特許第6307691号(P6307691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オーディオテクニカの特許一覧

<>
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000002
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000003
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000004
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000005
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000006
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000007
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000008
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000009
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000010
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000011
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000012
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000013
  • 特許6307691-コネクタおよびコネクタの製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307691
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/04 20060101AFI20180402BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20180402BHJP
   H01R 24/30 20110101ALI20180402BHJP
【FI】
   H04R1/04 Z
   H01R12/71
   H01R24/30
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-56630(P2014-56630)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-179975(P2015-179975A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智
(72)【発明者】
【氏名】岸本 司郎
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−019325(JP,A)
【文献】 実開昭53−072150(JP,U)
【文献】 実開昭56−037281(JP,U)
【文献】 特開2008−072545(JP,A)
【文献】 特開2006−067455(JP,A)
【文献】 米国特許第05373626(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/04
H04R 4/02
H01R 12/71
H01R 24/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルに結合されるピンが固定されピン組立と、
前記ピン組立が挿入されて固定され導電材料からなるレセプタクルと、
前記レセプタクルの端部外周に固定され筒状金属部材と、
前記筒状金属部材の開口端部に固定され、前記ピンが挿通される孔を有し、前記孔に挿通された前記ピンが電気的に接続されたプリント配線基板と、
を有するコネクタであって、
前記プリント配線基板と前記ピン組立との間に、前記プリント配線基板の前記孔と前記ピンとの隙間を塞ぐ封止材が配置され
前記封止材は、前記プリント配線基板と前記筒状金属部材と前記ピン組立により形成される空間に充填された樹脂材である、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記筒状金属部材の内側には、前記ピン組立の周を囲むリング部材が配置されていて、
前記樹脂材は、前記リング部材の内側の空間に充填されている、
請求項記載のコネクタ。
【請求項3】
前記封止材は、絶縁性の磁性粉を含む、
請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記プリント配線基板は、前記孔以外にプリント配線基板の両面を貫く貫通孔を少なくとも一つ備えている、
請求項1乃至のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
ケーブルに結合されるピンが固定されたピン組立と、
前記ピン組立が挿入されて固定された導電材料からなるレセプタクルと、
前記レセプタクルの端部外周に固定された筒状金属部材と、
前記筒状金属部材の開口端部に固定され、前記ピンが挿通される孔を有し、前記孔に挿通された前記ピンが電気的に接続されたプリント配線基板と、
を有し、
前記プリント配線基板と前記ピン組立との間に、前記プリント配線基板の前記孔と前記ピンとの隙間を塞ぐ封止材が配置され、
前記封止材は、前記プリント配線基板と前記筒状金属部材と前記ピン組立により形成される空間に充填された樹脂材である、コネクタの製造方法であって、
前記レセプタクルに前記ピン組立を固定する工程と、
前記レセプタクルに前記筒状金属部材を固定する工程と、
前記プリント配線基板と前記筒状金属部材と前記ピン組立により形成される空間に前記樹脂材を充填する工程と、
前記筒状金属部材の開口端部にプリント配線基板を配置する工程と、
を有する、コネクタの製造方法。
【請求項6】
前記プリント配線基板は貫通孔を有し、前記封止材は、前記プリント配線基板を前記筒状金属部材に固定した後に、前記貫通孔を通して前記プリント配線基板と前記筒状金属部材と前記ピン組立により形成される空間に充填する、請求項5記載のコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ機器の接続に用いられるコネクタおよびコネクタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器の接続には規格化されたコネクタを備えるケーブルが用いられる。例えば、ケーブル側の端部にオス側のコネクタが配置され、オーディオ関連機器側にメス側のコネクタが配置される。
【0003】
オーディオ機器の一種としてマイクロホンが知られている。マイクロホンに用いられるマイクロホンユニットには、様々な種類があるが、例えば、コンデンサーマイクロホンは、マイクロホンユニットの出力インピーダンスが高く、インピーダンス変換器を必要とする。インピーダンス変換器は、FET(電界効果型トランジスタ)等により構成される。タイピン型やグースネック型のコンデンサーマイクロホンでは、マイクロホンを目立たせないように、小型化が図られる。そのために、インピーダンス変換器もマイクロホンユニット部に内蔵される。
【0004】
また、マイクロホンは、回路収納部を有する。回路収納部は、マイクロホンユニット部と別に設けられ、ローカット回路や、出力回路を収納する。このようなマイクロホンは、専用のケーブルを用いて外部機器(例えば、ミキサーやアンプなど)と接続される。
【0005】
マイクロホンユニット部は音声を電気信号に変換する。そして、マイクロホンユニット部は、その電気信号を回路収納部に伝達する。回路収納部は、マイクロホンユニット部から伝達された電気信号を、内部の出力回路によって出力する。回路収納部に内蔵されているローカット回路や出力回路を、パワーモジュール部と称する。
【0006】
マイクロホンと外部機器の接続に用いられるケーブルは、2芯のシールドケーブルである。このケーブルは、2芯に当たる2本の導体が信号線であって、シールドがシールド線として構成されている。なお、信号線の一方を電源線として用いることもある。この場合、電源線となった導体を介してコンデンサーマイクロホンに電源が供給される。信号線は、インピーダンス変換器からパワーモジュール部に入力された音声信号を外部機器へと出力する線である。シールド線は、電源線と信号線を静電遮蔽し接地する線である。
【0007】
信号線の一方を電源線として用いる場合、このケーブルによって伝送される音声信号は、不平衡信号である。不平衡信号は、外部からの電磁波の影響を受けやすく、外来雑音に対して脆弱である。例えば、外部からの電磁波がケーブルの部分に到達すると、この電磁波はケーブルを通じてマイクロホンユニット部あるいはパワーモジュール部に入り込む。この外部からの電磁波は、マイクロホンユニット部あるいはパワーモジュール部を構成している半導体素子によって検波される。この電磁波は、音声信号に雑音として混入し、出力される。不平衡信号の場合、雑音の影響を受けやすい。また、平衡信号であっても、電磁波のレベルが大きいときは、雑音が混入する。すなわち、信号の伝送方式に関わらず、外来の電磁波によって出力信号への雑音混入が生じる。これを防止するには、マイクロホンとケーブルを接続するコネクタにおいて、電磁遮蔽を施す必要がある。
【0008】
例えば、マイクロホン用のコネクタ(以下「マイクロホンコネクタ」という。)は、マイクロホン用のケーブル(以下「マイクロホンケーブル」という)を上記のマイクロホンやミキサーなどに挿抜可能にする構成を備えている。マイクロホンケーブルの端部には、ケーブル側コネクタが取り付けられている。このケーブル側コネクタがマイクロホン側のコネクタと接続されて、電気的な接続を確立する。
【0009】
例えば、ケーブル側コネクタには、3個の細い筒型のピン受け部(ソケット)が埋め込まれている。この場合、ケーブル側コネクタの3個のピン受け部は、マイクロホンコネクタが備える3本のピンを受け入れ可能に構成されている。
【0010】
また、マイクロホン側コネクタは、金属からなる円筒状のレセプタクルを備え、マイクロホンやミキサーなどに取り付けられる。マイクロホン側コネクタは、電磁遮蔽構造を有する。この電磁波遮蔽構造は、接地用の1番ピンをマイクロホンあるいはミキサーなどの外筐と電気的に接続して接地するものである。
【0011】
従来の電磁遮蔽構造は、1番ピンの接続端子とマイクロホンあるいはミキサーなどの接地箇所を電線で結んでいた。しかし、外部からマイクロホンあるいはミキサーなどの内部に高周波電流を引き込んでしまい、雑音が出力される原因となっていた。この雑音混入を防ぐことを目的として、レセプタクルにおいて、1番ピンと2番ピンとの間、1番ピンと3番ピンとの間、それぞれにチップ部品であるセラミックコンデンサを半田付けするコネクタが知られている。各ピン間をまたがるセラミックコンデンサを配置することで、高周波電流を短絡させて、雑音の発生を防ぐことができる。
【0012】
しかし、セラミックコンデンサを各ピン間に直接半田付けすると、セラミックコンデンサが破壊されることがある。これは、マイクロホン側コネクタにマイクロホン側ケーブルを抜き差しするごとに、マイクロホン側コネクタのピンに微小な変位が生じ、セラミックコンデンサへのストレスとなるためである。微小な変位が半田付け部分を介してセラミックコンデンサに加わり、破壊の原因となる。
【0013】
そこで、本出願人は、オーディオ関連機器のコネクタ、特にマイクロホンのコネクタにおける外来電磁波の遮蔽を目的として用いるセラミックコンデンサの配置構造を工夫した発明について、先に特許出願した(特許文献1参照)。
【0014】
特許文献1のコネクタは、マイクロホン側コネクタのピンにプリント配線基板を接続させたものである。このプリント配線基板には、特定の配線パターンと、配線パターンに接続されたコンデンサが備わっている。すなわち、このプリント配線基板は、接地用のピンに接続される配線パターンと他のピンに接続される配線パターンとの間にコンデンサが接続されている。このコンデンサで高周波成分を短絡することによって、外部から進入しようとする電磁波の進入を遮蔽することができる。
【0015】
特許文献1のコネクタであれば、ケーブルの抜き差しによるストレスが電磁遮蔽用のコンデンサに加わらない。したがって、このコンデンサが例えばセラミックコンデンサであったとしても、物理的な力によるコンデンサ破壊を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−067455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、特許文献1のコネクタには、さらに工夫の余地がある。特許文献1のコネクタを生産する過程において、半田が回路を短絡させる可能性がある。これは、ピンとプリント配線基板の半田付けをする際、溶けた半田がプリント配線基板とピンとの隙間から内部に流れ込むことが原因である。
【0018】
図12及び図13は、従来のコネクタ10の縦断面図の例である。図12及び図13に示されるように、コネクタ10は、円筒状の金属部材であるレセプタクル30を有している。レセプタクル30の一方の端部(図12図13において下端部)にはフランジ部が形成されている。また、レセプタクル30の他方の端部の開口部には、ピン組立40が固定されている。ピン組立40は、絶縁座43と、絶縁座43を厚さ方向に貫くピン41とを、有してなる。ピン41の一方の端部は、例えば、マイクロホンのパワーモジュール部への配線が接続される接続端子42になっている。
【0019】
レセプタクル30の上端部外周には、筒状金属部材20が嵌合されている。また、筒状金属部材20の開放端には、プリント配線基板80が配置されている。プリント配線基板80は、ピン41が挿入されるスルーホールを備える。プリント配線基板80は、表面側配線パターンと裏面側配線パターンが形成されている。ピン41が挿入されるスルーホールの周囲には、配線パターンが形成されている。ピン41が配線パターンに半田付けできるようになっている。
【0020】
図12は、プリント配線基板80とピン41との半田付けが適正な例を示すコネクタ10の縦断面図である。図12に示されるように、半田70の量が適正であれば、溶けた半田70がプリント配線基板80のスルーホール内に行き渡る。そして、綺麗な半田フィレットがプリント配線基板80の両面に形成される。その結果、プリント配線基板80の両面で、ピン41がプリント配線基板80に確実に接続される。図12に示されるような半田フィレットが形成されれば、コネクタ10において、ピン41とプリント配線基板80の配線パターン、および、ピン41とその他の金属部分(例えば、筒状金属部材20)との間が短絡されることはない。
【0021】
図13は、プリント配線基板80とピン41との半田付けが不適正な例である。図13に示されるように、半田70の量が過剰であると、溶けた半田70がプリント配線基板80のスルーホールを通って、プリント配線基板80の裏面側に流れ込む。その半田の量が多いと、図13に示すような半田70の塊がプリント配線基板80の裏面側に形成される。このような半田70の塊は、ピン41とプリント配線基板80の配線パターンなど、本来は導通させない箇所を電気的に導通させてしまう。また、ピン41、プリント配線基板80、筒状金属部材20のそれぞれの間を短絡させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記の課題に鑑みたものであって、オーディオ機器の接続用のコネクタにおいて、ピンとプリント配線基板の半田付けの際に、ピンとピン、ピンとコンデンサと金属部分、などを短絡させることなく、安全かつ効率よく生産できるコネクタを提供することを目的とする。
【0023】
本発明に係るコネクタは、ケーブルに結合されるピンが固定されピン組立と、ン組立が挿入されて固定され導電材料からなるレセプタクルと、セプタクルの端部外周に固定され筒状金属部材と、状金属部材の開口端部に固定され、ンが挿通される孔を有し、孔に挿通されたピンが電気的に接続されたプリント配線基板と、を有するコネクタであって、リント配線基板とン組立との間に、リント配線基板のンとの隙間を塞ぐ封止材が配置され、封止材は、プリント配線基板と筒状金属部材とピン組立により形成される空間に充填された樹脂材である、ことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ピンとプリント配線基板の半田付けの際に、ピンとピン、ピンとコンデンサと金属部分、などを短絡させることがない。そのため、安全かつ効率の良いコネクタの生産ができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るコネクタの実施例を示す縦断面図である。
図2】上記コネクタ上面図である。
図3】上記コネクタが備えるプリント配線基板の(a)表面側のプリント配線パターンの例を示す平面図、(b)裏面側のプリント配線パターンの例を示す平面図、(c)プリント配線基板の裏面にコンデンサを実装した様子を示す裏面図、である。
図4】上記コネクタの生産工程の一工程の例を示す図である。
図5】上記コネクタの別の生産工程の例を示す図である。
図6】上記コネクタのさらに別の生産工程の例を示す図である。
図7】上記コネクタのさらに別の生産工程の例を示す図である。
図8】本発明に係るコネクタの別の実施例を示す縦断面図である。
図9】本発明に係るコネクタのさらに別の実施例を示す縦断面図である。
図10】本発明に係るコネクタと、これに接続されるケーブル側コネクタの全体構造を示す縦断面図である。
図11図10に示されたケーブル側コネクタのA−A線矢視図である。
図12】従来のコネクタにおける半田付けが適正な場合の例を示す縦断面図である。
図13】従来のコネクタにおける半田付けが不適正な場合の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るコネクタの実施例について、図面を参照しながら説明する。本発明に係るコネクタは、オーディオ機器の接続に用いられるものである。一般にオーディオ機器の接続には、ケーブルが用いられる。本発明に係るコネクタは、この接続用のケーブルの端部、または、ケーブル端部を介してケーブルが接続されるオーディオ機器側のいずれにも用いることができる。以下の実施例は、オーディオ機器の例としてマイクロホンを用いている。また、以下の実施例は、本発明に係るコネクタをオーディオ機器側(マイクロホン側)に用いる場合を例示している。なお、以下の実施例の説明に用いているケーブルは、2芯のシールドケーブルであって、一方を信号線とし、他方を電源線として用いる場合を前提に説明している。本発明に係るコネクタの構成及び効果は、いずれの信号の形式においても有効である。
【0027】
まず、マイクロホン側のコネクタとケーブル側のコネクタの全体構成について説明する。図10は、本実施例に係るコネクタ100と、これに接続されるケーブル側コネクタ200の全体構造を示す縦断面図である。まず、ケーブル側コネクタ200について説明する。
【0028】
ケーブル側コネクタ200は、ケーブル(不図示)の端部に取り付けられている。ケーブル側コネクタ200が備えるコネクタ部201には、ピン受け部210が埋め込まれている。ピン受け部210は、コネクタ100が有する3本のピンを受け入れる構成になっている。コネクタ部201の後端面(図10において下端面)からは、端子部215が突出している。端子部215は、ピン受け部210と電気的に一体になっている。端子部215のそれぞれには、ケーブル(不図示)の一端側の2本の芯線及びシールド線がそれぞれ半田付けによって接続される。
【0029】
図示しないケーブルの外周には、絶縁レセプタクル260が通されている。絶縁レセプタクル260は、端子部215とケーブルの接続部分を取り囲み保護する。また、絶縁レセプタクル260は、この接続部分がコネクタハウジング250の内部などとショートするのを防止する。なお、絶縁レセプタクル260の外径は、コネクタ部201の外径とほぼ同じである。
【0030】
絶縁レセプタクル260の後端部には、かしめ金具270の円筒部271が嵌められている。かしめ金具270は、後ろ側の約半分がかしめ爪部272になっている。かしめ爪部272が、ケーブルの絶縁被覆(シース)からなる外周面をかしめる。これにより、絶縁レセプタクル260とかしめ金具270及びケーブルは一体化される。
【0031】
コネクタ部201は、円筒状のコネクタハウジング250に嵌められている。コネクタハウジング250は、コネクタ部201、絶縁レセプタクル260、及び円筒部271を覆うことができるだけの長さを有している。コネクタハウジング250の後端外周は、ブッシュ240の前端内周が嵌まるように構成されている。
【0032】
ブッシュ240は、テーパー状の根元部241と、根元部241よりも大径のカバー部242と、を有してなる。根元部241は、ケーブルの外径よりわずかに大きな内径を持つ。カバー部242は、かしめ金具270を覆うことができるようになっている。根元部241には、中心孔が形成されている。この中心孔にケーブル(不図示)が挿通される。
【0033】
図11は、図10に示されたケーブル側コネクタ200のA−A線矢視図である。図11に示されるように、ケーブル側コネクタ200は、いわゆる3ピン型である。コネクタ部201の1番ピンは、シールド用でケーブルのシールド線が接続される。また、コネクタ部201の1番ピンは、コネクタハウジング250などに電気的に接続されて接地がとられている。2番ピンには、ケーブルの信号用の線が接続される。3番ピンには、ケーブルの電源用の線が接続される。
【0034】
図10に戻り、コネクタ100について説明する。コネクタ100は、筒状金属部材120と、レセプタクル130と、ピン組立140と、封止材である樹脂材150と、プリント配線基板180と、を備えている。レセプタクル130の一端部外周には、フランジ133が形成されている。
【0035】
次に、コネクタ100の詳細な構造について説明する。図1は、本実施例に係るコネクタ100を示す縦断面図である。図1に示されるように、レセプタクル130は、導電材料からなる円筒状の部材である。レセプタクル130の外周には、雄ネジ部132が形成されている。雄ネジ部132の一部はDカット面になっている。図1はDカット面を通過する断面形状を示している。また、レセプタクル130の一端部(図1において下端部)外周には、フランジ133が形成されている。
【0036】
コネクタ100は、例えばマイクロホンの筐体500(図1では不図示)に固定される。筐体500に形成された孔に、筐体500の外側からレセプタクル130を挿入する。その後、筐体500の内側から雄ネジ部132にナットをネジ込む。このナットとフランジ133によって、筐体500の外壁を挟み込んで、コネクタ100を筐体500に固定する。
【0037】
レセプタクル130は、その外周面の上方端部近傍に雄ネジ部132よりも外径寸法が短いテーパー部分を有している。このテーパー部分は、雄ネジ部132と連続的に配置される。このテーパー部分の上方端部には、その外周を囲むように、テーパー部分から突出した突堤部131が形成されている。
【0038】
レセプタクル130の上方開口部であって、突堤部131の内側には、ピン組立140が固定されている。ピン組立140の固定方法は、レセプタクル130の開口部への嵌合、ネジ込み、その他適宜の手段を選択してよい。例えば、レセプタクル130の開口部にピン組立140を挿入した後に、突堤部131を内側に曲げてかしめる。こうすることで、ピン組立140はレセプタクル130に固定される。
【0039】
ピン組立140は、接続ピン141と、絶縁座143と、を有してなる。絶縁座143は、接続ピン141を固定する。接続ピン141は、3本のピンから構成されていて、絶縁座143を厚さ方向に貫通して固定されている。接続ピン141の端部には、接続端子142が形成されている。この接続端子142は、絶縁座143から外方に伸びている。
【0040】
レセプタクル130には、その内周面に沿ってケーブル側コネクタ200(図10を参照)のコネクタ部201が挿入される。レセプタクル130にコネクタ部201が挿入されると、コネクタ部201に設けられているピン受け部210のそれぞれと、レセプタクル130の3本の接続ピン141とが嵌り合う。接続ピン141のそれぞれがピン受け部210に対応している。すなわち、3本の接続ピン141は、それぞれ接地用の接続ピン141と、信号用の接続ピン141と、電源用の接続ピン141である。接続ピン141の一部である接続端子142には、パワーモジュール部などに接続する配線が接続される。したがって、パワーモジュール部などから出力される電気信号は、接続端子142、接続ピン141、ピン受け部210、マイクロホンケーブルを介して出力される。
【0041】
レセプタクル130の突堤部131の外周には、筒状金属部材120が結合されている。筒状金属部材120は、レセプタクル130と電気的に一体になっている。筒状金属部材120は、円筒状の本体部分121と、本体部分121よりも径が大きいフランジ状の基板受け部122と、を有している。
【0042】
筒状金属部材120の開口端部である基板受け部122には、プリント配線基板180が嵌められて固定されている。3本の接続端子142は、プリント配線基板180に形成されている孔(スルーホール)をそれぞれ貫通している。
【0043】
ここで、プリント配線基板180について説明する。図2は、コネクタ100の上面形状の例を示す上面図である。図2に示されるように、プリント配線基板180の外形は、円形状である。プリント配線基板180の表裏両面には、プリント配線パターン185が形成されている。また、プリント配線基板180には、3つのスルーホール(第1孔181、第2孔182、第3孔183)が形成されている。この3つのスルーホールは、3本の接続ピン141の一部である接続端子142が貫通するように構成されている。第1孔181には、1番ピンである接地用のピンの接続端子142が貫通する。第2孔182には、信号用の2番ピンの接続端子142が貫通する。第3孔183には、電源用の3番ピンの接続端子142が貫通する。
【0044】
図3は、コネクタ100が備えるプリント配線基板180の平面図である。図3(a)は、表面側のプリント配線パターン185を示す平面図である。図3(b)は、裏面側のプリント配線パターン185を示す平面図である。図3(c)は、コンデンサを実装した様子を示す平面図である。
【0045】
プリント配線基板180の表面側と裏面側のそれぞれには、異なるプリント配線パターン185が形成されている。プリント配線基板180には、3つのスルーホールの他に、貫通孔184が形成されている。貫通孔184は、プリント配線基板180を厚さ方向に貫いている。
【0046】
次に、プリント配線基板180の裏面のプリント配線パターン185について説明する。図3(b)に示されるように、裏面のプリント配線パターン185には、接続端子142と半田付けされる円形の半田付けランドと、各配線パターンに続く半田付けランド186、187、188、189が形成されている。
【0047】
接地用の接続端子142が接続される配線パターンは、プリント配線基板180の大部分を占め、他の接続端子142に接続される配線パターンを取り囲むように形成されている。
【0048】
上記半田付けランド186、187は、接地用の配線パターンに形成された半田付けランドである。半田付けランド186の近傍には、第2ピンと接続される配線パターン上に半田付けランド188が形成されている。また、半田付けランド187の近傍には、第3ピンと接続される配線パターン上に半田付けランド189が形成されている。
【0049】
図3(c)に示されるように、プリント配線基板180の裏面において、セラミックコンデンサ191が半田付けされている。このセラミックコンデンサは、上記の半田付けランド186、188にまたがって実装されている。また、セラミックコンデンサ191と同様に、上記の半田付けランド187、189には、セラミックコンデンサ192が実装されている。
【0050】
各孔の周囲には、円形の半田付けランドが形成されている。プリント配線基板180の両面において、接続端子142のそれぞれは、円形の半田付けランドに半田によって接続されている。プリント配線基板180に形成されている接地用の配線パターンは、筒状金属部材120に半田によって電気的に接続されている。そのため、レセプタクル130とマイクロホンケーブルのアース線が、筒状金属部材120を介して電気的に接続される。このようにしてレセプタクル130は、接地される。
【0051】
図1に戻る。プリント配線基板180の裏面側の空間には、絶縁性の封止材である樹脂材150が充填されている。樹脂材150によって、プリント配線基板180の裏面側空間(プリント配線基板180と筒状金属部材120の内周面と絶縁座143の上面に囲まれた空間)は、隙間なく埋められている。
【0052】
プリント配線基板180のプリント配線パターン185と、接続端子142との半田付けをするとき、プリント配線基板180のスルーホールを通って、溶けた半田170がプリント配線基板180の裏面側に流れ込もうとする。しかし、プリント配線基板180の裏面側の空間は、樹脂材150によって埋められている。したがって、溶けた半田170は、プリント配線基板180の裏面側のスルーホールの端部で止められる。この結果、図1に示されるような綺麗な半田フィレットが形成される。溶けた半田170が本来なら導通させない箇所を導通させたり、短絡させたりすることを防止できる。
【0053】
以上、本実施例に係るコネクタ100は、生産工程で必ず行われる接続ピン141とプリント配線基板180との半田付けを容易に行うことができる。これによって、コネクタ100の生産効率を向上させることができ、歩留まりも向上させることできる。
【0054】
また、樹脂材150を充填することによって、プリント配線基板180と、接続ピン141と、レセプタクル130のそれぞれとの密着性を向上させることができる。そのため、コネクタ100を挿抜するときにコネクタ100に加わる応力を軽減できる。
【0055】
また、コネクタ100において、樹脂材150に絶縁性の磁性粉を混入させてもよい。樹脂材150に磁性粉を混入させると、コネクタ100の電磁シールド効果を向上させることができる。
【0056】
また、プリント配線基板180には貫通孔184が形成されている。そのため、接続ピン141とプリント配線基板180との半田付けを行うときに、樹脂材150が熱せられて膨張したとしても、その圧力を逃がすことができる。この貫通孔184によって、半田付けの熱による樹脂材150の膨張に起因した、プリント配線基板180の固定が不安定になることを防止できる。よって、接続ピン141とプリント配線基板180の半田付けを確実に行うことができる。
【0057】
次に、コネクタ100の生産方法について図4から図7を用いて説明する。まず、図4に示されるように、レセプタクル130の開口部にピン組立140を固定する。レセプタクル130の開口部にピン組立140を挿入した後に、例えば、突堤部131をレセプタクル130の内周側にかしめる。そして、絶縁座143の外周面に突堤部131を圧接させ、レセプタクル130にピン組立140を固定する。
【0058】
続いて、図5に示されるように、レセプタクル130の突堤部131の外周に、筒状金属部材120を嵌合させる。嵌合された筒状金属部材120とレセプタクル130の外周側の接合部分を半田付けする。この半田付けによって、レセプタクル130と筒状金属部材120は固定されて、電気的に接続される。
【0059】
続いて、図6に示されるように、筒状金属部材120とピン組立140によって形成されている空間に樹脂材150を充填する。樹脂材150の充填量は、後に配置されるプリント配線基板180の裏面が、基板受け部122から浮き上がらない程度とすればよい。
【0060】
最後に、図7に示されるように、プリント配線基板180のスルーホールに接続端子142を通して、筒状金属部材120の基板受け部122にプリント配線基板180を配置する。その後、接続ピン141とプリント配線基板180のプリント配線パターン185とを半田付けする。この半田付けの際、溶けた半田170(図1参照)がプリント配線基板180のスルーホールに流れ込む。流れこんだ半田170は、樹脂材150によってプリント配線基板180の裏面端で止まる。
【0061】
以上のように、コネクタ100の生産方法によれば、半田付けによる金属部分の短絡を防止することができ、より安全に生産することができ、かつ、歩留まりを向上させることができる。また、プリント配線基板180を基板受け部122に配置した後に、プリント配線基板180の貫通孔184から樹脂材150を充填してもよい。この場合、貫通孔184がプリント配線基板180に2つ以上あることが望ましい。2つ以上の貫通孔184によって、一方の貫通孔184から樹脂材150が充填される。他方の貫通孔184からプリント配線基板180の裏面側空間の空気が抜ける。これによって、プリント配線基板180の裏面側空間に、樹脂材50が万遍なく充填可能になる。
【0062】
次に、本発明に係るコネクタの別の実施例について説明する。図8は、本実施例に係るコネクタ101の例を示す縦断面図である。図8に示されるように、コネクタ101の樹脂材150が充填される空間に、筒状のリング部材151が配置されている。
【0063】
リング部材151は、突堤部131の上端面に配置される樹脂製リングであって、絶縁座143の上端外周を囲むように配置される。リング部材151が配置されることで、プリント配線基板180の裏面側空間に樹脂材150を充填したときに、レセプタクル130の上端部とピン組立140との固定部分などから、樹脂材150が流れ出すことを防止することができる。また、リング部材151によって、充填される樹脂材150の量を少なくし、かつ、樹脂材150の充填量が少なくても、プリント配線基板180の裏面側空間を確実に埋めることができる。
【0064】
次に、本発明に係るコネクタのさらに別の実施例について説明する。図9は、本実施例に係るコネクタ102の例を示す縦断面図である。図9に示されるように、コネクタ102は、封止材として樹脂材150の代わりに弾性リング152を用いる。
【0065】
弾性リング152は、弾力を有し、かつ、半田170に濡れない部材であって、例えば、耐熱性の樹脂からなる。弾性リング152は、絶縁座143から突出した部分の接続ピン141の外周に挿入される。弾性リング152は、プリント配線基板180を基板受け部122に配置したときに、プリント配線基板180が基板受け部122から浮き上がらない程度の高さ寸法である。また、弾性リング152はプリント配線基板180の裏面に密着可能な寸法である。
【0066】
弾性リング152は、プリント配線基板180の裏面側において、スルーホールからの半田流れを防止する部材である。したがって、プリント配線基板180のスルーホールからに溶けた半田170が必要以上に流れないため、適量の半田170によってスルーホールと接続ピン141を半田付けできる。そのため、本来なら導通させない箇所の導通や短絡を防ぐことができる。
【0067】
弾性リング152は、耐熱性の樹脂によって形成され、絶縁性の磁性粉が混練されていてよい。磁性粉(例えば、フェライト粉)が弾性リング152に混練されていると、接続ピン141と弾性リング152によって、ローパスフィルタが構成される。これによって、コネクタ102におけるRFノイズ耐性を向上させることができる。
【0068】
以上説明した本発明に係るコネクタは、ケーブル側の端部に用いることもできる。この場合、図10に示したケーブル側コネクタ200側に本発明に係るコネクタを用いる。
【符号の説明】
【0069】
100 コネクタ
120 筒状金属部材
130 レセプタクル
140 ピン組立
150 樹脂材
170 半田
180 プリント配線基板
200 ケーブル側コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13