特許第6307897号(P6307897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6307897シート状絶縁体、絶縁構造およびシート状絶縁体取付け方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307897
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】シート状絶縁体、絶縁構造およびシート状絶縁体取付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/08 20060101AFI20180402BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20180402BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   F16B21/08
   F16B5/07 K
   H01B17/56 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-12890(P2014-12890)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-140828(P2015-140828A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 祐二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 有
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−008481(JP,A)
【文献】 実開昭54−100501(JP,U)
【文献】 特開昭60−085928(JP,A)
【文献】 実開昭58−060074(JP,U)
【文献】 特開2003−097790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00− 5/12
F16B 21/08
H01B 17/56−19/04
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された導電体間に取り付けて前記導電体間を絶縁するシート状絶縁体であって、
主絶縁部と、該主絶縁部の下部に突出形成されて前記基板に設けた脚部挿入孔に挿入される第1,第2脚部と、前記主絶縁部の一部を主絶縁部の厚さ方向へ突出させる伸縮部と、を備え
前記伸縮部は、前記主絶縁部に複数の折り曲げ部を設けることにより形成され上端側に少なくとも1以上の切込部を備えており、前記切込部は、前記主絶縁部に形成された折り曲げ部の上端に形成されていることを特徴とすシート状絶縁体。
【請求項2】
基板上に配置された導電体間に取り付けて前記導電体間を絶縁するシート状絶縁体であって、
主絶縁部と、該主絶縁部の下部に突出形成されて前記基板に設けた脚部挿入孔に挿入される第1,第2脚部と、前記主絶縁部の一部を主絶縁部の厚さ方向へ突出させる伸縮部と、を備え
前記伸縮部は、前記主絶縁部に形成された第1折り曲げ部と、該第1折り曲げ部の両側部に形成された第2,第3折り曲げ部によって、平面視略V字状に形成され上端側に少なくとも1以上の切込部を備えており、前記切込部は、前記主絶縁部に形成された折り曲げ部の上端に形成されていることを特徴とすシート状絶縁体。
【請求項3】
前記切込部は、前記主絶縁部の幅方向の中央部に形成された第1折り曲げ部の上端に形成されていることを特徴とする請求項に記載のシート状絶縁体。
【請求項4】
前記第1,第2脚部は、前記脚部挿入孔への挿入完了時に前記基板に係合する抜け防止用突部を備えていることを特徴とする請求項1からのいずれか1つに記載のシート状絶縁体。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載のシート状絶縁体を使用し、該シート状絶縁体を基板上に起立させて取り付けて、該基板上の導電体間を絶縁する絶縁構造であって、
前記基板は、前記第1脚部と第2脚部を挿入する脚部挿入孔と、を備えていることを特徴とする絶縁構造。
【請求項6】
前記脚部挿入孔は、前記第1脚部を挿入する第1脚部挿入孔と、第2脚部を挿入する第2脚部挿入孔と、で構成されていることを特徴とする請求項に記載の絶縁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ等の締結具を使用しないで基板上に立てて取り付けることのできるシート状絶縁体、該シート状絶縁体を使用した絶縁構造およびシート状絶縁体取付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁体で隔離することなく電気的絶縁を確保するためには、絶縁距離、すなわち空間距離と沿面距離の双方を確保する必要がある。空間距離(clearance)は、2つの導体体間の空間を通る最短距離であり、沿面距離(creepage distance)は、2つの導電性部分間の、絶縁体の表面に沿った最短距離である。
【0003】
図17は、2つの導電体101,102間に絶縁体が存在しない場合の空間距離Cの経路を示し、図18は、2つの導電体101,102間に絶縁体103が存在する場合の空間距離Cの経路を示す。
【0004】
また、図19は、2つの導電体101,102間に絶縁体が存在しない場合の沿面距離Dの経路を示し、図20は、2つの導電体101,102間に絶縁体103が存在する場合の沿面距離Dの経路を示す。
【0005】
上記絶縁距離(空間距離と沿面距離)に関する先行技術文献としては、例えば特許文献1〜3等が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−33709号公報
【特許文献2】実公昭62−40414号公報
【特許文献3】特開平11−8481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図21に示すように、プリント基板等の絶縁材料からなる基板100の部品取り付け面100aに、例えば端子や配線等の2つの導電体101,102を配置する場合に、これら2つの導電体101,102間に絶縁体がないと、空間距離および沿面距離からなる絶縁距離を確保するためには、少なくとも2つの導電体101,102間に放電を起こさないだけの距離を確保する必要があり、機器の小型化の障害となる。
【0008】
そこで、図22図23に示すように、2つの導電体101,102間に絶縁材料からなる壁状の絶縁体103を取り付けることで、絶縁距離を確保し、2つの導電体101,102間の距離を短くする方法が採られている。
【0009】
図22は、絶縁体103を、絶縁紙のように薄くてフレキシブルで変形し易い絶縁材料で形成し、且つ前記絶縁体103を、ネジやボルト等の締結体110により一方の導電体102等に固定した場合を示す。絶縁体103は、傾斜や変形を抑制するために、直角に折り曲げられていて、一方の辺103aがネジやボルト等の締結体110により導電体102に固定され、他方の辺103bの先端が基板100に形成した長孔100bに挿入されている。この場合には、導電体101に、絶縁体103の一方の辺103aをネジやボルト等の締結体110で固定するためのネジ穴等を一方の導電体102等に形成する必要があるとともに、基板100には絶縁体103の他方の辺103bの先端部を挿入する長孔100bを形成する必要がある。長孔100bの代わりに絶縁体103の他方の辺103bを基板100にネジやボルト等の締結体で固定してもよいがこの場合には、基板100にネジ穴を形成しなければならない。
【0010】
また、図23は、絶縁体103を基板100上に自立させて取り付ける場合を示す。この場合は、矩形状の絶縁体103に一対の脚部104,105を設け、これら脚部104,105の下端部に係止爪片106を設けて楔状或いは鍵状に形成して、基板100に形成した脚部挿入孔107,108に嵌合係止するものが開発されている。(例えば特許文献3)。
【0011】
この場合には、絶縁体103の肉厚が薄いと基板100上で絶縁体103が倒れて傾斜し易い。このため絶縁体103は、脚部104,105を脚部挿入孔107,108に嵌合係止したときに倒れずに自立可能な硬度と厚さを有する素材で形成する必要がある。絶縁体103が絶縁紙のように薄くてフレキシブルで変形し易い絶縁材料からなる場合には、絶縁体103を基板100上に自立させた状態で安定的に取り付けるのが困難であった。
【0012】
本発明は、薄くても安定的に基板に取り付けることのできるシート状絶縁体、該シート状絶縁体を使用した絶縁構造、およびシート状絶縁体を基板に取り付けるシート状絶縁体取付け方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のシート状絶縁体は、基板上に配置された導電体間に取り付けて前記導電体間を絶縁するシート状絶縁体であって、
主絶縁部と、該主絶縁部の下部に突出形成されて前記基板に設けた脚部挿入孔に挿入される第1,第2脚部と、前記主絶縁部の一部を主絶縁部の厚さ方向へ突出させる伸縮部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、シート状絶縁体を、主絶縁部と、該主絶縁部の下部に突出形成されて前記基板に設けた脚部挿入孔に挿入される第1,第2脚部と、前記主絶縁部の一部を主絶縁部の厚さ方向へ突出させる伸縮部と、を設けたので、前記主絶縁部の厚さが薄いものであっても、前記伸縮部の存在によりシート状絶縁体を基板上に安定した状態で取り付けることができる。
【0015】
また、前記伸縮部を圧縮して第1,第2脚部の間隔を縮小して、これら第1,第2脚部を脚部挿入孔内に挿入した後に、圧縮を解除すれば、第1,第2脚部は、元の状態に伸長し、前記基板に係合して、シート状絶縁体は基板上に立設されるので、ボルトやネジ等の締結具を使用することなく、簡単容易にシート状絶縁体を基板に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のシート状絶縁体の斜視図。
図2】同シート状絶縁体の正面図。
図3】同シート状絶縁体の平面図。
図4】絶縁構造の平面図。
図5】絶縁構造の正面図。
図6】基板の平面図。
図7】基板の正面図。
図8】模式図化したシート状絶縁体の正面図。
図9】(A)、(B)、(C)は、シート状絶縁体取付け方法の第1例を示す説明図。
図10】シート状絶縁体取付け方法の第2例を示す説明図。
図11】第2実施形態のシート状絶縁体の斜視図。
図12】第2実施形態のシート状絶縁体の正面図。
図13】第2実施形態のシート状絶縁体の平面図。
図14】第2実施形態のシート状絶縁体の効果を示す説明図。
図15】第2例の方法で狭いスペースにシート状絶縁体を取り付けた状態を示す平面図。
図16】同側面図。
図17】2つの導電体間に絶縁体が存在しない場合の空間距離Cの経路を示す説明図。
図18】2つの導電体間に絶縁体が存在する場合の空間距離Cの経路を示す説明図。
図19】2つの導電体間に絶縁体が存在しない場合の沿面距離Dの経路を示す説明図。
図20】2つの導電体間に絶縁体が存在する場合の沿面距離Dの経路を示す説明図。
図21】(A)は2つの導電体間に絶縁体を配置しない場合を示す平面図、(B)は同正面図。
図22】(A)は2つの導電体間に絶縁体を設けた一例を示す平面図、(B)は同正面図。
図23】絶縁体の他の従来例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1図3は、第1実施形態のシート状絶縁体1を示し、図1はシート状絶縁体1の斜視図、図2は正面図、図3は平面図である。シート状絶縁体1は、後に説明する絶縁基板12上に配置された導電体13,14間に起立させて取り付けて前記導電体13,14間を絶縁する絶縁構造11に使用される。(図4図5参照)。
【0018】
図2に示すように、シート状絶縁体1は、幅W1、高さH1の矩形状の主絶縁部2(下端を破線2aで示す)と、該主絶縁部2の下部に突出形成されて前記絶縁基板12に設けた第1脚部挿入孔15(図6参照)に挿入される第1脚部3と、第2脚部挿入孔16に挿入される第2脚部4と、前記主絶縁部2の一部を主絶縁部肉厚方向へ突出させることにより形成された伸縮部6と、を備えている。
【0019】
前記第1脚部3,第2脚部4には、これら第1脚部3,第2脚部4を第1脚部挿入孔15,第2脚部挿入孔16に挿入したときに前記基板12の下面に係合して、第1脚部3,第2脚部4が第1脚部挿入孔15,第2脚部挿入孔16から抜け出るのを防止する抜け防止用突部5を備えている。
【0020】
前記伸縮部6は、前記主絶縁部2の幅方向の中央部に形成された第1折り曲げ部6aと、該第1折り曲げ部6aの両側部に形成された第2折り曲げ部6bと、第3折り曲げ部6cによって、平面視略V字状に形成されている。
【0021】
シート状絶縁体1の主絶縁部2、第1脚部3,第2脚部4、抜け防止用突部5は、一枚の板材を所定の形状に打ち抜き、且つ主絶縁部2の中央部を第1〜第3折り曲げ部6a〜6cで所定の角度θに折り曲げることにより形成されている。
【0022】
シート状絶縁体1は、幅方向の圧縮力を加えない状態において、幅W1に保たれる。そして、シート状絶縁体1に圧縮力を加えると、前記第1折り曲げ部6a〜第3折り曲げ部6cにおいて更に折り曲げられ、伸縮部6が圧縮されて、シート状絶縁体1の幅W1が縮小する。
【0023】
シート状絶縁体1の主絶縁部2や第1脚部3,第2脚部4、抜け防止用突部5の大きさ、形状等は後に説明する基板12に形成した第1脚部挿入孔15や第2脚部挿入孔16の長さや基板12の肉厚T等に合わせて形成される。
【0024】
シート状絶縁体1の材質としては、シート状に形成できるものであればなんでも適用できるが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET、塩化ビニル等のプラスチックシートや絶縁紙等が適用される。図1図3に示す第1実施形態においては、厚さ0.2〜0.8mmの絶縁紙を用いた。絶縁紙を用いると特別な加工治具を用いなくても伸縮部6を折り曲げ加工することができる。
【0025】
絶縁紙としては、パルプを主成分とする絶縁紙、ポリエステルフィルムやPETフィルムを接着した絶縁紙等があり、いずれの絶縁紙を用いて絶縁効果を得ることができる。
【0026】
より好ましくは、アラミド(全芳香族ポリアミド)ポリマーから作られた絶縁紙であることが望ましい。アラミド(全芳香族ポリアミド)ポリマーから作られた絶縁紙を使用すると、アラミドの持つ高温での耐久性、機械的及び電気的特性により優れた絶縁構造が実現できるという効果がある。
【0027】
さらには、アラミド(全芳香族ポリアミド)ポリマーから作られた絶縁紙の中でも、デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社製の絶縁紙であるノーメックス(登録商標)のタイプ410、タイプ411、タイプ414、タイプ418のいずれかであることが望ましい。
【0028】
これらのノーメックス紙は、UL規格では、220℃での連続使用が認められており、ノーメックス紙を使用することにより、絶縁距離の確保はもとより、他の絶縁紙を使用した場合に比べて、高温での信頼性が得られる。
【0029】
なお、上記実施形態においては、前記伸縮部6を、前記主絶縁部2を3箇所で折り曲げて、V字状に形成した場合を示したが、折り曲げ部の数を増やして伸縮部6をW状に形成しても、或いは更に折り曲げ部の数を増やしてより多段な蛇腹状に形成してもよい。また、前記伸縮部6は、前記主絶縁部2の一側面側だけに突出させるだけでなく、他側面側にも突出する所謂ジグザグ状に形成しても良い。ジグザグ状に形成することにシート状絶縁体1をより安定した状態で基板12上に取り付けることができる。
【0030】
図4図5は、前記シート状絶縁体1を使用した絶縁構造11を略示的に示す平面図と正面図である。
【0031】
本発明の絶縁構造11は、前記シート状絶縁体1を基板12上に配置した導電体13,14間に起立させて取り付けることにより形成されている。
【0032】
図6図7は、シート状絶縁体1を取り外した状態の基板12の略示的平面図と同正面図である。図6に示すように、基板12の導電体13,14間には第1脚部挿入孔15と第2脚部挿入孔16が形成されている。
【0033】
第1脚部挿入孔15は、長さL1の長孔状に形成され、第2脚部挿入孔16は、長さL2の長孔状に形成されている。第1脚部挿入孔15と第2脚部挿入孔16は、一直線状に長さL3にわたって形成されている。また、図7に示すように、基板12は、肉厚Tに形成されている。
【0034】
図8は、伸縮部6を伸長させた状態(圧縮力を加えない状態)のシート状絶縁体1の略示的な正面図を示す。伸縮部6を構成する第1折り曲げ部6a〜第3折り曲げ部6cの内の中央部の第1折り曲げ部6aが前記主絶縁部2の中央部に位置している。前記第1脚部3,第2脚部4および抜け防止用突部5は、第1折り曲げ部6aを中心にして左右対称位置に配置されている。
【0035】
第1脚部3の抜け防止用突部5の先端から第2脚部4の抜け防止用突部5の先端までの幅W2は、前記基板12に形成された第1脚部挿入孔15と第2脚部挿入孔16が成す長さL3よりも大(W2>L3)に形成されている。
【0036】
抜け防止用突部5を含む第1脚部3の幅W3は、前記第1脚部挿入孔15の長さL1と略同じ値に形成されている。また、抜け防止用突部5を含む第2脚部4の幅W4は、前記第2脚部挿入孔16の長さL2と略同じ値に形成されている。
【0037】
また、主絶縁部2と脚部3,4の境界を示す破線2a部分と、抜け防止用突部5の上面5bとの間には段差Eが形成されている。段差Eは、前記基板12の肉厚Tと略同じ値に形成されている。
【0038】
図9(A)〜図9(C)は、シート状絶縁体取付け方法の第1例を示す。図9(A)は、基板12の第1脚部挿入孔15、第2脚部挿入孔16上にシート状絶縁体1を重ねた状態を示す。この状態においては、シート状絶縁体1の第1脚部3の抜け防止用突部5の先端から第2脚部4の抜け防止用突部5の先端までの幅W2は、前記基板12に形成された第1脚部挿入孔15と第2脚部挿入孔16が成す長さL3よりも大(W2>L3)になっているために、シート状絶縁体1を基板12に向けて垂直方向に移動させても第1脚部3、第2脚部4を第1脚部挿入孔15、第2脚部挿入孔16に挿入することはできない。
【0039】
そこで、図9(B)に示すように、シート状絶縁体1に圧縮力P1を加えて前記伸縮部6を圧縮して、シート状絶縁体1の幅W2を、前記長さL3に縮めて、第1脚部3、第2脚部4を第1脚部挿入孔15、第2脚部挿入孔16の真上に位置させる。
【0040】
そして、図9(C)に示すように、第1脚部3、第2脚部4を第1脚部挿入孔15、第2脚部挿入孔16に挿入して、圧縮力P1を解除すれば、前記伸縮部6の復元力P2によって、シート状絶縁体1は、幅W2に伸長して、第1脚部3、第2脚部4の抜け防止用突部5が基板12の下面に係合して、シート状絶縁体1は、基板12に取り付けられるとともに、第1脚部挿入孔15、第2脚部挿入孔16からの抜けを抑制された状態になる。
【0041】
前記第1例のシート状絶縁体取付け方法は、左右両方の手等で伸縮部6を圧縮しながらシート状絶縁体1を基板12に取り付けなければならない。このため、図7に示すように、導電体13,14間に広いスペースSを必要とする。
【0042】
図10は、導電体13,14間に広いスペースSを必要としない第2例のシート状絶縁体取付け方法を示す。
【0043】
第2例のシート状絶縁体取付け方法においては、先ず、シート状絶縁体1の一端部1aを摘んで、第1脚部3の抜け防止用突部5を第1脚部挿入孔15に挿入する。そして、第1脚部挿入孔15のコーナー部20等を支点としてシート状絶縁体1の一端部1aを指先等で矢頭A方向に回動させて、第2脚部4及び抜け防止用突部5を第2脚部挿入孔16に挿入して、シート状絶縁体1を基板12に取り付ける。
【0044】
この方法は、図7に示した導電体13,14間のスペースSが狭い場合にも採用することができるが、シート状絶縁体1を撓ませて第2脚部4及び抜け防止用突部5を円滑に第2脚部挿入孔16に挿入するのが難しかった。
【0045】
図11図13は、第2例のシート状絶縁体取付け方法の採用を容易にした2実施形態のシート状絶縁体1Aを示す。図11はシート状絶縁体1Aの斜視図、図12は正面図、図13は平面図である。
【0046】
第1実施形態のシート状絶縁体1と第2実施形態のシート状絶縁体1Aの相違点は、第2実施形態のシート状絶縁体1Aにおいては、伸縮部6の上端側に切込部7を形成し、該切込部7によりシート状絶縁体1Aを撓ませ易くしたことにある。他の構成は、第1実施形態のシート状絶縁体1と同じであるので同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
前記切込部7は、シート状絶縁体1Aの幅方向の中央部の第1折り曲げ部6aの上端部をV字状に切り欠くことにより形成されている。
【0048】
第2実施形態のシート状絶縁体1Aは、伸縮部6の上端側に切込部7を形成したので、前記第2例のシート状絶縁体取付け方法に使用すると、図14に示すように、該切込部7の存在によりシート状絶縁体1Aは比較的容易に撓んで、第2脚部4及び抜け防止用突部5を円滑に第2脚部挿入孔16に挿入することができる。
【0049】
上述したように、実施例においては、切込部7を、シート状絶縁体1Aの第2折り曲げ部6bの上端部をV字状に切り欠くことにより形成した場合を示したが、切込部7の形状は、U字状やその他の形状であっても良いし、単なるスリットであっても良い。切込部7は、第1折り曲げ部6aに限定されず、第2折り曲げ部6bや第3折り曲げ部6cに形成しても良いし、折り曲げ部以外の場所に形成しても良い。また、切込部7は、折り曲げ部の下端部に形成しても良い。
【0050】
なお、上記実施の形態においては、第1脚部挿入孔15と第2脚部挿入孔16の2つの脚部挿入孔を設ける構成にしたが、これら2つの脚部挿入孔を合体させて1つの脚部挿入孔として構成しても良い。
【0051】
図15図16は、導電体として銅製のサドルクランプ21,22を用い、入出力間を銅製のショートバー23をネジ止め24して短絡した3相の絶縁構造を示す。各相の間にはシート状絶縁体1が取り付けられている。
【0052】
図15に示すように、各相の間の間隔Gは狭いので、間隔Gが広い場合に比べてシート状絶縁体1を取り付け難い。また、上記間隔Gが狭いと伸縮部6を圧縮させる場合に支障を来たす場合がある。(伸縮部6を圧縮させると、該伸縮部6の厚みが増大するため、上記間隔Gが狭いと伸縮部6がサドルクランプ21,22やショートバー23等に当接して伸縮部6を圧縮させることができないことがある)。
【0053】
このような場合には、図10に示した方法が用いられる。この方法によれば、第1脚部3及び抜け防止用突部5を第1脚部挿入孔15に挿入し、第1脚部3と抜け防止用突部5のコーナー部20を支点としてシート状絶縁体1を矢頭A方向に回動させながら、第2脚部4及び抜け防止用突部5が第2脚部挿入孔16に挿入するので、各相の間の間隔Gが狭い場合でも比較的容易にシート状絶縁体1を基板12に取り付けることができる。
【0054】
このような3相の絶縁構造において、図16に示すように、シート状絶縁体1の第1脚部3と第2脚部4は、基板12の下面側に突出しているので、そのぶん絶縁距離を長くすることができるが、第1脚部3と第2脚部4の間は、脚部3,4が存在せず、シート状絶縁体1の下端1bと基板12の上面との間に隙間δが存在するため、絶縁距離が減少するが、上述したように、ショートバー23は、サドルクランプ21,22に取り付けられていて、空中に浮いた状態になっているので、そのぶん絶縁距離を長くして、絶縁距離が不足しないようにすることができる。また、ショートバー23の両端も、絶縁距離が不足しないように、シート状絶縁体1の張り出し寸法が配慮されて設計になっている。
【符号の説明】
【0055】
1…シート状絶縁体
2…シート状絶縁体の主絶縁部
3…第1脚部
4…第2脚部
5…抜け防止用突部
6…伸縮部
7…切込部
11…絶縁構造
12…基板
13,14…導電体
15…第1脚部挿入孔
16…第2脚部挿入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23