【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:平成29年2月19日 公開場所:虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区虎ノ門1−23−3虎ノ門ヒルズ森タワー5階) 公開者:株式会社グリーンプラネット 公開内容:AG/SUM AGRITECH SUMMITにて、田中節三が発明した植物の健康診断システムを公開した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシステムによれば、ユーザは植物の画像を送信することで、その植物の状態やそれに対する対処を知ることができる。しかし、植物の画像から当該植物の状態を適切に判断するためには、外観上にどのような特徴が表れているか、それが経時的にどのような変化をしていっているか、といった情報と、そのような特徴や変化が、植物がどのような状態となっていることを示すものであるか、といった情報を予め登録する必要がある。植物の様々な状態を想定し、それに際して現出する外観的特徴を網羅的に入力するためには大変な労力を要することが想定される。また、多種の植物に対して利用することも想定すれば、植物ごとに異なる外観的特徴や、それぞれの植物に特有の病気など、すべての情報を事前に登録することは現実的ではない。
【0007】
特許文献2に記載されるような、植物の樹液や土壌に含まれる成分の直接的な解析を行えば、上述したような多大な情報の蓄積を事前に行なわずとも、植物の状態の判定を行うことができる。しかし、そのためには、解析のための器具や煩雑な手順などが必要となり、手軽に行うことは難しくなる。また、特許文献2に示されるような解析はあくまで簡易的なものであり、より詳細、確実な解析結果を得るためには、植物や土壌からサンプルを採取し、それを専門の機関へと送付して解析を依頼し、結果が出るのを待つ、といった手順が必要となる。このような専門の機関での詳細な解析は、費用や手間の面、解析結果が出るまでの期間などの面から、植物の状態を随時判定し、それに対して適切な対処を行う、といった向きでの利用は難しい。
【0008】
そこで、本発明では、植物の様々な健康状態を簡単かつ適切に把握することのできる、植物の健康診断システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る植物の健康診断システムは、
植物を撮影した画像から健康状態の診断を行う、植物の健康診断システムであって、
学習対象とする植物の画像である学習対象画像と、前記学習対象画像の撮影時点での前記学習対象の健康状態と、を参照し、診断対象とする植物の画像から
の当該植物の健康状態の診断方法を学習する学習手段と、
診断対象である植物を撮影した診断対象画像の入力を受け付け、前記診断方法に基づいた前記診断対象の健康状態の診断結果を出力する診断手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このように、撮影された植物の画像とその時点での健康状態から健康状態の診断方法を学習し、それに基づいた健康診断を行うことで、診断のための基準の大量な入力作業などを事前に行わずとも、診断対象である植物の画像からの健康状態の診断を行うことができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記学習対象画像が少なくとも前記学習対象の葉脈を撮影した画像を含み、
前記学習手段が、前記学習対象の葉脈の形態に基づいた前記診断方法の学習を行い、
前記診断対象画像が少なくとも前記診断対象の葉脈を撮影した画像を含み、
前記診断手段が、前記診断対象の葉脈の形態に基づいた前記診断結果を出力
し、
前記学習対象の葉脈の形態及び前記診断対象の葉脈の形態が、少なくとも、葉脈の太さと、葉脈の連続性の内の1つ以上を含むことを特徴とする。
このように、診断方法の学習、及び学習結果に基づいた健康診断に際して、植物の葉脈の形態に着目することによって、高い精度での健康状態の診断を行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記学習対象の健康状態が、少なくとも前記学習対象の樹液の解析結果を含むことを特徴とする。
このように、学習対象として樹液の解析結果を含めることで、学習対象のより正確な健康状態を把握し、それを用いた診断方法の学習を行うことができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記学習手段が、前記学習対象画像の撮影時点での前記学習対象の生育環境に関する情報を更に参照することを特徴とする。
このように、学習対象の生育環境についての情報を診断方法の学習に用いることで、より高精度な診断方法の学習を行うことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記学習手段が、前記学習対象の健康状態に応じた対処を決定する方法を更に学習し、
前記診断結果が、前記診断対象の健康状態に基づいた前記対処を含むことを特徴とする。
このように、診断結果に基づいた対処方法を出力する構成とすることにより、植物の健康状態が悪い場合や病気である場合などに、適切な対処を行うための情報を提供することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記学習手段が、機械学習を行うことを特徴とする。
このように、診断方法の学習に機械学習を用いることで、診断方法の学習を効果的に行うことができる。
【0016】
本発明に係る植物の健康診断プログラムは、
植物を撮影した画像から健康状態の診断を行う、植物の健康診断プログラムであって、コンピュータ装置を、
学習対象とする植物の画像である学習対象画像と、前記学習対象画像の撮影時点での前記学習対象の健康状態と、を参照し、診断対象とする植物の画像から
の当該植物の健康状態の診断方法を学習する学習手段と、
診断対象である植物を撮影した診断対象画像の入力を受け付け、前記診断方法に基づいた前記診断対象の健康状態の診断結果を出力する診断手段と、として動作させ
、
前記学習対象画像が少なくとも前記学習対象の葉脈を撮影した画像を含み、
前記学習手段が、前記学習対象の葉脈の形態に基づいた前記診断方法の学習を行い、
前記診断対象画像が少なくとも前記診断対象の葉脈を撮影した画像を含み、
前記診断手段が、前記診断対象の葉脈の形態に基づいた前記診断結果を出力し、
前記学習対象の葉脈の形態及び前記診断対象の葉脈の形態が、少なくとも、葉脈の太さと、葉脈の連続性の内の1つ以上を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る植物の健康診断方法は、
植物を撮影した画像から健康状態の診断を行う、コンピュータ装置を用いた植物の健康診断方法であって、
前記コンピュータ装置が、学習対象とする植物の画像である学習対象画像と、前記学習対象画像の撮影時点での前記学習対象の健康状態と、を参照し、診断対象とする植物の画像から
の当該植物の健康状態の診断方法を学習するステップと、
前記コンピュータ装置が、診断対象である植物を撮影した診断対象画像の入力を受け付け、前記診断方法に基づいた前記診断対象の健康状態の診断結果を出力するステップと、を備え
、
前記学習対象画像が少なくとも前記学習対象の葉脈を撮影した画像を含み、
前記診断方法を学習するステップにおいて、前記学習対象の葉脈の形態に基づいた前記診断方法の学習を行い、
前記診断対象画像が少なくとも前記診断対象の葉脈を撮影した画像を含み、
前記診断結果を出力するステップにおいて、前記診断対象の葉脈の形態に基づいた前記診断結果を出力し、
前記学習対象の葉脈の形態及び前記診断対象の葉脈の形態が、少なくとも、葉脈の太さと、葉脈の連続性の内の1つ以上を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
健康状態の判断基準などの網羅的な入力を事前に行なわずとも植物の様々な健康状態を診断し、出力することのできる、植物の健康診断システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る植物の健康診断システムの構成図である。ここに示すように、本実施形態に係る植物の健康診断システムは、診断方法の学習対象とするデータの蓄積やそれを用いた診断方法の学習、診断対象とする情報の入力の受付とそれに対する診断結果の出力等を行う健康診断サーバ装置1と、診断対象とする植物の生育に関する知識が豊富であるような有識者が用いる有識者端末装置2と、健康診断サーバ装置1に対して診断対象である植物の画像を送信し、その健康状態の診断の依頼と結果の受信、表示などを行う3a〜3dのユーザ端末装置3(以下、特に区別の必要がない場合、単にユーザ端末装置3と呼称する)と、がインターネットなどのネットワークNWを介して通信可能に構成される。
【0021】
図2は、本実施形態に係る健康診断サーバ装置1の機能ブロック図である。ここに示すように、本実施形態に係る健康診断サーバ装置1は、有識者端末装置2より学習対象である植物の画像やその健康状態、生育している環境情報を受信する学習対象受信手段101と、学習対象の画像を記憶する画像記憶部102と、学習対象の健康状態を記憶する健康状態記憶部103と、学習対象の生育している環境情報を記憶する環境情報記憶部104と、画像記憶部102、健康状態記憶部103、環境情報記憶部104を参照して、植物の画像と健康状態、環境情報に基づいて、画像からの植物の健康状態の判定や、それに基づいた適切な対処を決定するための診断方法を学習する学習手段105と、学習手段105によって学習した診断方法を記憶する診断方法記憶部106と、ユーザ端末装置3より診断対象とする植物の画像を受信し、診断方法記憶部106に記録された診断方法に基づいた診断を行い、診断対象の健康状態やそれに対しての適切な対処などを、診断結果としてユーザ端末装置3へと送信する、診断手段107と、を備える。
【0022】
画像記憶部102は、学習対象とする植物の葉面や葉脈を撮影した画像を記憶する葉面/葉脈画像記憶部1021と、葉以外の部分も含むような全体像を撮影した画像を記憶する全体画像記憶部1022と、を有する。また、健康状態記憶部103は、有識者によって有識者端末装置2を用いて入力された、撮影時点での学習対象の樹勢情報を記憶する樹勢情報記憶部1031と、撮影時点で採取した樹液の解析結果を記憶する樹液解析結果記憶部1032と、を有する。環境情報記憶部104は、学習対象とする植物の画像の撮影時点における生育環境などについての情報を含むものであり、当該植物の生育する土壌の解析結果を記憶する土壌解析結果記憶部1041と、大気や天候に関する情報を記憶する大気/天候情報記憶部1042と、与えた水分量や肥料の種類や量といった学習対象とする植物に対して行われた処置に関する情報を記憶する処置情報記憶部1043と、を有する。
【0023】
健康診断サーバ装置1としては、CPUなどの演算装置、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの補助記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、サーバ機器などの一般的なコンピュータ装置を利用することができる。より詳細には、補助記憶装置に予め、あるいは健康診断サーバ装置1の管理者の操作などによって、上述したような各手段として健康診断サーバ装置1を動作させるためのプログラムを格納しておき、それらのプログラムを主記憶装置上に展開して演算装置による演算を行い、入出力手段の制御などを行うことで、コンピュータ装置を本実施形態に係る電子証明システムにおける健康診断サーバ装置1として利用することができる。なお、本実施形態においては、単一のコンピュータ装置によって健康診断サーバ装置1を実現する構成を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、画像記憶部102や健康状態記憶部103、環境情報記憶部104などの記憶部を他のコンピュータ装置に備え、それを参照するような構成、学習手段105を他のコンピュータ装置に備える構成など、複数のコンピュータ装置によって健康診断サーバ装置1を実現するような構成としてもよい。また、後述するように、学習手段105において機械学習を行うような構成とする場合においては、GPU(Graphics Processing Unit)を利用したGPGPU(General−Purpose computing on Graphics Processing Units)を実施可能な構成などとすることが好ましい。
【0024】
有識者端末装置2としては、演算装置、主記憶装置、補助記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、一般的なコンピュータ装置を利用することができる。ここでは、後に説明するように、学習対象とする植物の画像の撮影や、樹勢に関する情報の入力などを行うため、カメラ機能を備え、植物の生育場所への持ち込みなども容易である、スマートフォン端末やタブレット型端末などを好適に用いることができる。なお、
図1においては、1台の有識者端末装置2のみを示したが、本発明はこれに限るものではなく、同種の植物、あるいは、別種の植物に対して深い知識を持つような、複数の有識者がそれぞれ用いる複数の有識者端末装置2を備えるような構成としてもよい。また、有識者端末装置2に加えて、あるいは有識者端末装置2に代えて、健康診断サーバ装置1が直接的に学習対象についての画像や健康状態、環境情報の入力を受け付けるような構成としてもよい。
【0025】
ユーザ端末装置3としても、演算装置、主記憶装置、補助記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、一般的なコンピュータ装置を利用することができる。
図1においては、一例として、スマートフォン3a、タブレット型端末3b、ノートパソコン3c、農業用ロボット3dを示したが、本発明はこれに限るものでなく、他の種々のコンピュータ装置についても、ユーザ端末装置3として用いることができる。なお、ここでスマートフォン3a、タブレット型端末3b、ノートパソコン3cは、植物の栽培を行うユーザが、自身が栽培する植物の画像の撮影やデジタルカメラなどからの取り込みを行い、それを健康診断サーバ装置1に送信、健康状態やそれに基づいた対処などの診断結果を受信して表示することで、ユーザが栽培する植物への適切な処置などを行うことができるものである。また、農業用ロボット3dについては、その管理者による操作やあるいは定期的な自動処理などによって植物の画像の撮影や他の撮影機器からの取り込みを行い、それを健康診断サーバ装置1に送信して診断結果を受信し、植物の健康状態に基づいた対処までを自動で行うことができるものである。
【0026】
<学習対象データの蓄積>
続いて、本実施形態に係る植物の健康診断システムへの、学習対象とするデータの記録、蓄積を行う処理の流れについて、
図3を参照して説明する。なお、この処理は、健康診断サーバ装置1がWebサーバプログラムを、有識者端末装置2がウェブブラウザプログラムをそれぞれ有し、両プログラム間でのHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)などを用いた通信によって行うような構成としてもよいし、あるいは、有識者端末装置2が学習対象とするデータの入力を行うための専用のプログラムを備え、それを用いて、健康診断サーバ装置1との任意の通信プロトコルによる情報の送受信を行うような構成としてもよい。
【0027】
この処理においては、まず、ステップS101において、有識者端末装置2より、学習対象とする植物の葉脈や葉面を撮影した画像の入力を受け付ける。ここでの画像は、有識者端末装置2がカメラを備える場合には、ユーザに対して画像の撮影と送信を促すような構成としてもよいし、予め撮影され、有識者端末装置2の有する補助記憶装置などに記憶された画像の選択と送信を促すような構成としてもよい。
【0028】
次にステップS102において、ステップS101で葉脈や葉面の画像を送信した植物の全体像の画像を受信する。ここでも、ステップS101と同様、有識者端末装置2によって撮影された画像や、有識者端末装置2の補助記憶装置に記憶された画像などの送信を促す構成とすればよい。なお、ここでは説明の簡単のために便宜上全体像の画像とするが、必ずしも植物の全体が含まれる画像でなくともよく、すなわち、複数の葉や茎なども含むような、ステップS101において受信した葉脈や葉面が含まれる画像よりも広範囲が含まれる画像であればよい。また、植物の上部を含む画像と、根本の画像など、複数の画像を受信するような構成としてもよい。
【0029】
ステップS103では、学習対象とする植物の、ステップS101、S102で受信した画像の撮影時の樹勢情報の入力を受け付ける。ここでの樹勢情報としては、例えば、葉面の色つやが悪いように見えるといったような植物の外観に関する情報や、葉面の張り具合のような触覚的な情報などが挙げられる。
【0030】
ステップS104においては、学習対象とする植物の、ステップS101、S102で受信した画像の撮影時に採取された樹液の解析結果の入力を受け付ける。ここでの樹液の解析結果としては、例えば、樹液中の水分率や、各種栄養成分の含有量などが挙げられる。なお、樹液の解析は、専門機関へと依頼し、ある程度の期間を要する場合がある。そのため、樹液の解析結果については、後日に別途入力を受け付けるような構成としてもよい。
【0031】
ステップS105においては、学習対象とする植物の、ステップS101、S102で受信した画像の撮影時の土壌の解析結果の入力を受け付ける。ここでの土壌の解析結果としては、例えば、土壌の温度や湿度、ミネラル値、肥料成分、PH値の変化、バクテリア群の分析結果などが挙げられる。なお、土壌の解析結果については、樹液の解析結果と同様、専門機関への依頼や結果が出るまでの期間を要する場合もあるため、その一部、又は全部について、後日に別途入力を受け付けるような構成としてもよい。
【0032】
ステップS106においては、学習対象とする植物の、ステップS101、S102で受信した画像の撮影時の大気や天候に関する情報の入力を受け付ける。ここでの大気や天候に関する情報としては、例えば、気温や湿度、紫外線量、二酸化炭素濃度などが挙げられる。なお、大気や天候に関する情報は、有識者端末装置2による学習対象とする植物の生育地点の入力などを受け、図示しない外部のサーバ装置などから、当該生育地点の気象情報を取得する、といったような処理によって取得してもよい。
【0033】
ステップS107においては、学習対象とする植物に対して行われた処置に関する情報の入力を受け付ける。ここでの処置に関する情報としては、例えば、植物に与えた水分の量や、与えた肥料の種類、量といった情報などが挙げられる。なお、植物に与えた水分の量や肥料についての情報は、先にステップS105において入力を受け付けた土壌の解析結果からも推測が可能である。そのため、ここで別途の入力を受け付けることを省略するような構成としてもよい。また、入力を受け付ける情報は、後述するように学習対象とする植物について経時的な複数の時点の情報の入力を受ける場合、前回の情報の入力の後に行なわれた処置に関する情報の入力を受け付けるような構成とすればよい。加えて、学習対象とする植物が花を咲かせる植物なのであれば、開花についての情報や、農作物であれば、収穫についての情報などといったような追加の情報の入力を受け付けるような構成としてもよい。
【0034】
以上のようにして学習対象である植物の画像の受信や情報の入力の受け付けが完了した後、ステップS108において、画像記憶部102、健康状態記憶部103、環境情報記憶部104への、それぞれの画像や情報の記録を行い、処理は終了する。
【0035】
なお、ここでは説明の簡単のために、学習対象とする植物の画像の受信や、健康状態、環境情報の入力の受け付けを順次行う処理を示したが、これはあくまで一例であり、本発明はこれに限るものではない。画像の受信や情報の入力の順番を
図3に例示した処理から入れ替える、あるいは、一括しての入力を受け付けるような構成など、他の方法によって情報の入力を受け付けてもよい。また、後の学習手段105による学習に支障の出ない範囲において、一部の情報の入力を省略するような構成としてもよい。
【0036】
また、ここでは、学習対象とする植物のある時点における画像や健康状態、環境情報の入力を受け付ける構成を示したが、経時的な複数の情報の入力を受けることがより好ましい。このためには、すなわち、複数の日時における植物の画像と、そのそれぞれの時点における健康状態や環境情報の入力をまとめて受け付けるような構成や、植物の個体を識別するための情報と共に日々の画像や健康状態、環境情報の入力を受け付けることにより、情報を蓄積していくような構成とすればよい。
【0037】
本実施形態に係る植物の健康診断システムにおいて、複数の品種の植物を対象とした健康状態の診断を行うためには、上述した学習対象とする情報の入力に際して、対象とする植物の品種の入力を受け付け、共に蓄積することが好ましい。
【0038】
<診断方法、対処決定方法の学習>
このようにして、画像記憶部102、健康状態記憶部103、環境情報記憶部104に蓄積された学習対象としての情報を用いて、学習手段105は、植物の健康状態の診断方法の学習を行う。この学習は、深層学習や強化学習といった、機械学習によって行うことが好ましい。すなわち、ある時点での学習対象とする植物の葉脈、葉面の画像や、植物全体の画像を入力データ、それぞれの画像の撮影時点における健康状態を出力データとして、入力データから出力データを推定するためのモデルを生成させる、といった処理を行うことで、このモデルを用いて、後に診断手段107によって診断対象の植物の画像から健康状態の診断を行うことができる。
【0039】
学習のより詳細な処理は、画像記憶部102の記憶する学習対象の画像のそれぞれから特徴量の算出を行い、それと健康状態記憶部103や環境情報記憶部104の記憶する情報との対応関係のモデルを生成するものになる。ここで、特徴量として、少なくとも、葉面/葉脈画像記憶部1021の記憶する画像から学習対象の葉脈の形態に関する値を算出し、それを用いることが好ましい。葉脈は、その中を樹液が流れるものであって、その太さや、切断されている個所の有無(連続性)は、植物の健康状態との関連性が非常に高いものである。そのため、そのような葉脈の形態から算出した値を含む特徴量を用いることで、より高精度な診断を行うための診断方法を学習することができる。
【0040】
なお、ここで、画像記憶部102に記憶される植物の画像の他に、環境情報記憶部104に記憶される学習対象である植物の生育環境に関する情報を加味することによって、より詳細な診断方法や、その結果に対して推奨する対処を決定する方法の学習を行うことができる。例えば、植物の健康状態に問題がある場合に、土壌解析結果や大気や天候に関する情報、植物に対して行われた処置に対して、問題の原因がどこにあるのか、そして、それに対してどのような対応を行うべきか、といった、より詳細な診断を行う方法を学習することができる。また、学習対象とする植物の収穫に関する情報や開花情報が記録されている場合には、それに基づいて、収穫に最適な時期や開花時期の予測方法についても学習することができる。
【0041】
また、学習対象とする植物についての経時的な情報を利用することで、それぞれの時点における画像情報や健康状態、土壌や大気の情報と、その間に行なわれた処置に基づいた統合的な学習を行うことができる。
【0042】
このようにして学習した植物の健康状態と、健康状態や環境情報に応じて推奨する対処を決定するための診断方法を、診断方法記憶部106に記憶する。なお、診断方法の学習に際して、画像記憶部102、健康状態記憶部103、環境情報記憶部104の記憶する情報の他に、図示しない他の記憶部や、外部のサーバ装置なども参照するような構成としてもよい。例えば、植物の病気の症状や対処に関する情報を記憶する記憶部や外部のサーバ装置を参照することで、植物の健康状態やそれに対するより適切な対処の診断方法を導き出すことが期待できる。また、市販される肥料製品のそれぞれの成分などに関する情報を記憶する記憶部や外部のサーバ装置を参照する構成とすれば、植物に特定の栄養分が不足している場合などにおいて、どういった肥料をどの程度の量与えるとよい、といった、より具体的な対処を提示することができる。
【0043】
<診断の実施>
以上のようにして学習手段105による診断方法記憶部106への診断方法の記録を行った後には、それらの情報を利用して、診断手段107による植物の健康状態の判定や、それに基づいた対処の提案を行うことができる。
図4は、診断手段107による健康診断処理の流れを示すフローチャートである。なお、この処理は、健康診断サーバ装置1がWebサーバプログラムを、ユーザ端末装置3がウェブブラウザプログラムをそれぞれ有し、両プログラム間でのHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)などを用いた通信によって行うような構成としてもよいし、あるいは、ユーザ端末装置3が診断対象とする植物の画像の送信や診断結果の表示を行うための専用のプログラムを備え、それを用いて、健康診断サーバ装置1との任意の通信プロトコルによる情報の送受信を行うような構成としてもよい。
【0044】
健康診断処理においては、まず、ステップS201において、診断対象とする植物の葉脈や葉面の画像を、ユーザ端末装置3より受信する。ここでの画像は、ユーザ端末装置3がカメラを備える場合には、ユーザに対して画像の撮影と送信を促すような構成としてもよいし、予め撮影され、ユーザ端末装置3の有する補助記憶装置などに記憶された画像の選択と送信を促すような構成としてもよい。
【0045】
続くステップS202において、ステップS201で葉脈や葉面の画像を送信した植物の全体像の画像を受信する。ここでも、ステップS201と同様、ユーザ端末装置3によって撮影された画像や、ユーザ端末装置3の補助記憶装置に記憶された画像などの送信を促す構成とすればよい。なお、ここでは説明の簡単のために全体像の画像とするが、必ずしも植物の全体が含まれる画像でなくともよく、すなわち、複数の葉や茎なども含むような、ステップS201において受信した葉脈や葉面が含まれる画像よりも広範囲が含まれる画像であればよい。また、植物の上部を含む画像と、根本の画像など、複数の画像を受信するような構成としてもよい。
【0046】
なお、ステップS201で受信する診断対象の葉脈や葉面の画像、ステップS202で受信する診断対象の全体像の画像は、それぞれ、ステップS101、S102で受信した、学習対象の画像と対応するような条件で撮影されたものであることが好ましい。そうすることで、学習手段105によって学習した診断方法による診断を、より効果的に行うことができる。
【0047】
以上のようにして診断対象とする植物の画像を受信した後、ステップS203において、診断手段107による健康状態の判定を行う。ここでの処理は、例えば、診断方法記憶部106を参照して診断対象の画像について注目すべき特徴量を特定し、ステップS201、S202で受信した画像の解析によってその特徴量を算出、それに基づいて、診断方法記憶部106に記録される特徴量と健康状態の関係から、診断対象の植物の健康状態を導き出す、といった処理によって行うことができる。なお、ここで用いる特徴量は、先に説明したように学習手段105が画像記憶部102の記憶する画像から算出する特徴量に対応するものである。すなわち、特に、診断対象とする植物の葉脈の形態に関する値を含む特徴量を用いることが好適である。
【0048】
続くステップS204では、ステップS203で得られた結果について、診断対象の植物の健康状態に問題があるか否かの判定を行う。なお、ここでの問題とは、例えば、水分量の過不足や特定の栄養素の過不足、病気にかかっている恐れがある、といったものが挙げられる。
【0049】
ステップS204で健康状態に問題があると判定された場合には、ステップS205へと進み、診断方法記憶部106を参照して問題に対する対処の確認を行う。ここでは例えば、水分量が多すぎるのであれば、与える水分量を減らすといった対処や、何らかの栄養素が不足しているのであれば、それを補うための肥料を与えるといった対処などが挙げられる。
【0050】
以上のようにして、ユーザ端末装置3より画像を受信した診断対象に関する診断が完了した後には、ステップS206において診断結果をユーザ端末装置3へと送信し、処理は終了する。ユーザは、ユーザ端末装置3に表示される診断結果を参照して、診断対象とした植物の健康状態に問題がないことや、問題がある場合には、どのような対処が推奨されるか、といった情報を得ることができる。
【0051】
なお、ここでは、植物の健康状態に問題があった場合にそれに対する対処を提示する処理を示したが、それ以外の場合についても対処などの情報を提示するような構成としてもよい。例えば、診断対象とする植物の果実や葉の収穫に最適な時期の予測や、開花時期の予測といった情報について、診断手段107によって求め、出力するような構成としてもよい。
【0052】
また、本実施形態に係る植物の健康診断システムを、複数の品種の植物を対象とした健康状態の診断を行うことが可能な構成とする場合には、健康状態の診断に際し、対象とする植物の品種の入力を受けることが好ましい。
【0053】
以上のように、学習対象とする植物の画像と、その撮影時における健康状態などの入力を受け、それらに基づいた健康状態の診断方法の学習を行うことによって、植物の健康状態の適切な判断を行うことができ、ユーザは診断対象とする植物の画像を送信することで、植物の健康状態やそれに対する適切な対処の提示を受けることができる。また、学習対象とする植物の健康状態と併せて環境情報の入力を受け付けることで、健康状態の診断をより高精度に行なう方法を学習することが期待できる。
【0054】
特に、診断方法の学習において、太さや連続性といった植物の葉脈の形態に関する特徴量を使用することによって、効果的な診断方法の学習、そして、その学習結果を用いた高精度な診断を行うことができる。
植物を撮影した画像から健康状態の診断を行う、植物の健康診断システムであって、学習対象とする植物の画像である学習対象画像と、学習対象画像の撮影時点での学習対象の健康状態と、を参照し、診断対象とする植物の画像から当該植物の健康状態の診断方法を学習する学習手段105と、診断対象である植物を撮影した診断対象画像の入力を受け付け、診断方法に基づいた診断対象の健康状態の診断結果を出力する診断手段107と、を備えることを特徴とする。