【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示によれば、有機エアロゲルを含むマウスピースを有する喫煙物品が提供される。有機エアロゲルは、開細孔構造を形成する。エアロゲル内には機能材料を分散させることができ、この特定の機能材料及びその量は、機能材料によって得られる所望の結果に基づいて選択することができる。このエアロゲルを利用して、マウスピースの構造的特性を提供することができる。エアロゲルは、マウスピースの全部又は一部を形成する単体要素又は連続要素として形成することができる。他の例では、エアロゲルを、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素内に分散する複数の粒子としてマウスピース又はマウスピースフィルタ要素に組み込むことができる。
【0011】
本開示による喫煙物品は、喫煙物品の形状、強度及び堅度などの所望の物理的特性を維持しながらマウスピース内の空気流特性を設計する効果的な方法も提供する。有機エアロゲルは、(マウスピースフィルタ要素などの)マウスピースが広い表面積を有して、エアロゲル内に分散する機能材料の効率を高めることを可能にする。エアロゲルは、いずれの形状に形成することもでき、マウスピースに構造的特性を提供することができる。
【0012】
本開示による喫煙物品は、開細孔構造を形成する有機エアロゲルを含むマウスピースを含む。エアロゲルは、マウスピースフィルタ要素の物理的構造を形成することができ、又はマウスピースフィルタ要素内に分散した複数のエアロゲル粒子の形をとることができる。多くの実施形態では、エアロゲルが、マウスピースフィルタ要素の物理的構造を形成する。エアロゲルは、(マウスピースフィルタ要素などの)マウスピースで見られる通常の堅度をもたらす構造的特性を提供することができる。
【0013】
「開細孔構造」という用語は、相互接続された空隙又は細孔を定める網状組織又はマトリックスを含む構造を意味する。開細孔構造では、エアロゲルの相互接続された空隙又は細孔を通じてエアロゾル、気体又は蒸気が通過することができる。多くの実施形態では、空隙又は細孔の平均サイズが、500マイクロメートル未満、又は250マイクロメートル未満、又は100マイクロメートル未満である。空隙又は細孔のサイズは、開細孔構造の単体要素の粒子又は一部を切り開き、各空隙又は細孔の最大断面寸法を測定することによって求めることができる。空隙又は細孔の平均サイズは、これらの測定値の算術平均である。この開細孔構造により、エアロゲル構造内を空気又はタバコの煙が流れるようになる。開細孔構造の細孔のサイズは、従来の喫煙物品の吸引抵抗と同様の吸引抵抗を示すように選択することができる。多くの実施形態では、エアロゲル又は開細孔構造を含むマウスピース又はマウスピースフィルタの吸引抵抗が、約50mm〜120mm H
2O、又は約60〜100mm H
2Oである。従って、本明細書で説明する従来の喫煙物品の喫煙体験は、従来の喫煙物品に匹敵することができる。
【0014】
「有機エアロゲル」という用語は、好ましくは少なくとも約75重量%の、より好ましくは少なくとも90重量%の有機化合物を含み、さらに好ましくは基本的に有機化合物から成り、最も好ましくは有機化合物から成るエアロゲルを意味する。有機化合物は、例えば(一般に「ブルーブック(Blue Book)」と呼ばれる)有機化学のIUPAC命名法に該当する、一般に有機的と言われるいずれかの化合物を含む。一例として、ポリマー類、糖類、タンパク質類及びセルロース系材料などが挙げられる。
【0015】
このことは、一般に有機化合物とは見なされない活性炭材料などの他の材料とは対照的である。例えば、活性炭構造を形成するために、(いくつかの有機化合物を含む)いくつかの材料を炭化、熱分解又は別様に加熱することができるが、これらは、材料が活性化された後にはもはや有機化合物とは見なされない。場合によっては、有機エアロゲルが炭化、熱分解、又は150℃を上回って別様に加熱されない。
【0016】
また、開細孔構造を維持するために、エアロゲルの材料は交差結合されていないことが好ましい。
【0017】
マウスピース又はマウスピースフィルタ要素に有用なエアロゲルは、約0.35g/cm
3未満、又は約0.1g/cm
3未満、又は約0.05g/cm
3未満の密度を有することができる。これらのエアロゲルは、水銀圧入ポリシメトリによって測定した時に、約500m
2/gを上回る、又は約750m
2/gを上回る、又は約1000m
2/gを上回る表面積を有することができる。これらのエアロゲルは、少なくとも約50%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約90%の空隙空間(又は気体容積)を有することができる。
【0018】
フィルタ要素に有用なエアロゲルは、溶液中でゲルを生成した後に液体を除去してエアロゲル構造を無傷な状態で残すことにより形成することができる。ゲルは、例えばゲル化剤及び液体を組み合わせることによって形成される。多くの実施形態では、超臨界抽出又は超臨界乾燥を通じてゲルから液体を除去する。
【0019】
超臨界抽出又は乾燥は、ゲルの温度及び圧力を上昇させ、(液相と気相が区別不可能になった)超臨界流体内に液体を強制的に導入することによって行われる。圧力を落とすことにより液体を気化させて除去し、エアロゲルを形成する。
【0020】
いくつかの実施形態では、圧力容器内にゲルを入れ、この圧力容器を液体二酸化炭素で満たす。液体二酸化炭素は、本質的に、ゲルの細孔内の(水又は溶媒などの)液体に取って代わることができる溶媒である。数日間にわたり、ゲルを液体二酸化炭素に浸す。ゲルの細孔内の液体は、二酸化炭素に取って代わられる。次に、この二酸化炭素を、その臨界温度(摂氏31度)及び臨界圧力(73atm)を越えて加熱する。その後、容器を等温的に減圧するとエアロゲルが生じる。
【0021】
「ゲル化剤」という用語は、(適当な比率及び処理条件で)液体溶媒と混合された時に、この液体を流動性のある液体から成形可能な固体、半固体又はゲルに変換する材料を意味する。ゲルは、液体媒質の容積に広がり、表面張力効果を通じてこれらを絡ませる固体三次元網状組織を含む。
【0022】
有機エアロゲルは、天然又は合成ポリマー類、セルロース系材料、糖類及びタンパク質類などを含む。多くの実施形態では、有機ゲル化剤が、セルロースアセテート、ポリスチレン及びポリ乳酸などの合成又は天然ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、有機ゲル化剤が紙又はセルロース系材料である。いくつかの実施形態では、有機ゲル化剤が、多糖類又はタンパク質、或いは1種類又はそれ以上の多糖類と1種類又はそれ以上のタンパク質との組み合わせである。多糖類は、例えば、でんぷん、植物ガム、寒天、カラギナン又はペクチンを含むことができる。ゲル化剤は、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウムなどのアルギン酸又はアルギン酸塩を含むこともできる。ゲル化剤は、例えばゼラチンを含むことができる。好ましい有機ゲル化剤としては、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アラビアゴム、及びゼラチンなどのコラーゲンが挙げられる。
【0023】
液体をゲル化剤と組み合わせて、ゲル及び結果として得られるエアロゲルを形成することができる。液体は、溶媒又は水、或いは溶媒と水を含むことができる。有用な溶媒として、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、2−プロパノール、二酸化炭素、ヘキサン及びトルエンが挙げられる。
【0024】
エアロゲルは、あらゆる有用な又は所望の形状に形成することができる。ゲルをいずれかの有用な形状に成形した後に液体を除去すると、同様の形状のエアロゲル要素が得られる。多くの実施形態では、エアロゲル要素が、喫煙物品のマウスピース又はマウスピースフィルタ要素の少なくとも一部を形成する単体要素又は連続要素である。このように、エアロゲルは、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素に構造的特徴を与え、マウスピースが従来のマウスピース又はマウスピースフィルタ要素に比べて通常の堅度を有することを可能にする。多くの実施形態では、エアロゲル要素が、シガレットのマウスピースフィルタ要素を形成する単体要素である。
【0025】
連続エアロゲル要素の長さにわたり、複数の開放チャネルが延びることができる。これらの開放チャネルは、いずれかの有用な方法で形成することができる。多くの実施形態では、これらの開放チャネルが成形過程中に形成される。側面及び底面によって定められる成形要素のキャビティ内にゲルを配置することができる。いくつかの実施形態では、底面に複数の細長いチャネル形成部材が固定され、これらのチャネル形成部材がエアロゲルの長さにわたって延びる。他の実施形態では、複数の細長いチャネル形成部材が、成形要素に対して移動可能な支持要素に固定される。エアロゲルを形成して成形要素のキャビティから除去すると、細長いチャネル形成部材が、エアロゲル内の空隙空間又はチャネルを定める。
【0026】
細長いチャネル形成部材は、約25マイクロメートル又はそれ以下、或いは約15マイクロメートル又はそれ以下の有用な直径を有することができる。成形要素のキャビティ内には、少なくとも約10個又は少なくとも約20個などの、いずれかの有用な数のチャネル形成部材を配置することができる。チャネル形成部材は、エアロゲルの全長に沿って、或いはエアロゲルの長さの少なくとも約90%、又は少なくとも約75%に沿って延びることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、エアロゲルが、いずれかの有用なサイズを有する複数の粒子として形成される。これらの実施形態では、エアロゲル粒子が、少なくとも約50マイクロメートル、又は少なくとも約100マイクロメートル、又は少なくとも約250マイクロメートルの平均サイズを有する。エアロゲル粒子は、約5000マイクロメートル未満の、又は約1000マイクロメートル未満の、又は約500マイクロメートル未満の平均サイズを有する。本発明では、「粒子サイズ」を、粒子状材料内の個々の粒子の最大断面寸法と考える。「平均」粒子サイズは、各粒子の算術平均粒子サイズを意味する。粒子状材料のサンプルの粒子サイズ分布は、既知のふるい試験を用いて求めることができる。
【0028】
必要に応じ、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素内に複数のエアロゲル粒子を分散させることもできる。多くの実施形態では、エアロゲルが、マウスピースフィルタ要素のセルロースアセテートトウ内に分散する。エアロゲル粒子は、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素(例えば、セルロースアセテートトウ)内に所望の重量%で分散することができる。いつくかの実施形態では、エアロゲル粒子が、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素(例えば、セルロースアセテートトウ)内に、少なくとも約1重量%、又は少なくとも約5重量%、又は少なくとも10重量%の量で分散する。いくつかの実施形態では、エアロゲル粒子が、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素内に約90重量%未満の量で分散する。
【0029】
有機エアロゲルは、機能材料を含むことができる。この機能材料をゲル化剤及び液体と組み合わせて、ゲル及び結果として得られるエアロゲルを形成することができる。この機能材料は、エアロゲルの開細孔構造内に分散させることができる。エアロゲルは、機能材料の効率を高めるための広い表面積を提供する。従って、エアロゲルの開放気孔構造と共に利用する機能材料の量を、従来の喫煙物品と比べて少なくすることができる。機能材料をエアロゲル構造内に組み込み、基本的にエアロゲルマトリックス又は構造内に機能材料を「ロック」することができる。機能材料は、エアロゲル内を流れる気体又は煙内に放出される材料を含むことができる。機能材料は、煙成分を捕捉又は変換する材料を含むことができる。機能材料は、エアロゲル内で物理的に結合することができる。好ましい実施形態では、機能材料が、エアロゲルに化学的又は共有結合的に結合されない。
【0030】
煙成分を捕捉する材料としては、例えば、活性炭、被覆炭素、活性アルミニウム、ゼオライト、海泡席、分子篩及びシリカゲルなどの吸着剤が挙げられる。煙成分を捕捉する材料としては、例えば、単一アミノ酸、アミノ機能材料及び高分子電解質などのイオン交換材料も挙げられる。多くの実施形態では、エアロゲル内に活性炭が分散する。いくつかの実施形態では、煙成分を捕捉又は変換する材料の粒子サイズを、標準的なメッシュ試験を用いて測定することができる。例えば、少なくとも約90重量%の材料は、ASTM20〜ASTM70の粒子サイズを有することができる。
【0031】
他の実施形態では、エアロゲル構造内で機能材料が「ロック」又は物理的に結合しているので、サイズの小さな機能材料を利用することができる。例えば、約10重量%以上の粒子をASTM70よりも小さくすることができ、又は約25重量%以上の粒子をASTM70よりも小さくすることができる。エアロゲル構造内には活性炭などの材料を存在させ、約40〜180mg/喫煙物品又は約60〜100mg/喫煙物品の量で喫煙部品マウスピースに組み込むことができる。
【0032】
煙成分を変換する材料としては、例えば、マンガン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、モリブデン、バナジウム材料、チタニア、セリア及び金又はチタニア上の金などの触媒、並びにカーボンナノチューブなどのナノ構造が挙げられる。
【0033】
喫煙物品のエアロゲル又はマウスピース内を通る気体又は煙内に放出される機能材料は、香味材料を含む。香味材料はタバコを含む。香味材料は、液体香味料又は吸着剤、或いは液体香味料又はハーブ材料を含浸させたセルロース系材料の粒子を含む。香味料は、以下に限定されるわけではないが、天然又は合成メントール、ペパーミント、スペアミント、コーヒー、茶、(シナモン、クローブ及びショウガなどの)スパイス、ココア、バニラ、果物香味、チョコレート、ユーカリ、ゼラニウム、オイゲノール、リュウゼツラン、ネズミサシ、アネトール及びリナロールを含む。また、香味料は、精油、又は1種類又はそれ以上の精油の混合物も含む。「精油」とは、取得元の植物の特異臭及び香味を有する油のことである。好適な精油としては、限定ではないが、ペパーミント油及びスペアミント油が挙げられる。多くの実施形態では、香味料が、メントール、オイゲノール、又はメントールとオイゲノールの組み合わせを含む。
【0034】
「ハーブ材料」という用語は、ハーブ性植物由来の材料を示すために使用するものである。「ハーブ性植物」は、葉又はその他の部分が医療、料理又は芳香目的で使用される芳香植物であり、喫煙物品により生成される煙中に香味を放出することができる。例えば、ハーブ材料は、以下に限定されるわけではないが、ペパーミント及びスペアミントなどのミント、レモンバーム、バジル、シナモン、レモンバジル、チャイブ、コリアンダー、ラベンダー、セージ、茶、タイム及びカーヴィ(carvi)を含むハーブ性植物からのハーブ葉又はその他のハーブ材料を含むことができる。「ミント」という用語は、ハッカ属の植物を示すために使用するものである。好適な種類のミント葉は、以下に限定されるわけではないが、セイヨウハッカ、ショウガ、エジプトミント、ベルガモットミント、スペアミント、カーリーミント、ケンタッキーカーネルミント、ホースミント、メグサハッカ、アップルミント及びパイナップルミントを含む植物種から採取することができる。
【0035】
エアロゲルの断熱特性は、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素に触媒などの発熱性の材料を組み込んで、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素の温度をユーザにとって快適なレベルに維持できるようにする。
【0036】
「煙」及び「タバコの煙」という用語は、タバコ材料が燃焼、熱分解、加熱又は化学反応した時に生じるエアロゾル又は蒸気を意味するために使用するものである。
【0037】
「マウスピース」という用語は、喫煙者の口の中に収まり又は口に隣接して唇に接するように構成された喫煙物品の部分を意味する。例えば、マウスピースは、喫煙物品の30mmの唇側端部又は喫煙物品の20mmの唇側端部などの、従来の喫煙物品のフィルタ部分を意味することができる。
【0038】
多くの実施形態では、喫煙物品の全長が、約70mm〜約128mm、又は約84mmである。喫煙物品の外径は、約5mm〜約8.5mm、又はスリムサイズの喫煙物品では約5mm〜約7.1mm、又はレギュラーサイズの喫煙物品では約7.1mm〜約8.5mmとすることができる。
【0039】
本開示の喫煙物品の吸引抵抗(RTD)は、マウスピース又はマウスピースフィルタ要素内におけるタバコエアロゲルの組み込み及び構造に基づいて変化することができる。多くの実施形態では、喫煙物品のRTDが、約50〜約140mm H
2O、又は約60〜約120mm H
2Oである。喫煙物品のRTDは、出力端における体積流量が毎秒17.5ミリリットルの定常条件下で試料内を空気流が横切った時の試料の両端間における静圧差を意味する。試料のRTDは、ISO標準6565:2002に示される方法を用いて測定することができる。
【0040】
本発明による喫煙物品は、例えば内側ライナーを1種類又はそれ以上の香味料で被覆したソフトパック又はヒンジ蓋パックなどの容器に包装することができる。
【0041】
上記のあらゆるタバコ基材は、シガレットなどの従来の可燃性喫煙物品のマウスピース又はマウスピースフィルタ内で使用することも、或いは、例えば熱、空気流又は化学反応を用いてタバコ成分を送達するように構成された喫煙物品などの不燃性喫煙物品のマウスピース又はマウスピースフィルタ内で使用することもできる。
【0042】
以下の添付図面を参照しながら、本開示をほんの一例としてさらに説明する。