(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態である排ガス処理方法について、それに用いる排ガス処理装置とともに、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0029】
<第1の実施形態>
(排ガス処理装置)
先ず、本発明を適用した第1の実施形態である排ガス処理装置1について説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施形態である排ガス処理装置の断面図である。
図1に示すように、本実施形態の排ガス処理装置1は、第1の燃焼炉10と、第1のバーナ20と、絞り部30と、第2の燃焼炉40と、吹込口(第2の吹込口)50と、排気口60と、を備えて概略構成されている。
【0030】
本実施形態の排ガス処理装置1を用いることにより、後述する本実施形態の排ガス処理方法を実施することができる。具体的には、第1の燃焼炉10により、炭素化炉及び黒鉛化炉から排出される第1の排ガスを処理し、第2の燃焼炉40により、耐炎化炉から排出される第2の排ガスを処理することができる。
【0031】
第1の燃焼炉10は、第1の排ガスを燃焼することにより、第1の排ガスに含まれるシアン化水素、アンモニア等の有害ガスを燃焼分解するための、筒状(例えば、円筒状)の炉である。この第1の燃焼炉10は、閉塞部12と内周壁14とを有しており、その内部に、一端が閉塞し、他端が開口した第1の内部空間S1を有している。第1の燃焼炉10の材質としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アルミナ質耐火物、アルミナ−シリカ質耐火物等を用いることができる。
【0032】
第1の燃焼炉10には、第1のバーナ20と、第1の温度計(図示略)と、絞り部30と、が設けられている。
【0033】
第1のバーナ20は、閉塞部12の中央を貫通するように設けられている。そして、第1のバーナ20は、第1の燃焼炉10と同軸上となるように設けられている。これにより、第1のバーナ20は第1の内部空間S1内に火炎を形成することができるともに、この火炎により、当該第1の内部空間S1内の第1ガスを燃焼することができる。第1のバーナ20には、燃料と支燃性ガスとが供給されており、燃料及び支燃性ガスの流量を調整することにより、後述の燃焼量及び酸素比を制御することができる。酸素比を制御することにより、還元雰囲気の火炎を形成することができる。
【0034】
燃料としては、特に限定されないが、都市ガス、LPGなどの気体燃料や、灯油、A重油などの液体燃料等を用いるのが好ましい。
【0035】
支燃性ガスとしては、酸素を含むガスであれば特に限定されないが、酸素濃度が20.8(空気)〜100体積%(純酸素)のガスを用いるのが好ましい。また、分解速度向上の観点から、酸素濃度が25〜100体積%のガスを用いるのが特に好ましい。酸素濃度が高いガスを用いることで、燃焼炉内の温度を上げることができ、分解速度を速くすることができる。その結果、第1の内部空間S1内の排ガス滞留時間が短くなるため、第1の燃焼炉10を小さくすることができる。
【0036】
本実施形態の排ガス処理装置1(あるいは第1のバーナ20)には、第1の燃焼炉10内の温度及び第2の燃焼炉40内の温度を基に第1のバーナ20の燃焼量(後述する)を制御するための制御部(図示略)が設けられている。
【0037】
第1のバーナ20には、第1の排ガスの供給路(図示略)が設けられている。そして、第1の燃焼炉10内の第1の内部空間S1に開口した、第1のバーナ20の先端部には、第1の排ガスの供給口(図示略)が設けられている。これにより、第1のバーナ20は、第1の内部空間S1に還元雰囲気の火炎を形成するとともに、第1の排ガスを第1の内部空間S1内に供給することができる。
【0038】
絞り部30は、内周壁14の開口部13側に設けられている。絞り部30により、開口部13の開口面積を規制することができる。開口面積を規制することにより、後述する第2の内部空間S2内のガス(酸素を含む)が第1の内部空間S1へ侵入することを防ぐことができる。その結果、第1の内部空間S1内を還元化雰囲気に維持することができる。
【0039】
第2の燃焼炉40は、第1の燃焼炉10の二次側に設けられている。第2の燃焼炉40は、第2の排ガスを燃焼することにより、第2の排ガスに含まれるシアン化水素、アンモニア等の有害ガスを燃焼分解するための、筒状(例えば、円筒状)の炉である。この第2の燃焼炉40は、閉塞部42と内周壁44とを有しており、その内部に、一端が閉塞し、他端が開口した第2の内部空間S2を有している。第2の燃焼炉40の材質としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アルミナ質耐火物、アルミナ−シリカ室耐火物等を用いることができる。
【0040】
本実施形態の排ガス処理装置1は、第1の燃焼炉10の開口部13と、第2の燃焼炉40の開口部43とが互いに対向した状態で接合されており、第1の内部空間S1と第2の内部空間S2とが連通されている。これにより、第1の排ガスを燃焼させた後の第3の排ガスを、第1の内部空間S1から第2の内部空間S2へ供給することができる。(以下、第1の燃焼炉10で燃焼された後の第1の排ガスを、「第3の排ガス」と定義する。)
【0041】
第2の燃焼炉40では、上記第3の排ガスの顕熱及び潜熱を用いて、第2の排ガスを燃焼することができる。第2の排ガスを燃焼することにより、第2の排ガスに含まれるシアン化水素等の有害ガスを燃焼分解することができる。
【0042】
第2の燃焼炉40には、吹込口(第2の吹込口)50と、排気口60と、が設けられている。
【0043】
吹込口(第2の吹込口)50は、第2の燃焼炉40の内周壁44の開口部43側に設けられている。吹込口50から、第2の排ガスを、第2の内部空間S2に供給することができる。吹込口50は、内周壁44の接線方向に第2の排ガスを吹き込むことができるように設けられている。これにより、第2の内部空間S2内に、第3の排ガスと第2の排ガスとによる旋回流を形成することができるため、第2の排ガス中に含まれる有害ガスを効率よく燃焼分解することができる。
【0044】
排気口60は、第2の燃焼炉40の閉塞部42を貫通するように設けられている。排気口60から、第2の内部空間S2内で燃焼したガスを、外部に排出することができる。
【0045】
(排ガス処理方法)
次に、上述した排ガス処理装置1を用いた本実施形態の排ガス処理方法を説明する。
本実施形態の排ガス処理方法は、第1の排ガスを第1の燃焼工程により処理し、第2の排ガスを第2の燃焼工程により処理する排ガス処理方法である。
【0046】
第1の燃焼工程は、第1の排ガスを酸素比が0.8以下の低酸素比で燃焼する工程である。具体的には、第1の燃焼工程では、先ず、炭素化工程及び黒鉛化工程により排出されるガス(第1の排ガス)を、第1のバーナ20から第1の内部空間S1へ供給する。次に、供給された第1の排ガスを、第1のバーナ20により1000〜1600℃の温度範囲で燃焼する。第1の燃焼炉10内の温度は第1の温度計(図示略)により測定されており、また、第2の燃焼炉40内の温度は第2の温度計(図示略)により測定されている。測定した温度に基づいて、制御部(図示略)により第1のバーナ20の燃焼量を制御することで、燃焼温度を制御する。また、第1のバーナ20には、燃料ガス及び支燃性ガスが供給されており、燃料ガス及び支燃性ガスの供給量を制御することで、燃焼量を制御する。
【0047】
なお、「燃焼量」とは、燃料を燃焼することにより生じた、単位時間あたりの熱量のことである。燃焼量が多いほど、単位時間当たりに発生する熱量が多くなるため、第1の内部空間S1の温度が高くなる。
【0048】
ところで、第1の燃焼炉10で処理する第1の排ガスは、シアン化水素、アンモニア等を高濃度で含有する窒素ベースの排ガスであるため、量論比付近より酸素比が高い条件(酸素比0.8より高い)で燃焼処理すると大量のNO
xが生成する。そのため、第1の燃焼炉10では、酸素比0.8以下の燃焼条件で、還元雰囲気を形成しながら処理を行う。これによりNO
xの生成を抑制しながら、燃焼分解することが可能となる。そのため、本実施形態の排ガス処理方法では、燃料ガスに対して支燃性ガスに含まれる酸素の割合を制御することで、酸素比を制御している。
【0049】
なお、「酸素比」とは、バーナに供給される酸素量を、バーナに供給される燃料を燃焼させるのに必要とされる理論必要酸素量で除した値をいう。したがって、理論的には、酸素比1.0の状態が、酸素を過不足なく用いて完全燃焼することが可能な状態といえる。
【0050】
第1の排ガスを燃焼することで、第1の排ガスに含まれるシアン化水素、アンモニア等の有害ガスを燃焼分解する。燃焼により生じた第3の排ガスを、開口部13を介して第2の燃焼炉40に供給する。
【0051】
第2の燃焼工程は、第2の燃焼炉40において、上記第1の燃焼工程により排出された排ガスの顕熱と潜熱とを利用して、第2の排ガスを燃焼する工程である。
ところで、第2の排ガスは、シアン化水素、アンモニアを含有する空気ベースの排ガスであり、第1の排ガスに比較して排出量が非常に多い。そのため、第1の排ガスと同じように酸素比を0.8以下に下げて燃焼分解しようとした場合、大量の燃料を使用する必要があり、現実的でない。また、シアン化水素、アンモニアは、酸素が存在する雰囲気においても、低い温度で燃焼処理することにより、NO
xの生成を抑えながら分解することができる。
そこで、本実施形態の排ガス処理方法では、第2の排ガスを700〜1200℃の温度範囲で燃焼することにより、NO
xの生成を抑えながら、シアン化水素、アンモニアを分解する。
【0052】
具体的には、先ず、第1の燃焼炉10から供給された第3の排ガスを、第2の燃焼炉40に設けられた吹込口50から供給される第2の排ガスと混合する。第2の内部空間S2内で、第2の排ガスと第3の排ガスとを混合することにより、第3の排ガスに含まれるCOやH
2等のガスと、第2の排ガスに含まれる酸素とが燃焼し、燃焼により生じた熱により、第2の燃焼炉40内の温度を700℃以上に上げることができる。第2の燃焼炉40内の温度が700℃以上になることにより、第2の排ガスに含まれるシアン化水素等の有害ガスを燃焼分解する。このように、第2の燃焼工程では、第1の燃焼工程により排出した第3の排ガスの顕熱および潜熱(排ガスの燃焼熱量)を有効に利用するものである。
【0053】
なお、第2の燃焼炉40内の温度は第2の温度計(図示略)により測定されている。測定した温度に基づいて、制御部(図示略)により第1のバーナ20の酸素比を制御することで、第2の燃焼炉40に流入する未燃ガス量を制御する。これにより、第2の燃焼炉40内の温度を制御することができる。
【0054】
次に、第2の内部空間S2内での燃焼により生じた排ガスを、排気口60から外部に排出することで、本実施形態の排ガス処理方法が完了する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の排ガス処理装置1によれば、第1の排ガスを処理する第1の燃焼炉10と、第1の燃焼炉に設けられた第1のバーナ20と、第2の排ガスを処理する第2の燃焼炉40と、を備え、第1の燃焼炉10の二次側に第2の燃焼炉40が設けられているとともに、第1の燃焼炉10の第1の内部空間S1と、第2の燃焼炉40の第2の内部空間S2とが、連通されている構成となっており、第1の燃焼炉10で燃焼した後の第3の排ガスを、第2の燃焼炉40に供給することができる。これにより、第2の燃焼炉40では、第3の排ガスの顕熱及び潜熱を利用して、第2の排ガスを処理することができる。その結果、第1及び第2の排ガスを処理するために要する燃料の使用量を低減することができる。さらに、第1の排ガス及び第2の排ガスを一つの装置により処理することができるため、設備コスト及び保守コストの低減をすることができる。
【0056】
また、本実施形態の排ガス処理装置1によれば、第1の内部空間S1と第2の内部空間S2との間の開口面積を規制するための絞り部30を備える構成となっているため、第2の内部空間S2内のガス(酸素を含む)が第1の内部空間S1へ侵入するのを防ぐことができ、第1の内部空間S1内を還元化雰囲気に維持することができる。
【0057】
次に、本実施形態の排ガス処理方法によれば、第1の排ガスを、酸素比が0.8以下の低酸素比で燃焼する構成となっているため、NO
xの生成を抑制しながら、第1の排ガスを処理することができる。
【0058】
また、本実施形態の排ガス処理方法によれば、第1の排ガスを処理する第1の燃焼工程と、第2の排ガスを処理する第2の燃焼工程と、を含み、第2の燃焼工程において、第1の燃焼工程により排出された排ガスの顕熱と潜熱とを利用して、第2の排ガスを燃焼する構成となっているため、バーナの燃料の使用量を低減することができる。さらに、炭素化炉及び黒鉛化炉から排出される排ガスと、耐炎化炉から排出される排ガスと、を連続する工程により処理することができるため、設備コストや保守コストを低減することができる。
【0059】
<第2の実施形態>
次に、本発明を適用した第2の実施形態である排ガス処理装置について説明する。
図2は、本発明を適用した第2の実施形態である排ガス処理装置の断面図である。
図2に示すように、本実施形態の排ガス処理装置101は、第1の燃焼炉10と、第1のバーナ20と、絞り部30と、第2の燃焼炉40と、吹込口(第2の吹込口)50と、排気口60と、吹込口(第1の吹込口)151と、を備えて概略構成されている。すなわち、本実施形態の排ガス処理装置101は、吹込口151を備える点において、上述した排ガス処理装置1と異なる構成となっている。そのため、排ガス処理装置1と同一の構成については同一の符号を付すとともに、説明を省略する。
【0060】
吹込口(第1の吹込口)151は、第1の燃焼炉10の内周壁14の閉塞部12側に設けられている。吹込口151により、第1の排ガスを、第1の内部空間S1に供給することができる。吹込口151は、内周壁14の接線方向に第1の排ガスを吹き込むことができるように設けることができる。これにより、第1の内部空間S1内に、第1の排ガスによる旋回流を形成することができるため、第1の排ガス中に含まれる有害ガスを効率よく燃焼分解することができる。
【0061】
本実施形態の排ガス処理装置101によれば、吹込口151を備える構成となっており、第1の排ガスを第1の燃焼炉10の内周壁14から供給することができる。これにより、酸素の存在する火炎付近に直接第1の排ガスが入らないため、NO
xの生成をさらに抑制することができる。
【0062】
<第3の実施形態>
次に、
図3は、本発明を適用した第3の実施形態である排ガス処理装置の構成を示す図である。
図3に示すように、本実施形態の排ガス処理装置201は、第1の燃焼炉210と、第1のバーナ20と、第2の燃焼炉240と、吹込口(第2の吹込口)250と、排気口60と、第2のバーナ221と、連結管231と、を備えて概略構成されている。本実施形態の排ガス処理装置201は、第2のバーナ221を備えており、さらに第1の燃焼炉210と第2の燃焼炉240との間に連結管231を設けており、かつ第1の燃焼炉210と第2の燃焼炉240とが別々の炉体で構成されている点において、上述した排ガス処理装置1と異なる構成となっている。そのため、排ガス処理装置1と同一の構成については同一の符号を付すとともに、説明を省略する。
【0063】
第1の燃焼炉210は、第1の排ガスを燃焼することにより、第1の排ガスに含まれるシアン化水素、アンモニア等の有害ガスを燃焼分解するための炉である。第1の燃焼炉210の形状は、両端が閉塞した筒状(例えば、円筒状)である。第1の燃焼炉210は、内部に第1の内部空間S1を有する。また、第1の燃焼炉210の内周壁の下底側に開口部213を有する。第1の燃焼炉210の材質としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アルミナ質耐火物、アルミナ−シリカ質耐火物等を用いることができる。
【0064】
第1の温度計215は、内周壁214に設けられている。第1の温度計215により、第1の燃焼炉210内の温度を測定することができる。第1の燃焼炉210内の温度を基に、制御部(図示略)により、第1のバーナ20の燃焼量を制御することができる。
【0065】
連結管231は、第1の燃焼炉210内の第1の内部空間S1と、後述する第2の燃焼炉240内の第2の内部空間S2と、を連通させるために設けられた配管である。具体的には、連結管231は、第1の燃焼炉210の開口部213と、後述する第2の燃焼炉240の開口部243と、を接続するように設けられている。連結管231の材質としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アルミナ質耐火物、アルミナ−シリカ質耐火物等を用いることができる。
【0066】
連結管231の内径と、開口部213及び開口部243の開口面積と、を規制することにより、第2の内部空間S2内のガス(酸素を含む)が第1の内部空間S1へ侵入することを防ぐことができる。その結果、第1の内部空間S1内を還元化雰囲気に維持することができる。
【0067】
第2の燃焼炉240は、第2の排ガスを燃焼することにより、第2の排ガスに含まれるシアン化水素、アンモニア等の有害ガスを燃焼分解するための炉である。第2の燃焼炉240は、連結管231を介して、第1の燃焼炉210の二次側に設けられている。第2の燃焼炉240の形状は、両端が閉塞した筒状(例えば、円筒状)である。第2の燃焼炉240は、内部に第2の内部空間S2を有する。また、第2の燃焼炉240の内周壁の下底側に開口部243を有する。第2の燃焼炉240の材質としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アルミナ質耐火物、アルミナ−シリカ質耐火物等を用いることができる。
【0068】
第2のバーナ221は、第2の燃焼炉240の内周壁244の吹込口250側に設けられている。第2のバーナ221により、第2の排ガスと第3の排ガスとの燃焼を安定して行うことができる。第2のバーナ221には、燃料と支燃性ガスとが供給されており、燃料及び支燃性ガスの流量を調整することにより、燃焼量及び後述の酸素比を制御することができる。燃料及び支燃性ガスとしては、第1のバーナ20と同様のものを用いることができる。第2のバーナ221は常時燃焼させなくてもよく、第2の燃焼炉240内の温度が所定の温度以下になった場合に点火するようにしてもよい。
【0069】
吹込口(第2の吹込口)250は、第2の燃焼炉240の開口部243の対面に設けられている。吹込口250から、第2の排ガスを、第2の内部空間S2に供給することができる。吹込口250は、内周壁244の接線方向に第2の排ガスを吹き込むことができるように設けることができる。これにより、第2の内部空間S2内に、第2の排ガスによる旋回流を形成することができるため、第3の排ガスとの混合が促進され、第2の排ガス中に含まれる有害ガスを効率よく燃焼分解することができる。
【0070】
第2の温度計245は、内周壁244に設けられている。第2の温度計245により、第2の燃焼炉240内の温度を測定することができる。第2の燃焼炉240内の温度を基に、制御部(図示略)により、第2のバーナ221の燃焼量や酸素比を制御することができる。
【0071】
本実施形態の排ガス処理装置201によれば、第2のバーナ221を備えているため、第2の排ガスと第3の排ガスとの燃焼を安定に行うことができる。
【0072】
また、本実施形態の排ガス処理装置201によれば、第1の燃焼炉210と第2の燃焼炉240との間に連結管231を設けており、かつ第1の燃焼炉210と第2の燃焼炉240とが別々の炉体で構成されているため、炉の長さを調整することができ、縦置きで設置する場合、高さを低くできるとともに、設置の自由度を広くすることができる。
【0073】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態の排ガス処理装置1、101、201では、第2の燃焼炉40で燃焼した排ガスを、排気口60を介して外部に排出する例を説明したが、排気口60に熱交換器を接続し、排気口60から排出される排ガスの顕熱を利用して第2のガスを予熱してもよい。これにより、燃料の使用量を低減することができる。
【0074】
また、上述した実施形態の排ガス処理装置1、101、201では、2つの燃焼炉を接合した例を説明したが、一つの燃焼炉内の空間を2つの内部空間に分割する態様であってもよい。その際、燃焼炉の内側に絞り部30を有する場合は、絞り部30の一次側の空間を第1の燃焼炉とし、二次側の空間を第2の燃焼炉とする。また、燃焼炉の内側に絞り部30を有さない場合は、吹込口(第2の吹込口)50の一次側の空間を第1の燃焼炉とし、二次側の空間を第2の燃焼炉とする。
【0075】
また、上述した実施形態の排ガス処理装置1、101では、絞り部30が第1の燃焼炉10の開口部13側に設けられている例を説明したが、絞り部30が第2の燃焼炉40の内周壁44の開口部43側に設けられていてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態の排ガス処理装置1、101では、第2の燃焼炉40にバーナが設けられていない例を説明したが、第2の燃焼炉40の内周壁44を貫通するように、第2のバーナを設けてもよい。第2のバーナにより、第2の排ガスと第3の排ガスとの燃焼を安定に行うことができる。
【0077】
<実施例1>
(直燃方式との比較)
図1に示す本実施形態の排ガス処理装置1、及び従来技術である直燃方式の排ガス処理装置を用いて、炭素化炉および黒鉛化炉から排出される第1の排ガス、及び耐炎化炉から排出される第2の排ガスの模擬ガスを用いて処理試験を行った。
【0078】
表1に第1の排ガスと第2の排ガスの模擬ガスの組成と流量を示す。模擬ガスにはHCNの代替としてNOを用いた(NOを模擬ガスとして使用することの妥当性については後述する)。本処理試験では、模擬ガスについて3つの条件により行った(条件1−1、1−2、1−3)。
表2に本実施形態の排ガス処理装置1と直燃方式の排ガス処理装置のバーナの燃焼条件を示す。
なお、本実施例では、第1のバーナ20では、支燃性ガスとして酸素濃度100%の純酸素を用い、酸素比0.7で燃焼させた。燃焼炉の温度は、第1の燃焼炉10が1600℃、第2の燃焼炉40が1000℃であった。
また、直燃方式の処理装置では、1000℃で処理を行った。
【0081】
表3に試験結果を示す。本結果から、本実施形態の排ガス処理装置1では、NOとNH
3を最も高濃度で添加した条件1−1においても、アンモニア(NH
3)を極低濃度まで分解することができ、NO
xの生成を90ppm程度に抑えることができることを確認した。一方、直燃方式の排ガス処理装置では、NOとNH
3を分解しようとすると、NO
x濃度が高くなることを確認した。
また、本実施形態の排ガス処理装置1では、直燃方式に比べて少ない燃料で、第1の排ガス及び第2の排ガスを処理することができることを確認した。
【0083】
<実施例2>
(酸素比の影響)
実施例1と同じ排ガス処理装置1を用いて、表4に示すように第1のバーナ20の酸素比を変えて、表3の条件1−2に示す第1の排ガス及び第2の排ガスの模擬ガスを処理した後の排ガスに含まれる、NH
3、NO
xの濃度を確認した。
【0085】
図4に、排ガス処理装置1の排気口60から排出された、処理後の排ガス中のNH
3、NO
xの濃度と酸素比との関係を示す。
本結果から、NH
3は、全ての条件で0.1ppm以下であり、ほぼ全て分解することができることを確認した。
また、第1のバーナ20の酸素比を0.8より大きくすると、NO
xが急激に増加する傾向にあり、酸素比を0.8以下にすることにより、NO
xの生成を抑制しながら、第1の排ガスを処理することができることを確認した。
【0086】
<実施例3>
(パイロット設備での試験)
図3に示す本実施形態の排ガス処理装置201を用いて、パイロット設備で排ガス処理を行った。
表5に第1の排ガスと第2の排ガスの模擬ガスの組成と流量を示す。第2の排ガスの流量は、300、600、900Nm
3/hの3条件で実施した(条件3−1、3−2、3−3)。また、表6に上記各排ガス条件におけるバーナ燃焼条件を示す。
【0089】
表7に、排ガス処理装置201の排気口60から排出された、処理後の排ガス中のNH
3、NO
xの濃度を示す。本結果から、本実施形態の排ガス処理装置201では、NH
3を極低濃度まで分解することができ、さらに、燃焼に伴うNO
xの生成を抑制することができることを確認した。
【0091】
<実施例4>
(模擬ガスの妥当性検証について)
HCNの代替の模擬ガスとしてNOを用いた。模擬ガスにNOを用いることの妥当性をシミュレーションによる反応解析により検討した。
反応解析は、CHEMKIN−PRO(Reaction Design社製、詳細化学反応解析支援ソフトウェア)を用いて行った。解析条件を表8に示す。条件4−1は、還元燃焼雰囲気下の第1の燃焼炉10にHCNを添加した場合を示し、条件4−2は、NOを添加した場合を示す。
【0093】
図5に、条件4−1の反応解析によるHCNの分解挙動と、NOの生成・分解挙動を示す。また、
図6に、条件4−2の反応解析によるNOを添加した場合のNO分解挙動を示す。
図5から、還元燃焼雰囲気下においてHCNは急激に分解され、それに伴いNO
Xが急激に生成された後、徐々に分解されることを示していることがわかる。
図5と
図6のNOの濃度変化を比較すると、分解挙動は同様の傾向を示しており、NOを模擬ガスとして用いることにより、HCNの分解に伴って生成されるNOの分解挙動を評価できる。