(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアロック装置として、車両ドア側のラッチ機構を車体側のストライカとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカとの係合が解除不能なロック状態に設定するためのロック機構を備えているものが知られている。この車両用ドアロック装置の一つが、例えば下記特許文献1に開示されている。このドアロック装置は、インサイドドアハンドルのドア開放操作時にインサイドオープンレバーがロック操作レバーをロック位置からアンロック位置へと駆動する構造を利用して、インサイドオープンレバーによるオープンリンクの駆動開始タイミング(第1のタイミング)とインサイドオープンレバーによるロック操作レバーの駆動開始タイミング(第2のタイミング)とを異ならせるように構成されたレバー駆動機構を搭載している。
【0003】
このレバー駆動機構について具体的に説明すると、第1のタイミングよりも第2のタイミングが遅くなるように設定された機構、所謂「ダブルプル機構」では、インサイドドアハンドルの最初のドア開放操作によってインサイドオープンレバーが初期位置から最大作動位置(「フル位置」ともいう)まで回転動作したときにオープンリンクがロック位置からアンロック位置へと切替わる。従って、インサイドドアハンドルの最初のドア開放操作では車両は解錠されない。その後、インサイドドアハンドルの二回目のドア開放操作によってインサイドオープンレバーが再び初期位置から最大作動位置に向けて回転動作する過程では、既にアンロック位置にあるオープンリンクがラッチ機構のリフトレバーと係合するため、ラッチ機構がラッチ状態からアンラッチ状態に切替わって車両ドアが解錠される。一方で、第1のタイミングよりも第2のタイミングが早くなるように設定された機構、所謂「ワンモーション機構」では、インサイドドアハンドルの一度のドア開放操作の際に、オープンリンクがロック位置からアンロック位置へと切替わる動作と、オープンリンクがラッチ機構のリフトレバーと係合する動作が連続的に行われて車両ドアが解錠される。
【発明の概要】
【0006】
上記の駆動機構を搭載したドアロック装置では、インサイドオープンレバーが最大作動位置にあるときにロック操作レバーのオートロック制御或いはマニュアル制御によって当該ロック操作レバーが強制的にロック位置に向けて駆動される場合がある。このような制御は、ロック操作レバーがインサイドオープンレバーに当接することによってインサイドオープンレバーの初期位置への適正な復帰動作を阻止する要因に成り得る。この場合、インサイドドアハンドルがドア開放操作の解除によって初期位置に復帰した後であってもインサイドオープンレバーは初期位置に適正に復帰することができずに最大作動位置に保持される結果、インサイドオープンレバーに連結されている可撓性のインサイドオープンケーブルが撓み、インサイドオープンケーブルのケーブル端部がインサイドオープンレバーの取付け孔から脱落したり、ケーブル端部自体がインサイドオープンレバーに押し付けられて座屈したりするような不具合が発生し得る。
【0007】
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、インサイドドアハンドルのドア開放操作時にインサイドオープンレバーがロック操作レバーをロック位置からアンロック位置へと駆動するレバー駆動機構を備える車両用ドアロック装置において、ロック操作レバーが強制的にロック位置に向けて駆動されたときのインサイドオープンレバーの動作の適正化を図るのに有効な技術を提供することである。
【0008】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ドアロック装置は、ラッチ機構及びロック機構を含む。ラッチ機構は、車両ドアを車体に対して閉じた状態で保持可能に構成される。ロック機構は、ラッチ機構を車体に設けられたストライカとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカとの係合が解除不能なロック状態に設定する機能を果たす。
【0009】
ロック機構は、更にインサイドオープンレバー、オープンリンク、ロック操作レバー及びレバー付勢機構を備える。インサイドオープンレバーは、車両ドアの内側に設けられたインサイドドアハンドルに可撓性のインサイドオープンケーブルを介して連結され、インサイドドアハンドルのドア開閉操作に応じて初期位置と最大作動位置との間でレバー支持部を中心に回転動作可能である。オープンリンクは、インサイドドアハンドルのドア開放操作に伴うインサイドオープンレバーのドア開放方向の動作をラッチ機構に伝える第1位置とラッチ機構に伝えない第2位置とに切り替え可能である。ロック操作レバーは、オープンリンクを第1位置に設定するアンロック位置とオープンリンクを第2位置に設定するロック位置との間でレバー支持部を中心に回転動作可能である。このロック操作レバーは、インサイドドアハンドルのドア開放操作によって初期位置から最大作動位置に向けて回転動作するインサイドオープンレバーに押圧されてロック位置からアンロック位置へと駆動される。
【0010】
レバー付勢機構は、インサイドオープンレバーが初期位置から最大作動位置までの範囲のうちアンロック位置からロック位置に向けて駆動されたロック操作レバーに当接する所定の作動位置にあるとき、インサイドオープンレバーがロック操作レバーから受ける当接荷重を利用してインサイドオープンレバーを初期位置に向けて付勢する機能を果たす。ここでいう「所定の作動位置」には、初期位置から最大作動位置(インサイドオープンレバーが初期位置を基準にして最も大きく回転動作したときの作動位置)までの範囲内の任意の作動位置が包含される。従って、最大作動位置もここでいう「所定の作動位置」に相当する。
【0011】
このレバー付勢機構によれば、インサイドオープンレバーが所定の作動位置においてロック操作レバーによってブロックされるのを回避することができるため、インサイドオープンレバーを初期位置に復帰させることができる。この場合、インサイドドアハンドルがドア開放操作の解除によって初期位置に復帰するときにインサイドオープンレバーも初期位置に適正に復帰する。従って、ロック操作レバーが強制的にロック位置に向けて駆動されたときのインサイドオープンレバーの動作の適正化が図られる。このとき、可撓性のインサイドオープンケーブル適正な張力が作用した状態が維持される。その結果、インサイドオープンケーブルが撓むのを阻止することができるため、インサイドオープンケーブルのケーブル端部がインサイドオープンレバーの取付け孔から脱落したり、ケーブル端部自体がインサイドオープンレバーに押し付けられて座屈したりするような不具合を防止できる。
【0012】
上記構成のレバー付勢機構では、インサイドオープンレバーが所定の作動位置において受ける当接荷重の方向ベクトルが、インサイドオープンレバーとロック操作レバーとの当接点での法線上においてインサイドオープンレバーを初期位置に向けて付勢するようにインサイドオープンレバーのレバー支持部と当接点とを結ぶ結線に対して交差する法線ベクトルとなるように、インサイドオープンレバー及びロック操作レバーが構成されるのが好ましい。典型的には、インサイドオープンレバーが所定の作動位置において受ける当接荷重の方向ベクトルとして所望の法線ベクトルが得られるように、インサイドオープンレバー及びロック操作レバーの相対的な幾何学形状、寸法、配置等を定めることができる。これにより、インサイドオープンレバーとロック操作レバーとの当接点における法線ベクトルを利用して、インサイドオープンレバーを初期位置に確実に復帰させることができる。また、ロック機構の既存の構成要素であるインサイドオープンレバー及びロック操作レバーを利用してレバー付勢機構が構築されるため、部品点数を増やすことなく安価なドアロック装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、インサイドドアハンドルのドア開放操作時にインサイドオープンレバーがロック操作レバーをロック位置からアンロック位置へと駆動するレバー駆動機構を備える車両用ドアロック装置において、ロック操作レバーが強制的にロック位置に向けて駆動されたときのインサイドオープンレバーの動作の適正化を図ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施の形態の車両用ドアロック装置100の内部構造を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1中のロック機構120のうちインサイドオープンレバー121及びロック操作レバー124の構造を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1中のインサイドオープンレバー121のA−A線についての断面構造を示す図である。
【
図4】
図4は、インサイドオープンレバー121が
図2に示す初期位置から反時計回りに第1の作動位置まで回転動作したときのロック操作レバー124の状態を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4中のインサイドオープンレバー121が更に反時計回りに第2の作動位置まで回転動作したときのロック操作レバー124の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5中のインサイドオープンレバー121が更に反時計回りに第3の作動位置まで回転動作したときのロック操作レバー124の状態を示す図である。
【
図7】
図7は、インサイドオープンレバー121が最終位置まで回転動作したときのロック操作レバー124の状態を示す図である。
【
図8】
図8は、インサイドオープンレバー121が
図7に示す最終位置にあるときにロック位置に向けて強制的に駆動されたロック操作レバー124の状態を示す図である。
【
図9】
図9は、
図8の部分拡大図であって、ロック機構120に割り当てられたレバー付勢機構130の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、当該図面では、車両前方及び車両後方をそれぞれ矢印X1及び矢印X2で示し、車両上方及び車両下方をそれぞれ矢印Y1及び矢印Y2で示している。車両ドアに取付けられる前の状態の車両用ドアロック装置に対して、また車両ドアに取付けられた後の状態の車両用ドアロック装置に対して、これらの方向を適用することができる。
【0016】
図1に示す本実施の形態の車両用ドアロック装置(以下、単に「ドアロック装置」ともいう)100は、車両ドアDRのドアアウタパネル(車外側パネル)とドアインナパネル(車内側パネル)とによって区画される領域に装着される。
図1にはこの車両ドアDRの典型例として車両右側の車両ドアが記載されている。
【0017】
ドアロック装置100は、当該ドアロック装置のドアロック構成要素を収容するための或いは組付けるためのハウジング101を備えている。ドアロック構成要素には、ラッチ機構110及びロック機構120が含まれる。
【0018】
ラッチ機構110は、周知のように、車両ドアDRを車体BDに対して閉じた状態で保持するためのものである。このラッチ機構110は、車体BDに固定されたストライカSTに対して係合及び離脱が可能なラッチ(図示省略)と、このラッチに対して係合及び非係合が可能でありストライカSTに対するラッチの係合の維持及び解除が可能なポール(図示省略)と、このポールと一体的なリフトレバー111を備えている。このラッチがストライカSTと係合して、その係合状態が維持されることで、車両ドアDRが閉じた状態(ラッチ状態)に保持される。一方で、ラッチとストライカSTとの係合が解除されてストライカSTがラッチから離脱することで、車両ドアDRが閉じた状態から開いた状態(アンラッチ状態)に移行する。このラッチ機構110が本発明の「ラッチ機構」に相当する。
【0019】
ロック機構120は、ラッチ機構110を車体BDに設けられたストライカSTとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカSTとの係合が解除不能なロック状態に設定する機能を果たす。このロック機構120は、インサイドオープンレバー121、アウトサイドオープンレバー122、オープンリンク123、ロック操作レバー124及び電気モータ127を備えている。このロック機構120が本発明の「ロック機構」に相当する。
【0020】
インサイドオープンレバー121は、車両ドアDRの内側に設けられたドア操作ハンドルであるインサイドドアハンドル10に可撓性のインサイドオープンケーブルWを介して連結されている。このため、インサイドオープンレバー121は、インサイドドアハンドル10のドア開放操作によって、ハウジング101に設けられたレバー支持部(支持シャフト)121aを中心にして初期位置(
図2に示す位置)から、アウトサイドオープンレバー122及びオープンリンク123を所定量持ち上げる最大作動位置(
図7に示す位置(「フル位置」ともいう)まで回転動作するように構成されている。この場合、インサイドオープンレバー121の最大作動位置は、インサイドオープンレバー121が初期位置を基準にして最も大きく回転動作したときの作動位置として定義される。この目的のため、インサイドオープンレバー121は、アウトサイドオープンレバー122との係合及び離脱が可能であり、且つロック操作レバー124との係合及び離脱が可能である。このインサイドオープンレバー121が本発明の「インサイドオープンレバー」に相当する。
【0021】
アウトサイドオープンレバー122は、車両ドアDRの外側に設けられたドア操作ハンドルであるアウトサイドドアハンドル(図示省略)に接続されている。このため、アウトサイドオープンレバー122は、アウトサイドドアハンドルのドア開放操作によって、レバー支持部(図示省略)を中心にして初期位置から作動位置まで回転動作するように構成されている。
【0022】
オープンリンク123は、インサイドオープンレバー121の初期位置から作動位置への回転動作時に、或いはアウトサイドオープンレバー122の初期位置から作動位置への回転動作時に、初期位置から作動位置へと移動可能に構成されている。更に、このオープンリンク123は、ロック操作レバー124のロック位置からアンロック位置への移動時に初期位置であるアンロック位置(アンロック状態)に切り替えられ、且つロック操作レバー124のアンロック位置からロック位置への移動時に作動位置であるロック位置(ロック状態)に切り替えられるように構成されている。即ち、ロック操作レバー124のアンロック位置とロック位置との間の回転動作に伴ってオープンリンク123がアンロック状態とロック状態とに切り替えられる。
【0023】
車両ドアDRの閉鎖状態においてオープンリンク123がアンロック位置(第1位置)にあるとき、各ドアハンドルのドア開放操作に伴う各オープンレバー121,122のドア開放方向動作は、オープンリンク123を介してラッチ機構110の構成要素であるリフトレバー111に伝えられる。即ち、ラッチ機構110のリフトレバー111がオープンリンク123によって押圧されて回転動作することで、ラッチ機構110がラッチ状態からアンラッチ状態へと移行する。その結果、車両ドアDRは解錠される。一方で、車両ドアDRの閉鎖状態においてオープンリンク123がロック位置(第2位置)にあるとき、各ドアハンドルのドア開放操作に伴う各オープンレバー121,122のドア開放方向動作は、オープンリンク123には伝えらえるものの、オープンリンク123からラッチ機構110の構成要素であるリフトレバー111には伝えられない。即ち、オープンリンク123はラッチ機構110のリフトレバー111と係合せず、ラッチ機構110がラッチ状態のままで保持される。その結果、車両ドアDRは解錠されない。このオープンリンク123が本発明の「オープンリンク」に相当する。
【0024】
ロック操作レバー124は、オープンリンク123をアンロック位置(第1位置)に設定するアンロック位置とオープンリンク123をロック位置(第2位置)に設定するロック位置との間で、ハウジング101に設けられたレバー支持部124aを中心に回転動作可能である。このロック操作レバー124は、インサイドドアハンドル10のドア開放操作によって
図2に示す初期位置から
図7,8に示す最大作動位置に向けて回転動作するインサイドオープンレバー121に押圧されてロック位置からアンロック位置へと駆動される。このロック操作レバー124が本発明の「ロック操作レバー」に相当する。
【0025】
図2に示されるように、ロック操作レバー124は、第1レバー部(「インサイドロッキングレバー」ともいう)125及び第2レバー部(「アクティブレバー」ともいう)126を備えている。これらの第1レバー部125及び第2レバー部126は、共通のレバー支持部124aを中心に一体的に回転動作可能に構成されている。電気モータ127は、ロック操作レバー124を駆動するためのアクチュエータとして構成される。ロック操作レバー124の第2レバー部126は、インサイドオープンレバー121に設けられた係合部121cが係合可能な被係合部126aを備えている。この被係合部126aは、インサイドオープンレバー121に対向する領域に、係合部121cのための曲面状の摺動面126bと、インサイドオープンレバー121に向けて突出した突部126cとを備えている。尚、必要に応じては、このロック操作レバー124を第1レバー部125に相当する部位と第2レバー部126に相当する部位とが互いに一体化された1つのレバー部材として構成することもできる。
【0026】
図3に示されるように、インサイドオープンケーブルWは、クランク状(段差状)の断面形状を有するケーブル端部Waを備えており、このケーブル端部Waがインサイドオープンレバー121の取付け孔121bに挿入されることによってインサイドオープンレバー121に連結されている。
【0027】
尚、上記のラッチ機構110及びロック機構120の更なる具体的な構成については、例えば特開2011−26867号公報に開示の「ラッチ機構」、「オープン機構」及び「ロック機構」等が参照される。
【0028】
上記構成のロック機構120は、インサイドドアハンドル10のドア開放操作時にインサイドオープンレバー121がロック操作レバー124をロック位置からアンロック位置へと駆動する構造を利用して、インサイドオープンレバー121によるオープンリンク123の駆動開始タイミングよりもインサイドオープンレバー121によるロック操作レバー124の駆動開始タイミングが遅くなるように設定されたレバー駆動機構、所謂「ダブルプル機構」を搭載している。
【0029】
このダブルプル機構の場合、インサイドドアハンドル10の最初のドア開放操作によってインサイドオープンレバー121が初期位置から最大作動位置(「フル位置」ともいう)まで回転動作したときにオープンリンク123がロック位置からアンロック位置へと切替わる。従って、インサイドドアハンドル10の最初のドア開放操作では車両ドアDRは解錠されない。その後、インサイドドアハンドル10の二回目のドア開放操作によってインサイドオープンレバー121が再び初期位置から最大作動位置に向けて回転動作する過程では、既にアンロック位置にあるオープンリンク123がラッチ機構110のリフトレバー111と係合するため、ラッチ機構110がラッチ状態からアンラッチ状態に切替わって車両ドアDRが解錠される。
【0030】
ここで、ダブルプル機構を搭載したロック機構120において、上記構成のロック操作レバー124が
図2に示す初期位置から最大作動位置まで回転動作する様子を、
図4〜
図7を参照しつつ具体的に説明する。
【0031】
図1中のインサイドドアハンドル10のドア開放操作の際、初期位置にあるインサイドオープンレバー121はレバー支持部121aを中心にして反時計回りに回転動作する。インサイドオープンレバー121が
図4に示す第1の作動位置まで反時計回りに回転動作したとき、インサイドオープンレバー121の係合部121cが第2レバー部126の被係合部126aのうち係合部121cに対向する摺動面126bに当接する。この場合、更に反時計回りに回転動作しようとするインサイドオープンレバー121の係合部121cが摺動面126bを摺動しつつ押圧することによって、ロック操作レバー124(第1レバー部125及び第2レバー部126)はレバー支持部124aを中心に時計回りに回転動作する。
【0032】
その後、インサイドオープンレバー121が
図5に示す第2の作動位置を経て、
図6に示すように被係合部126aの摺動面126bに設けられた突部126cを乗り越えた第3の作動位置まで回転動作する。このとき、第2レバー部126は、インサイドオープンレバー121の係合部121cによって係合部121cから離間するように弾かれ、更に第2レバー部126を時計回りに弾性付勢するトーションスプリング128によって、第1レバー部125とともに時計回りに回転動作する。その結果、インサイドオープンレバー121は、
図7に示す最大作動位置まで回転動作した状態では、第2レバー部126の被係合部126aとの間に隙間129を形成する。
【0033】
ところで、インサイドオープンレバー121が
図7に示す最大作動位置にあるときにロック操作レバー124のオートロック制御或いはマニュアル制御によって当該ロック操作レバー124が強制的にロック位置に向けて反時計回りに駆動される場合がある。ロック操作レバー124のこのような動作は、典型的には、以下のような第1の制御や第2の制御によって発生し得る。第1の制御は、車速センサ(図示省略)によって車速が予め設定された閾値に達したことが検出され、アクチュエータである電気モータ127がロック操作レバー124を強制的にロック位置に向けて反時計回りに駆動するようなオートロック制御として特定される。第2の制御は、ロック操作レバー124のロック操作のための手動スイッチが車両乗員によって操作されることによって電気モータ127がロック操作レバー124を強制的にロック位置に向けて反時計回りに駆動するようなマニュアル制御として特定される。
【0034】
これらの第1の制御や第2の制御の場合、
図8に示されるように、第2レバー部126がインサイドオープンレバー121の係合部121cに当接する。このとき、インサイドオープンレバー121が第2レバー部126から最大作動位置に保持されるような荷重を受けたり、反時計回りに付勢されるような荷重を受けたりすると、インサイドドアハンドル10のドア開放操作の解除によって初期位置に復帰した後であってもインサイドオープンレバー121は初期位置に適正に復帰することができずに最大作動位置に保持される結果、インサイドオープンレバー121に連結されている可撓性のインサイドオープンケーブルWが撓み、インサイドオープンケーブルWのケーブル端部Waがインサイドオープンレバー121の取付け孔121bから脱落したり、ケーブル端部Wa自体がインサイドオープンレバー121に押し付けられて座屈したりするような不具合が発生し得る。
【0035】
そこで、本実施の形態では、
図9に示されるように、ロック機構120に対してレバー付勢機構130が割り当てられている。このレバー付勢機構130は、インサイドオープンレバー121がアンロック位置からロック位置に向けて駆動されたロック操作レバー124に当接する最大作動位置にあるとき、インサイドオープンレバー121がロック操作レバー124から受ける当接荷重を利用してインサイドオープンレバー121を初期位置に向けて付勢する機能を果たす。このレバー付勢機構130が本発明における「レバー付勢機構」に相当する。
【0036】
このレバー付勢機構130によれば、インサイドオープンレバー121が最大作動位置においてロック操作レバー124によってブロックされるのを回避することができるため、インサイドオープンレバー121をレバー支持部121aを中心に
図9中の矢印R方向に回転動作させて初期位置に復帰させることができる。この場合、インサイドドアハンドル10がドア開放操作の解除によって初期位置に復帰するときにインサイドオープンレバー121も初期位置に適正に復帰する。従って、ロック操作レバー124が強制的にロック位置に向けて駆動されたときのインサイドオープンレバー121の動作の適正化が図られる。このとき、可撓性のインサイドオープンケーブルWに適正な張力が作用した状態が維持される。その結果、インサイドオープンケーブルWが撓むのを阻止することができるため、インサイドオープンケーブルWのケーブル端部Waがインサイドオープンレバー121の取付け孔121bから脱落したり、ケーブル端部Wa自体がインサイドオープンレバー121に押し付けられて座屈したりするような不具合を防止できる。
【0037】
このレバー付勢機構130は特に、インサイドオープンレバー121及びロック操作レバー124の構造を利用して構成されている。具体的に説明すると、このレバー付勢機構130では、インサイドオープンレバー121が最大作動位置において受ける当接荷重の方向ベクトルが、インサイドオープンレバー121とロック操作レバー124との当接点Paでの法線L2(即ち、当接点Paにおける接線L1に直交する線)上においてインサイドオープンレバー121を初期位置に向けて付勢するようにインサイドオープンレバー121のレバー支持部121a(回転中心点Pb)と当接点Paとを結ぶ結線L3に対して交差する法線ベクトルNとなるように、インサイドオープンレバー121及びロック操作レバー124が構成されている。典型的には、インサイドオープンレバー121が最大作動位置においてロック操作レバー124から受ける当接荷重の方向ベクトルとして所望の法線ベクトルNが得られるように、インサイドオープンレバー121及びロック操作レバー124の相対的な幾何学形状、寸法、配置等を定めることができる。これにより、インサイドオープンレバー121とロック操作レバー124との当接点Paにおける法線ベクトルNを利用して、インサイドオープンレバー121を初期位置に確実に復帰させることができる。また、ロック機構120の既存の構成要素であるインサイドオープンレバー121及びロック操作レバー124を利用してレバー付勢機構130が構築されるため、部品点数を増やすことなく安価なドアロック装置100を実現することができる。
【0038】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0039】
上記実施の形態では、インサイドオープンレバー121によるオープンリンク123の駆動開始タイミングとインサイドオープンレバー121によるロック操作レバー124の駆動開始タイミングとを異ならせる機構の1つであるダブルプル機構について記載したが、本発明ではこのダブルプル機構に代えて、所謂「ワンモーション機構」を採用することもできる。このワンモーション機構では、インサイドドアハンドル10の一度のドア開放操作の際に、オープンリンク123がロック位置からアンロック位置へと切替わる動作と、オープンリンク123がラッチ機構110のリフトレバー111と係合する動作が連続的に行われて車両ドアDRが解錠される。このワンモーション機構の場合も、ダブルプル機構の場合と同様にインサイドオープンレバー121が初期位置に復帰する動作がロック操作レバー124によってブロックされる状況が発生し得るため、このワンモーション機構を搭載するロック機構に対しても同様に本発明を適用することができる。
【0040】
上記実施の形態では、インサイドオープンレバー121が最大作動位置にあるときにロック操作レバー124によって初期位置への復帰動作がブロックされるのを回避する機能を果たすレバー付勢機構130について記載したが、本発明では、このレバー付勢機構130の機能が果たされるインサイドオープンレバー121の対象位置は最大作動位置に限定されるものではなく、当該対象位置としてインサイドオープンレバー121の初期位置から最大作動位置までの範囲内の任意の作動位置を適宜に選択することができる。
【0041】
本発明では、上記のドアロック装置100の本質的な構造を車両の各車両ドアに適用することができる。例えば、車両前席用の左右のドアや、車両後席用の左右のドア、更には車両後部のドア(バックドア)等に、本発明に係るドアロック装置100の本質的な構造を適用することができる。