特許第6307886号(P6307886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6307886ポリエステルシート、成形体、及びカード
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  • 特許6307886-ポリエステルシート、成形体、及びカード 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307886
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】ポリエステルシート、成形体、及びカード
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20180402BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180402BHJP
   B65D 1/00 20060101ALN20180402BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B27/00 G
   !B65D1/00 111
【請求項の数】7
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-3059(P2014-3059)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-131407(P2015-131407A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田端 久敬
(72)【発明者】
【氏名】石井 猛
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−267686(JP,A)
【文献】 特開平08−156211(JP,A)
【文献】 特開平08−187826(JP,A)
【文献】 特開2012−126821(JP,A)
【文献】 特表2013−515634(JP,A)
【文献】 特開2006−299282(JP,A)
【文献】 特開2011−156719(JP,A)
【文献】 特開2007−203688(JP,A)
【文献】 特開2011−148198(JP,A)
【文献】 特開2011−005650(JP,A)
【文献】 特開2011−099118(JP,A)
【文献】 特表2006−506485(JP,A)
【文献】 特開2000−006346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 1/00−1/48
C08G 63/00−64/42
B08J 5/00−5/02
5/12−5/22
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が存在しないポリエステルをポリエステルAとした際に、ポリエステルAを主体とする層をA層とし、前記ポリエステルA以外のポリエステルをポリエステルBとした際に、ポリエステルBを主体とする層をB層としたとき、A層及びB層を有するポリエステルシートであって、
ポリエステルシートの、100℃におけるシート長手方向及びシート幅方向の貯蔵弾性率が100MPa以上3,000MPa以下であり、
ポリエステルシートが無配向であって、前記ポリエステルAが特徴1〜3のいずれかを備え、前記ポリエステルBがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、ポリエステルシート。
特徴1:グリコール成分の合計100モル%において、エチレングリコール成分を1モル%以上60モル%以下、イソソルビド成分を5モル%以上60モル%以下、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を30モル%以上52モル%以下含む。
特徴2:グリコール成分の合計100モル%において、エチレングリコール成分を1モル%以上90モル%以下、スピログリコール成分を5モル%以上60モル%以下含む。
特徴3:グリコール成分の合計100モル%において、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を5モル%以上90モル%以下、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分を5モル%以上60モル%以下含む。
【請求項2】
A層/B層/A層の積層構成であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステルシート。
【請求項3】
A層/B層/A層の積層厚み比が1/3/1〜1/18/1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリエステルシート
【請求項4】
B層は前記ポリエステルAを5質量%以上50質量%未満含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルシート。
【請求項5】
ヘイズが0.3%以上10%以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルシート。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルシートから得られる成形体。
【請求項7】
印刷層を有し、該印刷層が請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルシートのA層と直接積層されたことを特徴とする、カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性、透明性、成形性、耐寒性、ヒートシール性、印刷性に優れるポリエステルシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飽和ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂は、繊維を初めとしてシート、フィルム用ポリマーとして広く使用されているが、その優れた耐薬品性及び低ガス透過性を生かして炭酸飲料、ジュース、ビール等飲料用ボトル、化粧品容器、食品用トレーなどにも応用されるようになってきた。中でもA−PETと呼ばれる非晶状態のポリエステルシートは、その優れたリサイクル性、低公害性、食品安全性が注目され近年塩化ビニールやポリスチレンに替わる包装素材として急速に使用量が増大している。このポリエステルシートは、熱成形により食品、薬品の容器や雑貨のブリスターパックとして使われるほか、その優れた透明性を生かして化粧品や電気機器等を入れるクリヤーケースとして用いられている。しかしながら、A−PETは、ガラス転移温度が低いため、耐熱性に劣り、例えば電子レンジで使用するような耐熱容器の分野では実用上の使用範囲は大幅に限定されているのが現状である。
【0003】
このような問題点を解決する手段の一つとして、特許文献1では、ポリトリメチレンテレフタレートと、ポリエステル系樹脂からなる混合物を主成分とする二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。
【0004】
また特許文献2では、イソソルビド成分を含有する成形用二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。
【0005】
また特許文献3では、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびイソソルビドを用いて、作製するポリエステル樹脂およびその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−1589号公報
【特許文献2】特開2012−126821号公報
【特許文献3】特表2013−504650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1に記載の発明は、延伸工程により配向構造を有するため剛性が高くなり、機械特性が優れるものの、熱成形性に劣る。またガラス転移温度向上による耐熱性改良に関する記載がなく、全く示唆されていない。また特許文献2に記載の発明は、耐熱性改良に関する記載はあるものの、後加工の印刷工程において高い温度で乾燥させて用いるために、融点を有する結晶性ポリエステル樹脂が用いられており、かつ二軸延伸がなされているため、剛性が高くなり、機械特性は優れているものの、成形性に劣るという問題があった。また特許文献3に記載の発明は、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびイソソルビドを併用することにより、耐熱性および耐衝撃強度を改良する記載はあるものの、シートとした際の透明性、熱成形性改良に関する記載がなく、全く示唆されていない。
【0008】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり耐熱性、透明性、成形性、耐寒性、ヒートシール性、印刷性に優れるポリエステルシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、以下である。
(1) 融点が存在しないポリエステルをポリエステルAとした際に、ポリエステルAを主体とする層をA層とし、前記ポリエステルA以外のポリエステルをポリエステルBとした際に、ポリエステルBを主体とする層をB層としたとき、A層及びB層を有するポリエステルシートであって、
ポリエステルシートの、100℃におけるシート長手方向及びシート幅方向の貯蔵弾性率が100MPa以上3,000MPa以下であり、
ポリエステルシートが無配向であって、前記ポリエステルAが特徴1〜3のいずれかを備え、前記ポリエステルBがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、ポリエステルシート。
特徴1:グリコール成分の合計100モル%において、エチレングリコール成分を1モル%以上60モル%以下、イソソルビド成分を5モル%以上60モル%以下、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を30モル%以上52モル%以下含む。
特徴2:グリコール成分の合計100モル%において、エチレングリコール成分を1モル%以上90モル%以下、スピログリコール成分を5モル%以上60モル%以下含む。
特徴3:グリコール成分の合計100モル%において、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を5モル%以上90モル%以下、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分を5モル%以上60モル%以下含む。
(2) A層/B層/A層の積層構成であることを特徴とする、(1)に記載のポリエステルシート。
(3) A層/B層/A層の積層厚み比が1/3/1〜1/18/1であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のポリエステルシート
) B層は前記ポリエステルAを5質量%以上50質量%未満含むことを特徴とする、(1)〜()のいずれかに記載のポリエステルシート。
) ヘイズが0.3%以上10%以下であることを特徴とする、(1)〜()のいずれかに記載のポリエステルシート。
) (1)〜()のいずれかに記載のポリエステルシートから得られる成形体。
) 印刷層を有し、該印刷層が(1)〜()のいずれかに記載のポリエステルシートのA層と直接積層されたことを特徴とする、カード。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性、透明性、成形性、耐寒性、ヒートシール性、印刷性に優れるポリエステルシートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シートの耐熱性の評価法を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、融点が存在しないポリエステルをポリエステルAとした際に、ポリエステルAを主体とする層をA層とし、前記ポリエステルA以外のポリエステルをポリエステルBとした際に、ポリエステルBを主体とする層をB層としたとき、A層及びB層を有し、100℃におけるシート長手方向及びシート幅方向の貯蔵弾性率が100MPa以上3000MPa以下であり、無配向であることを特徴とする、ポリエステルシートである。このような本発明について、以下説明する。
【0013】
本発明のポリエステルシートを構成するポリエステルとは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステルは、通常ジカルボン酸とグリコールを重合させることによって得るところ、重合後のポリエステルはジカルボン酸成分とグリコール成分とから構成される。
【0014】
融点が存在しないポリエステルをポリエステルAとして、ポリエステルAを主体とする層をA層としたときに、本発明のポリエステルシートはA層を有することが重要である。A層を有することで、本発明のポリエステルシートは耐寒性、ヒートシール性、印刷性に優れるという利点を有する。そしてポリエステルの融点を存在しないようにする方法は特に限定されないが、ポリエステルAとして後述するポリエステルA1、ポリエステルA2、又はポリエステルA3を用いる方法を挙げることができる。
【0015】
なおポリエステルAを主体とする層とは、該層の全成分100質量%において、ポリエステルAを50質量%以上100質量%以下含む層であることを意味する。
【0016】
そして得られるシートの耐熱性、透明性、シートを作製する際の押出温度を低温化できるという点を考慮すると、A層中のポリエステルAの含有量は、A層の全成分を100質量%としたとき、ポリエステルAが60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、75質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明のポリエステルシートは、前記ポリエステルA以外のポリエステルをポリエステルBとして、ポリエステルBを主体とする層をB層とすると、B層を有することが重要である。
【0018】
ポリエステルBとは、ポリエステルA以外のポリエステル、つまりポリエステルAとは異なるポリエステルを意味する。ここでポリエステルAとは異なるポリエステルとは、ジカルボン酸成分またはグリコール成分の少なくとも1つがポリエステルAを構成するジカルボン酸成分またはグリコール成分とは異なるポリエステルを意味する。すなわち、ジカルボン酸成分及びグリコール成分が同じ成分で、該成分の含有量や分子量が異なるもの、添加剤の種類や含有量が異なるもの、固有粘度が異なるものは、同じポリエステルであることを意味する。そしてポリエステルBとしては、ポリエステルA以外のポリエステルでありさえすれば、融点が存在しないポリエステルでも、融点が存在するポリエステルでも、いずれも適用可能である。しかし、取り扱い性、耐熱性の点から、ポリエステルBとしては融点が存在するポリエステルを用いることが好ましい。
【0019】
なおポリエステルBを主体とする層とは、該層の全成分100質量%において、ポリエステルBを50質量%以上100質量%以下含む層であることを意味する。
【0020】
そして得られるシートを熱成形加工する際に、成形前の予熱温度を低温化できるという点を考慮すると、B層中のポリエステルBの含有量は、B層の全成分を100質量%としたとき、ポリエステルBが60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、75質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。
【0021】
ポリエステルAは、融点が存在しないポリエステルでありさえすれば特に限定されないが、ヒートシール性、印刷性、耐熱性、成形性の点から以下のA1)、A2)、またはA3)を用いることが重要である
【0022】
A1)ポリエステルAのグリコール成分の合計100モル%において、エチレングリコール成分を1モル%以上60モル%以下、イソソルビド成分を5モル%以上60モル%以下、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を30モル%以上52モル%以下含むポリエステル。(以後、ポリエステルA1と表記)
A2)ポリエステルAのグリコール成分の合計100モル%において、エチレングリコール成分を1モル%以上90モル%以下、スピログリコール成分を5モル%以上60モル%以下含むポリエステル。(以後、ポリエステルA2と表記)
A3)ポリエステルAのグリコール成分の合計100モル%において、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を5モル%以上90モル%以下、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分を5モル%以上60モル%以下含むポリエステル。(以後、ポリエステルA3と表記)

そこで以下、ポリエステルA1について説明する。
【0023】
強度、透明性、耐熱性の観点から、ポリエステルA1のグリコール成分中のエチレングリコール成分の含有量は、好ましくは5モル%以上50モル%以下、より好ましくは13モル%以上45モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上40モル%以下である。またポリエステルAのグリコール成分中のイソソルビド成分の含有量は、好ましくは10モル%以上50モル%以下、より好ましくは15モル%以上40モル%以下、さらに好ましくは22モル%以上35モル%以下である。
【0024】
イソソルビドは、バイオマス由来成分である糖類及びでんぷん等から容易に得ることができ、例えば、D−グルコースを水添し、脱水反応をすればイソソルビドを得ることができる。本発明のポリエステルシートはバイオマス由来成分を使用することから環境に優しいシートとすることができる。
【0025】
また、本発明のポリエステルシートに用いるエチレングリコールは特に限定されないが、バイオマス由来のエチレングリコールを用いることで、さらに環境に優しいシートとすることができる。
【0026】
ポリエステルA1がエチレングリコール成分とイソソルビド成分とを特定の範囲で含むことにより、従来の処方では軟化する温度である100℃の領域においても十分な耐熱性を得ることができる。A層の主体となるポリエステルAとして、ポリエステルA1を用いると、本発明のシートの耐熱性が向上する理由として、イソソルビド成分が比較的剛直な構造を有することが挙げられる。さらに、イソソルビド成分は、ポリエステル分子鎖中での自由回転が制限される。そのため、ポリエステル分子鎖の軟化が起こりにくくなり、ポリエステルA1のガラス転移点温度が上昇する結果、本発明のシートの耐熱性が向上するものと考えられる。
【0027】
本発明のポリエステルA1に含まれるグリコール成分としては、エチレングリコール成分、イソソルビド成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分以外に、1,2−プロパンジオール成分、1,3−プロパンジオール成分、1,3−ブタンジオール成分、1,4−ブタンジオール成分、1,5−ペンタンジオール成分、1,6−ヘキサンジオール成分、ネオペンチルグリコール成分などの脂肪族ジヒドロキシ化合物成分、ジエチレングリコール成分、ポリエチレングリコール成分、ポリプロピレングリコール成分、ポリテトラメチレングリコール成分などのポリオキシアルキレングリコール成分、スピログリコール成分などの脂環族ジヒドロキシ化合物成分、ビスフェノールA成分、ビスフェノールS成分などの芳香族ジヒドロキシ化合物成分などが挙げられる。
【0028】
このようなエチレングリコール成分、イソソルビド成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分以外のグリコール成分は、ポリエステルA1に含まれるグリコール成分の合計100モル%において、40モル%以下であることが好ましく、さらには10モル%以下であることが好ましい。
【0029】
ポリエステルA1は、グリコール成分の合計100モル%において、エチレングリコール成分を20モル%以上40モル%以下、イソソルビド成分を22モル%以上35モル%以下、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を30モル%以上52モル%以下含有する態様とすることにより、本発明のポリエステルシートのさらに好ましい態様となる。
【0030】

以下、ポリエステルA2について説明する。
【0031】
強度、透明性、耐熱性の観点から、ポリエステルA2のグリコール成分中のエチレングリコール成分の含有量は、好ましくは10モル%以上90モル%以下、より好ましくは25モル%以上85モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上80モル%以下である。またポリエステルA2のグリコール成分中のスピログリコール成分の含有量は、好ましくは15モル%以上60モル%以下、より好ましくは20モル%以上55モル%以下、さらに好ましくは30モル%以上50モル%以下である。
【0032】
ポリエステルA2は、グリコール成分の合計100モル%において、エチレングリコール成分を50モル%以上80モル%以下、スピログリコール成分を30モル%以上50モル%以下含有する態様とすることにより、本発明のポリエステルシートのさらに好ましい態様となる。
【0033】
本発明のポリエステルA2に含まれるグリコール成分としては、エチレングリコール成分、スピログリコール成分以外に、例えばトリメチレングリコール成分、2−メチルプロパンジオール成分、1,4−ブタンジオール成分、1,5−ペンタンジオール成分、1,6−ヘキサンジオール成分、ジエチレングリコール成分、トリエチレングリコール成分、プロピレングリコール成分、ネオペンチルグリコール成分等の脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール成分、ポリプロピレングリコール成分、ポリブチレングリコール成分等のポリエーテル化合物類;グリセリン成分、トリメチロールプロパン成分、ペンタエリスリトール成分等の3価以上の多価アルコール類;1,3−シクロヘキサンジメタノー成分ル、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール成分、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール成分、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール成分、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール成分、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール成分、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール成分、テトラリンジメタノール成分、ノルボルナンジメタノール成分、トリシクロデカンジメタノール成分、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノール成分等の脂環族ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール成分、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)成分、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)成分、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)成分等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン成分、レゾルシン成分、4,4’―ジヒドロキシビフェニル成分、4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル成分、4,4’―ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン成分等の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等が例示できる。
【0034】
このようなエチレングリコール成分、スピログリコール成分以外のグリコール成分は、ポリエステルA2に含まれるグリコール成分の合計100モル%において、40モル%以下であることが好ましく、さらには10モル%以下であることが好ましい。
【0035】

以下、ポリエステルA3について説明する。
【0036】
強度、透明性、耐熱性の観点から、ポリエステルA3のグリコール成分中の1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の含有量は、好ましくは20モル%以上80モル%以下、より好ましくは30モル%以上75モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上70モル%以下である。またポリエステルA2のグリコール成分中の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分の含有量は、好ましくは10モル%以上55モル%以下、より好ましくは20モル%以上50モル%以下、さらに好ましくは25モル%以上45モル%以下である。
【0037】

ポリエステルA3は、グリコール成分の合計100モル%において、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を40モル%以上70モル%以下、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分を25モル%以上45モル%以下含有する態様とすることにより、本発明のポリエステルシートのさらに好ましい態様となる。
【0038】

本発明のポリエステルA3に含まれるグリコール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分以外に、1,2−プロパンジオール成分、1,3−プロパンジオール成分、1,3−ブタンジオール成分、1,4−ブタンジオール成分、1,5−ペンタンジオール成分、1,6−ヘキサンジオール成分、ネオペンチルグリコール成分などの脂肪族ジヒドロキシ化合物成分、ジエチレングリコール成分、ポリエチレングリコール成分、ポリプロピレングリコール成分、ポリテトラメチレングリコール成分などのポリオキシアルキレングリコール成分、スピログリコール成分などの脂環族ジヒドロキシ化合物成分、ビスフェノールA成分、ビスフェノールS成分などの芳香族ジヒドロキシ化合物成分などが挙げられる。
【0039】
このような1,4−シクロヘキサンジメタノール成分、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分以外のグリコール成分は、ポリエステルA3に含まれるグリコール成分の合計100モル%において、40モル%以下であることが好ましく、さらには10モル%以下であることが好ましい。
【0040】

また、本発明のポリエステルAに用いられるジカルボン酸成分は特に限定されないが、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、フタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、ジフェニルジカルボン酸成分、ジフェニルスルホンジカルボン酸成分、ジフェノキシエタンジカルボン酸成分、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸成分などの芳香族ジカルボン酸成分、シュウ酸成分、コハク酸成分、アジピン酸成分、セバシン酸成分、ダイマー酸成分、マレイン酸成分、フマル酸成分などの脂肪族ジカルボン酸成分、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分などの脂環族ジカルボン酸成分、パラオキシ安息香酸成分などのオキシカルボン酸成分などのジカルボン酸化合物成分を挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体成分としては、上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル成分、テレフタル酸ジエチル成分、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル成分、イソフタル酸ジメチル成分、アジピン酸ジメチル成分、マレイン酸ジエチル成分、ダイマー酸ジメチル成分などを挙げることができる。これらの中でも、ポリエステルAのジカルボン酸成分としては、成形性、取り扱い性の観点から、テレフタル酸成分が好ましく用いられる。そしてポリエステルAのジカルボン酸成分の合計100モル%において、テレフタル酸成分は80モル%以上100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは95モル%以上100モル%以下である。
【0041】
さらに、本発明のポリエステルAのガラス転移温度は、85℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上150℃以下であることがより好ましく、100℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。
【0042】
ポリエステルAのガラス転移温度を85℃以上150℃とするためには、グリコール成分とジカルボン酸成分における各成分の構成、含有量の割合について、前記した好ましい量とすることが重要である。このようなポリエステルAは、市販の原料、例えば商品名として、ポリエステルA1としては「ECOZEN」(SK Chemical(株)製)、ポリエステルA2としては「ALTESTER」(三菱ガス化学(株)製)、ポリエステルA3としては「TRITAN」(EASTMAN Chemical(株)製)を好ましく使用することができる。
【0043】
ポリエステルBは取り扱い性、熱成形加工時の予熱温度を低温化できるという観点から、ポリエチレンテレフタレートであることが重要である。そしてポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度は85℃未満であることがより好ましい。
【0044】

本発明のポリエステルシートのA層は、ポリエステルAの他に、A層の全成分100質量%において、ポリエステルBを50質量%未満含んでも良い。耐熱性、透明性、シートを作製する際の押出温度を低温化できるという点を重視すると、該A層にはポリエステルBを含まないことが好ましい。後加工の熱成形加工時の予熱温度を低温化できるという点を重視すると、該A層はポリエステルBを0質量%を超えて50質量%未満含むことが好ましい。
【0045】
本発明のポリエステルシートのB層は、B層の全成分100質量%において、ポリエステルAを50質量%未満含んでも良い。熱成形加工する際に、成形前の予熱温度を低温化できるという点を重視すると、該B層はポリエステルAを含まないことが好ましい。一方で、耐熱性、透明性、シートを作製する際の押出温度を低温化できるという点を重視すると、B層はポリエステルAを含むことが好ましく、B層がポリエステルAを含む場合には、該B層は、B層の全成分100質量%において、ポリエステルAを5質量%以上50質量%未満含むことが好ましい。
【0046】
B層にポリエステルAを含ませる方法としては、ポリエステルシートの製造時に未使用のポリエステルAを添加する方法の他に、ポリエステルAを含む回収原料を添加する方法がある。ここでいう未使用のポリエステルとは、シート製膜に一度も使用していないポリエステルのことを意味する。また回収原料とは、シートの製膜工程で発生したシートの耳やスクラップシートを粉砕して得られたフレーク状物、それを押出機等を用いて再ペレット化した物、あるいは本発明のポリエステルシートからなる成形体を作製する際に発生した屑(成形体の抜き屑、スクラップ屑など)を粉砕して得られたフレーク状物、それを押出機等を用いて再ペレット化した物のことを意味する。
【0047】
B層にポリエステルAを含有した際のポリエステルシートの透明性を考慮すると、B層のポリエステルBとしては、ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。すなわちポリエステルAとポリエチレンテレフタレートは相溶性が良いことから、B層にポリエステルAを含む回収原料を添加して本発明のポリエステルシートを得ても、ヘイズの上昇を抑制することができ、透明性が良好なシートを得ることができるからである。つまり、B層のポリエステルBとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、B層に一部ポリエステルAを含有させることで、本発明のポリエステルシートのヘイズを10%以下とすることができる。なお、ポリエステルAとポリエチレンテレフタレートとの更なる相溶性の観点から、ポリエステルAとしてはポリエステルA1を用いることが好ましく、シートのヘイズ上昇を抑制し、透明性は更に良好なものとなる。
【0048】
本発明のポリエステルシートは、環境負荷の低減の目的から、本発明の性能を損なわない範囲でA層及び/またはB層に回収原料を含むことができる。回収原料の含有量は、A層及び/またはB層の全成分100質量%において、5質量%以上50質量%未満、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下、もっとも好ましくは15質量%以上35質量%以下である。
【0049】

また、本発明のポリエステルシートがA層/B層/A層の積層構成の態様である場合は、耐熱性、透明性の観点から、中間層のB層に回収原料を含有することがより好ましい。回収原料を積極的に利用できることから、環境負荷が低減でき、環境に優しいシートとすることができる。
【0050】

本発明のポリエステルBに用いるポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル誘導体から導かれるジカルボン酸成分と、エチレングリコールまたはそのエステル誘導体から導かれるグリコール成分を用いて、公知の方法で製造することができる。
【0051】
本発明のポリエステルBに用いるポリエチレンテレフタレートを製造する際には、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸に加えて、テレフタル酸以外のジカルボン酸を少量用いても良い。
このようなジカルボン酸の例として、イソフタル酸成分、フタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、ジフェニルジカルボン酸成分、ジフェニルスルホンジカルボン酸成分、ジフェノキシエタンジカルボン酸成分、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸成分などの芳香族ジカルボン酸成分、シュウ酸成分、コハク酸成分、アジピン酸成分、セバシン酸成分、ダイマー酸成分、マレイン酸成分、フマル酸成分などの脂肪族ジカルボン酸成分、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分などの脂環族ジカルボン酸成分、パラオキシ安息香酸成分などのオキシカルボン酸成分などのジカルボン酸化合物成分を挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体成分としては、上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル成分、テレフタル酸ジエチル成分、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル成分、イソフタル酸ジメチル成分、アジピン酸ジメチル成分、マレイン酸ジエチル成分、ダイマー酸ジメチル成分などを挙げることができる。このようなテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分は、ポリエチレンテレフタレートに含まれるジカルボン酸成分の合計を100モル%において、10モル%以下であることが好ましい。
【0052】
本発明のポリエステルBに用いるポリエチレンテレフタレートを製造する際には、グリコール成分として、エチレングリコール成分に加えて、エチレングリコール成分以外のグリコール成分(ただし、イソソルビド成分、スピログリコール成分、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分を除く)を少量用いても良い。このようなグリコール成分の例として、1,2−プロパンジオール成分、1,3−プロパンジオール成分、1,3−ブタンジオール成分、1,4−ブタンジオール成分、1,5−ペンタンジオール成分、1,6−ヘキサンジオール成分、ネオペンチルグリコール成分などの脂肪族ジヒドロキシ化合物成分、ジエチレングリコール成分、ポリエチレングリコール成分、ポリプロピレングリコール成分、ポリテトラメチレングリコール成分などのポリオキシアルキレングリコール成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分、ビスフェノールA成分、ビスフェノールS成分などの芳香族ジヒドロキシ化合物成分などが挙げられる。このようなエチレングリコール成分以外のグリコール成分は、ポリエチレンテレフタレートに含まれるグリコール成分の合計100モル%において、40モル%以下であることが好ましく、さらには10モル%以下であることが好ましい。
【0053】
本発明のポリエステルBに用いるポリエチレンテレフタレートとしては市販の各種原料を好ましく使用することができ、例えば、商品名:「ノバペックス」(三菱化学(株)製)、商品名:「バイロン」(東洋紡績(株)製)、商品名:「ベルペット」((株)ベルポリエステル製)、商品名:「テックスペット」(大宇ジャパン(株)製)、商品名:「イースターPETG・6763」((株)イーストマンケミカル社製)などを挙げることができる。
【0054】

本発明のポリエステルシートは、A層とB層とを有する積層構成であることが重要である。つまり本発明の層構成の例として、例えばA層/B層、A層/B層/A層等が挙げられる。そして本発明としては、耐熱性、透明性、シートを作製する際の押出温度を低温化でき、かつ、熱成形加工する際に、成形前の予熱温度を低温化できるという点から、A層/B層/A層の構成が特に好ましい。
【0055】
すなわち本発明のポリエステルシートに、耐熱性、透明性に優れ、シート作製する際の押出温度を低温化できるA層を最外層に有し、熱成形加工する際の成形前の予熱温度を低温化できるB層を内層に有する構成とすることで、耐熱性、透明性に優れ、シート作製する際の押出温度を低温化でき、成形前の予熱温度を低温化できるシートとすることができる。
【0056】
なお、シートの透明性、成形加工性を考慮すると、A層/B層/A層の積層構成の本発明のポリエステルシートは、A層とB層の間、A層とA層の間、B層とB層の間には、他の層が存在せずに、これらが直接積層された態様であることが特に好ましい。つまり本発明のポリエステルシートは、接着層などを有さないことが好ましい。よってA層及びB層を有する本発明のポリエステルシートは、共押出により製造することが好ましい。なお層間密着性の観点から、ポリエステルAはポリエステルA1、ポリエステルBはポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましい。層間密着力の測定方法は後述する。
【0057】
本発明のポリエステルシートを熱成形加工する際には成形前の予熱温度はエネルギー削減、成形加工サイクル向上の観点から低温であることが好ましく、シート温度が90℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上140℃以下であればより好ましく、90℃以上130℃以下であればさらに好ましい。成形前の予熱温度が好ましい範囲を満たすための方法は、特に限定されないが、例えば、前述の通り、ポリエステルBとしてガラス転移温度が85℃未満のポリエチレンテレフタレートを用いること等を挙げることができる。本発明のポリエステルBにガラス転移温度が85℃未満のポリエチレンテレフタレートを用いることで、シートを熱成形加工する際の成形前の予熱温度が低温化でき、成形加工サイクルが向上するため好ましい。
【0058】

本発明のポリエステルシートは、良好な成形性を付与することができるという点から、無配向であることが重要である。ここでポリエステルシートが無配向か否かは、面配向度:ΔPにより判断することができる。つまり、面配向度:ΔPが0以上0.008以下であれば、ポリエステルシートが無配向であることを意味する。無配向とするための方法としては、本発明の効果を損なわない限り、特に限定はされないが、Tダイを用いて樹脂を押し出すTダイキャスト法を用いることが好ましい。面配向度:ΔPの測定方法は、後述する。
【0059】

本発明のポリエステルシートは、100℃におけるシート長手方向およびシート幅方向の貯蔵弾性率がそれぞれ100MPa以上3,000MPa以下であることが重要である。100℃におけるシート長手方向およびシート幅方向の貯蔵弾性率が100MPa未満であれば、本発明のポリエステルシートの耐熱性、及びシートを用いて作製した成形体の耐熱性が低下してしまうことがある。逆に、100℃におけるシート長手方向およびシート幅方向の貯蔵弾性率が3,000MPaを超えると、耐熱性には優れるが、成形性が悪化する場合がある。
【0060】
すなわち耐熱性の点から、100℃におけるシート長手方向およびシート幅方向の貯蔵弾性率は、100MPa以上であることが好ましく、200MPa以上であればより好ましく、400MPa以上であればさらに好ましく、600MPa以上であれば最も好ましい。また、成形性を低下させないためには、100℃におけるシート長手方向およびシート幅方向の貯蔵弾性率は、3,000MPa以下であることが好ましく、2,600MPa以下であればより好ましく、2,200MPa以下であれば最も好ましい。
【0061】
本発明のポリエステルシートにおいて、100℃における貯蔵弾性率を100MPa以上3,000MPa以下にする方法としては、特に限定されないが、例えば、A層及びB層を有する無配向シートであり、該A層の主体となるポリエステルAとしてガラス転移温度が100℃以上150℃以下の融点が存在しないポリエステルを用い、該A層の全成分100質量%において、該ポリエステルAを60質量%以上100質量%以下含有する方法が挙げられる。
【0062】

本発明のポリエステルシートの厚みは、特に制限はないが、50μm以上2,000μm以下であることが好ましく、より好ましくは100〜1,500μm、さらに好ましくは、200〜750μmである。
【0063】
また、本発明の積層構成のポリエステルシートについて、その積層厚み比は特に限定されないが、A層/B層/A層の積層構成の態様である場合は、耐熱性、透明性、成形性を考慮すると積層厚み比が、1/3/1〜1/18/1であることが好ましく、より好ましくは1/4/1〜1/17/1、さらに好ましくは1/5/1〜1/16/1、最も好ましくは1/6/1〜1/15/1である。
【0064】

本発明に用いるポリエステルAは、成形性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.40dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.50dl/g以上、特に好ましくは0.55dl/g以上である。また、異物除去のためのフィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性の点から、固有粘度の上限を1.0dl/gとすることが好ましい。
【0065】

本発明のポリエステルシートは、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有することができる。
【0066】
本発明のポリエステルシートが含有可能な添加剤の例としては、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトまたは白土など)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、滑剤、離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(ニグロシンなど)および顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩、シリコン化合物など)、導電剤あるいは着色剤(カーボンブラックなど)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、帯電防止剤などが挙げられ、1種または2種以上を含有することができる。
【0067】
その中でも本発明のポリエステルシートにすべり性を付与するためには、本発明のポリエステルシートにタルク、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素などの無機粒子を含有させることが好ましい。
【0068】
無機粒子の平均粒径は、本発明のポリエステルシートの効果を損なわない限り特に限定されないが、シートのすべり性、巻き取り性を考慮すると0.1μm以上3μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。なお、「無機粒子の平均粒径」は、コールカウンター( 例えば日本化学機械社製) を使用して計測し、累積質量分率が50%になる時の平均粒径として求めることができる。
【0069】
無機粒子の含有量は、本発明のポリエステルシートの効果を損なわない限り特に限定されないが、シートのすべり性、巻き取り性を考慮すると、本発明のポリエステルシートを構成する各層において、各層の全成分100質量%において、0.05質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.7質量%以下がより好ましい。
【0070】
なお、複数種類の無機粒子を組み合わせて使用しても、平均粒径及び含有量が上記範囲にあれば好ましく用いることができる。
【0071】
無機粒子を含有させる方法としては、既知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、重合時に添加したり、重合後にブレンダーを使用して混合したり、無機粒子の高濃度のマスターバッチをあらかじめ作製しておき、希釈したりして、添加することができる。
【0072】
また、本発明のポリエステルシートは、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で結晶核剤を1種または2種以上を添加することができる。本発明のポリエステルシートに好適に用いられる結晶核剤の例としては、タルクなどの無機系核剤、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビス−12−ジヒドロキシステアリン酸アミドおよびトリメシン酸トリシクロヘキシルアミドなどの有機アミド系化合物、銅フタロシアニンおよびピグメントイエロー110などの顔料系核剤、有機カルボン酸金属塩、フェニルホスホン酸亜鉛などが挙げられる。
【0073】

本発明のポリエステルシートの動摩擦係数μdは、0.20以上0.40以下であることが好ましい。μdが0.20より小さいと、巻きズレ、蛇行を起こすことがある。一方、μdが0.40より大きいと、成形加工時に異なる面同士を順に積層したシート同士がすべらずに送り不良が発生し、加工効率を低下させてしまうことがある。
【0074】
本発明のポリエステルシートにおいて上述の動摩擦係数の好ましい範囲を満たすための方法は、特に限定されないが、例えば、前述の通り、シート中に無機粒子を含有させる方法、特に最外層に無機粒子を含有させる方法等を挙げることができる。
【0075】

本発明のポリエステルシートは、ヘイズが0.3%以上10%以下であることが好ましい。ヘイズが上記範囲であれば、このようなシートを用いてなる成形体は、内容物の視認性に優れ、商品として見栄えがよいなど、高い意匠性を有したシートあるいは容器として好ましく用いることができる。ヘイズが0.3%未満であれば、シートに傷がつきやすく、このようなシートを容器にした時に外観が悪くなってしまうことがあり、ヘイズが10%より大きいと透明性が不十分であり、実用化に際し、好ましくないことがある。本発明のポリエステルシートのヘイズは、より好ましくは0.3%以上8%以下、さらに好ましくは0.3%以上6%以下、最も好ましくは0.3%以上5%以下である。
【0076】

本発明のポリエステルシートに意匠性を付与するために、目的に応じて、ポリエステルシートの表層に、印刷層を形成することができる。印刷層は、インキとシートの接着性の観点からA層と直接積層することが好ましい。なお、A層の主体となるポリエステルは融点が存在しないポリエステルAなので、印刷層と本発明のポリエステルシートをより強固に接着させることができる。このようにすることで、本発明のポリエステルシートから接着性に優れたカードを得ることができる。つまり本発明のカードは、印刷層を有し、該印刷層がポリエステルシートのA層と直接積層されたことを特徴とする。
【0077】
印刷層は、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所望の印刷模様を印刷して形成されるものである。当該印刷層に使用するインキと本発明のシートの表層との接着性を良くするという観点から、表層に、空気、窒素、炭酸ガス雰囲気下でのコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を施しても構わない。印刷は、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の公知の各種印刷方法により形成することができる。また、印刷に使用するインキは、水性インキであっても、溶剤系インキ等の非水性インキのいずれであってもよい。印刷層の厚みは、特に制限はないが、印刷外観の観点から、0.1μm〜10μmである事が好ましく、より好ましくは0.2μm〜3μm、さらに好ましくは0.4μm〜1μmである。
【0078】

以下に本発明のポリエステルシートの製造方法の一例として、A層、B層がこの順に直接積層された本発明のポリエステルシートの製造方法について述べる。
【0079】
各々の押出機にA層、B層の原料である樹脂を溶融押出し、それぞれ金網メッシュによる異物除去、ギアポンプによる流量適性化を行った後、マルチマニホールド口金、または口金上部に設置したフィードブロックに供給する。なお、上記マルチマニホールド口金、またはフィードブロックには、必要なシートの層構成に応じて、所望の数、所望の形状の流路が設けられていることが重要である。各押出機から押し出された溶融樹脂は、上記の通りマルチマニホールド口金、またはフィードブロックにて合流せしめ、口金よりシート状に共押出される。当該シートは、エアナイフ、または静電印加等の方式により、キャスティングドラムに密着させ、冷却固化せしめて未延伸シートとする方法、または一対のキャスティングドラムとポリッシングロール間に吐出してキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸シートを作製するタッチロール方式による方法で製造することができる。
【0080】
ここで、ゲルや熱劣化物等の異物の混入による表面粗れを防ぐために、50〜400meshの金網meshを使用することが好ましい。
【0081】
本発明のポリエステルシートは成形性に優れるため、成形体として好適に使用することができる。つまり本発明の成形体は、本発明のポリエステルシートから得られる成形体である。ここで成形体とは、シートに対して打ち抜き加工、断裁加工、罫線加工、折り曲げ加工、熱成形加工を含む何らかの加工が施されて得られるものを意味する。
【0082】
本発明のポリエステルシートを用いて成形体を得るための成形法としては、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト成形、ストレート成形、フリードローイング成形、プラグアンドリング成形、スケルトン成形などの各種成形法を適用することができる。各種成形法におけるシート予熱方式としては、間接加熱方式と熱板直接加熱方式があり、間接加熱方式はシートから離れた位置に設置された加熱装置によってシートを予熱する方式であり、熱板直接加熱方式はシートと熱板が接触することによってシートを予熱する方式であるが、本発明のポリエステルシートは、間接加熱方式の真空成形加工、真空圧空成形加工、または熱板直接加熱方式の真空圧空成形加工に好ましく用いることができる。
【0083】
本発明のポリエステルシートは耐熱性、成形性に優れており、加えて環境負荷が低減されたものであることから、包装容器、各種電子・電気機器、OA 機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、遊戯具および雑貨などの各種用途の使用に有用である。その中でも特に好ましくは食品用の成形容器、飲料用カップ蓋などの耐熱性、成形性の要求される用途に好ましく用いることができる。さらに好ましくは、融点が存在しないポリエステルAを用いているため耐寒性、ヒートシール性、印刷性に優れるため、耐寒性が特に必要とされる冷蔵・冷凍食品包装用途、冷菓食品包装用途やヒートシール性が特に必要とされるクリアケース、クリアファイルや印刷性が特に必要とされるカード用途、ディスプレイ用ケース用途に好適に用いることができる。ここでのカードとは、IDカード、会員カード、キャッシュカード、クレジットカード、定期券、通行券などを意味する。そしてここでのディスプレイ用ケースとは、バックライト付き広告表示板や、タバコなどのディスプレイケース、飲料缶などのディスプレイ缶などを意味する。
【実施例】
【0084】
[物性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における物性の測定方法および効果の評価方法は下記の通りである。
【0085】
1.積層厚み比
シート幅方向のセンター部からサンプルを切り出した。エポキシ樹脂を用いた樹脂包埋法により、ウルトラミクロトームを用い、サンプル片の長手方向−厚み方向断面を観察面とするように−100℃で超薄切片を採取した。このシート断面の薄膜切片を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1,000倍(倍率は適宜調整可能)でシート断面写真を撮影し、各層の厚みを測定した。観察箇所を変えて、10箇所で測定を行い、得られた値の平均値を各層の厚み(μm)とし、各層の厚みからシートの積層厚み比を求めた。
【0086】

2.厚み
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B7503(1997)、PEACOCK製UPRIGHT DIAL GAUGE(0.001×2mm)、No.25、測定子5mmφ平型)を用いて、シートの長手方向および幅方向に10cm間隔で10点ずつ測定し、その平均値を当該シートの厚み(μm)とした。
【0087】

3.透明性:ヘイズ(%)
ヘイズメーターHGM−2DP型(スガ試験機社製)を用いて、シートのヘイズ値を測定した。なお、ヘイズ値を測定用のサンプルは、シート中心部から切り出した。測定は1サンプルにつき5回行い、5回の測定の平均値(平均へイズ)とした。
【0088】

4.耐衝撃性:インパクト(N・m/mm)
フィルムインパクトテスター(東洋精機製作所製)により、直径1/2インチの半球状衝撃頭を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下において、シートのインパクトの測定を行った。100mm×100mmにシートサンプルを作製し、測定は1サンプルにつき5回行った。さらに、1回毎のインパクト値を測定サンプル厚みで割り返し、単位厚みあたりのインパクトとし、5回の測定の平均値から求めた。サンプル厚みは、デジタル式マイクロメーターで測定した。
【0089】

5.貯蔵弾性率
シートを60mm(長手方向)×幅5mm(幅方向)、60mm(幅方向)×幅5mm(長手方向)の矩形に切り出しそれぞれを長手方向測定用のサンプル、幅方向測定用のサンプルとした。動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ製、DMS6100)を用い、下記の条件下で、長手方向、幅方向の100℃での貯蔵弾性率(E´)を求めた。
【0090】
周波数:10Hz、試長:20mm、最小荷重:約100mN、振幅:10μm、
測定温度範囲:−50℃〜200℃、昇温速度:5℃/分。
【0091】

6.DSC測定(融点、ガラス転移温度)
樹脂の融点、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121−1987及びJIS K7122−1987に準拠してDSC測定および、解析を行った。測定条件は、試料5mg、窒素雰囲気下、昇温速度が20℃/分、降温速度が20℃/分である。
【0092】
樹脂の融点は、吸熱ピークの頂点の温度とした。また、ガラス転移温度は、ガラス状態からゴム状態への転移に基づく比熱変化を読み取り、各ベースラインの延長した直線から縦軸(熱流を示す軸)方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の中間点の温度とした。なお、以下の条件で測定した。
【0093】
条件:DSC測定の際に、1回目の加熱工程で昇温速度20℃/分で30℃から300℃まで昇温した後、降温速度20℃/分で30℃まで冷却し、さらに2回目の加熱工程で昇温速度20℃/分で30℃から300℃まで昇温したときに融点、ガラス転移温度を測定する。
【0094】

7.固有粘度
固有粘度の測定は、150℃のオルト−クロロフェノールに0.12質量%の濃度で樹脂を溶解させた後、35℃の恒温槽においてウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて測定した。
【0095】

8.面配向度:Δ P(配向状態の判別)
王子計測機器( 株) 社製自動複屈折計K O B R A − 2 1 A D H を用いて、「材料」Vol.43, No.495, pp.1520-1524, Dec. 1994 に記載の条件に従い、シート状サンプルの3主軸方向に関する複屈折Δ x 、Δ y 、Δ zを求め、Δ x = γ − β 、Δ y = γ − α 、Δ z = α − β ( γ ≧ β 、α はシートの厚さ方向の屈折率) の関係より面配向度:Δ P を下記の式から求めた。
Δ P = { ( γ + β ) / 2 } − α
= ( Δ y − Δ z ) / 2
配向状態の判別
・配向 :面配向度:Δ Pが0.008より大きい。
・無配向 :面配向度:Δ Pが0以上0.008以下である。
【0096】

9.シートの耐熱性
シートの耐熱性は、図1のようにして測定した。つまり、シートを150mm(幅方向)×50mm(長手方向)に切り出し、耐熱性測定用のシートサンプルとした。また、幅方向に3分割となるようにマジックで線を引き、その真ん中の領域をシート中央部とした。支柱(50mm(横幅)×50mm(縦幅))の上に、両面テープを貼り、シート中央部の領域と支柱とが重なるように、シートを支柱に貼り付けた。シートを貼り付けた支柱を、100℃に設定したオーブンの中に入れて30分間保管した。その後、支柱の高さとシート両端の高さの差を読み取り、下記式の通り、撓み量とした。
【0097】
なお、右端の高さは、地面から長手方向の右端の中心までの高さとし、左端の高さは地面から長手方向の左端の中心までの高さとし、シート両端の高さは、右端の高さと左端の高さの平均値とした。オーブンでの保管前後の撓み量を比較し、シートの耐熱性を評価した。耐熱性の評価が5段階評価で2以上であると実用上問題なく使用可能である。
撓み量=支柱の高さ−シート両端の高さ
シートの耐熱性
5:オーブンでの保管前後の撓み量が2mm未満
4:オーブンでの保管前後の撓み量が2mm以上4mm未満
3:オーブンでの保管前後の撓み量が4mm以上7mm未満
2:オーブンでの保管前後の撓み量が7mm以上10mm未満
1:オーブンでの保管前後の撓み量が10mm以上

10.成形体作製、成形体の耐熱性評価、成形性評価
320mm(長手方向)×460mm(幅方向)の枚葉サンプルとし、開口部150mm×210mm、底面部105mm×196mm、高さ50mmのトレー状金型を備えた成光産業(株)製小型真空成形機フォーミング300X型を用いて、成形時のシート温度が115℃〜180℃の範囲になるような温度条件で予熱、成形を行った。
【0098】
得られた成形体を100℃設定の熱風オーブンに、成形体の底面部が上になるようにして30分間置き、成形体の耐熱性を高さ維持率で5段階評価した。なお成形体の高さは、成形体の底面部が上になるようにして置いて、成形体を真横から観察した際の底面部の高さと定めた。耐熱性のレベルが5段階評価で2以上であると実用上問題なく使用可能である。
【0099】
成形体の耐熱性
5:元の高さ(50mm)の98%以上100%以下
4:元の高さ(50mm)の96%以上98%未満
3:元の高さ(50mm)の93%以上96%未満
2:元の高さ(50mm)の90%以上93%未満
1:元の高さ(50mm)の90%未満

シートの成形性
5:シートがトレー状の成形体の底面部まで十分に追従するよう成形されており、該底面の中央部分のシート厚みが、元のフィルム厚みの40%より厚く保たれている。
4:シートがトレー状の成形体の底面部まで十分に追従するよう成形されているが、該底面の中央部分のシート厚みが、元のフィルム厚みの30%以上40%未満である。
3:シートがトレー状の成形体の底面部まで十分に追従するよう成形されているが、該底面の中央部分のシート厚みが、元のフィルム厚みの20%以上30%未満である。
2:シートがトレー状の成形体の底面部まで十分に追従するよう成形されているが、該底面の中央部分のシート厚みが、元のフィルム厚みの20%未満である。
1(成形不良):2〜5のいずれにも該当しない。
【0100】
シートの成形性は、トレー状の成形体を作製した際の底面部への追従性、及び底面の中央部分のシート厚みを測定することで評価した。成形性のレベルが5段階評価で2以上であると実用上問題なく成形可能である。
【0101】

11.ヒートシール性(ヒートシール強度測定)
ヒートシール機(TP−701S HEAT SEAL TESTER、TESTER SANGYO CO, LTD )を用いて、テフロン(登録商標)で被覆した加熱式の平面型上部シール固定具とガラスクロスで被覆した非加熱式の下部シール固定具の間に、297mm(長手方向)×幅210mm(幅方向)のサイズにカットしたサンプルをセットし、2.1kgf/cm、滞留時間1秒の条件にて、ヒートシール測定用のサンプルを作製した。シートは、所定のシール温度である80、90、100、110、120、130、140、150、160、170℃の各温度で、A層が最外層の態様もしくはA層/B層の態様の場合は、A層側同士でヒートシールし、B層が最外層の態様の場合は、B層側同士でヒートシールし、C層が最外層の態様の場合は、C層側同士でヒートシールし、それぞれの温度での最外層のシール強度を大英科学精機製作所製引張り試験機で測定した。(実施例1〜31、比較例2、3はA層側同士でヒートシールし、比較例1はB層側同士、比較例4、5はC層側同士でヒートシールした。)

剥離試験は、ヒートシールしたサンプルを25mm幅の短冊に切り出し、シールされていない二つの端部をインストロン試験機の上部と下部のクランプに取り付け、シールした端部をシールされていない二つの端部に対して90°の角度で支持し、90°の剥離試験を行った。
【0102】
剥離試験の条件は下記とした。剥離力曲線において、値を読み取ることでヒートシール強度とした。
・剥離試験機: 大英科学精機製作所製引張り試験機
・剥離角度: 90°
・剥離速度: 200mm/分
・チャート速度:20mm/分
・剥離方向: 長手方向
・サンプル幅: 25mm
同じサンプルについて3本の試験片を採取し、同様の測定を3回行った。得られた値の平均値をヒートシール強度(g/25mm)とした。
【0103】
ヒートシール性を以下の基準にて判断した。
○:いずれかの温度において200g/25mm以上のシール強度を達成できる。
×:いずれのシール温度においても200g/25mm以上のシール強度を達成できない。
【0104】

12.印刷性
東洋インキ(株)製ニトロセルロース製インキCCSTをグラビアロールでA層、またはB層の表面に印刷後、40℃、90%相対湿度雰囲気中に24時間放置後、セロテープ(登録商標)剥離テストを行った。(実施例1〜31、比較例2、3はA層に印刷を行い、比較例1はB層に印刷を行い、比較例4、5はC層に印刷を行った。)評価基準を次に示す。実用的には○以上であれば問題無く使用できる。
◎ : 全く剥離しない。
○ : 5%以上10%未満のインキ印刷部分がセロハンテープ側に剥離する。
×: 10%以上のインキ印刷部分がセロハンテープ側に剥離する。
【0105】

13.動摩擦係数:μd
JIS−K−7125(1999)に準じ、スリップテスター(東洋テスター工業社製)を用い、荷重200gとして、異なる面同士を合わせ、滑り出した後の安定領域での抵抗(μd:動摩擦係数)より以下の式を用いて値を求めた。
動摩擦係数:μd=抵抗値/荷重

14.シートの耐寒性(耐寒衝撃性):インパクト(N・m/mm)
フィルムインパクトテスター(東洋精機製作所製)により、直径1/2インチの半球状衝撃頭を用い、温度:−20℃、湿度65%RHの雰囲気下において、シートのインパクトの測定を行った。100mm×100mmにシートサンプルを作製し、測定は1サンプルにつき5回行った。さらに、1回毎のインパクト値を測定サンプル厚みで割り返し、単位厚みあたりのインパクトとし、5回の測定の平均値から求めた。サンプル厚みは、デジタル式マイクロメーターで測定した。
【0106】

15.層間密着性(層間密着強度測定)
ポリエステルシートと未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)の長手方向を揃えて、下記条件でドライラミネートした。
・CPP: 東レフィルム加工(株)製“トレファン”(登録商標)NO #60 ZK93KM
・接着剤: 東洋モートン(株)製AD503/cat10
・配合量: AD503/cat10/酢酸エチル=20/1/20質量部
・塗布: メタバー#12を使用し、CPPのコロナ処理面側に接着剤を塗布した。
・乾燥: 80℃、45秒
・ラミネート: 乾燥後、CPP上の塗布面を本発明のポリエステルシートのA層にラミネートした。
・硬化: 40℃、48時間
ドライラミネートによって得られたサンプルから、幅15mmの試験片を取り出し、下記条件で剥離試験を行った。剥離力曲線において、値を読み取ることで層間密着力を測定した。
・剥離試験機: 大英科学精機製作所製引張り試験機
・剥離角度: 180°
・剥離速度: 200mm/分
・チャート速度:20mm/分
・剥離方向: 長手方向
・サンプル幅: 15mm
同じサンプルについて3本の試験片を採取し、同様の測定を3回行った。得られた値の平均値を層間密着強度(g/15mm)とした。
【0107】
層間密着性を以下の基準にて判断した。
○:層間密着力が200g/15mm以上である、もしくは層間で剥離することが困難である。
×:層間密着力が200g/15mm未満である。
【0108】
本発明の製造例、実施例、比較例で用いた原料は下記の通りである。なお、製造例、実
施例、比較例では下記の略称で表記することがあり、以下、実施例9は参考例とする
【0109】
ポリエステルAとしては、A1−1、A1−2、A1−3、A2、A3、A1−1−MB、A2−MB、A3−MB、ポリエステルBとしては、B1、B2、その他ポリエステルとしては、C1、C2、回収原料としては、D1、D2、D3、D4、D5、D6を用いた。
【0110】
A1−1: ジカルボン酸成分:テレフタル酸成分=100モル%、グリコール成分:エチレングリコール成分/1,4−シクロヘキサンジメタノール成分/イソソルビド成分=22/46/32モル%、固有粘度=0.58dl/g、ガラス転移温度=120℃、融点=無し。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0111】
A1−2: ジカルボン酸成分:テレフタル酸成分=100モル%、グリコール成分:エチレングリコール成分/1,4−シクロヘキサンジメタノール成分/イソソルビド成分=28/48/24モル%、固有粘度=0.65dl/g、ガラス転移温度=110℃、融点=無し。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0112】
A1−3: ジカルボン酸成分:テレフタル酸成分=100モル%、グリコール成分:エチレングリコール成分/1,4−シクロヘキサンジメタノール成分/イソソルビド成分=20/36/44モル%、固有粘度=0.53dl/g、ガラス転移温度=145℃、融点=無し。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0113】
A2: ジカルボン酸成分:テレフタル酸成分=100モル%、グリコール成分:エチレングリコール成分/スピログリコール成分=55/45モル%、固有粘度=0.66dl/g、ガラス転移温度=112℃、融点=無し。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0114】
A3: ジカルボン酸成分:テレフタル酸成分=100モル%、グリコール成分:1,4−シクロヘキサンジメタノール成分/2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール成分=60/40モル%、固有粘度=0.70dl/g、ガラス転移温度=115℃、融点=無し。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0115】
B1: ジカルボン酸成分:テレフタル酸成分=100モル%、グリコール成分:エチレングリコール成分=100モル%、ガラス転移温度=78℃、融点=266℃。使用前には回転式真空乾燥機にて140℃で5時間乾燥した。
【0116】
B2: ジカルボン酸成分:テレフタル酸成分=100モル%、グリコール成分:エチレングリコール成分/1,4−シクロヘキサンジメタノール成分=67/33モル%、ガラス転移温度=82℃、融点=無し。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0117】

C1: ジカルボン酸成分:テレフタル酸成分=100モル%、グリコール成分:エチレングリコール成分/1,4−シクロヘキサンジメタノール成分/イソソルビド成分=62/6/32モル%、固有粘度=0.68dl/g、ガラス転移温度=122℃、融点=263℃。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0118】
C2: ジカルボン酸成分:ナフタレンジカルボン酸成分=100モル%、グリコール成分:エチレングリコール成分=100モル%、ガラス転移温度=120℃、融点=262℃。使用前には回転式真空乾燥機にて150℃で5時間乾燥した。
【0119】

A1−1−MB: 上記A1−1において、上記A1−1を95質量%と水澤化学工業(株)製のケイ酸アルミニウムである“シルトン”JC−20(平均粒径:2.0μm)を5質量%ブレンドして作製したチップをA1−1−MBとした。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0120】
A2−MB: 上記A2において、上記A2を95質量%と水澤化学工業(株)製のケイ酸アルミニウムである“シルトン”JC−20(平均粒径:2.0μm)を5質量%ブレンドして作製したチップをA2−MBとした。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0121】
A3−MB: 上記A3において、上記A3を95質量%と水澤化学工業(株)製のケイ酸アルミニウムである“シルトン”JC−20(平均粒径:2.0μm)を5質量%ブレンドして作製したチップをA3−MBとした。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0122】
D1: 後述する実施例1にて作製したシートの製膜工程で発生したシートの耳やスクラップシートを粉砕して得られたフレーク状物。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0123】
D2: 後述する実施例1にて作製したシートからなる成形体を作製する際に発生した屑(成形体の打ち抜き屑、スクラップ屑など)を粉砕して得られたフレーク状物。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0124】
D3: 後述する実施例4にて作製したシートの製膜工程で発生したシートの耳やスクラップシートを粉砕して得られたフレーク状物。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0125】
D4: 後述する実施例4にて作製したシートからなる成形体を作製する際に発生した屑(成形体の打ち抜き屑、スクラップ屑など)を粉砕して得られたフレーク状物。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0126】
D5: 後述する実施例5にて作製したシートの製膜工程で発生したシートの耳やスクラップシートを粉砕して得られたフレーク状物。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0127】
D6: 後述する実施例5にて作製したシートからなる成形体を作製する際に発生した屑(成形体の打ち抜き屑、スクラップ屑など)を粉砕して得られたフレーク状物。使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0128】

(実施例1)
ベント式押出機(1)に、A層の形成に用いる樹脂として、A1−1 100質量%を245℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させ、2種3層積層タイプのマルチマニホールド口金に供給した。また、ベント式押出機(2)に、B層の形成に用いる樹脂として、B1 100質量%を280℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、押出機(1)とは別の流路で、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させた後、口金温度を270℃に設定したTダイ口金より共押出し、互いに接する方向に回転し40℃に冷却した、一対のキャスティングドラムとポリッシングロール間に吐出してキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸シートを作製した後に、ワインダーにてシートを巻き取った。
【0129】
得られたシートは250μmであり、厚み構成は、A層/B層/A層=1/8/1であり、得られたシートは[物性の測定方法および効果の評価方法]の成形体作製部分に記載の方法にて成形体を作製した。
【0130】
得られたシート及び成形体の特性値は表に示した通りであり、シートは無配向であり、透明性、耐衝撃性、耐熱性、ヒートシール性、印刷性、耐寒性、層間密着性に優れ、また成形体作製時のシート予熱温度は125℃と低温であり、成形体の成形性、耐熱性は優れていた。
【0131】

(実施例2〜14、16〜31)
実施例2〜14、16〜31はA層の樹脂、B層の樹脂、押出機(1)の押出温度(℃)、押出機(2)の押出温度(℃)、口金温度(℃)、積層厚み比を表のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてシートおよび成形体を得た。得られたシートおよび成形体の物性を表に示した。
【0132】

(実施例15)
ベント式押出機(1)に、A層の形成に用いる樹脂として、A1−1 100質量%を245℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させ、2種2層積層タイプのマルチマニホールド口金に供給した。また、ベント式押出機(2)に、B層の形成に用いる樹脂として、B−1 100質量%を270℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、押出機(1)とは別の流路で、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させた後、口金温度を270℃に設定したTダイ口金より共押出し、互いに接する方向に回転し40℃に冷却した、一対のキャスティングドラムとポリッシングロール間に吐出してキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸シートを作製した後に、ワインダーにてシートを巻き取った。
【0133】
得られたシートは250μmであり、厚み構成は、A層/B層=2/8であり、得られたシートは[物性の測定方法および効果の評価方法]の成形体作製部分に記載の方法にて成形体を作製した。
【0134】
得られたシート及び成形体の特性値は表に示した通りである。
【0135】

(比較例1)
比較例1は、ベント式押出機(2)に、B層の形成に用いる樹脂として、B1 100質量%を280℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させ、単層タイプの口金に口金温度を280℃に設定したTダイ口金より共押出し、それぞれ40℃に冷却した、一対のキャスティングドラムとポリッシングロール間に吐出してキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸シートを作製した後に、ワインダーにてシートを巻き取った。
【0136】
得られたシートは250μmであり、また得られたシートは[物性の測定方法および効果の評価方法]の成形体作製部分に記載の方法にて成形体を作製した。
【0137】
得られたシート及び成形体の特性値は表に示した通りであり、シートの耐熱性、ヒートシール性、印刷性、耐寒性は劣っており、成形体作製時のシート予熱温度は115℃と低温にできるものの、成形体の耐熱性は劣っていた。
【0138】

(比較例2)
ベント式押出機(1)に、A層の形成に用いる樹脂として、A1−1 100質量%を245℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させ、単層タイプの口金に口金温度を245℃に設定したTダイ口金より共押出し、それぞれ40℃に冷却した、一対のキャスティングドラムとポリッシングロール間に吐出してキャスティングドラムに密着させ冷却固化した。
【0139】
得られた未延伸シートを、ロール延伸機にて85℃で長手方向に3倍に延伸し、直ちに室温に冷却した。次いで、得られた一軸延伸フィルムを、テンターに導入し、両エッジをクリップで把持しながら、90℃で幅方向に3.2倍延伸した後、200℃で熱固定し、冷却後、巻き取った。得られたシートは250μmであり、得られたシート、成形体の特性値は表に示した通りであり、二軸延伸されているため、シートは配向していた。得られたシートの剛性が高いため成形体を作製しようと試みたが成形不良となり、成形体を得ることができなかった。
【0140】

(比較例3)
ベント式押出機(1)に、A層の形成に用いる樹脂として、A1−1 100質量%を245℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させ、2種3層積層タイプのマルチマニホールド口金に供給した。また、ベント式押出機(2)に、B1 100質量%を280℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、押出機(1)とは別の流路で、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させた後、口金温度を270℃に設定したTダイ口金より共押出し、互いに接する方向に回転し40℃に冷却した、一対のキャスティングドラムとポリッシングロール間に吐出してキャスティングドラムに密着させ冷却固化した。
【0141】
得られた未延伸シートを、ロール延伸機にて85℃で長手方向に3倍に延伸し、直ちに室温に冷却した。次いで、得られた一軸延伸フィルムを、テンターに導入し、両エッジをクリップで把持しながら、90℃で幅方向に3.2倍延伸した後、220℃で熱固定し、冷却後、巻き取った。得られたシートは250μmであり、厚み構成は、A層/B層/A層=1/8/1であり、得られたシート、成形体の特性値は表に示した通りであり、二軸延伸されているため、シートは配向していた。得られたシートの剛性が高いため成形体を作製しようと試みたが成形不良となり、成形体を得ることができなかった。
【0142】
(比較例4)
ベント式押出機(1)に、C層の形成に用いる樹脂として、C1 100質量%を245℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させ、2種3層積層タイプのマルチマニホールド口金に供給した。(ここでのC層とはA層、B層とは別の層を意味する。)また、ベント式押出機(2)に、B層の形成に用いる樹脂として、B1 100質量%を280℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練しながら押出し、押出機(1)とは別の流路で、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させた後、口金温度を270℃に設定したTダイ口金より共押出し、互いに接する方向に回転し40℃に冷却した、一対のキャスティングドラムとポリッシングロール間に吐出してキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸シートを作製した後に、ワインダーにてシートを巻き取った。
【0143】
得られたシートは250μmであり、厚み構成は、C層/B層/C層=1/8/1であり、得られたシートは[物性の測定方法および効果の評価方法]の成形体作製部分に記載の方法にて成形体を作製した。
【0144】
得られたシート及び成形体の特性値は表に示した通りであり、シートの透明性、耐衝撃性、ヒートシール性、印刷性、耐寒性に劣り、また成形体作製時のシート予熱温度は155℃と高温であり、成形体の成形性は劣っていた。
【0145】

(比較例5)
比較例5はC層の樹脂、押出機(1)の押出温度(℃)、口金温度(℃)を表のとおりに変更した以外は、比較例4と同様にしてシートおよび成形体を得た。得られたシート及び成形体の特性値は表に示した通りであり、シートの透明性、耐衝撃性、ヒートシール性、印刷性、耐寒性に劣り、また成形体作製時のシート予熱温度は160℃と高温であり、成形体の成形性は劣っていた。
【0146】
【表1-1】
【0147】
【表1-2】
【0148】
【表1-3】
【0149】
【表1-4】
【0150】
【表1-5】
【0151】
表において、積層厚み比の欄で記すAとは、A層を意味し、BとはB層を意味し、CとはC層を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明のポリエステルシートは耐熱性、透明性、成形性、耐寒性、ヒートシール性、印刷性に優れ、加えて環境負荷が低減されたものであることから、包装容器、各種電子・電気機器、OA 機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、遊戯具および雑貨などの各種用途の使用に有用である。その中でも特に好ましくは食品用の成形容器、飲料用カップ蓋などの耐熱性、透明性、成形性の要求される用途に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0153】
1 シート中央部
2 シート
3 支柱
4 シート幅方向
5 シート長手方向
6 右端の高さ(地面から長手方向中心までの高さ)
7 左端の高さ(地面から長手方向中心までの高さ)
8 支柱の高さ
9 シート長手方向の右端の中心
10 シート長手方向の左端の中心
11 支柱の横幅
12 支柱の縦幅
図1