(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308300
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20180402BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20180402BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20180402BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20180402BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20180402BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20180402BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20180402BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
H01L23/50 P
H01L23/12 P
H01L23/48 G
H02M7/48 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-542518(P2016-542518)
(86)(22)【出願日】2015年6月23日
(86)【国際出願番号】JP2015068065
(87)【国際公開番号】WO2016024445
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-164427(P2014-164427)
(32)【優先日】2014年8月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 康佑
【審査官】
秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−291230(JP,A)
【文献】
特開平10−041460(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0017740(US,A1)
【文献】
米国特許第06623283(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 21/60
H01L 23/12
H01L 23/48
H01L 23/50
H01L 25/18
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路板を有する積層基板と、
前記回路板に固定された半導体チップと、
少なくとも両端が開放された中空形状である先端部と、配線部を有し、前記先端部と前記配線部が一枚の導電板で構成されている端子と、
前記回路板と前記先端部を電気的かつ機械的に接続する接合材と、
を備え、
前記先端部は、前記導電板を折り曲げて側面が配置され、
前記先端部の開放端の一方が前記回路板と対向し、
前記先端部の開放端の他方が前記配線部と接続されている半導体装置。
【請求項2】
回路板を有する積層基板と、
おもて面に電極を備え、裏面が前記回路板に固定された半導体チップと、
少なくとも両端が開放された中空形状である先端部と、配線部を有し、前記先端部と前記配線部が一枚の導電板で構成されている端子と、
前記電極と前記先端部を電気的かつ機械的に接続する接合材と、
を備え、
前記先端部は、前記導電板を折り曲げて側面が配置され、
前記先端部の開放端の一方が前記回路板と対向し、
前記先端部の開放端の他方が前記配線部と接続されている半導体装置。
【請求項3】
前記先端部は、前記中空の軸方向に延びるギャップを有する請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ギャップは、前記先端部と前記配線部との連結箇所に対向する箇所に設けられる請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記先端部は、前記中空の軸に直交する断面が一辺の開口した四角形状である請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記先端部は、前記接合材で接続される側に1以上のスリットを有する請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項7】
前記スリットは複数備えられ、
何れか2つの前記スリットが互いに対向する位置に配置されている請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記先端部の前記中空の軸に直交する断面および前記電極は四角形状であり、
前記先端部の断面のいずれか一辺は、前記電極のいずれか一辺より長い請求項2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記配線部が板形状である請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項10】
前記配線部が、前記積層基板と前記半導体チップを収容する筐体の外部に導出されている請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項11】
前記先端部の横断面形状がU字形である請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項12】
前記先端部の横断面形状が長方形もしくは円形である請求項1又は2記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一つであるパワー半導体モジュールは、積層基板と、半導体チップと、筐体と、端子とを備えている。積層基板は、例えば回路板、絶縁板及び金属板を順次に積層して構成されている。また、半導体チップは回路板の一つの領域に接合材により電気的及び機械的に接続されている。また、筐体は積層基板と半導体チップとを収容し、筐体内は封止材で充填されている。端子の一端は、半導体チップのおもて面に設けられた電極や回路板に、接合材により電気的及び機械的に接続され、他端は筐体から外部に導出されている。接合材は、例えばはんだである。
【0003】
パワー半導体モジュールの端子は、大きく分けて2種類あり、その一つは主端子である。主端子は、半導体チップ等を経由して主電流を流すことが主な機能である。もう一つは制御端子であり、これはセンス端子とも呼ばれる。制御端子は、半導体チップに制御信号を入力し、また、温度検出用の信号を導くことが主な機能である。
【0004】
主端子は、回路板と接合する部分の断面積が、電流定格に応じて必要となる所定の面積を有している。また、信頼性確保の観点から、主端子と回路板は、十分に接合できるような形状にはんだ付けされている。一方、制御端子は、微小な電流しか流れず、又は電圧のみが印加される。そのため、制御端子は、半導体チップのおもて面電極や回路板と接合する部分の面積が、主電流の電流定格によらず、製品のパッケージ形状に応じた所定の面積を有している。端子と接合される半導体チップのおもて面電極や回路板の領域は、端子の先端よりも大きな面積を有している。
【0005】
特許文献1には、導電板よりなり、L字形に折り曲げられている先端を有する端子が図示されている。また、特許文献2には、線材ピンと、線材ピンを挿入する筒状部から構成される端子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−6603号公報
【特許文献2】特開2010−283107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
L字形に折り曲げられている先端を有する端子と回路板との接合の際は、回路板に塗布されたはんだペースト上に端子の先端が重ねられて加熱される。加熱により溶融したはんだは、表面張力により端子の先端付近で凝集する。
しかし、溶融したはんだの一部が飛散して回路板の側面に付着することがあった。これは絶縁不良を発生させるおそれがあった。また、溶融したはんだが、回路板の端部まで広がった状態になることがあった。これはパワー半導体モジュールのヒートサイクル試験やヒートショック試験の際に、はんだと回路板との線膨張係数の差により熱応力が生じ、絶縁板から回路板が剥離するおそれがあった。
上記の絶縁不良や剥離の対策として、端子の接合位置を回路板の端部から離すことや、回路板の面積を端子の先端の断面積に対して十分に大きくすることが行われている。しかし、これらの対策は回路板の配置の自由度を制限する。
【0008】
本発明は上記の問題を有利に解決するものであり、回路板と絶縁板との剥離や絶縁不良を抑制することができ、また、回路板の配置の自由度を向上させることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一様態の半導体装置は、回路板を有する積層基板と、上記回路板に固定された
半導体チップと、
少なくとも両端が開放された中空形状である先端部
と、配線部を有し、上記先端部と上記配線部が一
枚の導電
板で構成されている端子と、上記回路板と上記先端部を電気的かつ機械的に接続する接合材とを備え
、上記先端部は、上記1枚の導電板を折り曲げて側面が配置され、上記先端部の開放端の一方が上記回路板と対向し、上記先端部の開放端の他方が上記配線部と接続されているものである。
【0010】
また本発明の別の様態の半導体装置は、回路板を有する積層基板と、おもて面に電極を備え、裏面が上記回路板に固定された半導体チップと、
少なくとも両端が開放された中空形状である先端部と
、配線部を有し、上記先端部と上記配線部が一
枚の導電
板で構成されている端子と、上記電極と上記先端部を電気的かつ機械的に接続する接合材とを備え
、上記先端部は、上記導電板を折り曲げて側面が配置され、上記先端部の開放端の一方が上記回路板と対向し、上記先端部の開放端の他方が上記配線部と接続されているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体装置によれば、回路板と絶縁板との剥離や絶縁不良を抑制することができ、また、回路板の配置の自由度を向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1の半導体装置の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の端子の作用効果の断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態3及び実施形態4の端子の作用効果の断面図である。
【
図8】
図8は、参考例の端子を半導体チップとの接続に用いた場合の平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態5の端子を半導体チップとの接続に用いた場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の半導体装置の実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1に模式的な断面図で示す本実施形態の半導体装置1は、パワー半導体モジュールの例である。半導体装置1は、積層基板3と、半導体チップ5と、端子7〜9と、接合材6とを備えている。さらに半導体装置1は、ベース板2と、枠体11と、封止材12と、蓋13とを備えている。
【0014】
積層基板3は、絶縁板3aと、絶縁板3aの一方の面に設けられた金属板3bと、絶縁板3aのもう一方の面に設けられた回路板3cとで構成されている。絶縁板3a及び金属板3bは、略四角形の平面形状を有している。絶縁板3aは例えば窒化アルミニウムや窒化珪素、酸化アルミニウム等の絶縁性セラミックスよりなり、金属板3b、回路板3cは、例えば銅よりなる。積層基板3は、これらの絶縁板3aと金属板3b、回路板3cとを直接接合したDCB(Direct Copper Bond)基板等を用いることができる。金属板3bは、ベース板2の主面と、はんだなどの接合材4により接合されている。
回路板3cは、図示した例では所定の回路が構成された3c1、3c2を有している。回路板3c1に半導体チップ5が、導電性の接合材6、例えばはんだにより接合されている。導電性の接合材ははんだ、金属ペースト及び導電性接着剤から選択される1種とすることができる。
【0015】
半導体チップ5は、おもて面および裏面にそれぞれ電極が設けられている。そして、裏面の電極がはんだなどの導電性の接合材6を介して、回路板3c1に電気的かつ機械的に接続されている。「電気的かつ機械的に接続されている」とは、対象物同士が直接接合により接続されている場合に限られず、はんだや金属焼結材などの導電性の接合材を介して対象物同士が接続されている場合も含むものとし、以下の説明でも同様である。
半導体チップ5は、具体的には、例えばショットキーバリアダイオードやパワーMOSFETやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などである。半導体チップ5はシリコン半導体でもよいし、SiC半導体でもよい。半導体チップ5が炭化ケイ素(SiC)パワーMOSFETである場合は、シリコン半導体チップに比べて高耐圧で、かつ高周波でのスイッチングが可能であるために、本実施形態の半導体装置の半導体チップ5として最適である。もっとも、半導体チップ5は、IGBTやパワーMOSFETに限定されず、スイッチングの動作が可能な半導体素子の一個又は複数個の組み合わせであればよい。
本実施形態では一例として半導体チップ5がIGBTである場合について説明する。この場合、半導体チップ5の裏面の電極はコレクタ電極であり、おもて面の電極はエミッタ電極及びゲート電極である。
【0016】
回路板3c1に、主端子である端子7がはんだなどの導電性の接合材6により電気的かつ機械的に接合されている。端子7は半導体チップ5の裏面のコレクタ電極と電気的に接続している。また、半導体チップ5のおもて面のエミッタ電極に、主端子である端子8がはんだなどの導電性の接合材6により電気的かつ機械的に接続されている。更に、回路板3c2に、半導体チップ5のゲート電極と電気的に接続する制御端子である端子9が、はんだなどの導電性の接合材6により電気的かつ機械的に接続されている。回路板3c2と半導体チップのゲート電極とは、ボンディングワイヤ10により電気的に接続されている。すなわち、本実施形態において端子7はコレクタ端子、端子8はエミッタ端子、端子9はゲート端子である。
【0017】
放熱用の金属製のベース板2は、熱伝導性が良好な金属、例えば銅等よりなり、略四角形の平面形状を有している。
ベース板2の周縁には、樹脂よりなる枠体11が図示しない接着剤に接着されている。また枠体11の上部には、蓋13が固定されている。ベース板2、枠体11、蓋13により、半導体装置1の筐体が構成されている。そして筐体内に積層基板3や半導体チップ5が収容されて、絶縁性を高める封止材12が充填されている。
【0018】
図2に、端子7〜9の正面図(
図2(A))、側面図(
図2(B))及び平面図(
図2(C))を示す。また、
図2(D)は、先端部形成前の端子7〜9の展開図である。
端子7〜9は、先端部20と配線部21から構成されている。先端部20は、接合材6を用いて、回路板3cや半導体チップ5のおもて面電極と電気的かつ機械的に接続されている。また配線部21は、先端部20に接続された箇所から、半導体装置1の所定の箇所へ電気配線を行う機能を有している。そして先端部20は筒形状であり、配線部21は筒形状以外の形状(本実施例では板形状)である。先端部20は、配線部21と一続きである側面20aと、側面20aと直交する側面20b及び20cを有する。そして、側面20bと側面20cの間に、筒の軸方向に延びるギャップ20gが配置されている。すなわち、端子7〜9は、先端部20と配線部21が一つの導電部材で構成されている。本実施例においては、
図2(D)の展開図からわかるように、1枚の導電板を折り曲げ線L1、L2に沿って折り曲げ加工して、側面20a、20b、20cおよびギャップ20gを配置し、筒形状である先端部20を形成している。
図2(C)で示すように、先端部20は、3つの側面から構成される概略U字形の横断面形状を有している。言い換えると、先端部20の筒の軸に直交する断面が、一辺の開口した四角形状、より具体的には長方形状を有している。
【0019】
ギャップ20gは、先端部20の筒の軸方向に延びている。そして、配線部21と先端部20の連結箇所である側面20aと対向する箇所に設けられている。
端子7〜9の材料は銅板であり、必要に応じてニッケルめっきが施されている。端子7〜9として、一般的なパワー半導体モジュールにおいて用いられる導電板、具体的にはリードと同じ材料を用いれば、材料の入手が容易となる。このため、安価に端子7〜9を製造可能である。
【0020】
図3を用いて先端部20を有する端子7〜9(ここでは制御端子である端子9)の作用効果を説明する。端子9の接合の際は、回路板3c2と端子9の先端との間を0.5〜1.0mm程度の間隔cで空けた状態で加熱する。溶融した接合材6は、表面張力により凝集し、端子9の先端に接触する。先端部20が筒状であるため、溶融した接合材6は毛細管現象により筒状の先端部20の内部に吸い上げられる。そして溶融した接合材6を冷却して固化すると、回路板3c2と端子9の先端との間にフィレット6aが形成される。これによって、接合材6が回路板3c2上で占める面積は、先端部20で囲われた部分とフィレット6aとの合計である。この面積は、L字形に折り曲げられた先端を有する特許文献1に記載の端子を用いた場合と比べて小さい。したがって、溶融した接合材6は、回路板3c2の端部まで広がらないので、回路板3cが絶縁板3aから剥離することを抑制することができる。また、溶融した接合材6の一部が飛散して回路板3cの端部の側面に付着することを抑制できるので、絶縁不良を抑制することができる。
【0021】
また、特許文献2に記載の筒状部に比べ、先端部20は簡素な構造をしていることから、部材のコストを低減することができる。さらに、先端部20の折り曲げ加工は容易であり、特許文献2に記載の筒状部をあらかじめはんだ付けして、さらに線材ピンを挿入する工程に比べ、工程の削減が可能であり、製造コストを低減することができる。
またさらに、特許文献2に記載の技術においては、筒状部の内部に溶融した接合材が入りすぎると、線材ピンの挿入に支障がでるため、接合材の量の厳密な制御が必要になる。一方本実施形態においては、筒形状の先端部20の内部に溶融した接合材6が入りすぎても特に支障はないため、接合材の量の厳密な制御は不要である。このため、製造コストを低減できる。なお、先端部20の高さは、接合材6が過剰であっても先端部20から溢れないように、先端部20内に吸い上げられた接合材6の高さよりも高くすることが好ましい。
【0022】
回路板3cと端子9の先端との間隔cが0.5〜1.0mm程度に設定すれば、端子9の先端近傍における接合材6が、良好な形状のフィレット6aを形成できるので、好ましい。
先端部20が、ギャップ20gを有していることにより、加熱時に溶融した接合材6は、ギャップ20gを通して筒形状の先端部20の内外に移動可能である。そのため、先端部20がギャップ20gを有しない場合に比べて、幅及び高さが大きなフィレット6aを形成できる。したがって、接合材6の接合強度を高めることができ、接合の信頼性を向上させることができる。
【0023】
また、
図1に示す通り、端子7〜9の配線部21の先端部20とは反対側の端部を、半導体装置1の筐体の外部に直接導出することもできる。これは端子7〜9が、筒形状の先端部20により強固に接合されているため、端子7〜9に外部からの応力がかかっても、接合部が剥離することが無いからである。配線部21を直接筐体の外部に導出することにより、外部導出用の専用の端子が不要になるため、製造コストを低減できる。
【0024】
また、本実施形態においては、配線部21が板形状であるが、筒形状以外の形状で、所定の箇所に容易に配線できるのであれば、どのような形状であっても良い。本実施形態において配線部21が筒形状以外の形状である理由は、筒形状は容易に曲げることが困難なため、配線部が筒形状では所定の箇所まで配線するのが難しいからである。このため、配線部21の形状は、曲げ加工が容易である板形状や棒形状、線形状などが適している。
なお、本実施形態においては、枠体11、封止材12および蓋13を用いて半導体装置1を構成している。一方で、熱硬化性樹脂を用いたインサート成型により半導体チップ等を封止し、半導体装置を構成することも可能である。これにより、半導体装置の小型化が可能となる。
また、本実施形態においては、接合材6としてはんだを用いているが、液相状態で先端部20にフィレット6aを形成できる導電性の接合材であれば、どのような接合材を用いても良い。接合材6としては、例えば金属ペーストや導電性接着剤を用いることもできる。
【0025】
(実施形態2)
図4に実施形態2の端子7〜9の平面図を示す。これは、実施形態1の
図2(C)に対応する図である。
実施形態2の半導体装置の端子7〜9は、その側面20b、20cの曲げ加工の加工度を大きくして両側端の間のギャップ20gを小さくしている。これにより先端部20が、筒の軸に直交する断面形状が概略台形の形状を有している。それ以外は
図2、3を用いて説明した実施形態1と同じ構成を有している。本実施形態の端子7〜9は、実施形態1の端子7〜9と同様の作用効果を有している。またさらに、実施形態1よりも接合面積を縮小できるため、狭い領域に端子を接合する場合に有効である
【0026】
(実施形態3)
図5(A)〜(C)に実施形態3の端子7〜9について示す。これは、実施形態1の
図2(A)、
図2(C)および
図2(D)に対応する図である。
実施形態3の半導体装置の端子7〜9は、筒形状で概略長方形の横断面形状である先端部20と、板形状の配線部21を有する。先端部20は、配線部21と一続きである側面20aと、側面20aと直交する側面20b及び20cと、側面20b、20cと直交し、これらよりも幅が短い側面20d及び20eとを有する。そして、側面20dと側面20eの間には、筒の軸方向に延びるギャップ20gが配置されている。
図5(C)の展開図からわかるように、1枚の導電板を折り曲げ線L1〜L4に沿って折り曲げ加工して、側面20a〜20eおよびギャップ20gを配置し、筒形状である先端部20を形成している。
【0027】
実施形態3の端子7〜9は、先端部20の横断面形状が相違すること以外は、実施形態1、実施形態2の端子7〜9と同じ構成を有している。そして本実施形態の端子7〜9は、実施形態1、2の端子7〜9と同様の作用効果を有している。さらに本実施形態においては、実施形態1、2に比べ先端部20の側面の面積が広いため、溶融した接合材6の毛細管現象が起こりやすくなる。
端子7〜9は、実施形態1〜3で説明した長方形や台形の横断面形状を有する先端部20に限定されず、幾多の変形が可能である。例えば、多角形や円形の横断面形状にできる。先端部20の内径は、毛細管現象により溶融した接合材6を吸い上げることが可能な径である。
【0028】
(実施形態4)
図6(A)〜(C)に実施形態4の端子7〜9について示す。これは、実施形態1の
図2(A)、
図2(B)および
図2(D)に対応する図である。
実施形態4の半導体装置の端子7〜9は、実施形態3の端子7〜9と同様に、筒形状で概略長方形の横断面形状の先端部20と、板形状の配線部21を有する。さらに本実施形態においては、
図6(B)の側面図や
図6(C)の展開図で示すように、側面20a、側面20b及び側面20cには、接合材6で接続される側に、それぞれ筒の軸方向に延びる複数の、図示例では3つのスリット20sが配置されている。
【0029】
すなわち実施形態4の端子7〜9は、スリット20sが配置されていること以外は、実施形態3の端子7〜9と同様の構成を有している。したがって、実施形態4の端子7〜9は、実施形態3の端子7〜9と同様の効果を有する。さらに、実施形態4の端子7〜9は、先端部20にスリット20sが配置されているから、加熱時に溶融した接合材6は、スリット20sを通して筒状の先端部20の内外に移動可能である。そのため、先端部がスリット20sを有しない場合に比べて、幅及び高さが大きなフィレット6aが形成される。
【0030】
スリット20sを有しない実施形態3の断面図を
図7(A)に示し、スリット20sを有する実施形態4の断面図を
図7(B)に示す。
図7(A)と
図7(B)との対比から実施形態4は、実施形態3よりも接合材6のフィレット6aが大きい。したがって、実施形態4では、端子7〜9の接合強度をより高めることができるため、接合強度が必要な場合に有効である。また実施形態3では、接合材6の幅を狭くすることができるため、電極や回路板の面積が広く取れない場合など、接合材6の設置面積を狭くしたい場合に有効である。
【0031】
また、本実施形態においては、対向する側面20bおよび20cにそれぞれスリット20sを配置している。このように互いに対向する位置に2つのスリット20sを配置することにより、接合材6のフィレット6aを
図7(B)に示すように線対称形状にすることができる。このため、先端部20において、対向する側面同士の接合力を均等にすることができ、信頼性が向上するため有効である。なお、先に述べたとおり、ギャップ20gもスリット20sと同等の機能を有する。このため、本実施形態に示すように互いに対向する位置にギャップ20gとスリット20sを配置することも有効である。
スリット20sを有する端子7〜9の先端部分の横断面形状は、
図6に示した長方形に限定されず、
図3に示した台形、その他の多角形や円形の横断面形状にも適用できる。
【0032】
(参考例)
図8は、特許文献1記載のL字形の端子108を半導体チップ105との接続に用いた場合の平面図である。
L字形の端子108は、半導体チップ105のおもて面の電極105eに、導電性の接合材(図示せず)により電気的かつ機械的に接続されている。また、半導体チップ105に配置されているおもて面電極を長方形状としている。
半導体チップ105は、接合材によるチップ裏面と回路板との接合と、接合材によるおもて面と端子108との接合とを、同一の加熱工程により実施する場合がある。この場合、半導体チップの裏面側の接合材も溶融しているため、端子108の先端形状が電極105eに比べ相対的に小さい場合は、半導体チップ105がその場で回転するおそれがある。
【0033】
(実施形態5)
図9は、実施形態5の端子8を半導体チップ5との接続に用いた場合の平面図である。
実施形態5では、端子8の側面20a、20b、20cのいずれか一辺を、半導体チップ5のおもて面にある長方形状の電極5eの一辺5e1(短辺)もしくは5e2(長辺)よりも長くしている。言い換えると、端子8の長辺になる側面20b(20c)を、電極5eの短辺5e1よりも長くしている。これにより、半導体チップ5がその場で回転するのを防止することができる。すなわち本実施形態により、半導体チップ5のセルフアライメントが可能となる。
【0034】
以上、本発明の半導体装置を図面及び実施形態を用いて具体的に説明したが、本発明の半導体装置は、実施形態及び図面の記載に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で幾多の変形が可能である。例えば、先端部20は回路板3c又は半導体チップ5の表面に対して垂直に設けられる場合に限られず、所定の角度を有していてもよい。また、先端部20に、はんだペーストをあらかじめ付着させていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 半導体装置
2 ベース板
3 積層基板
3a 絶縁板
3b 金属板
3c、3c1、3c2 回路板
4 接合材
5 半導体チップ
5e 電極
6 接合材
6a フィレット
7、8、9 端子
10 ボンディングワイヤ
11 枠体
12 封止材
13 蓋
20 先端部
20a〜20e 側面
20g ギャップ
20s スリット
21 配線部