(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1〜
図5を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、
図1および
図2に示すように、被装着部材である腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1は、上部側に位置する第1ケース1aと、下部側に位置する第2ケース1bとを備え、全体がほぼ円筒状に形成されている。
【0012】
この腕時計ケース1の上部開口部、つまり第1ケース1aの上部開口部には、
図2および
図4に示すように、時計ガラス2がパッキン2aを介して取り付けられている。また、この腕時計ケース1の下部、つまり第2ケース1bの下部には、裏蓋3が防水リング3aを介して取り付けられている。
【0013】
この腕時計ケース1の内部には、
図2および
図4に示すように、時計モジュール4が設けられている。この時計モジュール4は、指針を駆動する時計ムーブメント、時刻や日付などの情報を電気光学的に表示する表示パネル、これらを電気的に駆動するための回路部など、時計機能に必要な各種の部品(いずれも図示せず)を備えている。
【0014】
この腕時計ケース1の12時側と6時側とには、
図1および
図3に示すように、バンド5を取り付けるためのバンド取付部6がそれぞれ設けられている。これらバンド取付部6それぞれは、腕時計ケース1の外周面から外部に向けて突出する一対の取付突起部6aを備えている。バンド5は、
図2〜
図4に示すように、バンド本体7と、このバンド本体7の一端部7aに埋め込まれた補強部材8と、を備えている。
【0015】
このバンド5は、
図1〜
図4に示すように、バンド本体7の一端部7aが補強部材8と共に腕時計ケース1のバンド取付部6に後述する連結部材であるばね棒11によって取り付けられるように構成されている。この場合、バンド本体7は、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの弾力性を有する軟質材料で形成されている。補強部材8は、金属または硬質の合成樹脂などの硬質材料で形成され、バンド本体7の一端部7aにインサート成型によって埋め込まれるように構成されている。
【0016】
すなわち、この補強部材8は、
図2〜
図5に示すように、バンド本体7の一端部7aにその端面から一部を露出させた状態で埋め込まれる本体部10と、この本体部10の下部にバンド本体7の長手方向と直交する方向に沿って設けられてばね棒11が取り付けられる連結取付部12と、この連結取付部12に設けられてインサート成型時にバンド本体7の一部が本体部10に対して食い込む食込み部である切欠き部13と、を備えている。
【0017】
この場合、本体部10は、
図2〜
図5に示すように、バンド本体7の長手方向の長さが、腕時計ケース1のバンド取付部6における一対の取付突起部6aの突出長さとほぼ同じ長さで、かつバンド本体7の長手方向と直交する方向の長さが、一対の取付突起部6a間の長さよりも短い長さで形成されている。
【0018】
これにより、本体部10は、
図3に示すように、バンド取付部6における一対の取付突起部6a間に配置されるように構成されている。すなわち、この補強部材8は、バンド本体7の長手方向と直交する方向における本体部10の長さが、バンド本体7の一端部7aにおけるバンド本体7の長手方向と直交する方向の長さの範囲内において、できるだけ長く形成されている。
【0019】
このため、このバンド5は、
図2〜
図4に示すように、バンド本体7の一端部7aが補強部材8と共に腕時計ケース1のバンド取付部6における一対の取付突起部6a間に配置された際に、バンド本体7の長手方向と直交する方向における補強部材8の両側面とバンド取付部6の一対の取付突起部6aの対向面との間に、バンド本体7の一端部7aの両側部が配置されるように構成されている。
【0020】
すなわち、バンド本体7の一端部7aの両側部は、
図3に示すように、バンド本体7の厚み方向(
図3では左右方向)の上側(
図3では右側)に位置する肉厚の厚い上側部7bと、バンド本体7の厚み方向の下側(
図3では左側)に位置する肉厚の薄い下側部7cとで形成されている。
【0021】
この場合、肉厚の厚い上側部7bは、
図3に示すように、その厚みが補強部材8の両側面とバンド取付部6の一対の取付突起部6aとの間の長さと同じ長さで形成されている。肉厚の薄い下側部7cは、その厚みが補強部材8の両側面とバンド取付部6の一対の取付突起部6aとの間の長さのほぼ半分の長さで短く形成されている。
【0022】
これにより、バンド本体7は、
図2〜
図4に示すように、その一端部7aの両側部が補強部材8の両側面と一対の取付突起部6aの対向面との間に配置された際に、一端部7aの両側部の上側部7bが補強部材8の両側面と一対の取付突起部6aの対向面とに弾接して密接し、下側部7cが一対の取付突起部6aの対向面との間に隙間Sをもって配置されるように構成されている。
【0023】
また、補強部材8の本体部10におけるバンド本体7の一端部7aの端面から露出する露出面には、
図2〜
図5に示すように、凹部10aが補強部材8の内部に食い込んで設けられている。この凹部10aは、補強部材8の射出成型時に肉厚部に生じるヒケを防ぐほか、補強部材8をバンド本体7の一端部7a内にインサート成型する際に、その成型用の金型(図示せず)内に補強部材8を位置規制するように構成されている。
【0024】
すなわち、この凹部10aは、
図2〜
図5に示すように、バンド本体7の長手方向と直交する方向に細長い矩形状に形成されている。これにより、補強部材8は、射出成型用金型(図示せず)で成型される際に、補強部材8の内部に食い込んだ凹部10aによって補強部材8に肉厚部が生じないように形成されることにより、補強部材8の射出成型時にヒケが発生しないように構成されている。
【0025】
また、この凹部10aは、
図2〜
図5に示すように、補強部材8をバンド本体7の一端部7a内にインサート成型する際に、その成型用の金型の一部が挿入することにより、補強部材8を金型内に位置規制して、バンド本体7の一端部7aに対する補強部材8の位置を規制するように構成されている。
【0026】
また、補強部材8の連結取付部12は、
図2〜
図5に示すように、断面形状がほぼ半円弧状で、本体部10の下部にバンド本体7の長手方向と直交する方向に沿って設けられている。この連結取付部12には、ばね棒11がバンド本体7の長手方向と直交する方向に沿って挿入する連結挿入孔12aが設けられている。
【0027】
これに伴って、バンド本体7の一端部7aにおける両側部の上側部7bの下面側に位置する下側部7cには、
図2〜
図5に示すように、ばね棒11が挿入するバンド挿入孔7dが、連結取付部12の連結挿入孔12aと同一軸上に対応して設けられている。このばね棒11は、バンド5を腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付けるための連結部材である。
【0028】
すなわち、このばね棒11は、
図2〜
図4に示すように、連結取付部12の連結挿入孔12aおよびバンド本体7の両側部における下側部7cのバンド挿入孔7dに挿入するパイプ11aと、このパイプ11aの両側に出没可能に挿入する一対のピン部11bと、パイプ11a内に配置されて一対のピン部11bを押し出す方向に付勢するばね部材11cと、を備えている。
【0029】
これにより、ばね棒11は、
図2〜
図4に示すように、パイプ11aがバンド本体7の一端部7aにおける両側部の下側部7cに設けられたバンド挿入孔7dと補強部材8の連結取付部12の連結挿入孔12aとに挿入された状態で、一対のピン部11bがバンド本体7の両側部における上側部7bの下側から側方に突出し、この突出した一対のピン部11bが腕時計ケース1の一対の取付突起部6aの対向面にそれぞれ設けられた各取付穴6bに挿入されることにより、バンド5を腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付けるように構成されている。
【0030】
一方、補強部材8の食込み部である切欠き部13は、
図3および
図5に示すように、補強部材8の連結取付部12におけるバンド本体7の長手方向と直交する方向の中間部に設けられている。すなわち、この切欠き部13は、補強部材8の本体部10におけるバンド本体7の長手方向と直交する方向の長さの1/3程度の長さで形成されている。
【0031】
このため、切欠き部13は、
図2、
図3および
図5に示すように、補強部材8の連結取付部12を2つに分断して本体部10の下面に食い込むように形成されている。この切欠き部13は、補強部材8をバンド本体7内にインサート成型する際に、バンド本体7の一部7eが食い込むことにより、補強部材8をバンド本体7に強固に固定するように構成されている。
【0032】
この場合、補強部材8の切欠き部13に食い込んだバンド本体7の一部7eには、
図2および
図3に示すように、ばね棒11のパイプ11aが挿入する食込み挿入孔7fが、連結取付部12の連結挿入孔12aと同一軸上に対応して設けられている。この食込み挿入孔7fは、バンド本体7を成型する際に、同時に形成されるように構成されている。
【0033】
また、補強部材8には、
図2〜
図5に示すように、腕時計ケース1のバンド取付部6にバンド本体7が取り付けられた際に、ばね棒11を中心とするバンド本体7の回転を規制する回転規制部14が設けられている。この回転規制部14は、補強部材8の本体部10におけるバンド本体7の一端部7aの端面から露出する露出面に設けられている。すなわち、この回転規制部14は、腕時計ケース1の外面に当接する第1当接部14aと、腕時計ケース1の下面に当接する第2当接部14bと、を備えている。
【0034】
これにより、バンド5は、
図1〜
図4に示すように、バンド本体7の一端部7aが腕時計ケース1のバンド取付部6における一対の取付突起部6a間に配置されてばね棒11によって取り付けられた際に、回転規制部14の第1当接部14aが腕時計ケース1の外周面に当接し、回転規制部14の第2当接部14bが腕時計ケース1の下面に当接することにより、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないように構成されている。
【0035】
次に、このような腕時計のバンド5を製作する場合について説明する。
この場合には、予め、補強部材8を製作する。このとき、補強部材8が例えば金属である場合には、切削加工によって形成する。また、補強部材8が硬質の合成樹脂である場合には、補強部材8の射出成型用の金型で成型する。
【0036】
すなわち、補強部材8が硬質の合成樹脂である場合には、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する補強部材8の露出面に凹部10aが補強部材8の内部に食い込んで形成されることにより、補強部材8を射出成型用の金型(図示せず)で成型する際に、補強部材8の内部に食い込んだ凹部10aによって補強部材8にヒケが生じないように形成することができる。
【0037】
これにより、補強部材8は、
図5に示すように、本体部10、連結取付部12、および切欠き部13が一体に形成される。このときには、本体部10に凹部10aと回転規制部14の第1当接部14aと回転規制部14の第2当接部14bとがそれぞれ形成され、連結取付部12に連結挿入孔12aが形成される。
【0038】
この補強部材8をバンド本体7の一端部7aにインサート成型する際には、補強部材8の連結取付部12の連結挿入孔12aにばね棒11のパイプ11aと同じ外径のスライドピン(図示せず)を挿入させて連結取付部12の両側に突出させ、この状態でバンド本体7の成型用の金型(図示せず)内に補強部材8を配置する。このときには、補強部材8の本体部10に設けられた凹部10aに金型の一部を挿入させる。これにより、補強部材8が金型内に精度良く正確に位置規制される。
【0039】
この状態で、バンド本体7の成型用の金型内に軟質の合成樹脂を充填させて硬化させると、補強部材8が埋め込まれたバンド本体7が形成される。このときには、金型内に充填された軟質の合成樹脂が、補強部材8の本体部10の一面を除いて、補強部材8のほぼ全体を覆った状態で、補強部材8の食込み部である切欠き部13に充填されると共に、補強部材8の両側部にも充填される。
【0040】
そして、バンド本体7の成型用の金型を離型してバンド本体7を取り出すと、バンド本体7の一端部7aに補強部材8が埋め込まれたバンド5が得られる。このバンド5は、バンド本体7の一端部7aの端面から補強部材8の本体部10の一面、つまり本体部10に設けられた回転規制部14の第1当接部14aと第2当接部14bとが露出した状態で、補強部材8がバンド本体7の一端部7a内に強固に固定されている。
【0041】
すなわち、このバンド5は、バンド本体7の一部7eが補強部材8の食込み部である切欠き部13に食い込んで形成されているので、補強部材8がバンド本体7の一端部7a内に強固に固定される。また、このバンド5は、バンド本体7の長手方向と直交する方向の補強部材8の長さが、バンド本体7の一端部7aにおける両側部間の長さの範囲内において、できるだけ長く形成されているので、これによっても補強部材8がバンド本体7の一端部7a内に強固に固定される。
【0042】
また、このバンド5は、そのインサート成型時に補強部材8の凹部10aに金型の一部が挿入して補強部材8がインサート成型用の金型内に正確に位置規制されることにより、バンド本体7の一端部7aに対する補強部材8の位置が精度良く規制される。これにより、バンド本体7の一端部7aにおける両側部が均一な肉厚で形成されると共に、腕時計ケース1の外面に対応するバンド本体7の一端部7aにおける両側部の各端面がバンド本体7の一端部7aから露出する補強部材8の露出面と同一平面に形成される。
【0043】
この場合、バンド本体7の成型用の金型を離型した際には、バンド本体7の一端部7aにおける両側部に、肉厚の厚い上側部7bと肉厚の薄い下側部7cとが形成される。このため、このバンド5は、補強部材8の本体部10の一面がバンド本体7の一端部7aの端面から外部に露出し、かつ補強部材8の両側部に形成されたバンド本体7の両側部における下側部7cの肉厚が薄く形成されていても、補強部材8がバンド本体7の一端部7a内に強固に固定される。
【0044】
また、バンド本体7の成型用の金型を離型した際には、スライドピンを抜き取る。すると、バンド本体7の一端部7aにおける両側部の下側部7cにバンド挿入孔7dが、補強部材8の連結取付部12の連結挿入孔12aと同一軸上で対応して設けられると共に、連結取付部12間に位置する切欠き部13に食い込んだバンド本体7の一部7eに食込み挿入孔7fが、補強部材8の連結取付部12の連結挿入孔12aと同一軸上で対応して設けられる。
【0045】
次に、このようなバンド5を腕時計ケース1に取り付ける場合について説明する。
この場合には、まず、ばね棒11をバンド本体7の一端部7aに取り付ける。このときには、ばね棒11のパイプ11aを、バンド本体7の一端部7aにおける両側部の下側部7cに設けられたバンド挿入孔7dと、補強部材8の連結取付部12に設けられた連結挿入孔12aと、連結取付部12間に位置する切欠き部13に食い込んだバンド本体7の一部7eに設けられた食込み挿入孔7fとに、同一軸上で挿入する。
【0046】
すると、ばね棒11の一対のピン部11bがパイプ11a内のばね部材11cのばね力によってバンド本体7の一端部7aにおける両側部の上側部7bの下側から外部に押し出されて突出する。この状態で、バンド本体7を腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付ける場合には、一対のピン部11bをばね部材11cのばね力に抗してパイプ11aの内部に向けて押し込んで、一対のピン部11bの各先端部をバンド本体7の一端部7aにおける両側部の上側部7bの下側に配置する。
【0047】
この状態で、バンド本体7の一端部7aをバンド取付部6の一対の取付突起部6a間に配置して、一対のピン部11bの各先端部を一対の取付突起部6aの対向面にそれぞれ設けられた各取付穴6bに対応させる。このときには、バンド本体7の一端部7aの両側部に設けられた肉厚の薄い下側部7cと一対の取付突起部6aとの間に設けられた隙間Sを通して、一対のピン部11bの各先端部を視認しながら、一対の取付突起部6aの対向面の各取付穴6bに対応させる。
【0048】
すると、一対のピン部11bがばね部材11cのばね力によって押し出され、この押し出された一対のピン部11bの各先端部が一対の取付突起部6aの各取付穴6bにそれぞれ挿入する。これにより、バンド本体7の一端部7aが補強部材8と共にばね棒11によって一対の取付突起部6aに取り付けられる。この結果、バンド5が腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付けられる。
【0049】
この状態では、バンド本体7の一端部7aにおける両側部の上側部7bが補強部材8の両側部とバンド取付部6の一対の取付突起部6aとに弾接して挟まれる。これにより、バンド本体7の一端部7aにおける両側部の上側部7bとバンド取付部6の一対の取付突起部6aとの間に隙間が生じないように、バンド5が腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付けられる。
【0050】
また、このときには、バンド本体7の一端部7aの端面から露出した補強部材8の露出面である回転規制部14がバンド本体7の一端部7aにおける両側部の端面と同一面上に位置して形成されていることにより、補強部材8の回転規制部14が腕時計ケース1の外面にバンド本体7の一端部7aにおける両側部の端面と共に対面して当接する。これにより、バンド5はばね棒11を中心とする回転が規制される。
【0051】
すなわち、回転規制部14は、第1当接部14aがバンド取付部6の一対の取付突起部6a間に位置する腕時計ケース1の外周面に当接し、第2当接部14bが腕時計ケース1の下部外周に位置する下面に当接する。このため、バンド5は、ばね棒11を中心とする回転が阻止されると共に、腕時計ケース1の外面とバンド本体7の一端部7aの端面との間に隙間が生じないように、バンド5が腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付けられる。
【0052】
この状態では、補強部材8がバンド本体7の一端部7aに埋め込まれているため、バンド本体7が補強部材8によって腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付けられることにより、バンド5が腕時計ケース1に強固に取り付けられる。この場合、補強部材8は、バンド本体7の長手方向と直交する方向の長さが、バンド本体7の一端部7aにおける両側部間の長さの範囲内において、できるだけ長く形成されているので、これによってもバンド5を腕時計ケース1に強固に取り付ける。
【0053】
このため、腕時計ケース1に対してバンド本体7を引っ張っても、またばね棒11を中心に回転させても、バンド本体7の一端部7aの変形が確実に抑えられるので、バンド本体7が軟質材料で形成していても、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じることがなく、またバンド本体7の一端部7aにおける両側部の上側部7bと腕時計ケース1のバンド取付部6における一対の取付突起部6aとの間にも隙間が生じることがない。これにより、腕時計ケース1とバンド5との一体感が得られる。
【0054】
また、バンド5を腕時計ケース1のバンド取付部6から取り外す場合には、バンド本体7の一端部7aの両側部に設けられた肉厚の薄い下側部7cと一対の取付突起部6aとの間に隙間Sが設けられているので、この隙間Sを通してばね棒11の一対のピン部11bの各先端部を視認しながら、下側部7cと一対の取付突起部6aとの隙間Sに工具を挿入して、一対のピン部11bをばね部材11cのばね力に抗して一対の取付突起部6aの各取付穴6bから離脱させることにより、バンド5を腕時計ケース1のバンド取付部6から容易に取り外すことができる。
【0055】
このように、この腕時計のバンド5によれば、軟質材料のバンド本体7の一端部7aにインサート成型によって埋め込まれた硬質材料の補強部材8が、バンド本体7の一端部7aにその端面から一部を露出させた状態で埋め込まれる本体部10と、この本体部10にバンド本体7の長手方向と直交する方向に沿って設けられてばね棒11が取り付けられる連結取付部12と、インサート成型時にバンド本体7の一部7eが本体部10に対して食い込む切欠き部13と、を備えているので、バンド本体7に対する補強部材8の取付強度を高めて、補強部材8に対するバンド本体7の変形を確実に抑えることができる。
【0056】
すなわち、この腕時計のバンド5では、バンド本体7の一部7eを補強部材8の食込み部である切欠き部13に食い込ませることができるので、バンド本体7に対する補強部材8の取付強度を高めることができると共に、補強部材8に対するバンド本体7の変形を確実に抑えることができる。これにより、バンド本体7が軟質材料で形成されていても、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないようにすることができるので、腕時計ケース1とバンド5との一体感を得ることができる。
【0057】
この場合、補強部材8の食込み部である切欠き部13は、補強部材8の連結取付部12におけるバンド本体7の長手方向と直交する方向の中間部に位置して本体部10の下面に食い込むように設けられていることにより、補強部材8をバンド本体7内にインサート成型する際に、バンド本体7の一部7eを切欠き部13に確実に食い込ませることができ、これにより補強部材8をバンド本体7に確実にかつ強固に固定することができる。
【0058】
すなわち、この切欠き部13は、補強部材8の本体部10におけるバンド本体7の長手方向と直交する方向の長さの1/3程度の長さで大きく形成されていることにより、切欠き部13に食い込むバンド本体7の一部7eを十分に大きく形成することができ、このため補強部材8をバンド本体7に、より一層、確実にかつ強固に固定することができる。
【0059】
これにより、この腕時計のバンド5では、腕時計ケース1に対してバンド本体7を引っ張っても、バンド本体7の一端部7aの変形を確実に抑えることができるので、バンド本体7が軟質材料で形成されていても、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないようにすることができ、このため腕時計ケース1とバンド5との一体感を得ることができる。
【0060】
また、この腕時計のバンド5では、補強部材8の切欠き部13に食い込むバンド本体7の一部7eと、これに対してバンド本体7の長手方向と直交する方向に対応する補強部材8の両側に配置されたバンド本体7の両側部と、補強部材8の連結取付部12とが、ばね棒11によって腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付けられることにより、バンド本体7の一端部7aをバンド取付部6に確実にかつ強固に取り付けることができる。
【0061】
この場合、この腕時計のバンド5では、バンド本体7の一端部7aにおける両側部が、肉厚の厚い上側部7bと肉厚の薄い下側部7cとを備え、これらがバンド本体7の長手方向と直交する方向における補強部材8の両側面と腕時計ケース1のバンド取付部6の対向面との間に配置される構成であることにより、肉厚の厚い上側部7bを補強部材8の両側面と一対の取付突起部6aの対向面とに弾接させて密接させることができ、肉厚の薄い下側部7cを一対の取付突起部6aの対向面との間に隙間Sをもって配置させることができる。
【0062】
このため、このバンド5では、バンド本体7の一端部7aを腕時計ケース1のバンド取付部6にばね棒11によって取り付けた状態で、バンド本体7を腕時計ケース1に対して引っ張っても、また回転させても、バンド本体7の一端部7aにおける両側部の上側部7bの変形を抑えて、バンド本体7の一端部7aにおける両側部の上側部7bと腕時計ケース1のバンド取付部6における一対の取付突起部6aとの間に隙間が生じないようにすることができ、これによっても腕時計ケース1とバンド5との一体感を得ることができる。
【0063】
この場合、このバンド5では、腕時計ケース1のバンド取付部6にバンド本体7をばね棒11によって取り付ける際に、バンド本体7の一端部7aの両側部に設けられた肉厚の薄い下側部7cと一対の取付突起部6aとの間に隙間Sを設けることができ、この隙間Sを通して一対のピン部11bの各先端部を視認しながら、一対の取付突起部6aの対向面の各取付穴6bに対応させて挿入させることができるので、腕時計ケース1のバンド取付部6にバンド本体7を容易に取り付けることができる。
【0064】
また、このバンド5では、腕時計ケース1のバンド取付部6からバンド本体7を取り外す際に、バンド本体7の一端部7aの両側部に設けられた肉厚の薄い下側部7cと一対の取付突起部6aとの間に位置する隙間Sに工具を挿入して、一対のピン部11bをばね部材11cのばね力に抗して一対の取付突起部6aの各取付穴6bから離脱させることができるので、バンド5を腕時計ケース1のバンド取付部6から容易に取り外すことができる。
【0065】
また、この腕時計のバンド5では、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する補強部材8の露出面に凹部10aが補強部材8の内部に食い込んで設けられていることにより、補強部材8を射出成型する際に、肉厚部に生じるヒケを防ぐことができると共に、補強部材8をバンド本体7の一端部7a内にインサート成型する際に、その成型用の金型(図示せず)内に補強部材8を正確に位置規制することができる。
【0066】
すなわち、この腕時計のバンド5では、補強部材8を射出成型用の金型(図示せず)で成型する際に、補強部材8の内部に食い込んだ凹部10aによって補強部材8に肉厚部が生じないようにすることができ、これにより補強部材8の射出成型時にヒケが発生しないように、補強部材8を精度よく良好に形成することができる。
【0067】
また、この腕時計のバンド5では、補強部材8をバンド本体7の一端部7aにインサート成型する際に、インサート成型用の金型の一部を補強部材8の凹部10aに挿入させることができるので、補強部材8をインサート成型用の金型内に正確にかつ確実に位置規制することができる。
【0068】
このため、この腕時計のバンド5では、バンド本体7の一端部7aに対して補強部材8を正確に位置規制することができるので、バンド本体7の一端部7aにおける両側部を均一な肉厚で形成することができると共に、腕時計ケース1の外面に対面するバンド本体7の一端部7aにおける両側部の各端面をバンド本体7の一端部7aから露出する補強部材8の露出面と同一平面に形成することができる。
【0069】
これにより、この腕時計のバンド5では、バンド本体7の一端部7aを腕時計ケース1のバンド取付部6にばね棒11によって取り付けた際に、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないようにすることができ、これによっても腕時計ケース1とバンド5との一体感を得ることができる。
【0070】
さらに、この腕時計のバンド5では、補強部材8にばね棒11を中心とするバンド本体7の回転を規制する回転規制部14が設けられていることにより、ばね棒11を中心にバンド本体7が回転するのを確実に規制することができ、これによりバンド本体7が軟質材料で形成されていても、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないようにすることができ、これによっても腕時計ケース1とバンド5との一体感を得ることができる。
【0071】
すなわち、この回転規制部14は、腕時計ケース1の外周面に当接する第1当接部14aと、腕時計ケース1の下面に当接する第2当接部14bと、を備えているので、第1当接部14aをバンド取付部6の一対の取付突起部6a間に位置する腕時計ケース1の外周面に当接させ、第2当接部14bを腕時計ケース1の下部外周の下面に当接させることができ、これによりばね棒11を中心とするバンド5の回転を確実に阻止できると共に、腕時計ケース1の外面とバンド本体7の一端部7aの端面との間に隙間が生じないようにすることができる。
【0072】
なお、上述した実施形態では、補強部材8の連結取付部12の中間部に食込み部である切欠き部13を設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば、
図6に示す第1変形例のように、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する一面と反対側に位置する補強部材8の本体部10の他面に、食込み部である溝部15をバンド本体7の長手方向と直交する方向に沿って設けても良い。
【0073】
このような第1変形例では、補強部材8の本体部10に食込み部である溝部15が設けられていることにより、補強部材8をバンド本体7の一端部7aにインサート成型によって埋め込む際に、バンド本体7の一部7gを溝部15に食い込ませることができるので、補強部材8の切欠き部13と同様、補強部材8をバンド本体7の一端部7a内に強固に固定することができる。この場合、補強部材8に食込み部として溝部15のみを設けた構成でも良く、また切欠き部13と溝部15との両方を設けた構成でも良い。
【0074】
また、上述した実施形態では、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する補強部材8の露出面にバンド本体7の回転を規制する回転規制部14を設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば、
図7に示す第2変形例のように、バンド本体7の一端部7aに腕時計ケース1の外面に弾接する弾性回転規制部16を設けた構成であっても良い。
【0075】
すなわち、この弾性回転規制部16は、
図7に示すように、バンド本体7の一端部7aにおける端部に枠状に設けられて、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する補強部材8の露出面における周縁部にこれを覆って配置されるように形成されている。これにより、弾性回転規制部16は、補強部材8の露出面から腕時計ケース1の外面に向けて突出して設けられている。
【0076】
この場合、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する補強部材8の露出面には、
図7に示すように、補強部材8の食込み部としての枠状溝部17が設けられている。このため、弾性回転規制部16は、補強部材8の枠状溝部17に食い込み、この状態で補強部材8の露出面の周縁部に設けられていることにより、補強部材8に対して強固に固定されるように構成されている。
【0077】
また、この弾性回転規制部16は、
図7に示すように、腕時計ケース1の外周面に弾接する第1弾接部16aと、腕時計ケース1の下面に弾接する第2弾接部16bと、で構成されている。これにより、弾性回転規制部16は、バンド本体7の一端部7aがばね棒11によって腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付けられた際に、第1弾性部16aと第2弾性部16bとが腕時計ケース1の外面に弾接するように構成されている。
【0078】
このため、この弾性回転規制部16は、
図7に示すように、ばね棒11を中心にバンド本体7が回転する際に、その回転を弾力的に規制することができると共に、補強部材8の露出面が腕時計ケース1の外面に当接することがなく、第1弾性部16aと第2弾性部16bとを腕時計ケース1の外面に弾接させることができる。これにより、バンド本体7の一端部7aの端面と腕時計ケース1の外面との間に隙間が生じないようすることができるので、より一層、腕時計ケース1とバンド5との一体感を得ることができる。
【0079】
この場合、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する補強部材8の露出面の周縁部には、補強部材8の食込み部としての枠状溝部17が設けられていることにより、弾性回転規制部16を補強部材8の枠状溝部17に食い込ませることができるので、弾性回転規制部16を補強部材8の露出面の周縁部に確実にかつ強固に固定することができる。
【0080】
このため、このバンド本体7では、弾性回転規制部16が補強部材8の露出面の周縁部からめくれることがないので、これによってもバンド本体7に対する補強部材8の取付強度を高めることができると共に、補強部材8に対するバンド本体7の変形を確実に抑えることができる。
【0081】
この場合、バンド本体7の一端部7aの端面から露出する補強部材8の露出面の周縁部に食込み部として設けられた枠状溝部17は、必ずしも弾性回転規制部16が食い込んで設けられる必要はなく、バンド本体7の一端部7aにおける両側部の端部が食込んで設けられた構成であっても良い。この場合には、枠状溝部17に食い込んだバンド本体7の一端部7aにおける両側部の端面と補強部材8の慮出面とが同一平面で形成されるように構成しても良い。
【0082】
また、第2変形例では、補強部材8に食込み部として枠状溝部17のみを設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、補強部材8に食込み部として切欠き部13と枠状溝部17との両方を設けた構成でも良く、また切欠き部13と枠状溝部17とのほかに、第1変形例の溝部15を更に設けた構成であっても良い。
【0083】
また、上述した実施形態およびその第1、第2の変形例では、バンド本体7の一端部7aを腕時計ケース1のバンド取付部6に取り付ける連結部材として、ばね棒11を用いた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば、棒状のピン部材を用いても良く、またねじ部材を用いても良い。
【0084】
また、上述した実施形態およびその変形例では、バンド本体7の一端部7aにおける両側部に、肉厚の厚い上側部7bと肉厚の薄い下側部7cとを設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば、連結部材としてねじ部材を用いた場合には、バンド本体7の一端部7aにおける両側部を厚みの薄い肉厚で形成しても良い。
【0085】
このように構成すれば、バンド本体7の長手方向と直交する方向における補強部材8の長さを、バンド本体7の一端部7aにおけるバンド本体7の長手方向と直交する方向の長さの範囲内において最大限に長く形成することができるので、補強部材8を最大限の大きさでバンド本体7の一端部7a内に埋め込むことができ、この補強部材8によってバンド本体7の一端部7aの強度を大幅に高めることができる。
【0086】
さらに、上述した実施形態およびその変形例では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えば腕装着装置、バッグ、鞄、衣服などのバンドにも広く適用することができる。
【0087】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0088】
(付記)
請求項1に記載の発明は、軟質材料のバンド本体と、前記バンド本体の一端部に埋め込まれた硬質材料の補強部材と、を備え、前記補強部材は、前記バンド本体の一端部にその端面から一部を露出させた状態で埋め込まれる本体部と、前記本体部に前記バンド本体の長手方向と直交する方向に沿って設けられて連結部材が取り付けられる連結取付部と、前記バンド本体の一部が前記本体部に対して食い込む食込み部と、を備えていることを特徴とするバンドである。
【0089】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバンドにおいて、前記補強部材の前記食込み部は、前記補強部材の前記連結取付部における前記バンド本体の長手方向と直交する方向の中間部に設けられて前記本体部に対して食い込む切欠き部であることを特徴とするバンドである。
【0090】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のバンドにおいて、前記バンド本体の前記一端部は、前記補強部材の前記切欠き部に食い込む前記バンド本体の一部と、これに対して前記バンド本体の長手方向と直交する方向に対応する前記補強部材の両側に配置された前記バンド本体の両側部と、前記補強部材の前記連結取付部とが、前記連結部材によって被装着部材に取り付けられていることを特徴とするバンドである。
【0091】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のバンドにおいて、前記バンド本体の前記一端部における両側部には、前記バンド本体の厚み方向の上側に位置する肉厚の厚い上側部と、前記バンド本体の厚み方向の下側に位置する肉厚の薄い下側部と、が形成されていることを特徴とするバンドである。
【0092】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバンドにおいて、前記バンド本体の前記一端部の前記端面から露出する前記補強部材の前記一部には、凹部が前記補強部材の内部に食い込んで形成されていることを特徴とするバンドである。
【0093】
請求項6に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のバンドにおいて、前記補強部材には、前記バンド本体の前記一端部が前記連結部材によって取り付けられる被装着部材の外面に当接することにより、前記連結部材を中心とする前記バンド本体の回転を規制する回転規制部が設けられていることを特徴とするバンドである。
【0094】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のバンドにおいて、前記補強部材の前記食込み部は、前記補強部材の前記本体部に前記バンド本体の長手方向と直交する方向に沿って設けられた溝部であることを特徴とするバンドである。
【0095】
請求項8に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のバンドにおいて、前記バンド本体の前記一端部には、その前記端面から露出する前記補強部材の前記一部の周縁部にこれを覆って配置され、前記連結部材によって取り付けられる被装着部材の外面に弾接することにより、前記連結部材を中心とする前記バンド本体の回転を弾力的に規制する回転規制部が設けられていることを特徴とするバンドである。
【0096】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のバンドにおいて、前記補強部材の前記食込み部は、前記バンド本体の前記一端部の前記端面から露出する前記補強部材の前記一部の周縁部に設けられた枠状溝部であることを特徴とするバンド
【0097】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載されたバンドを備えていることを特徴とする時計である。