特許第6307816号(P6307816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307816
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20180402BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20180402BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20180402BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L27/00 C
   A23L27/20 D
   A23L27/20 F
   A23L27/20 G
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-181722(P2013-181722)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-121313(P2014-121313A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2016年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-254209(P2012-254209)
(32)【優先日】2012年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本間芳子
(72)【発明者】
【氏名】石田恵美
(72)【発明者】
【氏名】山地貴之
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−015686(JP,A)
【文献】 特開2006−121958(JP,A)
【文献】 HEYDANEK, M.G. et al.,CARBONYL-PROPYLENE GLYCOL INTERACTIONS IN FLAVOR SYSTEMS,JOURNAL OF FOOD SCIENCE,1976年,Vol.41,pp.145-147
【文献】 CHI-KUEN, Shu et al.,Stability study on some selected flavor chemicals in propylene glycol at room temperature,Contribution of Low- and Non-Volatile Materials to the Flavor of Foods,1996年,pp.37-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)〜(e)からなる群から選択される、少なくとも一組の香料成分を含有することを特徴とする飲料(ただし、プロピレングリコールを配合した飲料を除く)。
(a)ベンズアルデヒドとベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール
(b)エチルレブリネートとエチルレブリネートプロピレングリコールアセタール
(c)p−トルアルデヒドとp−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタール
(d)デカナールとデカナールプロピレングリコールアセタール
(e)ピペロナールとピペロナールプロピレングリコールアセタール
【請求項2】
pHが1.5〜6である請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
医薬品、又は医薬部外品である、請求項1又は2の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の香料成分を含有する飲料に関し、医薬品、医薬部外品及び食品の分野に応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
通常、飲食品で使用される香料は、おいしさをプラスしたり、加工段階で失われてしまう風味を補ったりすることを目的として使用されている。また、別の目的として、特定成分の不快臭の防止や不快風味の改善を目的に使用されている(特許文献1、2)。
【0003】
近年、消費者の嗜好性が多様化されており、消費者の嗜好性の要求に応えるべく香料化合物の開発がおこなわれてきている。例えば、柑橘特有の果皮様のボディー感を付与する香料として、(E)−6−ノネナールが報告されている(特許文献3)。また、香質、コク、深み等に優れた香料として3級メルカプトエーテルが報告されている(特許文献4)。また、ベンズアルデヒドを飲料に配合した例も報告されている(特許文献1)。しかし、上記のいずれの香料について、近年の風味に対する高度な要求に対応するには未だ工夫の余地が残されている。
【0004】
プロピレングリコールアセタール系の化合物は香料成分として公知であるが、その目的は主に洗剤や柔軟剤の香り付けや、繊維製品や衣類に対する冷感剤としての使用であり(特許文献5〜7)、特定成分と組み合わせて風味を増強することは記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−262259号公報
【特許文献2】特開平11−12159号公報
【特許文献3】特開2009−203438号公報
【特許文献4】特開2005−281628号公報
【特許文献5】特開2011−79953号公報
【特許文献6】特開2003−105397号公報
【特許文献7】特開2002−327193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、甘味、塩味、苦味、酸味、旨味で示される基本5味だけでは表現できない飲み応え(すなわち、ボリューム感、広がり感、厚み、複雑性、持続性)を付与・増強・改善した飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のアルデヒド系又はエステル系香料成分とこれのプロピレングリコールアセタール体である香料成分の2種を飲料に添加したところ、意外にも格段に優れた風味を呈する飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、
(1)次の(a)〜(e)からなる群から選択される、少なくとも一組の香料成分を含有することを特徴と飲料。
(a)ベンズアルデヒドとベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール
(b)エチルレブリネートとエチルレブリネートプロピレングリコールアセタール
(c)p−トルアルデヒドとp−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタール
(d)デカナールとデカナールプロピレングリコールアセタール
(e)ピペロナールとピペロナールプロピレングリコールアセタール
(2)pHが1.5〜6である(1)に記載の飲料、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、優れた風味を有する飲料を提供することが可能となった。本発明の飲料を服用すると、ボリューム感、広がり感、厚み、複雑性、持続性など口腔内で感じられる風味や感触が一段と増し、飲み応えを付与・増強・改善することが可能となり、飲用したときに十分満足でき、極めて実用的な効果をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の飲料には、特定のアルデヒド系又はエステル系香料成分と、これのプロピレングリコールアセタール体である香料成分の2種を添加する必要がある。すなわち、(a)ベンズアルデヒドと、これのプロピレングリコールアセタール体であるベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタールを共に飲料に添加する必要があり、同様に、(b)エチルレブリネートと、これのプロピレングリコールアセタール体であるエチルレブリネートプロピレングリコールアセタール、(c)p−トルアルデヒドと、これのプロピレングリコールアセタール体であるp−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタール、(d)デカナールと、これのプロピレングリコールアセタール体であるデカナールプロピレングリコールアセタール、(e)ピペロナールと、これのプロピレングリコールアセタール体であるピペロナールプロピレングリコールアセタールを共に飲料に添加する。
【0011】
ベンズアルデヒド、p−トルアルデヒド、デカナール及びピペロナールはアルデヒド系香料成分、エチルレブリネートはエステル系香料成分であり、ベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール、エチルレブリネートプロピレングリコールアセタール、p−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタール、デカナールプロピレングリコールアセタール及びピペロナールプロピレングリコールアセタールはプロピレングリコールアセタール系香料成分であり、いずれも公知の化合物である。
【0012】
本発明の飲料は、上記のように対となる香料成分同士を添加することにより、風味が格段に向上するのであり、例えば、ベンズアルデヒドとこれのプロピレングリコールアセタール体ではない別のプロピレングリコールアセタール系香料成分と組み合わせて添加しても、本発明の効果は十分に発揮できない。ただし、本発明のアルデヒド系香料成分又はエステル系香料成分とこれに対応するプロピレングリコールアセタール体を含有していれば、本発明の効果を損なわない範囲で、別の香料成分を適宜配合することは可能である。また、本発明の飲料は(a)〜(e)の香料成分のうち少なくとも一組の香料成分を配合すると効果を発揮するが、2組以上配合するとさらに風味が向上する。本発明において、(a)〜(e)の全ての香料成分を配合した飲料が最も効果的である。
【0013】
本発明のベンズアルデヒド、エチルレブリネート、p−トルアルデヒド、デカナール及びピペロナールの含有量は、飲料全体に対してそれぞれ好ましくは0.00001w/v%〜0.01w/v%、さらに好ましくは0.00002w/v%〜0.003w/v%が好ましい。また、本発明のベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール、エチルレブリネートプロピレングリコールアセタール、p−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタール、デカナールプロピレングリコールアセタール及びピペロナールプロピレングリコールアセタールの含有量は、飲料全体に対して、それぞれ好ましくは0.0000001w/v%〜0.05w/v%、さらに好ましくは0.00002w/v%〜0.03w/v%が好ましい。
【0014】
また、本発明の飲料の風味の向上という効果の観点から、本発明のアルデヒド系又はエステル系香料成分1質量部に対してこれに対応するプロピレングリコールアセタール体は0.0001〜25質量部配合するのが好ましい。また、さらに好ましくは、ベンズアルデヒド1質量部に対してベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタールは0.006質量部〜10質量部、エチルレブリネート1質量部に対してエチルレブリネートプロピレングリコールアセタールは0.003質量部〜5質量部、p−トルアルデヒド1質量部に対してp−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタールは0.01質量部〜22質量部、デカナール1質量部に対してデカナールプロピレングリコールアセタールは0.01質量部〜22質量部、ピペロナール1質量部に対してピペロナールプロピレングリコールアセタールは0.006質量部〜10質量部配合するのが好ましい。
【0015】
本発明の飲料のpHは、特に酸性から中性域であるpH1.5〜7が好ましく、特に好ましくはpH1.5〜6であり、さらに好ましくはpH2.5〜5である。pHの調整には、可食性の酸を用いることができ、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸などの有機酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸などの無機酸及びそれらの塩類などが挙げられる。これらのpH調整剤は1種を用いるだけでなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の飲料は、内服液剤、ドリンク剤等の医薬品及び医薬部外品の他、栄養機能食品、特定保健用食品等の食品領域における各種飲料が含まれる。このうち特に好ましいのは、ビタミン、アミノ酸あるいは生薬等の滋養強壮成分が配合された飲料である。また、平坦な風味、単純な風味になりがちな低カロリー飲料も好適である。
【0017】
本発明の飲料には、水、アルコール、ビタミン及びその塩類、ミネラル、アミノ酸及びその塩類、生薬及び生薬抽出物、カフェイン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、甘味剤、矯味剤、pH調整剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、抗酸化剤、着色剤、香料等の通常医薬品、医薬部外品及び食品の飲料に使用される成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。また、本発明の飲料を調製する方法は特に限定されるものではない。通常、各成分を適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、更に精製水を加えて容量調整し、必要に応じて濾過、滅菌処理を施すことにより、飲料として提供することができる。
【0018】
なお、本発明の飲料は、プロピレングリコールを実質的に含有しない飲料が好ましい。ここで実質的に含有しないとは、たとえ含有されたとしても、本発明のプロピレングリコールアセタール体から分解物として生じる可能性のある量以下という意味であり、また、プロピレングリコールを配合しないという意味である。飲料におけるプロピレングリコールの含有量は、好ましくは0〜0.015w/v%以下、さらに好ましくは0〜0.0005w/v%以下である。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0020】
(a)ベンズアルデヒドとベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタール
飲料の製造:
表1に示す飲料を製造した。下記成分を精製水に溶解した後、クエン酸およびクエン酸ナトリウムでpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて50mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し、飲料(実施例1、比較例1〜2)を得た。
【0021】
試験例1:官能評価
実施例1及び比較例1〜2の飲料を専門パネル3名により、下記の表2の評価項目及び評価基準にて風味を評価し、結果を表1に示した。なお、比較例2は、ベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタールの香味を感じる最低量を添加した飲料である。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
表1に示した通り、ベンズアルデヒドとベンズアルデヒドプロピレングリコールアセタールを添加した実施例1の飲料は、比較例1と比較して、風味のボリューム感、広がり感、厚み、複雑性、持続性が強調されている結果であった。
【0025】
(b)エチルレブリネートとエチルレブリネートプロピレングリコールアセタール
飲料の製造:
表3に示す飲料を製造した。下記成分を精製水に溶解した後、クエン酸およびクエン酸ナトリウムでpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて50mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し、飲料(実施例2、比較例3〜4)を得た。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表3に示した。なお、比較例4は、エチルレブリネートプロピレングリコールアセタールの香味を感じる最低量を添加した飲料である。
【0026】
【表3】
【0027】
表3に示した通り、エチルレブリネートとエチルレブリネートプロピレングリコールアセタールを添加した実施例2の飲料は、比較例3と比較して、風味のボリューム感、広がり感、厚み、複雑性、持続性が強調されている結果であった。
【0028】
(c)p−トルアルデヒドとp−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタール
飲料の製造:
表4に示す飲料を製造した。下記成分を精製水に溶解した後、クエン酸およびクエン酸ナトリウムでpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて50mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し、飲料(実施例3、比較例5〜6)を得た。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表4に示した。なお、比較例6は、p−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタールの香味を感じる最低量を添加した飲料である。
【0029】
【表4】
【0030】
表4に示した通り、p−トルアルデヒドとp−トルアルデヒドプロピレングリコールアセタールを添加した実施例3の飲料は、比較例5と比較して、風味のボリューム感、広がり感、厚み、複雑性、持続性が強調されている結果であった。
【0031】
(d)デカナールとデカナールプロピレングリコールアセタール
飲料の製造:
表5に示す飲料を製造した。下記成分を精製水に溶解した後、クエン酸およびクエン酸ナトリウムでpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて50mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し、飲料(実施例4、比較例7〜8)を得た。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表5に示した。なお、比較例8は、デカナールプロピレングリコールアセタールの香味を感じる最低量を添加した飲料である。
【0032】
【表5】
【0033】
表5に示した通り、デカナールとデカナールプロピレングリコールアセタールを添加した実施例4の飲料は、比較例7と比較して、風味のボリューム感、広がり感、厚み、複雑性、が強調されている結果であった。
【0034】
(e)ピペロナールとピペロナールプロピレングリコールアセタール
表6に示す飲料を製造した。下記成分を精製水に溶解した後、クエン酸およびクエン酸ナトリウムでpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて50mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し、飲料(実施例5、比較例9〜10)を得た。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表6に示した。なお、比較例10は、ピペロナールプロピレングリコールアセタールの香味を感じる最低量を添加した飲料である。
【0035】
【表6】
【0036】
表6に示した通り、ピペロナールとピペロナールプロピレングリコールアセタールを添加した実施例5の飲料は、比較例9と比較して、風味のボリューム感、広がり感、厚み、複雑性、持続性が強調されているとの結果であった。
【0037】
実施例6〜25
実施例1と同様に表7〜表11に示す実施例6〜25の飲料を製造した。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表7〜表11に示した。
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【表11】
【0043】
実施例26〜実施例30(低カロリー飲料)
実施例1と同様に表12に示す実施例26〜30の低カロリー飲料を製造した。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表12に示した。
【0044】
【表12】
【0045】
実施例31〜実施例35(ビタミン配合飲料)
実施例1と同様に表13に示す実施例31〜35のビタミン配合飲料を製造した。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表13に示した。
【0046】
【表13】
【0047】
実施例36〜実施例40(タウリン配合飲料)
実施例1と同様に表14に示す実施例36〜40のタウリン配合飲料を製造した。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表14に示した。
【0048】
【表14】
【0049】
実施例41〜実施例50(生薬配合飲料)
実施例1と同様に表15に示す実施例41〜50の生薬配合飲料を製造した。試験例1と同様の方法で官能評価を行い、結果を表15に示した。
【0050】
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の飲料は、内服液剤、ドリンク剤等の医薬品及び医薬部外品の他、栄養機能食品、特定保健用食品等の食品分野の飲料として提供が可能である。特に、「飲み応え」などの風味が要求される肉体疲労時などに飲用する滋養強壮剤などのドリンク剤において、消費者のニーズにより的確に対応できるようになった。