した。減圧下で濃縮した後に、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=100:0→90:10)及びC18-HPLCにより精製し、目的物(355 mg,収率83%)を得た。
【0315】
(4-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-アミノ-1-ペンチニル]-2-ニトロピロール5′-三リン酸(NH2-C3-dPnTP) の合成
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(5-トリフルオロアセタミド-1-ペンチニル)-2-ニトロピロール(101 mg, 250 μmol) を、無水ピリジンで2回、無水トルエンで2回共沸させた。残渣とProton sponge (80 mg, 375 μmol) をリン酸トリメチル (1.25 ml) に溶解させ、オキシ塩化リン(30 μl, 325μmol)を加えて0 ℃で1時間攪拌した後に、トリ-n-ブチルアミン (300μl, 1.25 mmol) 及びピロリン酸ビス(トリ-n-ブチルアンモニウム)の 0.5 M DMF 溶液 (2.5 ml) を加えて30分間攪拌した。これに0.5M 炭酸トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB)(1.25ml)を加えて反応を停止させ、水(12.5 ml)を加えて室温で1時間攪拌した。この溶液に濃アンモニア水(50 ml)を加えて、室温で1時間攪拌した。溶液を減圧濃縮後、残渣をポリスチレンカラムクロマトグラフィー(1.5 x 20 cm,0-15% アセトニトリルの50 mM TEAB溶液)及びDEAE Sephadex A-25カラムクロマトグラフィー (1.5 x 30 cm,濃度直線勾配;TEABの50 mM―0.8 M溶液) にて精製を行った。DEAE精製後に得られたNH2-C3-dPnTPの一部(合成量の3/5)を、C8-HPLC (SensyuPak, 濃度勾配;2.5%―50% アセトニトリルの100 mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液 (pH 7.0))にて精製(37.8 μmol)した。
【0316】
(4-3) 化合物の物性値
(4-3-1) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-トリフルオロアセタミド-1-ペンチニル]-2-ニトロピロール
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 9.47 (brs,1H),7.91 (d,1H,J = 2.2 Hz),7.27 (d,1H,J = 2.2 Hz),6.55 (t,1H,J = 5.7 Hz),5.29 (d,1H,J = 4.5 Hz),5.10 (t,1H,J = 5.2 Hz),4.24 (m,1H),3.85 (dt,1H,J = 4.1,3.9 Hz),3.66 (ddd,1H,J = 12.1,5.2,3.7 Hz),3.57 (ddd,1H,J = 12.1,4.9,4.8 Hz),3.29(m,2H),2.48-2.39 (m,1H),2.42(t,2H,J = 7.0 Hz),2.23 (ddd,1H,J = 13.4,5.8,5.7 Hz),1.73 (m,2H). HRMS (FAB,3-NBA matrix) for C16H19F3N3O6 (M + H) calcd. 406.1226,found 406.1225.
(4-3-2)1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-アミノ-1-ペンチニル]-2-ニトロピロール5′-三リン酸(NH2-C3-dPnTP)。1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.87 (d,1H,J = 1.6 Hz),7.25 (d,1H,J = 2.0 Hz),6.68 (t,1H,J = 5.8 Hz),4.56 (m,1H),4.24-4.13 (m,3H),3.11 (q,J = 7.3 Hz,the signals of NH2CH2- were superimposed),2.65-2.36 (m,4H),1.85 (m,2H),1.19 (t,22H,J = 7.4 Hz).31P NMR (121 MHz,D2O) δ -9.15 (1P),-11.13 (d,1P,J = 19.4 Hz),-22.61 (t, 1P,J = 20.0 Hz). MS (ESI) for C14H21N3O14P3(M-H)-calcd. 548.02,found 548.09. UV (10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax = 374 nm (ε 10,600).
(5) Diol3o3-dPnTPの合成
(5-1) 5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジアセテート (Di(OAc)3o3 linker)の合成
4-pentyne-1-ol(4.65 ml,50 mmol)、5-bromo-1-pentene(17.8 ml,150 mmol)、KOH (12.6 g,225 mmol)のベンゼン(50 ml)溶液を12時間加熱還流した。ろ過後、反応溶液を酢酸エチルと10%塩化アンモニウム水溶液で分液した。有機層を10%塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。5-(4-ペンチニルオキシ)-1-ペンテン(6.5g)はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10% EtOAcのヘキサン溶液で溶出)で粗製精した。OsO4 (543 mg,2.0 mmol)を 5-(4-ペンチニルオキシ)-1-ペンテン (6.5 g)と N-メチルモルホリン-N-オキシド(10.0 g,85.4 mmol)のアセトン/H2O/tBuOH (4:1:1,214 ml)溶液に加えて室温で1時間攪拌した。NaHSO3 (1.5 g)を加えた後、生成した沈殿をろ過して除き、メタノールで洗浄してロ液を減圧下で濃縮した。生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で粗精製して5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジオール(2.9 g)を得た。5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジオール(2.9 g)をピリジンで共沸乾燥した後、ピリジン(78 ml)を加えて、無水酢酸(5.9 ml,62.4 mmol)を加えた。反応溶液を室温で9時間攪拌し、生成物を酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジアセテート (Di(OAc)3o3 linker)(3.27g,24% 3 steps) は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20 % ヘキサンの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して得た。
【0317】
(5-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジアセテート)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール (Di(OAc)3o3-dPn)の合成
Di(OAc)3o3 linker(180 mg,0.7 mmol)を1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール (177 mg,0.5 mmol)、CuI(19 mg,0.1 mmol)、Pd(PPh34(29 mg,0.025 mmol)、TEA(104 μl,0.75 mmol)のDMF(2.5 ml)溶液に加えた。反応溶液を室温で13時間攪拌し、減圧下で濃縮した。生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)とRP-HPLC (50-55% アセトニトリルの水溶液を直線勾配10分間で溶出)で精製してDi(OAc)3o3-dPn(60mg、24%)を得た。
【0318】
(5-3) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)- 4-[5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジオール)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (Diol3o3-dPnTP)の合成
Di(OAc)3o3-dPn ヌクレオシド(50 mg,0.1 mmol)をピリジンならびにトルエンにより共沸乾燥した。proton sponge (33 mg,0.15 mmol)を加えて(CH3O)3PO(500 μl)に溶解した。POCl3 (13 μl,0.13 mmol)をこの溶液に0℃で加えて1.5時間攪拌した。トリ-n-ブチルアミン (120 μl)とビス-トリ-n-ブチルアンモニウム ピロフォスフェート(1.0 ml,0.5 M DMF solution)を反応溶液に加えて30分攪拌した。500 μl の0.5 M 炭酸トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB)と水(5.0 ml)を反応溶液に加え、0℃で30分攪拌した。凍結乾燥後、残渣にH2O(2.0 ml)加え、28% NH4OH(20 ml)を加えて室温で1時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、生成物は DEAE sephadex A-25イオン交換クロマトグラフィー(50 mM - 1.0 M TEAB 直線勾配で溶出)ならびにRP-HPLC (5-50% アセトニトリルの100 mM TEAA溶液で12分で溶出)で精製してDiol3o3-dPnTP(18 μmol 、18%)を得た。
(5-4) 化合物の物性値
(5-4-1) 5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジアセテート (Di(OAc)3o3 linker)
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 4.96 (m,1H),4.16 (dd,1H,J = 3.3,12.0 Hz),4.01 (dd,1H,J = 6.4,11.9 Hz),3.39 (t,2H,J = 6.4 Hz),3.33 (t,2H,J = 6.2 Hz),2.74 (t,1H,J = 2.7 Hz),2.18 (dt,2H,J = 2.6,7.2 Hz),1.66-1.45 (m,6H). HR-MS (FAB,NBA matrix) for C14H23O5(M+H) calcd. 271.1545,found 271.1592.
(5-4-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジアセテート)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール (Di(OAc)3o3-dPn)
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6)δ 7.91 (d,1H,J = 2.2 Hz),7.28 (d,1H,J = 2.2 Hz),6.55 (t,1H,J = 5.7 Hz),5.29 (d,1H,J = 4.5 Hz),5.10 (t,1H,J = 5.2 Hz),4.97 (m,1H),4.24 (m,1H),4.16 (dd,1H,J = 3.3,12.0 Hz),4.01 (dd,1H,J = 6.5,11.9 Hz),3.85 (m,1H),3.70-3.53 (m,2H),3.44 (t,2H,J = 6.2 Hz),3.36 (t,2H,J = 6.1 Hz),2.45-2.39 (m,3H),2.28-2.19 (m,2H),2.01,2.00 (s,s,3H,3H),1.76 -1.47 (m,6H). HR-MS (FAB,NBA matrix) for C23H33N2O10(M+H)calcd. 497.2135,found 497.2110.
(5-4-3) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)- 4-[5-(4-ペンチニルオキシ)ペンタン-1,2-ジオール)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (Diol3o3-dPnTP)
1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.73 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.37 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.76 (t,1H,J = 6.1 Hz),4.62 (m,1H),4.26-4.20 (m,3H),3.72-3.42 (m,7H),3.20 (q,22H,J = 7.3 Hz),2.64 (m,1H),2.53-2.44 (m,3H),1.89-1.41 (m,6H),1.28 (t,32H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.07 (d,1P,J = 19.7 Hz),-10.63 (d,1P,J = 20.1 Hz),-22.55 (t,1P,J = 20.0 Hz). MS(ESI) for C19H30N2O17P3(M-H)-calcd. 651.37,found 651.39. UV (10 mM sodium phosphate buffer pH 7.0) λmax = 374 nm (ε 9,200).
(6) Diox6-dPnTPの合成
(6-1) 2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン (Diox6 リンカー)の合成
8-ブロモ-1-オクテン (839 μl,5.0 mmol)をlithiumacetylide etylenediamine complex(563 mg,5.5 mmol)のDMSO(25 ml)溶液に加えた。反応溶液を10℃で2時間攪拌した。生成物は、エーテルと水で分液した後、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(25%ヘキサンの塩化メチレン溶液で溶出)で粗製精してdec-1-en-9-yne(457mg、67%)を得た。OsO4(42 mg,0.17 mmol) をdec-1-en-9-yne (450 mg)ならびにN-メチルモルホリン-N-オキシド(775 mg,6.6 mmol)のアセトン/H2O/tBuOH(4:1:1,16.5 ml)溶液に加えて室温で30分攪拌した。反応溶液に115 mgの NaHSO3を加えた後、生成した沈殿をろ過で除いた。沈殿をメタノールで洗浄し、ロ液を集めて減圧下で濃縮した。生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)により粗製精してdec-9-yne-1,2-diolを得た。dec-9-yne-1,2-diolの アセトン/H2O (7:3,33 ml)溶液に NaIO4(1 0 mg,4.8 mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮して、310 mgのnon-8-ynal (68%,2段階収率)を得た。non-8-ynal(310 mg)とp-トルエンスルホン酸一水和物(42 mg,0.22 mmol)、エチレングリコール(279 mg,4.5 mmol)のベンゼン(11 ml)溶液を2時間加熱還流した。反応溶液を減圧下で濃縮し、生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレンで溶出)で精製して2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン(310 mg、76%)を得た。
【0319】
(6-2) 4-(2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール(Diox-C6CC-dPn)の合成
2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン(137mg,0.37 mmol)を1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール(177 mg,0.5 mmol)、CuI (15 mg,0.08 mmol)、Pd(PPh34 (29 mg,0.025 mmol)、TEA (105 μl,0.75 mmol)のDMF(2.5 ml)溶液に加えて室温で12時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)ならびに C18 RP-HPLC(54%-55%アセトニトリル水溶液)で精製して4-(2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール(Dio-C6CC-dPn)を180mg(88%の収率)得た。
【0320】
(6-3) 4-(2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (Diox6-dPnTP)の合成
4-(2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール(82 mg,0.2 mmol)をピリジンならびにトルエンで共沸乾燥した後、proton sponge (66 mg,0.3 mmol)と(CH3O)3PO(1.0 ml)を加えた。この溶液に、POCl3 (26 μl,0.26 mmol)を加えて0℃で1.5時間攪拌した。この反応溶液に、トリ-n-ブチルアミン(240 μl)と ビス-トリ-n-ブチルアンモニウム ピロフォスフェート(2.0 ml,0.5 M DMF溶液)を加えて30分攪拌した。1 ml の0.5 M 炭酸トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB)と水(10 ml)を反応溶液に加えて0°C で30分攪拌した。生成物は、DEAE sephadex A-25イオン交換カラムクロマトグラフィー(50 mM―1.0 M TEAB直線勾配で溶出)ならびにRP-HPLCで精製して4-(2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (Diox6-dPnTP)(収量29 μmol)を得た。
【0321】
(6-4) 化合物の物性値
(6-4-1) 2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン (Diox6―リンカー)
1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 4.86 (t,1H,J = 4.8 Hz),3.99-3.86 (m,4H),2.20 (dt,2H,J = 2.6,7.1 Hz),1.95 (t,1H,J = 2.7 Hz),1.66 (m,2H),1.58-1.39 (m,8H).HR-MS (FAB,NBA matrix) for C11H19O2(M+H)calcd. 183.1385,found 183.1579.
(6-4-2) 4-(2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール (Diox6-dPn)
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 7.90 (d,1H,J = 2.2 Hz),6.27 (d,1H,J = 5.8 Hz),5.28 (d,1H,J = 4.5 Hz),5.10 (t,1H,J = 5.2 Hz),4.75 (t,1H,J = 4.8 Hz),4.24 (m,1H),3.88-3.53 (m,7H),2.43 (m,1H),2.36 (t,2H,J = 7.1 Hz),2.23 (m,1H),1.56-1.34 (m,10H).HR-MS (FAB,NBA matrix) for C20H29O7N2(M+H) calcd. 409.1975,found 409.1979.
(6-4-3) 4-(2-(7-オクチニル)-1,3-ジオキソラン)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (Diox6-dPnTP)
1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.72 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.37 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.77 (t,1H,J = 6.1 Hz),4.93 (t,1H,J = 5.0 Hz),4.63 (m,1H),4.27-4.18 (m,3H),4.08-3.87 (m,4H),3.21 (q,19H,J = 7.3 Hz),2.65 (dt,1H,J = 6.1 Hz),2.48 (dt,1H,J = 6.2 Hz),2.40 (t,2H,J = 7.0 Hz),1.69 (m,2H),1.59 (m,2H),1.50-1.42 (m,6H),1.29 (t,28H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.23 (d,1P,J = 19.6 Hz),-10.63 (d,1P,J = 19.7 Hz),-22.59 (t,1P,J = 19.8 Hz). MS(ESI) for C20H31N2O16P3(M-H)-calcd. 647.09,found 647.14.UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax = 373 nm (ε 9900).
(7) Diol6-dPnTPの合成
(7-1) 9-デシン-1,2-ジイル ジアセテートの合成
8-ブロモ-1-オクテン(839 μl,5.0 mmol)をlithiumacetylide etylenediamine complex (563 mg,5.5 mmol)のDMSO(5 ml)溶液に加えて10℃で2時間攪拌した。反応溶液をエーテルと水で分液し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンで溶出)で精製してdec-1-en-9-yne(633 mg、93%)を得た。OsO4 (58 mg,0.23 mmol)をdec-1-en-9-yne(630 mg)、N-メチルモルホリン-N-オキシド(1.08 g,9.2 mmol)のアセトン/H2O/tBuOH (4:1:1,23 ml)溶液に加えて室温で1時間攪拌した。160 mgのNaHSO3 を加えた後、生成した沈殿を濾過で除いた。沈殿をメタノールで洗浄後、ロ液を集めて減圧下で濃縮した。生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製してdec-9-yne-1,2-diol(494 mg)を得た。dec-9-yne-1,2-diol(494 mg)をピリジンで共沸した後、ピリジン(10 ml)を加えた。無水酢酸(2.17 ml,23 mmol)を加えて、室温で13時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウムで分液し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して、9-デシン-1,2-ジイル ジアセテート(414 mg、35%,2段階収率)を得た。
【0322】
(7-2) 4-(9-デシン-1,2-ジイル ジアセテート)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール (Di-OAc-6-dPn)の合成
9-デシン-1,2-ジイル ジアセテート(381 mg,1.5 mmol)を1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール(354 mg,1.0 mmol)、CuI(38 mg,0.2 mmol)、Pd(PPh34 (58 mg,0.05 mmol)、TEA(208 μl,1.5 mmol)のDMF (5.0 ml)溶液に加えて室温で20時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルと水で分液し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(3%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)ならびにRP-HPLC (55%アセトニトリル水溶液)で精製して、4-(9-デシン-1,2-ジイル ジアセテート)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール (Di-OAc-6-dPn) を500 mg(99%の収率)得た。
【0323】
(7-3) 4-(9-デシン-1,2-ジオール)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (Diol6-dPnTP)の合成
4-(9-デシン-1,2-ジイル ジアセテート)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール (48 mg,0.1 mmol)をピリジンとトルエンで共沸乾燥した後、proton sponge(33 mg,0.15 mmol)と(CH3O)3PO(500 μl)を加えた。この溶液に、POCl3 (13 μl,0.13 mmol)を0℃で加えて、1.5時間攪拌した。トリ-n-ブチルアミン(120 μl)とビス-トリ-n-ブチルアンモニウム ピロフォスフェート(1.0 ml,0.5 M DMF solution)を加えて30分攪拌した後、500 μl の0.5 M 炭酸トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB)と水(5.0 ml)を加えて0℃で30分攪拌した。凍結乾燥後、H2O (2.0 ml)と28% NH4OH(20 ml)を加えて室温で1時間攪拌した。減圧下で濃縮後、生成物は、DEAEsephadex A-25 イオン交換カラムクロマトグラフィー(50 mM ― 1.0 M TEAB 直線勾配で溶出)ならびに RP-HPLC (5-50%アセトニトリルの100 mM TEAA,12分)で精製して4-(9-デシン-1,2-ジオール)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (Diol6-dPnTP)を18 μmol(18%の収率)得た。
【0324】
(7-4)化合物の物性値
(7-4-1) 9-デシン-1,2-ジイル ジアセテート 1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 4.94 (m,1H),4.07 (ddd,2H,J = 3.2,6.5,48.3 Hz),2.72 (t,1H,J = 2.7 Hz),2.13 (dt,2H,J = 2.6,6.8 Hz),2.00 (s,3H9,1.99 (s,3H),1.52-1.25 (m,10H).HR-MS (FAB,NBA matrix) for C14H23O4(M+H) calcd. 255.1596,found 255.1605.
(7-4-2) 4-(9-デシン-1,2-ジイル ジアセテート)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール (Di-OAc-6-dPn) 1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 7.89 (d,1H,J = 2.2 Hz),7.26 (d,1H,J = 2.2 Hz),6.54 (t,1H,J = 5.8 Hz),5.27 (d,1H,J = 4.5 Hz),5.09 (t,1H,J = 5.2 Hz),4.94 (m,1H),4.23 (m,1H),4.07 (ddd,2H,J = 3.2,6.5,48.8 Hz),3.83 (m,1H),3.68-3.52 (m,2H),2.42 (m,1H),2.35 (t,2H,J = 7.1 Hz),2.22 (m,1H),2.00 (s,3H),1.99 (s,3H),1.52-1.28 (m,10H).HR-MS (FAB,NBA matrix) for C23H33O9N2(M+H) calcd. 481.2186,found 481.2206.
(7-4-3) 4-(9-デシン-1,2-ジオール)-1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (Diol6-dPnTP) 1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.72 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.35 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.76 (t,1H,J = 6.1 Hz),4.62 (m,1H),4.26-4.20 (m,3H),3.70 (m,1H),3.59 (dd,1H,J = 3.8,11.6 Hz),3.46 (dd,1H,J = 6.9,11.6 Hz),3.20 (q,20H,J = 7.3 Hz),2.64 (dt,1H,J = 6.2,13.0 Hz),2.47 (dt,1H,J = 6.2,14.0 Hz),2.40 (t,2H,J = 7.0 Hz),1.60-1.25 (m,10H),1.28 (t,30H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.20 (d,1P,J = 19.9 Hz),-10.64 (d,1P,J = 20.1 Hz),-22.59 (t,1P,J = 20.0 Hz).MS(ESI) for C19H31N2O16P3(M-H)- calcd. 635.08,found. 635.08.UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax = 374 nm (ε 9400).
(8) COOH-C1-dPnTPの合成
(8-1)1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-カルボキシプロパナミド-1-プロピニル)-2-ニトロピロール5′-三リン酸(COOH-C1-dPnTP)の合成
NH2-C1-dPnTP (10 μmol) の200 mM TEAA (pH 7.0,500 μL)溶液に無水コハク酸(4 mg,40 μmol)のDMSO(500 μL)溶液を加えて、室温で一時間静置した。凍結乾燥後HPLC(100mM 酢酸トリエチルアンモニウム中の0%ないし30%アセトニトリルの直線勾配を10分間かけることによって溶出した。)で精製して1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-カルボキシプロパナミド-1-プロピニル)-2-ニトロピロール5′-三リン酸(COOH-C1-dPnTP)を8.4 μmol(84%の収率)得た。
【0325】
(8-2) 化合物の物性値
(COOH-C1-dPnTP) 1H-NMR (300 MHz,D2O) δ (ppm) 7.73 (1H,d,J = 2.0 Hz),7.36 (d,1H,J = 2.0 Hz),6.70 (t,1H,J = 5.9 and 6.3 Hz),4.59-4.54 (m,1H),4.21-4.15 (m,3H),4.10 (s,2H),3.15 (q,24H,J = 7.3 Hz),2.64-2.55 (m,1H),2.48-2.39 (m,5H),1.23 (t,36H,J = 7.3 Hz). 31P-NMR (121 MHz,D2O) δ (ppm) -10.66 (d,1P,J = 19.6 Hz),-11.27 (d,1P,J = 19.9 Hz),-23.16 (t,1P,J = 19.8 and 20.1 Hz). MS(ESI) for C16H21O17N3P3(M-H)-calcd. 620.01,found 619.91.UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax 365 nm (ε9800).
(9) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-(2-ピリジルジチオ)プロパナミド-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (PDP-C1-dPnTP)の合成
(9-1)PDP-C1-dPnTPの合成
NH2-C1-dPnTP (20 μmol) の 0.1 M NaHCO3-Na2CO3バッファー溶液 (pH 8.5,600 μl)に スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート (PDP-SE,Invitrogen) (12.5 mg,40 μmol)のDMF (300 μl)溶液を加えて室温で3時間攪拌した。反応溶液に28%アンモニア水を1ml加えて反応を停止して、凍結乾燥した。生成物はDEAE Sephadex A-25 イオン交換カラムクロマトグラフィー (1.5 cm x 30 cm,50 mM ―1.0 M TEAB 直線勾配で溶出) 及び C18 HPLCで精製して 3.8 μmol のPDP-dPnTP (19%)を得た。
【0326】
(9-2) 化合物の物性値
PDP-C1-dPnTP: 1H NMR (300 MHz,D2O) δ 8.38 (m,1H),7.89-7.83 (m,2H),7.80 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.38 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.29 (m,1H),6.75 (t,1H,J = 6.0 Hz),4.62 (m,1H),4.23 (m,3H),4.08 (s,2H),3.21 (q,19H,J = 7.3 Hz),3.12 (t,2H,J = 6.7 Hz),2.69 (t,2H,J = 6.6 Hz),2.62 (m,1H),2.49 (m,1H),1.29 (t,30H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.02 (d,1P,J = 19.9 Hz),-10.68 (d,1P,J = 20.0 Hz),-22.48 (t,1P,J = 19.9 Hz). MS(ESI) for C20H24N4O15P3S2(M-H)- calcd.717.00,found 717.08. UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax 285 nm (ε 7600),365 nm (ε 10700).
(10) アミノ酸結合-C1-dPnTP (a.a.-C1-dPnTP)の合成
(10-1) Fmoc-アミノ酸スクシンイミドエステル(Fmoc-a.a.-SE)の合成
エフモック-L-アミノ酸(0.5 mmol),1-ヒドロキシスクシンイミド(0.6 mmol),N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミドハイドロクロリド(0.6 mmol)のDMF(1ml)溶液を室温で1時間撹拌した。反応溶液を水30mlに加えて生じた沈殿をろ過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥した。Fmoc-His(Fmoc)-SE、Fmoc-Ser(OTBDMS)-SE、ならびにFmoc-Lys (Fmoc)-SEは、反応後酢酸エチルと水で分液し、有機相を水で2回洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%メタノールの塩化メチレン溶液で溶出)で精製して得た。 Fmoc-Phe-SE (195 mg,81%),Fmoc-Tyr-SE (216 mg,86%),Fmoc-Trp-SE (219 mg,84%),Fmoc-His(Fmoc)-SE (200 mg,57%),Fmoc-Ser(TBDMS)-SE (222 mg,82%)、 Fmoc-Lys (Fmoc)-SE (278 mg、81%).
(10-2) アミノ酸結合-C1-dPnTP(a.a.-C1-dPnTP)の合成
(10-2-1)Phe-,Tyr-,及び Trp-C1-dPnTP:
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-アミノ-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸 (19 μmol)のDMF(1 ml)溶液にFmoc-アミノ酸スクシンイミドエステル(Fmoc-a.a.-SE)(29 μmol)のDMF(1 ml)溶液を加えて室温で12時間静置した。反応溶液にピペリジン(100 μl)を加えて室温で3分間撹拌した。反応溶液に水(2 ml)を加えた後、酢酸エチル(4ml)で3回洗浄した。水相に水(10 ml)と2M TEAB(100 μl)を加えて凍結乾燥した。DEAE Sephadex A-25 column (50 mM ないし 1 M TEAB 直線勾配で溶出)で精製した後、HPLCで精製して1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-(L-チロシナミド)-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸(Tyr-C1-dPnTP,11.3 μmol,収率59%,HPLC: 100 mMトリエチルアミン酢酸バッファー中0ないし40%アセトニトリルの直線勾配を15分間かけて溶出),1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-(L-トリプトファナミド)-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸(Trp-C1-dPnTP、12.1 μmol,収率64%,HPLC: 100 mMトリエチルアミン酢酸バッファー中10ないし50%アセトニトリルの直線勾配を10分間かけて溶出),1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-(L-フェニルアラニナミド)-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸(Phe-C1-dPnTP、11.4 μmol,収率60%,HPLC: 100 mMトリエチルアミン酢酸バッファー中0ないし50%アセトニトリルの直線勾配を10分間かけて溶出)を得た。
【0327】
(10-2-2)His-,Ser-C1-dPnTP:
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-アミノ-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸(19 μmol)のDMF(1 ml)溶液にエフモックアミノ酸スクシンイミドエステル(Fmoc-a.a.-SE)(29 μmol)のDMF(1 ml)溶液を加えて室温で24時間撹拌した。水を8ml加えて酢酸エチル4mlで一回洗浄した。水相に含まれるFmoc基を含む三リン酸をHPLCにより精製後(ヒスチジン:100 mMトリエチルアミン酢酸バッファー中20ないし50%アセトニトリルの直線勾配を10分間かけて溶出,セリン:100 mMトリエチルアミン酢酸バッファー中30%アセトニトリルを10分間かけて溶出)凍結乾燥した。残渣をDMF(2.0ml)に溶解し、ピペリジン(100 μl)で室温下5分間処理した。H2O(4.0ml)を加えた後、酢酸エチル(4ml)で3回洗浄した。水相にH2O(4 ml)と2 M TEAB(100 μl)を加えて凍結乾燥した。DEAE Sephadex A-25 column (50 mM ないし 1 M TEAB 直線勾配で溶出)で精製した後、HPLCで精製して1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-(L-ヒスチジナミド)-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸(His-C1-dPnTP、 8.8 μmol,収率46%,HPLC: 100 mMトリエチルアミン酢酸バッファー中0ないし40%アセトニトリルの直線勾配を15分間かけて溶出)ならびに1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(3-(L-セリナミド)-1-プロピニル)-2-ニトロピロール 5′-三リン酸(Ser-C1-dPnTP、10.3 μmol,収率54%,HPLC: 100 mMトリエチルアミン酢酸バッファー中0ないし30%アセトニトリルの直線勾配を13分間かけて溶出)を得た。
【0328】
(10-3) 化合物の物性値
(10-3-1) エフモックアミノ酸スクシンイミドエステル(Fmoc-a.a.-SE)
Fmoc-Phe-SE: 1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 8.24 (d,1H,J = 8.5 Hz),7.88 (d,2H,J = 7.5 Hz),7.62 (dd,2H,J = 2.9 and 7.4 Hz),7.43-7.21 (m,9H),4.73-4.65 (m,1H),7.29-4.14 (m,3H),3.25 (dd,1H,J = 4.3 and 13.8 Hz),3.05 (dd,1H,J = 11.0 and 13.8 Hz),2.84 (s,4H). Fmoc-Tyr-SE: 1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 9.23 (s,1H),8.19 (d,1H,J = 8.5 Hz),7.89 (d,2H,J = 7.5 Hz),7.65-7.60 (m,2H),7.44-7.39 (m,2H),7.34-7.27 (m,2H),7.14 (d,2H,J = 8.4 Hz),7.68 (d,2H,J = 8.5 Hz),4.61-4.53 (m,1H),4.26-4.15 (m,3H),3.12 (dd,1H,J = 4.3 and 13.8 Hz),2.92 (dd,1H,J = 10.7 and 13.8 Hz),2.83 (s,4H). Fmoc-Trp-SE: 1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ10.95 (s,1H),8.24 (d,1H,J = 8.2 Hz),7.88 (d,2H,J = 7.6 Hz),7.65-7.57 (m,3H),7.44-7.24 (m,6H),7.10 (t,1H,J = 7.9 Hz),7.01 (t,1H,J = 7.5 Hz),4.70-4.63 (m,1H),4.29-4.18 (m,3H),3.39 (m,1H),3.21 (m,1H),2.84 (s,4H). Fmoc-Ser(OTBDMS)-SE: 1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 8.11 (d,1H,J = 8.5 Hz),7.90 (d,2H,J = 7.5 Hz),7.72 (t,2H,J = 6.6 Hz),7.42 (t,2H,J = 7.4 Hz),7.32 (dt,2H,J = 1.0 and 7.4 Hz),4.63-4.56 (m,1H),4.35-4.22 (m,3H),4.00-3.88 (m,2H),2.81 (s,4H),0.86 (s,9H),0.07 (s,3H),0.06 (s,3H). Fmoc-His(Fmoc)-SE: 1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 8.14 (m,2H),7.95-7.86 (m,4H),7.7 (dd,2H,J = 3.0,7.3 Hz),7.62 (d,2H,J = 7.4 Hz),7.46-7.25 (m,9H),4.84-4.76 (m,1H),4.69 (d,2H,J = 6.7 Hz),4.43 (t,1H,J = 6.7 Hz),4.30 (d,2H,J = 7.0 Hz),4.20 (t,1H,J = 7.3 Hz),3.15-3.00 (m,2H),2.81 (s,4H). Fmoc-Lys(Fmoc)-SE:1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 8.10(d,1H,J = 7.8 Hz),7.89 (d,4H,J = 7.5 Hz),7.70 (m,4H),7.41 (t,4H,J = 7.4 Hz),7.35‐7.26 (m,5H),4.44‐4.18 (m,7H),2.98 (m,2H),2.80 (s,4H),1.81 (m,2H),1.42 (m,4H).
(10-3-2)アミノ酸結合-C1-dPnTP(a.a.-C1-dPnTP)
(10-3-2-1)Phe-C1-dPnTP: 1H-NMR (300 MHz,D2O) δ 7.83 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.32-7.20 (m,6H),7.66 (dd,1H,J = 4.7,6.3 Hz),4.54 (m,1H),4.22-4.11 (m,4H),4.07 (d,1H,J = 17.7 Hz),3.78 (d,1H,J = 17.7 Hz),3.11 (q and m,15H,2H,J = 7.3 Hz),2.56 (m,1H),2.40 (m,1H),1.19 (t,23H,J = 7.3 Hz). 31P-NMR (121 MHz,D2O) δ -8.37 (bs,1P),-10.67 (d,1P,J = 20.1 Hz),-22.01 (t,1P,J = 20.1 Hz). MS(ESI) for C21H27O15N4P3(M-H)-calcd. 667.06,found 666.66. UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax 368 nm (ε9540).
(10-3-2-2)Tyr-C1-dPnTP: 1H-NMR (300 MHz,D2O) δ 7.81 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.27 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.08 (d,2H,J = 8.5 Hz),6.75 (d,2H,J = 8.6 Hz),6.67 (dd,1H,J = 4.8,6.2 Hz),4.53 (m,1H),4.21-4.09 (m,4H),4.04 (d,1H,J = 17.6 Hz),3.85 (d,1H,J = 17.7 Hz),3.11 (q and m,13H,1H,J = 7.3 Hz),2.94 (m,1H),2.56 (m,1H),2.40 (m,1H),1.19 (t,20H,J = 7.3 Hz). 31P-NMR (121 MHz,D2O) δ -9.11 (bs,1P),-10.71 (d,1P,J = 19.8 Hz),-22.22 (t,1P,J = 19.9 Hz). MS(ESI) for C21H27O16N4P3(M-H)-calcd. 683.06,found,682.80. UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax 282 nm (ε3400),368 nm (ε 9760).
(10-3-2-3)Trp-C1-dPnTP: 1H-NMR (300 MHz,D2O) δ 7.79 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.53 (d,1H,J = 7.6 Hz),7.38 (d,1H,J = 7.9 Hz),7.27 (s,1H),7.21 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.16-7.04 (m,2H),6.66 (dd,1H,J = 4.5,6.3 Hz),3.54 (m,1H),4.23-4.10 (m,4H),3.95 (d,1H,J = 17.7 Hz),3.68 (d,1H,J = 17.6 Hz),3.39-3.19 (m,2H),3.11 (q,23H,J = 7.3 Hz),2.55 (m,1H),2.41 (m,1H),1.19 (t,35H,J = 7.3 Hz). 31P-NMR (121 MHz,D2O) δ -7.36 (bs,1P),-10.61 (d,1P,J = 19.8 Hz),-21.79 (t,1P,J = 19.9 Hz,20.1 Hz). MS(ESI) for C23H28O15N5P3(M-H)-calcd. 706.07,found,705.84. UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax 280 nm (ε7270),287 nm (ε 6950),369 nm (ε 9650).
(10-3-2-4)His-C1-dPnTP: 1H-NMR (300 MHz,D2O) δ 8.38 (d,1H,J = 1.2 Hz),7.90 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.22 (s,1H),6.67 (dd,1H,J = 4.5,6.4 Hz),4.54 (m,1H),4.33-4.12 (m,4H),4.08 (d,1H,J = 17.7 Hz),3.94 (d,1H,J = 17.8 Hz),3.23 (m,2H),3.11 (q,10H,J = 7.3 Hz),2.57 (m,1H),2.41 (m,1H),1.19 (t,16H,J = 7.3 Hz). 31P-NMR (121 MHz,D2O) δ -8.29 (d,1P,J = 19.2 Hz),-10.69 (d,1P,J = 19.2 Hz),-21.86 (t,1P,J = 19.4,19.3 Hz). MS(ESI) for C18H25O15N6P3(M-H)-calcd. 657.05,found 656.93. UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax 367 nm (ε9890).
(10-3-2-5)Ser-C1-dPnTP: 1H-NMR (300 MHz,D2O) δ 7.87 (d,1H,J = 2.0 Hz),7.27 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.66 (dd,1H,J = 4.5,6.3 Hz),4.54 (m,1H),4.24-4.09 (m,5H),4.0-3.81 (m,3H),3.11 (q,18H,J = 7.3 Hz),2.56 (m,1H),2.40 (m,1H),1.19 (t,27H,J = 7.3 Hz). 31P-NMR (121 MHz,D2O) δ -7.57 (bs,1P),-10.62 (d,1P,J= 19.6 Hz),-21.88 (t,1P,J = 20.2,20.0 Hz). MS(ESI) for C15H23O16N4P3(M-H)- calcd. 607.02, found 606.81. UV(10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax 367 nm (ε 9630).
(11)アミノ酸結合-C3-dPnTPの合成
(11-1) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-(L-フェニルアラニナミド)-1-ペンチニル]-2-ニトロピロール5′-三リン酸 (Phe-C3-dPnTP)の合成
NH2-C3-dPnTP (18 μmol)のDMF溶液(4 ml)にFmoc-Phe-SE (13.1 mg,27 μmol)を加え、室温で20時間反応させたのちに、トリエチルアミンを加えてさらに5時間攪拌した。この反応溶液にピペリジン(100 μl)を加え、室温で30分間反応させた。この反応溶液に水(5 ml)を加え、水層を酢酸エチルで3回洗浄したのちに凍結乾燥させた。残渣をDEAE Sephadex A-25カラムクロマトグラフィー (1.5 x 30 cm,濃度直線勾配;TEABの50 mM―1M溶液)及びC8-HPLC (SensyuPak,濃度勾配;10%―50% アセトニトリルの100 mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液 (pH 7.0))にて精製し、目的物(7.4 μmol,41%)を得た。
(11-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-(L-トリプトファナミド)-1-ペンチニル]-2-ニトロピロール5′-三リン酸 (Trp-C3-dPnTP)の合成
NH2-C3-dPnTP (18 μmol)のDMF溶液(4 ml)にFmoc-Trp-SE (14.1 mg,27 μmol)を加え、室温で20時間反応させたのちに、トリエチルアミンを加えてさらに5時間攪拌した。この反応溶液にピペリジン(100 μl)を加え、室温で30分間反応させた。この反応溶液に水(5ml)を加え、水層を酢酸エチルで3回洗浄したのちに凍結乾燥させた。残渣をDEAE Sephadex A-25カラムクロマトグラフィー (1.5 x 30 cm,濃度直線勾配;TEABの50 mM―1M溶液) 及びC8-HPLC (SensyuPak,濃度勾配;15%―50% アセトニトリルの100 mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液 (pH 7.0))にて精製し、目的物(6.6 μmol,36%)を得た。
【0329】
(11-3) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-(L-チロシナミド)-1-ペンチニル]-2-ニトロピロール5′-三リン酸 (Tyr-C3-dPnTP)の合成
NH2-C3-dPnTP(21 μmol)のDMF溶液(1 ml)にFmoc-Tyr-SE(15.8 mg,31.5 μmol)を加え、室温で60時間反応させた。この反応溶液にH2O(8 ml)を加え、水層を酢酸エチルで3回洗浄したのちに、C8 HPLC(SensyuPak,濃度勾配;35% アセトニトリルの100 mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液 (pH 7.0))にて精製した。Fmoc-Tyr-C3-dPnTPのDMF溶液(2 ml)にピペリジン(100 μl)を加え、室温で10分間反応させた。この反応溶液にH2O(8 ml)を加え、水層を酢酸エチルで3回洗浄したのちに凍結乾燥させた。残渣をDEAE Sephadex A-25カラムクロマトグラフィー (1.5 x 30 cm,濃度直線勾配;TEABの50mM-1M溶液) 及びC8-HPLC (Sensyupak,濃度勾配;10%―50% アセトニトリルの100 mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(pH 7.0))にて精製し、目的物(9.7 μmol,46%)を得た。
【0330】
(11-4) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-[5-(L-セリナミド)-1-ペンチニル]-2-ニトロピロール5′-三リン酸 (Ser-C3-dPnTP)の合成
NH2-C3-dPnTP (19 μmol)のDMF溶液(1 ml)にFmoc-(O-TBDMS)-Ser-SE (13.0 mg,28 μmol)を加え、室温で60時間反応させた。この反応溶液にH2O(8 ml)を加え、水層を酢酸エチルで3回洗浄したのちに、C8 HPLC(Sensyupak,濃度勾配;32% アセトニトリルの100 mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液 (pH 7.0))にて精製した。Fmoc-Ser-C3-dPnTPのDMF溶液(2 ml)にピペリジン(100 μl)を加え、室温で10分間反応させた。この反応溶液にH2O(8 ml)を加え、水層を酢酸エチルで3回洗浄したのちに凍結乾燥させた。残渣をDEAE Sephadex A-25カラムクロマトグラフィー (1.5 x 30 cm,濃度直線勾配;TEABの50mM-1M溶液)及びC8-HPLC (SensyuPak,濃度勾配;10%―50% アセトニトリルの100 mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液 (pH 7.0))にて精製し、目的物(5.4 μmol,29%)を得た。
【0331】
(11-5) 1‐(2‐デオキシ‐β‐D‐リボフラノシル)‐4‐[5‐(L‐リシナミド)‐1‐ペンチニル]‐2‐ニトロピロール 5′‐三リン酸 (Lys‐C3-dPnTP)の合成
NH2-C3-dPnTP (20 μmol) のDMF溶液 (1 mL) にFmoc-Lys(Fmoc)-SE (27.5 mg,40μmol) を加え、室温で58時間反応させた。反応溶液にピペリジン(100 μL)を加え、3分間反応させた後にH2O(2 mL)を加えた。水層を酢酸エチル(4 mL)で3回洗浄した後に凍結乾燥させた。粗生成物をDEAE Sephadex A-25カラムクロマトグラフィー (1.5 x 30 cm,濃度直線勾配;TEABの50 mM―0.8M溶液)及びC18-HPLC(濃度勾配;5%―50% アセトニトリルの100 mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液 (pH 7.0))にて精製し、目的物(4.6 μmol,23%)を得た。
【0332】
(11-6)化合物の物性値
(11-6-1)Phe-C3-dPnTP: 1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.71(d,1H,J = 1.9 Hz),7.32-7.14(m,5H),7.19(d,1H,J = 2.0 Hz)6.61(t,1H,J = 5.8 Hz),4.51(m,1H),4.16-4.10(m,4H),3.36(m,1H),3.11(q,J = 7.4 Hz,the signals of Phe-CH2- and one proton of -CONHCH2- were superimposed),2.51(m,1H),2.31(m,1H),2.19(m,1H),2.05(m,1H),1.55(m,2H),1.19(t,18H,J = 7.3 Hz).31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.34 (d,1P,J = 18.0 Hz),-11.32 (d,1P,J = 19.7 Hz),-22.99 (t,1P,J = 20.0 Hz). MS(ESI) for C23H30N4O15P3(M-H)-calcd,695.09,found 694.53.UV (10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax = 374 nm (ε 10,000).
(11-6-2)Trp-C3-dPnTP: 1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.57 (d,1H,J = 2.0 Hz),7.38 (d,2H,J = 8.5 Hz),7.24 (s,1H),7.15 (d,1H,J = 2.0 Hz),7.11 (t,1H,J = 7.8Hz),6.99 (t,1H,J = 7.9Hz),6.40 (t,1H,J = 5.8 Hz),4.29 (m,1H),4.14-4.07 (m,4H),3.39 (m,1H),3.24 (t,2H,J = 6.9 Hz),3.11(q,J = 7.3 Hz,the signal of one proton of -CONHCH2- was superimposed),3.17-3.01 (m,1H),2.32 (m,1H),2.14 (m,1H),2.01 (m,1H),1.84 (m,1H),1.49 (m,2H),1.19 (t,18H,J = 7.3 Hz).31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.45 (d,1P,J = 19.6 Hz),-11.29 (d,1P,J = 19.4 Hz),-23.01 (t,1P,J = 20.0 Hz). MS (ESI) for C25H31N5O15P3(M-H)-calcd,734.10,found 733.64. UV (10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax = 280 nm (ε 8,000),287nm (ε 7,600),375 nm (ε 9,600).
(11-6-3)Tyr-C3-dPnTP: 1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.70 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.19 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.02 (d,2H,J = 8.5 Hz),6.75 (d,2H,J = 8.5 Hz),6.62 (t,1H,J = 5.9 Hz),4.51 (m,1H),4.16 (m,3H),4.06 (m,1H),3.39 (m,1H),3.11 (q,13H, J = 7.4Hz),3.06-2.90 (m,3H),2.52 (m,1H),2.30 (m,1H),2.17 (m,1H),2.01 (m,1H),1.53 (m,2H),1.19 (t,20H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -9.86 (1P),-11.30 (d,1P,J = 19.8 Hz),-22.89 (t,1P,J = 19.9 Hz). MS (ESI) for C23H30N4O16P3(M-H)-calcd,711.09,found 711.07. UV (10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax = 282 nm (ε 3,800),373 nm (ε 10,400).
(11-6-4)Ser-C3-dPnTP: 1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.77 (d,1H,J = 2.0Hz),7.26 (d,1H,J = 2.0 Hz),6.68 (t,1H,J = 5.9 Hz),4.56 (m,1H),4.16 (m,3H),4.07 (dd,1H,J = 5.4,4.6 Hz),3.92(dd,1H,J = 12.3,4.2 Hz),3.82(dd,1H,J = 12.4,6.0 Hz),3.34 (m,2H),3.11 (q,13H,J = 7.3 Hz),2.57 (m,1H),2.45-2.36 (m,3H),1.72 (m,2H),1.19 (t,20H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -9.83 (1P),-11.29 (d,1P,J = 19.6 Hz),-22.85 (t,1P,J = 19.9 Hz). MS (ESI) for C17H26N4O16P3(M-H)- calcd. 635.06,found 634.68. UV (10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0)λmax = 373 nm (ε 9,900).
(11-6-5)Lys‐C3-dPnTP: 1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.80 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.26 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.69 (t、 1H,J = 6.0 Hz),4.55 (m,1H),4.23-4.14 (m,3H),3.96 (t,1H,J = 6.8 Hz),3.44 (m,1H),3.25 (m,1H),3.12 (q,7H,J = 7.3 Hz),2.90 (t,2H,J = 7.4 Hz),2.57 (m,1H),2.45-2.36 (m,3H),1.83 (m,2H),1.73 (m,2H),1.61 (m,2H),1.40 (m,2H),1.19 (t,11H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -9.92 (d,1P,J = 19.3 Hz),-11.34 (d,1P,J = 19.9 Hz),-22.79 (t,1P,J = 19.8 Hz). MS (ESI) for C20H33N5O15P3(M-H)-calcd. 676.12,found 675.67.
(12) Diol1-dPnTPの合成
(12-1)4-ペンチン-1,2-ジアセテイトの合成
4-ペンチン-1,2-ジオール (13.5 mmol) [reference J. Org. Chem. 2008,73,5965-5976.] をピリジンで共沸し、ピリジン(27 ml)に溶解後、無水酢酸(4.8 ml,50.8 mmol)を加え、室温で14時間反応させた。反応溶液を酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4-ペンチン-1,2-ジアセテイト(800 mg,4.34 mmol,32%)を得た。
【0333】
(12-2) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(4-ペンテン-1,2-ジアセテイト)-1-プロピニル-2-ニトロピロールの合成
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール(354 mg,1 mmol)、ヨウ化銅(31 mg,0.16 mmol)、Pd(PPh34 (58 mg,0.05 mmol)にDMF (5 ml)を加え、1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロールの溶解後、トリエチルアミン(208 μl,1.5 mmol)、4-ペンチン-1,2-ジアセテイト(276 mg,1.5 mmol) を加え、室温で14時間反応させた。反応溶液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びHPLC精製し、1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(4-ペンテン-1,2-ジアセテイト)-1-プロピニル-2-ニトロピロール(400 mg,0.97 mmol,97%)を得た。
【0334】
(12-3) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(4-ペンテン-1,2-ジアセテイト)-1-プロピニル-2-ニトロピロール 5′-三リン酸の合成
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(4-ペンテン-1,2-ジオール)-1-プロピニル-2-ニトロピロール (41 mg,0.1 mmol) をピリジンで2回、トルエンで1回共沸し、プロトンスポンジ(33 mg,0.15 mmol) を加え、リン酸トリメチル(500 μl)に溶解後、溶液を0℃に冷却し、塩化ホスホリル (13 μl,0.13 mmol) を加え、0℃で1時間攪拌した。これにトリ-n-ブチルアミン (120 μl)、ビス-トリ-n-ブチルアンモニウムピロホスフェイト(1.0 ml,0.5 M DMF solution) を加え、0℃で30分間攪拌し、 さらに0.5 M TBAF(0.5ml)、水 (5.0 ml) を加え、0℃で30分間攪拌後、反応溶液を凍結乾燥した。H2O(4.0 ml) に溶解し、28%アンモニア水(20 ml)を加え、室温で90分間攪拌した。これをDEAE sephadex A-25 イオン交換カラムクロマトグラフィー及び HPLCで精製し、1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(4-ペンテン-1,2-ジアセテイト)-1-プロピニル-2-ニトロピロール 5′-三リン酸(24 μmol,24%) を得た。
【0335】
(12-4)化合物の物性値
(12-4-1)4-ペンチン-1,2-ジアセテイト
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 5.05-4.98 (m,1H),4.24-4.07 (m,2H),2.91 (t,1H,J = 2.7 Hz),2.53 (dd,1H,J = 2.6,6.4 Hz),2.01 (s,6H).
(12-4-2)1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(4-ペンテン-1,2-ジオール)-1-プロピニル-2-ニトロピロール
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 7.92 (d,1H,J = 2.2 Hz),7.28 (d,1H,J = 2.2 Hz),6.54 (t,1H,J = 5.6 Hz),5.27 (d,1H,J = 4.5 Hz),5.11-5.04 (m,2H),4.29-4.12 (m,3H),3.86-3.82 (m,1H),3.69-3.52 (m,2H),2.74 (d,2H,J = 6.3 Hz),2.47-2.38 (m,1H),2.27-2.19 (m,1H),2.04,2.02 (s,s,3H,3H). HR-MS (FAB,NBA matrix) for C18H23N2O9(M+H)calcd. 411.1409,found 411.1403.
(12-4-3) 1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-(4-ペンテン-1,2-ジアセテイト)-1-プロピニル-2-ニトロピロール 5′-三リン酸
1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.79 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.39 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.77 (t,1H,J = 6.0 Hz),4.66-4.61 (m,1H),4.27-4.22 (m,3H),3.98-3.91 (m,1H),3.74-3.60 (m,2H),3.20 (q,22H,J = 7.3 Hz),2.72-2.46 (m,4H),1.28 (t,32H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -9.83 (d,1P,J = 19.8 Hz),-10.66 (d,1P,J = 20.0 Hz),-22.53 (t,1P,J = 20.1 Hz). MS(ESI) for C14H21N2O16P3(M-H)-calcd.566.24,found 565.04. UV (10 mM sodium phosphate buffer pH 7.0) λmax = 374 nm (ε 9,400).
(13) Diol9-dPnTPの合成
(13-1) Diol9リンカーの合成
リチウムアセチリドエチレンジアミン複合体(1.69 g、16.5 mmol)をDMSO (75 ml)に溶解後、0-10℃に冷却し、11-ブロモ-1-アンデセン(3.24 ml、15 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液を水とエーテルで分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(crude 16.5 mmol)。 このcrude (8.40 mmol)にOsO4(108 mg,0.42 mmol)、N-methylmorphorine-N-oxide(1.97 g,20 mmol)、acetone/H2O/tBuOH (4:1:1,42 ml)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液にNaHSO3(295 mg)を加えた後、濾過し、沈殿をメタノールで洗浄し、濾液を濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(crude)。 このcrude (8.40 mmol)をピリジンで共沸し、ピリジン(15 ml)に溶解後、無水酢酸(3 ml,32 mmol)を加え、室温で14時間反応させた。反応溶液を酢酸エチルと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Diol9リンカー(877 mg,2.96 mmol,35%)を得た。
【0336】
(13-2) Diol9-dPnの合成
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール(354 mg,1 mmol)、ヨウ化銅(31 mg,0.16 mmol)、Pd(PPh34 (58 mg,0.05 mmol)にDMF (5 ml)を加え、1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロールの溶解後、トリエチルアミン(208 μl,1.5 mmol)、Diol9リンカー(445 mg,1.5 mmol) を加え、室温で14時間反応させた。反応溶液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びHPLC精製し、Diol9-dPn(450 mg,0.86 mmol,86%)を得た。
【0337】
(13-3) Diol9-dPnTPの合成
Diol9-dPn (45 mg,0.1 mmol) をピリジンで2回、トルエンで1回共沸し、プロトンスポンジ(33 mg,0.15 mmol) を加え、リン酸トリメチル(500 μl)に溶解後、溶液を0℃に冷却し、塩化ホスホリル (13 μl,0.13 mmol) を加え、0℃で1時間攪拌した。これにトリ-n-ブチルアミン (120 μl)、ビス-トリ-n-ブチルアンモニウムピロホスフェイト(1.0 ml,0.5 M DMF solution) を加え、0℃で30分間攪拌し、さらに0.5 M TBAF(0.5ml)、水 (5.0 ml) を加え、0℃で30分間攪拌後、反応溶液を凍結乾燥した。H2O(4.0 ml) に溶解し、28%アンモニア水(20 ml)を加え、室温で90分間攪拌した。これをDEAE sephadex A-25 イオン交換カラムクロマトグラフィー及び HPLCで精製し、Diol9-dPnTP(26 μmol,26%)を得た。
【0338】
(13-4) 化合物の物性値
(13-4-1) Diol9リンカー
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 4.98 - 4.90 (m,1H),4.15 (dd,1H,J = 3.2,8.7),3.99 (dd,1H,J = 6.5,5.4),2.71 (t,1H,J = 2.7),2.15 - 2.10 (m,8H),1.99,1.98 (s,s,3H,3H),1.51 - 1.23 (m,16H).
(13-4-2) Diol9-dPn
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 7.88 (d,1H,J = 2.2 Hz),7.25 (d,1H,J = 2.2 Hz),6.54 (t,1H,J = 5.6 Hz),5.28 (d,1H,J = 4.4 Hz),5.09 (t,1H,J = 5.1 Hz),4.97 - 4.90 (m,1H),4.26 - 3.95 (m,3H),3.85 - 3.81 (m,1H),3.68 - 3.52 (m,2H),2.46 - 2.18 (m,4H),1.99,1.98 (s,s,3H,3H),1.51 - 1.24 (m,16H).
(13-4-3)Diol9-dPnTP
1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.71 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.35 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.76 (t,1H,J = 6.1 Hz),4.65 - 4.60 (m,1H),4.26 - 4.20 (m,3H),3.70 - 3.41 (m,3H),3.20 (q,22H,J = 7.3 Hz ),2.68 - 2.37 (m,4H),1.60 - 1.25 (m,50H). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.07 (d,1P,J = 19.7 Hz), -10.63 (d,1P,J = 20.0 Hz),-22.6 (t,1P,J = 20.0 Hz). MS (ESI-Tof)for C22H37N2O16P3・N(C2H53 (M)calcd. 779.26,found 780.26. UV(10 mM sodium phosphate buffer pH 7.0) λmax = 374 nm (ε 9,400).
(14) Bza3-dPnTPの合成
(14-1)Bza3リンカーの合成
4-ペンチン-1-オール(2.8 ml、30 mmol)、トリフェニルホスフィン (11.8 g,45 mmol)にジクロロメタン(40 ml)を加え、0℃に冷却後し、ジクロロメタン(20 ml)に溶解させた四臭化炭素(14.9 g,45 mmol)を加えた。溶液を室温に戻した後、ジクロロメタンと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(crude 30 mmol)。 このcrude (2.2 g、15 mmol)をDMF (7.5 ml)に溶解させた4-ヒドロキシベンズアルデヒド (1.83 g,15 mmol)、炭酸カリウム (2.07 g,15 mmol)、ヨウ化カリウム (250 mg,1.5 mmol)に加え、70℃で一晩攪拌させた。反応溶液を酢酸エチル、水、数滴の塩酸で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Bza3リンカー(453 mg,2.41 mmol,16%)を得た。
【0339】
(14-2) Bza3-dPnの合成
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール(354 mg,1 mmol)、ヨウ化銅(31 mg,0.16 mmol)、Pd(PPh34(58 mg,0.05 mmol)にDMF(5 ml)を加え、1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロールの溶解後、トリエチルアミン(208 μl,1.5 mmol)、Bza3リンカー(282 mg,1.5 mmol) を加え、室温で14時間反応させた。反応溶液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びHPLC精製し、Bza3-dPn(236 mg,0.57 mmol,57%)を得た。
【0340】
(14-3) Bza3-dPnTPの合成
Bza3-dPn (41 mg,0.1 mmol) をピリジンで2回、トルエンで1回共沸し、プロトンスポンジ(33 mg,0.15 mmol) を加え、リン酸トリメチル(500 μl)に溶解後、溶液を0℃に冷却し、塩化ホスホリル (13 μl,0.13 mmol) を加え、0℃で1時間攪拌した。これにトリ-n-ブチルアミン (120 μl)、ビス-トリ-n-ブチルアンモニウムピロホスフェイト(1.0 ml,0.5 M DMF solution) を加え、0℃で30分間攪拌し、さらに0.5 M TBAF(0.5ml)、水 (5.0 ml) を加え、0℃で30分間攪拌後、反応溶液を凍結乾燥した。これをDEAE sephadex A-25 イオン交換カラムクロマトグラフィー及び HPLCで精製し、Bza3-dPnTP(30.5 μmol,30%) を得た。
【0341】
(14-4)化合物の物性値
(14-4-1) Bza3リンカー
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 9.86 (s,1H),7.87 - 7.84 (m,2H),7.14 - 7.10 (m,2H),4.15 (t,2H,J = 6.2 Hz),2.82 (t,2H,J = 2.6 Hz),2.36 - 2.31 (m,2H),1.96 - 1.87 (m,2H)
(14-4-2) Bza3-dPn
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 9.87 (s,1H),7.92 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.90 - 7.84 (m,2H),7.28 (d,1H,J = 2.2 Hz),7.17 - 7.13 (m,2H),6.55 (t,1H,J = 5.6 Hz),5.29 (d,1H,J = 4.4 Hz),5.10 (t,1H,J = 5.1 Hz),4.27 - 4.18 (m,3H),3.87 - 3.83 (m,1H),3.69 - 3.53 (m,2H),2.57 (t,2H,J = 7.1 Hz),2.47 - 2.39 (m,1H),2.27 - 2.19 (m,1H),2.04 - 1.95 (m,2H).
(14-4-3) Bza3-dPnTP
1H NMR (300 MHz,D2O) δ 9.77 (s,1H),7.95 - 7.90 (m,2H),7.69 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.25 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.21 - 7.16 (m,2H),6.74 (t,1H,J = 6.0 Hz),4.64 - 4.59 (m,1H),4.36 - 4.20 (m,5H),3.19 (q,19H,J = 7.3 Hz),2.67 - 2.42 (m,4H),2.14 - 2.05 (m,2H),1.28 (t,28H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -9.98 (d,1P,J = 19.9 Hz),-10.65 (d,1P,J = 20.1 Hz),-22.55 (t,1P,J = 20.0 Hz). MS(ESI-Tof)for C21H25N2O16P3・N(C2H53 (M)calcd. 755.16,found 756.22. UV(10 mM sodium phosphate buffer pH 7.0) λmax = 288 nm (ε 21,300)、373 nm (ε 9,600).
(15)Bza6-dPnTPの合成
(15-1) Bza6リンカーの合成
7-オクチン-1-オール (2.60 g、20 mmol)、トリフェニルホスフィン (7.87 g,30 mmol)にジクロロメタン(30 ml)を加え、0℃に冷却後し、ジクロロメタン (10 ml)に溶解させた四臭化炭素(9.95 g,30 mmol)を加えた。溶液を室温に戻した後、ジクロロメタンと5%炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(crude 20 mmol)。 このcrude (20 mmol)をDMF (10 ml)に溶解させた4-ヒドロキシベンズアルデヒド (2.44 g,20 mmol)、炭酸カリウム (2.76 g,20 mmol)、ヨウ化カリウム (332 mg,2 mmol)に加え、70℃で一晩攪拌させた。反応溶液を酢酸エチル、水、数滴の塩酸で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Bza6リンカー(729 mg,3.17 mmol,16%)を得た。
【0342】
(15-2) Bza6-dPnの合成
1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロール(354 mg,1 mmol)、ヨウ化銅(31 mg,0.16 mmol)、Pd(PPh34 (58 mg,0.05 mmol)にDMF (5 ml)を加え、1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-4-ヨード-2-ニトロピロールの溶解後、トリエチルアミン(208 μl,1.5 mmol)、Bza6リンカー(276 mg,1.2 mmol) を加え、室温で14時間反応させた。反応溶液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びHPLC精製し、Bza6-dPn(138 mg,0.30 mmol,30%)を得た。
【0343】
(15-3) Bza6-dPnTPの合成
Bza6-dPn (46 mg,0.1 mmol) をピリジンで2回、トルエンで1回共沸し、プロトンスポンジ(33 mg,0.15 mmol) を加え、リン酸トリメチル(500 μl)に溶解後、溶液を0℃に冷却し、塩化ホスホリル (13 μl,0.13 mmol) を加え、0℃で1時間攪拌した。これにトリ-n-ブチルアミン (120 μl)、ビス-トリ-n-ブチルアンモニウムピロホスフェイト(1.0 ml,0.5 M DMF solution) を加え、0℃で30分間攪拌し、さらに0.5 M TBAF(0.5ml)、水 (5.0 ml) を加え、0℃で30分間攪拌後、反応溶液を凍結乾燥した。これをDEAE sephadex A-25 イオン交換カラムクロマトグラフィー及び HPLCで精製し、Bza6-dPnTP(27 μmol,27%) を得た。
【0344】
(15-4)化合物の物性値
(15-4-1) Bza6リンカー
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 9.85 (s,1H),7.86 - 7.83 (m,2H),7.12 - 7.09 (m,2H),4.07 (t,2H,J = 6.4 Hz),2.73 (t,2H,J = 2.6 Hz),2.17 - 2.12 (m,2H),1.48 - 1.42 (m,8H)
(15-4-2) Bza6-dPn
1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 9.84 (s,1H),7.89 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.86 - 7.81 (m,2H),7.24 (d,1H,J = 2.2 Hz),7.12 - 7.08 (m,2H),6.53 (t,1H,J = 5.6 Hz),5.28 (d,1H,J = 3.8 Hz),5.10 (t,1H,J = 5.3 Hz),4.22 (m,1H),4.08 (t,2H,J = 6.4 Hz),3.85 - 3.81 (m,1H),3.66 - 3.53 (m,2H),2.46 - 2.17 (m,4H),1.77 - 1.73 (m,2H),1.55 - 1.44 (m,6H).
(15-4-3) Bza6-dPnTP
1H NMR (300 MHz,D2O) δ 9.71 (s,1H),7.85-7.82 (m,2H),7.63 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.14 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.11 - 7.07 (m,2H),6.65 (t,1H,J = 6.0 Hz),4.60 - 4.58 (m,1H),4.25 - 4.17 (m,5H),3.20 (q,18H,J = 7.3 Hz),2.63 - 2.57 (m,1H),2.44 - 2.38 (m,3H),1.88 - 1.84 (m,2H),1.63 - 1.54 (m,6H),1.28 (t,27H,J = 7.3 Hz). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -10.25 (d,1P,J = 19.4 Hz),-10.68 (d,1P,J = 19.8 Hz),-22.62 (t,1P,J = 19.8 Hz). MS (ESI-Tof)for C24H31N2O16P3・N(C2H53 (M)calcd. 797.21,found 798.24. UV(10 mM sodium phosphate buffer pH 7.0) λmax = 289 nm (ε 20,500)、374 nm (ε 8,900).
(16) トリペプチド結合-dPnTPの合成
(16-1) トリペプチド合成
Fmoc固相合成を容量5mLのフィルター入りカラムチューブ(PP製)で行った。2-chlorotrithylchloride resin (1.58 mmol/mg,250 mg,0.4 mmol)をチューブに量りとり、塩化メチレン(DCM)を2 mL加え、シェイカーで20分振り、膨潤させた(×2回)。1残基目のアミノ酸のカップリングは、樹脂に対し、Fmoc-アミノ酸 (1.5 equiv.)、DIPEA (2.5 equiv.) をDCM 1.5 mLに溶解させ、樹脂の入ったカラムチューブに加え、室温で2時間攪拌し、カップリングを行った。反応後、MeOHを1mL加えて15分攪拌した後、反応液を取り除き、樹脂をDCM (2 mL)×4回、DMF (2 mL) ×4回、DCM (2 mL) ×2回、DMF :MeOH=1:1(v/v) ×2回、DCM:MeOH=1:1(v/v) ×2回、MeOH×2回で洗浄した。真空ラインで十分乾燥後、質量を量り、反応前後のresinの質量から1残基目の導入量を調べた。2残基以降のカップリングの当量はこの値を基準にして反応させた。上記の条件で再び樹脂を膨潤後、20%ピペリジン/DMF液を1.5mL加え、20分攪拌することでFmoc基の除去を行った。DMFでピペリジンの匂いがなくなるまで(2mL×8〜10回程度)樹脂を十分洗浄した(これら脱Fmoc操作を2度繰り返した)。Fmoc-アミノ酸 (2.5 equiv.)、HOBt (2.5 equiv.)、N,N′-Diisopropyl-carbodiimide (2.5 equiv.)を1.5 mLのDMFに溶解させ、カラムに加えて室温で1時間攪拌し反応させた。反応液を取り除いた後、樹脂をDMF (2 mL)×5、DCM (2 mL) ×5、DMF (2 mL) ×5回で洗浄した。これらの反応を繰り返し、tripeptideまで伸長後、樹脂からの切り出しは、20% Hexafluoroisopropanol/DCM(若しくは、1% TFA/DCM*)を2mL加え、室温で10分攪拌し、濾過を行ってペプチドを含む濾液を回収した(3回繰り返した)。濾液をエバポレーションで濃縮・乾燥し、トリペプチドを得た。
【0345】
(16-2)Fmoc-Leu-Leu-Leu N-succinimidyl esterの合成
Fmoc-Leu-Leu-Leu (292.5 mg,0.5 mmol)を5 mLのDMFに溶解し、N-hydroxysuccinimide (89.3 mg,0.75 mmol) と1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride (143.7 mg,0.75 mmol)を加え、室温で1時間反応させた。反応液を冷水中に滴下することで、白い沈澱が生じ、これを吸引濾過した。結晶を水で洗浄後、真空ラインで乾燥させ、白色粉末の目的物を得た(255.8 mg,76%)。
(16-3)Fmoc-Pro-Phe-Trp N-succinimidyl esterの合成
Fmoc-Pro-Phe-Trp (202 mg,0.3 mmol)を3 mLのDMFに溶解し、N-hydroxysuccinimide (53 mg,0.45 mmol) と1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride (86 mg,0.45 mmol)を加え、室温で1時間反応させた。反応液を冷水中に滴下することで、白い沈澱が生じ、これを吸引濾過した。結晶を水で洗浄後、真空ラインで乾燥させ、白色粉末の目的物を得た (163 mg,95 %)。
【0346】
(16-4)Leu-Leu-Leu-hx-dPnTPの合成
NH2-hx-dPnTP (196 μmol)を4 mLのDMFで溶解させた。4 mLのDMFに溶解させたFmoc-Leu-Leu-Leu N-succinimidyl esterを反応液に加え、室温で反応させた。22時間後、ピペリジンを500 μl反応液に加えて10分間攪拌し、Fmoc基の除去を行った。反応液を酢酸エチルと水で抽出を行い、水相を酢酸エチルで2回洗浄後、凍結乾燥した。粗結晶を50 mM TEABに溶解させ、50 mM TEABで膨潤させたDEAE樹脂にチャージし、DEAE精製(樹脂:DEAE Sephadex A-25 column、gradient: 50 mM ― 1 M TEABのisogradient )を行った。目的物を含むフラクションを凍結乾燥し、HPLC精製を行い(0-10分:10-100% linear gradient of CH3CN in 100 mM TEAA,pH 7.0)、目的物を得た(34.7 umol,18%)。
【0347】
(16-5)Pro-Phe-Trp-hx-dPnTPの合成
NH2-hx-dPnTP (30 μmol)を800 μLのDMFで溶解させた。800 μLのDMFに溶解させたFmoc-Pro-Phe-Trp N-succinimidyl ester (56.3 mg,73 μmol)を反応液に加え、室温で反応させた。20時間後、ピペリジンを100 μl反応液に加えて10分間攪拌し、Fmoc基の除去を行った。反応液を酢酸エチルと水で抽出を行い、水相を酢酸エチルで2回洗浄後、水相を凍結乾燥した。粗結晶を50 mM TEABに溶解させ、50 mM TEABで膨潤させたDEAE樹脂にチャージし、DEAE精製(樹脂:DEAE Sephadex A-25 column、gradient: 50 mM ― 1 M TEABのisogradient )を行った。目的物を含むフラクションを凍結乾燥し、HPLC精製を行い(0-10分:10-100% linear gradient of CH3CN in 100 mM TEAA,pH 7.0)、目的物を得た(8.5 μmol,28%)。
【0348】
(16-6)化合物の物性値
(16-6-1)Fmoc-Leu-Leu-Leu N-succinimidyl ester:1H NMR (300 MHz,DMSO-d6 ) δ 8.56 (d,1H,J = 7.6 Hz),7.94 (d,1H,J = 8.1 Hz),7.88 (d,2H,J = 7.4 Hz),7.70 (d,2H,J = 7.1 Hz),7.48-7.28 (m,5H),4.61 (m,1H),4.38-4.17 (m,4H),4.04 (m,1H),2.79 (s,4H),1.76-1.37 (m,9H),0.92-0.79 (m,18H) 13C NMR (75 MHz,DMSO-d6) δ172.71,172.33,172.05,169.88,168.43,155.79,143.88,143.69,140.67,127.01,125.25,120.06,65.49,52.94,50.46,48.31,46.66,25.42,25.19,24.11,23.99,23.03,22.87,22.59,21.43,20.97.
(16-6-2)Fmoc-Pro-Phe-Trp N-succinimidyl ester:1H NMR (300 MHz,DMSO-d6) δ 10.94 (s,1H),8.23 (d,1H,J = 8.7 Hz),8.04-7.85 (m,5H),7.64-7.43 (m,4H),7.40-6.79 (m,24H),4.67(m,1H),4.52 (m,1H),4.33-4.05 (m,5H),3.84 (m,2H),3.31-3.14 (m,2H,superimposed by H2O signal),2.26-2.08 (m,1H),3.00(m,2H),2.88-2.72 (m,9H),2.17 (m,1H),1.92 (m,1H),1.67 (m,5H).
(16-6-3)Leu-Leu-Leu-hx-dPnTP:1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.81 (d,1H,J = 2.1 Hz),7.39 (d,1H,J = 2.1 Hz),6.75 (t,1H,J = 6.0 Hz),4.61 (m,1H),4.42 (t,1H,J = 7.5 Hz),4.26 (m,4H),4.14 (s,2H),4.01 (t,1H,J = 7.4 Hz),3.20 (q,17H,J = 7.3 Hz),2.69-2.60 (m,1H),2.51-2.43 (m,1H),2.28 (t,1H,J = 7.3 Hz),1.74-1.46 (m,13H),1.28 (t,24H,J = 7.3 Hz ),1.06-0.85 (m,18H). 13C NMR (75 MHz,DMSO-d6) δ176.66,173.83,173.31,170.28,136.03,129.83,118.60,104.72,88.14,85.73,85.59,75.16,69.71,64.95,52.53,52.36,51.71,46.64,40.48,39.99,39.76,39.70,38.98,35.45,29.47,27.89,25.30,24.79,24.30,24.27,23.88,22.05,21.82,21.56,21.50,21.35,20.89,8.21. 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -9.14 (d,1P,J = 20.0 Hz),-10.72 (d,1P,J = 20.0 Hz),-22.35 (t,1P,J = 20.1 Hz). MS (ESI) for C36H62N7O18P3 (M‐H)- calcd. 972.34,found 972.12. UV (10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax = 365 nm (ε 10700.
(16-6-4)Pro-Phe-Trp-hx-dPnTP: 1H NMR (300 MHz,D2O) δ 7.67 (s,1H),7.46-7.40 (m,2H),7.33-7.06 (m,9H),6.55 (t,1H,J = 5.9 Hz),4.54-4.22 (m,3H),4.37-4.31 (m,1H),4.21-4.07 (m,5H),3.38-3.25 (m,3H),3.20 (q,19H,J = 7.3 Hz),3.02-2.80 (m,6H),2.57-2.48 (m,1H),2.28-2.15 (m,4H),1.99-1.93 (m,1H),1.91-1.75 (m,1H),1.58-1.46 (m,3H),1.28 (t,29H,J = 7.3 Hz),1.22-1.19 (m,2H),1.09-1.00 (m,3H). 31P NMR (121 MHz,D2O) δ -9.21 (d,1P,J = 19.6 Hz),-10.68 (d,1P,J = 19.6 Hz),-22.27 (t,1P,J = 20.0 Hz). MS (ESI) for C43H55N8O18P3 (M-H)- calcd. 1064.28,found 1063.82. UV (10 mM sodium phosphate buffer,pH 7.0) λmax = 281 nm (ε 8,600),287 nm (ε 8,200),366 nm (ε = 10,500).
(17)スクシンイミドエステルの合成
【化7】
【0349】
Conditions. (a)(b)(c) N-hydroxysuccinimide, 1-(3-dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimide hydrochloride, CH2Cl2, rt. (d) N-hydroxysuccinimide, 1-(3-dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimide hydrochloride, THF, DMF, rt.
(17-1)ジフェニル酢酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
ジフェニル酢酸(216 mg, 1.02 mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(177 mg, 1.53 mmol)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(290 mg, 1.51 mmol)を脱水塩化メチレン(5 ml)に溶かし、室温で7時間攪拌した。反応液を塩化メチレン(20 ml) で希釈したのち、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10 ml)、次いで飽和食塩水(10 ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。中圧分取液体クロマトグラフィー(山善AI-580装置、及びハイフラッシュカラム(シリカゲル)を用い、塩化メチレン−メタノールの勾配で溶出)により精製し、白色固体として目的物(156 mg, 0.50 mmol, 49%)を得た。
【0350】
<<既知化合物>> Ref. J. Med. Chem. 2000, 51, 8168.
(17−2)ジフェニル酢酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの物性値
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.29 (m, 10H), 5.35 (s, 1H), 2.82 (s, 4H).
(18)1-ナフトエ酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
(18−1)1-ナフトエ酸(176 mg, 1.02 mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(174 mg, 1.51 mmol)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(288 mg, 1.50 mmol)を脱水塩化メチレン(5 ml)に溶かし、室温で18時間攪拌した。反応液を塩化メチレン(10 ml) で希釈したのち、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10 ml)、次いで飽和食塩水(10 ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。中圧分取液体クロマトグラフィー(山善AI-580装置、及びハイフラッシュカラム(シリカゲル)を用い、塩化メチレン−メタノールの勾配で溶出)で精製し、白色固体として目的物(131 mg, 0.48 mmol, 48%)を得た。
【0351】
<<既知化合物>> Ref. Tetrahedron Letters 2003, 44(12) 2477-2480. (合成法は異なる)
(18−2)1-ナフトエ酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの物性値
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.62 (dd, 1H, J = 7.7, 1.0 Hz), 8.40-8.35 (m, 4H), 8.13 (dd, 1H, J = 7.9, 0.7 Hz), 7.79-7.66 (m, 3H), 2.94 (s, 4H).
(19)4-ビフェニルカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
(19−1)4-ビフェニルカルボン酸(200 mg, 1.00 mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(178 mg, 1.55 mmol)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(287 mg, 1.50 mmol)を脱水塩化メチレン(5 ml)に溶かし、室温で21時間攪拌した。反応液を塩化メチレン(20 ml) で希釈したのち、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10 ml)、次いで飽和食塩水(10 ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。中圧分取液体クロマトグラフィー(山善AI-580装置、及びハイフラッシュカラム(シリカゲル)を用い、塩化メチレン−メタノールの勾配で溶出)で精製し、DMF(2.5 ml)に溶解した。これを、水(50 ml)に入れて再沈殿することにより、白色固体として目的物(139 mg, 0.47 mmol, 47%)を得た。
【0352】
<<既知化合物>> Ref. Russ. J. Bioorg. Chem. 2009, 35, 342. (合成項は異なる)
(19-2)4-ビフェニルカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの物性値
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.18 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.97 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.82-7.78 (m, 2H), 7.57-7.44 (m, 3H), 2.91 (s, 4H).
(20)4'-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
(20-1)4'-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸(214 mg, 1.00 mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(174 mg, 1.50 mmol)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(288 mg, 1.50 mmol)を脱水THF (10 ml)及び脱水DMF(4 ml)に溶かし、室温で5時間攪拌した。反応液を水(50 ml)にあけ、生じた沈殿をろ取し、ヘキサンで洗った後、真空乾燥し、目的物(207 mg, 0.67 mmol, 67%)を白色固体として得た。
【0353】
<<既知化合物>> Ref. J. Med. Chem. 2008, 51, 6665-6681. (合成項の記述・引用なし)
(20-2)4'-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの物性値
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 9.84 (s, 1H), 8.11 (dd, 2H, J = 6.8, 1.8 Hz), 7.88 (dd, 2H, J = 6.8, 1.8 Hz), 7.68-7.64 (m, 2H), 6.93-6.88 (m, 2H), 2.90 (s, 4H).
(21)9-アントラセンカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
(21-1)9-アントラセンカルボン酸(220 mg, 0.99 mmol)、炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(357 mg, 1.39 mmol)、及びトリエチルアミン (220 μl, 1.60 mmol)を脱水塩化メチレン (10 ml)に溶かし、室温で24時間攪拌した。反応液を塩化メチレン(10 ml) で希釈したのち、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 ml)、次いで飽和食塩水(20 ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。中圧分取液体クロマトグラフィー(山善AI-580装置、及びハイフラッシュカラム(シリカゲル)を用い、塩化メチレン−メタノールの勾配で溶出)で精製し、白色固体として目的物(66 mg, 0.20 mmol, 20%)を得た。
【0354】
(21-2)9-アントラセンカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの物性値
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6, 40 ℃) δ 8.97 (s, 1H), 8.32-8.24 (m, 4H), 7.78-7.63 (m, 4H), 3.02 (s, 4H).
(22)修飾dPnTP (R-hx-dPnTP)の合成
【化8】
【0355】
Condition: N-hydoroxysuccinimide ester, triethylamine, 70% DMF-H2O, rt.
【化9】
【0356】
(22-1)ジフェニルメタン修飾dPnTP (DPM-hx-dPnTP)の合成
3-(β-D-リボフラノシル)-4-[3-(6-アミノヘキサンアミド)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール 5'-三リン酸(30 μmol)の40% DMF水溶液(3.0 ml)に、ジフェニル酢酸スクシンイミドエステル(120 μmol)のDMF溶液(3.0 ml)及びトリエチルアミン(6.2 μl)を加えて、室温で24時間静置した。反応溶液に水(18 ml)を加え、生じた白色沈殿をSteriflip (Millipore)によりろ過して、取り除いた。ろ液を凍結乾燥したのち、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液 (2.0 ml)に溶解し、Ultrafree (0.22 μm, Millipore)によりろ過した。ろ液をC18カラム(ナカライ、COSMOSIL 140C19-OPN、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液中、0 - 30%アセトニトリルの直線勾配で溶出)及び、C8 HPLC(資生堂CAPCELL PAK C8、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液中、25 - 50%アセトニトリルの直線勾配を13分かけて溶出)により精製し、DPM-hx-dPnTP(収量 15.4 μmol、収率 51%)を得た。
【0357】
(22-2)ナフタレン修飾dPnTP(NAP-hx-dPnTP)の合成
3-(β-D-リボフラノシル)-4-[3-(6-アミノヘキサンアミド)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール5'-三リン酸(30 μmol)の40% DMF水溶液(3.0 ml)に、1-ナフトエ酸スクシンイミドエステル(120 μmol)のDMF溶液(3.0 ml)及びトリエチルアミン(6.2 μl)を加えて、室温で66時間静置した。反応溶液に水(18 ml)を加え、生じた白色沈殿をSteriflip (Millipore)によりろ過して、取り除いた。ろ液を凍結乾燥したのち、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液 (3.0 ml)に溶解し、Ultrafree (0.22 μm, Millipore)によりろ過した。ろ液をC18カラム(ナカライ、COSMOSIL 140C19-OPN、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液中、0 - 30%アセトニトリルの直線勾配で溶出)及び、C18 HPLC(資生堂CAPCELL PAK C18、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液中、15 - 50%アセトニトリルの直線勾配を13分かけて溶出)により精製し、NAP-hx-dPnTP(収量 16.4 μmol、収率 55%)を得た。
【0358】
(22-3)ビフェニル修飾dPnTP(BPH-hx-dPnTP)の合成
3-(β-D-リボフラノシル)-4-[3-(6-アミノヘキサンアミド)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール 5'-三リン酸(30 μmol)の40% DMF水溶液(3.0 ml)に、4-ビフェニルカルボン酸スクシンイミドエステル(120 μmol)のDMF溶液(3.0 ml)及びトリエチルアミン(6.2 μl)を加えて、室温で51時間静置した。反応溶液に水(18 ml)を加え、生じた白色沈殿をSteriflip (Millipore)によりろ過して、取り除いた。ろ液を凍結乾燥したのち、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液(2.0 ml)に溶解し、Ultrafree (0.22 μm, Millipore)によりろ過した。ろ液をC18カラム(ナカライ、COSMOSIL 140C19-OPN、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液中、0 - 30%アセトニトリルの直線勾配で溶出)及び、C1 HPLC(資生堂CAPCELL PAK C1、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液中、20 - 50%アセトニトリルの直線勾配を13分かけて溶出)により精製し、BPH-hx-dPnTP(収量 10.0 μmol、収率 33%)を得た。
【0359】
(22-4)4-ヒドロキシビフェニル修飾dPnTP(HBP-hx-dPnTP)の合成
3-(β-D-リボフラノシル)-4-[3-(6-アミノヘキサンアミド)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール 5'-三リン酸(30 μmol)の40% DMF水溶液(3.0 ml)に、4'-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸スクシンイミドエステル(120 μmol)のDMF溶液(3.0 ml)及びトリエチルアミン(6.2 μl)を加えて、室温で45時間静置した。反応溶液に水(18 ml)を加え、生じた白色沈殿をSteriflip (Millipore)によりろ過して、取り除いた。ろ液を凍結乾燥したのち、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液 (2.0 ml)に溶解し、Ultrafree (0.22 μm, Millipore)によりろ過した。ろ液をC18カラム(ナカライ、COSMOSIL 140C19-OPN、100 mMトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液中、0 - 30%アセトニトリルの直線勾配で溶出)及び、C8 HPLC(資生堂CAPCELL PAK C8、100 mMトトリエチルアミン−酢酸緩衝溶液中、15 - 50%アセトニトリルの直線勾配を13分かけて溶出)により精製し、HBP-hx-dPnTP(収量 13.9 μmol、収率 46%)を得た。
【0360】
(22-5)修飾dPnTP (R-hx-dPnTP)の物性値
(22-5-1)DPM-hx-dPnTPの物性値
1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.72 (d, 1H, J = 2.1 Hz), 7.43-7.33 (m, 6H), 7.26-7.21 (m, 5H), 6.64 (t, 1H, J = 5.9 Hz), 5.01 (s, 1H), 4.53 (m, 1H), 4.20 (m, 3H), 4.14 (m, 2H), 2.23-3.16 (m, 1H and (CH3CH2)3N), 2.54 (m, 1H), 2.36 (m, 1H), 2.26 (t, 1H, J = 7.0 Hz), 1.63-1.58 (m, 2H), 1.53-1.49 (m, 2H), 1.30-1.35 (m, 1H and (CH3CH2)3N).
31P NMR (121 MHz, D2O), δ -9.47 (d, 1P, J = 15.5 Hz), -10.70 (d, 1P, J = 19.8 Hz), -22.47 (t, 1P, J = 20.0 Hz).
ESI-MS for [M-H]- (C32H38N4O16P3): calcd. 827.16, found: 827.02.
lmax = 369 nm, e260 = 2.40 × 103, e369 = 1.07 × 104.
(22-5-2)NAP-hx-dPnTPの物性値
1H NMR (300 MHz, D2O) δ 8.02-7.93 (m, 3H), 7.65-7.48 (m, 5H), 6.98 (d, 1H, J = 2.1 Hz), 6.50 (t, 1H, J = 5.9 Hz), 4.53 (m, 1H), 4.18 (m, 3H), 4.10 (s, 2H), 3.49 (t, 1H, J = 6.4 Hz), 2.58-2.49 (m, 1H), 2.37-2.26 (m, 3H), 1.79-1.67 (m, 4H), 1.54-1.46 (m, 2H).
31P NMR (121 MHz, D2O), δ 9.91 (d, 1P, J = 19.4 Hz), -10.77 (d, 1P, J = 20.0 Hz), -22.56 (t, 1P, J = 20.0 Hz).
lmax = 369 nm, e260 = 4.90 × 103, e369 = 9.35 × 103.
(22-5-3)BPH-hx-dPnTPの物性値
1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.76-7.68 (m, 7H), 7.61 (d, 1H, J = 2.1 Hz), 7.55-7.7.45 (m, 3H), 7.04 (d, 1H, J = 2.1 Hz), 6.38 (t, 1H, J = 5.9 Hz), 4.45 (m, 1H), 4.16-4.10 (m, 5H), 3.39 (t, 2H, J = 6.6 Hz), 2.42 (m, 1H), 2.32 (t, 1H, J = 6.5 Hz), 2.19 (m, 1H), 1.74-1.62 (m, 4H), 1.45 (m, 1H).
31P NMR (121 MHz, D2O), δ -10.33 (d, 1P, J = 19.7 Hz), -10.84 (d, 1P, J = 19.7 Hz), -22.75 (t, 1P, J = 19.8 Hz).
lmax = 368 nm, e260 = 2.46 × 104, e368 = 1.04 × 104.
(22-5-4)HBP-hx-dPnTPの物性値
1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.71 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.62-7.56 (m, 5H), 6.99 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 6.97 (s, 1H), 6.36 (t, 1H, J = 5.9 Hz), 4.44 (m, 1H), 4.15-4.09 (m, 5H), 3.39 (t, 2H, J = 6.5 Hz), 2.46-2.38 (m, 1H), 2.32 (t, 2H, J = 6.3 Hz), 2.18-2.12 (m, 1H), 1.73-1.61 (m, 4H), 1.29-1.24 (m, 2H).
31P NMR (121 MHz, D2O), δ -9.86 (d, 1P, J = 19.6 Hz), -10.75 (d, 1P, J = 19.8 Hz), -22.55 (t, 1P, J = 19.9 Hz).
lmax = 368 nm, e260 = 1.41 × 104, e368 = 1.02 × 104.
<実施例8:VEGF-165に結合するDNAアプタマーの作製(2)>
実施例1に記載の方法を基礎として、さらに改良を加えた方法を用いてVEGF-165に対してより強固に結合するDNAアプタマーを作製した。
【0361】
(1)人工塩基Dsを中央領域の特定部位に含む一本鎖DNAライブラリーの調製
実施例1で調製した一本鎖DNAライブラリーを用いた。
【0362】
(2)VEGF-165へ結合するDsを含む一本鎖DNAアプタマーの製造
基本的な方法は、実施例1に記載の方法に準じる。以下、ここでは実施例1と異なる部分を中心に説明し、重複する部分については原則としてその記載を省略する。
【0363】
A.セレクション1ラウンドの操作
(i)標的タンパク質とDNAライブラリーとの結合
DNAの分子内での高次構造を形成させるために、フォールディング処理(95 ℃、3分間→室温、10分間→氷上、5分間→室温)を行った。その後、Nonidet P-40を含むPBS溶液と混合してNonidetP-40の最終濃度が0.005 %になるように調製し、その核酸溶液をストレプトアビジン磁気ビーズと混合して、25 ℃で30分間転倒混和した。遠心操作と磁気スタンドにより得た上清液をVEGF-165と混合し、DNA-タンパク質複合体を形成させた。
【0364】
(ii)標的タンパク質に結合したDNA配列の選別
上述の混合溶液中に、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)化されたBiotin化試薬を添加してタンパク質のビオチン化を行った後、未反応のビオチン化試薬を限外濾過によって取り除き、その溶液をストレプトアビジン磁気ビーズと室温で混合して、DNA-タンパク質複合体を磁気ビーズに固定化した。その後、磁気ビーズを1.0 mlの0.005 % Nonidet P-40を含むPBS溶液 (緩衝液A)に懸濁し、25℃で5分間インキュベーションする操作を5回繰り返した。
【0365】
なお、最終の7ラウンド目では、3 M尿素を含む緩衝液A (1.0 ml、25 ℃、5 分間)で転倒混和する操作を3回行い、その後緩衝液A (1.0 ml、25 ℃、5 分間)で転倒混和する操作を2回行うことで、さらに洗浄条件を厳しくした。洗浄後の磁気ビーズに200μlの溶出液(50 mM NaOH)を加えて、25 ℃で5分間インキュベーションした後、その溶液を回収し、イオン交換樹脂により溶液を中和した。回収された溶液中のDNAをPCRによる次のセレクションラウンドのライブラリー調製時の鋳型とした。
【0366】
(iii)一本鎖DNAライブラリーの調製(増幅)
次のラウンドに用いる一本鎖DNAのライブラリーは、各セレクションラウンド後のDNAを鋳型として調製した。具体的には、Bartelらによる(Nucleic Acids Res. 1995, 23: 4220-1)の手法に基づきPCR増幅を行い、7M 尿素を含む10% ポリアルアミド変性ゲルにより、増幅されたDsを含む一本鎖DNAライブラリーを分離し、ゲルから溶出・回収し、次のラウンドのライブラリーとして用いた。なお、一本鎖DNAライブラリの調製用のプライマーには、下記プライマーセットを用いた。
【0367】
5′-プライマー:5′-TTCTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC-3′ (配列番号151)
3′-プライマー:5′-TTTTTTTTTTTTTTT-(CH2)12-AAGTAGTCACTAATCCGTTCGAGTCATGC-3′ (配列番号152)
PCRは Invitrogen社のAccuPrime Pfx DNAポリメラーゼを用いて400〜600 μl容量で行った。反応組成は、1×AccuPrime Pfx reaction mix (各種 dNTP 0.3 mM、MgSO4 1mM含有)にさらに0.1 mM dNTPs(N=A,G,C,T、最終濃度0.4 mM each dNTP)及び0.5 mM MgSO4(最終濃度1.5 mM)を加えて、1 μM 5′-プライマー、1 μM 3′-プライマー、50 μM dDsTP、50 μM Diol1-dPxTP、0.05 U/μl AccuPrime Pfx DNAポリメラーゼを用い、PCRのサイクル条件は、(94℃ 30秒-65℃ 2分30秒)×12-26サイクルである。
【0368】
B.反復工程における選択ラウンドの条件
セレクションラウンドは7回行った。各セレクションラウンドの条件を表7に示した。
【表7】
【0369】
タンパク質-DNA複合体形成条件を厳しくするために、徐々にタンパク質とDNAの濃度を低くするとともに、5〜7ラウンド目には、タンパク質-DNAライブラリーを混合する時に、競合するDNA分子として、これまでに標的タンパク質へ結合するDNAアプタマーとして報告のあるDNA断片を、競合阻害分子(Competitor)として過剰量加えた。用いたDNA断片の塩基配列は、下記の通りでありる。
【0370】
ContVG (28-mer):5′-GCCCGTCTTCCAGACAAGAGTGCAGGGC-3′(配列番号153)
(3)セレクションにより得られたDNAアプタマー配列の同定
DNAアプタマー配列の同定は、下記の方法を用いて行った。まず、In vitroセレクション 7ラウンド終了後に、回収した一本鎖DNAの一部を鋳型として、人工塩基基質を加えずに人工塩基部位を天然型塩基に置き換えるPCRを行った。得られた二本鎖DNAライブラリーを用いて、第三世代のシーケンサー(Life Technologies社、Ion Torrent The Personal Genome MachineTM (PGMTM))により、大腸菌による従来のクローニングの操作を行うことなく、塩基配列を決定した。Dsの場合、そのほとんどがA又はTに置換される性質を利用して、Dsの位置を特定して目的とする配列群を抽出し、得られたDNAアプタマーの塩基配列を決定した。具体的には、1 μMの、5′-プライマー(5′-TTCTGTCAATCGATCGTATCAGTCCAC-3′;配列番号上記151)及び3′-プライマー(5′-AAGTAGTCACTAATCCGTTCGAGTCATGC-3′;配列番号154)を用いて、Clontech社の1×Titanium Taq PCR buffer中、0.3 mM dNTPs (N=A,G,C,T)、50 μM dPa′TP、1×Titanium Taqの反応組成で、PCR(100μl容量)を行った。PCRサイクル条件は、(94℃ 30秒―68℃ 2分)×20〜25サイクルである。
【0371】
得られたPCR産物をシリカゲルメンブレンカラムにて精製後、Ion Fragment Library Kit(Life Technologies)により、添付の説明書に記載された方法でライブラリー化した。得られたDNAライブラリーは、Ion Library Quantification Kit(Life Technologies)を用いて定量し、所定の濃度まで希釈したのち、Ion OneTouchTM Template Kit(Life Technologies)を用いて処理することで、Life Technologies社のThe Personal Genome MachineTM (PGMTM)解析用の鋳型DNAを調製した。Ion Sequencing Kit v2.0(Life Technologies)を用いて、Ion Torrent The Personal Genome MachineTMによりシーケンシングを行い、得られた総リード数をCLCBio社のCLC Genomics Workbench (version 4.7.2)を用いて解析した。具体的には、Dsを含むライブラリー配列については、5′-プライマー 27塩基・タグ配列(各種)・43塩基からなる配列・3′-プライマーの部分配列6塩基(GCATGA)を連続して含むもの、また、Dsを含むライブラリーの相補配列については、3′-プライマーのリンカー及びポリTの領域を除いた配列 29塩基・43塩基からなる配列・タグ配列(各種)・5′-プライマーの部分配列6塩基(GTGGAC)を連続して含む配列をそれぞれ解析対象の配列として選別した。その後、タグ配列ごとにDsの位置に応じて配列を選別し、最終的には、合計数92613のリード配列を解析した。これらの中でクローン数(=リード数)が多いDNAアプタマーは、標的物質への結合能が特に高いDNAアプタマーである。そこで、表8にクローン数が100以上であった配列を示す。
【表8】
【0372】
* Total counts:次世代シーケンサーによる配列解析により得られた総リード数
Extracted counts:総リード数より、解析対象となる配列を抽出した。
<実施例9:VEGF-165へ結合するDNAアプタマーの結合解析(2)>
表8に示した配列から、5種類の配列を選択し、GEヘルスケア社のBIACORE3000を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)の測定により、プライマー領域を一部切り詰めた57-merのDNA断片(表9)を用いて、VEGF-165に対する結合能を解析した。また、コントロールとして、すでに報告されているVEGF-165のDNA配列を含む57-merのDNA断片も作成して解析した。
【表9】
【0373】
* Bound = [タンパク質インジェクション開始から930秒後のResonance Units] / [固定化したDNAのResonance Units] × [固定化したDNAの分子量] / [タンパク質の分子量]. SPRの測定条件:流速 20 μl/min 、測定温度 25℃, VEGF-165 (10 nM)のインジェクション時間 480秒,解離をモニターした時間480秒。
【0374】
基本的な方法は、実施例2に記載の方法に準じたため、ここでは実施例2と異なる条件を中心に説明し、重複する部分については原則省略した。
【0375】
各DNA断片のSAチップ(GE ヘルスケア)への固定化については、PBS溶液で25 nMとなるように希釈したDNA溶液をフォールディング処理(95 ℃、3分間→室温、10分間→氷上、5分間→室温)した後、最終濃度が0.005%になるようにNonidet P-40を加えた。そのDNA溶液を流速5 μl/minで5 μl(1分間相当)インジェクションすることによって達成した。また、固定化後、SAチップに非特異的に吸着されているDNA断片を洗浄した。固定化されたDNA断片とVEGF-165との相互作用検出は、2.5 nM、5 nM及び10 nMのVEGF-165溶液をKinetic Injectionモードによってインジェクションすることでモニターした。測定条件は、流速20μl/min、タンパク質インジェクションは8分間である。VEGF-165への結合を調べたセンサグラムを図15に示す。
【0376】
本測定の結果、測定に用いたDNA断片のうち、VG20Ds-57がVEGF-165に対して特に強く結合することが明らかとなった。また、これらのDNA断片中のDsを天然塩基Aに置換したDNA断片では、標的タンパクに対する結合が弱まることが判明した。
【0377】
測定に用いたDNA断片について、Biacore3000付属のBiaEvaluationソフトでLangmulir with mass transferの反応モデルでカーブフィッティング(curve fitting)を行ったところ、VG20Ds-57の解離定数(Kd)は、5.9 pMであり、既存のアプタマー(contVG-57)の解離定数(46 pM)よりも低い値を示すことが明らかとなった。また、VG20Ds-57のDs塩基を天然塩基Aに置き換えた配列VG20A-57の解離定数は0.22 nMであり、VG20Ds-57のVEGF-165への結合がDs塩基依存であることが立証された。
【0378】
<実施例10:VG20Ds-57の配列を基にしたドープセレクション>
標的タンパク質への結合が強かったVG20Ds-57のタグとランダム領域の配列に変異を導入して、セレクションを行うことによって、アプタマーの最適化と二次構造予測を行った。
【0379】
ドープセレクション用のDNAライブラリーは、VG20Ds-57の配列を基にして実施例3と同様にして作成した。ドープセレクションに用いたDNAライブラリーは、プライマー領域とDs塩基及びタグ配列3塩基中の1塩基を固定して、それ以外のタグ配列を含めた天然塩基配列部分は、55%が元の塩基、45%が元の塩基と異なる塩基(3種類の塩基が15%ずつ)となるようにして化学合成を行い、ゲル精製により調製した。配列は下記の通りである。
【0380】
5’- CTGTCAATCGATCGTATCAGTCCACGgtaaactgagtccgaaggggcDstgcagtgaDscccgaatgggtccg
GCATGACTCGAACGGATTAGTGACT -3’ (配列番号330)
(大文字固定配列:小文字 Doped配列)
a= A:55%; G:15%; C:15%, T:15%
g= A:15%; G:55%; C:15%, T:15%
c= A:15%; G:15%; C:55%, T:15%
t= A:15%; G:15%; C:15%, T:55%
このライブラリーを用いて、実施例1(2)と同様の手順で、それぞれの標的タンパク質へ結合するDNAアプタマーのセレクションを行った。セレクションの条件は、表10に示した。
【表10】
【0381】
4ラウンド後のセレクションにより得られたアプタマーの配列のシークエンスを実施例8(3)に記載の方法と同様にして行い、合計数43719のリード配列を解析した。シークエンスの結果から、保存率の高い領域、co-variationの起こっている領域を同定し、その情報から二次構造を予測した(図16A、B)。その結果、例えば、VG20Ds-57のA11からC11の変異のように予測した構造を安定化するような1塩基の変異が認められた。この1塩基変異を含む47-merまで切り詰めたVEGF-165に結合するDNA断片(VGd1-2Ds-47;配列番号198)(図17A)を用いて、実施例9と同様の手順によりSPRで結合解析を行った(図17B、図18)。その結果、VGd1-2Ds-47のKdは4.6 pMであり、天然塩基からなる既存のDNAアプタマーのKd値44 pM (contVG-47;配列番号200)よりも1桁低かった。これは、VGd1-2Ds-47が既存のDNAアプタマーよりも標的のタンパク質に対して約10倍の強度で結合できることを示している。また、VGd1-2Ds-47と非標的タンパク質(VEGF-121 (Peprotech)、EGF (Peprotech)、Thrombin (Enzyme research laboratories)、BSA (Sigma Aldrich)との結合を調べた結果、VGd1-2Ds-47は、標的タンパク質に選択的に結合することが示された(図17B)。
【0382】
さらにアプタマーを切り詰めた様々なバリアント、又はDs塩基をAに置換したバリアントを表11に示すようにそれぞれ作製した。
【表11】
【0383】
抗VEGF-165アプタマー(VGd1-2Ds-47)とそのバリアントの各配列、及びSPRより求めた各DNA断片のVEGF-165に対する結合能解析結果
a) contVG の配列は、斜体及び下線で示した。
【0384】
b) Bound = [タンパク質インジェクション開始から930秒後のResonance Units] / [固定化したDNAのResonance Units] × [固定化したDNAの分子量] / [VEGF-165の分子量]. SPRの測定条件:流速 20 μl/min、測定温度 25℃, VEGF-165 (10nM) のインジェクション時間 480秒,解離をモニターした時間480秒。センサグラムは図18に示す。解離定数は、グローバルフィッティングにより算出した。
【0385】
標的タンパク質との結合を調べたところ、5′末端のプライマー領域を切り詰めた45-merのバリアント(VGd1-2Ds-45;配列番号202)では、Kd値が16 pMであった(図17B、表11)。この45-merのDNA断片のDs塩基をAに置き換えたバリアント(VGd1-2A-45;配列番号203)の結合解析結果から、VGd1-2Ds-45ではDs22及びDs33の二つのDs塩基が結合に強く関与していることが判明した。さらに、VGd1-2Ds-47については、2つのDs塩基に挟まれたStem-2が特に大きく結合に関与していることが明らかとなった。また、36-merのバリアント(VGd1-2Ds-36b;配列番号212)では、Kd値が17 pMであった(図17B、表11)。この結果から、VGd1-2Ds-47に関連する塩基配列を有する抗VEGF-165アプタマーにおいては、配列番号212に示す塩基配列を含むDNAアプタマーであればVEGF-165への結合活性を有することが示された。
【0386】
本発明の核酸アプタマーにおいて、非天然型ヌクレオチドは原則として天然型ヌクレオチドとは塩基対合しない。したがって、核酸アプタマーの塩基配列中に非天然型ヌクレオチド(例えば、Ds)が一以上、好ましくは二以上存在することで、予測される二次構造候補のいくつかは排除されることになる。すなわち、本発明の核酸アプタマーによれば、従来の核酸アプタマーと比較して、予測二次構造の絞込みが可能となり、より正確な二次構造を得ることができる。したがって、本発明の核酸アプタマーによれば、より正確性の高い二次構造が予測できることで、その核酸アプタマーの二次構造に基づいた任意の塩基配列を有する他の派生型核酸アプタマーを構築することもできる。
【0387】
<実施例11:IFN-γに結合するDNAアプタマーの作製>
実施例8と同様の方法を用いて、IFN-γに強固に結合するDNAアプタマーを作製した。基本的には、実施例8に記載の方法と同じであり、それに準じて行っている。
【0388】
(1)人工塩基Dsを中央領域の特定部位に含む一本鎖DNAライブラリーの調製
実施例1で調製した一本鎖DNAライブラリーを用いた。
【0389】
(2)IFN-γへ結合するDsを含む一本鎖DNAアプタマーの製造
基本的な手順等は、実施例8に記載の方法に準じた。したがって、ここでは実施例8と重複する部分については原則として記載を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0390】
A.セレクション1ラウンドの操作
(i) 標的タンパク質とDNAライブラリーとの結合
DNAの分子内での高次構造を形成させるために、フォールディング処理を行い、その後、Nonidet P-40を含むPBS溶液と混合してNonidetP-40の最終濃度が0.005 %になるように調製した。その核酸溶液をストレプトアビジン磁気ビーズと混合して、上清液をIFN-γ(Peprotech)と混合し、DNA-タンパク質複合体を形成させた。
【0391】
(ii)標的タンパク質に結合したDNA配列の選別
実施例8に記載の方法に準じて行った。
【0392】
(iii)一本鎖DNAライブラリーの調製(増幅)
実施例8に記載の方法に準じて行った。セレクションラウンドは7回とし、各セレクションラウンドの条件を上記表7に示した。タンパク質-DNA複合体形成条件を厳しくするために競合阻害分子(Competitor)として以下の塩基配列を有するDNA断片を過剰量加えた。
【0393】
ContIF (26-mer) :5′-GGGGTTGGTTGTGTTGGGTGTTGTGT-3′(配列番号228)
(3)セレクションにより得られたDNAアプタマー配列の同定
DNAアプタマー配列の同定は、実施例8に記載の方法に準じて行い、最終的に、合計数21242のリード配列を解析した。これらの中でクローン数(=リード数)が多いDNAアプタマーは、標的物質への結合能が特に高いDNAアプタマーである。そこで、クローン数が100以上であった配列を表12に示す。
【表12】
【0394】
* Total counts:次世代シーケンサーによる配列解析により得られた総リード数
Extracted counts:総リード数より、解析対象となる配列を抽出した。
<実施例12:IFN-γへ結合するDNAアプタマーの結合解析>
表12に示した配列から、5種類の配列を選択し、表面プラズモン共鳴測定により、プライマー領域を一部切り詰めた57-merのDNA断片(表13)を用いて、IFN-γに対する結合能を解析した。また、コントロールとして、すでに報告されているIFN-γのDNA配列を含む57-merのDNA断片も作成して解析した。
【表13】
【0395】
* Bound = [タンパク質インジェクション開始から930秒後のResonance Units] / [固定化したDNAのResonance Units] × [固定化したDNAの分子量] / [タンパク質の分子量]. SPRの測定条件:流速 20 μl/min 、測定温度 25℃, IFN-γ(150 nM) のインジェクション時間 480秒,解離をモニターした時間480秒。
【0396】
基本的な方法は、実施例9に記載の方法に準じたため、ここでは実施例9と異なる条件を中心に説明し、重複する部分については原則省略した。IFN-γへの結合を調べたセンサグラムを図19に示す。
【0397】
本測定の結果、測定に用いたDNA断片のうち、IF07b-57がIFN-γに対して最も強く結合することが明らかとなった。また、これらのDNA断片中のDsを天然塩基Aに置換したDNA断片では、標的タンパクに対する結合が弱まることも判明した。
【0398】
測定に用いたDNA断片について、実施例9と同様にカーブフィッティングを行ったところ、IF07b-57の解離定数(Kd)は、2 nMであり、既存の天然塩基からなるアプタマー(contIF-57)の解離定数(67 nM)よりも低い値を示し、標的タンパク質と強く結合することが明らかとなった。
【0399】
<実施例13:IF07b-57の配列を基にしたドープセレクション>
実施例10と同様に、標的タンパク質への結合が強かったIF07b-57のタグとランダム領域の配列に変異を導入して、セレクションを行うことによって、アプタマーの最適化と二次構造予測を行った。基本的な操作は、実施例10に記載の方法に準じた。DNAアプタマーの各ラウンドのセレクションは、前記表10に示した条件で行った。
【0400】
4ラウンド後のセレクションにより得られたアプタマーの配列のシークエンスを行い、73918のリード配列を解析した。シークエンスの結果から、保存率の高い領域、co-variationの起こっている領域を同定し、その情報から二次構造を予測した(図20A、B)。
【0401】
その結果、例えば、IF07b-57のG13からA13の変異のように、予測した構造を安定化するような1塩基の変異が認められた。この1塩基変異を含む47-merまで切り詰めたIFN-γに結合するDNA断片(IFd1-3Ds-49;配列番号214)(図21A)を用いて、SPRで結合解析を行った結果、IFd1-3Ds-49のKdは1.6 nMであり、天然塩基からなる既存のDNAアプタマーのKd値76 nM (cont IF-49;配列番号224)よりも高かった(図21B、図22)。これは、IFd1-3Ds-49が既存のDNAアプタマーよりも標的のタンパク質に40倍以上の強度で結合できることを示している。また、IFd1-3Ds-49と非標的タンパク質(VEGF-121 (Peprotech)、EGF (Peprotech)、Thrombin (Enzyme research laboratories)、BSA (Sigma Aldrich)との結合を調べた結果、IFd1-3Ds-49は、標的タンパク質であるIFN-γに選択的に結合することが示された(図21A)。さらにアプタマーを切り詰めた様々なバリアント、又はDs塩基をAに置換したバリアントを表14のようにそれぞれ作製した。
【表14】
【0402】
抗IFN-γアプタマー(IFd1-3Ds-49)とそのバリアントの各配列、及びSPRより求めた各DNA断片のIFN-γに対する結合能解析結果
a) contIF の配列は、斜体及び下線で示した。
【0403】
b) Bound = [タンパク質インジェクション開始から930秒後のResonance Units] / [固定化したDNAのResonance Units] × [固定化したDNAの分子量] / [IFN-γの分子量]. SPRの測定条件:流速 20 μl/min、測定温度 25℃, IFN-γ (150 nM) のインジェクション時間 480秒,解離をモニターした時間480秒。測定バッファ:1mM KH2PO4, 3mM Na2HPO4, 205mM NaCl, pH7.4。センサグラムは図22に示す。解離定数は、グローバルフィッティングにより算出した。
【0404】
c) これらの解離定数については、非特異的な吸着が見られたために、Rmaxはlocal fittingとして、その他はグローバルフィッティングにより算出した。
【0405】
標的タンパク質との結合を調べたところ、5′末端のプライマー領域を切り詰めた45-merのバリアント(IFd1-3Ds-45;配列番号215)では、Kd値が15nMであった(図21B、図22)。この結果から、図20Bで示すIFd1-3Ds-49において、Stem-1がIFN-γへの結合活性に必須ではないことを示している。また、この45-merのDNA断片のDs塩基をAに置き換えたバリアント(IFd1-A2Ds-45;配列番号219、IFd1-2DsA-45;配列番号220、IFd1-DsADs-45;配列番号221、IFd1-2ADs-45;配列番号222、IFd1-3A-45;配列番号223)の結合解析結果から、IFd1-3Ds-45ではDs29及びDs40の二つのDs塩基が結合に強く関与していることが判明した。ただし、結合には、Ds29又はDs40のいずれか一方のDs塩基を有していればよいことも判明した。一方、Ds18は結合に必須ではないことも判明した。IFd1-3Ds-49では、Stem-1、Stem-2の構造情報以外は未知であるが、4つのGトラクトが保存性が高い領域で現れており、G-カルテット構造を形成している可能性もある。Gカルテット構造は、様々な既存のDNAアプタマーや、タンパク質との相互作用に重要なモチーフの一つである。したがって、Ds塩基を導入することにより、G−カルテット構造などの特異なモチーフの多様性も増強することができる、ということが示唆された。
【0406】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]