(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該変性ポリブタジエンのz平均分子量と数平均分子量の比から規定される高分子量成分の分子量分布Mz/Mnが5.70〜8.00であることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリブタジエン。
温度50℃でのコールドフロー速度(mg/分)が17以下であって、5重量%トルエン溶液粘度(Tcp[cps])とJIS−K6300に基づいて測定した100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が1.8以上であって、1,4−シス構造が90%以上かつ1,2−ビニル構造が1.3%以下である変性ポリブタジエンの製造方法であって、
原料ポリブタジエンを、該原料ポリブタジエン100質量部(phr)に対して0.001〜0.01phrの有機過酸化物を用いて変性する変性ポリブタジエンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(原料ポリブタジエン)
原料ポリブタジエンは、コバルト触媒、バナジウム触媒、リチウム触媒、ニッケル触媒およびネオジム触媒などを用いて重合したポリブタジエンである。特に、コバルトやネオジム触媒で重合したポリブタジエンが好ましい。
ミクロ構造としては、1,4−シス構造が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上が好ましい。耐摩耗性や反発弾性の観点から、より高い率での1,4−シス構造は好都合であるからである。
【0012】
さらに100℃におけるムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は20〜80が良く、30〜70がより好ましく、35〜65が特に好ましい。上記範囲より低い場合、反発弾性が低くなる。一方、上記範囲より高い場合は加工性に悪影響を及ぼす。
【0013】
分岐度の指標として5重量%トルエン溶液粘度(Tcp[cps])とJIS−K6300に基づいて測定した100℃におけるムーニー粘度(ML
1+4)との比(Tcp/ML
1+4)が1.8以上であることが好ましい。
分岐度の指標としての(Tcp/ML
1+4)の値が低くなるほど分岐が大きくなり、逆に値が大きいほど分岐が小さい。
本願発明で使用する変性前のポリブタジエンの分岐は低く直鎖状であることが望まれる。低燃費性改善の観点から分岐状のポリブタジエンより有利だからである。
【0014】
(ポリブタジエンの変性方法)
本願発明でのポリブタジエンは、原料ポリブタジエンを変性することで得る。いわゆる変性したポリブタジエンである。
変性方法としては微量の有機過酸化物を用いて架橋する方法である。
用いる有機過酸化物としては、パーオキサイド類が良く、たとえばジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。そのほか、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。特にジクミルパーオキサイドの使用が好ましい。
【0015】
変性の形態としてはゴム分子同士がパーオキサイドで緩く架橋されていると推測される。上記有機過酸化物の使用量としては、上記変性前のポリブタジエン100質量部(phr)に対して0.001〜0.010phrが好ましく、0.001〜0.080phrがより好ましく、0.001〜0.060phrが特に好ましい。
上記範囲より少ないと変性による架橋効果が得られない。一方、上記範囲より多いと架橋が進行しすぎてゲルが発生してしまい、好ましくない。
【0016】
(変性方法)
有機過酸化物による変性方法は、市販グレードのシス−1,4−ポリブタジエン(UBEPOL BR150L)を、ミキシングロールを用いてロールに巻き付け、その後、所定量の有機過酸化物を添加して更に混練して得たサンプルを加圧プレスを用いて所定時間加熱処理することで得られる。
【0017】
(変性ポリブタジエン)
変性したポリブタジエンの5重量%トルエン溶液粘度(Tcp[cps])とJIS−K6300に基づいて測定した100℃におけるムーニー粘度(ML
1+4)との比(Tcp/ML
1+4)が1.8以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、2.2以上であることが特に好ましい。
Tcp/ML
1+4の値がある程度高くて直鎖状になっていないと、低燃費性に悪影響を及ぼすため、上記範囲が好ましい。
【0018】
また、ML
1+4,100℃測定終了時のトルクを100%とした際の80%減衰するまでの応力緩和時間(T80)が3.0〜15.0(秒)であることが好ましく、3.1〜13.0(秒)であることがより好ましく、3.2〜10.0(秒)であることが特に好ましい。ゴムの応力緩和の推移は弾性と粘性の組み合わせによるもので、遅い緩和は高い弾性成分を示し、速い緩和は高い粘性成分を示す。
前記範囲より小さいと剪断応力を加えた際に十分な応力が掛からないため、良好なフィラーの分散状態が得られにくい問題を生ずる。一方、前記範囲より大きいと成形加工時の残留応力が増大するため、寸法安定性が劣るなど加工性の問題を生ずる。
【0019】
数平均分子量(Mn)は、17×10
4〜30×10
4が好ましく、18×10
4〜28×10
4がより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は49×10
4〜80×10
4が好ましく、50×10
4〜70×10
4がより好ましい。さらにZ平均分子量(Mz)は、120×10
4〜160×10
4が好ましい。
【0020】
特に低ロス(低ヒステリシスロス)性の観点から高分子量領域における分子量分布Z平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)の比(Mz/Mn)は5.70〜8.00が好ましく、5.80〜7.80がより好ましく、6.50〜7.50が特に好ましい。
【0021】
ミクロ構造としては、1,4−シス構造が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上が好ましい。耐摩耗性や反発弾性の観点から、より高い率での1,4−シス構造は好都合であるからである。すなわち、変性前後で変化が殆ど無く、高シス状態であることが好ましい。
【0022】
さらに、1,2−ビニル構造が1.3%以下、より好ましくは1.1%以下である。トランス構造の割合としては、1.1%以下であることが好ましい。
【0023】
温度50℃でのコールドフロー速度(mg/分)はとしては17以下、好ましくは16以下、特に好ましくは15以下である。コールドフローの値が上記範囲より高いと、加工性や作業性に影響を与えるため、好ましくない。
【0024】
さらに、ポリブタジエンの分岐の指標としての長鎖分岐指数(LCB Index)としては、6.40以上が良く、6.50以上がより好ましく、7.00以上が特に好ましい。上記範囲以下では実際にコールドフローに大きく影響を与えうる長鎖な分岐の割合が低いため、コールドフロー改善に与える影響が低くなる。
【0025】
(ゴム組成物)
本願発明のポリブタジエンの性能を把握するため、加硫した後、他のゴム成分とブレンドするなどして、いわゆるゴム組成物として各種物性を測定する必要がある。
前記の変性ポリブタジエン(A)にその他のジエン系ゴム(B)、ゴム補強材(C)および加硫剤をはじめとする各種添加剤をブレンドすることでゴム組成物とする。
【0026】
ゴム組成物における変性ポリブタジエンの配合量としては、ゴム配合物全体の量を100質量部とした場合(ここで、ゴム配合物全体とは(A)+(B)のことを示す。)5〜60質量部が良く、10〜50質量部がより好ましく、20〜40質量部が特に好ましい。
当該範囲外での使用は、耐摩耗性、加工性に優れ、かつ低ロス性や引張特性にも優れた物性のバランス効果が低くなるため、好ましくない。
【0027】
(その他のジエン系ゴム)
ゴム組成物に含まれる他のジエン系ゴム(B)としては、加硫可能なゴムが好ましく、具体的にはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリイソプレン、ハイシスポリブタジエンゴム、ローシスポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム(NR)等を挙げることができる。これらの中でもSBRが好ましい。
さらにSBRの中でも溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム(S−SBR)が特に好ましい。これらのゴムは単独でも、二種以上組合せて用いても良い。
【0028】
本発明において使用する溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム(S−SBR)のミクロ構造としては、スチレン含量が15〜35重量%、好ましくは17〜30重量%、ブタジエン部分のビニル結合含量が30〜75%、好ましくは32〜72%のS−SBRを、ゴム成分100質量部の、30質量部以上90質量部未満、好ましくは50〜80質量部使用することにより、上記効果が発現される。S−SBRの配合量が少ないとウェット性能が低下するので好ましくなく、逆に多いと耐摩耗性や、低ロス性が悪化するので好ましくない。
かかるS−SBRは公知であり、例えば日本ゼオン Nipol NS110R、旭化成アサプレン 1204などの市販品を用いることができる。
【0029】
ゴム組成物における変性ポリブタジエンの配合量としては、ゴム配合物全体の量を100質量部とした場合40〜95質量部が良く、50〜90質量部がより好ましく、60〜80質量部が特に好ましい。
当該範囲外での使用は、耐摩耗性、加工性に優れ、かつ低ロス性や引張特性にも優れた物性のバランス効果が低くなるため、好ましくない。
【0030】
(ゴム補強材)
ゴム補強剤としては、無機系ゴム補強剤および有機系ゴム補強剤のいずれの補強材も適用することが出来る。無機系ゴム補強剤としては、沈降シリカ、金属酸化物、アルカリ金属塩およびカーボンブラックである。しかし、これらに限定されるものではない。有機系ゴム補強剤としては、例えば、繊維状の1,2−ポリブタジエンである。しかし、これに限定されるものではない。
【0031】
ゴム補強剤としては、上述した各補強剤を単独で用いる以外に、2種類以上を組み合わせても良い。例えば、シリカとカーボンブラックを併用して用いても良い。
【0032】
ゴム補強剤がシリカの場合、沈殿シリカ、特にケイ酸ナトリウムのような可溶ケイ酸の酸性化によって得られるものが好ましい。さらに、上述のようにこれらのシリカをカーボンブラックと組み合わせても良い。
【0033】
その他、市販の沈殿シリカを用いることが出来、例えば、Z1165MP やZ165GRなどのようなローディア製シリカ(商標Hi−Sil)、東ソー社製のVN2(商標Nipsil)、エボニック社製シリカのVN2やVN3などがあげられる。さらに、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられ、これらの中でも耐破壊特性の改良効果、ウェットグリップ性および低転がり抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
【0034】
最も好ましいゴム補強剤は、無機系ゴム補強剤であり、特にBET表面積が100〜300m
2/gであり、粒径が0.01〜0.1μmの沈降シリカである。
【0035】
ゴム補強剤の量としては、ゴム配合物全体100質量部に対して20〜80phr、より好ましくは25〜75phr、特に好ましくは30〜70phrである。
【0036】
(その他の配合物)
本発明のゴム補強剤配合ゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常、ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。 また、本発明のゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機、バンバリーミキサーなどの密閉式混練機などの混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後に加硫を行ない、各種ゴム製品に適用可能である。
【0037】
(シランカップリング剤)
他の添加剤成分であるシランカップリング剤としては、一般式R
7nSiX
4−nで表される有機珪素化合物で、R
7はビニル基、アシル基、アリル基、アリルオキシ基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基、アルキル基、フェニル基、水素、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基などから選ばれる反応基を有する炭素数1〜20の有機基であり、Xは、クロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アミノ基などから選ばれる加水分解基であり、nは1〜3の整数を示す。
【0038】
上記のシランカップリング剤のR
7成分において、ビニル基及び/またはクロル基を含有するものが好ましい。
【0039】
具体的なシランカップリング剤として、市販で利用できるものは、例えば、以下のものが含まれるが、決してこれらに限定されるものではない。ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル テトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル テトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイル テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾール テトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾール テトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレート モノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート モノスルフィド、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、クロロメチルジメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、ジアセトキシメチルジニルシラン、アリルオキシジメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、フェニルビニルジクロロシラン、トリアセトキシビニルシラン、3−クロロプロピルメチルジビニルシラン、ジエトキシジビニルシラン、ジメチルエチルメチルケトキムビニルシラン、ジメチルイソブトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、メチルフェニルビニルクロロシラン、メチルフェニルビニルシラン、ジメチルイソペンチルオキシビニルシラン、4−ブロモフェニルジメチルビニルシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、4−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、ジメチルピペリヂノメチルビニルシラン、ジメチル−2−[(2−エトキシエトキシ)エトキシ]ビニルシラン、ジビニルメチルフェノキシシラン、ジメチル−P−アニシルビニルシラン、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、ジエトキシ−2−ピペリヂノエトキシビニルシラン、ジフェニルビニルクロロシラン、3−ジメチルビニルフェニル N,N−ジエチルカルボメイト、トリフェノキシビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1−(4−メチルピペリヂノメチル)−1,1,3,3−テトラメチル−3−ビニルジシロキサン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルビニルシロキシ)ベンゼン、1,3−ビス(ジメチルビニルシロキシ)ベンゼン、1,1,3,3−テトラフェニルー、3−ジビニルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルサイクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルサイクロテトラシロキサン、テトラキス(ジメチルビニルシロキシメチル)メタン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、などがある。
【0040】
添加剤のシランカップリング剤の添加量としては、フィラー量に対して0.2〜20重量%が良く、5〜15重量%が特に好ましい。
【0041】
(加硫剤)
本発明に係るゴム補強剤配合用ゴム組成物に用いられる加硫剤としては、特に限定はされないが主に硫黄であり、ゴム配合物全体100質量部に対して0.1〜10phrの量が好ましく、1〜5がより好ましい。加硫剤の量が多すぎると、架橋が進みすぎるためにゴム加流物の弾性が無くなるなどが知られている。また、加硫物の量が少なすぎるとゴム弾性や摩擦抵抗が不十分となる。
【0042】
(加硫促進剤)
また、本発明に係るゴム補強剤配合用ゴム組成物に用いられる加硫促進剤は、2−メルカプトベンゾチアゾール(M),ジベンジルゾチアジルジスルフィド(DM),N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ),およびジフェニルグアニジン(D)であるが、これらに限定されるものではない。また、これら加硫促進剤を組み合わせて使用しても良い。好ましい使用量としてはゴム配合物全体100質量部に対して0.1〜7phr、より好ましくは1〜5phrである。
【0043】
本発明に係るゴム補強剤配合用ゴム組成物のその他の配合成分として、プロセスオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、酸化防止剤をゴム混合工程や加硫工程において用いることが出来る。
【0044】
(プロセスオイル)
プロセスオイルとしては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイルなどであるが、これらに限定されるものではないが、アロマオイルが好ましい。アロマオイルは、ゴム組成物の引張強度や摩擦抵抗の性能を最大限に維持するために使用されている。好ましいプロセスオイルの量は、1〜50phrであり、より好ましくは5〜30phrである。
【0045】
ゴム組成物の製造において、変性ポリブタジエンを製造した後、以下の手順でゴム組成物を製造する。
【0046】
混合工程(第1ゴム組成物の製造方法)
加硫剤や加硫促進剤などを除く全てのゴム組成物がバンバリーミキサーのような密閉式混練機で90℃、5分以内にて混合される。その後直ちに、配合物がミキシングロールを使用して30〜60℃の温度範囲にて冷却後、シート状に成形される。故に、上記混合工程は、予備混合、又は加硫原料を除いたゴム組成物の混合工程を意味する。
【0047】
加硫予備工程(第2ゴム組成物の製造方法)
前述した混合工程から得られたシリカ-ゴム化合物のシートは、30〜60℃の温度範囲にてミキシングロールを使用して、加硫剤や加硫促進剤とともに混合したものである。加硫剤としては、前述したように硫黄が好ましい。
【0048】
加硫予備工程によるゴム組成物は、シート状に引かれ、そのサンプルはムーニー粘度(ML
1+4,100℃)、JIS K6300−2(B−2法)に基づきRPA2000(登録商標)における160℃での最適加硫点、加硫中のtanδの測定がなされる。
【0049】
加硫予備工程による第2ゴム組成物のムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、混合工程から得られた第一化合物のムーニー粘度より減少し、その値は、50〜120、より好ましくは60〜105、特に好ましくは70〜95である。
【0050】
加硫予備工程による第2ゴム組成物のムーニー粘度(ML
1+4,100℃)が上記範囲より大きいと、成形加工性能が劣り作業性に問題を生じ、逆に小さいとシリカの分散性不良、未加硫物の引張応力が得られず加工性の問題が生ずる。
【0051】
(シリカ配合ゴム組成物の加硫特性と加硫物の物性)
加硫予備工程での第2ゴム組成物のシリカ配合ゴム組成物は、前述のRPA2000(登録商標)によって測定された最適加硫点に従い、160℃でプレス成形にて作られる。本発明のゴム加流物は、温度掃引、引張強度および発熱特性を通じ、粘弾性特性の測定に従う。
【0053】
(1)ミクロ構造解析
ミクロ構造は赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740cm
−1、トランス967cm
−1、ビニル910cm
−1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
(2)Tcpの測定
トルエン溶液粘度(Tcp)は、ポリマー2.28gをトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計No.400を使用して、25℃で測定した。
(3)ML
1+4,100℃の測定
ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、JIS−K6300に準拠して測定した。
(4)数平均、重量平均およびZ平均分子量の測定
GPC法:HLC−8220(東ソー社製)で測定し、標準ポリスチレン換算により算出した。溶媒はテトラヒドロフランを用いて、カラムはShodx製KF−805L(2本直列)、検出器は示唆屈折計(RI)を使用した。
(5)T80の測定
T80の測定はASTM D1646−7に準じた応力緩和測定により算出した。
具体的には、ML
1+4,100℃の条件下、測定4分後ローター停止時(0秒)のムーニー粘度を100%として、その値から80%緩和するまでの時間(秒)を測定した。
(6)ランボーン摩耗の測定
ランボーン摩耗性は、JIS−K6264に規定されている測定法に従って、スリップ率20パーセントおよび40パーセントで測定し、比較例1を100として指数で示した(指数は大きいほど良好)。
(7)硬度測定
JIS K6253に準じて、タイプAデュロメータを、用いて室温で測定した。
(8)粘弾性tanδ測定
GABO社製EPLEXOR 100Nを用いて、温度50℃および0℃にて周波数10Hz、動的歪み0.3%の条件で測定し、比較例1を100として指数表示した。
指数が大きいほど低ロス性(50℃)およびウェット性能(0℃)が良好である。
(9)引張強度、破断伸び
JIS K6251に従って測定した。数値が高いほど良好である事を示す。
(10)コールドフロー速度
コールドフロー速度(CF)は、得られたポリマーを50℃に保ち、内径6.4mmのガラス管で180mmHgの差圧により10分間吸引し、吸い込まれたポリマー重量を測定することにより、1分間当たり吸引されたポリマー量(mg/min)として求めた。
(11)長鎖分岐指数(LCB Index):RPA2000型試験機(アルファテクノロジーズ社製)を用いてLAOS(Large Amplitude Oscillatory Shear)測定方法により測定した。LCBにおいて、得られる数値が零に近づくほどリニアリティーの高い分岐度が低いポリマーである。
【0054】
(実施例1)
市販グレードのシス−1,4−ポリブタジエン(UBEPOL BR150L)であるポリブタジエン300グラムを6インチのミキシングロールを用い、温度35〜45℃にてロールに巻き付け、その後、0.001質量部の有機過酸化物を添加して更に混練することで変性したサンプルを得た。得られたポリブタジエンの各物性を表1に示す。
上記変性で得たポリブタジエンを表2に示す割合で各成分を配合してゴム組成物を得た。得られた結果を表2下段に示す。
【0055】
(実施例2)
ポリブタジエンを変性(架橋)する際に用いたパーオキサイドの量を0.005質量部に変えた以外は実施例1と同様の方法にてゴム組成物を製造した。結果を表1及び表2に示す。
【0056】
(比較例1)
実施例1で使用したポリブタジエンをパーオキサイドで変性せずにそのまま使用した以外は実施例1と同様の方法にてゴム組成物を製造した。結果を表1及び表2に示す。
【0057】
(比較例2)
比較例1で使用したポリブタジエンを市販品である宇部興産社製UBEPOL BR150Bに変えた以外は、比較例1と同様の方法にてゴム組成物を製造した。結果を表1及び表2に示す。
【0060】
各配合物の詳細を以下に示す。
(1)変性前のポリブタジエン:宇部興産社製UBEPOL BR150LおよびBR150B
(2)有機過酸化物:日本油脂製パークミルD
(3)SBR:溶液重合SBR
(4)シリカ:東ソー・シリカ(株)製、商品名 ニップシールAQ
(5)シランカップリング剤:デグサ・ヒュルヌ製、商品名 Si69
(6)アロマオイル:日本サン石油製 サンセンオイル4240
(7)酸化亜鉛:堺化学工業 Sazex 1号
(8)ステアリン酸:花王製ステアリン酸
(9)酸化防止剤:住友化学製アンチゲン6C
(10)硫黄: 細井化学工業(株)製の硫黄
(11)加硫促進剤1: 大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
(12)加硫促進剤2: 大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0061】
表2よりポリブタジエン以外の配合を同一にしたゴム組成物の物性結果から、耐摩耗性、加工性に優れ、かつ低ロス性や引張特性のバランスにも優れていることがわかる。すなわち、これら物性改善の効果として本願発明のポリブタジエンが寄与していることがわかる。