【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、電流遮断機構を備えた角形二次電池の開発を行うなかで、電池内部の圧力が所定値に達しても、即座に電極体と端子の間の導電経路が切断されないという課題が希に生じることを見出した。発明者らは、このような問題が生じる原因を詳細に調査・検討した。その結果、電池内部の圧力が所定値となったとき、電極体と端子の間の導電経路が即座に切断される場合と、電極体と端子の間の導電経路が即座に切断されない場合では、以下のような違いがあることを見出した。
【0008】
なお、電流遮断機構は、
図16に示すように、カップ形状を有する導電部材41、反転板42、集電体43、及び絶縁部材44を備える。導電部材41の筒状部41aの下端には、筒状部41aの下端の開口が密閉されるように反転板42が溶接接続されている。そして、反転板42の下面の中央には、集電体43が溶接接続されている。集電体43には貫通孔43aが設けられており、この貫通孔43aの縁部が反転板42の下面に溶接接続されている。また、集電体43の貫通孔43aの周囲には薄肉部43bが設けられており、薄肉部43bには貫通孔43aを囲む環状のノッチ部43cが形成されている。反転板42と集電体43の間には、貫通孔44aを有する絶縁部材44が配置されている。貫通孔44aを通じて反転板42と集電体43が接続されている。絶縁部材44には一対の突起部44bが形成されており、この突起部44bがそれぞれ集電体43に設けられた貫通
孔43dに嵌合され、絶縁部材44と集電体43が接続されている。導電部材41は、端子46により封口板45に固定されている、端子46及び導電部材41は、ガスケット47及び絶縁部材48により封口板45と絶縁されている。
【0009】
電池内部の圧力が所定値に達したとき、電極体と端子の間の導電経路が即座に切断される場合は、以下のようにして電流遮断機構が作動する(
図16参照)。
(1)電池内部の圧力が所定値に達する。
(2)反転板42の中央部(集電体43と接続された部分)が封口板45側に押し上げられるように変形する。
(3)(2)に伴い、集電体43において反転板42と溶接接続された部分が、封口板45側に引っ張られる。
(4)集電体43の溶接部の周囲に設けられたノッチ部43cに部分的に亀裂が生じ、一部が破断する(
図16の(2)参照)。
(5)(4)と略同時に、破断した部分を起点に溶接部の周囲が破断する(
図16の(3)参照)。
(6)反転板42と集電体43の電気的接続が切断される。
【0010】
これに対し、電池内部の圧力が所定値に達したとき、電極体と端子の間の導電経路が即座に切断されない場合は、以下のようにして電流遮断機構が作動する(
図17参照)。
(1)電池内部の圧力が所定値に達する。
(2)反転板42の中央部(集電体43と接続された部分)が封口板45側に押し上げられるように変形する。
(3)(2)に伴い、集電体4
3において反転板42と溶接接続された部分が、封口板45側に引っ張られる。
(4)集電体43の溶接部の周囲に設けられたノッチ部43cに部分的に亀裂が生じ、一部が破断する(
図17の(2)参照)。
(5)溶接部の周囲に部分的に切れ残った部分が生じる(
図17の(2)参照)。
(6)この切れ残った部分を介して、反転板42により、集電体43及び集電体43に固定された絶縁部材44が中央方向へ引っ張られ、集電体43及び集電体43に固定された絶縁部材44が横方向に移動する(
図17の(3)参照)。
(7)集電体43が横方向に移動することにより、反転板42と集電体43における破断予定部(ノッチ部43c)の距離が変化する。また、反転板42に対する集電体43の傾斜が急になる。このため、切れ残った部分を切断するためには、より反転板42が封口板45側に移動する必要があるようになる。
(8)これにより、電池内部の圧力が所定値に達しても導電経路が即座に切断されない。
【0011】
なお、電極体と端子の間の導電経路が即座に切断される場合でも、集電体43に亀裂が生じてから集電体43の破断予定部(ノッチ部43c)の一部が破断し、破断予定部(ノッチ部43c)の全てが破断するまでの間には時間差がある。しかしながら、その時間差が極めて小さいため、電池内部の圧力が所定値に達したとき即座に導電経路が切断される。
【0012】
本発明の一態様の角形二次電池は、
開口を有する角形外装体と、
貫通孔を有し前記開口を封口する封口板と、
正極板及び負極板を含み前記角形外装体に収容される電極体と、
前記正極板又は前記負極板に電気的に接続され、前記封口板の貫通孔を貫通する端子と、
前記封口板と前記電極体の間に配置され、前記端子に電気的に接続され、前記電極体側の端部に開口部を有する導電部材と、
前記開口部を封止する反転板と、
前記正極板又は前記負極板に電気的に接続され、前記反転板に接続された集電体と、
前記反転板と前記集電体の間に配置される第1絶縁部材を備え、
前記角形外装体内の圧力が所定値以上となったとき、前記反転板が変形し、これに伴い前記正極板又は前記負極板と前記端子の間の電気的接続が切断される角形二次電池であって、
前記第1絶縁部材は貫通孔を有し、
前記反転板と前記集電体は前記第1絶縁部材の貫通孔を通して接続されており、
前記第1絶縁部材と前記集電体とは固定されており、
前記導電部材は対向するように設けられた第1外側面と第2外側面を有し、
前記第1絶縁部材は、前記第1外側面の外側に位置し前記第1外側面を前記第2外側面の方向に押圧する第1押圧部と、前記第2外側面の外側に位置し前記第2外側面を前記第1外側面の方向に押圧する第2押圧部を有する。
【0013】
本発明の一態様の角形二次電池によると、第1絶縁部材が導電部材に対して強固に固定される。これにより、上述の「電極体と端子の間の導電経路が即座に切断されない場合」における(6)〜(8)に記載するように、第1絶縁部材及び集電体に中央方向に引っ張る力が加わったとしても、第1絶縁部材及び集電体が中央側に移動することを抑制できる。したがって、集電体における破断予定部と反転板の位置関係が変化し難く、また反転板に対する集電体の傾斜が変化し難いため、切れ残った部分が容易に切断されるようになる。よって、電池内部の圧力が所定値になると即座に電極体と端子の間の導電経路が切断される。
【0014】
第1絶縁部材は、前記封口板に対して平行に配置される本体部と、前記本体部から前記封口板側に突出する第1側壁部及び第2側壁部を有し、前記第1側壁部は前記第1押圧部を含み、前記第2側壁部は前記第2押圧部を含むことが好ましい。
【0015】
前記集電体は貫通孔を有し、前記第1絶縁部材は前記集電体側の面に突起部を有し、前記突起部が前記集電体の貫通孔に嵌合することにより、前記集電体と前記第1絶縁部材が固定されていることが好ましい。なお、集電体と第1絶縁部材の嵌合部は2箇所以上設けられていることが好ましい。
【0016】
前記集電体は、前記集電体と前記反転板が溶接接続された部分を囲む環状のノッチ部を有することが好ましい。また、ノッチ部は薄肉部に設けられていることが好ましい。
【0017】
前記集電体は貫通孔を有し、前記集電体は貫通孔の周囲又は縁部が前記反転板に溶接接続されていることが好ましい。
【0018】
前記導電部材は、それぞれ前記封口板の短辺方向に延びる一対の短辺外側面と、それぞれ前記封口板の長辺方向に延びる一対の長辺外側面を有し、前記第1外側面及び前記第2外側面は、前記一対の短辺外側面であることが好ましい。なお、前記導電部材は、平面視の形状が略長方形であることが好ましい。ここで、略長方形とは、一対の長辺と一対の短辺を有していればよく、長方形や、長方形の角部にR部が設けられたもの、あるいは長方形の角部がカットされたもの等を含む。
【0019】
上述の集電体及び集電体に固定された第1絶縁部材の横方向の移動は、封口板の長辺方向において生じやすい。したがって、これを防止するためには、封口板の短辺に沿った一対の短辺側外面が、前記第1外側面と前記第2外側面であることが好ましい。
【0020】
前記導電部材は対向するように設けられた第3外側面と第4外側面を有し、前記第1絶
縁部材は、前記第3外側面の外側に位置し前記第3外側面を前記第4外側面の方向に押圧する第3押圧部と、前記第4外側面の外側に位置し前記第4外側面を前記第3外側面の方向に押圧する第4押圧部を有することが好ましい。
【0021】
本発明の一態様の角形二次電池の製造方法は、
開口を有する角形外装体と、
貫通孔を有し前記開口を封口する封口板と、
正極板及び負極板を含み前記角形外装体に収容される電極体と、
前記正極板又は前記負極板に電気的に接続され、前記封口板の貫通孔を貫通する端子と、
前記封口板と前記電極体の間に配置され、前記端子に電気的に接続され、前記電極体側の端部に開口部を有する導電部材と、
前記開口部を封止する反転板と、
前記正極板又は前記負極板に電気的に接続され、前記反転板に接続された集電体と、
前記反転板と前記集電体の間に配置される第1絶縁部材を備え、
前記第1絶縁部材は貫通孔を有し、
前記反転板と前記集電体は前記第1絶縁部材の貫通孔を通して接続されており、
前記第1絶縁部材と前記集電体とは固定されており、
前記導電部材は対向するように設けられた第1外側面と第2外側面を有し、
前記第1絶縁部材は、前記第1外側面の外側に位置し前記第1外側面を前記第2外側面の方向に押圧する第1押圧部と、前記第2外側面の外側に位置し前記第2外側面を前記第1外側面の方向に押圧する第2押圧部を有し、
前記角形外装体内の圧力が所定値以上となったとき、前記反転板が変形し、これに伴い前記正極板又は前記負極板と前記端子の間の電気的接続が切断される角形二次電池の製造方法であって、
前記第1絶縁部材を前記導電部材に装着する工程を有し、
前記第1絶縁部材が前記導電部材に装着される前の状態において、前記第1押圧部となる部分と前記第2押圧部となる部分の間の距離は、前記導電部材において前記第1押圧部に押圧される予定の部分と前記第2押圧部に押圧される予定の部分の距離よりも小さいことを特徴とする。