(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合樹脂中の前記第一樹脂の配合比率(質量換算)は、前記混合樹脂が前記溶剤の単位質量に対して相溶から非相溶に移行する際の第一樹脂の限界比率をC1(%)としたときに、C1(%)からC1−10(%)の範囲であるか、
又は、非相溶から相溶に移行する際の第一樹脂の限界比率をC2(%)としたときに、C2(%)からC2+10(%)の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の不正検知ラベル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のステッカーでは、溶剤発色層を剥がしたり、溶かしたりして除去された場合、溶剤によりステッカーが剥がされた履歴が残らない。つまり、回折格子やホログラム等の光学素子や特殊インキが保持された部分を損傷なく取り出された場合、ステッカーが不正に再利用されるという課題が残る。
【0008】
また、特許文献2や特許文献3のラベルやシールでは、物理的に剥離を試みた場合は十分な効果が得られるが、溶剤を用いて接着層を溶かす方法に対しては、その効果は十分ではない。
【0009】
本発明は、上記事情に着目してなされたもので、物品に貼付されたラベルが一度剥されて、再度利用される不正使用を容易に検知することができる不正検知ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、基材の一方の面に光学的変化層、他方の面に接着層を有する不正検知ラベルであって、
前記光学的変化層は、第一樹脂と該第一樹脂の2.5〜5倍の数平均分子量の第二樹脂との混合樹脂と溶剤から成る光学的変化層形成用組成物から形成され、
前記光学的変化層の形態は、第1領域と該第1領域よりも5%以上低い可視光透過率を示す第2領域との二つの領域に区分され、
且つ、前記光学的変化層が前記第一及び第二樹脂の少なくとも一方を溶解する溶剤と接した後に前記光学的変化層の領域全体を第3領域とすると、該第3領域が前記溶剤と接する前の前記第2領域よりも高い可視光透過率を示すことを特徴とする不正検知ラベルである。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、前記第1領域が、第一樹脂と第二樹脂が相溶状態にある領域であり、
前記第2領域が、第一樹脂と第二樹脂が非相溶状態にある領域であることを特徴とする請求項1に記載の不正検知ラベルである。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、前記混合樹脂中の前記第一樹脂の配合比率(質量換算)は、前記混合樹脂が前記溶剤の単位質量に対して相溶から非相溶に移行する際の第一樹脂の限界比率をC1(%)としたときに、C1(%)からC1−10(%)の範囲であるか、
又は、非相溶から相溶に移行する際の第一樹脂の限界比率をC2(%)としたときに、C2(%)からC2+10(%)の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の不正検知ラベルである。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、前記第一樹脂の数平均分子量が、0.5万〜10万の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不正検知ラベルである。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、前記光学的変化層は、前記第1領域が透過性、前記第2領域が不透過性を示す状態から、前記溶剤と接した後に、前記第3領域が透過性を示すことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の不正検知ラベルである。
【0015】
また、請求項6に係る発明は、前記第一樹脂がセルロース誘導体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の不正検知ラベルである。
【0016】
また、請求項7に係る発明は、前記光学的変化層の少なくとも一部に被覆層が積層されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の不正検知ラベルである。
【0017】
また、請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の不正検知ラベルが前記接着層を介して貼付されていることを特徴とするラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に係る発明によれば、光学的変化層形成用組成物に含まれる混合樹脂において、第一樹脂の数平均分子量と第二樹脂の数平均分子量との差を2.5〜5倍にすることで、溶剤に対する前記二つの樹脂の溶解速度に大きな差異が生じて非相溶状態となる。その結果、光学的変化層形成用組成物を塗布、乾燥して光学的変化層を形成すると、光散乱の違いによる可視光透過率の差異で、まだら模様を発現することができる。
【0019】
また、前記光学的変化層に第1領域と該第1領域よりも5%以上低い可視光透過率を示す第2領域とでまだら模様を形成することで、溶剤浸漬後に前記光学的変化層の領域全体
(第3領域)が溶剤浸漬前の前記第2領域よりも高い可視光透過率を示すことができる。
【0020】
すなわち、前記光学的変化層が形成されたラベルを用い、このラベルに対する溶剤浸漬前後の形態変化を目視で容易に確認することができる。
【0021】
また、請求項
1によれば、前記第1領域が、第一樹脂と第二樹脂が相溶状態にある領域であり、また、前記第2領域が、第一樹脂と第二樹脂が非相溶状態であることにより、前記光学的変化層を容易にまだら模様とすることができる
。
【0022】
また、請求項
2によれば、前記混合樹脂中の前記第一樹脂の配合比率(質量換算)を、前記混合樹脂が前記溶剤の単位質量に対して相溶から非相溶に移行する際の第一樹脂の限界比率をC1(%)としたときに、C1(%)からC1−10(%)の範囲とするか、又は、非相溶から相溶に移行する際の第一樹脂の限界比率をC2(%)としたときに、C2(%)からC2+10(%)の範囲とすることで、容易に前記光学的変化層をまだら模様にすることができる。
【0023】
また、請求項
3によれば、前記第一樹脂の数平均分子量を0.5万〜10万の範囲とすることにより、前記第二樹脂の数平均分子量は1万〜50万となり、第一樹脂及び第二樹脂の選定幅が広がり、光学的変化層形成用組成物の設計が容易となる。
【0024】
また、請求項
5によれば、前記第一樹脂をセルロース誘導体とすることにより、一般的に接着層に用いられる樹脂を溶解、膨潤し易い溶剤の溶解度パラメータ(δ)に近い値とすることができ、混合樹脂の溶解を容易にすることができる。
【0025】
本発明によれば、まだら模様の光学的変化層が、溶剤浸漬後に、全体が均一な透過性を示すことで、不正検知が可能なラベルを提供することができる。また、物品に本発明のラベルを貼付することで、溶剤による剥離が試みられたか否かを容易に検知することができ、再利用や改ざんを未然に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、適宜図面を参照して詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るラベルを概略的に示す断面図である。
図2は、
図1に示すラベルを、前面側、即ち観察者側から見た平面図である。
図3は、
図1及び
図2に示すラベルを溶剤に浸漬した後の状態の一例を示す平面図である。第1の実施形態に係るラベルは、本発明の最も基本的な構成を有するラベルである。
図1に示すラベル10は、ラベル基材2を備え、その一方の面に光学的変化層1が、他方の面に接着層8がそれ
ぞれ設けられている。
【0029】
本発明に使用できる基材2はプラスチックフィルムが好ましく、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)などが挙げられる。用途や目的によっては、紙、合成紙、プラスチック複層紙又は樹脂含浸紙等を基材として用いることもできる。但し、光学的変化層1を設ける時にかかる熱や圧力等による変形や変質の少ない材料を用いることが好ましい。なお、光学的変化層1は、必ずしも基材2と直接接するように設ける必要はなく、基材2と光学的変化層1の間に図示しない中間層等を設けてもよい。
【0030】
接着層8は、ラベル10を物品へ貼付するためのものである。接着層8は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂又は塩化ビニル樹脂等を主成分とする接着剤により形成することができる。接着層8は、グラビア印刷法やスクリーン印刷法等の公知の手法で形成することができる。
【0031】
光学的変化層1は、数平均分子量が大きく異なる第一樹脂と第二樹脂との混合樹脂及び溶剤を含む光学的変化層形成用組成物からから成り、第二樹脂の数平均分子量は第一樹脂の2.5〜5倍が好ましい。
【0032】
また、光学的変化層1は第1領域3とそれよりも可視光透過率が5%以上低い第2領域4が混在するまだら模様を呈している(
図2)。
【0033】
また、
図3に示すように、前記光学的変化層1は少なくとも第一及び第二樹脂の一方を溶解し得る溶剤に浸漬した後は、前記光学的変化層1の全体領域(第3領域5)からまだら模様が消失して、前記第2領域の可視光透過率よりも高い値の均一な透過性を示す。ここで溶剤に浸漬するとは、前記光学的変化層1を有する本発明のラベル10を物品に貼付した後に、溶剤に浸漬してラベル10を剥離する行為を想定したものである。
【0034】
このように、本発明の不正検知ラベル10は、
図1に示す基材2の一方の面上に形成された光学的変化層1が、
図2に示すように、第1領域3と第2領域4との可視光透過率の違いにより生じるまだら模様を呈する。そして、このラベル10が第一樹脂または第二樹脂の一方を溶解する溶剤に浸漬されると、
図3に示すように上記のまだら模様が消失して光学的変化層1全体(第3領域5)が均一の透過性を呈する。このような溶剤浸漬前後の光学的変化層1の状態の変化を目視にて容易に確認でき、ラベル10の不正使用が検知できることを特徴としている。
【0035】
なお、第1領域3と第2領域4との可視光透過率の違いにより生じるまだら模様は、第1領域3の可視光透過率よりも、第2領域4の可視光透過率が5%以上低いことが好ましい。この二つの領域の可視光透過率の差異が5%以下であると、前記まだら模様の確認が目視にて難しい。
【0036】
上記のような第1領域3と第2領域4とによる溶剤浸漬前のまだら模様から、溶剤浸漬後の第3領域の均一透過性への状態変化を、目視にてより確認し易くするためは、例えば、溶剤浸漬前の前記第1領域3が透明で、且つ第2領域4が不透明、さらに溶剤浸漬後の第3領域5が高い透過性(透明)を示すことである。具体的には、光学的変化層1を形成する第一樹脂と第二樹脂の溶剤に対する相溶性の制御であり、作製したラベルは溶剤浸漬前には非相溶性で、溶剤浸漬後は相溶性へ変化することである。すなわち、光学的変化層1を形成する光学的変化層形成用組成物における混合樹脂の配合比の制御により可能となる。
【0037】
ここで、第一樹脂と第二樹脂とが「相溶性」があるとは、第一樹脂及び第二樹脂の混合樹脂を有機溶剤に溶解又は分散させた混合樹脂溶液、若しくは該混合樹脂溶液を乾燥させて得られた混合樹脂固形物が、光散乱性を有さず、透明である状態をいう。混合樹脂溶液又は混合樹脂固形物が相溶性か非相溶性かを判定するには、目視による濁度法が簡便で信頼性がある。例えば、目視により、第一及び第二樹脂を含む混合樹脂溶液(光学的変化層形成用組成物)が透明な場合、若しくはこの混合樹脂溶液を乾燥させて作製したフィルムが透明な場合、両樹脂は相溶であると判定できる。
【0038】
目視の場合、本発明においては、ヒトの目の分解能を可視光の波長(約500nm)程度の大きさであると見なしている。つまり、透明な場合、可視光波長以上の波長においても濃度と組成とが均一である、即ち相溶であることが保証される。一方、混合樹脂溶液又は混合樹脂固形物が不透明な場合、その試料は非相溶性であると判定する。不透明となるのは、第一及び第二樹脂が非相溶性であることに起因して濃度と組成とが不均一であるためである。
【0039】
第一樹脂と第二樹脂とが相溶性のない状態で光学的変化層1を形成している場合、すなわち、光学的変化層1において局所的に第一樹脂と第二樹脂との配合比率のバランスが崩れ両樹脂が非相溶状態であり、その局所的領域において不透明となり、全体としてまだら模様が発現した状態で形成されている場合、光学的変化層1が、ラベル10に対して上記溶剤を使用して物品から剥離しようとして上記溶剤と接触し、その溶剤が揮発する過程で、非相溶状態であった第一樹脂と第二樹脂との配合比率のバランスが緩和され、相溶状態となり、可視光に対して透明な状態が発現する。
【0040】
このような現象が発現するための一つの要素には、第一及び第二樹脂の数平均分子量の差が影響する。すなわち、数平均分子量の差が小さい場合は、溶剤に対する各樹脂の溶解速度の差異が小さく、局所的に第一樹脂と第二樹脂との配合比率のバランスを崩して両樹脂が非相溶状態となるまだら模様が発現した状態とはなり難いが、溶剤接触から揮発までの過程で第1の樹脂と第2の樹脂との配合比率のバランスが緩和されて相溶状態となり易い。逆に、数平均分子量の差が大きい場合は、溶剤に対する各樹脂の溶解速度の差異が大きくなり、非相溶状態となるまだら模様が発現した状態となり易いが、溶剤接触から揮発までの過程で第1の樹脂と第2の樹脂との配合比率のバランスが緩和され難く、相溶状態とはなり難い。
【0041】
更に、好ましい態様において、第一樹脂と第二樹脂とからなる混合樹脂に占める第一樹脂の割合(質量%)は、これらの混合樹脂が相溶となる含有率から非相溶となる含有率まで増加させた場合に、相溶から非相溶へと変化する第一樹脂の限界比率C1(%)からC1−10(%)の範囲内にあるか、又はこれらの混合樹脂が非相溶から相溶へと変化する第一樹脂の限界比率C2(%)からC2+10(%)までの範囲内にあることが好ましい。
【0042】
前記第一樹脂の数平均分子量は0.5万〜10万、また、前記第二樹脂の数平均分子量は1万〜50万が好ましく、この範囲の数平均分子量であれば第一樹脂及び第二樹脂の選定幅が広がり、光学的変化層形成用組成物の設計が容易となる。
【0043】
具体的には、例えば、第一樹脂として、旭化成工業社製「セルノバBTH1/2」ニトロセルロース(NC)樹脂(数平均分子量7万)等のセルロース誘導体を用いることができる。また、第二樹脂としては、三菱レイヨン社製「ダイヤナール BR―118」アクリル樹脂(数平均分子量19万)を用いることができる。ここで、数平均分子量は、浸透圧法,粘度法,光散乱法などによって測定することができる。
【0044】
ところで、ある有機溶剤に対する樹脂の溶解速度は、主に樹脂の数平均分子量によって決定されるが、他にも結晶性、極性及び溶解度パラメータにも依存することが知られている。
【0045】
一般に、数平均分子量の高い樹脂材料は溶解速度が遅く、数平均分子量の低い樹脂材料は溶解速度が速い。例えば鎖状のポリマー(樹脂)では、分子鎖が長い(数平均分子量が高い)ほどポリマー分子間の引力が大きく、溶剤分子による分子鎖の絡まりを解きほぐして分散させることが困難となる。また、ポリマー分子間の引力は、ポリマー分子が互いに接する面が大きいほど、すなわちポリマー分子配向が秩序正しい(結晶性である)ほど大きくなる。したがって、鎖状ポリマーでは、数平均分子量(重合度)が大きく結晶性の割合が大きいほど、溶剤に溶けにくくなる。
【0046】
また、樹脂の溶解性を決める他の因子に、溶剤分子との親和性がある。例えば極性をもつポリマーは、極性溶剤に溶けやすく、非極性溶剤には溶けにくい傾向があり、非極性のポリマーは逆の傾向になる。この親和性の強さを判断する因子に溶解度パラメータ(SP値)δがある。このδ値は、下式で表され、ポリマーと溶剤分子とのδ値が近いほど、原則的に溶解性が高くなる。
δ
2=ΔE/V
ここで、ΔEは蒸発エネルギー、Vはモル体積である。
【0047】
すなわち、ある溶剤Aに対する溶解速度を速くするには、溶剤Aに近い溶解度パラメータを有する樹脂を選択すればよく、逆に溶剤Aに対する溶解速度を遅くするには、溶剤Aと異なる溶解度パラメータを有する樹脂を選択すればよい。
【0048】
例えば、樹脂材料の主なδ値として、酢酸ビニル(9.1)、ポリメチルメタクリレート(9.2)、塩化ビニル(9.3)、酢酸ビニル(9.4)、ニトロセルロース(10.1)、メタクリレート樹脂(10.7)、酢酸セルロース(11)、セルロースジアセテート(11.4)、ポリスチレン(8.6〜9.7)等が公知の文献に示されている。また、溶剤の主なδ値として、シクロヘキサン(8.2)、酢酸ブチル(8.5)、トルエン(8.9)、酢酸エチル(9.1)、メチルエチルケトン(9.3)、テトラヒドロフラン(9.5)、アセトン(10)、エチルアルコール(12.7)、水(23.4)等が公知の文献に示されている。
【0049】
上に述べたように、第一及び第二樹脂の少なくとも一方を溶解し得る溶剤は、ラベル10を接着層8において物品から剥離可能に接着層8を溶解ないし膨潤させ得る溶剤に相当する。通常、かかる溶剤は、有機溶剤であり、溶解率の差こそあれ、第一及び第二樹脂の双方を溶解し得るものである。このような溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチルアルコール、ベンゼン、トルエン、パークロロエチレン、又はそれらの混合物を例示することができる。
【0050】
上記に挙げた溶剤に本発明のラベル10を浸漬した後、乾燥すると、光学的変化層1は
図2から
図3に示すように変化する。すなわち、
図2に示すような、前記溶剤浸漬前の第1領域3と第2領域4は、二つの領域の可視光透過率の差異が5%以上あることで、目視でまだら模様が確認でき、また、
図3に示すように、前記溶剤浸漬後は領域全体(第3領域5)が均一な透過性を示し、前記溶剤浸漬前後の光学的変化層1の違いが目視で容易に確認でき、ラベルの不正使用を検知できる。
【0051】
このように光学的変化層1は、第一及び第二樹脂の数平均分子量の差、相溶非相溶となる樹脂比率、溶解速度、結晶性、極性及び溶解度パラメータ、溶剤を適正に選定することで、光学的変化層1の形成時は非相溶状態となり、溶剤による樹脂の再溶解時(溶剤浸漬
)に相溶状態とすることができる。なお、光学的変化層1は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷又はオフセット印刷などの公知の印刷手法により形成することができるが、これに限られるものではない。
【0052】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るラベルを概略的に示す断面図である。
図5は、
図4に示すラベルを、前面側から見た平面図である。
図6は、
図4及び
図5に示すラベルを有機溶剤に浸漬させた後の状態の一例を示す平面図である。
【0053】
図4に示すラベル11は、部分的に設けられた光学的変化層1と、透明な材料からなる基材2及び接着層8に加え、部分的に設けられた印刷層6及び全面に設けられた光学反射層7を含んでいる。典型的には、光学的変化層1は、印刷層6と重ならないように設けられており、光学反射層7は、基材2と接着層8との間に介在している。
【0054】
印刷層6は、伝えるべき情報を付与する為に、任意の色みで、全面又は文字や絵柄等のパターン状に設けられる層である。印刷層6は、例えば、インキを用いて形成する。このインキとしては、印刷方式に応じて、オフセットインキ、活版インキ及びグラビアインキなどを用いることができ、組成の違いに応じて、例えば、樹脂インキ、油性インキ及び水性インキを用いることができる。また、乾燥方式の違いに応じて、例えば、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ及び紫外線硬化型インキを用いることができる。
【0055】
また、印刷層6として、光の照明角度又は観察角度に応じて色が変化する機能性インキを使用してもよい。このような機能性インキとしては、例えば、光学的変化インキ(Optical Variable Ink)、カラーシフトインキ及びパールインキが挙げられる。
【0056】
或いは、印刷層6は、トナーを用いて電子写真法により形成してもよい。この場合、例えば、帯電性を持ったプラスチック粒子に黒鉛及び顔料等の色粒子を付着させたトナーを準備する。そして、帯電による静電気を利用して、トナーを基材に転写させ、これを加熱し定着させることで印刷層を形成することができる。
【0057】
更に、印刷層6として、回折構造形成層やホログラフィック画像形成層を設け、回折光やホログラム画像による情報を付与してもよい。
【0058】
光学反射層7は、光学的変化層1に形成されているまだら模様を容易に観察可能とする為に設けられる層である。用いることのできる材料としては、例えば、TiO
2、Si
2O
3、SiO、Fe
2O
3、ZnS等の屈折率の高い材料、或いは光反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられる。また、膜厚は、10乃至500nmで形成するのが好ましく、真空蒸着法又はスパッタ法などの形成方法が用いられる。
【0059】
光学反射層7は全面に設けてもよく、文字や絵柄等の形状に対応するように部分的に設けてもよい。部分的に設ける場合、意匠性が向上し加工が複雑になるためより高い偽造防止効果を付与することが可能となる。
【0060】
光学反射層7を部分的に設ける方法としては、溶解性の樹脂を部分的に形成した後に光学反射層を設け、溶解性樹脂とその部分の光学反射層を洗浄して除去する方法や、光学反射層として金属薄膜層を用い、金属薄膜層の上に耐酸又は耐アルカリ性樹脂を用いて部分的に設けた後、金属薄膜を酸やアルカリでエッチングする方法、或いは光を露光することによって溶解するか又は溶解し難くなる樹脂材料を塗布し、所望のパターン状のマスク越
しに露光した後、不要部分を洗浄或いはエッチングで除去する方法等が挙げられる。以上は一例であり、光学反射層の形成方法はこれらに限定されるものではなく、公知の技術が適宜利用可能である。
【0061】
図5に示すラベル11は、有機溶剤に浸漬させる前の状態を示しており、
図6に示すラベル11は、有機溶剤に浸漬させた後の状態を示している。
【0062】
図5に示すラベル11では、光学的変化層1が部分的に設けられており、部分的に設けられた光学的変化層13内には、第1領域3と、これより可視光透過率が5%以上低い第2領域4が部分的に形成され、まだら模様となっている。また、基材2は可視光透過性を有しており、印刷層6によって形成された星の絵柄と「TOPPN PRINTING」の文字が観察でき、印刷層6の無い部分は光学反射層7が観察できる。
【0063】
図6に示すラベル11では、部分的に設けられた光学変化層13内からまだら模様が消失し、透過性のある第3領域5と変化している。
図6のラベル11では、まだら模様の消失によって、
図5のラベル11と比較して明確な変化を生じていることが目視で容易に確認可能である。
【0064】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る不正検知ラベルを概略的に示す断面図である。
図7に示すラベル12は、全面あるいは部分的に設けられた、光学的変化層1、基材2、接着層8、印刷層6及び光学反射層7に加え、被覆層9を含んでいる。
図7のラベル12は、
図4のラベル11の最上部に、更に被覆層9を設けた構成となっている。
【0065】
被覆層9は、光学的変化層1をまだら模様から透明な状態へ変化させる溶剤に対して溶解するか又はこの有機溶剤を透過させる材料からなる必要がある。例えば、溶剤をメチルエチルケトン・トルエン混合溶剤とした場合、被覆層9として選択可能な材料は、メチルエチルケトン・トルエン混合溶剤に溶解するか又はメチルエチルケトン・トルエン混合溶剤を透過させるアクリル樹脂及びセルロースアセテートブチレート樹脂等が挙げられる。
【0066】
被覆層を用いることで、溶剤を使用してラベルを剥がそうとした場合の機能を保持しつつ、用途や目的に応じて、ラベルの表面耐侯性及び耐久性等の物性を強化することが可能である。被覆層へは、適宜フィラーやワックス等の添加剤を入れ、層としての物理的強度や表面摩擦係数を調整することも可能である。
【0067】
以上、本発明の実施形態に係るラベルについて詳細に説明したが、この他の処理や構成も可能である。例えば、それぞれの層間の密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理及び/又はプライマー塗工を施してもよい。更に、意匠性を向上させるべく、各層を着色することや、光学反射層を多層構成し多層干渉膜とすることも可能である。また、ICチップ入りインレットを組み込んだ構成等も可能である。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳細に説明する。なお、以下の例において、「部」は、質量部を意味し、「比」は、質量比を意味する。
【0069】
<実施例1>
ラベル基材2として厚み50μmの透明PETフィルムを用い、その片面に下記組成物からなるインキをスクリーン印刷法で部分的に設け、印刷層6とした。
【0070】
<印刷層インキ>
(図形用黄色インキ)
高分子メタクリル(PMMA)樹脂 2部
低粘性ニトロセルロース 12部
黄色顔料 3部
シクロヘキサノン 10部。
(文字用黒色インキ)
高分子メタクリル(PMMA)樹脂 2部
低粘性ニトロセルロース 12部
カーボンブラック 3部
シクロヘキサノン 10部。
【0071】
次に、基材2上の印刷層6を形成した側の面に、光学的変化層1を形成するための下記に示す光学的変化層形成用組成物をグラビア印刷法で、厚さ1μmとなるように部分的に形成した。
【0072】
<光学的変化層形成用組成物>
アクリル樹脂(ダイヤナールBR−118 数平均分子量19万) 0.45部
ニトロセルロース
(セルノバBTH1/2 平均分子量7万) 0.55部
アセトン/トルエン(比 1/1)混合溶剤 10部
【0073】
その後、基材2の他の面に、光学反射層7として、アルミニウムを真空蒸着法で50nmの膜厚となるように形成した。更に、接着層8として、下記の組成物からなるインキをグラビア印刷法で厚さ10μmとなるように全面に設け、
図4及び
図5に示すラベル11を得た。
【0074】
<接着層組成物>
ポリエステル粘着剤 40部
酢酸エチル 60部。
【0075】
<実施例2>
光学的変化層1の全面に、下記組成からなる被覆層形成用組成物を用いて、グラビア印刷法で厚さ1.2μmとなるように被覆層9を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、
図7に示すラベル12を作製した。
【0076】
<被覆層形成用組成物>
アクリル樹脂 10部
(メチルエチルケトン・トルエン混合溶液、酢酸エチル、パークロロエチレン可溶性)
ポリエチレンワックス 0.5部
メチルアルコール 90部
【0077】
<比較例1>
下記組成物からなる光学的変化層形成用組成物を使用した以外は、実施例1と同様の方法でラベルを作製した。
【0078】
<光学的変化層形成用組成物>
アクリル樹脂 0.45部
(ダイヤナールRB−52、数平均分子量8.5万)
ニトロセルロース 0.55部
(セルノバBTH1/2、数平均分子量7万 )
アセトン・トルエン(比 1/1)混合溶剤 10部
【0079】
<比較例2>
下記組成物からなる光学的変化層形成用組成物を使用した以外は、実施例1と同様の方法でラベルを作製した。
【0080】
<光学的変化層形成用組成物>
アクリル樹脂 0.65部
(ダイヤナールRB−79、数平均分子量7万)
ニトロセルロース 0.35部
(セルノバBTH1/2、数平均分子量7万 )
アセトン/トルエン(比 1/1)混合溶剤 10部
【0081】
<比較例3>
下記組成物からなる光学的変化層形成用組成物を使用した以外は、実施例1と同様の方法でラベルを作製した。
【0082】
<光学的変化層形成用組成物>
ポリエステル樹脂 0.45部
(ユニチカ社製、エリテールUE3201、数平均分子量1万)
ニトロセルロース 0.55部
(セルノバBTH1/2、数平均分子量7万 )
アセトン/トルエン(比 1/1)混合溶剤 10部
【0083】
<評価>
実施例1〜2及び比較例1〜3で得られたラベルを、厚み約200μmの上質紙に貼り付け、これをメチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1)の混合溶剤、メチルエチルケトン、酢酸エチル、パークロロエチレンのそれぞれの溶剤に数秒間浸漬した後、大気中に暴露して溶剤を揮発させた。この溶剤浸漬前後のラベルの表面状態を目視にて観察し、不正検知性の評価とした。結果を以下の表1に記す。
【0084】
【表1】
【0085】
<比較結果>
実施例1と実施例2のラベルの表面は、いずれの溶剤に対しても、溶剤浸漬前のまだら模様が、溶剤浸漬後に透明に変化したことが確認できた。一方、比較例1のラベル表面は、いずれの溶剤に対しても、溶剤浸漬前はまだら模様が得られず透明で、溶剤浸漬後は全面が白濁した。また、同様に、比較例2のラベル表面は、溶剤浸漬前後とも透明のままであった。またさらに、比較例3のラベル表面は溶剤浸漬前のまだら模様のまま、溶剤浸漬後も変化がなかった。