特許第6308063号(P6308063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308063
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/80 20180101AFI20180402BHJP
   A47C 7/38 20060101ALN20180402BHJP
【FI】
   B60N2/48
   !A47C7/38
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-150750(P2014-150750)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-22928(P2016-22928A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 宗平
(72)【発明者】
【氏名】石川 智規
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健人
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−216584(JP,A)
【文献】 実開平06−077594(JP,U)
【文献】 実開昭61−051235(JP,U)
【文献】 特開平04−144509(JP,A)
【文献】 特開2008−302719(JP,A)
【文献】 特開2009−001054(JP,A)
【文献】 特開2014−097738(JP,A)
【文献】 実開平06−061152(JP,U)
【文献】 実開平05−018346(JP,U)
【文献】 実開昭58−164556(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0127541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
シート本体におけるシートバックの上方で乗員の頭もたれとして構成されるヘッドレストのうち乗員の頭部側に面する頭部受面部と、
前記頭部受面部を乗員の頭部と反対側の面から支持する基部と、
前記頭部受面部と前記基部との間に内装され、電気駆動源としての中空モータと該中空モータの回転軸方向から螺合する軸部材を有し、前記中空モータの駆動によって前記軸部材が進退することで伸縮して全長が変位し、前記頭部受面部を前記基部に対して近接及び離間させて前記ヘッドレストにおける頭部の支持位置を調整可能とするシャフトと、
前記頭部受面部と前記基部の間で前記シャフトの伸縮方向に並行し、前記頭部受面部を前記基部に対して移動可能に案内する案内構造を有し、
前記頭部受面部は荷重を受けても静止状態を維持する構造である乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記シャフトは、前記シャフトの軸方向及び径方向を弾性支持する弾性体を介して前記頭部受面部と前記基部に取り付けられている乗物用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記シャフトは、前記軸部材が前記中空モータの回転軸方向の一方側から螺合され、前記中空モータが前記基部側に取り付けられ、前記軸部材が前記頭部受面部側に取り付けられる乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバック上部に設けられたヘッドレストの前後位置を調整する前後位置自動調整装置を備える乗物用シートが知られている(例えば特許文献1)。この特許文献1によるヘッドレストの前後位置の調整は、ラックピニオン機構によって構成されている。ラックピニオン機構は、ラックがヘッドレストの前後方向に配設される。一方、ピニオンギアを連結したモータがヘッドレスト内部に設けられ、係るモータの回転方向の切替によってラックを前後移動させてヘッドレストを前後移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−61152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術は、ラックが前後方向に配設されるのに対しモータの駆動軸がラックと交差する方向に配設されることから、ヘッドレスト内においてラックピニオン機構全体の配置スペースが大きくなってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、乗物用シートにおいて、ヘッドレストにおける頭部の支持位置を調整可能とする機構の配置スペースの抑制を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の乗物用シートは次の手段をとる。先ず、第1の発明は、乗物用シートであって、シート本体におけるシートバックの上方で乗員の頭もたれとして構成されるヘッドレストのうち乗員の頭部側に面する頭部受面部と、前記頭部受面部を乗員の頭部と反対側の面から支持する基部と、前記頭部受面部と前記基部との間に内装され、電気駆動源としての中空モータと該中空モータの回転軸方向から螺合する軸部材を有し、前記中空モータの駆動によって前記軸部材が進退することで伸縮して全長が変位し、前記頭部受面部を前記基部に対して近接及び離間させて前記ヘッドレストにおける頭部の支持位置を調整可能とするシャフトと、前記頭部受面部と前記基部の間で前記シャフトの伸縮方向に並行し、前記頭部受面部を前記基部に対して移動可能に案内する案内構造を有し、前記頭部受面部は荷重を受けても静止状態を維持する構造である
【0007】
この第1の発明によれば、シャフトの伸縮を利用してヘッドレストの基部に対して頭部受面部を近接及び離間させてヘッドレストにおける頭部の支持位置を調整可能としている。係るシャフトの伸縮は、中空モータの駆動によって軸部材が進退する構成である。そのため、シャフトの伸縮方向と中空モータの駆動軸が同軸となるため、ヘッドレストにおける頭部の支持位置を調整可能とする機構の配置スペースの抑制を図ることができる。また、例えばラックピニオン機構等の構成においては、ヘッドレストにおける頭部の支持位置を調整しないときは、モータの駆動軸に連結したピニオンギアを回転させないための回転止めの部材が別途必要となる。一方、上記構成のシャフトは、電気駆動源としての中空モータと、この中空モータと回転軸方向から螺合する軸部材である。すなわち、シャフトは、中空モータが駆動したときに軸部材の進退が行われるが、軸部材側を進退させても中空モータは駆動しない構成となるため、回転止めの部材を必要としない。また、中空モータと軸部材の螺合構成であれば十分な減速比が得られ別途減速機構を必要としないため、構成部品の増加を抑制した簡素な構成となり得る。また、歯が噛み合う箇所の数が増えるにつれて、噛み合い音が大きくなるという相関関係がある。ここで上記構成によれば、減速機構等の歯車機構を必要としないため、ギアが噛み合う箇所を抑制して噛み合いに伴う音を小さくし得る。
【0008】
次に、第2の発明に係る乗物用シートは、第1の発明において、前記シャフトは、前記シャフトの軸方向及び径方向を弾性支持する弾性体を介して前記頭部受面部と前記基部に取り付けられている。
【0009】
この第2の発明によれば、シャフトの軸方向及び径方向を弾性支持する弾性体を介して頭部受面部と基部に取り付けられる構成であるため、中空モータの駆動に伴う振動、音を抑制し得る。
【0010】
次に、第3の発明に係る乗物用シートは、第2の発明において、前記シャフトは、前記軸部材が前記中空モータの回転軸方向の一方側から螺合され、前記中空モータが前記基部側に取り付けられ、前記軸部材が前記頭部受面部側に取り付けられる。
【0011】
この第3の発明によれば、頭部受面部は、着座する乗員の頭部からの荷重を受けつつ移動する構成であることから軽い構成であることが望ましい。ここで、上記構成は、中空モータが基部側に取り付けられ、軸部材が頭部受面部側に取り付けられる。そのため、頭部受面部側に中空モータを構成する形態より軽量とし得る。また、中空モータの消費電力を抑制し得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、乗物用シートにおいて、ヘッドレストの支持面位置を調整可能とする機構の配置スペースの抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る車両用シートの全体斜視図である。
図2】実施形態1に係る車両用シートのヘッドレストを示した拡大斜視図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図3のIV部の部分を拡大して示した断面図である。
図5図3のV部の部分を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図1〜5を用いて説明する。なお、本実施形態では、乗物用シートのうち車両用シートの前部座席を例示して説明する。各図に適宜矢印で示す方向は、車両用シートに着座する乗員から見たときの前方、後方、上方、下方、右方、左方とそれぞれ一致する方向である。なお、各図は、実施形態の構成を分かり易く説明するために、シート本体の内部構造を主体として図示している。そのため、シート本体1については、骨格を成すフレームなどの内部の骨組み構造を主体として図示しており外部に装着される表皮やシートパッド等の装備品を省略するか又は簡略して図示する。
【0015】
車両用シート(乗物用シート)におけるシート本体1は、図1に示されるように背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭もたれとなるヘッドレスト4とを有する。シートバック2は、骨格を成すバックフレーム2fを有する。バックフレーム2fは、鉄鋼材よりなるパイプ部材、板部材を適宜折り曲げ加工、絞り加工などを施すことで略矩形の枠状に形成されている。
【0016】
シートクッション3の骨格を成すクッションフレーム3fは、鉄鋼材よりなるパイプ部材、板部材を適宜折り曲げ加工、絞り加工などを施すことで略矩形の枠状に形成されている。またクッションフレーム3fの後方には、左右一対に板状のロアアーム3f1、3f1が取り付けられている。シート本体1は、バックフレーム2fの下部とロアアーム3f1、3f1の間に設けられたリクライナ5によって連結されている。これにより、シートバック2は、シートクッション3に対する背凭れ角度の調整を行ったり、シートクッション3に前傾可能な構成である。シート本体1の下部には、シート本体1の乗物の床面等の乗物構成部材としてのフロア面Fに対する車両前後方向の着座位置を調整可能にするスライド機構6を有する。シート本体1とスライド機構6の間は、左右一対の脚部6a、6aによって連結されている。
【0017】
ヘッドレスト4は、図2に示されるようにシートバック2の上方で乗員の頭もたれとして構成される。ヘッドレスト4は、頭部受面部20と、基部10を有している。
【0018】
頭部受面部20は、図2に示されるように乗員の頭部側に面する部材である。本実施形態における頭部受面部20は、合成樹脂製により、前面部21と、側面部22、22、上面部23、下面部24が一体的に構成されており、略カップ状に形成されている。前面部21は、正面視で略台形状に形成される。側面部22、22は、前面部21の幅方向の両端縁から滑らかに後方に延出する。上面部23は、前面部21の上側端縁から滑らかに後方に延出する。下面部24、前面部21の下側端縁から滑らかに後方に延出する。頭部受面部20の外面は、頭部をやわらかく支持するためにクッションパッド、表皮などが覆われる態様もあるが図示、説明を省略する。頭部受面部20は、乗員の頭部を支持する面形状であれば種々の形状を適用できる。
【0019】
基部10は、図2に示されるように頭部受面部20を乗員の頭部と反対側の面から支持する部材である。基部10は、一面が開口した箱状に形成されており、頭部受面部20が開口部を覆うように構成される。基部10は、頭部受面部20と対応して、合成樹脂製により底面部11と、側面部12、12、上面部13、下面部14が一体的に構成されている。また、下面部14の下面には、幅方向に一対のステー11e、11eが垂下状に延出している。ヘッドレスト4は、ステー11e、11eがバックフレーム2fの上方に設けられたホルダ2f1、2f1に挿入することで、シートバック2(図1参照)と連結されている。
【0020】
頭部受面部20と基部10との間には、図2に示されるようにシャフト60が内装されている。係るシャフト60は、図3に示すように頭部受面部20と基部10との間において全長が変位し、頭部受面部20を基部10に対して近接及び離間させてヘッドレスト4における頭部の支持位置Lを調整可能とするものである。ここで、「ヘッドレスト4における頭部の支持位置L」とは、頭部受面部20が基部10と近接した支持位置LAと、頭部受面部20が基部10から離間した支持位置LBの間とする。
【0021】
シャフト60は、図3に示されるように電気駆動源としての中空モータ64と中空モータ64の回転軸方向から螺合するスクリュシャフト93(軸部材)を有しており、中空モータ64の駆動によってスクリュシャフト93が進退することで伸縮して全長が変位する。
【0022】
中空モータ64(電気駆動源)は、図4に示されるように概略、固定子(ステータ)として中空の筒状をなした外筒70と、回転子(ロータ)として中空の筒状をなした内筒80とを有している。なお、中空モータ64はブラシモータでもブラシレスモータのいずれでも適用できる。中空モータ64は、中空の筒状をなした外筒70を有する。この外筒70の内周面である外筒内周面72には、この外筒内周面に沿った円弧状に形成された板状の永久磁石73がS極とN極を交互に隣接するように全周に亘って配設されている。外筒70の前方端部は、開口されておりスクリュシャフト93が長手方向に進退可能とされている。外筒の後方端部は、蓋状の部材で覆われている。外筒70の径方向内方には、中空の筒状をなした内筒80が外筒70と同心上に配設されている。内筒80の外周面である内筒外周面87には、アーマチュアコイルによる電磁石90が構成されている。内筒80の内筒外周面87の両端と、外筒70の外筒内周面72の両端の間には、軸受装置98が配設されている。これにより、外筒70と内筒80は同心上に配設される。内筒80の内周面である内筒内周面82には、スクリュシャフト93が螺合可能なねじが切りかかれている。ここで、内筒内周面82は、同方向の螺旋状に切欠き形成されたねじ部84が形成されている。スクリュシャフト93は金属製の円柱部材に形成されている。スクリュシャフト93の外周面には、内筒80の内筒内周面82のねじ部84に対応してねじ部94が切欠き形成されている。
【0023】
シャフト60は、図1〜3に示すように基部10と頭部受面部20が前後に隣接する方向に沿って内装されている。詳しくは、シャフト60は、スクリュシャフト93が中空モータ64の回転軸方向の一方側から螺合されている。そして、中空モータ64は、連結部100を介して基部10側に取り付けられている。スクリュシャフト93は、連結部100を介して頭部受面部20側に取り付けられている。
【0024】
連結部100は、図5に示されるようにシャフト60の両端を基部10と頭部受面部20に連結する部材である。係る連結部100は、シャフト60の軸方向及び径方向を弾性支持する弾性体106を備えている。ここで、シャフト60の両端が連結部100を介する連結は、実質的に同様の構成であるため、スクリュシャフト93と頭部受面部20が連結される箇所を代表して説明する。連結部100は、ブラケット102と、ガイド104、弾性体106、ボルト108、ナット110、ワッシャ112、L字フランジ114を有する。ブラケット102は、鋼板製の板状部材によって、頭部受面部20のうち乗員の頭部と反対側の面に固定される連結面102aと、係る連結面102aから屈曲することで厚み方向に所定間隔だけ高さ位置が異なる取付面102bを有する。取付面102bは、スクリュシャフト93が取り付けられる面である。取付面102bの略中央には、端縁から切り欠かれた切欠き部102cが設けられている。切欠き部102cには、円筒状のガイド104が挿通されている。ガイド104の両端は、径方向外方に延出する鍔部104aが設けられている。ガイド104のうちスクリュシャフト93の対向する部位には、L字フランジ114がボルト108、ナット110、ワッシャ112によって締結固定されている。スクリュシャフト93の端部は、係るL字フランジ114を介してピン結合されている。ガイド104の外周には、弾性体106が介装される。弾性体106は、合成樹脂、ゴムなどで、環状に形成されており、スクリュシャフト93の軸方向及び径方向を弾性支持する。
【0025】
頭部受面部20と基部10の間には、図1〜3に示すようにシャフト60の伸縮方向に並行し、頭部受面部20を基部に対して移動可能に案内する案内構造が構成される。案内構造30は、ガイドポール32、32と、ガイドブッシュ34、34を有する。ガイドポール32、32は、鉄鋼材のパイプ部材によって線状に構成されている。ガイドブッシュ34、34は、円筒状に構成されており、内周面がガイドポール32、32の外周面を摺動可能に案内する。ガイドブッシュ34、34は、略U字状の固定部材36、36で固定され、シャフト60を挟んで上下一対で配設される。ガイドポール32、32は、ガイドブッシュ34、34の内周面に摺動可能に挿通されている。ガイドポール32、32の一端は、頭部受面部20のうち、乗員の頭部と反対側の面に連結されている。こうして、案内構造30としてのガイドポール32、32とガイドブッシュ34、34は、基部10と頭部受面部20の間でシャフト60の伸縮方向に並行し、頭部受面部20を基部10に対して前後方向に移動可能に案内(ヘッドレストの基部に対して頭部受面部を近接及び離間)する。
【0026】
案内構造30におけるガイドポール32、32、ガイドブッシュ34、34は、頭部受面部20と基部10の間であって、シャフト60を挟んで構成するものであることが望ましいが、ヘッドレスト4内のいずれの位置で案内する構成であってもよい。また、案内構造30は、基部10の側面部12、12、上面部13、下面部14と、頭部受面部20の側面部22、22、上面部23、下面部24がシャフト60の伸縮方向に並行してそれぞれ摺動可能に面接触することで、頭部受面部20を基部に対して移動可能に案内する構造であってもよい。
【0027】
車両用シートの作動を説明する。図3の実線の頭部受面部20は、シャフト60の全長が縮んで基部10と当接して近接する後方位置20Aの姿勢を示している。ヘッドレスト4は、係る後方位置20Aのとき支持位置LAの状態となる。図3、4に示されるようにシャフト60の中空モータ64は電力供給を受けることによって駆動する。中空モータ64の駆動は、内筒80が外筒70に対して軸回りに回転する。そうすると、スクリュシャフト93は、内筒80との螺合に伴い進退する。これにより、シャフト60は伸縮することで全長が変位する。ここで、シャフト60の全長が伸びると、ガイドポール32、32がガイドブッシュ34、34内を摺動する。そして、シャフト60が、頭部受面部20を基部10から離れる前方側に移動させる。図3の仮想線の頭部受面部20は、シャフト60の全長が伸びて前方側に移動した前方位置20Bの姿勢を示している。ヘッドレスト4は、係る前方位置20Bのとき支持位置LBの状態となる。こうして、ヘッドレスト4の支持位置L(LA、LB)を調整可能となる。
【0028】
このように、本実施形態の車両用シートによれば、シャフト60の伸縮を利用してヘッドレスト4の基部10に対して頭部受面部20を近接及び離間させてヘッドレスト4における頭部の支持位置Lを調整可能としている。係るシャフト60の伸縮は、中空モータ64の駆動によってスクリュシャフト93(軸部材)が進退する構成である。そのため、シャフト60の伸縮方向と中空モータ64の駆動軸が同軸となるため、ヘッドレスト4における頭部の支持位置Lを調整可能とする機構の配置スペースの抑制を図ることができる。また、例えばラックピニオン機構等の構成においては、ヘッドレスト4における頭部の支持位置Lを調整しないときは、モータの駆動軸に連結したピニオンギアを回転させないための回転止めの部材が別途必要となる。一方、上記構成のシャフト60は、電気駆動源としての中空モータ64と、この中空モータ64と回転軸方向から螺合するスクリュシャフト93である。すなわち、シャフト60は、中空モータ64が駆動したときにスクリュシャフト93の進退が行われるが、スクリュシャフト93側を進退させても中空モータ64は駆動しない構成となるため、回転止めの部材を必要としない。また、中空モータ64とスクリュシャフト93の螺合構成であれば十分な減速比が得られ別途減速機構を必要としないため、構成部品の増加を抑制した簡素な構成となり得る。また、歯が噛み合う箇所の数が増えるにつれて、噛み合い音が大きくなるという相関関係がある。ここで上記構成によれば、減速機構等の歯車機構を必要としないため、ギアが噛み合う箇所を抑制して噛み合いに伴う音を小さくし得る。
【0029】
また、シャフト60の軸方向及び径方向を弾性支持する弾性体を介して頭部受面部20と基部10に取り付けられる構成であるため、中空モータ64の駆動に伴う振動、音を抑制し得る。
【0030】
また、頭部受面部20は、着座する乗員の頭部からの荷重を受けつつ移動する構成であることから軽い構成であることが望ましい。ここで、上記構成は、中空モータ64が基部10側に取り付けられ、スクリュシャフト93が頭部受面部20側に取り付けられる。そのため、頭部受面部20側に中空モータ64を構成する形態より軽量とし得る。また、中空モータ64の消費電力を抑制し得る。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の乗物用シートは、実施形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。例えば、乗物は、車両に限定されず、鉄道、船舶、航空機等の各種の乗物に適用し得る。
【0032】
また、本実施形態の中空モータ(電気駆動源)は、回転軸方向の一方側からのみ螺合するスクリュシャフト(軸部材)を有する形態であるがこれに限定されない。例えば、シャフトは、長手方向の中間に位置する中間部として中空モータが設けられ、この中空モータに対し長手方向の両側に隣接する二つの側方部として二つのスクリュシャフトが直接螺合されている形態であってもよい。すなわち、内筒の内周面である内筒内周面には、両端からスクリュシャフトが螺合可能なねじが切りかかれている。ここで、内筒内周面は、長手方向中央を境界として一端側に向かってねじの切欠き方向が右方向の右ねじ部が形成されている。また、内筒内周面は、長手方向中央を境界として他端側に向かってねじの切欠き方向が右ねじ部と逆方向の左ねじ部が形成されている。二つのスクリュシャフトの外周面は、内筒の内筒内周面の右ねじ部、左ねじ部に対応して、それぞれねじが切欠き形成されている。これにより、中空モータの駆動によって長手方向の両側のスクリュシャフトが近接、離間をし伸縮するシャフトとなる。このような中空モータであってもよい。係る長手方向の両側にスクリュシャフトがある形態の場合、内筒の1回転により、2つのスクリュシャフトが近接、離間を行う構成となるため消費電力を抑制し得る。
【符号の説明】
【0033】
1 シート本体
2 シートバック
2f バックフレーム
2f1 ホルダ
3 シートクッション
3f クッションフレーム
3f1 ロアアーム
4 ヘッドレスト
5 リクライナ
6 スライド機構
6a 脚部
10 基部
11 底面部
12 側面部
13 上面部
14 下面部
20 頭部受面部
21 前面部
22 側面部
23 上面部
24 下面部
20A 頭部受面部の後方位置
20B 頭部受面部の前方位置
30 案内構造
32 ガイドポール
34 ガイドブッシュ
36 固定部材
60 シャフト
64 中空モータ(電気駆動源)
70 外筒
72 外筒内周面
73 永久磁石
80 内筒
82 内筒内周面
84 ねじ部
87 内筒外周面
90 電磁石
93 スクリュシャフト(軸部材)
94 ねじ部
98 軸受装置
100 連結部
102 ブラケット
102a 連結面
102b 取付面
102c 切欠き部
104 ガイド
104a 鍔部
106 弾性体
108 ボルト
110 ナット
112 ワッシャ
114 L字フランジ
L ヘッドレストにおける頭部の支持位置
LA 頭部受面部が基部と近接した支持位置
LB 頭部受面部が基部から離間した支持位置
F フロア面(乗物の床面等の乗物構成部材)
図1
図2
図3
図4
図5