特許第6307812号(P6307812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307812
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】液体用包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/58 20060101AFI20180402BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20180402BHJP
   B31B 70/60 20170101ALI20180402BHJP
   B31B 70/81 20170101ALI20180402BHJP
   B65B 61/00 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   B65D75/58
   B65D33/38
   B31B70/60
   B31B70/81
   B65B61/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-173078(P2013-173078)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-40067(P2015-40067A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒木 教之
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−127560(JP,A)
【文献】 特開2008−055148(JP,A)
【文献】 特開2011−105315(JP,A)
【文献】 特開2012−025394(JP,A)
【文献】 特開平11−245956(JP,A)
【文献】 特開2005−059935(JP,A)
【文献】 特開平06−127562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/58
B31B 70/60
B31B 70/81
B65B 61/00
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表フィルムと裏フィルムを重ね合わせ周縁シール部を設け、該周縁シール部で囲まれた内容物収納部と、該内容物収納部と接続され、該内容物収納部から内容物が通って注出される内容物注出路を設けた液体用包装袋であって、前記内容物流出路の前記表フィルムと裏フィルムがそれぞれ外側に膨らんでいて、前記内容物流出路に連通するように流体を流入させる切れ目または貫通孔からなる流体流入口が設けられていることを特徴とする液体用包装袋の製造方法であって、
前記内容物流出路の前記内容物収納部と接続されている部分近傍の前記表フィルムと裏フィルムを挟み込んで密着させ、前記流体流入口より流体を流入させ、前記内容物流出路の前記表フィルムと裏フィルムを外側に膨らませることを特徴とする液体用包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用包装袋とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、リンス、ボディーソープ、洗濯用液体洗剤や柔軟仕上げ剤などの液体製品は、ポンプディスペンサーや、計量カップなどの付いたプラスチックボトルなどの容器に収納されている。
【0003】
環境などへの配慮から、これら容器に収納された内容物がなくなると、別途、購入した液体製品を詰め替えて、ポンプディスペンサーや、計量カップなどの付いたプラスチックボトルなどの容器を繰り返し使用するようになってきた。
【0004】
この詰め替えるための液体製品などの内容物を収納する詰め替え用の容器としては、包装フィルムからなる軟包装袋に、注出口を形成できるようにした詰め替え用袋が一般的に使用されている。
【0005】
このような詰め替え用袋で、表裏のフィルムシートを平面状に合わせてシールした箇所に注出口が形成されているものでは、注ぎ出そうとするとき注出口が閉じてしまいやすくて、内容物が注ぎ出しにくいという問題があった。
【0006】
このため、注出口が閉じてしまわないように工夫された詰め替え用袋が、開発されてきた。このような詰め替え用袋としては、注出口に至る内容物流出路にチューブを挿入して閉じないようにした詰め替え用袋や、注出口に至る内容物流出路にエンボスを設けて、広がった状態にして、内容物を注ぎ出しやすくした詰め替え用袋がある。
【0007】
たとえば、対向した二枚のフィルム(シート)の辺部を貼り合わせてなる容器上部の一隅に、内容物収容部から外方に突出する嘴状の注出口部(内容物流出路)を備えている液体包装容器において、フィルムにフィルム表面から外方に向けて凸となり注出口部から注出口部基端を通って収容部に及ぶ凸エンボスが設けられた液体包装容器がある(特許文献1)。
【0008】
このようなフィルム表面から外方に向けて凸となるエンボスを設けるには、雄型と雌型の金型の間に挟んで押圧して設けるのが一般的である。しかし、金型で袋の表裏のフィルムに、それぞれ外方に向けて凸となるエンボスを設ける加工を、製袋後に行うことは困難である。
【0009】
また、製袋機に掛ける前の連続した長尺のフィルムにエンボスを設けることは、巻き取った時点でエンボスがつぶれてしまう恐れがあり、また、エンボスのため、きちんと巻き取ることはできない恐れがある。
【0010】
そのため、製袋機上でエンボスを加工することになるが、既存の製袋機にそのようなエンボスの加工部を設けることは困難であり、また、エンボスの加工部を設けることができたとしても、エンボス用の雄型と雌型をそれぞれの袋の形状に合わせて用意しなければならず、簡単には実施することができなかった。
【0011】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4802362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、製袋機に大掛かりな改良することなく製造できて、注出口がふさがることなく、注ぎだしやすい液体用包装袋とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項の発明は、表フィルムと裏フィルムを重ね合わせ周縁シール部を設け、該周縁シール部で囲まれた内容物収納部と、該内容物収納部と接続され、該内容物収納部から内容物が通って注出される内容物注出路を設けた液体用包装袋であって、前記内容物流出路の前記表フィルムと裏フィルムがそれぞれ外側に膨らんでいて、前記内容物流出路に連通するように流体を流入させる切れ目または貫通孔からなる流体流入口が設けられていることを特徴とする液体用包装袋の製造方法であって、
前記内容物流出路の前記内容物収納部と接続されている部分近傍の前記表フィルムと裏フィルムを挟み込んで密着させ、前記流体流入口より流体を流入させ、前記内容物流出路の前記表フィルムと裏フィルムを外側に膨らませることを特徴とする液体用包装袋の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明で製造される液体用包装袋は、製袋機に大掛かりな改良することなく製造できて、内容物を注ぎだすときに、注出口がふさがることなく、安定して流れ出すので、注ぎ出しやすい。また、本発明の製造方法は、製袋機に大掛かりな改良することなく、注ぎ出しやすい液体用包装袋を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明で製造される液体用包装袋の一例を模式的に示した説明図である。(A)正面図である。(B)左側面図である。
図2】(A)、(B)本発明で製造される液体用包装袋に用いる積層フィルムの断面の例を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明で製造される液体用包装袋の一例を模式的に示した説明図である。(A)正面図である。(B)左側面図である。
【0020】
本例の液体用包装袋100は、図1(A)の正面図、(B)の左側面図に示すように、表フィルム1と裏フィルム2を重ね合わせて、周縁シール部3を設けた包装袋である。底部には、二つ折りされた底テープ4が折り部を上にして挟み込まれ、船底型にシールされた底シール部3aが形成されている。
【0021】
周縁シール部3で囲まれた部分に内容物収納部5が形成されていて、その上辺の一隅に
は、内容物注出路6が、内容物収納部5に接続されて設けられている。この内容物注出路6の先端近傍には、内容物注出路6を切断して注出口を形成するための切断予定線7が設けられている。
【0022】
切断予定線7より先は、切断予定線7を切断するときにつまむ、摘み部8が広く形成されている。そして、摘み部8には、未シールの流体受け入れ室10と、切れ目や貫通孔による流体流入口9が設けられ、流体受け入れ室10は、流体流入口9により外気と連通している。
【0023】
また、流体受け入れ室10と内容物流出路6の間には、連絡路11が設けられ連通している。このため、流体流入口9より流体を流入させると、流体受け入れ室10、連絡路11を通り、内容物注出路6に流体が流入するようになっている。
【0024】
内容物注出路6は、表フィルム1と裏フィルム2がそれぞれ外側に膨らんでいて、内容物を注ぎだすとき、注出口が閉鎖されることなく流れだしやすくなっている。また、内容物注出路6の内容物収納部5と接続されている部分近傍には、流体を内容物注出路6に流入させるときに、表フィルム1と裏フィルム2を挟み込んで密着させる、挟み位置12が確保されている。
【0025】
図2(A)、(B)は、本発明で製造される液体用包装袋に用いる積層フィルムの断面の例を模式的に示した説明図である。
【0026】
本例の液体用包装袋100に用いる表フィルム1、裏フィルム2、および、底テープ4は、基材フィルム21とシーラントフィルム22が積層された、図2(A)のような積層フィルムからなっている。また、図2(B)の積層フィルムのように、基材フィルム21とシーラントフィルム22の間に中間フィルム23が設けられていても良い。
【0027】
基材フィルム21には、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂の延伸フィルムが好ましく用いられる。また、これらのフィルムにアルミナ、シリカなどの無機酸化物の蒸着層を設けた蒸着フィルムを用いても良い。
【0028】
基材フィルム21の裏面に絵柄印刷層を設けても良い。絵柄印刷層には、ウレタン系インキなどを用いたグラビア印刷、あるいはフレキソ印刷、インクジェット印刷などの印刷方法によって設けることができる。
【0029】
シーラントフィルム22には、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系フィルムや、ポリプロピレン系フィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。
【0030】
また、中間フィルム23を用いる場合、中間フィルム23としては、ナイロンの延伸あるいは未延伸のフィルムを用いることができる。また、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの延伸フィルムにアルミナ、シリカなどの無機酸化物、あるいはアルミニウムなどの金属の蒸着層を設けた蒸着フィルムを用いることもできる。
【0031】
また、バリア性の高いメタキシレンジアミン/アジピン酸からなるいわゆるMXDナイロンや、エチレン−ビニルアルコール共重合体などフィルムや、あるいは、アルミニウムなどの金属の箔を中間フィルム23に用いても良い。更には、中間フィルム23をこれらのフィルムや箔を組み合わせて多層フィルムにしても良い。
【0032】
これら、基材フィルム21、シーラントフィルム22、中間フィルム23の積層には、
2液硬化型ウレタン系接着剤などを用いてドライラミネーション法により積層することができる。また、熱可塑性樹脂を溶融して押し出し、サンドイッチラミネーション法によって積層しても良い。
【0033】
以下、本例の液体用包装袋100の製造方法について説明する。
【0034】
製袋機上で、表フィルム1、裏フィルム2のいずれか、または、両方の所定の位置に、流体流入口9を抜き加工により設ける。次に、表フィルム1、裏フィルム2、および、二つ折りした底テープ4を重ね合わせ周縁シール部3をシールする。これにより、周縁シール部3で囲まれた、内容物収納部5、内容物注出路6、流体受け入れ室10、連絡路11を設ける。
【0035】
このとき、内容物の充填口(本例では、天部の内容物注出路6の反対寄り)を未シールにして開けておく。この後、抜き加工によって、液体用包装袋100の外形に沿って抜き、個々の液体用包装袋100に分離する。
【0036】
次に、内容物注出路6の内容物収納部5と接続されている部分近傍の挟み位置12を挟み具で挟んで表フィルムと裏フィルムを密着させ、流体を流体流入口9に流入させ、内容物注出路6の表フィルム1と裏フィルム2をそれぞれ外側に膨らませる。
【0037】
流体としては、液体でも気体でもかまわないが、液体の場合、残留して内容物を汚染する恐れがあるので、気体を用いることが好ましい。特に空気や、あるいは、空気の成分の一種である窒素ガスが好ましく用いられる。
【0038】
この後、挟んでいた挟み具を外して、挟み位置12を開放させる。そして、未シールの流体受け入れ室10、あるいは、連絡路11を含めて、この部分の表フィルム1と裏フィルム2をシールして、流体流入口9と内容物流出路6を塞ぐ。
【0039】
切断予定線7にハーフカット線に設ける場合は、この後、レーザによりハーフカット線を設ける。以上のようにして、内容物流出路6の表フィルム1と裏フィルム2が、それぞれ外側に膨らんだ液体用包装袋100が製造される。
【0040】
この後、充填シール機で、未シールにして開けておいた内容物の充填口より内容物を充填、シールし、内容物が充填された液体用包装袋100が得られる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0042】
<実施例1>
表フィルム1、裏フィルム2として、アルミナ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを基材フィルム21とし、中間フィルム23に2軸延伸ナイロンフィルム25μm、シーラントフィルム22に直鎖状低密度ポリエチレン無延伸フィルム150μmを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネーション法で積層した積層フィルムを用意した。
【0043】
また、底テープ4としては、前記積層フィルムと同様の構成で、直鎖状低密度ポリエチレン無延伸フィルムの厚さを100μmとした積層フィルムを用意した。これらを製袋機用にスリットし、製袋機に掛けた。
【0044】
製袋機を用いて、前述の液体用包装袋100の製造方法に従って、周縁シール部3をシ
ールし、抜き加工によって、液体用包装袋100の外形に沿って抜き、分離した個々の液体用包装袋100に作成した。
【0045】
この分離した液体用包装袋100を、内容物注出路6の内容物収納部5と接続されている部分近傍の挟み位置12を挟み具で挟んで表フィルムと裏フィルムを密着させ、空気を流体流入口9から流入させ、内容物注出路6の表フィルム1と裏フィルム2をそれぞれ外側に膨らませた。
【0046】
この後、未シールの流体受け入れ室10と連絡路11の表フィルム1と裏フィルム2をシールして、流体流入口9と内容物流出路6の連通を塞ぎ、切断予定線7に、レーザによりハーフカット線を設けた。
【0047】
そして、充填シール機で、未シールにして開けておいた充填口より、内容物の液体シャンプー900mlを充填、シールし、図1(A)、(B)のような形状の、実施例1の内容物が充填された液体用包装袋を得た。
【0048】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0049】
<比較例1>
分離した液体用包装袋に空気を流入させず、内容物注出路6の表フィルム1と裏フィルム2を外側に膨らませることなく製造した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の内容物が充填された液体用包装袋を作成した。
【0050】
<試験方法>
実施例1と比較例1の液体用包装袋を下記の方法で試験し、比較評価した。
【0051】
<開封時の注出口の状態>
実施例1と比較例1の液体用包装袋を切断予定線7でカットし注出口を開け、そのときの注出口の状態を観察した。
【0052】
ほとんどの袋の注出口が密着せずに開いていたものを○とし、ほとんどの袋で内容物注出路が密着していて、注出口が閉じていたものを×とした。その結果を表1にまとめた。
【0053】
<注ぎ出しやすさ>
実施例1と比較例1の液体用包装袋の開けた注出口より、内容物のシャンプーを注ぎ出し、注ぎ出しやすさを評価した。評価は5人の人が、各自、それぞれの液体用包装袋を3袋ずつ行った。
【0054】
内容物を開封したままの袋から注ぎ出すことができた袋を○とし、強く袋を押せば注ぎ出すことができた袋を△とし、塞がっていた注出口を手で開けなければ注ぎ出すことができなかった袋を×として評価し、各人の評価を合わせ、その袋数を表1にまとめた。
【0055】
【表1】
以下に、実施例と比較例との比較結果について説明する。
【0056】
<比較結果>
実施例1の液体用包装袋は、切断予定線でカットして、注出口を開封したときに、ほとんどの袋が密着せずに膨らんで開いた状態であった。また、注ぎ出しやすさも良好であった。
【0057】
一方、比較例1の液体用包装袋は、切断予定線でカットして、注出口を開封したときに
、ほとんどの袋が内容物注出路が密着していて、注出口が閉じていた。また、注ぎ出しやすさも、ほとんどの袋が、手で強く押したり、注出口を手で開くようにしたりしないと注ぎ出せなかった。
【符号の説明】
【0058】
100・・・液体用包装袋
1・・・表フィルム
2・・・裏フィルム
3・・・周縁シール部
3a・・・底シール部
4・・・底テープ
5・・・内容物収納部
6・・・内容物注出路
7・・・切断予定線
8・・・摘み部
9・・・流体流入口
10・・・流体受け入れ室
11・・・連絡路
12・・・挟み位置
21・・・基材フィルム
22・・・シーラントフィルム
23・・・中間フィルム
図1
図2