(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような先端工具もしくはモータの回転数変化量が閾値を超えたときのモータ自動停止機能を備えた電動丸鋸において、例えばコードレスの場合、継続して使用すると電池から供給される電圧が低下してくるため、モータ回転数の他モータトルクも低下してしまう。このため一定の閾値、又は回転数のみに応じた閾値設定では、電池からの供給電圧が変動した場合に軽い負荷でモータが停止してしまい、作業性を損ねる可能性がある。
【0008】
また、上記のように、モータが自動停止すると、作業者は電動丸鋸が故障したと誤認識してしまうという課題があった。
【0009】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、電池供給電圧に対応した保護機能を有し且つ作業性を確保できるコードレス電動工具を提供することにある。
【0010】
また、他の目的は、保護機能が働いたことを作業者が容易に認識することができるコードレス電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様はコードレス電動工具である。このコードレス電動工具は、電池電源によって作動するモータと、前記モータによって駆動される先端工具と、前記モータを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記モータ又は先端工具の回転数を検出する機能と、前記回転数の単位時間当たりの変化量が設定された閾値を超えた時に前記モータを停止又は低速運転する機能と、前記電池電源の供給電圧又は前記電池電源の各電池セルの電圧に応じて前記閾値を変化させる機能とを有することを特徴とする。
【0012】
前記第1の態様において、前記電池電源の供給電圧又は前記電池電源の各電池セルの電圧に応じて前記閾値を複数段階で変化させるとよい。
【0013】
本発明の第2の態様もコードレス電動工具である。このコードレス電動工具は、電池電源によって作動するモータと、前記モータによって駆動される先端工具と、前記モータを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記モータ又は先端工具の回転数を検出する機能と、前記回転数の単位時間当たりの変化量が設定された閾値を超えた時に前記モータを低速運転する機能とを有する
とともに、
前記モータがPWM制御され、前記モータに供給する電圧の最大デューティを変更した場合に、前記閾値を変化させることを特徴とする。
【0014】
前記第1又は第2の態様において、前記制御部が検出した回転数が所定の下限値より低い場合に前記モータを停止する機能を有するとよい。
【0015】
前記第
1の態様において、前記モータがPWM制御され、前記モータに供給する電圧の最大デューティを変更した場合に、前記閾値を変化させる構成でもよい。
【0016】
前記第1又は第2の態様において、トリガスイッチはその操作量にかかわらずモータのオン、オフ制御を行うものであってもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、駆動源となるモータへの電池供給電圧に対応した保護機能を有し且つ作業性を確保できるコードレス電動工具を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る電動丸鋸の平面図、
図2は同側面図、
図3は同背面図、
図4は同正面図である。
図5は、
図1の電動丸鋸の、一部を断面とした第1の平面図である。
図6は、同第2の平面図である。
図7は、
図1のA−A断面図である。
【0022】
本実施の形態のコードレス電動丸鋸は、ベース1と、本体2とを備える。ベース1は、例えばアルミ等の金属製の略長方形の板材である。ベース1の長手方向は切断方向と一致する。ベース1の底面は、被削材との摺動面である。本体2は、後述のようにベース1に前後2箇所で連結され、ベース1に対して回動可能かつ左右に傾動可能である。本体2は、モータハウジング3と、ハンドル部4と、ギヤカバー5と、ソーカバー6と、保護カバー7と、鋸刃8(回転具)とを含む。鋸刃8はブラシレスモータ9(
図5及び
図6)の出力軸9aの先端側に回転伝達機構を介し取り付けられる先端工具である。モータハウジング3は、例えば樹脂製であり、ブラシレスモータ9を内蔵する。ブラシレスモータ9は、鋸刃8を回転駆動する。ハンドル部4は、モータハウジング3と同材質であり、モータハウジング3の上方において前後方向に延びる。ハンドル部4には、使用者がブラシレスモータ9の駆動、停止を切り替える操作部としてのメイントリガスイッチ18(メインスイッチ)が設けられる。このメイントリガスイッチ18は単なるオン、オフ操作を行うものであってもよい。ハンドル部4は、
図3及び
図4に示すようにモータハウジング3と一体的に設けられた左側部品と、モータハウジング3とギヤカバー5との間に挟持される右側部品とによって構成され、この左側部品と右側部品との組合せで後述する電池パック取付部4aが構成されると共に、鋸刃8側に位置するハンドル部4の右側部品に後述する制御回路基板収納部4bが設けられている。なお、ハンドル部4の左側部品と右側部品との境界は、
図1、
図3、
図4などでハンドル部4の中央に表れているラインである。
【0023】
ハンドル部4の後端下部には、電池パック取付部4a(電池取付部)と、制御回路基板収納部4bが一体に設けられる。電池パック取付部4aには、電池パック20(電池電源となる蓄電池)が、後方からスライドさせることで着脱自在に装着される。ハンドル部4の下側であって電池パック取付部4aの上面には正逆切替スイッチ16(例えばタクトスイッチ)及び正逆表示LED29が設けられる。使用者は、正逆切替スイッチ16により、ブラシレスモータ9のロック検出時にブラシレスモータ9を逆転に切り替えることができる。ブラシレスモータ9が逆転に切り替えられると、正逆表示LED29は例えば点灯して外部に報知する。電池パック20は、ブラシレスモータ9に駆動電力を供給する。
図1に示すように、電池パック取付部4aに装着された電池パック20の左側面と、モータハウジング3の左側面は、略同一平面上に存在する。すなわち、鋸刃8からモータハウジング3の左側面の距離と、鋸刃8から電池パック20の左側面の距離が略同じであり、電池パック20の左側面とモータハウジング3の左側面を下にして電動丸鋸を載置することができ、鋸刃8の交換作業を容易に行うことができる。制御回路基板収納部4bは、電池パック20の右側に設けられる。制御回路基板収納部4bには、制御回路基板21が収納保持される。制御回路基板21は、ブラシレスモータ9の動作を制御する制御部(コントローラ)を搭載している。制御回路基板21は、ブラシレスモータ9の回転軸(鋸刃8の回転軸)と略垂直である。制御回路基板21の左側、すなわち制御回路基板21と電池パック20との間は、例えば樹脂製のコントローラカバー22によって仕切られる。
【0024】
ギヤカバー5は、ハンドル部4の右側に設けられる。ギヤカバー5は、例えば金属製であり、ブラシレスモータ9と鋸刃8との間の回転伝達機構を内蔵する。回転伝達機構は周知の減速機構等からなる。ソーカバー6は、ギヤカバー5に取り付けられ、ギヤカバー5と共に鋸刃8の上半分を覆う。ソーカバー6はギヤカバー5と同材質かつ一体に形成されても良い。ギヤカバー5及びソーカバー6の前端部は、回動支持部14によって回転自在に連結される。保護カバー7は、例えば樹脂製であり、ギヤカバー5の後方側に、ギヤカバー5及びソーカバー6の外縁に沿って回動可能に設けられる。ギヤカバー5と保護カバー7との間には図示しないバネが介在する。このバネは、ギヤカバー5に対して保護カバー7を、ギヤカバー5及びソーカバー6の円周方向であって鋸刃8の下半分を覆う方向(
図2中、反時計回り)に付勢する。よって、切断作業を行っていない状態では、保護カバー7は、鋸刃8の下半分(ベース1の底面から下方に突出した部分)を、前方の一部を除いて覆う。
【0025】
ベース1の前方には、ベベルプレート12が立設される。ベベルプレート12は、切断方向と略直交する短手方向に直立する。ベベルプレート12には長孔13が設けられる。長孔13は、切断方向に延びる第1傾動軸部15aを中心とし、かつ第1傾動軸部15aと直交する円弧状である。回動支持部14は、第1傾動軸部15aを中心としてベース1に対して左右に傾動可能に支持される。回動支持部14の傾動位置は、傾斜角度調整レバー11を緩めた状態で調整し、傾斜角度調整レバー11を締め付けることで固定する。回動支持部14は、ブラシレスモータ9の回転軸(鋸刃8の回転軸)と平行な軸でソーカバー6の前端部を回動可能に支持する。ソーカバー6の回動位置の調整及び固定については後述する。
【0026】
ベース1の後方には、リンク10が、第1傾動軸部15aと同軸の傾動軸部15bを中心に回動可能に設けられ、ギヤカバー5の左側面に沿う。リンク10は、例えばアルミ等の金属製である。切込み深さ調整レバー19を緩めた状態では、リンク10とギヤカバー5とは相互にスライド可能であり、ベース1に対するソーカバー6の回動位置、すなわち切込み深さを調整することができる。そして、切込み深さ調整レバー19を締め付けることで、ギヤカバー5の回動位置を固定できる。
【0027】
図6に示すように、ブラシレスモータ9は、出力軸9aの周囲にロータコア9bを有する。出力軸9aは鋸刃8の回転軸と平行である。ロータコア9bは出力軸9aと一体に回転する。ロータコア9bにはロータマグネット9cが挿入支持される。ステータコア9dは、ロータコア9bの外周面を囲むように設けられる。ステータコア9dには、インシュレータ9eを挟んでステータコイル9fが設けられる。ステータコア9dの左端側には、スイッチング基板23が固定される。スイッチング基板23は出力軸9aと略垂直である。
図7に示すように、スイッチング基板23には、6つのスイッチング素子23a(FET等)が、本体部を倒した状態で搭載される。スイッチング素子23aは、電池パック20からの供給電圧をスイッチングする。
図5に示すように、電池パック20の端子部20aとスイッチング基板23は、配線24によって相互に電気的に接続されている。配線25は、電池パック20の端子部20aと制御回路基板21とを相互に電気的に接続する。配線26は、制御回路基板21とスイッチング基板23とを相互に電気的に接続する。制御回路基板21のコントローラからの制御信号が配線26によりスイッチング基板23上のスイッチング素子23aの制御端子(ゲート)に印加され、スイッチング素子23aのオンオフが制御される。ブラシレスモータ9の出力軸9aには冷却ファン33が取り付けられて出力軸9aと共に回転する。冷却ファン33の発生する気流によって、ブラシレスモータ9及びスイッチング素子23aが冷却される。
【0028】
図8は、本発明の実施の形態に係る電動丸鋸の機能ブロック図である。制御部27は、
図6に示す制御回路基板21に搭載される。制御部27は、ブラシレスモータ9を回転(正転又は逆転)させるためにインバータ部28の駆動制御を行うとともに、正逆表示LED29の点灯制御等の各種制御を行う。インバータ部28は、
図6及び
図7に示すスイッチング素子23a(ここでは6つ)をブリッジ接続した回路である。正逆表示LED29は、制御部27の回転モード(正転モード又は逆転モード)、すなわちメイントリガスイッチ18がオンされたときにブラシレスモータ9が回転する方向(正転又は逆転)を使用者に報知する報知手段の例示であり、例えば点灯は逆転モード、消灯は正転モードを示す。また、正逆表示LED29は、後述の正逆切替可能状態で点滅(正転及び逆転とは異なる態様で発光)してもよい。
【0029】
電池パック20の電池供給電圧はインバータ部28に供給され、検出抵抗32は、ブラシレスモータ9の駆動電流の経路(電池パック20とインバータ部28との接続線路)に設けられる。電池電圧検出回路50は、電池パック20の電池供給電圧(電池パックを構成する各電池セルの出力電圧の総和)と各電池セルの出力電圧を検出して、それらの検出値を演算部34に出力する。制御回路電圧供給回路41は、電池パック20の電圧を制御部27の動作に適した電圧に変換して制御部27に供給する。磁気センサ42は、例えばホール素子であり、ブラシレスモータ9の回転位置に応じた信号を出力する。
【0030】
制御部27において、モータ電流検出回路37は、検出抵抗32の端子電圧によりブラシレスモータ9の駆動電流を検出する。スイッチ操作検出回路38は、使用者によるメイントリガスイッチ18の操作を検出する。印加電圧設定回路39は、メイントリガスイッチ18の操作によって、インバータ部28の各スイッチング素子23aに印加するPWM信号のデューティ(以下、単に「デューティ」とも表記)を設定して演算部34に出力する。回転子位置検出回路35は、磁気センサ42からの信号に基づいて、ブラシレスモータ9の回転位置を検出する。モータ回転数検出回路36は、回転子位置検出回路35からの信号に基づいて、ブラシレスモータ9の回転数を検出する。演算部34は、印加電圧設定回路39で設定されたデューティ、及び回転子位置検出回路35で検出したブラシレスモータ9の回転位置に応じて、制御信号出力回路40を駆動し、インバータ部28の各スイッチング素子23aをスイッチング制御し、モータ9のPWM制御を行う。また、前記演算部34は、回転子位置検出回路35の検出結果に基づいてブラシレスモータ9の回転数を演算する。更に、設定されたブラシレスモータ9と鋸刃8の減速比に基づいて回転子位置検出回路35の検出結果から鋸刃8の回転数を検出することができる。また、演算部34は後述する
図9乃至
図11の第1乃至第3のフローチャートの制御動作を行うための演算機能を有する。
【0031】
制御部27は、ブラシレスモータ9の正転と逆転を切替可能な正逆切替可能状態と、ブラシレスモータ9の逆転を許容しない逆転禁止状態とを有する。すなわち、正逆切替可能状態では、制御部27は、使用者による正逆切替スイッチ16の操作を有効に受け付け、例えば使用者が正逆切替スイッチ16を操作する度に正転モードと逆転モードとの間で切り替わる。一方、逆転禁止状態では、制御部27は、使用者が正逆切替スイッチ16を操作しても、ブラシレスモータ9の回転方向を正転に維持する(逆転には切り替えない)。制御部27は、初期状態及び通常時は逆転禁止状態であり、ブラシレスモータ9のロックを検出すると正逆切替可能状態となる。
【0032】
図9は、鋸刃回転数の変化量が既定の閾値を超えた場合にモータを自動停止する場合の第1のフローチャートであり、ブラシレスモータへの印加電圧に対応させて閾値を変化させる例である。電池パックの定格電圧は14.4Vとしている。電池パックを装着し、メイントリガスイッチを入れてブラシレスモータを起動した後、ステップS1で
図8のインバータ部28への印加電圧検出を行う。インバータ部28への印加電圧は電池電圧検出回路50によって検出された電池パック20の電池供給電圧から検出抵抗32の電圧降下を差し引くことによって得られる。
【0033】
次にステップS2で印加電圧Vの電圧確認動作を行い、印加電圧Vが低位基準値である13ボルト以下(すなわちV≦13)、低位基準値と高位基準値(16.4ボルト)の間(すなわち13<V<16.4)、高位基準値以上(すなわち16.4≦V)のいずれの範囲にあるかを判別する。印加電圧Vが低位基準値である13ボルト以下の場合、ステップS3で後述のステップS9の閾値αをA(A:定数)に設定する。印加電圧Vが低位基準値と高位基準値の間(13<V<16.4)の場合、ステップS4で後述のステップS9の閾値αをB(B:定数)に設定する。印加電圧Vが高位基準値である16.4ボルト以上の場合、ステップS5で後述のステップS9の閾値αをC(C:定数)に設定する。但し、A>B>Cである。
【0034】
ステップS6で鋸刃の回転数検出(1)を行い、回転数検出値N
1を計測する。ステップS7でT秒(実際にはT:10mS程度である)経過後、ステップS8で次回の回転数検出(2)を行い、回転数検出値N
2を計測する。そして、ステップS9で
(N
1−N
2)/N
1≧α (但し、αは閾値を表す定数)
であるか否か判定し、上記不等式を満足する場合(Yesの場合)にステップS10でモータ停止する。上記不等式を満足しない場合(Noの場合)にはステップS1〜S9を繰り返す。
【0035】
図1乃至
図8に示した電動丸鋸において、
図9のフローチャートで示すモータ制御を行うことで、電池パックの供給電圧が低下した場合でも適切な閾値を選定して作業性の良好な動作を行わせることができる。具体的に言えば、使用によって電池供給電圧が低下した際にモータの出力が低下し、同負荷に対し鋸刃の回転数変動が大きくなってしまうため、電池供給電圧にかかわらず一定閾値の保護機能では、重負荷切断作業や目地や節目を切断する際の鋸刃の回転数変動でもモータが停止し易くなってしまう現象が発生するが、このような現象を防止して、作業性を維持することができる。
【0036】
図10は、先端工具としての鋸刃の回転数の変化量が既定の閾値を超えた場合にモータを自動停止する場合の第2のフローチャートであり、ブラシレスモータへの印加電圧に対応させて閾値を変化させる機能の他に鋸刃回転数が一定値未満の場合にはモータ停止とする機能を付加した例である。
図10のフローチャートは
図9のフローチャートのステップS6とステップS7間に、計測した鋸刃の回転数検出値N
1が作業可能な回転数の下限値N以上か否か判定するステップS11が挿入されている。回転数検出値N
1が下限値N以上の場合のみステップS7以降を実行し、回転数検出値N
1が下限値N未満ではステップS10のモータ停止となる。
【0037】
図1乃至
図8に示した電動丸鋸において、
図10のフローチャートで示すモータ制御を行うことで、電池パック連続使用時等にモータに供給される電圧が徐々に低下し、電池パックの保護が必要となる場合や適切な作業が困難になる場合にモータを停止することができる。さらに、瞬間的な負荷に伴う回転数変動だけでなく、徐々に負荷が増大していく場合等に鋸刃回転数の下限値Nを設定することでモータへの負担を軽減することができる。
【0038】
図11は、鋸刃回転数の変化量が既定の閾値を超えた場合にモータを自動停止する場合の第3のフローチャートであり、
図10のフローチャートの機能に加えて、PMW制御によって
図8のインバータ部28からモータ9に供給する電圧の最大デューティD=100%の場合と、省電力モードとして最大デューティD=70%に設定した場合とで、異なる閾値を用いる機能を付加したものである。
【0039】
また、
図12はモータへの電池供給電圧と停止の基準となる鋸刃回転数変化量[rpm/10msec]との関係であって、(A)は電池パックの定格電圧が14.4V品の場合、(B)は電池パックの定格電圧が18V品の場合を示している。最大デューティD=100%の場合に比較して、省電力モードの最大デューティD=70%に設定した場合は停止の基準となる鋸刃回転数変化量を低めに設定する。
【0040】
図11のフローチャートは、電池パックの定格電圧が14.4V品の場合を示しており、メイントリガスイッチを入れてブラシレスモータを起動した後、ステップS20で最大デューティDを判定する。つまり最大デューティD=100%であるか、省電力モードの最大デューティD=70%であるかを判定する。最大デューティD=100%であると判定されたら、以後
図10のフローチャートと同様のステップS2以降を実行する。また、省電力モードの最大デューティD=70%であると判定されたら、以後
図10のフローチャートと同様のステップS2’以降を実行する。但し、
図12からわかるように、D=100%の場合とは異なる閾値A’,B’,C’を用いる。
【0041】
また、
図12(B)の電池パックの定格電圧が18V品の場合も、ステップS2及びステップS2’の電圧V確認の電圧範囲をV≦16.5、16.5<V<18、18≦Vで判別し、また閾値A,B,C及び閾値A’,B’,C’を
図12(B)を参照して変更すればよい。
【0042】
図1乃至
図8に示した電動丸鋸において、
図11のフローチャートで示すモータ制御を行うことで、省電力モードを備える電動丸鋸の場合にも最適なモータ停止制御が可能となり、作業性を良好に維持できる。
【0043】
本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0044】
(1) 電池電源となる電池パック20によって作動するブラシレスモータ9と、モータ9によって駆動される先端工具としての鋸刃8と、モータ9を制御する制御部27とを備える構成において、制御部27が、鋸刃8の回転数を検出する機能と、前記回転数の単位時間当たりの変化量が設定された閾値αを超えた時にモータ9を停止する機能と、電池パック20の電圧に応じて閾値αを変化させる機能とを有しているので、電池供給電圧に対応した保護機能を発揮でき、作業性を確保できる。つまり、継続使用で電池パック20から供給される電圧が低下すると、モータトルクが低下し、このため一定の閾値、又は回転数のみに応じた従来の閾値設定では、電池パック20からの供給電圧が変動した場合に軽い負荷でモータが停止し、作業性を損ねる可能性があったが、このような問題を解消できる。
【0045】
(2) 制御部27が検出した鋸刃8の回転数が所定の下限値Nより低い場合に、モータ9を停止させる機能を有することで、適切な作業が可能となる回転数よりも回転数が低下した場合には、モータ9の回転を停止して、不適切な状態で作業することを未然に防止できる。
【0046】
(3) 電池パック20の供給電圧に応じて閾値αを複数段階で変化させることによって、電池供給電圧の各範囲に対応したより適切な閾値αを選択でき、その結果いっそう適切なモータ制御が可能となる。
【0047】
(4) モータ9がインバータ部28によりPWM制御されている場合、モータ9に供給する電圧の最大デューティを省電力モードの選択等で変更した場合でも、閾値αを変化させることで、適切な閾値αを選定できる。
【0048】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0049】
上記実施の形態における各フローチャートでは、先端工具としての鋸刃の回転数を検出するように説明したが、モータの回転数と先端工具の回転数が正比例するから、各フローチャートにおいて、モータ回転数を検出するようにしてもよく、その場合、モータ回転数に対応する閾値となる。
【0050】
上記実施の形態では、電池電圧検出回路50は、電池パック20の電池供給電圧(電池パックを構成する各電池セルの出力電圧の総和)と各電池セルの出力電圧を検出して、それらの検出値を演算部34に出力しているので、最も低電圧の電池セル又は各電池セルに着目し、電池セルの電圧変化に着目して
図9乃至
図11のフローチャートの動作に準ずるモータ制御を行ってもよい。この場合、
図10及び
図11のステップS11は電池セルの過放電防止のために最も低電圧の電池セルが2ボルト未満になったときにモータ停止とする。
【0051】
上記実施の形態では、
図9乃至
図11のステップS10ではモータ停止したが、その代わりにステップS10においてメイントリガスイッチ18の操作が解除されるまで10%〜20%程度のデューティーにより低速でモータの回転を継続して、異常になったことを作業者に知らせる構成であってもよい。
【0052】
このように、モータ9又は鋸刃8の回転数の単位時間当たりの変化量が設定された閾値を超えた時にモータ9を停止させるのではなく、低速で運転することで、作業者が保護機能が働いたことを容易に認識することができるようになる。なお、保護機能が働いた時に点灯するLEDなどを併せて設けた構成としても良いが、作業者は回転数の低下を体感により認識することができるため、LEDの点灯を確認するよりも容易に認識することができるものである。また、LEDを設けずに低速運転のみの構成とした場合には、安価な構成で保護回路が働いたことを作業者に知らせることができる構成とできる。
【0053】
本発明は、実施形態で記載したコードレス電動丸鋸に限定されず、電池を用いて駆動する卓上丸鋸や、グラインダ、電気かんな等のトリガスイッチの操作量(引き量)にかかわらずモータの回転制御を行う電動工具に効果的に適用可能である。