特許第6308368号(P6308368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6308368-被覆蛍光体粒子及びその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308368
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】被覆蛍光体粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20180402BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   C09K11/08 G
   C09K11/59
   C09K11/08 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-554587(P2014-554587)
(86)(22)【出願日】2013年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2013085077
(87)【国際公開番号】WO2014104286
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-287822(P2012-287822)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】福田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】天谷 仁
(72)【発明者】
【氏名】野北 里花
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】有馬 憲治
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/063707(WO,A1)
【文献】 特開2008−111080(JP,A)
【文献】 特開2008−280471(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125832(WO,A1)
【文献】 特開2008−069326(JP,A)
【文献】 特開2007−154122(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070565(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/001799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、金属および/または半金属のアルコキシドのオリゴマーとの縮合反応により生成したプレポリマーの加水分解物にてケイ酸塩蛍光体粒子の表面の30%以上の領域が被覆されてなる、半導体紫外光発光素子から発生する波長400nmの光の照射を100時間継続して受けた後でも初期発光強度の低下が観察されない被覆ケイ酸塩蛍光体粒子。
【請求項2】
金属および/または半金属のアルコキシドがアルコキシシランである請求項1に記載の被覆ケイ酸塩蛍光体粒子。
【請求項3】
上記加水分解物が、ケイ酸塩蛍光体粒子表面の40−100%の領域を被覆している請求項1に記載の被覆ケイ酸塩蛍光体粒子。
【請求項4】
上記加水分解物が、上記プレポリマーの加水分解反応促進剤を含む水の存在下でのプレポリマーの加水分解により生成した加水分解物である請求項1に記載の被覆ケイ酸塩蛍光体粒子。
【請求項5】
ケイ酸塩蛍光体粒子が粒子表面に水酸基を有するケイ酸塩蛍光体であって、上記加水分解物が粒子表面の少なくとも一部の水酸基との縮合によりケイ酸塩蛍光体粒子と結合している請求項1に記載の被覆ケイ酸塩蛍光体粒子。
【請求項6】
半導体紫外光発光素子から発生する波長400nmの光の照射を200時間継続して受けた後であっても初期発光強度の低下が観察されない請求項1に記載の被覆ケイ酸塩蛍光体粒子。
【請求項7】
ケイ酸塩蛍光体が、下記(I)の組成式で表されるケイ酸塩蛍光体である請求項6に記載の被覆ケイ酸塩蛍光体粒子:
3 MgSi 2 8 :Eu・・・・(I)
式(I)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種もしくは二種以上のアルカリ土類金属もしくは該アルカリ土類金属と希土類金属との混合物を表す。
【請求項8】
ケイ酸塩蛍光体粒子、そして少なくとも一方の末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、金属および/または半金属のアルコキシドのオリゴマーとの縮合反応により生成したプレポリマーを含む有機溶媒と、プレポリマーの加水分解反応促進剤を含む水とを混合して、該プレポリマーを加水分解させる工程を含む請求項1に記載の被覆ケイ酸塩蛍光体粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆蛍光体粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、白色LEDの可視光発光源として広く利用されている。白色LEDとしては、電気エネルギーの付与によって青色光を放出する半導体発光素子と黄色発光蛍光体とを組み合わせて、半導体発光素子からの青色光と、その青色光で黄色発光蛍光体を励起させることによって発生した黄色光との混色により白色光を得る二色混色タイプのものが広く利用されている。しかしながら、この二色混色タイプの白色LEDが発する白色光は純度が低いという問題がある。このため、最近では、電気エネルギーの付与によって波長350〜430nmの光を発光する半導体発光素子と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体そして赤色発光蛍光体の三種類の蛍光体を組み合わせ、半導体発光素子からの光で、それぞれの蛍光体を励起させることによって発生した青色光と緑色光及び赤色光の三色の混色により白色光を得る三色混色タイプの白色LEDの開発が行なわれている。
【0003】
特許文献1には、耐湿性が高く、貯蔵後の輝度低下を抑制することができる蛍光体粒子として、下記の式(1)で表される化合物に付活剤としてLn(ただしLnはCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Mnの1種以上である。)が含有されてなる粒子状の蛍光物質(A)および該粒子の表面に粒子として、または層状に載置されるSi含有化合物(B)からなる蛍光体粒子が記載されている。
3M1O・mM2O・nM32 (1)
(ただし式(1)中のM1はCa、Sr、Baの1種以上であり、M2はMgおよび/またはZnであり、M3はSiおよび/またはGeであり、mの値は0.9以上1.1以下の範囲であり、nの値は1.8以上2.2以下の範囲である。また、蛍光物質(A)とSi含有化合物(B)とは同一ではない。)
【0004】
なお、この文献には、蛍光物質(A)の例として、下記の式(2)で表される化合物が記載されている。
(Ba3-a-b-3xSraCabEu3x)MgSi28 (2)
(ただし、式中aの値は0以上3未満の範囲であり、bの値は0以上3未満の範囲であり、xの値は0.00016以上0.1以下の範囲であり、a+b+3x≦3である。)
また、Si含有化合物(B)の例としては、SiO2、MgSiO4、MgSiO3等の酸化物、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物、メチルジメトキシヒドロキシルシラン、メチルメトキシジヒドロキシルシラン等のアルコキシル基と水酸基を有する有機ケイ素化合物、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリプロピルシラノール等の水酸基を有する有機ケイ素化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のシロキサン基を有する有機ケイ素化合物が記載されている。
【0005】
一方、特許文献2には、両末端または片末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと金属および/または半金属のアルコキシドのオリゴマーとを、加水分解を伴う縮合反応によって、上記ポリジメチルシロキサンの両末端または片末端に上記金属および/または半金属のアルコキシドを導入した有機−無機ハイブリッドプレポリマーが記載されている。この文献には、上記の有機−無機ハイブリッドプレポリマーの用途として、接着剤及び塗料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−224262号公報
【特許文献2】国際公開第2011/125832号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
波長350〜430nmの光を発光する半導体発光素子と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体そして赤色発光蛍光体の三種類の蛍光体を組み合わせた三色混色タイプの白色LEDに用いる蛍光体は、波長350〜430nmの光で励起させたときの発光強度が高く、かつその高い発光強度が長期間にわたって安定して維持されることが好ましい。
従って、本発明の目的は、波長350〜430nmの光で励起したときの発光強度が高く、長期間にわたって低下が少ない発光を示す蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、少なくとも一方の末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、金属および/または半金属のアルコキシドのオリゴマーとの縮合反応により生成したプレポリマーの加水分解物により、蛍光体粒子の表面の少なくとも一部が被覆された被覆蛍光体粒子は、波長350〜430nmの光で励起させたときの発光強度が、被覆される前の蛍光体粒子と比較して同等であり、また長期間にわたって低下が少ない発光を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
従って、本発明は、少なくとも一方の末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、金属および/または半金属のアルコキシドのオリゴマーとの縮合反応により生成したプレポリマーの加水分解物により、蛍光体粒子の表面の少なくとも一部が被覆されてなる被覆蛍光体粒子にある。
【0010】
本発明の被覆蛍光体粒子の好ましい態様は、次のとおりである。
(1)金属および/または半金属のアルコキシドがアルコキシシランである。
(2)上記加水分解物が、粒子表面の30%以上の領域を被覆している。
(3)上記加水分解物が、上記プレポリマーの加水分解反応促進剤を含む水の存在下でのプレポリマーの加水分解により生成した加水分解物である。
(4)蛍光体粒子が粒子表面に水酸基を有し、上記加水分解物が粒子表面の少なくとも一部の水酸基との縮合により蛍光体粒子と結合している。
(5)蛍光体粒子が、ケイ酸塩蛍光体の粒子である。
(6)ケイ酸塩蛍光体が、下記(I)の組成式で表されるケイ酸塩蛍光体である。
3MgSi28:Eu・・・・(I)
式(I)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種もしくは二種以上のアルカリ土類金属もしくは該アルカリ土類金属と希土類金属との混合物を表す。
【0011】
本発明はまた、蛍光体粒子、そして少なくとも一方の末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、金属および/または半金属のアルコキシドのオリゴマーとの縮合反応により生成したプレポリマーを含む有機溶媒と、プレポリマーの加水分解反応促進剤を含む水とを混合して、該プレポリマーを加水分解させる工程を含む上記本発明の被覆蛍光体粒子の製造方法にもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の被覆蛍光体粒子は、波長350〜430nmの光で励起したときの発光の発光強度が高く、その発光が長期間にわたって実質的に低下しない。このため、本発明の被覆蛍光体粒子は、波長350〜430nmの光を発光する半導体発光素子と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体そして赤色発光蛍光体の三種類の蛍光体を組み合わせた三色混色タイプの白色LED用の蛍光体として有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の被覆蛍光体粒子を用いたLEDの構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の被覆蛍光体粒子は、粒子表面の少なくとも一部が、少なくとも一方の末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、金属および/または半金属のアルコキシドのオリゴマーとの縮合反応により生成したプレポリマーの加水分解物により被覆されている。プレポリマーの加水分解物により被覆されている蛍光体粒子の表面の領域は、蛍光体粒子の全表面に対して30%以上の領域が被覆されていることが好ましく、40〜100%の範囲の領域が被覆されていることが特に好ましい。蛍光体粒子の表面の加水分解物によって被覆されている領域は、SEM(走査型電子顕微鏡)によって確認できる。
【0015】
本発明において用いるプレポリマーは、有機−無機ハイブリッドプレポリマーと呼ばれることもある。本発明において用いるプレポリマーは、前記の特許文献2(国際公開第2011/125832号)に記載の方法により製造できる。
【0016】
本発明において用いるプレポリマーは、金属および/または半金属のアルコキシドが、ケイ素のアルコキシド(アルコキシシラン)であることが好ましい。
【0017】
本発明において、プレポリマーの加水分解物により被覆される前の蛍光体粒子は粒子表面に水酸基を有することが好ましい。そして、被覆蛍光体粒子を被覆しているプレポリマーの加水分解物は、蛍光体粒子の粒子表面に水酸基との縮合により蛍光体粒子と結合していることが好ましい。なお、蛍光体粒子の表面を被覆しているプレポリマーの加水分解物同士が縮合してポリマーを生成していてもよい。
【0018】
粒子表面に水酸基を有する蛍光体粒子の例としては、ケイ酸塩を母体とするケイ酸塩蛍光体粒子を挙げることができる。ケイ酸塩蛍光体粒子は、粒子表面にあるケイ素原子(+4価)に水酸基が結合していることが好ましい。ケイ酸塩蛍光体粒子の例としては、(Ba,Sr,Ca)3MgSi28:Euの組成式で表される青色発光蛍光体の粒子、(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Euの組成式で表される緑色発光蛍光体の粒子、及び(Ba,Sr,Ca)3MgSi28:Eu,Mnの組成式で表される赤色発光蛍光体の粒子を挙げることができる。これらのケイ酸塩蛍光体粒子は、Sc、Y、Gd、Tb及びLaなどの希土類元素が添加されていてもよい。ケイ酸塩蛍光体粒子以外の蛍光体粒子の例としては、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Mg,Ca)10(PO46(Cl,F)2:Eu等の組成式で表される青色発光蛍光体の粒子、BaMgAl1017:Eu,Mn、α−SiAlON:Eu、β−SiAlON:Eu、ZnS:Cu,Al等の組成式で表される緑色発光蛍光体の粒子、及びY22S:Eu、La23S:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu、CaAlSiN3:Eu、Eu229、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu,Mn、CaTiO3:Pr,Bi、(La,Eu)2312等の組成式で表される赤色発光蛍光体の粒子を挙げることができる。
【0019】
青色発光蛍光体粒子として、下記(I)の組成式で表されるケイ酸塩蛍光体であることが好ましい。
3MgSi28:Eu・・・・(I)
式(I)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種もしくは二種以上のアルカリ土類金属もしくは該アルカリ土類金属と希土類金属との混合物を表す。
【0020】
本発明の被覆蛍光体粒子は、蛍光体粒子、そして少なくとも一方の末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、金属および/または半金属のアルコキシドのオリゴマーとの縮合反応により生成したプレポリマーを含む有機溶媒と、プレポリマーの加水分解反応促進剤を含む水とを混合して、該プレポリマーを加水分解させ、生成した加水分解物で蛍光体粒子の表面を被覆させることによって製造することができる。有機溶媒は、水に対して相溶性を有する有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒の例としては、アルコール及びケトンを挙げることができる。アルコールは、炭素原子数1〜5の一価アルコールが好ましい。ケトンの例としては、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン及びメチルイソブチルケトンを挙げることができる。加水分解反応促進剤の例としては、アンモニア、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジラシレート、ジブチル錫ジ−2−エチルヘキソエート、ナトリウム−O−フェニルフェネート及びテトラ(2−エチルヘキソシル)チタネートを挙げることができる。
【0021】
上記の方法によって有機溶媒中で生成した被覆蛍光体粒子は、ろ過やデカンテーションなどの固液分離法により回収することができる。回収した被覆蛍光体粒子は、洗浄し、乾燥した後、120〜300℃の温度で加熱処理することが好ましい。加熱処理は、還元性ガスあるいは不活性ガスの雰囲気中で行うことが好ましい。還元性ガスの例としては、アンモニアガス、一酸化炭素ガス、硫化水素ガス及び二酸化硫黄ガスを挙げることができる。不活性ガスの例としては、窒素ガス及びアルゴンガスを挙げることができる。加熱処理の時間は、一般に10分〜10時間の範囲にある。
【0022】
次に本発明の被覆蛍光体粒子を利用したLED(発光ダイオード)について、添付図面の図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の被覆蛍光体粒子を用いたLEDの一例の断面図である。図1において、LEDは、基板1と、基板1の上に接着剤2により固定された半導体発光素子3、基板1の上に形成された一対の電極4a、4b、半導体発光素子3と電極4a、4bとを電気的に接続するリード線5a、5b、半導体発光素子3を被覆する樹脂層6、樹脂層6の上に設けられた蛍光体層7、そして樹脂層6と蛍光体層7の周囲を覆う光反射材8、そして電極4a、4bと外部電源(図示せず)とを電気的に接続する導電線9a、9bからなる。半導体発光素子3は、電気エネルギーの付与によって波長350〜430nmの光を発光する半導体発光素子であることが好ましい。半導体発光素子の例としては、AlGaN系半導体素子を挙げることができる。蛍光体層7は、本発明の被覆蛍光体粒子が分散された透明材料によって形成されている。被覆蛍光体粒子は、被覆青色発光蛍光体粒子、被覆緑色発光蛍光体粒子及び被覆赤色発光蛍光体粒子の三種類の被覆蛍光体粒子の混合物であることが好ましい。透明材料の例としては、ガラス及びシリコーン樹脂などの透明樹脂を挙げることができる。
【0023】
図1のLEDにおいて、導電線9a、9bを介して電極4a、4bに電圧を印加して半導体発光素子3に電気エネルギーを付与すると、半導体発光素子3が発光して発光光が発生する。この半導体発光素子3の発光光によって蛍光体層7中の被覆蛍光体粒子を励起させることによって可視光が生成する。半導体発光素子3として電気エネルギーの付与によって波長350〜430nmの光を発光する半導体発光素子を用い、蛍光体層7中の被覆蛍光体粒子として被覆青色発光蛍光体粒子、被覆緑色発光蛍光体粒子及び被覆赤色発光蛍光体粒子の三種類の被覆蛍光体粒子を用いることによって、それらの蛍光体から生成した青色光、緑色光及び赤色光の混色により発生する白色光を得ることができる。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
ナス型フラスコに、プレポリマー(国際公開第2011/125832号に記載の方法により製造された、少なくとも一方の末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、アルコキシシランのオリゴマーとの縮合反応により生成した有機−無機ハイブリッドプレポリマー)1.452g、ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子(Sr2.9550.005MgSi28:Eu0.04粒子)12g、エタノール60mL、そして回転子を投入し、回転子を回転させて撹拌した。室温で撹拌を続けながら、ナス型フラスコに、濃度25質量%のアンモニア水溶液2.616gを10分かけて、ゆっくりと滴下した。アンモニア水溶液の滴下終了後、さらに2時間撹拌を続けてプレポリマーを加水分解させ、その加水分解物でケイ酸塩青色発光蛍光体粒子の表面を被覆した。次いで、被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子をろ過により回収した。回収した被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子をメタノールで洗浄した後、真空乾燥機を用いて60℃の温度で一晩減圧乾燥した。乾燥後の被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子を窒化ホウ素(BN)るつぼに入れて、環状炉に投入した。そしてその環状炉にアンモニアガスを流しながら、被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子を180℃の温度で1時間加熱した。放冷後の被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察したところケイ酸塩青色発光蛍光体粒子の表面の約40%の領域がプレポリマーの加水分解物により被覆されていることが確認された。
【0025】
[実施例2]
ガラス製のバイアル瓶に、プレポリマー0.726gと濃度2モル/Lのエタノール水溶液5mLとを入れ、バイアル瓶に蓋をした後、ミックスローターを用いて、バイアル瓶を10分間振とうさせた。次いで、バイアル瓶の蓋を開けて、バイアル瓶にケイ酸塩青色発光蛍光体粒子(Sr2.9550.005MgSi28:Eu0.04粒子)5gを投入し、再びバイアル瓶に蓋をした後、ミックスローターを用いて、バイアル瓶を一晩振とうして、プレポリマーを加水分解させ、その加水分解物中にケイ酸塩青色発光蛍光体粒子が分散した混合物を得た。次いで、この混合物を、回転子により撹拌されている純水中に滴下して、プレポリマーの加水分解物で被覆された被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子を得た。純水中に沈殿した被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子をろ過により回収した。回収した被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子をメタノールで洗浄した後、真空乾燥機を用いて60℃の温度で一晩減圧乾燥した。乾燥後の被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子を窒化ホウ素るつぼに入れて、環状炉に投入した。そしてその環状炉にアンモニアガスを流しながら、被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子を180℃の温度で1時間加熱した。放冷後の被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子の表面をSEMを用いて観察したところ、ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子の表面の約50%の領域がプレポリマーの加水分解物により被覆されていることが確認された。
【0026】
[実施例3]
プレポリマーの量を1.452gとし、エタノール水溶液の量を16mLとしたこと、そして、プレポリマーの加水分解物中にケイ酸塩蛍光体粒子が分散した混合物を、超音波の付与により振動している300mLの純水中に少しずつ滴下したこと以外は、実施例2と同様にして、プレポリマーの加水分解物で被覆されたケイ酸塩青色発光蛍光体粒子を得た。得られた被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子の表面をSEMを用いて観察したところ、ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子の表面の約45%の領域がプレポリマーの加水分解物により被覆されていることが確認された。
【0027】
[比較例1]
実施例1〜3で使用したのと同じケイ酸塩青色発光蛍光体粒子(Sr2.9550.005MgSi28:Eu0.04粒子)を比較例1として用意した。
【0028】
[比較例2]
プレポリマーの代わりに、テトラエトキシシラン1.452gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、テトラエトキシシランの加水分解物で処理されたケイ酸塩青色発光蛍光体粒子を製造した。
【0029】
[評価]
実施例1〜3で得られた被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子、比較例1のケイ酸塩青色発光蛍光体粒子及び比較例2で得られたテトラエトキシシランの加水分解物で処理されたケイ酸塩青色発光蛍光体粒子を用いて、下記の方法により青色LEDチップを製造した。そして、その青色LEDチップに電気エネルギーを供給して、波長460nmの青色光の発光強度を測定した。この発光強度を初期発光強度として、表1に示す。なお、初期発光強度は、比較例1の初期発光強度を100とした相対値である。
また、青色LEDチップに電気エネルギーを供給開始から100時間後、200時間後、500時間後の波長460nmの可視光の発光強度を測定した。測定した発光強度を所定時間経過の発光強度として、表1に示す。所定時間経過の発光強度は、各実施例及び比較例の初期発光強度を100とした相対値である。
【0030】
[青色LEDチップの製造方法]
電極が形成されているガラス基板の上に、半導体紫外光発光素子(発光波長:400nm)を接着剤で固定した。次に、ガラス基板の上に、半導体紫外光発光素子を囲むように反射部材を形成した。次いで、ワイヤーボンディングにより、ガラス基板の電極と半導体紫外光発光素子の電極とを接続した。その後、反射部材と半導体紫外光発光素子の間の空間に、試料の蛍光体粒子を熱硬化性シリコーン樹脂に15質量%の量にて分散させた蛍光体粒子含有樹脂組成物を流し込み、その蛍光体粒子含有樹脂組成物を加熱処理して熱硬化性シリコーン樹脂を硬化させて、青色LEDチップを得た。
【0031】
【表1】
初期発光強度:比較例1の初期発光強度を100とした相対値である。
所定時間経過の発光強度:それぞれの実施例及び比較例の初期発光強度を100とした相対値である。
【0032】
表1の結果から、本発明に従うプレポリマーの加水分解物によって被覆されている被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子(実施例1〜3)は、400nmの紫外光で励起したときの初期発光強度が、被覆前のケイ酸塩青色発光蛍光体粒子(比較例1)と同じ100であり、従来のテトラエトキシシランの加水分解物で処理されたケイ酸塩青色発光蛍光体粒子(比較例2)と比較して高い値を示すことが分かる。
【0033】
また、表1の結果から、本発明に従うプレポリマーの加水分解物によって被覆されている被覆ケイ酸塩青色発光蛍光体粒子(実施例1〜3)は、所定時間経過の発光強度が初期発光強度よりも低下していないことから、発光強度が長期間にわたって安定することが分かる。一方、被覆前のケイ酸塩青色発光蛍光体粒子(比較例1)は、所定時間経過の発光強度が時間の経過と共に低下している。
【符号の説明】
【0034】
1 基板
2 接着剤
3 半導体発光素子
4a、4b 電極
5a、5b リード線
6 樹脂層
7 蛍光体層
8 光反射材
9a、9b 導電線
図1