(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願発明者は、上述の課題を検討した結果、有機エレクトロルミネッセンス素子における正孔輸送層の材料として、シリル基を有するアミン誘導体を用いることに想到し、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化を達成できることを確認した。以下、本願発明者が想到したシリル基を有するアミン誘導体について説明する。但し、本発明の有機エレクトロルミネッセンス材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス材料は、以下の一般式(1)で表されるシリル基を有するアミン誘導体である。
【化3】
一般式(1)中、Ar
1、Ar
2、及びAr
3はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、前記Ar
1、Ar
2、及びAr
3のうち少なくとも1つは置換若しくは無置換のシリル基で置換されていることを特徴とする。Lは、単結合、置換若しくは無置換のアリーレン基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。
【0028】
Ar
1、Ar
2、及びAr
3の「置換若しくは無置換のアリール基」又は「置換若しくは無置換のヘテロアリール基」のアリール基及びヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ビフェニレン基、ピレニル基、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基が挙げられ、Ar
1、Ar
2、及びAr
3のアリール基又はヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−フェニルカルバゾリル基が好ましく、特に、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−フェニルカルバゾリル基が好ましい。ここで、上述したように、Ar
1、Ar
2、及びAr
3のアリール基及びヘテロアリール基のうち、少なくとも1つはシリル基で置換されている。また、シリル基は、Ar
1及びAr
2の少なくとも1つに1つずつ置換されることが好ましく、特に、Ar
1、Ar
2、及びAr
3の少なくとも1つに1つずつ置換されることがさらに好ましい。
【0029】
Ar
1、Ar
2、及びAr
3のうち、少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましく、さらに好ましくは、置換若しくは無置換のカルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基などのジベンゾヘテロール基である。限定されるわけではないが、Ar
3が置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましく、Ar
3がジベンゾヘテロール基であることが特に好ましい。Ar
3が置換もしくは無置換のヘテロアリール基であるとき、Ar
1及びAr
2は置換若しくは無置換のアリール基であることが好ましく、特に好ましくは、Ar
3がジベンゾヘテロール基であり、Ar
1及びAr
2は、環形成炭素数6〜18のアリール基である。
【0030】
Lの「置換若しくは無置換のアリーレン基」又は「置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基」としては、Ar
1、Ar
2、及びAr
3で挙げられた「置換若しくは無置換のアリール基」又は「置換若しくは無置換のヘテロアリール基」のアリール基及びヘテロアリール基と同様のものが挙げられる。Lの「置換若しくは無置換のアリーレン基」又は「置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基」のアリーレン基及びヘテロアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基、チエノチオフェニレン基、及びピリジレン基が好ましい。特に環形成炭素数6〜14のアリーレン基が好ましく、フェニレン基及びビフェニリレン基がより好ましい。また、Lが「単結合」であるということは、本発明の構造式(1)で表されるシリル基を有するアミン誘導体において、アミン部位の窒素原子(N)とAr
3とが直接結合している状態を表す。
【0031】
Ar
1、Ar
2、及びAr
3のアリール基又はヘテロアリール基に置換される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。アリール基及びヘテロアリール基の例示される具体例は、上記のAr
1、Ar
2、及びAr
3のアリール基及びヘテロアリール基と同じである。
【0032】
Ar
1、Ar
2、及びAr
3のアリール基又はヘテロアリール基に置換される置換基のアルキル基は特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等を例示することができる。
【0033】
Ar
1、Ar
2、及びAr
3のアリール基又はヘテロアリール基の置換基のアルコキシ基は特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基等を例示することができる。
【0034】
Lのアリーレン基又はヘテロアリーレン基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。例示される具体例は、Ar
1、Ar
2、及びAr
3のアリール基又はヘテロアリール基に置換される置換基として述べたアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。
【0035】
Ar
1、Ar
2、及びAr
3の少なくとも1つに置換されるシリル基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。例示される具体例は、Ar
1、Ar
2、及びAr
3のアリール基又はヘテロアリール基に置換される置換基として述べたアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基と同じであり、アルキル基及びアリール基が好ましく、特に、メチル基及びフェニル基が好ましい。また、Ar
1、Ar
2、及びAr
3の少なくとも1つに置換されるシリル基は、該シリル基にアルキル基の炭素数がそれぞれ1以上6以下のトリアルキルシリル基又は該シリル基に置換されるアリール基の環形成炭素数がそれぞれ6以上18以下のトリアリールシリル基であることが好ましい。
【0036】
式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体としては、以下に例示する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【0038】
式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体としては、好ましくは、上記の化合物1、2、3、4、5、6、8、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27,28、29、30、31、32、37、38、40、42、44、45、46、49、50、53、54、55、56、57、59、60、61、62、63、64、74、77、79、85、87、88、89、92、96、98、101、102、107、及び110が挙げられ、さらに好ましくは、化合物1、2、3、4、6、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、37、40、44、45、46、49、53、54、55、56、57、59、60、61、62、63、77、85、87、88、89、96、101、102、107、及び110が挙げられる。
【0039】
本発明の前記シリル基を有するアミン誘導体は、いずれも有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として利用することができる。一般式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体は、アミンの窒素原子(N)又はリンカー(L)に結合したAr
1、Ar
2、及びAr
3の置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基のうち少なくとも1つが電子強耐性を示す置換若しくは無置換のシリル基で置換されている。そのため、本発明のシリル基を有するアミン誘導体は、電子に対して安定であり、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、特に、発光層に隣接する正孔輸送層材料として好ましく使用されることができる。本発明のシリル基を有するアミン誘導体を正孔輸送層材料として用いることにより、正孔輸送層の電子耐性を向上させることができ、正孔輸送層に侵入した電子が原因となる正孔輸送材料の劣化を抑制し、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化を実現することが可能となる。
【0040】
また、本発明のシリル基を有するアミン誘導体の用途は、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料に限定されるわけではない。例えば、正孔注入層の材料にも好ましく用いることが可能である。シリル基を有するアミン誘導体を正孔注入層の材料として用いる場合も、電子が原因となる正孔注入層の劣化を抑制することができるため、正孔輸送層の材料として使用した場合と同様に、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化を実現することが可能となる。
【0041】
[有機エレクトロルミネッセンス素子]
有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、
図1に示すような構造を有していてもよいが、これに限定されるわけではない。
【0042】
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子100は、本発明のアミン誘導体が有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として利用される一実施形態の概略断面図であって、ガラス基板102、ガラス基板102上に配置された陽極104、陽極104上に配置された正孔注入層106、正孔注入層106上に配置された正孔輸送層108、正孔輸送層108上に配置された発光層110、発光層110上に配置された電子輸送層112、及び電子輸送層112上に配置された陰極114を含んでもよい。ここで、電子輸送層112は、電子注入層としても機能するものとする。
【0043】
陽極104は、酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等を用いて形成されてもよい。
【0044】
正孔注入層106は、4,4',4"-Tris (N-1-naphtyl-N-phenylamino) triphenylamine (1-TNATA)、または4,4',4''-tris(N-(2-naphthyl)-N-phenylamino)-triphenylamine (2-TNATA)、4,4 -Bis(N,N -di(3-tolyl)amino)-3,3-dimethylbiphenyl (HMTPD)等を含んでもよく、例えば、以下に示す化合物を含んでもよい。
【化50】
【0045】
正孔輸送層108には、一般式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体を用いて形成することができる。
【0046】
発光層110には、ホスト材料として、例えば以下に示す化合物を含んでもよい。
【化51】
但し、発光層110にホスト材料として含まれる化合物は、上述の化合物に限定されず、公知の材料をホスト材料として使用してもよい。
【0047】
また、発光層110には、ドーパントとして、例えば以下に示す化合物を含んでもよい。
【化52】
但し、発光層110にドーパントとしてドープされる化合物は、上述の化合物に限定されず、所望の色領域に応じて公知の材料をドーパントとして使用してもよい。ドーパントは、発光層110を構成する材料に0.1%〜50%ドープされることが好ましい。
【0048】
電子輸送層112は、例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminium(Alq3)などを含んでもよい。また、以下に示す化合物を含んでもよい。
【化53】
【0049】
陰極114は、Al、Ag、Caなどの金属や酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明材料により形成される。
【0050】
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子100では、記載を省略したが、有機エレクトロルミネッセンス素子100は、陰極114と電子輸送112との間に電子注入層含んでもよい。電子注入層は、例えば、フッ化リチウム(LiF)、リチウム8-キノリナート等を含んでもよい。
【0051】
上述したように、一般式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体は、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層の材料として用いることができる。しかしながら、本発明のシリル基を有するアミン誘導体の用途は、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料に限定されるわけではなく、正孔注入材料として正孔注入層に含まれてもよい。
【0052】
前記正孔注入層106及び正孔輸送層108等、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する正孔注入層材料及び正孔輸送層材料のうち、少なくともいずれかの材料に本発明のアミン誘導体を用いることによって、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化を達成することができる。
【0053】
上述したように、本発明のシリル基を有するアミン誘導体は、電子耐性を有するため、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層材料又は正孔注入層材料として好ましいが、これらに限定されるわけではない。例えば、発光層内のホスト材料として用いてもよい。
【0054】
[実施例I]
一般式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体について、前記化合物1、3、61、63の合成法の例を以下に述べる。但し、以下に述べる合成法は一例であって、本発明を限定するものでは無い。
【0055】
(化合物1の合成)
以下の化学反応式は、一般式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体である化合物1の合成プロセスを図示したものである。
【化54】
【0056】
本発明の化合物1は、以下のようにして合成を実施した。
【0057】
反応容器に化合物(i)(1.57g, 4.33mmol)、化合物(ii)(1.50g, 3.61mmol)、Pd
2(dba)
3・CHCl
3(0.37g, 0.36mmol)、トルエン(36mL)加えた。次に、トリ(t−ブチル)ホスフィン(0.93mL, 1.44mmol、 1.56M)、ナトリウムt−ブトキシド(1.04g, 10.8mmol)を加え、容器内を窒素置換し、その後80℃で4時間撹拌した。放冷後、反応溶液に水を加えて有機層の抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)により精製し、得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である化合物1である白色粉末状固体を2.26g、収率90%で得た(FAB−MS:C51H41NSi,測定値695)。
【0058】
(化合物3の合成)
以下の化学反応式は、本発明のアミン誘導体である化合物3の合成プロセスを図示したものである。
【化55】
【0059】
本発明の化合物3は、以下のようにして合成を実施した。
【0060】
反応容器に化合物(iii)(1.52g, 4.33mmol)、化合物(ii)(1.50g, 3.61mmol)、Pd
2(dba)
3・CHCl
3(0.37g, 0.36mmol)、トルエン(36mL)加えた。次に、トリ(t−ブチル)ホスフィン(0.93mL, 1.44mmol、 1.56M)、ナトリウムt−ブトキシド(1.04g, 10.8mmol)を加え、容器内を窒素置換し、その後80℃で4時間撹拌した。放冷後、反応溶液に水を加えて有機層の抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)により精製し、得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である化合物3である白色粉末状固体を1.00g、収率40%で得た(FAB−MS:C48H35NSSi,測定値685)。
【0061】
(化合物61の合成)
以下の化学反応式は、本発明のアミン誘導体である化合物61の合成プロセスを図示したものである。
【化56】
【0062】
本発明の化合物61は、以下のようにして合成を実施した。
【0063】
反応容器に化合物(iv)(0.70g, 1.44mmol)、化合物(v)(0.71g, 1.44mmol)、Pd(dba)
2(0.04g, 0.07mmol)、トルエン(30mL)加えた。次に、トリ(t−ブチル)ホスフィン(0.14mL, 0.28mmol、2.00M)、ナトリウムt−ブトキシド(0.21g, 2.16mmol)を加え、容器内を窒素置換し、その後還流下で6時間撹拌した。放冷後、反応溶液に水を加えて有機層の抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン)により精製し、得られた固体をジクロロメタン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である化合物61である白色粉末状固体を1.15g、収率89%で得た(FAB−MS:C66H48N2Si,測定値897)。
【0064】
(化合物63の合成)
以下の化学反応式は、本発明のアミン誘導体である化合物63の合成プロセスを図示したものである。
【化57】
【0065】
本発明の化合物63は、以下のようにして合成した。
【0066】
反応容器に化合物(iv)(1.00g, 2.06mmol)、化合物(ii)(0.85g, 2.06mmol)、Pd(dba)
2(0.06g, 0.10mmol)、トルエン(10mL)加えた。次に、トリ(t−ブチル)ホスフィン(0.03mL, 0.06mmol、2.00M)、ナトリウムt−ブトキシド(0.30g, 3.08mmol)を加え、容器内を窒素置換し、その後還流下で4時間撹拌した。放冷後、反応溶液に水を加えて有機層の抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘキサン)により精製し、得られた固体をジクロロメタン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である化合物63である白色粉末状固体を1.59g、収率94%で得た(FAB−MS:C60H44N2Si,測定値821)。
【0067】
以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子材料として、上述した化合物1を正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の実施例1について説明する。
【0068】
本発明の実施例1の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製は真空蒸着により行い、次のような手順で行った。先ず、あらかじめパターニングして洗浄処理を施したITO−ガラス基板に、オゾンによる表面処理を行った。尚、前記ITO膜の膜厚は、150nmである。オゾン処理後すぐに、正孔注入材料として4,4’,4’’−トリス(N,N−(2−ナフチル)フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA,膜厚60nm)を前記ITO膜上に成膜した。
【0069】
次に、正孔輸送材料として本発明の化合物1を成膜し(30nm)、次に、発光材料として2,5,8,11−テトラ−t−ブチル−ペリレン(TBP)を、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に対して3%の割合でドープした膜を共蒸着によって成膜した(25nm)。
【0070】
さらに、次に、電子輸送材料としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq
3)を成膜し(25nm)、次に、電子注入材料としてフッ化リチウム(LiF)(1.0nm)及び陰極としてアルミニウム(100nm)を順次積層し、
図2に示す有機エレクトロルミネッセンス素子200を作製した。
【0071】
実施例2として、実施例1で用いた化合物1の代わりに化合物3を用いた以外は、実施例1と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0072】
実施例3として、実施例1で用いた化合物1の代わりに化合物61を用いた以外は、実施例1と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0073】
実施例4として、実施例1で用いた化合物1の代わりに化合物63を用いた以外は、実施例1と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0074】
比較例1及び比較例2として、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層の材料を構成する化合物として以下に示す構造式の比較化合物1及び比較化合物2を用いて、実施例1と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。尚、比較例1及び比較例2で用いた化合物は、シリル基を備えない構造を有する点において、本発明のアミン誘導体と異なる。
【化58】
【0075】
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子200の実施例1乃至実施例4、比較例1、及び比較例2の概略図を
図2に示す。作製した有機エレクトロルミネッセンス素子200は、陽極204、陽極204上に配置された正孔注入層206、正孔注入層206上に配置された正孔輸送層208、正孔輸送層208上に配置された発光層210、発光層210上に配置された電子輸送層212及び電子注入層214、電子注入層214上に配置された陰極216を含む。
【0076】
作製した実施例1乃至実施例4、比較例1及び比較例2の有機エレクトロルミネッセンス素子200の素子性能を以下の表1に示す。尚、電流効率は10mA/cm
2における値を示し、半減寿命は初期輝度1,000cd/m
2からの輝度半減時間を示す。
【表1】
【0077】
尚、作製した有機エレクトロルミネッセンス素子200の電界発光特性の評価には、浜松ホトニクス製C9920−11輝度配向特性測定装置を用いた。
【0078】
表1によれば、本発明の実施例1乃至実施例4の有機エレクトロルミネッセンス素子は、比較例1及び比較例2の有機エレクトロルミネッセンス素子に対して、長寿命化していることが分かる。
【0079】
一般式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体は、電子耐性を有するシリル基を備えており、電子に対して安定な正孔輸送を行うことができる材料である。そのため、本発明のシリル基を有するアミン誘導体を用いることにより、正孔輸送層に侵入した電子が原因となる素子の劣化を抑制することができ、素子の長寿命化を実現することができる。
【0080】
前述した実施例1〜4においては、一般式(1)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体を有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料に利用した例を説明したが、本発明のシリル基を有するアミン誘導体の利用は有機エレクトロルミネッセンス素子に限定されず、その他の発光素子又は発光装置に利用されてもよい。また、
図1及び
図2に示す有機エレクトロルミネッセンス素子は、パッシブ・マトリクス駆動方式の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに利用されるが、アクティブ・マトリクス駆動方式の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに利用することもできる。
【0081】
本願発明者らは、一般式(1)で表されるアミン誘導体のうち、特に、以下に述べる構造を有するアミン誘導体を有機エレクトロルミネッセンス材料として発光層と陽極との間に配置することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率、駆動電圧及び寿命に著しい改善が得られることを確認した。
【0082】
一般式(1)で表されるアミン誘導体の好ましい構造は、一般式(1)において、Ar
1及びAr
2がそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、Ar
1及びAr
2のうち少なくとも1つは置換若しくは無置換のシリル基で置換されており、Ar
3が置換若しくは無置換のカルバゾリル基であり、Lが置換若しくは無置換のアリーレン基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基を含む2価の連結基である。一般式(1)で表されるアミン誘導体の好ましい構造を以下の一般式(2)に表す。
【化59】
【0083】
ここで、Ar
1及びAr
2の「置換若しくは無置換のアリール基」又は「置換若しくは無置換のヘテロアリール基」のアリール基及びヘテロアリール基としては、前述したように、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ビフェニレン基、ピレニル基、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−フェニルカルバゾリル基が好ましい。アリール基としては、環形成炭素数6以上18以下であることが好ましく、ヘテロアリール基としては、環形成原子数5以上18以下であることが好ましい。
【0084】
Ar
1及びAr
2のアリール基またはヘテロアリール基に置換される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。アリール基及びヘテロアリール基の例示される具体例は、上述のAr
1及びAr
2の具体的な基として挙げたアリール基及びヘテロアリール基と同じである。ハロゲン原子としては、特に限定されないが、フッ素原子であってもよい。アルキル基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等であってもよい。アルコキシ基としては、特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基等であってもよい。
【0085】
Ar
3は置換若しくは無置換のカルバゾリル基であり、該カルバゾリル基は9位の位置でLと結合する。一般式(2)におけるR
1乃至R
8はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5以上30以下のヘテロアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1以上15以下のアルキル基、置換若しくは無置換のシリル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は重水素原子である。カルバゾリル基のR
1乃至R
8に置換されるアリール基又はヘテロアリール基としては、上述したAr
1及びAr
2の置換若しくは無置換のアリール基及びヘテロアリール基と同じであってもよい。カルバゾリル基のR
1乃至R
8に置換されるアルキル基としては、上述したAr
1及びAr
2のアリール基及びヘテロアリール基に置換されるアルキル基と同じであってもよい。以上に述べたカルバゾリル基のR
1乃至R
8に置換される置換基には、例えば、上述したAr
1及びAr
2のアリール基またはヘテロアリール基に置換される置換基と同じであってもよい。尚、一般式(2)におけるR
1乃至R
8は、互いに結合して、飽和又は不飽和の環を形成してもよい。
【0086】
Lは、2価の連結基であり、好ましくは、置換若しくは無置換のアリーレン基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基である。Lの置換若しくは無置換のアリーレン基は、環形成炭素数6以上18以下であることが好ましい。Lの置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基は、環形成原子数5以上18以下であることが好ましい。Lの「置換若しくは無置換のアリーレン基」又は「置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基」のアリーレン基及びヘテロアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基、アントラセニレン基、トリフェニレン基、フルオレニレン基などが挙げられ、フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基が好ましい。
【0087】
尚、Lがフルオレニレン基である場合、一般式(2)におけるAr
1及びAr
2は環形成炭素数6以上12以下のアリール基であってもよい。
【0088】
Ar
1及びAr
2のうち少なくとも1つに置換されるシリル基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。具体的には、Ar
1及びAr
2のアリール基又はヘテロアリール基に置換される置換基として述べたアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。特に、Ar
1及びAr
2のうち少なくとも1つに置換される置換されたシリル基としては、該シリル基に置換されるアリール基の環形成炭素数がそれぞれ6以上18以下のトリアリールシリル基、又は該シリル基に置換されるアルキル基の炭素数がそれぞれ1以上6以下のトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0089】
本発明の好ましいアミン誘導体である一般式(2)で表されるアミン誘導体としては、以下に例示する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【0091】
本発明のアミン誘導体の好ましい構造において、一般式(1)におけるAr
3が置換若しくは無置換のカルバゾリル基である。本発明のアミン誘導体にカルバゾリル基を導入することにより、正孔輸送性が向上する。さらに、Ar
1及びAr
3の少なくとも一方に置換されるシリル基を有する本発明のアミン誘導体において、カルバゾリル基を導入することにより、より適切なHOMO準位を実現することができる。また、連結基Lを介してカルバゾリル基がアミン部位と結合することにより、さらにHOMOの準位が調整される。したがって、このアミン誘導体を有機エレクトロルミネッセンス材料として発光層と陽極との間に配置することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させ、低駆動電圧化及び長寿命化を実現することができる。特に、本発明のアミン誘導体は、青色〜青緑色領域において、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させ、低駆動電圧化及び長寿命化を実現することができる。
【0092】
本発明のアミン誘導体の好ましい構造を表す一般式(2)で表される本発明のアミン誘導体は、上述したような
図1で表された有機エレクトロルミネッセンス素子100の正孔輸送層の材料として用いることができる。尚、
図1に示された有機エレクトロルミネッセンス素子100の構成は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一実施形態であり、これに限定されるわけではなく種々の変更が可能である。
【0093】
また、本発明のアミン誘導体の好ましい構造を表す一般式(2)で表される本発明のアミン誘導体の用途は、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料に限定されるわけではなく、正孔注入層の材料又は発光層の材料としても用いることが可能であり、正孔注入層の材料又は発光層の材料として用いる場合も、正孔輸送層の材料として使用した場合と同様に、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させ、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化を実現することが可能となる。
【0094】
[実施例II]
一般式(2)で表される本発明のアミン誘導体について、前記化合物A−10、A−26、A−39及びA−40の合成法の例を以下に述べる。但し、以下に述べる合成法は一例であって、本発明を限定するものでは無い。
【0095】
(化合物A−1の合成)
アルゴン雰囲気下、100mLの三つ口フラスコに、化合物(vi)1.50gと化合物(vii)1.90g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)
2)0.11g、トリ−t−ブチルホスフィン((t-Bu)
3P)0.15g、ナトリウムt−ブトキシド0.54 gを加えて、45mLのトルエン溶媒中で6時間加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を使用)で精製後、トルエン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物A−1を2.50g(収率81%)得た。
【化74】
【0096】
1H NMR測定で測定された化合物A−1のケミカルシフト値は、8.15(d, 2H), 7.81(d, 2H), 7.66−7.51(m, 14H), 7.51−7.34(m, 18H), 7.34−7.26(m, 6H), 7.17(d, 2H)であった。また、FAB−MS測定により測定された化合物A−1の分子量は、821であった。
【0097】
(化合物A−23の合成)
アルゴン雰囲気下、100mLの三つ口フラスコに、化合物(viii)1.20gと化合物(vii)1.07g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)
2)0.06g、トリ−t−ブチルホスフィン((t-Bu)
3P)0.09g、ナトリウムt−ブトキシド0.31gを加えて、36mLのトルエン溶媒中で8時間加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を使用)で精製後、トルエン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物A−23を1.60g(収率76%)得た。
【化75】
【0098】
1H NMR測定で測定された化合物A−23のケミカルシフト値は、8.30(d, 2H), 7.98(d, 2H), 7.82(d, 1H), 7.75−7.18(m, 39H), 7.37−7.23(m, 6H), 7.15(d, 2H)であった。また、FAB−MS測定により測定された化合物A−23の分子量は、984であった。
【0099】
(化合物A−26の合成)
アルゴン雰囲気下、100mLの三つ口フラスコに、化合物(ix)1.50gと化合物(x)2.70g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)
2)0.13g、トリ−t−ブチルホスフィン((t-Bu)
3P)0.19g、ナトリウムt−ブトキシド0.67gを加えて、45mLのトルエン溶媒中で7時間加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を使用)で精製後、トルエン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物A−26を3.29g(収率86%)得た。
【化76】
【0100】
1H NMR測定で測定された化合物A−26のケミカルシフト値は、8.07(d, 2H), 7.75(d, 2H), 7.67−7.52(m, 12H), 7.51−7.33(m, 18H), 7.33−7.20(m, 8H), 7.16(d, 2H)であった。また、FAB−MS測定により測定された化合物A−26の分子量は、821であった。
【0101】
(化合物A−39の合成)
アルゴン雰囲気下、100mLの三つ口フラスコに、化合物(ix)1.50gと化合物(vii)2.35g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)
2)0.13g、トリ−t−ブチルホスフィン((t-Bu)
3P)0.19g、ナトリウムt−ブトキシド0.67gを加えて、45mLのトルエン溶媒中で7時間加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を使用)で精製後、トルエン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物A−39を2.74g(収率79%)得た。
【化77】
【0102】
1H NMR測定で測定された化合物A−39のケミカルシフト値は、8.09(d, 2H), 7.76(d, 2H), 7.65−7.51(m, 10H), 7.51−7.35(m, 18H), 7.32−7.21(m, 6H), 7.18 (d, 2H)であった。また、FAB−MS測定により測定された化合物A−39の分子量は、744であった。
【0103】
(化合物A−40の合成)
アルゴン雰囲気下、100mLの三つ口フラスコに、化合物(vi)1.50gと化合物(x)2.18g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)
2)0.11g、トリ−t−ブチルホスフィン((t-Bu)
3P)0.15g、ナトリウムt−ブトキシド0.54gを加えて、45mLのトルエン溶媒中で7時間加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を使用)で精製後、トルエン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物A−40を2.97g(収率88%)得た。
【化78】
【0104】
1H NMR測定で測定された化合物A−40のケミカルシフト値は、8.18(d, 2H), 7.82(d, 2H), 7.68−7.51(m, 14H), 7.51−7.35(m, 20H), 7.35−7.28(m, 8H), 7.16(d, 2H)であった。また、FAB−MS測定により測定された化合物A−40の分子量は、896であった。
【0105】
以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子材料として、上述した化合物A−1、化合物A−23、化合物A−26、化合物A−39及び化合物A−40を正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。化合物A−1を正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を実施例5、化合物A−23を正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を実施例6、化合物A−26を正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を実施例7、化合物A−39を正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を実施例8、化合物A−40を正孔輸送層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を実施例9とする。
【0106】
本発明の実施例5の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製は、上述した実施例1の有機エレクトロルミネッセンス素子と同様に真空蒸着により行い、次のような手順で行った。先ず、あらかじめパターニングして洗浄処理を施したITO−ガラス基板に、オゾンによる表面処理を行った。尚、前記ITO膜の膜厚は、150nmである。オゾン処理後すぐに、正孔注入材料として4,4’,4’’−トリス(N,N−(2−ナフチル)フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA,膜厚60nm)を前記ITO膜上に成膜した。
【0107】
次に、正孔輸送材料として本発明の化合物A−1を成膜し(30nm)、次に、発光材料として2,5,8,11−テトラ−t−ブチル−ペリレン(TBP)を、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に対して3%の割合でドープした膜を共蒸着によって成膜した(25nm)。
【0108】
次に、電子輸送材料としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を成膜し(25nm)、次に、電子注入材料としてフッ化リチウム(LiF)(1.0nm)及び陰極としてアルミニウム(100nm)を順次積層し、
図2に示す有機エレクトロルミネッセンス素子200を作製した。
【0109】
実施例6、7、8及び9の有機エレクトロルミネッセンス素子作製は、実施例5で用いた化合物A−1の代わりに化合物A−23、化合物A−26、化合物A−39、化合物A−40を用いたこと以外は、実施例5と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0110】
比較例3及び比較例4として、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層の材料を構成する化合物として以下に示す構造式の比較化合物3、比較化合物4を用いて、実施例5と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【化79】
【0111】
実施例5〜比較例4で作成した有機エレクトロルミネッセンス素子200について、駆動電圧、電流効率、半減寿命を評価した。なお、発光効率は10mA/cm
2における値を示し、半減寿命は初期輝度1,000cd/m
2からの輝度半減時間を示す。評価結果を表2に示す。
【表2】
【0112】
表2によれば、本発明の実施例5乃至実施例9の有機エレクトロルミネッセンス素子は、比較例3及び比較例4の有機エレクトロルミネッセンス素子に比して、発光効率が向上し、長寿命化していることが分かる。また、本発明の実施例5乃至実施例9の有機エレクトロルミネッセンス素子は、比較例3及び比較例4の有機エレクトロルミネッセンス素子に比して、駆動電圧も低くなっていることが分かる。
【0113】
前述した実施例5乃至実施例9においては、一般式(2)で表される本発明の好ましいアミン誘導体を有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料に利用した例を説明したが、本発明のアミン誘導体の利用は有機エレクトロルミネッセンス素子に限定されず、その他の発光素子又は発光装置に利用されてもよい。また、一般式(2)で表される本発明のシリル基を有するアミン誘導体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、パッシブ・マトリクス駆動方式の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに利用されてもよく、アクティブ・マトリクス駆動方式の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに利用されてもよい。