(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307923
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】点灯装置および照明器具
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20180402BHJP
H05B 37/02 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 K
H05B37/02 J
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-31947(P2014-31947)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-159635(P2015-159635A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】福田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 陽
(72)【発明者】
【氏名】坂下 友一
(72)【発明者】
【氏名】石黒 義章
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−027895(JP,A)
【文献】
特開2002−354783(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0088210(US,A1)
【文献】
米国特許第06650100(US,B1)
【文献】
特開2012−029361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流回路と、
前記整流回路の出力端子に接続する第1端子を備えた第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続するインダクタと、前記インダクタの他端に接続する第1端子および抵抗を介して接地される第2端子を有する第2スイッチング素子と、を備えたHブリッジ回路と、
前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、
一端が前記第1スイッチング素子の前記第2端子と接続し他端が前記第1駆動回路に接続したコンデンサと、
前記コンデンサの前記他端に制御電源電圧を与える制御電源と、
接地電位と前記第1スイッチング素子の前記第1端子との間の電気的接続を、接続状態と遮断状態に切替可能なスイッチ回路と、
を備える点灯装置。
【請求項2】
前記スイッチ回路は、前記整流回路で整流した電圧が少なくとも前記制御電源電圧以下であるときに前記接続状態を維持する請求項1に記載の点灯装置。
【請求項3】
前記スイッチ回路は、前記整流回路で整流した電圧が前記制御電源電圧以下であるときに前記接続状態を維持し、前記整流回路で整流した電圧が前記制御電源電圧を上回るときは前記遮断状態を維持する請求項2に記載の点灯装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子をオンオフしかつ前記第2スイッチング素子をオフに維持する降圧モードを有し、
前記スイッチ回路は、前記降圧モードの起動時に、前記整流回路で整流した電圧と前記制御電源電圧の大小関係に応じて、前記接続状態の維持および前記遮断状態の維持を複数回交互に繰り返す請求項1〜3のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項5】
前記整流回路と前記第1スイッチング素子の前記第1端子との間に一端が接続し、前記整流回路で整流した電圧を平滑化する平滑コンデンサを備え、
前記スイッチ回路は、前記整流回路に入力される交流電圧を検出する電圧検出回路を含み、前記交流電圧の絶対値が前記制御電源電圧以下であるときに前記接続状態を維持する請求項1〜4のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項6】
整流回路と、
前記整流回路の出力端子に接続する第1端子を備えた第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続するインダクタと、前記インダクタの他端に接続する第1端子および抵抗を介して接地される第2端子を有する第2スイッチング素子と、を備えたHブリッジ回路と、
前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路および前記第2スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、
一端が前記第1スイッチング素子の前記第2端子と接続し他端が前記第1駆動回路に接続したコンデンサと、
前記コンデンサの前記他端に制御電源電圧を与える制御電源と、
前記第1スイッチング素子をオンに維持しかつ前記第2スイッチング素子をオンオフする昇圧モードを有し、負荷が小さいほど狭く設定される第1オン幅を有する制御信号を供給することにより前記第2スイッチング素子のオンオフを行う制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記昇圧モード中に前記第1オン幅よりも長いオン維持期間を前記制御信号の間に割り込ませる充電動作を実行可能である点灯装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記オン維持期間に前記第1スイッチング素子をオフに維持する請求項6に記載の点灯装置。
【請求項8】
前記充電動作は、前記整流回路で整流した電圧が前記制御電源電圧以下であるとき前記第2スイッチング素子をオンとする請求項6または7に記載の点灯装置。
【請求項9】
前記制御回路は、前記負荷の大きさに基づいて前記充電動作の実行と停止を切り替える請求項6〜8のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項10】
発光素子と、
前記発光素子を点灯させる点灯装置と、
を備え、
前記点灯装置は、
整流回路と、
前記整流回路の出力端子に接続する第1端子を備えた第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続するインダクタと、前記インダクタの他端に接続する第1端子および抵抗を介して接地される第2端子を有する第2スイッチング素子と、を備えたHブリッジ回路と、
前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、
一端が前記第1スイッチング素子の前記第2端子と接続し他端が前記第1駆動回路に接続したコンデンサと、
前記コンデンサの前記他端に制御電源電圧を与える制御電源と、
接地電位と前記第1スイッチング素子の前記第1端子との間の電気的接続を、接続状態と遮断状態に切替可能なスイッチ回路と、
を備える照明器具。
【請求項11】
発光素子と、
前記発光素子を点灯させる点灯装置と、
を備え、
前記点灯装置は、
整流回路と、
前記整流回路の出力端子に接続する第1端子を備えた第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続するインダクタと、前記インダクタの他端に接続する第1端子および抵抗を介して接地される第2端子を有する第2スイッチング素子と、を備えたHブリッジ回路と、
前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路および前記第2スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、
一端が前記第1スイッチング素子の前記第2端子と接続し他端が前記第1駆動回路に接続したコンデンサと、
前記コンデンサの前記他端に制御電源電圧を与える制御電源と、
前記第1スイッチング素子をオンに維持しかつ前記第2スイッチング素子をオンオフする昇圧モードを有し、負荷が小さいほど狭く設定される第1オン幅を有する制御信号を供給することにより前記第2スイッチング素子のオンオフを行う制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記昇圧モード中に前記第1オン幅よりも長いオン維持期間を前記制御信号の間に割り込ませる充電動作を実行可能である照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯装置および照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2011−67011号公報に開示されているように、複数のスイッチング素子それぞれに対してオン維持、オフ維持、或いはオンオフ制御を行わせることにより昇圧モード(昇圧チョッパ)と降圧モード(降圧チョッパ)を使い分けることができる点灯装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−67011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、従来知られているコンバータ回路の一つであるHブリッジ回路を点灯装置に応用する技術開発を行ってきた。典型的なHブリッジ回路ではハイサイドとローサイドにそれぞれスイッチング素子が設けられており、これらのスイッチング素子をそれぞれ制御することで、昇圧、降圧、および昇降圧の3モードを使い分けることができる。ハイサイドのスイッチング素子を駆動する駆動回路に電源を供給する必要があり、そのために電源用コンデンサを設けることが考えられる。この電源用コンデンサは、ハイサイドスイッチング素子の低電圧側端子(例えばソース)に一端が接続し、他端が制御電源に接続される。ローサイドのスイッチング素子がオンとなる期間はこのコンデンサを充電することができる。しかし、ローサイドのスイッチング素子がオフに維持される動作モードの場合、あるいは軽負荷時にローサイドのスイッチング素子のオン期間が非常に短くなる場合にはこのコンデンサの電荷が不足してしまい、駆動回路の電源が不足するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、Hブリッジ回路においてハイサイドのスイッチング素子を駆動する駆動回路の電源が不足することを抑制することのできる点灯装置および照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる点灯装置は、整流回路と、前記整流回路の出力端子に接続する第1端子を備えた第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続するインダクタと、前記インダクタの他端に接続する第1端子および抵抗を介して接地される第2端子を有する第2スイッチング素子と、を備えたHブリッジ回路と、前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、一端が前記第1スイッチング素子の前記第2端子と接続し他端が前記第1駆動回路に接続したコンデンサと、前記コンデンサの前記
他端に制御電源電圧を与える制御電源と、接地電位と前記第1スイッチング素子の前記第1端子との間の電気的接続を、接続状態と遮断状態に切替可能なスイッチ回路と、を備える。
【0007】
第2の発明にかかる点灯装置は、整流回路と、前記整流回路の出力端子に接続する第1端子を備えた第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続するインダクタと、前記インダクタの他端に接続する第1端子および抵抗を介して接地される第2端子を有する第2スイッチング素子と、を備えたHブリッジ回路と、前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路および前記第2スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、一端が前記第1スイッチング素子の前記第2端子と接続し他端が前記第1駆動回路に接続したコンデンサと、前記コンデンサの前記
他端に制御電源電圧を与える制御電源と、前記第1スイッチング素子をオンに維持しかつ前記第2スイッチング素子をオンオフする昇圧モードを有し、負荷が小さいほど狭く設定される第1オン幅を有する制御信号を供給することにより前記第2スイッチング素子のオンオフを行う制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記昇圧モード中に前記第1オン幅よりも長いオン維持期間を前記制御信号の間に割り込ませる充電動作を実行可能である。
【0008】
第3の発明にかかる照明器具は、発光素子と、前記発光素子を点灯させる点灯装置と、を備え、前記点灯装置は、整流回路と、前記整流回路の出力端子に接続する第1端子を備えた第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続するインダクタと、前記インダクタの他端に接続する第1端子および抵抗を介して接地される第2端子を有する第2スイッチング素子と、を備えたHブリッジ回路と、前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、一端が前記第1スイッチング素子の前記第2端子と接続し他端が前記第1駆動回路に接続したコンデンサと、前記コンデンサの前記
他端に制御電源電圧を与える制御電源と、接地電位と前記第1スイッチング素子の前記第1端子との間の電気的接続を、接続状態と遮断状態に切替可能なスイッチ回路と、を備える。
【0009】
第4の発明にかかる照明器具は、発光素子と、前記発光素子を点灯させる点灯装置と、を備え、前記点灯装置は、整流回路と、前記整流回路の出力端子に接続する第1端子を備えた第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の第2端子に一端が接続するインダクタと、前記インダクタの他端に接続する第1端子および抵抗を介して接地される第2端子を有する第2スイッチング素子と、を備えたHブリッジ回路と、前記第1スイッチング素子を駆動する第1駆動回路および前記第2スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、一端が前記第1スイッチング素子の前記第2端子と接続し他端が前記第1駆動回路に接続したコンデンサと、前記コンデンサの前記
他端に制御電源電圧を与える制御電源と、前記第1スイッチング素子をオンに維持しかつ前記第2スイッチング素子をオンオフする昇圧モードを有し、負荷が小さいほど狭く設定される第1オン幅を有する制御信号を供給することにより前記第2スイッチング素子のオンオフを行う制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記昇圧モード中に前記第1オン幅よりも長いオン維持期間を前記制御信号の間に割り込ませる充電動作を実行可能である。
【発明の効果】
【0010】
第1および第3の発明によれば、スイッチ回路を設けたので、第2スイッチング素子をオンにしなくとも第1駆動回路の電源用に充電されるべきコンデンサの充電経路を作り出すことができ、第2スイッチング素子をオフに維持する降圧モードにおいても駆動回路の電源が確保できる。
【0011】
第2および第4の発明によれば、充電動作を実行可能としたので、昇圧モードの軽負荷時に第2スイッチング素子のオン幅が狭くなったときであっても、第1駆動回路と接続した電源用コンデンサを充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1にかかる点灯装置および照明器具を示す回路図である。
【
図2】実施の形態1にかかる点灯装置の部分的な回路図である。
【
図3】実施の形態1にかかる点灯装置および照明器具の動作説明用の波形図である。
【
図4】本発明の実施の形態2にかかる点灯装置および照明器具を示す回路図である。
【
図5】実施の形態2にかかる点灯装置および照明器具の動作説明用の波形図である。
【
図6】実施の形態2にかかる点灯装置および照明器具の動作説明用の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる点灯装置10および照明器具1を示す回路図である。
図1において商用交流電源ACおよびLEDモジュール30以外は、点灯装置10の構成要素である。照明器具1は、LEDモジュール30と、LEDモジュール30に電力を供給する点灯装置10とを備える。LEDモジュール30は、複数のLED素子が直列に接続されたものである。なお、本発明においては複数のLED素子の接続は直列に限らず、並列、あるいは直列と並列を組み合わせたものであってもよく、LED素子に替えて有機EL素子を用いてもよい。点灯装置10は、商用交流電源ACより電力の供給を受けてLEDモジュール30を点灯させる装置である。点灯装置10は、商用交流電源ACから電力を受けて全波整流する整流回路DB1と、整流回路DB1の出力した脈流電圧を受けるHブリッジ回路12と、制御電源23と、制御回路24と、駆動回路22、25とを備えている。本実施の形態にかかる整流回路DB1は典型的な全波整流回路としてのダイオードブリッジ回路を用いている。商用交流電源ACと整流回路DB1との間には、スイッチ(図示せず)が介在している。
【0014】
Hブリッジ回路12は、ハイサイドのスイッチング素子Q1と、ダイオードD1と、インダクタL1と、ダイオードD2と、ローサイドのスイッチング素子Q2を備えている。スイッチング素子Q1の第1端子(例えばドレイン)は、整流回路DB1の一方の高電圧側出力端子に接続している。スイッチング素子Q1の第2端子(例えばソース)は、ダイオードD1のカソードと接続している。ダイオードD1のアノードは整流回路DB1の他方の低電圧側出力端子に接続しており、この低電圧側出力端子は接地されている。Hブリッジ回路12の出力側には、平滑コンデンサC2が設けられている。インダクタL1の一端は、スイッチング素子Q1の第2端子(例えばソース)とダイオードD1のカソードとの間の接続点に接続している。インダクタL1の他端は、ダイオードD2のアノードとスイッチング素子Q2の第1端子(例えばドレイン)との間の接続点に接続している。スイッチング素子Q2の第2端子(例えばソース)は、抵抗R3の一端に接続しており、抵抗R3の他端は接地されている。ダイオードD2のカソードは、平滑コンデンサC2の一端に接続している。平滑コンデンサC2の他端は抵抗R3を介して接地されている。平滑コンデンサC2に対して並列に、LEDモジュール30が接続されている。
【0015】
Hブリッジ回路12は、降圧コンバータ(降圧チョッパ)として作動する降圧モード、昇圧コンバータ(昇圧チョッパ)として作動する昇圧モード、および降圧と昇圧のいずれにも対応可能な昇降圧モードという3つのモードで駆動することができる。降圧モードは、スイッチング素子Q1をオンオフし、かつスイッチング素子Q2をオフに維持することで実現される。昇圧モードは、スイッチング素子Q1をオンに維持し、かつスイッチング素子Q2をオンオフすることで実現される。昇降圧モードは、スイッチング素子Q1、Q2の両方をオンオフさせることで実現される。制御回路24は、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2をそれぞれ制御する制御信号を駆動回路22、25に入力する。駆動回路22、25は、制御回路24からのスイッチング信号に基づいてスイッチング素子Q1、Q2それぞれの制御端子(例えばゲート)に制御信号を供給することで、スイッチング素子Q1、Q2を駆動する。これにより制御回路24からのスイッチング信号に基づいてHブリッジ回路12が駆動され、交流電源電圧から直流電流を生成してLEDモジュール30に供給している。制御電源23はダイオードD3のアノードと接続し、ダイオードD3のカソードは駆動回路22の電源端子とコンデンサC3の一方の端子との接続点に接続している。制御電源23は、例えば15V〜20V程度の大きさの制御電源電圧を生成する回路である。コンデンサC3は、一端がスイッチング素子Q1の第2端子(
図1ではソース)と接続し他端が駆動回路22に接続している。
【0016】
点灯装置10は抵抗R1、R2を直列接続した第1分圧回路を備えており、この第1分圧回路は平滑コンデンサC1と並列接続されている。点灯装置10は抵抗R5、R6を直列接続した第2分圧回路も備えており、この第2分圧回路は平滑コンデンサC2と並列接続されている。これら第1、2分圧回路で分圧された電圧がそれぞれ制御回路24に供給されることで、制御回路24はHブリッジ回路12の入力電圧および出力電圧をそれぞれ検知することができる。点灯装置10はLEDモジュール30と直列接続する抵抗R8を備えており、この抵抗R8はLED電流検出抵抗である。
【0017】
点灯装置10は、接地電位とスイッチング素子Q1の第1端子との間の電気的接続を接続状態と遮断状態に切替可能なスイッチ回路20を備えている。スイッチ回路20は、電圧検出回路21と、抵抗R7およびスイッチング素子Q3の直列回路とを備えている。電圧検出回路21は、商用交流電源ACと接続する入力端子に並列接続して、入力交流電圧を検出可能である。電圧検出回路21は、スイッチング素子Q3の制御端子(例えばゲート)および制御回路24と接続している。抵抗R7の一端は、Hブリッジ回路12におけるスイッチング素子Q1の第1端子と平滑コンデンサC1の一方の端子(つまり正極端子)との接続点に接続している。抵抗R7の他端はスイッチング素子Q3の第1端子(例えばドレイン)と接続しており、スイッチング素子Q3の第2端子(例えばソース)は接地されている。
【0018】
図2は、実施の形態1にかかる点灯装置10の部分的な回路図である。スイッチ回路20が接地電位とスイッチング素子Q1の第1端子との間の電気的接続を接続状態としたとき、すなわちスイッチング素子Q3がオンであるときの回路図である。スイッチング素子Q1は寄生ダイオードDpsを有している。スイッチング素子Q3をオンとすることで、
図2の破線「充電経路」に示すように、制御電源23、ダイオードD3、コンデンサC3、寄生ダイオードDps、抵抗R7、およびオン状態のスイッチング素子Q3を経由して接地に至る電気的経路が形成される。起動時には駆動回路22の電源用として設けられたコンデンサC3が充電されていない。よって降圧モード起動時にスイッチング素子Q1の初回のオンを行うためには、まずコンデンサC3を充電する必要がある。このコンデンサC3はスイッチング素子Q2をオンとすることで充電できるものの、降圧モードはスイッチング素子Q2をオフに維持するモードなのでその充電方法は利用できない。この点、実施の形態1によれば駆動回路22の電源用に充電されるべきコンデンサC3の充電経路を作り出すことができるので、スイッチング素子Q2をオンにしない降圧モード起動時においてもこの充電経路を介して制御電源電圧VccによりコンデンサC3を充電することができる。
【0019】
図3は、実施の形態1にかかる点灯装置10および照明器具1の動作説明用の波形図である。
図3(a)は整流回路DB1で全波整流され平滑コンデンサC1に入力される入力電圧波形であり、点線でその整流前における商用交流電源ACからの入力交流電圧波形も示している。スイッチ回路20は、
図3(a)に示す全波整流入力電圧が制御電源電圧Vcc以下であるとき接続状態を維持し、その全波整流電圧が制御電源電圧Vccを上回るときは遮断状態を維持する。全波整流電圧がVcc以下である期間を、以下、期間Tcとも称す。この期間Tcに限り
図3(b)に示すようにスイッチング素子Q3をオンとする。ここで、平滑コンデンサC1による平滑化が行われるので整流回路DB1の出力側においては全波整流電圧がVcc以下である期間を検出することができない。そこで、実施の形態1では整流回路DB1の入力側に電圧検出回路21を設けて、入力交流電圧(つまり整流前の電圧)の値が+Vcc以下かつ−Vcc以上の範囲内にあるか否かを検知する。これにより、全波整流電圧が制御電源電圧Vcc以下となっている期間を正確に検知することができる。
【0020】
図3(c)は、
図1、2の回路図において符号Pが示す位置の電圧波形、すなわち全波整流電圧が平滑コンデンサC1で平滑された後の電圧波形を示す。
図3(d)は、
図3(c)のうち期間Tc付近の拡大図である。
図3(c)に示すように位置Pに表れる平滑後の入力電圧はVccより高くなるのが普通であり、このような状態のままでは位置Pのほうが制御電源23側より高電位となるのでコンデンサC3を充電できない。この点、本実施の形態では、全波整流電圧の絶対値がVccを下回る期間Tcにおいて、スイッチング素子Q3がオンとされる。オンとされたスイッチング素子Q3が接地電位と位置Pを接続すると、平滑コンデンサC1からすばやく電荷が引き抜かれ、位置Pには
図3(a)の期間Tc部分の波形が表れる。なお、平滑コンデンサC1は、0.1μF〜0.2μF程度の小容量のコンデンサであるのが典型的である。その結果、
図3(b)に示すように期間Tcにおいては位置Pの電圧がVccを下回るので、制御電源23側が位置Pよりも高電位となる。その結果、
図2に示す充電経路を介して制御電源23によりC3を充電することができる。なお、
図3では図示を省略しているが、降圧モードの起動時に期間Tcを迎えるたびにスイッチング素子Q3をオンとするように、電圧検出回路21で検知した電圧とVccとの間の大小関係に応じてスイッチング素子Q3のオンオフ動作を繰り返すことにより、コンデンサC3の充電を複数回行うことが好ましい。これによりコンデンサC3を確実に充電することができる。充電電圧がスイッチング素子Q1をオンできる値になったら駆動回路22はスイッチング素子Q1の初回のオン動作を行い、その後は制御回路24の制御信号に基づいてオンオフを行う。
【0021】
なお、点灯装置10において昇圧モードあるいは昇降圧モードでの動作を行う場合には起動時においてもスイッチング素子Q2のオン期間にコンデンサC3を充電できるので、昇圧モードあるいは昇降圧モードではスイッチ回路20を常に遮断状態としてもよい。
【0022】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2にかかる点灯装置110および照明器具101を示す図である。照明器具101は、点灯装置10を点灯装置110に置換した点を除き、照明器具1と同じである。点灯装置110は、点灯装置10からスイッチ回路20におけるスイッチング素子Q3を取り除いた点、および後述するように制御回路24が行う制御動作が異なる点を除いては、点灯装置10と同じである。
【0023】
図5および
図6は、実施の形態2にかかる点灯装置110および照明器具101の動作説明用の模式的な波形図である。実施の形態2にかかる点灯装置110は、昇圧モードでHブリッジ回路12を動作させる。昇圧モードは、
図5に示すように、スイッチング素子Q1をオンに維持し、かつスイッチング素子Q2をオンオフすることで実現される。昇圧モードにおいてはスイッチング素子Q2をオンとする期間に駆動回路22の電源としてのコンデンサC3の充電を行うことができる。スイッチング素子Q2のスイッチング信号の内容は、負荷(すなわちLEDモジュール30に流すLED電流)に応じて制御回路24が設定しており、負荷が軽いほどスイッチング信号のオン幅ton1が狭く設定される。一般的にLED点灯装置では調光機能が備えられており、ユーザが調光器で指定した値によっては例えば5%調光などまで明るさを抑制する場合がある。このような場合、
図6に示すようにスイッチング素子Q2のオン幅ton1が非常に狭くなる。スイッチング素子Q2のオン期間が短くなると、その分だけコンデンサC3の充電期間が少なくなっていく。これに対し、昇圧モードではスイッチング素子Q1をオンし続けなければならないので、コンデンサC3の充電電圧は低下していきやがて駆動回路22に必要な電源をまかなえなくなるという問題がある。
【0024】
そこで、本実施の形態では、制御回路24は、昇圧モード中にオン幅ton1よりも長いオン維持期間ton2を制御信号の間に割り込ませる充電動作を実行可能である。この充電動作を入れることで、昇圧モードの軽負荷時にスイッチング素子Q2のオン幅ton1がコンデンサC3の充電不足を招くほどに狭くなったときであっても、駆動回路22と接続したコンデンサC3の充電電圧が低下するのを補うことができる。また、本実施の形態ではより好ましい形態として、コンデンサC3を充電中には昇圧モード動作を中断させるので、制御回路24はスイッチング素子Q1をオフとしてコンデンサC3の放電を減らす。さらに、本実施の形態では、さらに好ましい形態として、
図6に示すとおり実施の形態1で述べた期間Tcにおいてスイッチング素子Q2がオンとなるように、オン維持期間ton2の立上がりおよび立下りタイミングを決定する。期間Tcの検知は実施の形態1と同様に電圧検出回路21により行い、電圧検出回路21は検知結果(つまり全波整流電圧の絶対値がVccを下回っているか否か)を制御回路24に伝達し、全波整流電圧の絶対値がVccを下回ってから次にVcc以上となるまでの期間に限りスイッチング素子Q2をオンに維持する。このようにすることで、全波整流電圧波形の高電圧側の期間を避けて、全波整流電圧波形のゼロクロス付近で充電動作を実行可能である。
【0025】
なお、軽負荷の場合にコンデンサC3の充電不足が問題となるので充電動作を常に実行する必要は無く、負荷の大きさに基づいて上記の充電動作の実行と停止を切り替えることが好ましい。負荷の大きさを検知する手段としては、スイッチング素子Q2の制御信号のオン幅が所定幅以下か否かで判定してもよい。また、抵抗R8を用いて検出したLED電流の大きさが所定電流値以下か否かで判定してもよいし、LED電圧を検出している抵抗R5,R6の分圧電圧の大きさを所定値と比較して判定してもよいし、LED電圧とLED電流の検出結果から「(LED電流)×(LED電圧)=LED(出力)電力」を計算しこのLED(出力)電力の大きさを所定値と比較して判定してもよいし、駆動回路22の電源すなわちコンデンサC3の電圧が所定電圧以下か否かで判定してもよいし、あるいは、図示しない調光器から制御回路24が調光信号を受けたときにその調光信号が指示する値の大きさが所定調光値以下か否かで判定してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 照明器具、10 点灯装置、12 Hブリッジ回路、20 スイッチ回路、21 電圧検出回路、22、25 駆動回路、23 制御電源、24 制御回路、30 LEDモジュール、DB1 整流回路、Dps 寄生ダイオード