(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴム状弾性体でなる絶縁部と、導電粒子が連なり前記絶縁部を厚み方向に貫通する複数の導電部とを備え、導電部の両端を導体に導電接続することでこの導体の隙間から電磁波が漏出することを抑止する電磁波シールドガスケットであって、
前記導電部間の間隔Dが次の式1
0.25mm≦D≦λ×0.12 ・・・(式1)
(式1中、λは電磁波の波長、D<λ×0.01を除く。)を満たし、
平板状のベース部位と、そのベース部位の少なくとも一方の表面側にベース部位から突き出す複数の突出部位とを有する形状に成形され、突出部位はベース部位から突出する導電部の部分とその外周面を覆う絶縁性の被覆部とからなることを特徴とする電磁波シールドガスケット。
導電部が導体に接触する一方の端面から他方の端面までの長さで規定される導電部の高さが導電部間の間隔D以下である請求項1〜請求項6何れか1項記載の電磁波シールドガスケット。
電子部品と、この電子部品に対向して配置されるとともにこの電子部品に対向する面に隙間を有する導体と、この隙間を埋めるように設けられる電磁波シールドガスケットとを備える電磁波シールド構造において、
電磁波シールドガスケットが請求項1〜請求項8何れか1項記載の電磁波シールドガスケットであり、前記電子部品が発生する電磁波の筐体外部への漏出を抑止し、筐体外部からの電磁波の前記電子部品への進入を抑止することを特徴とする電磁波シールド構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、全体が導電性ゴムで構成されている電磁波シールドガスケットは、ゴム中に多量の導電粒子を配合する必要があるため、硬くなり圧縮荷重が大きくなることがある。
また金属箔でスポンジを覆う構成の電磁波シールドガスケットは、圧縮荷重が低い一方で柔軟性を有するため、所望の大きさにカットする際に変形が起きやすい。そのためカットずれが生じ、所定の寸法公差内の製品が得られ難く、歩留まりが悪いという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。即ち所定の電磁波シールド特性を有していながら柔軟性があり圧縮荷重が小さく、寸法精度に優れた電磁波シールドガスケットを提供することを目的とする。
また、電子部品と、電磁波の漏出を防止する導体と、この導体に生じた隙間を埋める電磁波シールドガスケットとを備える電磁波シールド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、ゴム状弾性体でなる絶縁部と、導電粒子が連なり前記絶縁部を厚み方向に貫通する複数の導電部とを備え、導電部の両端を導体に導電接続することでこの導体の隙間から電磁波が漏出することを抑止する電磁波シールドガスケットであって、
前記導電部間の間隔Dが次の式1
0.25mm≦D≦λ×0.12 ・・・(式1)
(式1中、λは電磁波の波長)を満たすことを特徴とする電磁波シールドガスケットを提供する。
【0007】
この電磁波シールドガスケットは、ゴム状弾性体でなる絶縁部と、導電粒子が連なり前記絶縁部を厚み方向に貫通する複数の導電部とを備え、導電部の両端を導体に導電接続することでこの導体の隙間から電磁波が漏出することを抑止する電磁波シールドガスケットであるため、絶縁部と導電部とが分かれて存在している。そのため、導体間の導通は導電部が担う一方で絶縁部は柔軟性を保持することができ、柔軟性を有し圧縮荷重の低い電磁波シールドガスケットとすることができる。
また、ゴム状弾性体でなる絶縁部と導電粒子でなる導電部から形成されるため、金型で成形することができ、また金型形状を精度良く再現した製品を得ることができる。よって金属箔でスポンジを覆う構成の電磁波シールドガスケットと比較すると、寸法精度に優れた電磁波シールドガスケットを得ることができる。
【0008】
そして、導電部間の間隔Dについては、次の式1
0.25mm≦D≦λ×0.12 ・・・(式1)
(式1中、λは電磁波の波長)を満たしている。
λは本発明により漏出を抑止すべき電磁波の波長とする。こうした式1を満たす間隔Dを設けて導電部を配置するため、導電粒子を含まない絶縁部や空間が存在していても電磁波の漏出を抑止することができる。したがって、圧縮荷重を高める導電部以外の圧縮荷重の低い絶縁部や空間を意図的に設けることで電磁波シールドガスケットに加わる圧縮荷重を下げることができる。さらに、導電部間を絶縁部で満たせば電磁波シールドガスケットで封止する導体間の気密性を高めることができ防水性の製品に利用できる。そうした一方で、導電部間に空間を設ければ電磁波シールドガスケットで封止する導体間の通気性を高めることができ蓄熱を防止することができる。
【0009】
複数の導電部は、1列に並列して設けることができる。複数の導電部を1列に並列して設けるため、その導電部の間隔を所定の間隔に設定することで電磁波の進行を抑止し、電磁波に対して有効な電磁波シールド特性を発揮することができる。また、導電部を1列のみ設けることで2列以上設ける場合と比較して電磁波シールドガスケット全体に対する導電部の割合を減らし、柔軟性を高く保つことで圧縮荷重を低くすることができる。
【0010】
導電部は、平均粒径が10〜100μmの導電粒子を含み、粒径が1μm以下の粒子の含有量を10%以下とすることができる。導電粒子の平均粒径を10〜100μmとし、粒径が1μm以下の粒子の含有量を10%以下としたため、導電部の形成過程において、個々の導電粒子が磁場から得る応力の低下を防止し、磁場による導電部の形成が容易である。また、導電粒子が液状ゴム中で沈殿することを防止し、均一な導電部を形成することができる。さらに電磁波の遮蔽効果を高めることができる。
【0011】
電磁波シールドガスケットの形状は、平板状のベース部位と、そのベース部位の少なくとも一方の表面側にベース部位から突き出す複数の突出部位とを有する形状に成形され、突出部位はベース部位から突出する導電部の部分とその外周面を覆う絶縁性の被覆部とからなるものとすることができる。
平板状のベース部位を有するため、突出部位の基端側もベース部位につながり電磁波シールドガスケットの一体性を確保することができる。また、そのベース部位の少なくとも一方の表面側にベース部位から突き出す複数の突出部位を有するため、突出部位どうしの間に空間を形成することができる。そして、この突出部位はベース部位と比較して水平断面積が小さく、圧力を受けることで変形しやすいため、圧縮荷重を小さくすることができる。また、突出部位は、電磁波シールドガスケットを設置する導体の隙間の凹凸に合わせた形状に変形することができ、種々の形状や種類の導体に対して適用することができる。
突出部位は、ベース部位から突出する導電部の部分とその外周面を覆う絶縁性の被覆部とからなるため、被覆部で導電部を保護し導電粒子の脱落を防ぐことができる。
【0012】
突出部位の水平断面形状を円形とすることができる。突出部位の水平断面形状を円形としたため、突出部位が特定方向に変形することを防止し、突出部位の全体が圧力を受けて水平方向の全方位に広がるように変形させることができる。これにより確実に所定の電磁波シールド特性を発揮する電磁波シールドガスケットとすることができる。
【0013】
突出部位における導電部の水平断面形状がベース部位の長手方向に幅広となる扁平形状であるものとすることができる。突出部位における導電部の水平断面形状をベース部位の長手方向に幅広となる扁平形状としたため、水平断面が円形の導電部と同様の電磁波シールド特性を維持しながら圧縮荷重を低く抑えることができる。
即ち、電磁波シールド特性は導電部間の間隔Dの影響を強く受けるため、その水平断面形状の影響を受けにくい。これに対し、電磁波シールドガスケットに対する圧縮荷重は導電部の水平断面の断面積の影響を強く受けるため、その断面積が小さいほど電磁波シールドガスケットの圧縮荷重を低くすることができるのである。
【0014】
導電部の断面形状のアスペクト比は、10を超えるとベース部位の長手方向に対してその直交方向の幅が相対的に短くなり、導電部が薄くなるとともに絶縁部の割合が相対的に大きくなるため、抵抗値が上昇し、電磁波シールド特性が低下するおそれがある。こうした一方で、アスペクト比が2未満であると水平断面の断面積が断面円形状の場合と大して変わらないため、圧縮荷重もほとんど変わらないおそれがある。よって、導電部の断面形状のアスペクト比は2〜10であることが好ましい。
【0015】
導電部が導体に接触する一方の端面から他方の端面までの長さで規定される導電部の高さは導電部間の間隔D以下とすることができる。導電部の高さを導電部間の間隔D以下とするため、電磁波が漏出しやすい導体間の隙間を埋め易く、電磁波の漏出を抑止する電磁波シールドガスケットとすることができる。
なお、この導電部の高さは、実際に圧縮されて使用されるときの高さとすることができる。したがって、例えば20%圧縮されて使用される電磁波シールドガスケットは、無圧縮状態の高さが間隔Dよりも25%大きく成形されていても良い。
【0016】
さらに、電子部品と、この電子部品に対向して配置されるとともにこの電子部品に対向する面に隙間を有する導体と、この隙間を埋めるように設けられる電磁波シールドガスケットとを備える電磁波シールド構造において、電磁波シールドガスケットが前記何れかの電磁波シールドガスケットであり、前記電子部品が発生する電磁波の筐体外部への漏出を抑止し、筐体外部からの電磁波の前記電子部品への進入を抑止することを特徴とする電磁波シールド構造を提供する。
【0017】
絶縁部とその絶縁部中を厚み方向に貫通する導電部とを有する異方導電性コネクタが存在し、一方の電子部品ともう一方の電子部品の接点電極間を導通させたり、一方の電子部品をもう一方の電子部品に導通させて接地させたりすることができる。上記電磁波シールドガスケットもこうした異方導電性コネクタとしての機能を発揮することもでき、かつ、導体の隙間を埋めるように設けることで、その導体の表面(外部)への電磁波の漏出や、その導体の裏面(内部)への電磁波の進入を防止する電磁波シールド構造が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電磁波シールドガスケットは所定の電磁波シールド特性を有し、柔軟性があり、圧縮荷重が小さい。
また本発明の電磁波シールドガスケットは寸法精度に優れ、歩留りの高い電磁波シールドガスケットである。
さらに、本発明の電磁波シールド構造は、導体間に生じた隙間を所定の電磁波シールドガスケットで埋めて、その隙間からの電磁波の進入、漏出を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について実施形態に基づきさらに詳細に説明する。以下の各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して重複説明を省略する。また、共通する材質、製造方法、作用効果等についても重複説明を省略する。
【0021】
第1実施形態[図1〜図2、図3(a)、図4(a)]:
第1実施形態に係る電磁波シールドガスケット11の断面図を
図1で示す。また、
図1では電磁波シールドガスケット11が導電接続する一対の導体としてパーソナルコンピュータの筐体12を例示する。
図2、
図3(a)で示すように、電磁波シールドガスケット11は、平板状のベース部位13と、そのベース部位13の一方の表面側にベース部位13から突き出す複数の突出部位14とを有し、突出部位14がベース部位13の長手方向に沿って1列に配列した形状をしている。電磁波シールドガスケット11の構成をその材質から見ると、ゴム状弾性体でなる絶縁部15と、この絶縁部15を導電粒子が厚み方向に貫通する複数の導電部16とから形成されており、導電部16もまたベース部位13の長手方向に沿って1列に配列している。
この電磁波シールドガスケット11の形状、構成をさらに詳しく説明する。
【0022】
(絶縁部)
絶縁部15は、複数の導電部16の間を仕切り、電磁波シールドガスケット11の外観形状を象どる部分であって、パーソナルコンピュータの筐体12に挟んだときに圧縮荷重が小さくなるように柔らかいゴム状弾性体から形成される。具体的には、JIS K6253に規定されたA硬度(タイプAデュロメータ硬さ)が50以下の材質を用いることが好ましく、35以下であることがより好ましい。硬さの下限については特に限定するものではないが、確実な導通接続をするために、ある程度の反発弾性を有することが好ましく、E硬度で5以上のものが好適である。
【0023】
こうした材質の具体例としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロスリホンゴム、ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。この中でも特に、成形加工性、電気絶縁性、耐候性などが優れるシリコーンゴムが好ましい。
【0024】
また、磁場配向によって導電部16を形成する場合には、導電粒子に磁性を有する粒子を含む導電粒子を用い、ゴム状弾性体として液状ゴムを用いる。こうした導電粒子を分散させた液状ゴムを磁場配向することによって、電磁波シールドガスケット11の厚み方向に磁性を有する導電粒子が数珠繋ぎに連続した導電部16を形成することができる。導電粒子を分散させる液状ゴムの粘度は、常温で1Pa・s〜250Pa・sが好ましく、10Pa・s〜50Pa・sがより好ましい。1Pa・sより粘度が低いと、導電粒子が素早く沈殿し、弾性部の下方に偏るおそれがあり、逆に250Pa・sより粘度が高いと導電粒子の液状ゴム内での移動抵抗が大きくなり、配向時間が長くなるためである。
このような液状ゴムの材質には、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0025】
(導電部)
導電部16は、導電粒子が連なり絶縁部15を厚み方向に貫通する部位であり、1列に沿って複数個(
図1では20個)が配列されている。導電部16の端面は電磁波シールドガスケット11の表裏両面に露出しており、その露出した部分が上下の筐体12,12にそれぞれ接触し、その上下の筐体12,12を導通する。
電磁波シールドガスケット11では、
図2、
図3(a)、
図4(a)で示すように、導電部16の水平断面形状を円形としている。即ち、導電部16の配列方向(電磁波シールドガスケット11の長手方向)の長さ(直径)である
図2で示す導電部16の幅Wと、導電部16の配列方向に対する直交方向の長さ(直径)である
図4(a)で示す導電部16の奥行きTと、はそれぞれ同じ長さに形成されている。
【0026】
図2で示される導電部16,16間の間隔Dは、次の式1
0.25mm≦D≦λ×0.12 ・・・(式1)
(式1中、λは電磁波の波長)を満たしている。
間隔Dを0.25mm未満とすると導電部16が密になりすぎ、電磁波シールドガスケット11全体における導電部16が占める体積が大きくなってしまう。この場合、電磁波シールドガスケット11の柔軟性は低下し、圧縮荷重が大きくなるおそれがある。その一方で、間隔Dが波長λ×0.12の長さを超えると導電部16,16間の隙間が大きくなりすぎてしまい、この隙間から電磁波が漏出し、十分な遮蔽効果が得られなくなる。
なおここで、導電部16,16間の間隔Dは、一方の導電部16の端から隣接する他方の導電部16の端までの間隔(
図2で示す間隔D)をいい、導電部16,16の幅W方向の太さは含めないものとしている。
【0027】
導電部16を形成する導電粒子のうち磁性を有する導電粒子としては、ニッケル、コバルト、鉄、フェライト、またはこれらの合金などの強磁性体の粉末や、良導電性の金属粒子を前記強磁性体で被覆した複合粒子、強磁性体の粉末を良導電性の金属で被覆した複合粒子等が挙げられ、導電粒子の形状としては、粒状、繊維状、細片状、細線状などが挙げられる。磁性を有する導電粒子を用いて導電部16を形成するには、磁場の作用を利用することで導電粒子どうしを所定の方向に数珠繋ぎに密着させることができる。
全体が導電性ゴムで構成される従来の電磁波シールドガスケットでは、全方位に導電粒子が接合するように配合されるため、ゴム状弾性体中の導電粒子の配合量を高める必要がある。しかし電磁波シールドガスケット11では導電部16に導電粒子が集中し、また一方向に導電粒子が接合しているため少量の導電粒子を用いて所定の導電性を得ることができる。
【0028】
導電粒子の平均粒径は、磁場配向によって連鎖状態を形成するには1μm〜200μmとすることができる。但し、平均粒径が10μm未満であると個々の導電粒子が磁場から受ける応力が小さくなるため、導電部16を形成し難くなったり、導電部16を形成するための時間が長くなったりするおそれがある。また100μmを越える場合には、導電粒子を配向させる工程において導電粒子が液状ゴム中で沈殿しやすくなり、均一な導電部16を形成できないおそれがある。よって導電粒子の平均粒径は10μm〜100μmとすることがより好ましい。
【0029】
また粒径1μm以下の導電粒子の含有量が10%より多い場合には、電磁波の遮蔽効果が低下するおそれがある。これは粒径が小さい導電粒子は粒径の大きな導電粒子に比べて表面積が大きくなるため、実質的に電流の流れる経路が長くなること、さらに粒子どうしの接触点が多くなるためインピーダンスが大きくなると考えられるためである。したがって、電磁波シールドガスケット11の電磁波シールド特性をより高めるためには、粒径1μm以下の導電粒子の含有量は10%以下とすることが好ましい。
そして、個々の導電部16の抵抗値は100mΩ以下とすることが好ましい。100mΩを超えると導電性が悪くなり、電磁波シールド効果が低下するおそれがある。
【0030】
(ベース部位)
ベース部位13は、電磁波シールドガスケット11をその形状で区分したときに平板状に形成される部位である。ベース部位13は電磁波シールドガスケット11全体の一体性を保持する部位である。ベース部位13は上述の絶縁部15の一部と導電部16の一部とを含んでいる。
【0031】
(突出部位)
突出部位14は、電磁波シールドガスケット11をその形状で区分したときにベース部位13の少なくとも一方の表面側にベース部位13から突き出して設けられる部位である。
この突出部位14は、ベース部位13から突出する導電部16の部分とその導電部16の外周面を覆う絶縁部15からなる被覆部17とで形成されている。そのため、突出部位14はベース部位13と比較して水平断面積が小さく変形しやすい。
突出部位14を有することで電磁波シールドガスケット11の圧縮荷重を小さくすることができ、剛性の低い筐体12,12やその他の電磁波シールド部材であってもその破損を防止することができる。
そして、突出部位14は筐体12の隙間の凹凸に合わせた形状に形成することが可能であるため、導電部16と筐体12との接合を確実にし、それらの間に空間ができて電流が流れないなどといった不都合を回避することができ、電磁波シールド特性の低下を防止することができる。
【0032】
突出部位14の外周面を覆うようにベース部位13から伸張して被覆部17が設けられている。この被覆部17によって導電部16を保護しているため、導電粒子の脱落を防ぐことができる。また、被覆部17は水平断面形状の外形がアスペクト比1の円形に形成されている。これにより突出部位14が特定方向にのみ変形することを防止することができる。また突出部位14は圧力を受けた際に変形しやすく、圧縮荷重を下げている。
【0033】
(製造方法)
電磁波シールドガスケット11の製造方法について説明する。
先ず、成形用の金型を準備する。この金型は非磁性体で形成されており、導電部16を形成するための強磁性体でなる配向ピンが埋め込んである。この配向ピンの一端は導電部16を形成する位置のキャビティー面に露出している。この金型内に磁性を有する導電粒子(磁性導電粒子)を配合した液状ゴムを注入し、磁場を印加する。この際、配向ピンに挟まれた部分に磁性導電粒子が引寄せられ、配向ピンの間に磁性導電粒子が数珠繋ぎに配向する。そして、液状ゴムを硬化して絶縁部15中に導電部16を備えた電磁波シールドガスケット11を得る。
【0034】
電磁波シールドガスケット11は、電子部品と、この電子部品に対向して配置されるとともにこの電子部品に対向する面に隙間を有する導体12と、この隙間を埋めるように設けられる電磁波シールドガスケット11とを備える電磁波シールド構造において、前記電子部品が発生する電磁波の筐体12外部への漏出を抑止し、筐体12外部からの電磁波の前記電子部品への進入を抑止することを特徴とする電磁波シールド構造を形成することができる。
即ち、電磁波が通る隙間を電磁波シールドガスケット11で埋めることで、電磁波の通過を抑止することができる。
【0035】
第2実施形態[図1〜図2、図3(b)、図4(b)]:
第2実施形態に係る電磁波シールドガスケット21の平面図を
図3(b)で、断面図を
図4(b)で示す。先の実施形態で示した電磁波シールドガスケット11では、導電部16の水平断面が円形であったのに対し、本実施形態における電磁波シールドガスケット21では、導電部26の水平断面がベース部位13の長手方向に沿って扁平した扁平形状となっている。即ち、導電部26の配列方向(電磁波シールドガスケット21の長手方向)の長さである
図2で示す導電部26の幅Wは、導電部26の配列方向に対する直交方向の長さである
図4(b)で示す導電部26の奥行きTよりも長く形成されている。
但し、導電部26を被覆する被覆部17は電磁波シールドガスケット11と同様にその水平断面形状が円形に形成されている。
扁平形状の導電部26は、金型に取り込む配向ピンの断面形状を扁平形状とすることで形成することができる。
【0036】
電磁波シールドガスケット21は、突出部位14における導電部26の水平断面形状をベース部位13の長手方向に幅広となる扁平形状としたため、水平断面が円形である先の実施形態で示した電磁波シールドガスケット11と同様の電磁波シールド特性を維持しながら、圧縮荷重を低く抑えることができる。
【0037】
また、仮に突出部位の水平断面形状もベース部位13の長手方向に幅広となる扁平形状とすると、筐体12,12で圧縮する際に短手方向に折れるように屈曲しやすくなる。すると、接触不良や導電性の低下、導電部26どうしの隙間の拡大による電磁波の漏出等の不具合が生じ得る。しかしながら、突出部位14の水平断面を円形としたため、屈曲しやすい方向が被覆部17で補強されて、特定方向への変形を防止することができる。
【0038】
各実施形態の変形例:
本発明の各実施形態では電磁波シールドガスケット11,21を一本の帯状に形成しているが、筐体12,12間の隙間の形状に対応した任意の形状とすることができ、例えば枠状とすることもできる。これにより、筐体12の間の形状に合わせてより高い電磁波シールド特性を有する電磁波シールドガスケット11,21を形成することができる。
またベース部位13の一方の表面側にのみ突出する突出部位14を設けているが、突出部位14はベース部位13の両面に設けることもできる。これにより筐体12,12の間の形状に応じて電磁波を漏れなく遮断可能な電磁波シールドガスケット11,21を形成することができる。
各突出部位14の高さは筐体12の形状に応じて変更することができる。即ち、一つの電磁波シールドガスケット11,21に備えられた複数の突出部位14の高さは同一とせず、設置位置に応じて変更することもできる。
【0039】
また上記各実施形態では突出部位14の断面の外形を円形としている。しかし、例えば正方形や六角形等、アスペクト比が1の他の形状としても良く、円形の場合と同様に一方向への変形を予防することができる。
また、断面が扁平な導電部26に対してその外周に沿った形状に被覆部17を形成することで、アスペクト比が1ではない形状とすることも可能である。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
試料1〜試料14の電磁波シールドガスケットを作製し圧縮荷重と遮蔽効果について考察した。
【0041】
試料1: ベース部位や突出部位を成形する外形が彫り込まれた金型を準備する。この金型は非磁性体で形成されており、各導電部を形成するために強磁性体でなる配向ピンが埋め込んである。この配向ピンの形状は導電部の水平断面形状と同一の円形であり、その一端は導電部を形成する位置のキャビティー面に露出している。次にこの金型内に粒径1μm以下の導電粒子の含有量が1%未満で、平均粒径35μmの銀被覆Ni粒子(磁性導電粒子)を配合した液状シリコーンゴムを注入し、磁場を印加する。この際、配向ピンに挟まれた部分に磁性導電粒子が引寄せられ、配向ピンの間に磁性導電粒子が数珠繋ぎに配向する。さらに液状シリコーンゴムを硬化することで、絶縁部の硬さ:A硬度35、高さ:1.0mm、突出部位の先端部分の直径:0.9mm、突出部位の根元の直径:1.2mm、ベース部位の高さ:0.28mm、導電部の断面形状:直径0.7mmの円(即ち、導電部の奥行きT:0.7mm、導電部の幅W:0.7mm)、導電部どうしの間隔D:7.0mm、ベース部の長さ:100mm、導電部の導通抵抗:75mΩとした、大略
図1、
図3(a)で示す外形の試料1を得た。
【0042】
試料2: 導電部どうしの間隔Dを4.3mmに変更した以外は試料1と同様の試料2を得た。
【0043】
試料3: 導電部どうしの間隔Dを1.8mmに変更した以外は試料1と同様の試料3を得た。
【0044】
試料4: 断面が扁平形状である配向ピンを備えた金型に代えて、
図3(b)で示すような、奥行きT:0.2mm、幅W:0.7mmの導電部を有し、その他は試料1と同様の試料4を得た。
【0045】
試料5: 導電部どうしの間隔Dを4.3mmに変更した以外は試料4と同様の試料5を得た。
【0046】
試料6: 導電部どうしの間隔Dを1.8mmに変更した以外は試料4と同様の試料6を得た。
【0047】
試料7: 導電部どうしの間隔Dを30mmに変更した以外は試料1と同様の試料7を得た。
【0048】
試料8: 金型を代えて、
図5、6で示すような、試料8を得た。試料8は全体がベース部位となるような形状であり、導電部が、奥行きT:0.7mmでベース部位の長手方向に連続した連続体形状とした以外は試料1と同様とした。
【0049】
試料9: これまでの試料1〜試料8と異なり、スポンジガスケット(星和電機社製、型番E02S040020JST)をカットして、高さを1mm、幅を0.7mmとした試料9を得た。
【0050】
試料10: 試料1での金型を代えて、
図7、8で示すような、全体がベース部位となるような形状であり、導電部の形状が、奥行きT:0.25mm、幅W:0.25mmの円形とし、導電部どうしの間隔Dを0.25mmとして2列に配置した以外は試料1と同様の試料10を得た。
【0051】
試料11: ベース部位を構成する材質をA硬度が20のシリコーンゴムに代え、導電部どうしの間隔Dを1.8mmとした以外は試料1と同様の試料11を得た。
【0052】
試料12: 導電部を、平均粒径が35μmの銀被膜Ni粒子95重量%と、粒径が約1μmの銀粒子5重量%の混合粉末(粒径1μm以下の小粒径粒子の含有量が5%)で形成した以外は試料11と同様の試料12を得た。
【0053】
試料13: 導電部を、平均粒径が35μmの銀被膜Ni粒子90重量%と、粒径が約1μmの銀粒子10重量%の混合粉末(粒径1μm以下の小粒径粒子の含有量が10%)で形成した以外は試料11と同様の試料14を得た。
【0054】
試料14: 導電部を、平均粒径が35μmの銀被膜Ni粒子85重量%と、粒径が約1μmの銀粒子15重量%の混合粉末(粒径1μm以下の小粒径粒子の含有量が15%)で形成した以外は試料11と同様の試料14を得た。
【0055】
上記試料1〜試料14について、以下の方法で40%圧縮荷重及び遮蔽効果の測定を行った。
【0056】
(40%圧縮荷重の測定)
各試料を平坦な銅箔エポキシ基板に挟み、その高さ方向(
図1の上下方向)に40%圧縮した際の圧縮荷重を、荷重測定器を用いて測定した。試料1〜試料10についての結果を表1に示す。また、試料11〜試料14についての結果を表2に示す。
【0057】
(遮蔽効果の測定)
各試料の電磁波の遮蔽効果は、
図11で示す導波管タイプの遮蔽効果測定システムを用いて評価した。より具体的には、まず始めに
図11で示すように一対のステンレス製の遮蔽板41の間に、ステンレス製のスペーサー42と試験片(各試料)43とを挟み込む。このときスペーサー42の高さは0.6mmとすることで、高さが1mmの試料43は40%圧縮された状態で固定される。そしてスペーサー42で挟んだ試料43を、一対の同軸導波管変換器44(Penn Engineering Components社製、WR187(CPRF))のフランジ間に固定し、同軸ケーブル45により接続したベクトルネットワークアナライザー46(アンリツ株式会社製、MS2026A)を用いて、電磁波の減衰値を評価した。今回の実験では無線LANの周波数帯である2.4GHz帯及び5GHz帯の電磁波を対象として測定を行った。
表1および表2には、5.0GHzの電磁波を対象とした測定結果を示す。なお、2.4GHzでの測定結果は示していないが、全ての試料において5.0GHzの電磁波の遮蔽効果を上回る遮蔽効果を示した。このことは、対象とする電磁波の周波数が低くなると波長が長くなるため、間隔Dの隙間を透過し難くなるためであると考えられる。
本実施例では、無線LANの周波数帯域である2.4GHzと5.0GHzを対象に評価したが、本発明の電磁波シールドガスケットは、コンピュータの動作周波数である100MHz程度から10GHz程度までの周波数の電磁波に対する遮蔽に効果的である。
【0058】
また、導電部を導電粒子で形成した試料1〜7および試料10〜14の各試料について各導電部の抵抗値を測定したところ、すべての試料において導電部の抵抗値が50〜100mΩの範囲内となり、抵抗値に大きな差は見られなかった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
(試料1〜試料10についての考察)
間隔Dを7mmとした試料1では、−31.0dBという、電磁波による各種機器の誤作動を予防するために十分な電磁波の遮蔽効果が得られた。
間隔Dが4.3mmの試料2では−35.7dBという試料1よりも優れた電磁波遮蔽効果があった。
間隔Dが1.8mmの試料3では−47.9dBというさらに優れた電磁波遮蔽効果があった。
しかし、間隔Dを30mmとした試料7では−10.2dBしか得られず、電磁波による各種機器の誤作動を予防するためには不十分であった。
【0062】
周波数5GHzの電磁波の波長は60mmであるが、上記の結果より間隔Dがおおよそ波長の長さ×0.12の試料1と、それよりも間隔Dが狭い試料について十分な電磁波遮蔽効果を得られることが分かった。またさらに、間隔Dが短いほど優れた電磁波遮蔽効果を示すことが分かった。その一方で、導電部どうしの間隔Dを30mmとした試料7については−10.2dBしか得られず遮蔽効果が好ましくなかった。このことから、間隔Dを周波数5GHzの電磁波の波長である60mmの半分(すなわち、波長の長さ×0.5)の長さとすると、十分な遮蔽効果が得られないものと考えられる。
これに対し40%圧縮荷重については、試料1〜3及び7のいずれも、筐体の隙間に電磁波シールドガスケットをセットした際に筐体を破損しない程度に低く、さらに間隔Dが大きいほど圧縮荷重が小さいことが分かった。
【0063】
試料4〜試料6については、導電部どうしの間隔Dは試料1〜試料3に対応するものであるが、導電部の水平断面形状を奥行きT:0.2mm、幅W:0.7mmの扁平形状に変更したものである。これらの試料について同じ間隔Dのものどうしを比較すると、導電部形状を変更したことで圧縮荷重が30〜50%低下することが分かった。その一方で電磁波遮蔽効果の低下は2〜4%であった。以上の結果から、導電部の形状を変更することで、電磁波遮蔽効果をほとんど変えずに圧縮荷重を大きく低下させることができることが分かった。
【0064】
試料8は、隙間のない連続体でなる導電部が形成されているため、−60.7dBと優れた電磁波遮蔽効果を示した。一方、40%圧縮荷重は26Nと大きな値であった。
また、スポンジガスケットを使用した試料9では、圧縮荷重が低く優れた電磁波遮蔽効果を示すが、寸法精度が悪かった。
導電部どうしの間隔Dを0.25mmと狭くし、導電部を2列設けた試料10では−55.5dBという、試料1〜試料6のいずれより優れた電磁波遮蔽効果を示した。これは導電部どうしの間隔Dを狭くし、2列設けたことで電磁波遮蔽効果を高めることができたためと考えられる。しかし圧縮荷重は41.3Nと大きな値であった。
【0065】
(試料11〜試料14についての考察)
試料11については、電子顕微鏡を用いて700倍に拡大して観察を行った。その電子顕微鏡写真を
図9に示す。拡大観察の結果、試料11には小粒径粒子がほとんど存在していないことが確認された。また圧縮荷重は10.6Nと低い一方で、−52.2dBという電磁波による各種機器の誤作動を予防するために十分な電磁波の遮蔽効果が得られた。
試料12は、圧縮荷重は試料11より低かったが、電磁波遮蔽効果もまた低かった。
試料13についても、電子顕微鏡を用いて700倍に拡大して観察を行った。その電子顕微鏡写真を
図10に示す。拡大観察の結果、試料13には小粒径粒子が多数存在していることが確認された。また、圧縮荷重は試料12よりもさらに低かったが、電磁波遮蔽効果もまた試料12よりさらに低かった。
試料14については、圧縮荷重は試料13よりさらに低かったが、電磁波遮蔽効果もまた試料13よりもさらに低かった。
【0066】
試料11〜試料14の対比から、含有される粒径1μm以下の導電粒子の量が増えるほど電磁波遮蔽効果が低下し、10%以下の場合に特に優れた電磁波遮蔽効果が得られることがわかった。