(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の小径突部は、前記複数の小径突部が突き出る面に接続する基端と先端とを有し、前記基端から前記先端に向かって細くなり、前記先端に平坦な面を有する錐台形状を有する
請求項8から12のいずれか一項に記載の半導体発光素子用基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
図1〜
図4を参照して、本開示の技術の第1の実施形態として、半導体発光素子用基板の実施形態について説明する。
【0028】
[半導体発光素子用基板の構成]
図1に示されるように、半導体発光素子用の基板である素子用基板11は、1つの側面である発光構造体形成面11Sを有している。半導体発光素子の製造工程にて、発光構造体形成面11Sには、発光構造体が形成される。
【0029】
素子用基板11を形成する材料は、半導体発光素子の製造工程にて、熱的、機械的、化学的、および、光学的な耐性を有している。素子用基板11を形成する材料は、例えば、Al
2O
3(サファイア)、SiC、Si、Ge、MgAl
2O
4、LiTaO
3、LiNbO
3、ZrB
2、GaP、GaN、GaAs、InP、InSn、AlN、および、CrB
2からなる群から選択される1種類である。なかでも、素子用基板11を形成する材料は、機械的、熱的、化学的、および、光学的な耐性が相対的に高い点から、また、光透過性を有する点から、サファイアであることが好ましい。発光構造体形成面11Sは、発光構造体に結晶性を与えることに適した結晶性を自身に有している。
【0030】
発光構造体形成面11Sは、多数の微細な凹凸から構成される凹凸構造を有している。微細な凹凸は、発光構造体形成面11Sの広がる方向に沿って繰り返されている。発光構造体形成面11Sが有する凹凸構造は、多数の大径突部12、多数の小径突部13、および、平坦部14から構成されている。
【0031】
平坦部14は、1つの結晶面に沿って広がる平面である。素子用基板11の結晶系が六方晶系であるとき、平坦部14は、例えば、c面、m面、a面、および、r面からなる群から選択される1つが連続する平面である。素子用基板11の結晶系が立方晶系であるとき、平坦部14は、例えば、(001)面、(111)面、および、(110)面からなる群から選択される1つが連なる平面である。なお、平坦部14が有する結晶面は、上記指数面よりも高指数面であってもよく、発光構造体に結晶性を与えることに適した1つの結晶面であればよい。平坦部14が有する結晶面は、発光構造体形成面11Sの上で、半導体層が結晶性を有することを促す。
【0032】
複数の大径突部12の各々は、平坦部14から突き出ている。複数の大径突部12の各々は、平坦部14に接続する基端から先端に向かって細くなる錐体形状を有している。
複数の小径突部13の一部は、平坦部14から突き出ており、複数の小径突部13の残りは、大径突部12から突き出ている。複数の小径突部13の各々は、大径突部12もしくは平坦部14に接続する基端から先端に向かって細くなる錐体形状を有している。発光構造体形成面11Sと対向する平面視において、小径突部13に外接する円の半径は、大径突部12に外接する円の半径よりも小さい。
【0033】
なお、突部12,13の各々が有する形状は、半球形状であってもよいし、円錐形状であってもよいし、角錐形状であってもよい。換言すれば、突部12,13の頂点を通り、かつ、平坦部14と垂直な平面によって突部12,13が切断された際に、その断面である垂直断面に現れる母線は、曲線であっても直線であってもよく、突部12,13の頂点を頂点とする三角形と、突部12,13の頂点を通る半円とによって囲まれる領域に位置すればよい。また、大径突部12と小径突部13との形状は互いに異なっていてもよい。さらに、大径突部12の各々が有する形状は互いに異なっていてもよく、小径突部13の各々が有する形状は互いに異なっていてもよい。
【0034】
図2に示されるように、互いに隣り合う大径突部12の間の距離であって、平坦部14と平行な方向に沿った距離は、大径突部12のピッチPLである。大径突部12の外表面や平坦部14の表面は、小径突部13と接続する面である。小径突部13と接続する面の法線方向において、その小径突部13と接続する面と、その小径突部13の表面との間の距離の最大値は、その小径突部13の高さHSである。複数の小径突部13の各々において高さHSを有する部位は、その小径突部13の頂点であり、互いに隣り合う小径突部13の頂点間の距離であって、平坦部14と平行な方向に沿った距離は、小径突部13のピッチPSである。
【0035】
大径突部12のピッチPLの最頻値は、300nm以上5.0μm以下であることが好ましく、小径突部13のピッチPSの最頻値は、100nm以上1.0μm以下であることが好ましい。突部12,13のピッチPL,PSが上記の範囲であれば、発光構造体形成面11Sでの光の全反射が抑えられる程度に、発光構造体形成面11Sには、それに必要な配置および密度で突部12,13が形成される。
【0036】
大径突部12のピッチPLの最頻値は、例えば、以下に示されるように、原子間力顕微鏡イメージに基づく画像処理によって求められる。まず、平坦部14に沿った面にて任意に選択される矩形領域に対して、原子間力顕微鏡イメージが得られる。この際に、原子間力顕微鏡イメージの得られる矩形領域にて、矩形領域の一辺の長さは、ピッチPLの最頻値の30倍〜40倍である。次に、フーリエ変換を用いた原子間力顕微鏡イメージの波形分離によって、原子間力顕微鏡イメージに基づく高速フーリエ変換像が得られる。次いで、高速フーリエ変換像における0次ピークと1次ピークとの間の距離が求められ、その距離の逆数が、1つの矩形領域におけるピッチPLとして取り扱われる。そして、互いに異なる25カ所以上の矩形領域についてピッチPLが計測され、こうして得られた計測値の平均値が、ピッチPLの最頻値である。なお、矩形領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることが、より好ましい。
【0037】
同様に、小径突部13のピッチPSの最頻値は、大径突部12の外表面もしくは平坦部14にて任意に選択される矩形領域に対して原子間力顕微鏡イメージが得られ、その原子間力顕微鏡イメージに基づいて上記と同様の画像処理が行われることによって求められる。
【0038】
大径突部12の平坦部14からの高さHLは、100nm以上4.0μm以下であることが好ましく、小径突部13におけるその小径突部13が接続している大径突部12の外表面もしくは平坦部14からの高さHSは、10nm以上800nm以下であることが好ましい。突部12,13の高さHL,HSが上記の範囲であれば、発光構造体形成面11Sでの光の全反射が抑えられやすい。なお、大径突部12の高さHLおよび小径突部13の高さHSの各々は、上記垂直断面において、突部12,13の基端の両端を結ぶ直線と直交する方向に沿った突部12,13の最大の長さである。
【0039】
大径突部12の高さHLの最頻値は、例えば、以下に示されるように、原子間力顕微鏡イメージに基づく画像処理によって求められる。まず、平坦部14に沿った面にて任意に選択される矩形領域に対して、原子間力顕微鏡イメージが得られ、その原子間力顕微鏡イメージから、凹凸構造の断面形状が得られる。次に、断面形状にて連続する5個以上の大径突部12に対して、大径突部12における頂点の高さと、その大径突部12に接続する平坦部14の高さとの差が計測される。次いで、互いに異なる5カ所以上の矩形領域についても同様に大径突部12の高さが計測され、合計で25以上の大径突部12の高さが計測される。そして、2次元のフーリエ変換像を用いた赤道方向プロファイルが作成され、その一次ピークの逆数から、大径突部12における高さHLの最頻値は求められる。なお、矩形領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることが、より好ましい。
【0040】
同様に、小径突部13の高さHSの最頻値は、大径突部12の外表面もしくは平坦部14にて任意に選択される矩形領域に対して原子間力顕微鏡イメージが得られ、その原子間力顕微鏡イメージに基づいて上記と同様の画像処理が行われることによって求められる。
【0041】
大径突部12と接続している複数の小径突部13において、小径突部13の高さHSは、大径突部12の基端に近い小径突部13ほど小さいことが好ましい。また、上記垂直断面において、大径突部12の基端の両端を結ぶ線分の長さは、大径突部12の幅DLであり、小径突部13の基端の両端を結ぶ線分の長さは、小径突部13の幅DSである。大径突部12の外表面と接続している複数の小径突部13において、小径突部13の幅DSは、大径突部12の基端に近い小径突部13ほど大きいことが好ましい。この際に、大径突部12と接続している複数の小径突部13のなかで小径突部13の位置が大径突部12の基端に近い小径突部13ほど、小径突部13の高さHSが小さく、かつ、小径突部13の幅DSが大きく、小径突部13の形状は扁平である。
【0042】
なお、小径突部13の頂点を通り、かつ、平坦部14と平行な面によって小径突部13が切断された際に、その断面において、小径突部13の基端の両端を結ぶ線分の長さは、大径突部12との接続位置に関わらずほぼ一定であることが好ましい。この場合、複数の小径突部13においては、大径突部12の基端に近い小径突部13ほど小径突部13の高さHSが小さく、かつ、小径突部13の幅DSが大きい。そして、複数の小径突部13のなかで、小径突部13の位置が大径突部12の先端に近い小径突部13ほど、小径突部13の形状は、略半球形状であり、小径突部13の位置が大径突部12の基端に近い小径突部13ほど、大径突部12の先端から基端へ向かって延びる略半楕円体形状である。換言すれば、複数の小径突部13のなかで大径突部12の基端に近い小径突部13では、大径突部12の外表面に、小径突部13が大径突部12の先端から基端へ向かって延びるスジ状や滴状に形成される。
【0043】
また、平坦部14の距離(PL−DL)とピッチPLとの比((PL−DL)/PL)は、1/10以上1/2以下が好ましく、1/6以上1/3以下がより好ましい。
大径突部12の幅DLに対する高さHLの比は、大径突部12のアスペクト比であり、小径突部13の幅DSに対する高さHSの比は、小径突部13のアスペクト比である。大径突部12のアスペクト比は、0.3以上0.9以下であることが好ましく、0.5以上0.8以下であることがより好ましい。大径突部12の頂上付近の小径突部13のアスペクト比は、0.3以上0.9以下であることが好ましく、0.5以上0.8以下であることがより好ましい。大径突部12のアスペクト比が0.5以上、小径突部13のアスペクト比が0.5以上であれば、発光構造体形成面11Sでの光の全反射が抑えられやすい。また、大径突部12のアスペクト比が0.6以下、小径突部13のアスペクト比が0.6以下であれば、突部12,13の間への発光構造体を構成する半導体層、特にバッファ層、アンドープGaNによる埋め込みが容易に行われる。
【0044】
上述したスジ状や滴状を有した小径突部13の形状について
図3を参照して詳細に説明する。
図3に示されるように、大径突部12の表面と対向する正面視において、小径突部13は、大径突部12の表面において大径突部12の先端から基端へ向かって延びる長軸を有する、略楕円形状を有している。各小径突部13の形状は、その位置に応じて異なっている。大径突部12の先端近くに位置する小径突部13ほど、円形に近い形状を有している。楕円形状を有した複数の小径突部13の各々において、大径突部12の先端に最も近い部位は、小径突部13の先端13fであり、大径突部12の基端に最も近い部位は、小径突部13の基端13bである。楕円形状を有した小径突部13において、先端13fと基端13bとの間の距離は長軸方向における幅であり、先に記載した小径突部13の幅DSである。
【0045】
楕円形状を有した小径突部13において、先端13fと基端13bとの間の中央は、小径突部13の中央部位13Mである。大径突部12の周方向において、楕円形状を有した小径突部13の有する両端部の間の距離は短軸方向に沿った幅であり、小径突部13の短径幅WSである。複数の小径突部13の各々において、最も大きい短径幅WSを有する最大幅部位は、小径突部13の長軸方向において、中央部位13Mと基端13bとの間に位置する。各小径突部13の長軸方向の幅DSにおける最大幅部位の位置は、小径突部13ごとに異なる。例えば、大径突部12と接続する複数の小径突部13のなかで、大径突部12の先端に近い小径突部13ほど、最大幅部位は中
央部位13Mに近く、反対に、大径突部12の基端に近い小径突部13ほど、最大幅部位は基端13bに近い。各小径突部13の長軸方向の幅DSにおける高さHSを有する部位、すなわち、頂点の位置も小径突部13ごとに異なっており、大径突部12の先端に近い小径突部13ほど、頂点の位置は先端13fに近い。
【0046】
図4に示されるように、発光構造体形成面11Sの平面視にて、大径突部12の外周縁からは、小径突部13が突き出ている。すなわち、大径突部12と、その大径突部12に接続している小径突部13とから構成される突部の外形は、凹凸状に波打っている。
【0047】
大径突部12と小径突部13とは、規則的に配列されていてもよく、不規則に並んでいてもよい。発光構造体形成面11Sでの光の全反射を抑えるためには、大径突部12と小径突部13との各々が、発光構造体形成面11Sの平面視にて、2次元に最密充填されていることが好ましい。こうした構造によれば、発光構造体形成面11Sに形成される発光構造体の膜ストレスが1つの小径突部13に集中することも抑えられるため、小径突部13に必要とされる機械的な強度も抑えられる。
【0048】
[半導体発光素子用基板の作用]
第1の実施形態の素子用基板11を用いた半導体発光素子では、発光構造体形成面11Sが平坦である場合と比較して、発光構造体形成面11Sの大径突部12が形成されている部分では、発光構造体にて生じた光の発光構造体形成面11Sへの入射角は小さくなる。その結果、光の入射角が臨界角より大きくなることが抑えられるので、発光構造体と素子用基板11との界面で全反射が繰り返されることが抑えられる。
【0049】
また、発光構造体形成面11Sが小径突部13を有していることによって、上述のような光の反射角度の変化に加えて、発光構造体にて生じた光は小径突部13に当たって回折を起こしやすくなる。特に、第1の実施形態では、平坦部14からも小径突部13が突き出ているため、こうした光の回折がより起こりやすい。
【0050】
このように、発光構造体形成面11Sが大径突部12と小径突部13とを有していることによって、発光構造体にて生じた光の進む方向が分散されるため、発光構造体と素子用基板11との界面で全反射が抑えられる結果、光の取り出し効率を高めることができる。
【0051】
また、小径突部13の形状は、大径突部12の先端から基端へ向かって扁平になるため、大径突部12の先端よりも基端の方が、大径突部12の外表面における凹凸がなだらかになる。したがって、大径突部12の先端よりも基端の方が、隣接する小径突部13の間に形成される溝の深さが浅くなる。そのため、発光構造体形成面11Sにバッファ層、アンドープGaNを含む半導体層が成膜される際に、大径突部12の基端付近にて、上記溝がバッファ層、アンドープGaNを含む半導体層で埋まりやすくなる。したがって、小径突部13の位置に関わらず隣接する小径突部13の間に形成される溝の深さが一定である場合と比較して、バッファ層、アンドープGaNを含む半導体層の成膜が均一に進む。
【0052】
また、発光構造体形成面11Sの平面視にて、大径突部12と小径突部13とから構成される突部の外形が凹凸状に波打っているため、発光構造体形成面11Sにバッファ層、
アンドープGaNを含む半導体層が成膜される際に結晶欠陥が生じることが抑えられる。通常、結晶成長によってバッファ層、アンドープGaNを含む半導体層が成膜される際、発光構造体形成面11Sの平坦な部分を起点として、その平坦面に平行な方向と垂直な方向とに結晶成長が進む。ここで、複数の平坦な部分で生じた結晶が平坦面に平行な方向に進んでぶつかる際に結晶転
位が起こりやすいが、この際に、発光構造体形成面11Sの凹凸構造が障害となって結晶転
位の進む方向が規制される。その結果、結晶転
位が、その起こりやすい方向に進んで結晶欠陥が増大することが抑えられる。特に、第1の実施形態では、上記突部の外形が凹凸状に波打った複雑な形状であるため、こうした結晶欠陥の抑制効果が高い。
【0053】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)発光構造体形成面11Sが大径突部12と小径突部13とを有しているため、光の反射や回折等によって、発光構造体にて生じた光の進む方向が分散される。その結果、発光構造体と素子用基板11との界面での全反射が抑えられるため、光の取り出し効率を高めることができる。
【0054】
(2)平坦部14からも小径突部13が突き出ているため、(1)の効果が高められる。
(3)大径突部12の先端から基端へ向かって、小径突部13の高さHSが小さくなるため、大径突部12の外表面における凹凸がなだらかになる。その結果、バッファ層、アンドープGaNを含む半導体層が成膜されやすくなる。また、大径突部12の先端から基端へ向かって、小径突部13の幅DSが大きくなるため、大径突部12の外表面における凹凸は、よりなだらかになる。
【0055】
(4)発光構造体形成面11Sの平面視にて、大径突部12と小径突部13とから構成される突部の外形が凹凸状に波打っているため、発光構造体形成面11Sにバッファ層、アンドープGaNを含む半導体層が成膜される際に結晶欠陥が生じることが抑えられる。
【0056】
(第1の変形例)
図5を参照して、第1の実施形態の変形例である第1の変形例について説明する。第1の変形例は、第1の実施形態と比較して、大径突部の形状が異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図5に示されるように、大径突部22は、錐台形状であって、先端部分が平坦に形成され、頂点を有していない。大径突部22が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、大径突部22の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、大径突部22の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0058】
上記の構成においても、大径突部22と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の高さHSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部22の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の幅DSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど大きいことが好ましい。
【0059】
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に準じた効果が得られる。
(第2の変形例)
図6を参照して、第1の実施形態の変形例である第2の変形例について説明する。第2の変形例は、第1の実施形態と比較して、小径突部の形状が異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図6に示されるように、小径突部23は、錐台形状であって、先端部分が平坦に形成され、頂点を有していない。小径突部23が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、小径突部23の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、小径突部23の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0061】
上記の構成においても、大径突部12と接続している複数の小径突部23においては、小径突部23の高さHSは、大径突部12の基端に近い小径突部23ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部12の外表面と接続している複数の小径突部23においては、小径突部23の幅DSは、大径突部12の基端に近い小径突部23ほど大きいことが好ましい。
【0062】
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に準じた効果が得られる。
(第3の変形例)
図7を参照して、第1の実施形態の変形例である第3の変形例について説明する。第3の変形例は、第1の実施形態と比較して、大径突部と小径突部の形状が異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図7に示されるように、大径突部22は、錐台形状であって、先端部分が平坦に形成され、頂点を有していない。また、小径突部23は、錐台形状であって、先端部分が平坦に形成され、頂点を有していない。
【0064】
突部22,23が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、突部22,23の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、大径突部22と小径突部23とが、互いに異なる錐台形状を有していてもよい。さらに、大径突部22の各々が有する形状は互いに異なっていてもよく、小径突部23の各々が有する形状は互いに異なっていてもよい。
【0065】
上記の構成においても、大径突部22と接続している複数の小径突部23においては、小径突部23の高さHSは、大径突部22の基端に近い小径突部23ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部22の外表面と接続している複数の小径突部23においては、小径突部23の幅DSは、大径突部22の基端に近い小径突部23ほど大きいことが好ましい。
【0066】
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に準じた効果が得られる。
(第4の変形例)
図8および
図9を参照して、第1の実施形態の変形例である第4の変形例について説明する。第4の変形例は、第1の実施形態と比較して、大径突部の形状が異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図8に示されるように、大径突部22は、錐台形状であって、先端部分に平坦な面22Sを有している。大径突部22が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、大径突部22の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、大径突部22の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0068】
大径突部22の有する平坦な面22Sは、1つの結晶面に沿って広がる平面である。素子用基板11の結晶系が六方晶系であるとき、平坦な面22Sは、例えば、c面、m面、a面、および、r面からなる群から選択される1つが連続する平面である。素子用基板11の結晶系が立方晶系であるとき、平坦な面22Sは、例えば、(001)面、(111)面、および、(110)面からなる群から選択される1つが連なる平面である。なお、平坦な面22Sが有する結晶面は、上記指数面よりも高指数面であってもよく、発光構造体に結晶性を与えることに適した1つの結晶面であればよい。
【0069】
大径突部22の外表面に位置する複数の小径突部13は、大径突部22の周方向に沿って並んでいる。大径突部22において平坦部14に接続する基端22Eには、1段目の小径突部13が、大径突部22の周方向に沿って並んでいる。また、大径突部22の外表面において、1段目の小径突部13よりも大径突部22の先端に近い部位には、2段目の小径突部13が、これもまた大径突部22の周方向に沿って並んでいる。
【0070】
図9が示すように、大径突部22の外表面に位置する複数の小径突部13は、大径突部22の外表面の中で平坦な面22S以外から突き出ている。複数の小径突部13の各々は、大径突部22の外表面に接続する基端から先端に向かって細くなる錐体形状を有している。なお、大径突部22の外表面において、複数の小径突部13は、1段目の小径突部13のみから構成されてもよいし、3段以上の小径突部13から構成されてもよい。
【0071】
上記の構成においても、大径突部22と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の高さHSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部22の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の幅DSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど大きいことが好ましい。
【0072】
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に準じた効果が得られる。しかも、大径突部22の先端が平坦な面22Sを有するため、大径突部22の先端において、半導体層が結晶性を有することを促すことが可能である。
【0073】
(第5の変形例)
図10、および、
図11を参照して、第1の実施形態の変形例である第5の変形例について説明する。第
5の変形例は、第1の実施形態と比較して、大径突部および小径突部の形状が異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図10に示されるように、大径突部22は、錐台形状であって、先端部分に平坦な面22Sを有している。また、小径突部23は、錐台形状であって、先端部分に平坦な面を有している。
【0075】
大径突部22、および、小径突部23が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、大径突部22、および、小径突部23の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、大径突部22と小径突部23とが、互いに異なる錐台形状を有していてもよい。さらに、大径突部22の各々が有する形状は互いに異なっていてもよく、小径突部23の各々が有する形状は互いに異なっていてもよい。
【0076】
上記の構成においても、大径突部22と接続している複数の小径突部23においては、小径突部23の高さHSは、大径突部22の基端に近い小径突部23ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部22の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部23の幅DSは、大径突部22の基端に近い小径突部23ほど大きいことが好ましい。
【0077】
なお、
図11に示されるように、小径突部23の中で2段目の小径突部23は、錐台形状であって、先端部分に平坦な面を有している一方で、小径突部23の中で、平坦部14から突き出る小径突部23、および、1段目の小径突部23は、小径突部23を形成するための条件を簡便に設定できる観点において、錐体形状であることが好ましい。
【0078】
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に準じた効果が得られる。しかも、大径突部22の先端が平坦な面22Sを有するため、大径突部22の先端において、半導体層が結晶性を有することを促すことが可能である。また、小径突部23の先端が平坦な面を有するため、小径突部23の先端においても、半導体層が結晶性を有することを促すことが可能である。
【0079】
(第6の変形例)
図12を参照して、第1の実施形態の変形例である第6の変形例について説明する。第6の変形例は、第1の実施形態と比較して、発光構造体形成面11Sがブリッジ部を備えている点が異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図12に示されるように、発光構造体形成面11Sが有する凹凸構造には、大径突部12、小径突部13、平坦部14に加えて、多数のブリッジ部15が含まれている。
複数のブリッジ部15の各々は、平坦部14から突き出て、かつ、互いに隣り合う大径突部12の間を連結している。ブリッジ部15は、錐体形状を有する大径突部12の中心同士を結ぶ突条形状を有し、ブリッジ部15の高さは、大径突部12の高さよりも低い。なお、ブリッジ部15の有する形状は、直線形状に限らず、曲線形状であってもよいし、折線形状であってもよい。ブリッジ部15の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0081】
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に準じた効果が得られる。また、ブリッジ部15が形成されることによって、発光構造体にて生じた光がブリッジ部15の位置でも反射等によって進む方向を変えるため、光の取り出し効率がより高められる。また、ブリッジ部15が形成されることによって、発光構造体形成面11Sの凹凸構造がより複雑になるため、大径突部12と小径突部13とから構成される突部の外形が凹凸状であることによる効果と同様に、結晶欠陥の抑制効果が高められる。
【0082】
なお、第1の実施形態、および、第1〜第6の変形例が組み合わされてもよい。例えば、第1〜第5の変形例の半導体発光素子用基板に、第6の変形例のブリッジ部15が設けられてもよい。また例えば、1つの半導体発光素子用基板に、第1の実施形態の大径突部12と小径突部13とからなる突部と、第1〜第5の変形例の各々における大径突部と小径突部とからなる突部とが混在していてもよい。
【0083】
(第2の実施形態)
図13および
図14を参照して、本開示の技術の第2の実施形態として、半導体発光素子用基板の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、小径突部の配置が異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0084】
[半導体発光素子用基板の構成]
図13に示されるように、素子用基板11の有するすべての小径突部13は大径突部12から突き出ており、平坦部14からは小径突部13が突き出ていない。
【0085】
大径突部12の形状や配置に関する条件は、第1の実施形態の大径突部12の形状や配置と同様である。また、小径突部13の形状や配置に関する条件は、第1の実施形態における大径突部12と接続している小径突部13の形状や配置と同様である。
【0086】
すなわち、第2の実施形態においても、大径突部12と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の高さHSは、大径突部12の基端に近い小径突部13ほど小さいことが好ましい。また、上記垂直断面において、大径突部12の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の幅DSは、大径突部12の基端に近い小径突部13ほど大きいことが好ましい。
【0087】
図14に示されるように、発光構造体形成面11Sの平面視にて、平坦部14には、小径突部13が形成されていない。大径突部12の外周縁からは、小径突部13が突き出ており、大径突部12と、その大径突部12に接続している小径突部13とから構成される突部の外形は、凹凸状に波打っている。
【0088】
[半導体発光素子用基板の作用]
第2の実施形態では、平坦部14に小径突部13が形成されていないため、発光構造体形成面11Sにおいて、平坦な部分の面積が増える。上述のように、発光構造体形成面11Sにバッファ層、アンドープGaNを含む半導体層が成膜される際には、発光構造体形成面11Sの平坦な部分を起点として、結晶成長が進む。この点、第2の実施形態は、第1の実施形態よりも、発光構造体形成面11Sにて平坦な部分が多いため、バッファ層、アンドープGaNを含む半導体層の成膜が行いやすい。
【0089】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態における(1)、(3)、(4)の効果に加えて、以下の効果が得られる。
(5)平坦部14に小径突部13が形成されていないため、発光構造体形成面11Sにて平坦な部分の面積が増加する結果、バッファ層、アンドープGaNを含む半導体層の成膜が行いやすい。
【0090】
(第7の変形例)
図15を参照して、第2の実施形態の変形例である第7の変形例について説明する。第
7の変形例は、第2の実施形態と比較して、大径突部の形状が異なる。以下では、第2の実施形態との相違点を中心に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0091】
図15に示されるように、大径突部22は、錐台形状であって、先端部分が平坦に形成され、頂点を有していない。大径突部22が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、大径突部22の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、大径突部22の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0092】
上記の構成においても、大径突部22と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の高さHSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部22の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の幅DSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど大きいことが好ましい。
【0093】
すなわち、第7の変形例は、第1の変形例にて平坦部14に小径突部13が形成されていない構成を有する。
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)、(3)、(4)の効果と、第2の実施形態における(5)の効果に準じた効果が得られる。
【0094】
(第8の変形例)
図16を参照して、第2の実施形態の変形例である第8の変形例について説明する。第8の変形例は、第2の実施形態と比較して、小径突部の形状が異なる。以下では、第2の実施形態との相違点を中心に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0095】
図16に示されるように、小径突部23は、錐台形状であって、先端部分が平坦に形成され、頂点を有していない。小径突部23が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、小径突部23の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、小径突部23の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0096】
上記の構成においても、大径突部12と接続している複数の小径突部23においては、小径突部23の高さHSは、大径突部12の基端に近い小径突部23ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部12の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部23の幅DSは、大径突部12の基端に近い小径突部23ほど大きいことが好ましい。
【0097】
すなわち、第
8の変形例は、第2の変形例にて平坦部14に小径突部23が形成されていない構成を有する。
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)、(3)、(4)の効果と、第2の実施形態における(5)の効果に準じた効果が得られる。
【0098】
(第9の変形例)
図17を参照して、第2の実施形態の変形例である第9の変形例について説明する。第9の変形例は、第2の実施形態と比較して、大径突部および小径突部の形状が異なる。以下では、第2の実施形態との相違点を中心に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0099】
図17に示されるように、大径突部22は、錐台形状であって、先端部分が平坦に形成され、頂点を有していない。また、小径突部23は、錐台形状であって、先端部分が平坦に形成され、頂点を有していない。
【0100】
大径突部22、および、小径突部23が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、大径突部22、および、小径突部23の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、大径突部22と小径突部23とが、互いに異なる錐台形状を有していてもよい。さらに、大径突部22の各々が有する形状は互いに異なっていてもよく、小径突部23の各々が有する形状は互いに異なっていてもよい。
【0101】
上記の構成においても、大径突部22と接続している複数の小径突部23においては、小径突部23の高さHSは、大径突部22の基端に近い小径突部23ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部22の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部23の幅DSは、大径突部22の基端に近い小径突部23ほど大きいことが好ましい。
【0102】
すなわち、第9の変形例は、第
2の変形例にて平坦部14に小径突部23が形成されていない構成を有する。
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)、(3)、(4)の効果と、
第2の実施形態における(5)の効果に準じた効果が得られる。
【0103】
(第10の変形例)
図18および
図19を参照して、第2の実施形態の変形例である第10の変形例について説明する。第10の変形例は、第2の実施形態と比較して、大径突部の形状が異なる。以下では、第2の実施形態との相違点を中心に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図18に示されるように、大径突部22は、錐台形状であって、先端部分に平坦な面22Sを有している。大径突部22が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、大径突部22の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、大径突部22の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0105】
大径突部22の有する平坦な面22Sは、1つの結晶面に沿って広がる平面である。素子用基板11の結晶系が六方晶系であるとき、平坦な面22Sは、例えば、c面、m面、a面、および、r面からなる群から選択される1つが連続する平面である。素子用基板11の結晶系が立方晶系であるとき、平坦な面22Sは、例えば、(001)面、(111)面、および、(110)面からなる群から選択される1つが連なる平面である。なお、平坦な面22Sが有する結晶面は、上記指数面よりも高指数面であってもよく、発光構造体に結晶性を与えることに適した1つの結晶面であればよい。
【0106】
大径突部22の外表面に位置する複数の小径突部13は、大径突部22の周方向に沿って並んでいる。大径突部22において平坦部14に接続する基端22Eには、1段目の小径突部13が、大径突部22の周方向に沿って並んでいる。また、大径突部22の外表面において、1段目の小径突部13よりも大径突部22の先端に近い部位には、2段目の小径突部13が、これもまた大径突部22の周方向に沿って並んでいる。
【0107】
図19が示すように、大径突部22の外表面に位置する複数の小径突部13は、大径突部22の外表面の中で平坦な面22S以外から突き出ている。複数の小径突部13の各々は、大径突部22の外表面に接続する基端から先端に向かって細くなる錐体形状を有している。なお、大径突部22の外表面において、複数の小径突部13は、1段目の小径突部13のみから構成されてもよいし、3段以上の小径突部13から構成されてもよい。
【0108】
上記の構成においても、大径突部22と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の高さHSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部22の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部13の幅DSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど大きいことが好ましい。
【0109】
すなわち、第10の変形例は、第4の変形例にて平坦部14に小径突部13が形成されていない構成を有する。
こうした構成によっても、第2の実施形態における(5)の効果に準じた効果が得られる。しかも、半導体層の結晶成長において平坦部14が有する機能と同様の機能を平坦な面22Sが有する。そのため、大径突部22の先端上の半導体層に対して、平坦部14上の半導体層に求められる結晶性と同様の結晶性を与えることが可能である。
【0110】
(第11の変形例)
図20、および、
図21を参照して、第2の実施形態の変形例である第11の変形例について説明する。第11の変形例は、第2の実施形態と比較して、大径突部および小径突部の形状が異なる。以下では、第2の実施形態との相違点を中心に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0111】
図20に示されるように、大径突部22は、錐台形状であって、先端部分に平坦な面22Sを有している。また、小径突部23は、錐台形状であって、先端部分に平坦な面を有している。
【0112】
大径突部22、および、小径突部23が有する形状は、半球の頂部が切り取られた形状であってもよいし、円錐台形状や、角錐台形状であってもよい。換言すれば、上記垂直断面にて、大径突部22、および、小径突部23の側面を構成する母線は、曲線であっても直線であってもよい。また、大径突部22と小径突部23とが、互いに異なる錐台形状を有していてもよい。さらに、大径突部22の各々が有する形状は互いに異なっていてもよく、小径突部23の各々が有する形状は互いに異なっていてもよい。
【0113】
上記の構成においても、大径突部22と接続している複数の小径突部13においては、小径突部23の高さHSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど小さいことが好ましい。また、垂直断面において、大径突部22の外表面と接続している複数の小径突部13においては、小径突部23の幅DSは、大径突部22の基端に近い小径突部13ほど大きいことが好ましい。
【0114】
なお、
図21に示されるように、小径突部23の中で2段目の小径突部23は、錐台形状であって、先端部分に平坦な面を有している一方で、小径突部23の中で、平坦部14から突き出る小径突部23、および、1段目の小径突部23は、小径突部23を形成するための条件を簡便に設定できる観点において、錐体形状であることが好ましい。
【0115】
すなわち、第11の変形例は、第5の変形例にて平坦部14に小径突部23が形成されていない構成を有する。
こうした構成によっても、第2の実施形態における(5)の効果に準じた効果が得られる。しかも、半導体層の結晶成長において平坦部14が有する機能と同様の機能を平坦な面22Sと、小径突部23の先端とが有する。そのため、大径突部22の先端上の半導体層と、小径突部23の先端上の半導体層とに対して、平坦部14上の半導体層に求められる結晶性と同様の結晶性を与えることが可能である。
【0116】
(第12の変形例)
図22、および、
図23を参照して、第2の実施形態の変形例である第12の変形例について説明する。第12の変形例は、第2の実施形態と比較して、発光構造体形成面11Sがブリッジ部を備えている点が異なる。以下では、第2の実施形態との相違点を中心に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0117】
図22に示されるように、発光構造体形成面11Sが有する凹凸構造には、大径突部12、小径突部13、平坦部14に加えて、多数のブリッジ部15が含まれている。
複数のブリッジ部15の各々は、平坦部14から突き出て、かつ、互いに隣り合う大径突部12の間を連結している。ブリッジ部15は、錐体形状を有する大径突部12の中心同士を結ぶ突条形状を有し、ブリッジ部15の高さは、大径突部12の高さよりも低い。なお、ブリッジ部15の有する形状は、直線形状に限らず、曲線形状であってもよいし、折線形状であってもよい。ブリッジ部15の各々が有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0118】
また、
図23に示されるように、発光構造体形成面11Sが有する凹凸構造には、錐台形状を有する大径突部22と、錐体形状を有する小径突部23と、平坦部14とに加えて、上述した多数のブリッジ部15が含まれてもよい。ブリッジ部15は、錐台形状を有する大径突部22の中心同士を結ぶ突条形状を有し、ブリッジ部15の高さは、大径突部22の高さよりも低い。錐台形状を有する大径突部22とブリッジ部15とを有する構成は、大径突部22の先端に平坦な面を形成するための条件を簡便に設定できる観点において好ましい。
【0119】
すなわち、第12の変形例は、第6の変形例にて平坦部14に小径突部23が形成されていない構成を有する。
こうした構成によっても、第1の実施形態における(1)、(3)、(4)の効果と、第2の実施形態における(5)の効果に準じた効果が得られる。また、ブリッジ部15が形成されることによって、発光構造体にて生じた光がブリッジ部15の位置でも反射等によって進む方向を変えるため、光の取り出し効率がより高められる。また、ブリッジ部15が形成されることによって、発光構造体形成面11Sの凹凸構造がより複雑になるため、大径突部12と小径突部13とから構成される突部の外形が凹凸状であることによる効果と同様に、結晶欠陥の抑制効果が高められる。
【0120】
なお、第2の実施形態、および、第7〜第12の変形例が組み合わされてもよい。例えば、第7〜第11の変形例の半導体発光素子用基板に、第12の変形例のブリッジ部15が設けられてもよい。また例えば、1つの半導体発光素子用基板に、第2の実施形態の大径突部12と小径突部13とからなる突部と、第7〜第11の変形例の各々における大径突部と小径突部とからなる突部とが混在していてもよい。
【0121】
(第3の実施形態)
図24〜
図30を参照して、本開示の技術の第3の実施形態として、半導体発光素子用基板の製造方法の実施形態について説明する。
【0122】
[半導体素子用基板の製造方法]
半導体発光素子用基板の製造方法は、互いに異なる大きさの2種類の粒子を用いて基板をエッチングする大径粒子工程と小径粒子工程とを含む。
【0123】
大径粒子工程は、大径粒子膜形成工程と第1工程の一例である大径粒子エッチング工程とを含み、小径粒子工程は、小径粒子膜形成工程と第2工程の一例である小径粒子エッチング工程とを含む。
【0124】
大径粒子膜形成工程では、発光構造体形成面11Sに大径の粒子から構成される単粒子膜が形成され、大径粒子エッチング工程では、単粒子膜をマスクとして発光構造体形成面11Sがエッチングされる。小径粒子膜形成工程では、大径粒子エッチング工程にてエッチングされた発光構造体形成面11Sに小径の粒子から構成される単粒子膜が形成され、小径粒子エッチング工程では、単粒子膜をマスクとして発光構造体形成面11Sがさらにエッチングされる。以下、半導体発光素子用基板の製造方法に含まれる各工程を、処理の順に説明する。
【0125】
[大径粒子膜形成工程]
大径粒子工程にて用いられる単粒子膜を構成する大径粒子SLは、有機粒子、有機無機複合粒子、無機粒子からなる群から選択される1種類以上の粒子である。有機粒子を形成する材料は、例えば、ポリスチレン、PMMA等の熱可塑性樹脂と、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレン類とからなる群から選択される1種類である。有機無機複合粒子を形成する材料は、例えば、SiC、炭化硼素からなる群から選択される1種類である。
【0126】
大径粒子SLは、無機粒子であることが好ましい。大径粒子SLが無機粒子であれば、大径粒子SLからなる単粒子膜が選択的にエッチングされる工程にて、単粒子膜と発光構造体形成面11Sとの間におけるエッチングの選択比が得られやすい。無機粒子を形成する材料は、例えば、無機酸化物、無機窒化物、無機硼化物、無機硫化物、無機セレン化物、金属化合物、金属からなる群から選択される1種類である。
【0127】
無機酸化物は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、酸化亜鉛、酸化スズ、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)からなる群から選択される1種類である。無機窒化物は、例えば、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素からなる群から選択される1種類である。無機硼化物は、例えば、ZrB
2、CrB
2からなる群から選択される1種類である。無機硫化物は、例えば、硫化亜鉛、硫化カルシウム、硫化カドミウム、硫化ストロンチウムからなる群から選択される1種類である。無機セレン化物は、例えば、セレン化亜鉛、セレン化カドミウムからなる群から選択される1種類である。金属粒子は、Si、Ni、W、Ta、Cr、Ti、Mg、Ca、Al、Au、Ag、および、Znからなる群から選択される1種類の粒子である。
【0128】
なお、大径粒子SLを形成する材料は、構成元素の一部が、それとは異なる他元素によって置換されてもよい。例えば、大径粒子SLを形成する材料は、シリコンとアルミニウムと酸素と窒素からなるサイアロンであってもよい。また、大径粒子SLは、互いに異なる材料からなる2種類以上の粒子の混合物であってもよい。また、大径粒子SLは、互いに異なる材料からなる積層体であってもよく、例えば、無機窒化物からなる無機粒子が、無機酸化物によって被覆された粒子であってもよい。また、大径粒子SLは、無機粒子の中にセリウムやユーロピウムなどの付活剤が導入された蛍光体粒子であってもよい。なお、上述した材料のなかでも、大径粒子SLの形状が安定している点で、大径粒子SLを形成する材料は、無機酸化物であることが好ましく、そのなかでもシリカがより好ましい。
【0129】
大径粒子SLの粒径は、上述の各実施形態および変形例にて例示した大きさの大径突部12を形成するためには、300nm以上5μm以下であることが好ましい。
大径粒子膜形成工程には、下記3つの方法のいずれか1つが用いられる。
【0130】
・ラングミュア−ブロジェット法(LB法)
・粒子吸着法
・バインダー層固定法
LB法では、水よりも比重が低い溶剤のなかに粒子が分散した分散液が用いられ、まず、水の液面に分散液が滴下される。次いで、分散液から溶剤が揮発することによって、粒子からなる単粒子膜が水面に形成される。そして、水面に形成された単粒子膜が、発光構造体形成面11Sに移し取られることによって、発光構造体形成面11Sに単粒子膜が形成される。
【0131】
粒子吸着法では、まず、コロイド粒子の懸濁液のなかに素子用基板11が浸漬される。次いで、発光構造体形成面11Sと静電気的に結合した第1層目の粒子層のみが残されるように、第2層目以上の粒子が除去される。これによって、発光構造体形成面11Sに単粒子膜が形成される。
【0132】
バインダー層固定法では、まず、発光構造体形成面11Sにバインダー層が形成されて、バインダー層上に粒子の分散液が塗布される。次いで、バインダー層が加熱によって軟化して、第1層目の粒子層のみが、バインダー層のなかに埋め込まれ、2層目以上の粒子が洗い落とされる。これによって、発光構造体形成面11Sに単粒子膜が形成される。
【0133】
大径粒子膜形成工程に用いられる成膜方法は、下記式(1)に示される充填度合いD(%)を15%以下とする方法がよい。なかでも、単層化の精度、膜形成に要する操作の簡便性、大径粒子膜の面積の拡張性、大径粒子膜が有する特性の再現性などの点から、LB法が好ましい。
【0134】
充填度合いD[%]=|B−A|×100/A・・・(1)
式(1)において、Aは粒子の平均粒径であり、Bは互いに隣り合う粒子間のピッチにおける最頻値であり、|B−A|はAとBとの差の絶対値である。
【0135】
充填度合いDは、単粒子膜において、粒子が最密充填されている度合いを示す指標である。充填度合いDが小さいほど、粒子が最密充填されている度合いは高く、粒子の間隔が調整された状態であって、単粒子膜における粒子の配列の精度が高い。単粒子膜における粒子の密度を高める点から、充填度合いDは、10%以下であることが好ましく、1.0%以上3.0%以下であることがより好ましい。
【0136】
粒子の平均粒径Aは、単粒子膜を構成する粒子の平均一次粒径である。粒子の平均一次粒径は、粒度分布のピークから求められる。粒度分布は、粒子動的光散乱法によって求められる粒度分布の近似から得られる。なお、充填度合いDを15%以下とするために、粒子における粒径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0137】
粒子間のピッチにおける最頻値は、互いに隣り合う2つの粒子同士の頂点と頂点との間の距離の最頻値である。なお、粒子が球形であって、粒子間が隙間なく互いに接しているとき、互いに隣り合う粒子同士の頂点と頂点との間の距離は、互いに隣り合う粒子同士の中心と中心との間の距離である。なお、粒子間のピッチにおける最頻値は、大径突部12のピッチPLと同様に、単粒子膜の原子間力顕微鏡イメージに基づいて得られる。
【0138】
次に、単粒子膜を形成する方法の一例としてLB法を用いる方法について説明する。
まず、水が溜められた水槽と分散液とが準備される。分散液には、水よりも比重の低い溶剤のなかに大径粒子SLが分散されている。大径粒子SLの表面は、疎水性を有することが好ましく、分散媒における溶剤も、疎水性を有することが好ましい。大径粒子SL、および、溶剤が疎水性を有する構成であれば、大径粒子SLの自己組織化が水面で進行して、2次元的に最密充填した単粒子膜が形成されやすくなる。分散媒における溶剤は、高い揮発性を有することが好ましい。揮発性が高く、かつ、疎水性である溶剤には、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルからなる群から選択される1種以上の揮発性有機溶剤が用いられる。
【0139】
大径粒子SLが無機粒子であるとき、大径粒子SLの表面は、通常、親水性である。そのため、大径粒子SLが無機粒子であるとき、大径粒子SLの表面は、疎水化剤によって疎水化されることが好ましい。大径粒子SLの疎水化に用いられる疎水化剤としては、例えば、界面活性剤や金属アルコキシシランなどが用いられる。
【0140】
分散液は、メンブランフィルターなどによって精密ろ過されて、分散液のなかに含まれる凝集粒子、すなわち、複数の1次粒子の集合である2次粒子が除去されていることが好ましい。精密ろ過されている分散液であれば、粒子が2層以上重なる箇所や、粒子が存在しない箇所が、単粒子膜にて生成されがたくなり、精度の高い単粒子膜が得られやすくなる。
【0141】
図24に示されるように、水面Lに分散液が滴下されて、分散液のなかの溶剤が揮発すると、大径粒子SLが水面Lに沿って単層で展開する。この際に、水面に分散した大径粒子SLが集結するとき、互いに隣り合う大径粒子SLの間には、その間に介在する溶剤に起因して、表面張力が作用する。その結果、互いに隣り合う大径粒子SL同士は、ランダムに存在するのではなく、2次元的な自己組織化によって最密充填構造を形成する。これによって、2次元的に最密充填した単粒子膜FLが形成される。
【0142】
なお、分散液における大径粒子SLの濃度は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、分散液の滴下される速度は、0.001ml/秒以上10ml/秒以下であることが好ましい。分散液における大径粒子SLの濃度および分散液の滴下される速度が上記範囲内であれば、大径粒子SLがクラスター状に凝集して2層以上に重なることが抑えられる。また、大径粒子SLが存在しない欠陥箇所が生じることが抑えられ、2次元に最密充填した単粒子膜が得られやすい。
【0143】
また、大径粒子膜形成工程は、水面Lに超音波が照射される条件で実施されることが好ましい。水面Lに超音波が照射されながら分散液の溶剤が揮発すると、大径粒子SLの最密充填が進む。また、水面Lに超音波が照射されながら分散液の溶剤が揮発すると、大径粒子SLの軟凝集体が破壊されて、一度生成された点欠陥、線欠陥、または、結晶転
位などが修復されもする。
【0144】
水面Lに形成された単粒子膜FLは、単層状態を保ちながら素子用基板11に移し取られる。単粒子膜FLを素子用基板11に移し取る方法は、例えば、疎水性を有する発光構造体形成面11Sと単粒子膜FLの主面とが略平行に保たれ、単粒子膜FLの上方から、発光構造体形成面11Sが単粒子膜FLと接触する。そして、疎水性を有する単粒子膜FLと、同じく疎水性を有する発光構造体形成面11Sとの親和力によって、単粒子膜FLが素子用基板11に移し取られる。あるいは、単粒子膜FLが形成される前に、あらかじめ水中に配置された発光構造体形成面11Sと、水面Lとが略平行に配置され、単粒子膜FLが水面Lに形成された後に、水面Lが徐々に下げられて、発光構造体形成面11Sに単粒子膜FLが移し取られる。
【0145】
これらの方法であれば、特別な装置が使用されずに、単粒子膜FLが発光構造体形成面11Sに移し取られる。一方で、大面積の単粒子膜FLがその最密充填状態を保ちながら発光構造体形成面11Sに移し取られる点では、以下に示されるLBトラフ法が好ましい。
【0146】
図25に示されるように、LBトラフ法では、まず、素子用基板11が立てられた状態で、あらかじめ水面Lの下に素子用基板11が浸漬されて、水面Lに単粒子膜FLが形成される。そして、素子用基板11が立てられた状態で、素子用基板11が徐々に上方に引き上げられることによって、単粒子膜FLが素子用基板11に移し取られる。この際に、発光構造体形成面11Sに移し取られた単粒子膜FLは、その全体で完全な最密充填構造を有することは少ない。そのため、発光構造体形成面11Sに移し取られた単粒子膜FLは、互いに区画された複数の膜要素から構成されて、複数の膜要素の各々で、大径粒子SLの六方充填構造が連続することになる。
【0147】
なお、
図25では、素子用基板11の両面に単粒子膜FLが移し取られる状態が示されているが、少なくとも発光構造体形成面11Sに単粒子膜FLは移し取られればよい。また、単粒子膜FLは、水面Lにて単層に形成されているため、素子用基板11の引き上げ速度などが多少変動しても、単粒子膜FLが崩壊して多層化するおそれはない。
【0148】
発光構造体形成面11Sに移し取られた単粒子膜FLに対しては、単粒子膜FLを発光構造体形成面11Sに固定する固定処理が行われてもよい。単粒子膜FLを発光構造体形成面11Sに固定する方法には、バインダーによって大径粒子SLと発光構造体形成面11Sとが接合される方法や、大径粒子SLが発光構造体形成面11Sと融着する焼結法が用いられる。
【0149】
バインダーを用いる固定方法では、単粒子膜FLが移し取られた発光構造体形成面11Sにバインダー溶液が供給されて、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLと発光構造体形成面11Sとの間にバインダー溶液が浸透する。この際に、バインダーの使用量は、単粒子膜FLの質量に対して0.001倍以上0.02倍以下であることが好ましい。このような使用量の範囲であれば、バインダーが多すぎて、互いに隣り合う大径粒子SLの間にバインダーが詰まってしまうことが抑えられ、かつ、大径粒子SLを発光構造体形成面11Sに固定することができる。バインダーには、金属アルコキシシランや一般の有機バインダー、無機バインダーなどが用いられる。
【0150】
焼結法では、単粒子膜FLを移し取った素子用基板11が加熱されて、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLが、発光構造体形成面11Sに融着する。この際に、素子用基板11の加熱温度は、大径粒子SLを形成する材料と、素子用基板11を形成する材料とに応じて、適宜決定される。なお、素子用基板11が空気中で加熱されるとき、素子用基板11や大径粒子SLが酸化する可能性がある。そのため、焼結法が用いられるときには、不活性ガスの雰囲気で素子用基板11を加熱することが好ましい。
【0151】
[大径粒子エッチング工程]
図26に示されるように、単層の大径粒子SLから構成される単粒子膜FLは、発光構造体形成面11Sに形成される。単粒子膜FLは、発光構造体形成面11Sの平面視にて、大径粒子SLが2次元に最密充填された六方充填構造を有している。
【0152】
大径粒子エッチング工程では、大径粒子SLと素子用基板11が共にエッチングされる条件でエッチングを行ってもよいが、好ましくは、素子用基板11が実質的にエッチングされないエッチング条件で、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLがエッチングされる。この際に、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLの粒径は、選択的なエッチングによって縮小し、互いに隣り合う大径粒子SLの間には、新たな間隙が形成される。
【0153】
発光構造体形成面11Sが実質的にエッチングされないエッチング条件では、大径粒子SLのエッチング速度に対する発光構造体形成面11Sのエッチング速度の割合が、25%以下であることが好ましい。大径粒子SLのエッチング速度に対する発光構造体形成面11Sのエッチング速度の割合は、15%以下であることがより好ましく、特に10%以下であることが好ましい。なお、このようなエッチング条件は、反応性エッチングに用いられるエッチングガスを適切に選択すればよい。例えば、素子用基板11がサファイアであり、大径粒子SLがシリカである場合には、CF
4、SF
6、CHF
3、C
2F
6、C
3F
8、CH
2F
2、NF
3からなる群から選択される1種類以上のガスをエッチングガスとして用いればよい。また、素子用基板11をエッチングすることの必要に応じて、Arなどの希ガスやO
2などの添加ガスをエッチングガスに加えることが好ましい。なお、エッチングガスは、これらに限定されること無く、単粒子膜FLを構成する粒子の材質に応じて適宜選択されるものである。
【0154】
図27に示されるように、次に、縮径された大径粒子SLをマスクとして、発光構造体形成面11Sがエッチングされる。この際に、発光構造体形成面11Sは、互いに隣り合う大径粒子SLの間の空隙を通じてエッチャントであるエッチングガスに曝され、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLもまた、エッチャントであるエッチングガスに曝される。
【0155】
ここで、発光構造体形成面11Sでは、発光構造体形成面11Sと対向する大径粒子SLの部位が、大径粒子SLの中心から遠い部位であるほど、先にエッチングが進行する。そして、大径粒子SLの消滅に伴って、大径粒子SLの中心と対向する領域でも、エッチングが進行する。
【0156】
図28に示されるように、結果として、発光構造体形成面11Sでは、大径粒子SLの中心と対向していた部分を頂点とした半球形状を有する原型突部16が形成される。原型突部16は、大径突部12の原型となる。原型突部16のピッチPLは、単粒子膜FLにて互いに隣り合う大径粒子SLの間の間隔と同等であり、原型突部16の配置もまた、大径粒子SLの配置と同様である。また、大径粒子SLが縮径される前の状態において、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間と対向していた領域、および、大径粒子SLの外表面の付近と対向していた領域は、エッチングガスに曝される時間が特に長いため、エッチングの進行度合いが大きくなる結果、平坦になる。
【0157】
大径粒子エッチング工程では、発光構造体形成面11Sのエッチング速度が、大径粒子SLのエッチング速度よりも高いことが好ましい。大径粒子SLのエッチング速度に対する発光構造体形成面11Sのエッチング速度の割合は、200%以上であることが好ましく、300%以下であることがより好ましい。なお、このようなエッチング条件は、反応性エッチングに用いられるエッチングガスを適切に選択すればよい。例えば、素子用基板11がサファイアであり、大径粒子SLがシリカである場合、Cl
2、BCl
3、SiCl
4、HBr、HI、HCl、Arからなる群から選択される1種類以上のガスをエッチングガスとして用いればよい。なお、発光構造体形成面11Sのエッチングに用いられるエッチングガスは、これらに限定されること無く、素子用基板11を形成する材料に応じて適宜選択されるものである。
【0158】
[小径粒子膜形成工程]
小径粒子工程にて用いられる単粒子膜を構成する小径粒子SSは、大径粒子SLと粒径が異なる。一方で、小径粒子SSの材料は上述の大径粒子膜形成工程にて例示した各種の材料が用いられる。
【0159】
小径粒子SSの粒径は、上述の各実施形態および変形例にて例示した大きさの小径突部13を形成するためには、100nm以上1μm以下であることが好ましい。そして、小径粒子SSの粒径は、大径粒子SLの粒径の1/50以上1/3以下であることが好ましい。小径粒子SSの粒径が大径粒子SLの粒径の1/50以上であれば、小径粒子SSの大きさが適度に確保されるため、小径粒子SSから構成される単粒子膜がマスクとして機能しやすい。また、小径粒子SSの粒径が大径粒子SLの粒径の1/3以下であれば、形成される大径突部12に対して小径突部13が大きくなりすぎないため、第1の実施形態にて説明した大径突部12による光の反射角度を調整する効果や、小径突部13による光の回折を引き起こす効果が突部12,13ごとに得られやすい。
【0160】
小径粒子膜形成工程では、大径粒子膜形成工程にて例示した単粒子膜形成方法のいずれか1つを用いて、原型突部16が形成された発光構造体形成面11Sに、小径粒子SSから構成される単粒子膜FSが形成される。発光構造体形成面11Sに単粒子膜FSを形成する方法としては、大径粒子膜形成工程と同様に、LBトラフ法が好ましい。こうした単粒子膜FSの形成方法における各種の条件は、大径粒子膜形成工程にて例示した条件と同様の条件が適用される。
【0161】
[小径粒子エッチング工程]
図29に示されるように、単層の小径粒子SSから構成される単粒子膜FSは、大径粒子エッチング工程によって原型突部16が形成された発光構造体形成面11Sに形成される。単粒子膜FSは、発光構造体形成面11Sの平面視にて、小径粒子SSが2次元に最密充填された六方充填構造を有している。小径粒子SSは、原型突部16の外表面上と、互いに隣接する原型突部16の間の平坦な部分とに並ぶ。
【0162】
小径粒子エッチング工程では、大径粒子エッチング工程と同様の流れによって、小径粒子SSをマスクとして、発光構造体形成面11Sがエッチングされる。
まず、好ましくは素子用基板11が実質的にエッチングされないエッチング条件で、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSがエッチングされる。この際に、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSの粒径は、選択的なエッチングによって縮小し、互いに隣り合う小径粒子SSの間には、新たな間隙が形成される。なお、発光構造体形成面11Sが実質的にエッチングされないエッチング条件は、大径粒子エッチング工程にて例示した条件と同様の条件が適用される。
【0163】
次に、縮径された小径粒子SSをマスクとして、発光構造体形成面11Sがエッチングされる。この際に、発光構造体形成面11Sは、互いに隣り合う小径粒子SSの間の空隙を通じてエッチャントであるエッチングガスに曝され、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSもまた、エッチャントであるエッチングガスに曝される。
【0164】
発光構造体形成面11Sでは、発光構造体形成面11Sと対向する小径粒子SSの部位が、小径粒子SSの中心から遠い部位であるほど、先にエッチングが進行する。そして、小径粒子SSの消滅に伴って、小径粒子SSの中心と対向する領域でも、エッチングが進行する。
【0165】
図30に示されるように、結果として、発光構造体形成面11Sでは、原型突部16の形状に追従した形状を有する大径突部12と、小径粒子SSと対向していた部分に位置し、錐体形状を有する小径突部13と、互いに隣接する原型突部16の間の平坦な部分に対応する位置に位置する平坦部14とが形成される。上述のように、発光構造体形成面11Sに単粒子膜FSが形成された状態において、小径粒子SSは、原型突部16の外表面上と、互いに隣接する原型突部16の間の平坦な部分とに並ぶため、小径突部13は、大径突部12の外表面上と、平坦部14上とに形成される。
【0166】
ここで、発光構造体形成面11Sに単粒子膜FSが形成された状態において、小径粒子SSは、半球形状の原型突部16の外表面に沿って並んでいるため、原型突部16の基端付近では、発光構造体形成面11Sに垂直な方向に、1個よりも多い小径粒子SSが重なって配置される。原型突部16の先端から基端に向かって、垂直方向における小径粒子SSの重なりは多くなるため、原型突部16の先端から基端に向かうに連れて、発光構造体形成面11Sがエッチングガスに曝される時間は短くなる。その結果、原型突部16の先端から基端に向かうに連れてエッチングの進行が遅くなるため、原型突部16の先端から基端に向かって、小径突部13の高さは小さくなる。また、垂直方向に小径粒子SSが重なることによって、小径粒子SSによって覆われてエッチングの進行が遅くなる領域が拡大する。その結果、原型突部16の先端から基端に向かって、小径突部13の幅は大きくなる。
【0167】
なお、発光構造体形成面11Sがエッチングされる際のエッチング条件は、大径粒子エッチング工程にて例示した条件と同様の条件が適用される。
以上説明したように、第3の実施形態の製造方法によって、第1の実施形態の半導体発光素子用基板が製造される。
【0168】
なお、大径粒子エッチング工程において、発光構造体形成面11Sのエッチングが開始された後、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLがエッチングによって消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて単粒子膜FLを発光構造体形成面11Sから除去してから、小径粒子膜形成工程に進んでもよい。
【0169】
具体的には、単粒子膜FLの除去工程では、30kHz以上1.5MHz以下、好ましくは40kHz以上900kHz以下の超音波洗浄、1MPa以上15MPa、好ましくは5MPa以上15MPa以下の高圧洗浄、またはワイピング、具体的にはコットン製の布やPVA製のブラシによる接触洗浄等の方法を用いて単粒子膜FLを物理的に除去してもよく、CF4等のガスを使用したドライエッチングやHF等を使用したウェットエッチング等の方法を用いて、化学的に単粒子膜FLのみを選択的に除去してもよい。この場合、発光構造体形成面11Sにおいて、単粒子膜FLが除去される直前まで大径粒子SLと対向していた領域は、エッチングされないため、平坦になる。したがって、先端部分が平坦な大径突部22が形成される。こうした製造方法によれば、第1の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0170】
また、小径粒子エッチング工程において、発光構造体形成面11Sのエッチングが開始された後、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSがエッチングによって消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて単粒子膜FSを発光構造体形成面11Sから除去してもよい。この場合、発光構造体形成面11Sにおいて、単粒子膜FSが除去される直前まで小径粒子SSと対向していた領域の中央は、エッチングされないため、平坦になる。したがって、先端部分が平坦な小径突部23が形成される。こうした製造方法によれば、第2の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0171】
また、大径粒子エッチング工程と小径粒子エッチング工程の双方において、粒子の消滅前にエッチングを停止してもよい。すなわち、大径粒子エッチング工程では、発光構造体形成面11Sのエッチングが開始された後、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLがエッチングによって消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて単粒子膜FLを発光構造体形成面11Sから除去してから、小径粒子膜形成工程に進む。そして、小径粒子エッチング工程では、発光構造体形成面11Sのエッチングが開始された後、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSがエッチングによって消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて単粒子膜FSを発光構造体形成面11Sから除去する。この場合、先端部分が平坦な大径突部22と先端部分が平坦な小径突部23とが形成される。こうした製造方法によれば、第3の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0172】
また、上述の製造方法では、大径粒子エッチング工程において、発光構造体形成面11Sが含む領域のうち、大径粒子SLが縮径される前の状態において、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間と対向していた第1の領域、および、大径粒子SLの外表面の付近と対向していた第2の領域が平坦になるまでエッチングを行う例を説明した。これに代えて、これらの領域のエッチングの進行度合いの差を利用すると、ブリッジ部15が形成される。具体的には、大径粒子SLが縮径される前の状態において、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間と対向していた第1の領域は、大径粒子SLによってマスクされないため、大径粒子SLの外表面の付近と対向していた第2の領域よりもエッチングの進行度合いがやや大きくなる。特に、上記の隙間が大きい場合ほど、エッチングの進行度合いの差が大きくなる。また、エッチングガスの変更によっても、このエッチングの進行度合いの差は変わる。したがって、大径粒子SLの粒径やエッチングガスの種類等のエッチング条件を調整することによって、発光構造体形成面11Sにおいて、大径粒子SLの外表面の付近と対向していた第2の領域のうち、互いに隣り合う大径粒子SLが接している部分と対向していた領域は、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間と対向していた第1の領域よりも窪みが浅くなる。これにより、ブリッジ部15が形成される。こうした製造方法によれば、第6の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0173】
また、上述の製造方法およびその変形例において、互いに隣接する原型突部16の間の平坦な部分に、エッチングガスによってエッチングされないマスクを形成した後に、小径粒子膜形成工程および小径粒子エッチング工程を実施してもよい。こうした製造方法によれば、平坦部14に小径突部13が形成されていない第2の実施形態および第7〜第9の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0174】
なお、第3の実施形態では、大径粒子膜形成工程が第1粒子膜形成工程であり、大径粒子エッチング工程が第1粒子エッチング工程であり、小径粒子膜形成工程が第2粒子膜形成工程であり、小径粒子エッチング工程が第2粒子エッチング工程である。
【0175】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(6)互いに異なる大きさの2種類の粒子を用いて基板をエッチングすることによって、上記の(1),(3),(4)の効果が得られる半導体発光素子用基板を製造することができる。
【0176】
(7)大径粒子SLを用いたエッチング工程の後に、小径粒子SSを用いたエッチング工程が行われる。こうした製造方法は、平坦部14にも小径突部13が形成された半導体発光素子用基板、すなわち、上記(2)の効果が得られる半導体発光素子用基板の製造に適している。
【0177】
(8)大径粒子SLの粒径は300nm以上5μm以下であり、小径粒子SSの粒径は100nm以上1μm以下であり、かつ、小径粒子SSの粒径は、大径粒子SLの粒径の1/50以上1/3以下である。こうした構成によれば、上記の(1)の効果が発揮されやすい形状の突部12,13が形成できる。
【0178】
(9)大径粒子エッチング工程および小径粒子エッチング工程の少なくとも一方において、単粒子膜が消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて
単粒子膜を発光構造体形成面11Sから取り除くと、錐台形状の突部22,23が形成される。こうした製造方法によれば、単粒子膜が消滅するまでエッチングを行う場合と比較して、短い時間で、上記(1),(3),(4)に準じた効果を得られる半導体発光素子用基板が製造できる。
【0179】
(第4の実施形態)
図31〜
図35を参照して、本開示の技術の第4の実施形態として、半導体発光素子用基板の製造方法の実施形態について説明する。第4の実施形態は、第3の実施形態と比較して、大径粒子工程と小径粒子工程の順番が異なる。以下では、第3の実施形態との相違点を中心に説明し、第3の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0180】
[半導体素子用基板の製造方法]
第4の実施形態の半導体発光素子用基板の製造方法では、大径粒子工程よりも先に小径粒子工程が行われる。
【0181】
小径粒子工程は、小径粒子膜形成工程と小径粒子エッチング工程とを含み、大径粒子工程は、大径粒子膜形成工程と大径粒子エッチング工程とを含む。
小径粒子膜形成工程では、発光構造体形成面11Sに小径粒子SSから構成される単粒子膜FSが形成され、小径粒子エッチング工程では、単粒子膜FSをマスクとして発光構造体形成面11Sがエッチングされる。大径粒子膜形成工程では、小径粒子エッチング工程にてエッチングされた発光構造体形成面11Sに大径粒子SLから構成される単粒子膜FLが形成され、単粒子膜FLをマスクとして発光構造体形成面11Sがさらにエッチングされる。以下、半導体発光素子用基板の製造方法に含まれる各工程を、処理の順に説明する。
【0182】
[小径粒子膜形成工程]
小径粒子工程にて用いられる単粒子膜FSを構成する小径粒子SSの粒径や材料は、第3の実施形態にて例示した粒径や材料と同様である。ただし、第4の実施形態においては、小径粒子SSの粒径は、大径粒子SLの粒径の1/10以上1/3以下であることが好ましい。第4の実施形態では、小径粒子SSから構成される単粒子膜FSをマスクとしたエッチングが先に行われるため、発光構造体形成面11Sに形成される原型突部の大きさは、第3の実施形態の原型突部の大きさよりも小さい。そして、この小さい原型突部が、大径粒子SLから構成される単粒子膜FLをマスクとしたエッチングが行われる間、エッチングガスに曝される。小径粒子SSの粒径が大径粒子SLの粒径の1/10以上であれば、大径粒子エッチング工程を経ても、原型突部が消滅することなく、小径突部13として十分な大きさの突部が形成される。
【0183】
小径粒子膜形成工程では、第3の実施形態にて例示した単粒子膜形成方法と同様の方法によって、発光構造体形成面11Sに小径粒子SSから構成される単粒子膜FSが形成される。
【0184】
[小径粒子エッチング工程]
図31に示されるように、単層の小径粒子SSから構成される単粒子膜FSは、発光構造体形成面11Sに形成される。単粒子膜FSは、発光構造体形成面11Sの平面視にて、小径粒子SSが2次元に最密充填された六方充填構造を有している。
【0185】
小径粒子エッチング工程では、まず、好ましくは素子用基板11が実質的にエッチングされないエッチング条件で、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSがエッチングされる。この際に、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSの粒径は、選択的なエッチングによって縮小し、互いに隣り合う小径粒子SSの間には、新たな間隙が形成される。なお、発光構造体形成面11Sが実質的にエッチングされないエッチング条件は、第3の実施形態にて例示した条件と同様の条件が適用される。
【0186】
図32に示されるように、次に、縮径された小径粒子SSをマスクとして、発光構造体形成面11Sがエッチングされる。この際に、発光構造体形成面11Sは、互いに隣り合う小径粒子SSの間の空隙を通じてエッチャントであるエッチングガスに曝され、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSもまた、エッチャントであるエッチングガスに曝される。発光構造体形成面11Sでは、発光構造体形成面11Sと対向する小径粒子SSの部位が、小径粒子SSの中心から遠い部位であるほど、先にエッチングが進行する。そして、小径粒子SSの消滅に伴って、小径粒子SSの中心と対向する領域でも、エッチングが進行する。
【0187】
図33に示されるように、結果として、発光構造体形成面11Sでは、小径粒子SSの中心と対向していた部分を頂点とした半球形状を有する原型突部17が形成される。原型突部17のピッチPSは、単粒子膜FSにて互いに隣り合う小径粒子SSの間の間隔と同等であり、原型突部17の配置もまた、小径粒子SSの配置と同様である。また、小径粒子SSが縮径される前の状態において、互いに隣り合う小径粒子SSの隙間と対向していた領域、および、小径粒子SSの外表面の付近と対向していた領域は、エッチングガスに曝される時間が特に長いため、エッチングの進行度合いが大きくなる結果、平坦になる。
【0188】
なお、発光構造体形成面11Sがエッチングされる際のエッチング条件は、第3の実施形態にて例示した条件と同様の条件が適用される。
[大径粒子膜形成工程]
大径粒子工程にて用いられる単粒子膜を構成する大径粒子SLの粒径や材料は、第3の実施形態にて例示した粒径や材料と同様である。
【0189】
大径粒子膜形成工程では、第3の実施形態にて例示した単粒子膜形成方法と同様の方法によって、原型突部17が形成された発光構造体形成面11Sに、大径粒子SLから構成される単粒子膜FLが形成される。ここで、第3の実施形態では、原型突部16の大きさに対して、その上に配置される小径粒子SSの大きさは小さいが、第4の実施形態では、原型突部17の大きさに対して、その上に配置される大径粒子SLの大きさは大きい。したがって、第3の実施形態よりも第4の実施形態の方が、原型突部の形成後に発光構造体形成面11Sに形成される単粒子膜が平坦になりやすく、発光構造体形成面11Sに粒子が規則正しく並びやすい。結果として、第3の実施形態よりも第4の実施形態の方が、発光構造体形成面11Sにおける突部12,13の配置の均一性が高められる。
【0190】
[大径粒子エッチング工程]
図34に示されるように、単層の大径粒子SLから構成される単粒子膜FLは、小径粒子エッチング工程によって原型突部17が形成された発光構造体形成面11Sに形成される。単粒子膜FLは、発光構造体形成面11Sの平面視にて、大径粒子SLが2次元に最密充填された六方充填構造を有している。
【0191】
大径粒子エッチング工程では、まず、好ましくは素子用基板11が実質的にエッチングされないエッチング条件で、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLがエッチングされる。この際に、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLの粒径は、選択的なエッチングによって縮小し、互いに隣り合う大径粒子SLの間には、新たな間隙が形成される。なお、発光構造体形成面11Sが実質的にエッチングされないエッチング条件は、第3の実施形態にて例示した条件と同様の条件が適用される。
【0192】
次に、縮径された大径粒子SLをマスクとして、発光構造体形成面11Sがエッチングされる。この際に、発光構造体形成面11Sは、互いに隣り合う大径粒子SLの間の空隙を通じてエッチャントであるエッチングガスに曝され、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLもまた、エッチャントであるエッチングガスに曝される。
【0193】
発光構造体形成面11Sでは、発光構造体形成面11Sと対向する大径粒子SLの部位が、大径粒子SLの中心から遠い部位であるほど、先にエッチングが進行する。そして、大径粒子SLの消滅に伴って、大径粒子SLの中心と対向する領域でも、エッチングが進行する。
【0194】
図35に示されるように、結果として、発光構造体形成面11Sでは、大径粒子SLの中心と対向していた部分を頂点とした錐体形状を有する大径突部12と、原型突部17の位置に対応した位置に位置する小径突部13とが形成される。大径突部12のピッチPLは、単粒子膜FLにて互いに隣り合う大径粒子SLの間の間隔と同等であり、大径突部12の配置もまた、大径粒子SLの配置と同様である。
【0195】
ここで、大径突部12の中心から発光構造体形成面11Sに平行な方向の外側に向かって、発光構造体形成面11Sがエッチングガスに曝される時間は長くなる。その結果、大径突部12の先端から基端に向かって、原型突部17に対するエッチングの進行度合いが大きくなるため、大径突部12の先端から基端に向かって、小径突部13の高さは小さくなる。また、エッチングの進行度合いの差に起因して、大径突部12の外表面が傾斜していくため、傾斜に沿って、小径突部13の形状が延びる。その結果、大径突部12の先端から基端に向かって、小径突部13の幅は大きくなる。
【0196】
また、大径粒子SLが縮径される前の状態において、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間と対向していた領域、および、大径粒子SLの外表面の付近と対向していた領域は、エッチングガスに曝される時間が特に長い。原型突部17と大径粒子SLとの大きさの差が大きいと、これらの領域は、大径粒子SLのエッチングが進む間に、原型突部17が消滅するまでエッチングが進行して平坦になる。その結果、平坦部14には小径突部13が形成されない。
【0197】
なお、発光構造体形成面11Sがエッチングされる際のエッチング条件は、第3の実施形態にて例示した条件と同様の条件が適用される。
以上説明したように、第4の実施形態の製造方法によって、第2の実施形態の半導体発光素子用基板が製造される。
【0198】
なお、大径粒子エッチング工程において、発光構造体形成面11Sのエッチングが開始された後、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLがエッチングによって消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて単粒子膜FLを発光構造体形成面11Sから除去してもよい。この場合、発光構造体形成面11Sにおいて、単粒子膜FLが除去される直前まで大径粒子SLと対向していた領域は、エッチングされないため、平坦な部分に形成された原型突部17が残る。したがって、先端部分が平坦な大径突部22が形成される。こうした製造方法によれば、第7の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0199】
また、小径粒子エッチング工程において、発光構造体形成面11Sのエッチングが開始された後、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSがエッチングによって消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて単粒子膜FSを発光構造体形成面11Sから除去してから、大径粒子膜形成工程に進んでもよい。この場合、発光構造体形成面11Sにおいて、単粒子膜FSが除去される直前まで小径粒子SSと対向していた領域は、エッチングされないため、平坦になる。したがって、先端部分が平坦な小径突部23が形成される。こうした製造方法によれば、第8の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0200】
また、大径粒子エッチング工程と小径粒子エッチング工程の双方において、粒子の消滅前にエッチングを停止してもよい。すなわち、小径粒子エッチング工程では、発光構造体形成面11Sのエッチングが開始された後、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSがエッチングによって消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて単粒子膜FSを発光構造体形成面11Sから除去してから、大径粒子膜形成工程に進む。そして、大径粒子エッチング工程では、発光構造体形成面11Sのエッチングが開始された後、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLがエッチングによって消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止して、続いて単粒子膜FLを発光構造体形成面11Sから除去する。この場合、先端部分が平坦な大径突部22と先端部分が平坦な小径突部23とが形成される。こうした製造方法によれば、第9の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0201】
また、第4の変形例の製造方法として説明した方法のように、大径粒子エッチング工程において、発光構造体形成面11Sが含む領域のうち、大径粒子SLが縮径される前の状態において、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間と対向していた領域、および、大径粒子SLの外表面の付近と対向していた領域のエッチングの進行度合いの差を利用すると、ブリッジ部15が形成される。こうした製造方法によれば、第12の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0202】
なお、小径粒子SSと大径粒子SLとの粒径の差が小さいと、原型突部17と大径粒子SLとの大きさの差が小さくなる。その結果、大径粒子エッチング工程では、大径粒子SLが縮径される前の状態において、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間と対向していた領域、および、大径粒子SLの外表面の付近と対向していた領域でも、原型突部17が残って小径突部13が形成される。こうした製造方法によれば、第1の実施形態、第1〜第3、第6の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0203】
なお、第4の実施形態では、小径粒子膜形成工程が第1粒子膜形成工程であり、小径粒子エッチング工程が第1工程の一例である第1粒子エッチング工程である。大径粒子膜形成工程が第2粒子膜形成工程であり、大径粒子エッチング工程が第2工程の一例である第2粒子エッチング工程である。
【0204】
以上説明したように、第4の実施形態によれば、第3の実施形態の(6),(9)の効果に加えて、以下の効果が得られる。
(10)小径粒子SSを用いたエッチング工程の後に、大径粒子SLを用いたエッチング工程が行われる。こうした製造方法は、平坦部14に小径突部13が形成されない半導体発光素子用基板、すなわち、上記(5)の効果が得られる半導体発光素子用基板の製造に適している。また、先のエッチング工程が行われた発光構造体形成面11Sに形成される単粒子膜が平坦になりやすく、発光構造体形成面11Sに粒子が規則正しく並びやすいため、発光構造体形成面11Sにおける突部12,13の配置の均一性が高められる。
【0205】
(11)大径粒子SLの粒径は300nm以上5μm以下であり、小径粒子SSの粒径は100nm以上1μm以下であり、かつ、小径粒子SSの粒径は、大径粒子SLの粒径の1/10以上1/3以下である。こうした構成によれば、上記の(1)の効果が発揮されやすい大きさの突部12,13が形成できる。
【0206】
(第5の実施形態)
図36〜
図38を参照して、本開示の技術の第5の実施形態として、半導体発光素子用基板の製造方法の実施形態について説明する。第5の実施形態は、第4の実施形態と比較して、各単粒子膜を形成する工程と、各単粒子膜をマスクとしてエッチングする工程との順番が異なる。以下では、第4の実施形態との相違点を中心に説明し、第4の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0207】
[半導体素子用基板の製造方法]
第5の実施形態の半導体発光素子用基板の製造方法では、大径粒子膜形成工程よりも先に小径粒子膜形成工程が行われる。そして、小径粒子膜形成工程と大径粒子膜形成工程とが順に行われた後に、小径粒子SSからなる単粒子膜FSをマスクにしたエッチングである第1工程と、大径粒子SLからなる単粒子膜FLをマスクにしたエッチングである第2工程とが同時に行われる。
【0208】
小径粒子膜形成工程では、発光構造体形成面11Sに小径粒子SSから構成される単粒子膜FSが形成される。大径粒子膜形成工程では、小径粒子SSから構成される単粒子膜FSに、大径粒子SLから構成される単粒子膜FLが積み重ねられる。
【0209】
エッチング工程では、単粒子膜FLをマスクとして発光構造体形成面11Sがエッチングされ、かつ、互いに隣り合う大径粒子SLの間に位置する単粒子膜FSをマスクとして発光構造体形成面11Sがエッチングされる。以下、半導体発光素子用基板の製造方法に含まれる各工程を、処理の順に説明する。
【0210】
図36に示されるように、まず、小径粒子膜形成工程にて、単層の小径粒子SSから構成される単粒子膜FSが、発光構造体形成面11Sに形成される。小径粒子膜形成工程では、第4の実施形態にて例示した単粒子膜形成方法と同様の方法によって、発光構造体形成面11Sに単粒子膜FSが形成される。小径粒子SSの粒径や材料は、第4の実施形態にて例示した粒径や材料と同様である。単粒子膜FSは、発光構造体形成面11Sの平面視にて、小径粒子SSが2次元に最密充填された六方充填構造を有している。
【0211】
次いで、大径粒子膜形成工程にて、単層の大径粒子SLから構成される単粒子膜FLが、単粒子膜FSの上に積み重ねられる。大径粒子膜形成工程では、第4の実施形態にて例示した単粒子膜形成方法と同様の方法によって、発光構造体形成面11Sに単粒子膜FLが形成される。大径粒子SLの粒径や材料は、第4の実施形態にて例示した粒径や材料と同様である。大径粒子膜形成工程では、第4の実施形態にて例示した単粒子膜形成方法と同様の方法によって、単粒子膜FSの上に単粒子膜FLが積み重ねられる。大径粒子SLの粒径や材料は、第4の実施形態にて例示した粒径や材料と同様である。単粒子膜FLは、発光構造体形成面11Sの平面視にて、大径粒子SLが2次元に最密充填された六方充填構造を有している。
【0212】
これら2つの単粒子膜FS,FLの積み重なりによって、発光構造体形成面11Sは、大径粒子SLによって覆われる部分と、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間において小径粒子SSによって覆われる部分と、いずれの粒子SS,SLにも覆われない部分とが区画される。
【0213】
図37に示されるように、エッチング工程では、まず、好ましくは素子用基板11が実質的にエッチングされないエッチング条件で、単粒子膜FSと単粒子膜FLとがエッチングされる。これによって、単粒子膜FLを構成する大径粒子SLの粒径が縮小し、互いに隣り合う大径粒子SLの間には、新たな間隙が形成される。この際に、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間を通じたエッチングによって、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSの粒径も縮小し、互いに隣り合う小径粒子SSの間にも、新たな間隙が形成される。結果として、縮径された大径粒子SL、および、縮径された小径粒子SSをマスクとして、発光構造体形成面11Sがエッチングされる。
【0214】
次いで、素子用基板11、単粒子膜FS、および、単粒子膜FLがエッチングされるエッチング条件で、各々のエッチングが進められる。この際に、発光構造体形成面11Sは、互いに隣り合う小径粒子SSの間の空隙を通じてエッチャントであるエッチングガスに曝され、単粒子膜FSを構成する小径粒子SSもまた、エッチャントであるエッチングガスに曝される。発光構造体形成面11Sでは、小径粒子SSの中心から遠い部位であるほど、先にエッチングが進行する。こうしたエッチングの進行は、大径粒子SLの中心から遠い部位であるほど速い。そして、小径粒子SSの消滅に伴って、小径粒子SSの中心と対向する領域でも、エッチングが進行する。
【0215】
図38に示されるように、発光構造体形成面11Sにおいて、互いに隣り合う大径粒子SLの間の中央では、小径粒子SSが最も速く消滅する。そして、大径粒子SLが消滅する前にエッチングが終了する。
【0216】
この際に、互いに隣り合う大径粒子SLの間の中央では、エッチングガスに曝される時間が特に長く、小径粒子SSの消滅後においてエッチングの進行度合いが大きくなる。こうした領域は、大径粒子SLのエッチングが引き続き進む間に、小径粒子SSのマスクによって形成された段差が消滅して平坦になる。その結果、発光構造体形成面11Sにおいて、互いに隣り合う大径粒子SLの間の中央に、平坦部14が形成される。
【0217】
一方で、平坦部14の周囲では、平坦部14よりもエッチングガスに曝される時間が短く、しかも、大径粒子SLの中心に近い部位ほど、エッチングガスに曝される時間は短い。こうしたエッチングの進行度合いの差によって、平坦部14に囲まれる部位には、平坦部14から突き出た錐台形状を有する大径突部22が形成される。大径突部22のピッチPLは、単粒子膜FLにて互いに隣り合う大径粒子SLの間の間隔と同等であり、大径突部22の配置もまた、大径粒子SLの配置と同様である。
【0218】
また、大径突部22の外表面には、小径粒子SSの中心と対向していた部分を頂点とした半球形状を有する小径突部13が形成される。上述したように、エッチングの進行度合いの差に起因して、大径突部22の外表面が傾斜していくため、傾斜に沿って、小径突部13の形状が延びる。その結果、大径突部22の先端から基端に向かって、小径突部13の幅は大きくなる。そして、発光構造体形成面11Sにおいて、縮小した大径粒子SLによって覆われる部分には、エッチング工程前と同じ平坦な面が残る。
【0219】
なお、第5の実施形態におい
ては、小径粒子SSから構成される単粒子膜FSをマスクとしたエッチングと、大径粒子SLから構成される単粒子膜FLをマスクとしたエッチングとが同時に行われる。そのため、小径粒子SSをマスクにしたエッチングによって小径突部13が形成される間、大径粒子SLは、大径突部22の先端を平坦な面として保護し続ける。それゆえに、第4の実施形態のように、小径粒子SSの粒径が、大径粒子SLの粒径の1/10以上1/3以下でなくとも、小径突部13として十分な大きさの突部が形成される。
【0220】
以上説明したように、第5の実施形態の製造方法によって、第10の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
なお、エッチング工程において、小径粒子SSのマスクによって形成された段差が平坦部14において消滅し、かつ、大径突部22の外周面に縮径した小径粒子SSが残っているときに、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止してもよい。この場合、縮径した小径粒子SSと対向していた領域は、錐台形状を有する小径突部23として残る。こうした製造方法によれば、第11の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0221】
この際に、小径粒子SSのマスクによって形成された段差が平坦部14において消滅するためには、小径粒子SSのマスクによって形成される段差に対して、平坦部14におけるエッチングの量が十分に大きいことが求められる。こうしたエッチングの条件下においては、1段目の小径突部23のマスクとして機能した小径粒子SSもまた、平坦部14の段差と共に消滅しやすくなる。一方で、2段目の小径突部23のマスクとして機能する小径粒子SSは、1段目の小径突部23のマスクとして機能する小径粒子SSよりも消滅しにくい。それゆえに、第11の変形例において記載したように、小径突部23の中で2段目の小径突部23は、錐台形状である一方で、1段目の小径突部23は、錐体形状であることが好ましい。こうした構成であれば、小径突部23を形成するためのエッチング条件に対する制約を抑えることが可能でもある。なお、3段以上の小径突部23を有する構成においても同じく、小径突部23の含まれる段数が小さいほど、小径突部23が錐体形状であることが好ましい。
【0222】
また、エッチング工程において、小径粒子SSが消滅した後であって、かつ、小径粒子SSのマスクによって形成された段差が平坦部14に残っているときに、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止してもよい。この場合、発光構造体形成面11Sにおいて小径粒子SSと対向していた領域は、小径突部13として残る。こうした製造方法によれば、第4の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。
【0223】
また、エッチング工程において、小径粒子SSが消滅する前に、発光構造体形成面11Sのエッチングを停止してもよい。この場合、発光構造体形成面11Sにおいて小径粒子SSと対向していた領域は、錐台形状を有する。こうした製造方法によれば、第5の変形例の半導体発光素子用基板が製造される。なお、この際に、大径突部22が形成されるためには、小径粒子SSにおけるエッチングの量が、大径粒子SLにおけるエッチングの量に比べて適切に大きいことが求められる。こうしたエッチングの条件下においては、1段目の小径突部23のマスクとして機能した小径粒子SSや、平坦部14から突き出る小径突部23のマスクとして機能した小径粒子SSもまた、大径粒子SLのエッチングと共に消滅しやすくなる。一方で、2段目の小径突部13のマスクとして機能する小径粒子SSは、1段目の小径突部23のマスクとして機能する小径粒子SSよりも消滅しにくい。それゆえに、第5の変形例において記載したように、小径突部23の中で2段目の小径突部23は、錐台形状である一方で、1段目の小径突部23は、錐体形状であることが好ましい。こうした構成であれば、小径突部23を形成するためのエッチング条件に対する制約を抑えることが可能でもある。なお、3段以上の小径突部23を有する構成においても同じく、小径突部23の含まれる段数が小さいほど、小径突部23が錐体形状であることが好ましい。
【0224】
また、第6の変形例の製造方法として説明した方法のように、エッチング工程において、発光構造体形成面11Sが含む領域のうち、大径粒子SLが縮径される前の状態において、互いに隣り合う大径粒子SLの隙間と対向していた領域、および、大径粒子SLの外表面の付近と対向していた領域のエッチングの進行度合いの差を利用すると、ブリッジ部15が形成される。
【0225】
なお、エッチング前、および、エッチング途中において、大径突部22の外表面から小径粒子SSが落ちないように、単粒子膜FSに単粒子膜FLを積み重ねる前に、小径粒子SSを固定するためのバインダーを、単粒子膜FSに予め塗布してもよい。この際に、発光構造体形成面11Sに小径粒子SSを固定するためのバインダーは、樹脂、シランカップリング剤などである。こうしたバインダーは、発光構造体形成面11Sに小径粒子SSを固定する機能を有し、かつ、小径粒子SSよりも速いエッチング速度を有していればよい。
【0226】
以上説明したように、第5の実施形態によれば、第4の実施形態の(6),(9)の効果に加えて、以下の効果が得られる。
(12)小径粒子SSをマスクに用いたエッチングと、大径粒子SLをマスクに用いたエッチングとが同時に行われるため、これらのエッチングが各別に行われる方法と比べて、製造工程の工程数を少なくすることが可能である。
【0227】
(13)発光構造体形成面11Sにエッチングが施される期間の全体にわたり、大径突部22の先端は、大径粒子SLによって覆われ続ける。それゆえに、発光構造体形成面11Sが有する結晶面と、大径突部22の先端が有する結晶面との間において、面方位を整合させることが容易である。
【0228】
なお、小径粒子SSから構成される単粒子膜FSと、大径粒子SLから構成される単粒子膜FLとをマスクにするエッチングは、大径粒子SLが消滅するまで行われてもよい。この場合、大径粒子SLと対向していた領域は、
錐体形状を有する大径突部12として残る。こうした製造方法によれば、第1の実施形態、第2の実施形態、第1〜第3の変形例、および、第7〜第9の変形例の各々に記載した半導体発光素子用基板が製造される。
【0229】
また、大径粒子SLから構成される単粒子膜FLが発光構造体形成面11Sに積み重ねられ、大径粒子SLから構成される単粒子膜FLに、小径粒子SSから構成される単粒子膜FSが積み重ねられてもよい。この場合、大径粒子SLの表面が小径粒子SSをマスクにしてエッチングされるため、発光構造体形成面11Sのマスクとして機能する大径粒子SLの外表面そのものに凹凸が形成される。こうした製造方法であっても、第1の実施形態、第2の実施形態、第1〜第3の変形例、および、第7〜第9の変形例の各々に記載した半導体発光素子用基板が製造される。
【0230】
(第6の実施形態)
図39を参照して、本開示の技術の第6の実施形態として、半導体発光素子の実施形態について説明する。
【0231】
[半導体発光素子]
図39に示されるように、半導体発光素子は、素子用基板11を基材として有している。素子用基板11としては、上述の各実施形態および変形例の半導体発光素子用基板が用いられる。半導体発光素子は、素子用基板11の発光構造体形成面11Sに、発光構造体形成面11Sの凹凸構造を覆う発光構造体21を有している。発光構造体21は、複数の半導体層から構成される積層体を有し、電流の供給によってキャリアを再結合させて発光する。複数の半導体層の各々は、発光構造体形成面11Sから順に積み重ねられる。
【0232】
複数の半導体層の各々を形成する材料は、GaN、InGaN、AlGaN、InAlGaN、GaAs、AlGaAs、InGaAsP、InAlGaAsP、InP、InGaAs、InAlAs、ZnO、ZnSe、ZnS等の化合物半導体であることが好ましい。なかでも、複数の半導体層の各々を形成する材料は、V族元素が窒素であるIII-V族半導体であることが好ましい。
【0233】
複数の半導体層の有する機能は、n型の導電性と、p型の導電性と、キャリアを再結合させる活性とを含むことが好ましい。複数の半導体層における積層構造は、n型半導体層とp型半導体層との間に活性層が挟まれたダブルヘテロ構造であってもよいし、複数の量子井戸構造が重ねられた多重量子井戸構造であってもよい。
【0234】
複数の半導体層は、バッファ層を含んでもよい。バッファ層は、発光構造体形成面11Sに積層されて、発光構造体形成面11Sの結晶性をバッファ層以外の半導体層に反映させる。具体的な半導体層の構成例としては、GaN、AlN等からなるバッファ層、n−GaN、n−AlGaN等からなるn型の導電性を有する層(クラッド層)、InGaN、GaN等からなる発光層、アンドープGaN、p−GaN等からなるp型の導電性を有する層(クラッド層)、MgドープAlGaN、MgドープGaNからなるキャップ層が順次積層されてなる多層膜が挙げられる。
【0235】
半導体発光素子は、波長変換層を含んでもよい。波長変換層は、発光素子の上面のうち光の取り出される上面に積層されて、活性層にて生成された光の波長を調整する。例えば、活性層にて生成された光が、紫外線領域の光を多く含むとき、波長変換層は、紫外線領域の光を、照明用に適した白色の光に変換する。こうした波長変換層は、ピーク波長410〜483nmの蛍光を発する青色蛍光体、ピーク波長490〜556nmの蛍光を発する緑色蛍光体、および、ピーク波長585〜770nmの蛍光を発する赤色蛍光体を含む。また、活性層にて生成された光が、青色領域の光を多く含むとき、波長変換層は、青色領域の光を、照明用に適した白色の光に変換する。こうした波長変換層は、ピーク波長570〜578nmの蛍光を発する黄色蛍光体を含む。
【0236】
(第7の実施形態)
本開示の技術の第7の実施形態として、半導体発光素子の製造方法の実施形態について説明する。
【0237】
[半導体発光素子の製造方法]
半導体発光素子の製造方法は、上述の各実施形態の半導体発光素子用基板の製造方法によって素子用基板11を製造する工程と、素子用基板11の発光構造体形成面11Sに発光構造体21を形成する工程とを含んでいる。
【0238】
発光構造体21における化合物半導体層を形成する方法は、エピタキシャル成長法や反応性スパッタ法などである。エピタキシャル成長法は、気相エピタキシャル成長法、液相エピタキシャル成長法、分子線エピタキシャル成長法などである。反応性スパッタ法は、化合物半導体層の構成元素からなるターゲットをスパッタし、ターゲットからスパッタされた粒子と気相中の不純物元素との反応によって半導体層の形成材料を生成する。n型半導体層を形成する方法は、n型不純物の添加されるエピタキシャル成長法や反応性スパッタ法であればよい。p型半導体層を形成する方法は、p型不純物の添加されるエピタキシャル成長法や反応性スパッタ法であればよい。
【0239】
液相エピタキシャル成長法では、化合物半導体層の形成材料を含む過飽和溶液が、固相と液相との平衡状態を保ちながら、化合物半導体層の形成材料を発光構造体形成面11S上に結晶として成長させる。気相エピタキシャル成長法では、原料ガスの流れる雰囲気が、化合物半導体層の形成材料を生成して、化合物半導体層の形成材料を発光構造体形成面11S上に結晶として成長させる。分子線エピタキシャル成長法では、化合物半導体層の構成元素からなる分子または原子のビームが、発光構造体形成面11S上を照射して、化合物半導体層の形成材料を発光構造体形成面11S上に結晶として成長させる。なかでも、V族原料としてAsH
3やPH
3のような水素化物を用いるハライド気相成長法は、成長する化合物半導体層の厚さが大きい点にて好ましい。
【0240】
(実施例)
上述した半導体発光素子用基板、半導体発光素子、および、その製造方法について、以下に挙げる具体的な実施例を用いて説明する。
【0241】
<実施例1:半導体発光素子の作製(平坦部の小径突部:あり、大径突部の形状:錐体、小径突部の形状:錐体)>
大径粒子工程の後に、小径粒子工程を行って、実施例1の半導体発光素子用基板および半導体発光素子を得た。製造方法の詳細を以下に示す。
【0242】
[大径粒子工程]
直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上に、φ1.0μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子を国際公開第2008/001670号に開示される単層コーティング法によって単層コートした。
【0243】
具体的には、平均粒径が1.02μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=2.69%)の球形コロイダルシリカの3.0質量%水分散体(分散液)を用意した。
【0244】
ついで、この分散液に濃度50質量%の臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(界面活性剤)を2.5mmol/Lとなるように加え、30分攪拌して、コロイダルシリカ粒子の表面に臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを吸着させた。この際、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.04倍となるように分散液と臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとを混合した。
【0245】
ついで、この分散液に、この分散液の体積と同体積のクロロホルムを加え十分に攪拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
こうして得られた濃度1.5質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中の液面(下層水として水を使用、水温25℃)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽の下層水には、あらかじめ上記サファイア基板を浸漬しておいた。
【0246】
滴下中より、超音波(出力120W、周波数1.5MHz)を下層水中から水面に向けて照射して粒子が2次元的に最密充填するのを促しつつ、分散液の溶剤であるクロロホルムを揮発させ、単粒子膜を形成させた。
【0247】
ついで、この単粒子膜を可動バリアにより拡散圧が18mNm
−1になるまで圧縮し、サファイア基板を5mm/分の速度で引き上げ、単粒子膜を基板の片面上に移し取り、コロイダルシリカからなる単粒子膜エッチングマスク付きのサファイア基板を得た。
【0248】
こうして得られたサファイア基板を加工するドライエッチングを行った。具体的には、アンテナパワー1500W、バイアス300W、圧力1Pa、Cl
2ガスにてSiO
2マスク/サファイア基板をドライエッチング加工し、複数の大径の原型突部(錐体形状)を
備えるサファイア基板を得た。原型突部は、最頻ピッチ1.0μm、構造高さ0.4μm、平坦部距離0.22μmであった。
【0249】
[小径粒子工程]
ついで、平均粒径が305nmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.4%)を用いて、原型突部を備えるサファイア基板上に、大径粒子工程と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、大径突部上に複数の小径突部を設けた多重構造付きサファイア基板である実施例1の半導体発光素子用基板を得た。大径突部頂上付近の小径突部は、最頻ピッチ300nm、構造高さ120nm、平坦部距離60nmであった。
【0250】
[半導体発光素子の形成]
こうして得られた半導体発光素子用基板の上記突部が形成されている面に、n型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、実施例1の半導体発光素子を完成した。各GaN系の半導体層は、一般に広く利用されるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって形成した。MOCVD法においては、アンモニアガスとIII族元素のトリメチルガリウム、トリメチルアンモニウム、トリメチルインジウムなどのアルキル化合物ガスを、700℃〜1000℃の温度環境でサファイア基板上に供給して熱分解反応させ、基板上で目的の結晶をエピタキシャル成長により成膜する。
【0251】
n型半導体層としては、低温成長バッファ層としてAl
0.9Ga
0.1Nを15nm、アンドープGaNを4.5μm、nクラッド層としてSiドープGaNを3μm、アンドープGaNを250nmを順次積層した。
【0252】
活性層としては、再結合の確率を高くするためバンドギャップの狭い層を数層挟んで内部量子効率の向上を行う多重量子井戸を形成した。その構成としては、アンドープIn
0.15Ga
0.85N(量子井戸層)を4nm、SiドープGaN(バリア層)10nmの膜厚で交互に成膜し、アンドープIn
0.15Ga
0.85Nが9層、SiドープGaNが10層となるように積層した。
【0253】
p型半導体層としては、MgドープAlGaNを15nm、アンドープGaNを200nm、MgドープGaNを15nm積層した。
n電極を形成する領域において、最表層であるp型半導体層のMgドープGaNからn型半導体層のアンドープGaNまでをエッチング除去し、SiドープのGaN層を露出させた。この露出面にAlとWからなるn電極を形成し、n電極上にPtとAuからなるnパッド電極を形成した。
【0254】
p型半導体層の表面全面にNiとAuからなるp電極を形成し、p電極上にAuからなるpパッド電極を形成した。
以上の操作でベアチップの状態の半導体素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を形成した。
【0255】
図40および
図41は、実施例1の半導体発光素子用基板の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図40および
図41に示されるように、実施例1では、半導体発光素子用基板の上面に、錐体形状の大径突部と小径突部とが形成されている。また、小径突部は大径突部の外表面と平坦部とに形成されている。
【0256】
<実施例2:半導体発光素子の作製(平坦部の小径突部:あり、大径突部の形状:錐台、小径突部の形状:錐体)>
大径粒子工程の後に、小径粒子工程を行って、実施例2の半導体発光素子用基板および半導体発光素子を得た。製造方法の詳細を以下に示す。
【0257】
[大径粒子工程]
直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上に、φ3.0μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子を国際公開第2008/001670号に開示される単層コーティング法によって単層コートした。
【0258】
具体的には、平均粒径が3.02μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=0.85%)の球形コロイダルシリカの3.0質量%水分散体(分散液)を用意した。
【0259】
ついで、この分散液に濃度50質量%の臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(界面活性剤)を2.5mmol/Lとなるように加え、30分攪拌して、コロイダルシリカ粒子の表面に臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを吸着させた。この際、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.04倍となるように分散液と臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとを混合した。
【0260】
ついで、この分散液に、この分散液の体積と同体積のクロロホルムを加え十分に攪拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
こうして得られた濃度1.5質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中の液面(下層水として水を使用、水温25℃)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽の下層水には、あらかじめ上記サファイア基板を浸漬しておいた。
【0261】
滴下中より、超音波(出力120W、周波数1.5MHz)を下層水中から水面に向けて照射して粒子が2次元的に最密充填するのを促しつつ、分散液の溶剤であるクロロホルムを揮発させ、単粒子膜を形成させた。
【0262】
ついで、この単粒子膜を可動バリアにより拡散圧が18mNm
−1になるまで圧縮し、サファイア基板を5mm/分の速度で引き上げ、単粒子膜を基板の片面上に移し取り、コロイダルシリカからなる単粒子膜エッチングマスク付きのサファイア基板を得た。
【0263】
こうして得られたサファイア基板を加工するドライエッチングを行った。具体的には、アンテナパワー1500W、バイアス300W、圧力1Pa、Cl
2ガスにてSiO
2マスク/サファイア基板をドライエッチング加工し、途中でアンテナパワー1500W、バイアス80W、圧力5Paの条件に変更し、CF
4ガスにて粒子のみをドライエッチング加工し、大径の原型突部(錐台形状)を備えるサファイア基板を得た。原型突部は、最頻ピッチ3μm、構造高さ0.7μm、平坦部距離0.3μmであった。
【0264】
[小径粒子工程]
ついで、平均粒径が403nmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.1%)を用いて、原型突部を備えるサファイア基板上に、実施例1の小径粒子工程と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、大径突部上に複数の小径突部を設けた多重構造付きサファイア基板である実施例2の半導体発光素子用基板を得た。大径突部頂上付近の小径突部は、最頻ピッチ400nm、構造高さ160nm、平坦部距離80nmであった。
【0265】
こうして得られた半導体発光素子用基板の上記突部が形成されている面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、実施例2の半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0266】
図42および
図43は、実施例2の半導体発光素子用基板の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図42および
図43に示されるように、実施例2では、半導体発光素子用基板の上面に、錐台形状の大径突部と錐体形状の小径突部とが形成されている。また、小径突部は大径突部の外表面と平坦部とに形成されている。
【0267】
<実施例3:半導体発光素子の作製(平坦部の小径突部:なし、大径突部の形状:錐体、小径突部の形状:錐体)>
小径粒子工程の後に、大径粒子工程を行って、実施例3の半導体発光素子用基板および半導体発光素子を得た。製造方法の詳細を以下に示す。
【0268】
平均粒径が403nmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.1%)を用い、直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上に、実施例2の小径粒子工程と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行った。ついで、平均粒径が3.02μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=0.85%)を用い、複数の小径の原型突部を備えるサファイア基板上に、粒子マスクが消滅するまでエッチングを行う以外は実施例2の大径粒子工程と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、大径突部上に複数の小径突部を設けた多重構造付きサファイア基板である実施例3の半導体発光素子用基板を得た。大径突部は、錐体形状であって、最頻ピッチ3.0μm、構造高さ1.5μm、平坦部距離0.5μmであった。
【0269】
こうして得られた半導体発光素子用基板の上記突部が形成されている面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、実施例3の半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0270】
図44および
図45は、実施例3の半導体発光素子用基板の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図44および
図45に示されるように、実施例3では、半導体発光素子用基板の上面に、錐体形状の大径突部と小径突部とが形成されている。また、小径突部は大径突部の外表面のみに形成されている。また、半導体発光素子用基板の上面には、ブリッジ部が形成されている。
【0271】
<実施例4:半導体発光素子の作製(平坦部の小径突部:なし、大径突部の形状:錐台、小径突部の形状:錐体)>
小径粒子工程の後に、大径粒子工程を行って、実施例4の半導体発光素子用基板および半導体発光素子を得た。製造方法の詳細を以下に示す。
【0272】
平均粒径が403nmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.1%)を用い、直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上に、実施例2の小径粒子工程と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行った。ついで、平均粒径が3.02μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=0.85%)を用い、複数の小径の原型突部を備えるサファイア基板上に、実施例2の大径粒子工程と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、大径突部上に複数の小径突部を設けた多重構造付きサファイア基板である実施例4の半導体発光素子用基板を得た。大径突部は、錐台形状であった。
【0273】
こうして得られた半導体発光素子用基板の上記突部が形成されている面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、実施例4の半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0274】
図46および
図47は、実施例4の半導体発光素子用基板の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図46および
図47に示されるように、実施例4では、半導体発光素子用基板の上面に、錐台形状の大径突部と錐体形状の小径突部とが形成されている。また、小径突部は大径突部の外表面のみに形成されている。また、半導体発光素子用基板の上面には、ブリッジ部が形成されている。
【0275】
<実施例5:半導体発光素子の作製(平坦部の小径突部:なし、大径突部の形状:錐台、先端が平坦な面、小径突部の形状:錐体)>
小径粒子SSからなる単粒子膜FSをマスクにしたエッチングである第1工程と、大径粒子SLからなる単粒子膜FLをマスクにしたエッチングである第2工程とを同時に進めて、実施例5の半導体発光素子用基板および半導体発光素子を得た。製造方法の詳細を以下に示す。
【0276】
平均粒径が395nmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.02%)を用い、直径が2インチ、厚さが0.42mmのサファイア基板上に、実施例1における単粒子膜FSの形成工程と同じ方法によって、単粒子膜FSを得た。
【0277】
次いで、平均粒径が3.02μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=1.66%)を用い、単粒子膜FSを有するサファイア基板上に、実施例1における単粒子膜FLの形成工程と同じ方法で単粒子膜FLを得た。
【0278】
こうして得られたサファイア基板に対して、単粒子膜FS,FLをマスクにしたドライエッチングを施し、大径粒子SLが消滅する前にエッチングを終了した。具体的には、アンテナパワー1500W、バイアス300W、圧力1Pa、Cl
2ガスにてSiO
2マスク/サファイア基板をドライエッチング加工し、そのエッチングの途中でバイアスを80Wに変更し、かつ、圧力を5Paに変更し、CF
4ガスにて粒子のみをドライエッチング加工し、実施例5の半導体発光素子用基板を得た。大径突部は、錐台形状であって、大径突部の先端は平坦な面を有していた。
【0279】
こうして得られた半導体発光素子用基板の上記突部が形成されている面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、実施例5の半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0280】
図48および
図49は、実施例5の半導体発光素子用基板の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図48および
図49に示されるように、実施例5では、半導体発光素子用基板の上面に、錐台形状を有し、かつ、先端に平坦な面を有する大径突部と、錐体形状の小径突部とが形成されている。
【0281】
<実施例6:半導体発光素子の作製(平坦部の小径突部:なし、大径突部の形状:錐体、小径突部の形状:錐体)>
小径粒子SSからなる単粒子膜FSをマスクにしたエッチングである第1工程と、大径粒子SLからなる単粒子膜FLをマスクにしたエッチングである第2工程とを同時に進めて、実施例6の半導体発光素子用基板および半導体発光素子を得た。製造方法の詳細を以下に示す。
【0282】
平均粒径が395nmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.02%)を用い、直径が2インチ、厚さが0.42mmのサファイア基板上に、実施例1における単粒子膜FSの形成工程と同じ方法によって、単粒子膜FSを得た。
【0283】
次いで、平均粒径が3.02μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=1.66%)を用い、単粒子膜FSを有するサファイア基板上に、実施例1における単粒子膜FLの形成工程と同じ方法で単粒子膜FLを得た。
【0284】
こうして得られたサファイア基板に対して、単粒子膜FS,FLをマスクにしたドライエッチングを施し、大径粒子SLが消滅した後にエッチングを終了した。具体的には、アンテナパワー1500W、バイアス300W、圧力1Pa、Cl
2ガスにてSiO
2マスク/サファイア基板をドライエッチング加工し、実施例6の半導体発光素子用基板を得た。大径突部、および、小径突部の各々が、錐体形状を有していた。
【0285】
こうして得られた半導体発光素子用基板の上記突部が形成されている面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、実施例6の半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0286】
図50から
図52は、実施例6の半導体発光素子用基板の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図50から
図52の各々に示されるように、実施例6では、半導体発光素子用基板の上面に、錐体形状を有する大径突部と、錐体形状を有する小径突部とが形成されている。
【0287】
<比較例1:半導体発光素子の作製(大径突部:なし、小径突部:なし)>
基板としてサファイア基板を用い、大径粒子工程と小径粒子工程とを行わずに、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、比較例1の半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0288】
<比較例2:半導体発光素子の作製(大径突部:錐体、小径突部:なし)>
基板としてサファイア基板を用い、小径粒子工程を行わない以外は実施例3と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、複数の錐体形状の大径突部を設けたサファイア基板である比較例2の半導体発光素子用基板を得た。
【0289】
こうして得られた半導体発光素子用基板の上記突部が形成されている面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、比較例2の半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0290】
<評価方法>
[外部量子効率]
各実施例、比較例で得られた半導体発光素子(樹脂包埋前のベアチップ)をベアチップのまま小型プローバー(ESSテック社製sp−0−2Ls)にマウントし、オープンプローブにて駆動電流20−40mAで点灯させた。光取り出し効率向上効果を確認するため、外部量子効率を、labsphere社製スペクトラフレクト積分球とCDS−600型分光器にて測定した。
【0291】
[螺旋転位密度および刃状転位密度]
各実施例、比較例の半導体発光素子用基板上に製膜されたGaNにおいて、そのチルト(成長方位の結晶軸の傾き)分布、ツイスト(表面面内の結晶軸の回転)分布を、リガク製水平型X線回折装置SmartLabを使用し、ロッキングカーブ法にて評価を行い、螺旋転位密度ρ screw(cm
−2)および刃状転位密度ρ edge(cm
−2)を求めた。なお、バーガースベクトルはb screw(cm):5.185×10
−8、b edge(cm):3.189×10
−8を用いた。螺旋転位密度を求めたチルト測定および刃状転位密度を求めたツイスト測定においては、それぞれスリット受光幅1.0mmを使用した。チルト測定の走査角度(ω)は±5°、ツイスト測定での走査角度(φ)は±0.5°を使用した。測定した結晶面は螺旋転
位密度についてはGaN(002)面、刃状転位密度についてはGaN(302)面を用いた。
【0292】
実施例1〜6、および、比較例1,2の半導体発光素子用基板上に形成された大径突部と小径突部の形状的な特徴を表1に示す。なお、表1において、小径突部の最頻ピッチPS、高さHS、幅DSは、大径突部頂上付近の小径突部について測定した。
【0293】
また、外部量子効率、螺旋転位密度および刃状転位密度の評価結果を表2に示す。
【0296】
表2に示されるように、大径突部と小径突部とを有する半導体発光素子用基板が用いられた実施例1〜6の半導体発光素子では、大径突部と小径突部との双方を有さない比較例1の半導体発光素子、および、小径突部を有さない比較例2の半導体発光素子と比較して、光取り出し効率が向上し、螺旋転位密度および刃状転位密度が小さくなることが確認された。したがって、半導体発光素子用基板が大径突部と小径突部とを有することにより、光取り出し効率が向上し、かつ、結晶欠陥が低減できることが示された。