(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の会計処理システムにおいて、前記記憶手段が、少なくとも顧問先毎に固有の前記仕訳データに含まれる取引情報のうち摘要情報と勘定科目とを当該顧問先の履歴情報として蓄積するクライアント辞書データ領域をさらに具え、
前記科目処理部は、前記取引情報に基づいて最初に前記クライアント辞書データを検索し、当該クライアント辞書データに同様の取引のレコードがない場合、または同様の取引のレコードがある場合でも勘定科目の候補の絞込が不十分な場合には前記摘要辞書データを検索して、1以上の勘定科目の候補を抽出し、
さらに前記処理手段が、前記仕訳データに基づいて該当するクライアント辞書データを更新する辞書管理部を具えることを特徴とする会計処理システム。
請求項2記載の会計処理システムにおいて、前記クライアント辞書データには、前記仕訳データの勘定科目を決定したオペレータ(以下、「科目決定者」と称する。)の属性が登録されるとともに、前記科目処理部は、前記クライアント辞書データを検索する際に前記科目決定者の属性に応じて勘定科目の候補を抽出することを特徴とする会計処理システム。
請求項3記載の会計処理システムにおいて、前記クライアント辞書データには、さらに、日付および/または同じ取引内容に対する勘定科目の決定回数が登録されるとともに、前記科目処理部は、同じ属性の科目決定者のレコードが複数ある場合には日付および/または決定回数に応じて勘定科目の候補を抽出することを特徴とする会計処理システム。
請求項1乃至6のいずれかの会計処理システムにおいて、前記記憶手段がさらに、勘定科目について最下位の概念である詳細科目および当該詳細科目より上位概念となる1以上の科目分類の対応テーブルを具えるとともに、前記科目処理部が勘定科目の候補を抽出する際に、当該対応テーブルを参照して設定された概念に対応する科目名を勘定科目の候補として抽出することを特徴とする会計処理システム。
請求項1乃至8のいずれかに記載の会計処理システムにおいて、当該会計処理システムが、顧問先において前記取引情報を入力し、仕訳処理までを行うための顧問先端末を具え、
前記記憶手段と前記処理手段は前記顧問先端末に組み込まれていることを特徴とする会計処理システム。
請求項1乃至8のいずれかに記載の会計処理システムにおいて、当該会計処理システムが、顧問先において前記取引情報を入力するための顧問先端末と、会計事務所側において仕訳処理を行うための会計事務所システムとを具え、
前記記憶手段と前記処理手段は前記会計事務所システムに組み込まれているとともに、当該会計事務所システムがさらに、前記取引情報を取得するための通信手段、画像と二次元コードを取得する為のイメージ処理手段、および記憶媒体を読み取るデータ管理手段のいずれか1以上を具えることを特徴とする会計処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[用語集]
本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明する。説明に先立ち、本願明細書および特許請求の範囲で用いる会計用語について以下に簡単に解説する。
[会計事務所、事務所]いずれの語も公認会計士事務所や税理士事務所を含む意で用いる
「伝票」入出金や取引内容等を記入する一定の様式を備えた紙片
「原始証憑」出納帳、領収書、伝票、請求書等の取引事実を明らかにする書類であって、記帳の基礎資料。記帳された内容の正確性・真実性を立証するもの
「仕訳」取引が発生した場合に、取引を借方、貸方に分解して科目を使用して金額を記録すること
「摘要」仕訳において、取引先と具体的な取引内容等を簡単に記載するための項目
「税区分」輸入/輸出等を含む課税/非課税/不課税やその税率等を区分けしたコード
「勘定科目」複式簿記の仕訳や財務諸表などに用いる表示金額の名目をあらわす科目
「二次元コード」色々な情報をバーコードや二次元バーコードなどのような特定パターンに変換したコード。
【0025】
[全体概要]
最初に、
図1を用いて、本発明の会計処理システムにおける情報や処理の流れの全体概要を説明する。
図1Aは、顧問先のコンピューターシステムが5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どうする、なぜ)または5W2H(いつ、どこで、誰が、何を、どうする、なぜ、いくら)の大枠様式をベースに取引毎の個別質問を生成して、その回答を入力ないし選択してもらうことで取引事象の詳細情報を取得する会計ソフトを具えるシステムの処理体系であり、
図1Bは、顧問先のコンピューターシステムが質問式以外の従来方式で会計データを取得する会計ソフトを具える場合の処理体系を示す。
【0026】
図1A、Bにおいて、左側が顧問先側、右側が会計事務所側のシステムないし処理を示す。本発明では、顧問先側の担当者が顧問先端末10に会計に関する情報を入力し、紙媒体に印刷して会計事務所に渡すか、顧問先端末10が通信ネットワークあるいはUSBメモリ等の可搬型記憶媒体で会計データを会計事務所側に渡す。会計事務所側にはサーバー20と、当該サーバー20と事務所内ネットワークで接続された1以上のクライアント端末30がある。
図1Aの態様では顧問先端末10に本発明に関連する会計ソフトが実装されており、この会計ソフトは顧問先にて発生した取引事象に関して、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どうする、なぜ)の大枠様式をベースに取引毎に会計処理特有の個別質問を生成して、その回答を入力ないし選択してもらうことで取引事象の詳細情報を取得する(丸数字1の処理)。これを本願において質問式伝票または質問式OCR伝票と称す。一実施例では、印刷出力する摘要の文字の大きさが所定値以下となる場合、会計事務所のOCR処理での文字認識精度が下がるため、活字情報を二次元コード化して帳表に同時印刷する(丸数字2の処理)。一実施例では、顧問先端末10の会計ソフトが、取得した取引事象の詳細情報から摘要文を作成するとともに、取引内容に照らして適切な勘定科目を決定するための科目決定支援機能を有する。
【0027】
図1Aの左上の枠およびその周囲に示すように、顧問先から会計事務所に供される媒体には紙媒体と電子媒体があり、そのうち紙媒体は例えば他社製の手書き帳表(類型I)、手書き式の質問式OCR伝票(類型II)、顧問先端末10からの出力帳表として活字情報のみの仕訳帳(類型III)、活字情報と二次元コードが両方記載された仕訳帳(類型IV)がある(丸数字3の処理)。類型I〜IVは会計事務所の職員が伝票または帳表を受け取って、顧問先のスキャナーまたは会計事務所のスキャナーで読み取りイメージ化して会計事務所のサーバー20に納める(丸数字4の処理)。また類型Vのように、活字情報と二次元コードが併存する仕訳帳の場合、二次元コードをスマートフォン等のカメラ付きモバイル端末で読み取って、インターネットを介して電子メールやウェブアップロードで会計事務所のサーバー20に送信するようにしてもよい。さらに、類型VIのように、顧問先端末10で作成した伝票入力を印刷することなく、そのまま電子メールやウェブアップロードで会計事務所に送信するようにしてもよい。
【0028】
サーバー20に登録された伝票イメージまたは伝票データは、クライアント端末30で動作する会計処理ソフトで読み出される。この会計処理ソフトは伝票イメージまたは伝票データと入力画面とが同時に表示され、伝票イメージまたは伝票データを見ながら入力画面に摘要データや勘定科目を入力/選択することができる(丸数字5の処理)。ここで、上記類型Iの場合は伝票イメージのみを表示させて、会計事務所の職員がこれを見ながら会計情報を入力・選択するようにしてもよいし、市販の文字認識ソフトで読み取ってテキスト化した上で、テキスト化した文字列からキーワードを抽出して、摘要辞書により科目候補を提示するようにしてもよい。上記類型II−IVの場合、伝票イメージにイメージ処理(テキスト情報はOCR処理、二次元コードはデコード処理)を行って記載情報を抽出して、抽出された伝票内容が入力画面に反映される(丸数字6の処理)。さらに、本発明の会計システムでは摘要欄の記載内容から摘要辞書(一般的には科目辞書と呼ぶこともある)または履歴情報を参照して、摘要情報から適切な勘定科目を入力画面に提示して選択・決定することができる(丸数字7−8の処理)。このようにして入力・決定された勘定科目を含む会計情報がサーバー20に保存される。
図1Aに示す態様では、会計事務所側と顧問先側で使用される会計ソフトに互換性があり、顧問先において質問形式で会計データが取得された場合に、会計事務所側でもその質問内容のテーブルを保持している。
【0029】
また、類型Iの非OCR帳票は、質問に対する回答が非定型で記入されたメモ形式のものが含まれ、類型IVの伝票テキストデータには、同様に、フォーマットが不定型のメール形式の自由文(自然文)、やカンマ区切り等の回答内容の羅列形式のものが含まれていてもよい。
【0030】
図1Bは、
図1Aの変形例であり、顧問先端末10において従来方式、すなわち所定の枠に必要情報を入力していくことにより会計データを登録する会計ソフトが動作している以外は
図1Aとほぼ同様である。一実施例では、この会計ソフトは摘要辞書(一般的には科目辞書と呼ぶこともある)を具え、入力情報から類推される科目が提示され選択することにより勘定科目を登録する科目決定支援機能を具えてもよい。登録された会計データは印刷や通信により会計事務所側に送られる。会計事務所では、取得された会計データをクライアント端末30で読み出して仕訳処理を行い、必要に応じて会計事務所の職員が摘要欄が適切な内容となるように入力あるいは修正する。このようにして確定される摘要欄の内容から科目辞書または履歴情報を参照して、摘要情報から適切な勘定科目を入力画面に提示して選択・決定することができる。
【0031】
また、質問式以外の従来方式で会計データを取得する会計ソフト(一般的な帳簿ソフト)を用いる場合でも、会計事務所が顧問先を指導することで、
図1Aに準じる詳細な摘要・取引情報を摘要欄に記入してもらって利用することができる。具体的には、
図1Aで説明したような大枠様式をベースに取引毎に会計処理特有の個別質問を生成して、その回答を入力ないし選択してもらうことで取引事象の詳細情報を取得する代わりに、会計事務所が、こういう取引類型の場合にはこういう態様で記入するといった一覧表(質問とその回答例の対応表)を顧問先に提示して指導する。このような場合、指導に基づき記載された摘要欄には、やや詳細な摘要・取引情報が記載されることとなり、かかる文字列(印刷された帳表の場合には市販の文字認識ソフトで読み取ってテキスト化した上でテキスト化した文字列)からキーワードを抽出して、摘要辞書により科目候補を提示するようにしてもよい。
【0032】
また、
図1Bにおいても、類型Iの非OCR帳票には、所定の質問に対する回答が非定型で記入されたメモ形式のものが含まれ、同様に類型IVの伝票テキストデータにはフォーマットが不定型のメール形式の自由文(自然文)や、カンマ区切り等の回答内容の羅列形式のものが含まれていてもよい。
【0033】
[システム概要]
本発明にかかる会計処理システムの一実施形態の構成を説明する。
図2は顧問先システムの構成例であり、
図3は会計事務所側システムの構成例である。
【0034】
図2を参照すると、顧問先端末10は例えば顧問先企業で用いられるパーソナルコンピュータであり、キーボードやスキャナー等の入力部11と、例えば液晶ディスプレイである表示部12と、プリンタ等の出力部13と、インターネットを介して会計事務所と接続するための通信部14と、各種データおよび会計ソフト(図示せず)が格納される記憶部15と、当該記憶部15から読み出したプログラムを実行して各種機能を実現するCPU等の制御部16とを具える。本実施形態では顧問先端末10を顧問先企業に配置されたパーソナルコンピュータとして説明するが、以下に説明する本願システムの各種機能とデータを提供できる限りにおいて、顧問先端末10はスマートフォンやタブレットPCであってもよく、さらには顧問先端末10の各種機能は顧問先企業のPCからアクセス可能なウェブサーバーによるウェブサービスとして実現することもできる。また、記憶部15に格納される各種データおよびテーブルを顧問先のパーソナルコンピュータ(クライアントPC)からアクセス可能なサーバーに配置したクライアント−サーバーシステムとして構築してもよい。
【0035】
記憶部15には、会計事務所に提供される会計データを作成し出力するための各種データ151が格納される。一実施例において、記憶部15のデータ151は、オペレータに提示される質問データ(質問情報データと質問内容データ)、オペレータによる質問への回答である入力データ、摘要データ、勘定科目の候補を提示する際に参照されるクライアント辞書データ、入力情報から摘要を作成するための摘要辞書データ、科目データ、会計データ、オペレータデータ、科目決定者の職位(例えば事務員、税務に関する有資格者、監督官庁など)が規定された職位データ、会計データを出力する際に用いられる伝票形式データ、データを送る会計事務所のデータ等が含まれる。
【0036】
制御部16は、データ管理部、摘要処理部、辞書管理部、科目処理部、仕訳処理部、印刷処理部等を具える。これらの要素は顧問先端末10で記憶部15に格納された会計ソフトがCPUに展開されて実現されるものであり、後述する本願発明の各種処理を実施するためのさらなる要素を具えてもよい。
【0037】
図3を参照すると、会計事務所側のシステムも顧問先端末10と同様に、キーボードやスキャナ等の入力部21と、例えば液晶ディスプレイである表示部22と、プリンタ等の出力部23と、インターネットを介して顧問先端末10と接続したり、会計事務所のクライアント端末30と接続するための通信部24と、各種データおよび会計処理ソフト(図示せず)が格納される記憶部25と、当該記憶部25から読み出したプログラムを実行して各種機能を実現するCPU等の制御部26とを具える。ここで、会計事務所のサーバー20とクライアント端末30は
図3に示す同じ構成であってもよいし、
図3に示す手段、機能または情報の一部をサーバー20が具備し、他の部分をクライアント端末30が具備する構成であってもよく、さらにサーバー20とクライアント端末30がそれぞれ
図3に示す要素を部分的に具え、その一部が重複していてもよい。
【0038】
記憶部25には、後に詳述する本発明の会計処理方法を実現するための各種データ251が格納される。このデータは、顧問先に提示される質問データ(質問情報データ、質問内容データ)、顧問先による質問への回答である入力データ、摘要データ、選択した勘定科目の履歴であるクライアント辞書データ、科目データ、会計データ、オペレータデータ、職位データ、伝票形式データ、顧問先データ、文字認識用辞書データ等が含まれる。ここで、顧問先による質問への回答である入力データ、摘要データは、紙伝票を読み取って取得した情報をテキスト化したデータを意味する。
【0039】
制御部26は、データ管理部、摘要処理部、辞書管理部、科目処理部、仕訳処理部、印刷処理部、イメージ処理部、監査処理部等を具える。これらの要素は記憶部25に格納された会計処理ソフトがCPUに展開されて実現されるものであり、後述する本願発明の各種処理を実施するためのさらなる要素を具えてもよい。
【0040】
[データ構造]
図4乃至
図17を参照して、一実施形態におけるデータ構造を説明する。本実施形態は
図1Aで説明した質問式伝票により会計情報を取得するものであり、以下のデータ構造は質問式により会計情報を取得するために必要なデータ群を含む。
【0041】
図4は、会計事務所側と顧問先の双方で具える質問内容データの構造例である。この質問データは、会計処理の対象となる取引事象毎に用意された伝票コード毎に、5W1Hまたは5W2Hの大枠様式をベースに会計・税務処理に固有の特定ルールを反映させて生成した具体的な質問内容が登録される。5W1Hは「when、いつ」、「where、どこで」、「who、誰が」、「why、なぜ」、「what、どうした」、「how、どうやって」という、個別の取引事象を上位概念化したものであって、本願の特定ルールを逆に辿っていく過程で抽出されたものであり、5W2Hは上記に加えて「how much、いくら」が追加された大枠様式である。伝票コードは
図14に示す伝票形式データに対応する。図示する実施例において一番上のレコードにある伝票コード「811」は、飲食をしたレシート(領収書、支払済み)がある場合の出納帳入力の際に提示される質問群が登録されており、これは5W2H形式の大枠様式をベースに会計・税務処理に固有の特定ルールを反映させて生成した質問データであって、取引カテゴリ(飲食)に対応させて、支払日、店名、参加者(人数や名前、社外の人間がいるか、いる場合の詳細等)、目的、飲食内容、金額、支払い方法といった内容を取得できるような質問からなる。質問内容データの左から5W2Hである「いつ」、「どこで」、「誰と」、「何を」、「何のために」、「どうやって」、「数量・金額」の欄に取引事象に合わせて具体的な質問内容が登録され、さらに、取引事象に応じてより詳細に情報を得る必要がある項目について、右側に詳細質問としての各種質問内容が展開されている。例えば一番上の伝票コード811は飲食の例であるため、誰と(社外、社内、人数等)飲食したかによって勘定科目が接待費、福利厚生費、会議費等と変化しうるため、特に「誰と」についての詳細質問が厚く展開されている。二番目の「伝票コード812」は交通費を支払った場合の詳細情報を取得するための質問群が登録されている。このように質問データには、取引カテゴリごとに、勘定科目や税区分を判断するのに十分な摘要情報を取得するための具体的な質問群が予め登録される。なお、取引カテゴリの内容によっては5W1Hのすべての要素が必要ではなく、その場合は不要な要素については
図4に示すように「−(NULL)」が登録される。
【0042】
図5は、例えば顧問先で取引毎に入力される入力データの登録内容を示す図である。この入力データには、質問に対するオペレータの入力内容が登録される。例えば入力データを管理する為の管理番号1000001のデータは飲食があった場合の仕訳帳形式の入力データであり、
図4の「伝票コード811」の質問データに対応した回答が入力データとして登録される。このレコードにおいて「誰と」の項目は詳細質問が規定されているため、「誰と」の欄には
図8に示す質問コードデータのみが登録され、その具体的な詳細質問の内容は右側(社外人数、社外who1、・・・等)に展開されている。すなわち、「誰と」に対応する詳細質問として、「d2a001:社外人数」、「d2a002:社外Who1」(同席した社外人間の名前)、「d2a003:社外Who2」(同左)、「d2a501:社内人数」、「d2a502:社内Who1」(同席した社内人間の名前)が登録され、右の方に質問コード毎(d2a001等)に具体的な人数や名前が登録される。本実施例では質問コードデータを使用しているが、質問コードデータ(例:d2a001等)の代わりに詳細質問(例:社外人数等)そのものを登録してもよい。
【0043】
図6は、顧問先側で質問式伝票に回答していくことにより得られた入力データから自動的に作成される摘要データを示す図である。この摘要データは、会計事務所に渡されて仕訳入力の際に適切な勘定科目や税区分を決定するための判断情報として用いられる。
図6Aに示す例では、摘要データは管理番号毎に伝票コード、支払日付、金額、摘要文(印字用)、摘要文(データ出力用)の項目を含んで構成される。摘要文自体(すなわち印字用)は
図5に示す入力データの各項目の内容を助詞で繋げて文章化したものであり、例えば図示するように、「社外:東陽設計 鈴木専務・東陽設計・田中さんと 社内:吉本課長が 接待のため 深川亭で 飲食 クレジットカード支払」といった内容となる。この文章整形処理は制御部16が摘要辞書データ等を参照して行われる。「摘要文(データ出力用)」はさらに各要素に対応する質問内容を含めたものであり、通信ネットワークや記憶媒体に格納して会計事務所へ渡すための参照データである。
【0044】
以上の処理は、
図14のような取引カテゴリ毎に用意された各質問式伝票(入力)に即して、オペレータが質問に対して回答を記入ないし選択することで遂行される。その際、質問コードが割り振られた質問情報データのテーブル(
図8)が参照され、記入あるいは選択された回答内容について、それぞれ質問内容に対応する質問コードが対応づけられ、
図6のような態様で摘要データとして生成/記録される。そして、回答内容(個々の取引・摘要情報)に対して対応づけられた質問コードは、後述のように、それぞれ取引・摘要情報を区切る際に目印となる情報として利用される。
【0045】
別の実施例では、摘要文(印刷用)は入力データの各項目の内容を助詞で繋げて自然文(自由文)形式で文章化しなくてもよく、顧問先側で質問式伝票に回答していくことにより得られた入力データを、例えば「社外:東陽設計・鈴木専務/社外:東陽設計・田中さん/社内:吉本課長/接待のため/深川亭/飲食/クレジットカード支払」といった入力データ単位に区切り文字を挿入した構成としてもよい。 また、区切り文字は「/(スラッシュ)」に限らず、摘要情報を相互に区別できるものであればよく、区切られていることが明確に分かれば、「%」や「#」、「−」、「:」、「;」、「・」あるいは「;」、「,」などの記号、あるいは「 」(スペース)、さらには、端的に質問内容を示す「(いつ)」、「(どこで)」、「(誰と)」・・・等であってもよい。
【0046】
このような区切り文字(記号)は、適宜テーブルやDBに登録する際に、区切りが必要な箇所へ自動的に選択して付すようにしてもよいし、オペレータが、いずれの区切り文字(記号)を利用するかを決定(選択)するようにしてもよい。また、質問式入力方式の場合には、質問の類型毎に異なる区切り文字(記号)を割り当てて、質問の内容が区別できるようにしてもよい。さらに、区切りが必要な箇所の判断については、質問式入力の場合には、質問に対し回答を記入ないし選択する際に、回答内容に対し、
図8のテーブルの質問コードを対応づける処理がなされるが、かかる質問コードが対応づけられた箇所の情報に基づいて、区切り文字(記号)の必要性の有無を判断するようにしてもよい。その上で、回答内容(各取引・摘要情報)と共に、
図6のような態様で生成/記録することができる。
【0047】
図6Bに示す例では、データ出力用の摘要文に質問内容そのものではなく、
図8に示す質問コードを関連付けて登録されている。摘要データに質問内容や質問コードを含めることより、会計事務所側でどのような質問内容に対してこの摘要が作成されたかを把握して、勘定科目を決定する際の参考情報とすることができる。また、質問式入力で取引情報を取得して出力等する場合に限らず、顧問先で一般的な会計入力ソフト(帳簿ソフト)を利用して詳細な摘要情報を入力する場合にも、手動入力で上記の区切り文字ないし記号等を併せて記入して出力(紙媒体への印刷やPDF文書への印刷変換出力、ウェブサーバーへのアップロードないしメモやメール送付用のテキスト出力、クラウド等のサーバーへのアップロード用DB出力等)するようにしてもよい。
【0048】
図7は、会計事務所または顧問先における過去の仕訳入力で決定された科目を保存したクライアント辞書データを示す図である。このクライアント辞書データは、新規の仕訳入力において勘定科目を決定する際に科目候補を抽出するのに用いられる。クライアント辞書データには、入力日、顧問先コード、摘要、社内人数/社外人数、相手科目、入力者のオペレータコード、選択回数、科目名、貸借といった情報が顧問先毎の固有の履歴として蓄積される。オペレータコードは
図12、
図13に示すオペレータデータと職位データに対応している。新規の仕訳入力において科目候補を抽出する際には、最初にこのクライアント辞書データを参照して、同じ構成の会計データが存在する場合に以前に決定された科目名が候補として抽出されるようにしてもよい。通常は摘要辞書まで参照せずとも、クライアント辞書で過去の履歴とのマッチングを行うことで、科目が決定することが多いことによるものである。
【0049】
他方で、質問式入力ないし会計事務所の指導により通常の帳簿ソフトで詳細な摘要・取引情報を取得した場合には、摘要辞書だけの参照で十分に科目を絞り込むことが可能であるため、必ずしもクライアント辞書を用いる必要はない。このように、クライアント辞書ないし摘要辞書の参照処理は、単独で用いても十分に実用的な科目の絞込が可能な場合が多い。もっとも、いずれか一方の辞書だけでは十分に科目を絞り込めない場合もあり、両者を適宜組み合わせることで、より精度の良い科目の絞込が可能となる場合がある。例えば、クライアント辞書の参照処理は大量のDB操作処理が必要となり、参照処理に時間が掛かることが想定されるため、クライアント辞書に必要最小限の項目だけを盛り込むようにして高速化を図ったような場合には、クライアント辞書だけでは科目の絞込が不十分となる場合等である。ここで、科目の絞込が不十分な場合とは、例えば、科目の候補として、複数(2つ以上)あるいは多数(3つ以上)が抽出されたような場合をいい、科目の絞込が不十分な場合の絞込数は適宜テーブルとして記録され、所定の絞込数を超える場合には、後述のように、摘要辞書とクライアント辞書を併用して、さらなる絞込を行うようにしてもよい。
【0050】
この場合、例えば、最初に摘要辞書を参照して科目候補の絞り込みを行い、それでも絞り込んだ科目が複数ないし多数抽出されたような場合に、いずれが適切かを判定するための参考としてクライアント辞書を参照し、過去に似たような例がある場合にその科目を採用するなど、より精度よく科目候補を絞り込むために摘要辞書とクライアント辞書の双方を利用してもよい。また、この場合に、摘要辞書の参照処理と組み合わせる順番は、クライアント辞書ないし摘要辞書の参照処理のいずれか一方が先であってもよい。
【0051】
摘要辞書とクライアント辞書の併用が有効な場合の例としては、例えば、飲食費に関する取引について、「社内/社外、食事の相手、食事した場所等」が同じであっても、金額や時間帯によっては、取り扱いが異なることがあるような場合が挙げられる。具体的には、社内の者だけ飲食した場合において、3000円以下だと会議費で計上し、それを超えると福利厚生として計上することがあり、この場合に科目が会議費と福利厚生費に変動する。あるいは、社外の者と飲食した場合において、一人当たり5000円以下であれば、(税法上)全額を交際費から除外して損金として計上できる一方で、一人当たり5000円を越える場合には損金として計上できず全額を交際費として計上するという取り扱いの相違が生じるような場合がある。このように、金額や時間帯などの情報については、必ずしも過去の履歴のクライアント辞書を参照するだけでは科目が一意に決定しない場合もあり、摘要辞書との併用で科目絞込みの精度を向上させることが有効な場合がある。なお、実施例では、説明の便宜のため、クライアント辞書と摘要辞書とは別構成として記載したが、両辞書は一体として構成されていても構わない。
【0052】
クライアント辞書データは顧問先と会計事務所側で個別に蓄積される。会計事務所側では顧問先毎にクライアント辞書データが作成され当該顧問先の仕訳入力時に参照される。同じ顧問先では同じ取引が繰り返されることが多いため、過去に同じ取引内容で決定した勘定科目名をそのまま適用できることに着目して、このように過去の仕訳入力の履歴を保存しておき、優先的に同じ取引内容の場合に同じ科目名を提示することにより、適切な科目名を迅速に提示することができる。また、科目を決定したオペレータの職位(有資格者か無資格者か、監督官庁か等)や選択回数も記録することにより、より信頼性のある人間が決定した科目や選択回数の多い科目を優先的に抽出することが可能となる。新たな仕訳入力において候補として提示した科目名が再び選択されたら、選択回数の欄が加算される。
【0053】
図8は、質問式伝票で用意される各種質問と質問コードの対応を示す質問コードデータの構成を示す図である。この質問コードデータは顧問先と会計事務所側の双方で同一のものが保持される。
図8に示すように、「分類」欄には大枠質問である「質問」と、それぞれの大枠質問について取引毎に会計特有のルールに対応して用意される「詳細質問」がある。各詳細質問はそれぞれ大枠質問である5W1Hのいずれかに対応するが、取引事象(例えば飲食、交通費、給与支払い等)が異なれば問いかけるべき質問が異なり、それが詳細質問として規定される。各質問または詳細質問には一意の質問コードが対応づけられており、これが勘定科目の候補を判定する際などに参照される。また、前述のように、質問に対する回答内容が、どの質問に対する回答であるかの目印となる情報として、質問コードを各回答内容(個別の取引・摘要情報)に対応づける際に利用することができる。
【0054】
図9は、日本工業規格(JIS)が規定する勘定科目コード(JIS−X406)に基づいた勘定科目と科目分類の関係を示す図である。このように勘定科目は国内で統一的に定められており、JIS−X406は勘定科目名と大分類コード、中分類コード、小分類コード、細分類コードが規定されている。
図9は科目コード毎に、詳細な科目名、科目貸借、科目分類1、科目分類2、科目分類3から構成されており、勘定科目と科目分類の関係を表している。科目分類1〜3はそれぞれJISコードで規定されている大分類、中分類、小分類と対応する形で位置づけられており、本願システムでもこのJISコードを準拠している。例えば勘定科目として「現金」(科目コード1111)がある場合、これは大分類(
図9だと科目分類1)としては「流動資産」にあたり、中分類(
図9だと科目分類2)として「当座資産」、小分類(
図9だと科目分類3)として「現金及び預金」に含まれる。仕訳入力では会計事務所において詳細な科目名を登録する必要があるが、例えば会計知識に乏しい顧問先側の担当者が入力する場合には科目分類1〜3のいずれかが用いられることもある。このように顧問先である程度大まかに科目を入力しておけば、未入力の場合よりも会計事務所で詳細科目を決定する場合の目安となり、全く科目分類の異なる勘定科目を入力されるのを防止することになり、会計事務所のチェック負担が減る。
【0055】
図10は、摘要から勘定科目の候補を抽出するための摘要辞書データの構成を示す。この摘要辞書データは、クライアント辞書データにその顧問先の過去の取引において同じ取引内容がなかった場合に、取引内容から勘定科目の候補を抽出するために用いられるものである。一実施例ではカテゴリ1、2の組み合わせで決まる取引事象毎に、左から伝票形式、取引事象によって科目導出のキーとなる質問内容、当該質問への回答に含まれる可能性のあるキーワード、その他に検索条件となりうる社内/社外人数、金額条件の欄があり、その右側に、これらの条件により一以上の候補となる科目名と貸借が登録されている。例えば質問式伝票で飲食があった場合には、摘要文のうち質問内容「目的」の部分に注目し、ここに「飲食、接待、・・・」等のキーワードが存在する場合、科目名として「交際費、会議費、・・・」を候補として抽出する。これが会計事務所の職員(または顧問先担当者)に提示され、職員はこのなかから適切な科目を選択するか、候補にない場合には直接入力することができる。選択あるいは入力した科目名の履歴は
図7のクライアント辞書データに蓄積され、科目候補を検索する際にはその履歴情報の方から優先して検索される。
【0056】
このように、従来の摘要辞書では、摘要と科目が一意に決まるような比較的単純(汎用的)な構成を備えるのに対し(例えば、先述の特許文献2の
図7を参照)、本願発明の摘要辞書は、取引事象の要素を、科目特定のために可能な限り詳細に取得した多様かつ複合的な摘要・取引情報に基づいて、幅広い科目候補の中から、精度よくその取引に対応する科目の候補を提示する機能を有する点で相違する。
【0057】
図11は、会計事務所側が具える顧問先データの構造例である。顧問先コード毎に、顧問先名、住所、電話番号等が登録される。
【0058】
図12は、会計データの入力者あるいは科目決定者をクライアント辞書データ(
図7)に登録するためのオペレータデータの構造例である。オペレータコード毎に、オペレータ名、オペレータの属性情報としての職位コードが登録される。この職位コードは
図13の職位データのものに対応している。オペレータデータは顧問先システムと会計事務所側システムの双方で個別に登録される。
【0059】
図13は、科目決定者の属性情報としての職位を規定したテーブルである。本実施例では職位コードはS001〜S004まであり、S001が無資格であって専門知識のないパートやアルバイト、S002が無資格であるが専門知識を有する会計事務所職員や顧問先社員、S003が会計業務の有資格者である税理士や公認会計士、S004が税務署や国税庁などの国や地方官庁(監督官庁)を示す。このS004が登録されるケースは、例えば国や地方官庁に提出した申告書類について科目名の不備が指摘されて修正した場合などが考えられる。本実施例では属性情報として職位を使用しているが、実務経験年数や資格の有無等の情報を属性情報として設定してもよい。
【0060】
図14は、本願システムで取り扱い可能な伝票を規定した伝票形式データの構造を示す。伝票形式データは伝票コード毎に、伝票種類、伝票形式(質問式か通常か)、伝票カテゴリの欄を具えている。カテゴリ1は上位概念に相当し、カテゴリ2は下位概念に相当する。カテゴリ1とカテゴリ2の組み合わせで具体的な伝票の内容が定まる。この伝票形式データは会計事務所側と顧問先側の双方のシステムが保有する。
【0061】
図15は、顧問先端末10が具える会計事務所データの構造例を示す。この会計事務所データは、顧問先から契約している会計事務所に電子メールまたはウェブアップロード、あるいは印刷出力により会計データを提供する際に参照・更新されるものであり、予め会計事務所の名称、メールアドレス、ウェブサイト、送信先IPアドレス、送信用ID、送信用パスワード等が登録される。
【0062】
図16、
図17は、本発明の会計処理システムにより作成・蓄積される会計データの構造例である。会計データは、仕訳レコードを管理する為のコードとしての会計コード、取引が生じた日付、顧問先、取引内容を示す摘要情報、借方科目、借方金額、借方課区、借方税区、借方消費税、貸方科目、貸方金額、貸方課区、貸方税区、貸方消費税、税抜残高、伝票コード、科目表示が登録される。科目表示は
図9の科目データに関連付けられ、科目名をどこまで詳細に規定するかを定めたものである。
図16の例では、いずれのレコードも科目表示が「詳細科目」となっており、これに応じて借方科目には「交際費」、「事務用品費」などの詳細な科目名が登録されている。
図17は会計データの変形例であり、例えば
図16の会計データが会計事務所側で作成されるものであれば、
図17は顧問先で科目選択まで行った場合に作成される会計データである。
図17の例では、最右欄の科目表示が「科目分類1」となっており、借方科目欄が「販売管理費及び一般管理費」、「現金及び預金」などのように
図9のJIS規格の大分類コードに相当する科目分類1が科目名で登録されている。このように、例えば会計知識の少ない顧問先側で仕訳処理を行う場合に、詳細科目ではなく大まかな科目分類で処理を進めることで全く異なる勘定科目の入力を防止でき、会計事務所のチェック負担を軽減することができる。
【0063】
[動作フロー]
本発明の会計処理システムの動作について、
図18−25のフローチャートと
図26−29の画面例を用いて説明する。
【0064】
(1)全体処理
図18は、システム全体の処理の流れを示すフロー図である。a1−a4が顧問先側の処理、a5−a6が会計事務所側の処理である。顧問先端末10で会計ソフトを起動し、例えば
図14のカテゴリ1とカテゴリ2の組み合わせにより取引事象を指定すると、顧問先端末10は
図14の伝票形式データを参照して伝票コードを特定し、
図4の質問内容データから質問内容を抽出して、
図26のような質問式伝票画面を表示する(a1)。ここで、上述したように質問データは、5W1Hまたは5W2H形式の大枠様式をベースに、会計・税務処理に固有の特定ルール(記述ルール)を反映させて生成した質問データに対して、取引に応じてさらに詳細な質問が必要とされる場合には、会計・税務処理に固有の特定ルールをさらに反映させた詳細質問データが生成され、さらに具体的な仕訳内容に応じて勘定科目や税区分を決定するのに必要十分な情報を取得できるように調整および/または細分化して規定される。顧問先端末10のオペレータは、この入力処理画面において質問に具体的に回答(選択または入力)していくことにより、勘定科目や税区分を決定するのに必要十分な情報が入力される(a2)。入力された会計データは
図5の入力データとして保存され、さらに顧問先端末10は入力内容から摘要情報を作成して
図6の摘要データに保存する(a3)。
【0065】
なお、本実施形態では質問式伝票入力方式により会計事務所側に必要十分な情報を盛り込んだ帳表データを作成するようにしたが、これは本実施形態のものに限るものではなく、
図1Bのように従来の一般的な会計ソフトの出納帳が表示されて顧問先のオペレータが摘要データ等を直接入力するようにして帳表データを作成してもよい(例として必要記載項目をまとめたもの(質問式伝票でいう質問内容)を見ながら直接回答を入力したり、詳細な取引内容をそのまま入力したりするケース)。つまり、質問式以外の従来方式で会計データを取得する会計ソフト(一般的な帳簿ソフト)を用いる場合でも、「こういう取引類型の場合には、こういう態様で記入するといった一覧表(質問とその回答例の対応表)」を顧問先に提示するなどして、会計事務所が顧問先を指導することにより、
図1Aに準じる詳細な摘要・取引情報を顧問先で摘要欄に記入してもらって利用することができる。
【0066】
この内容が紙に印刷されて会計事務所の職員に渡されるか、通信ネットワークや記録媒体を介して会計事務所側に渡される(a4)。印刷出力する場合や、出力情報を画像データとして会計事務所に渡す場合には、必要に応じて入力データや摘要を二次元コードに変換し、活字情報と同時に印刷するようにしてもよい。
【0067】
このように作成された会計データや摘要情報を、
図1A、Bに示すように紙媒体、電子記録媒体、通信ネットワーク等で会計事務所が取得する(a5)。会計事務所側からみた会計情報の取得は、紙出力された伝票をスキャナー装置でイメージ化し、さらに可能であればOCR処理でテキスト化したり、記録媒体や通信ネットワークを介して送られる会計データを保存したり、二次元コードを読み取ったりすることにより行われる。そこで会計入力処理が行われる(a6)。この会計入力処理の概要を
図19に示す。
【0068】
図19の会計入力処理では、会計事務所側で取得された会計データに、会計事務所側で電子読込み可能な伝票であることを示す伝票コードがあるか否かを確認する(b1)。これは紙媒体からイメージ化してOCR処理をかけた情報に伝票コードが存在するかを調べたり、電子的に取得した会計データ内に伝票コードが規定されているかを調べたりすることにより行われる。伝票コードがある場合、伝票コードに基づいて
図4の質問内容データを参照して質問内容を取得する(b2)。同時に伝票や帳表からその記載内容である会計データ(もしあれば摘要情報)を取得する(b3)。そして、得られた会計データを会計入力画面に表示する(b4)。この会計入力画面を
図28に示す。
【0069】
図28の会計入力画面では、左側に質問内容が表示され、日付、取引内容を示す摘要欄、借方科目、借方金額、貸方科目、貸方金額、残高の入力欄を含む入力欄51が設けられている。1枚の読込伝票に複数の仕訳が記載されている場合には、複数のレコードが表示されるが、一実施例ではアクティブな仕訳レコード以外は反転表示され編集不能に構成される。入力欄51の下に、後述する処理により摘要等から抽出されたキーワードが表示されるキーワード欄52、その下に後述する処理により推測される勘定科目候補欄53が表示される。
図28の画面では入力欄51の借方科目の項目にカーソルがあり、勘定科目欄53の候補は借方科目の候補が表示される。さらに、摘要が入力欄に入りきらない場合を考慮して、入力画面の一番下に摘要情報54が全文表示される。
【0070】
さらに、画面左側には税抜表示切替ボタン55、税込表示切替ボタン56、質問内容表示ボタン57、科目表示設定ボタン58が設けられる。このうち科目表示設定ボタン58を押すと、
図27の科目表示設定画面が表示される。ここでは顧問先毎に、候補として表示・決定される勘定科目を
図9の詳細科目とするか、あるいは科目分類1〜3のいずれかにするかを設定することができる。この設定情報は保存され、科目候補を決定・表示する際に参照される。質問式伝票形式等で質問内容の情報を会計データが取得している場合に、入力者が質問内容表示ボタン57を押すことで、質問内容の情報が表示され確認できる。もう一度質問内容表示ボタン57を押すことで質問内容と伝票イメージ(図示せず)の表示を切り替えるように構成してもよい。伝票イメージに切り替えることで会計データの入力内容のチェックもできる。
【0071】
例えば読み込まれた伝票が原始証憑であったり、会計事務所側の会計ソフトと互換性がなくOCR処理により自動読込ができないような場合は、質問内容表示ボタン57を押すことで
図28の会計入力画面において左上に質問内容の代わりに伝票イメージが表示する。これを見ながら会計事務所の職員が摘要や科目、金額等を入力していくことになる。この場合も、摘要情報が確定すれば後述する科目決定支援機能が働いて科目候補が検索されて表示される。
【0072】
図28に示すように入力欄51の摘要情報が入力された状態で借方科目の項目にカーソルをおくと、後述する科目決定支援処理が行われ(b5)、オペレータは提示された科目から適切な科目を選択して決定する。ここで、例えば会計事務所の有資格者が以前に職員が決定したデータを呼び出して科目を変更したような場合には、同じ顧問先の他の同じ取引内容の仕訳についてもこの修正を反映する科目修正反映処理が行われる(b6)。科目が決定したら入力項目のチェックを行い(b7)、すべての入力項目が確定したら会計データが保存される(b8)。保存されたデータは
図16、17のようになる。また、科目が決定されると
図7のクライアント辞書データにその履歴が登録される。
【0073】
[科目決定支援処理の詳細]
図20は、
図19ステップb5の科目決定支援処理の詳細を示すフローチャートである。カーソルが科目欄にあって(c1)、かつ摘要が入力されている場合(c2)、会計データから摘要情報と(もし入力されていれば)科目を取得する(c3)。ここで、会計データの科目は顧問先で入力されている場合とそうでない場合がある。そうでない場合としては、科目欄が未入力であるか、または伝票が原始証憑などの場合であってそもそも科目を登録する欄がない場合などが含まれる。
【0074】
次に、会計データに含まれる顧問先コードから、当該顧問先のクライアント辞書データ(
図7)と摘要辞書データ(
図10)を取得する(c4)。科目候補を検索するにあたり、最初に、摘要情報をキーとしてクライアント辞書データを検索し(a5)、摘要が一致するレコードがあれば登録されている科目名を候補として抽出して(c6)、科目表示支援処理(c12)へと進む。同じ顧問先であれば同じ取引を行うことが多いため、このように最初に当該顧問先の科目決定履歴情報であるクライアント辞書データを検索することにより、迅速かつ確実に科目候補を抽出することができる。なお、摘要情報は完全に一致する必要はなく、所定閾値以上の割合で文字が一致したり、金額だけ変わっている場合等も一致しているものとして扱うことができる。なお、前述したように、クライアント辞書と摘要辞書はいずれか一方だけの利用であってもよいし、必要に応じて両方の辞書を併用するようにしてもよく、また、併用する場合の参照の順番も、いずれかを先に参照するように適宜変更してもよい。
【0075】
このような観点から、
図20はあくまで一実施例にすぎないことに留意されたい。例えば、本実施例ではステップc6においてクライアント辞書を参照し、過去の履歴と一致する仕訳(取引)があればステップc7以下の摘要辞書(
図10)の参照処理を行わずに、直ちにクライアント辞書を活用したステップc12の科目表示支援処理に進むようにしているが、過去の履歴と一致する仕訳(取引)がある場合でも、ステップc7以下の摘要辞書の参照処理を併用して、科目の絞込みの精度を向上させるようにしてもよい。あるいは、ステップc6の処理を行わずに、ステップc7以下の処理に進んでもよいし、ステップc7以下の摘要辞書の参照処理を先に行った上で、精度向上のために、さらにステップc6〜C12の処理を併用するようにしてもよい。以下の説明では、説明の便宜のため、クライアント辞書を先に参照し、過去に同じような仕訳(取引)が存在する場合には、ステップc12のクライアント辞書の参照処理である科目表示支援処理に進み、過去に似たような仕訳(取引)が存在しない場合に、ステップc7以下の摘要辞書を参照する処理に進む例を中心に説明する。
【0076】
[クライアント辞書の参照処理]
図20ステップc12の科目表示支援処理について、
図21を用いて説明する。この科目表示支援処理は、クライアント辞書データ(
図7)への検索において、摘要が一致するレコードが複数発見された場合に、オペレータが見やすいように最も可能性が高いものを選びやすいように並べ替える処理である。クライアント辞書データへの検索で複数のレコードが取得されたら(d1)、オペレータコード順にソートする(d2)。前述したように、オペレータコードは職位コードに関連付けられており(
図12、
図13参照)、各オペレータの職位によって科目決定に対する信頼性の軽重があり得る。最も信頼性が高いのが国や地方官庁(監督官庁)による指定であり、次が税理士や公認会計士などの有資格者による決定、無資格者の場合は専門知識の有無によって信頼性が異なる。システムは複数抽出されたレコードを、含まれる職位コードが高いオペレータコード順に並べ替える(d3)。ここで同じ職位コードのオペレータのレコードが複数ある場合(d4)、日付が新しく選択回数が多いものが先になるようにする(d5)。これは、新しいものの方がより最近の基準に合致している可能性が高く、また過去の選択回数が多いものがより信憑性が高いと考えられるからである。このようにして、抽出された複数のレコードが可能性の高いものから順に並べられる。次に、
図27の科目表示設定の設定内容に応じて、詳細科目を表示するか、別の科目分類(1〜3)を表示するかを判断する(d6)。会計事務所で処理する場合には詳細科目が選択されるべきであるが、例えば顧問先でこの科目決定支援機能を用いる場合には会計知識のレベルに対応する設定に応じて1〜4のいずれかの科目表示を設定することが考えられる。例えば顧問先に会計知識のある経理担当者がいれば詳細科目を設定するが、経理担当者がいない場合は1〜3のいずれかの科目分類を設定することが考えられる。別の科目設定が選択された場合には、
図9の科目データを参照してクライアント辞書データに登録された詳細科目を対応する科目分類に変更する(d7)。このようにして複数の科目候補が可能性の高い順で並べられ、
図28のように科目表示欄53に提示される。ステップd7で例えば科目表示を科目分類1に変更した場合は、
図29のように科目候補として科目分類1(
図9参照)に対応する「販売費及び一般管理費」が表示される。なお、科目候補選択欄53にはいずれの候補も適切でない場合に備えて「自分で入力」を選択して任意入力できるよう構成される。本実施例では「自分で入力」と選択項目が表示されているが、選択項目欄に科目入力欄を用意しても直接科目を入力させてもよい。
【0077】
オペレータは科目候補欄53に提示された科目候補から最適なものを決定して指定する。システムはこのとき入力オペレータのオペレータコードと、選択された科目のレコード(
図7のクライアント辞書データのレコード)のオペレータコードが一致するかを確認し(d10)、一致する場合には当該レコードの選択回数に1を加算する(d12)。オペレータコードが一致しなければ新たなレコードをクライアント辞書データに追加して(d11)、クライアント辞書データを更新する(d13)。このように、決定した科目の選択履歴がクライアント辞書データに追加され、以降の科目決定支援の判断目安に供される。なお、入力オペレータのオペレータコードは会計ソフトの起動時に入力が求められシステム側が保持しているものとする。
【0078】
[摘要辞書の参照処理]
一方、
図20のステップc6において、クライアント辞書データに同じ摘要の仕訳データが存在しない場合(c6:N)、次に汎用の摘要辞書データを検索して科目候補の抽出が行われる。ここでは、摘要情報を単語毎に分解してキーワード抽出が行われる(c7)。この検索キーワード作成処理を、
図30−32を用いて説明する。
【0079】
図30はキーワード辞書、
図31はカテゴリを特定するためのカテゴリ辞書であり、
図32はキーワード作成処理を説明するためのフローチャートである。最初に、キーワード辞書を読み込み(h1)、辞書のキーワード毎に摘要情報を検索し、一致したキーワードを摘要文字列として抽出する(h2)。そして、摘要文字列にキーワード辞書の該当キーワードの属性情報(社内/社外フラグ)を追加する(h3)。この処理はキーワード辞書のキーワード数だけ繰り返される。
【0080】
1以上のキーワードが摘要文字列として抽出されなかった場合(h4:N)、摘要情報から摘要文字列として抽出できた文字列を画面表示し(h5)、オペレータが必要な文字列をキーワード辞書に新たに登録する(h6)。別の実施例では、抽出できなかった文字列を単語ごとに自動的にキーワード辞書に登録するようにしてもよい。そして、抽出された摘要文字列すべての社内フラグをチェックし、1つでも社内フラグの値が1であれば摘要文字列全体の社内フラグを1にする(h7)、社外フラグについても同様である(h8)。これらの社内/社外フラグは、後に摘要辞書データ(
図10)への照合時の絞り込みに用いられる。このようにして摘要情報から摘要文字列を抽出する(h9)。さらに、
図32には明示しないが、後述するように摘要情報から切り出した単語や摘要文字列に基づいて
図31のカテゴリ辞書を参照し、キーワードが最も多く合致するカテゴリ情報を抽出するようにしてもよい。
【0081】
この場合、カテゴリ辞書の一般キーワードは当初から想定されたキーワードが登録され、登録キーワードは日々の処理において学習登録される。すなわち、摘要情報に基づいてカテゴリ辞書の一般キーワードおよび登録キーワードを検索してカテゴリを決定したら、キーワード登録されていない摘要情報の単語を登録キーワード欄に登録する。この登録は
図32ステップh5−h6のようにオペレータに登録する単語を選択指示させてもよいし、自動的に登録するようにしてもよい。このように随時キーワードを増やすことにより科目決定の精度を上げることができる。なお、
図31を用いて決定されたカテゴリ種別も、
図10を用いた科目決定処理における絞り込みに用いることができる。なお、自然文(自由文)ないしそれに近い態様で入力された摘要文など任意の文字列からキーワードや単語を抽出する処理は、他の公知の技術を用いてもよい。このような技術の一例が、本願出願人による特開2003−331209号(特に
図10、
図11参照)に記載されている。ここで、自然文(自由文)ではなく、前述したような、区切り文字や区切り記号等を用いて、各摘要情報が相互に区別されている場合には、文字列からの単語の切り出し処理を適宜省略ないし簡略化することができる。
【0082】
図20に戻り、さらに会計データ内に伝票コードが存在する場合、すなわち会計事務所の会計ソフトと互換性がある伝票データの場合は伝票コードから質問情報を取得する(c7−c8)。このとき、伝票が質問式伝票であるかも判明するため、質問式伝票である場合には質問内容から(もしあれば)社外人数、社内人数を抽出する。そして、社内人数や社外人数が1以上の場合に、抽出しているキーワードの社内/社外フラグを1にする。一方、伝票コードが存在しない場合、もしあれば会計データに含まれる科目名をキーワードとして抽出する(c10)。そして、得られたキーワード毎に摘要辞書データ(
図10)を検索し、科目候補を抽出する(c11)。この科目検索処理を、
図23を用いて説明する。
【0083】
図23は、摘要情報や入力済み科目から汎用の摘要辞書データを検索して科目候補を抽出する科目検索処理を説明するフローチャートである。会計データに伝票コードが含まれない場合は摘要文字列全てを
図31のカテゴリ辞書で検索し、一致するカテゴリ1とカテゴリ2を1つずつ抽出し、
図14の伝票形式データを参照することにより、カテゴリ1とカテゴリ2の組み合わせに該当する伝票コードを抽出し、会計データに伝票コードを入力する。一致する伝票コードがない場合(f1:N)は後述するf4の処理に進む。会計データに伝票コードが含まれる場合(f1:Y)、
図14の伝票形式データテーブルを参照してカテゴリ1とカテゴリ2を特定し、
図10の摘要辞書データのレコードを絞り込む(f2−f3)。そして、摘要から抽出されたキーワードないし摘要文字列から摘要辞書データ(
図10)のキーワード欄に合致するものがあるものを検索する(f4)。さらに、
図20ステップC9で質問内容を取得した場合には、摘要辞書データの質問内容欄に同じ質問があるものを検索する(f5−f6)。さらに、摘要文字列に社内/社外のフラグがある場合、摘要辞書データから社内/社外フラグがあるものに絞り込む。以上の処理で摘要辞書データの複数レコードが抽出された場合は(f7)、レコードを科目候補が多く存在する順にソートして(f8)、一番上のレコードを抽出する(f9)。このようにして抽出した摘要辞書データの1のレコードの科目欄に記載された科目候補を、オペレータに提示する科目候補として決定する(f10)。これが会計データ入力画面の科目候補欄53に表示され、オペレータに選択が促される。
【0084】
このように、質問式(伝票)入力システムを用いない場合でも(自由文、カンマ区切り等のテキスト文字列の態様の取引・摘要情報)、キーワードを用いて可能な限りの項目を決定して、摘要辞書を用いることで、一定レベルの範囲で科目を絞り込むことができる。また、質問式(伝票)入力システムで取得した場合には、さらに精度を高めて摘要辞書を利用することができ、さらに精度良い絞込が可能となる。
【0085】
[科目修正の反映処理]
図19に戻り、ステップb6の科目修正反映処理について説明する。これは、ある取引事象の科目決定を行った場合に、仕訳構成(摘要、伝票の種類と質問内容)が同じ過去の仕訳データをすべて同じ科目に書き換える処理である。例えば過去に会計事務所の職員や顧問先の担当者が間違った科目決定を行い、1以上の誤った会計データがシステムに登録されているような場合に、後に会計処理の有資格者や監督官庁の指導により別の勘定科目で会計データを入力または修正することが考えられる。この場合、有資格者や監督官庁の指導により決定された新たな勘定科目の方が適切であるとして、既に登録されている同じ仕訳構成のデータを1つずつ呼び出して科目を修正するのは過度な労力を要するため、登録されているすべてのデータの科目が自動的に修正されれば便宜となる。このため、科目を決定した後に、すべてのデータに今回の決定科目を反映させるかを問い合わせ、指示に基づいて修正科目を反映させる処理を行う。
【0086】
この科目修正反映処理の詳細を、
図22を用いて説明する。科目決定を行った後(
図19ステップb5)、入力項目が科目欄である場合(e1)、同じ仕訳構成の登録データにも今回決定した科目を反映させるかを確認する(e2)。この確認方法としては、例えばクライアント(顧問先)に問い合わせることが考えられる。また、今回科目を決定したオペレータの職位コードを確認し(
図12、13参照)、所定以上の職位コード(例えば「S003」(税理士・公認会計士))であれば自動的あるいは選択的に過去のデータの科目修正を反映するようにしてもよい。あるいは、科目決定を行うとクライアント辞書データ(
図7)が更新されるが、選択回数が所定値(例えば5回)以上となった場合に同じ仕訳構成で違う科目が登録されたデータをすべて修正するようにしてもよい。さらには、これらの属性(職位や選択回数等)を複合的に組み合わせて所定の条件が満たされたら問い合わせてからまたは自動的に科目修正が反映されるようにしてもよい。このような例では、職位コードがS003(税理士・公認会計士)以上のオペレータが同じ仕訳構成において同じ科目を所定回数選択した場合などが考えられる。
【0087】
同じ仕訳構成の仕訳データに決定した科目を反映させる場合(e2:Y)、既に登録された会計データに対して同じ仕訳構成の仕訳データを抽出して科目を置き換え、クライアント辞書データ(
図7)の選択回数に1を加算して、会計データを更新する(e3−e7)。ここで、同じ仕訳構成の仕訳データを抽出する処理は、クライアント辞書から科目を選択したケース(
図2のc6:Y)では摘要が完全一致する仕訳データを抽出する。一方、クライアント辞書に履歴がなく、摘要辞書を検索したケース(
図20のc6:N)では、伝票コード、質問内容、および科目がヒットした摘要の検索キーワードが一致したものを抽出することにより行う。これにより、例えば支払方法のみが異なるような、摘要の内容が完全に一致していない場合でも置換することができる。このようにして、必要に応じて過去のすべての登録データについて科目の変更を行うことができる。
【0088】
以上、本発明の一実施形態について詳細に説明したが、上記実施形態は、会計事務所側のシステムで勘定科目を決定する例を念頭に説明している。しかしながら、本発明の科目決定支援システムは、顧問先端末で会計データを入力する際にも利用することができる。このような例について以下に簡単に説明する。
【0089】
上述した第1の実施形態では必須ではないが、顧問先端末10が科目決定支援機能を有する第2の実施形態では、顧問先端末10が科目決定支援機能に必要な各種データを具えており、例えば
図7のクライアント辞書データ、
図9の科目データ、
図10の摘要辞書データ、
図12のオペレータデータ、
図13の職位データ、
図14の伝票形式データ等が含まれる。また、
図27の科目表示設定画面において、顧問先端末10で提示される科目分類が設定されるが、この科目設定は会計事務所側のみが設定できるように構成してもよい。すなわち、例えば専任の経理担当者がいるような会計知識の豊富な顧問先であれば詳細科目まで決定できるようにしてもよいし、あまり会計知識がないと考えられる顧問先では、大まかな科目分類(科目分類1〜3のいずれか)で科目決定するように会計事務所側が設定できるようにする。その場合、通信ネットワークを介して会計事務所側からリモートで科目設定を行い、顧問先側では変更できないように構成してもよい。
【0090】
図24は、第2の実施形態にかかる、顧問先端末10に科目決定支援機能を持たせたシステムの処理フローを説明する図である。新たな会計データを入力する場合、一実施例では
図26のような質問式伝票入力画面が提示され(g1)、これに入力あるいは選択することにより取引内容が入力される(g2)。その後、入力データに基づいて摘要データが作成され(g3)、摘要データと質問内容から科目決定支援処理が行われる(g5)。その後、日付や金額等を入力することにより会計入力処理が完了し(g6)、自動仕訳データが生成され(g7)、会計データが作成され(g8)、最終的に帳表形式で出力される(g9)。ステップg1−g6の処理は上述した第1実施形態で会計事務所側システムが行った各種処理と同様であり、顧問先端末10が行う以外は特段変わるものではないため詳細な説明は省略する。
【0091】
図25はこのように科目決定まで行った会計データを取得した会計事務所の処理であり、入手した会計データを表示させて確認し、適宜修正を行うことにより仕訳データを確定させる。ここで、顧問先で詳細科目以外の科目分類で科目決定が行われている場合には、会計事務所で監査時に摘要等を確認しながら詳細科目を決定し、必要に応じて科目修正反映処理(
図22)により科目を一括変換して仕訳データを完成させる。さらに修正した会計データを顧問先に送付する事で、科目の修正があった仕訳については、その修正内容を顧問先のクライアント辞書に反映させることもできる。
【0092】
以上、本発明の数々の実施形態および実施例について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態ないし実施例に限定されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲を逸脱することなく様々な変形例、変更例として実現することができ、このような変形例、変更例はすべて本発明の技術的範囲に属すると解されるべきである。
【0093】
特に、本明細書に記載した質問式伝票の取引別大枠質問と詳細質問の関係は一例であり、どの大枠質問にどのような詳細質問がどのような形式(選択式や記述式など)で対応表示されるかは顧問先や会計担当者の需要に応じて適宜変更されてもよい。また、取引カテゴリごとに質問を表示する際に、上記説明した詳細質問の1以上を表示することなく、詳細質問欄を単に自由入力欄として提示するようにしてもよい。また、添付図面に示した伝票例や画面例のレイアウトもあくまでも例示であり、各項目の順番や、画面上におけるウィンドウの位置、枠線や文字のレイアウト等は適宜変更することができる。
【0094】
さらに、本発明の科目決定支援機能を有する会計処理システムでは、取得あるいは作成する会計データは質問式伝票によるものに限られず、従来式の手書き伝票や原始証憑そのものから摘要情報を作成し、作成された摘要情報に本発明の科目決定支援機能を適用して科目決定を行うことができる。
【0095】
本発明によれば、摘要情報から最初に当該顧問先の仕訳入力履歴であるクライアント辞書を参照して科目候補を抽出するため、当該顧問先の取引情報と対応する勘定科目の決定精度を上げることができるとともに、迅速に科目決定を行うことが可能となる。
【0096】
これにより、例えば会計知識がない人が仕訳入力を行う際に摘要辞書から自分で選択できない場合に会計事務所へ問い合わせて、会計事務所で勘定科目を決定して通知して貰うような方法に比べて、その都度会計事務所で該当勘定科目を調べる必要がなくなり、会計事務所の調査工数を低減し、取引情報と対応する勘定科目の精度をあげることができる。
【0097】
また、会計知識がない人が仕訳入力を行う場合に、定型的な取引であれば過去の仕訳を利用して勘定科目を入力する方法も考えられるが、過去の取引情報と条件が異なった場合に誤った勘定科目を入力してしまう場合がある。これに対し本発明では、顧問先での科目入力時に狭い範囲に絞り込んだ勘定科目を提示するため、このなかで仮に誤った勘定科目を入力したとしても、会計事務所のチェックで誤りをすぐに特定することができ、次回からは同じ間違いを防止する措置をとることができる。
【0098】
また、従来技術として顧問先において勘定科目分類とその説明から判断することで勘定科目を入力していく方法があるが、自分で絞り込んでいく必要があり、確認しながらの入力となるので、入力に時間がかかり、正確な勘定科目を入力できたかの判断ができない。これに対し本発明では予め取引情報と関連のある勘定科目から選択することになるので、入力時間も短くてすみ、誤った勘定科目を入力した場合も、会計事務所からフィードバックがあるため、次回から正確な勘定科目を入力することができる。
【0099】
また、会計知識がない人が仕訳入力を行う場合に顧問先の業種や規模によって複数の摘要辞書を切替えて勘定科目を設定する方法も考えられるが、全ての業種を網羅した摘要辞書を作成するのに膨大な手間がかかるのに対し、本発明では顧問先の業種や規模にもとづいたクライアント辞書だけでよいので、顧問先に必要な取引情報に特化したクライアント辞書を作成することができる。
【0100】
さらに、顧問先にて発生した取引事象に関して、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どうする、なぜ)または5W2H(いつ、どこで、誰が、何を、どうする、なぜ、いくら)の大枠様式をベースに取引毎の個別質問を生成して、その回答を入力ないし選択してもらうことで取引事象の詳細情報を手書きで記入又は印刷した質問式伝票があるが、本発明では質問式伝票では対応していない取引事象の詳細情報に対応する勘定科目を自動で勘定科目候補として表示することができるので、判断が難しい勘定科目について複数候補を表示することで、会計事務所のチェックにおいて誤った勘定科目の入力がなくなり、原始証憑まで確認する手間を省くことができる。