特許第6308431号(P6308431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6308431エネルギー測定システム、シートマーカ及び濃度測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308431
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】エネルギー測定システム、シートマーカ及び濃度測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/24 20060101AFI20180402BHJP
   G01J 3/52 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   G01L1/24 Z
   G01J3/52
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-99511(P2014-99511)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-215291(P2015-215291A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】512096735
【氏名又は名称】株式会社MSテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 恵三
(72)【発明者】
【氏名】執行 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】謝 易 辰
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−195243(JP,A)
【文献】 特開昭59−192933(JP,A)
【文献】 特開2008−175752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0179101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00, 1/24
G01L 5/00
G01L 25/00
G01J 3/52
G01N 21/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに、測定領域を特定する形状を有すると共に複数の基準点を一定間隔で設けたシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記発色シートの測定領域を撮影する撮影手段と、
この撮影した画像から前記複数の基準点の間の距離をそれぞれ取得してこれらを比較し、前記撮影手段の前記発色シートに対する撮影時の傾き又は距離を取得すると共に、この傾き又は距離から前記測定領域の濃度を補正する傾き・距離補正手段と、
当該補正した測定領域における色の濃度を、所定の関数又はテーブルに基づいて発色シートに印加したエネルギー値に変換するエネルギー値変換手段と、
を備えたことを特徴とするエネルギー測定システム。
【請求項2】
印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに、測定領域を特定する形状を有すると共に一定濃度の特定色を有する一定濃度領域を有するシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記発色シートの測定領域を撮影する撮影手段と、
当該撮影した画像に含まれる前記一定濃度領域の濃度の差から測定領域における光量の変動を取得すると共に、この光量変動に基づいて前記測定領域内の色の濃度を補正する光量補正手段と、
当該補正した測定領域における色の濃度を、所定の関数又はテーブルに基づいて発色シートに印加したエネルギー値に変換するエネルギー値変換手段と、
を備えたことを特徴とするエネルギー測定システム。
【請求項3】
印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに、測定領域を特定する形状を有すると共に基準色とこの基準色をデータで表示した基準色データとを有するシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記発色シートの測定領域を撮影する撮影手段と、
当該撮影した画像に含まれる前記基準色と、基準色データから認識した基準色との差に基づいて色補正値を取得すると共に、この色補正値に基づいて前記測定領域内の色を補正する色補正手段と、
当該補正した測定領域における色の濃度を、所定の関数又はテーブルに基づいて発色シートに印加したエネルギー値に変換するエネルギー値変換手段と、
を備えたことを特徴とするエネルギー測定システム。
【請求項4】
印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに重ねた状態で撮影の際の発色シートの測定領域を特定する形状を有すると共に複数の基準点を一定間隔で設けたシート状に形成されたことを特徴とするシートマーカ。
【請求項5】
印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに重ねた状態で撮影の際の発色シートの測定領域を特定する形状を有すると共に一定濃度の特定色を有する一定濃度領域を有するシート状に形成されたことを特徴とするシートマーカ。
【請求項6】
印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに重ねた状態で撮影の際の発色シートの測定領域を特定する形状を有すると共に基準色とこの基準色をデータで表示した基準色データとを有するシート状に形成されたことを特徴とするシートマーカ。
【請求項7】
着色した測定対象物に、測定領域を特定する形状を有すると共に複数の基準点を一定間隔で設けたシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記測定対象物の測定領域を撮影する撮影手段と、
この撮影した画像から前記複数の基準点の間の距離をそれぞれ取得してこれらを比較し、前記撮影手段の前記測定対象物に対する撮影時の傾き又は距離を取得すると共に、この傾き又は距離から前記測定領域の濃度を補正する傾き・距離補正手段と、
を備えたことを特徴とする濃度測定システム。
【請求項8】
着色した測定対象物に、測定領域を特定する形状を有すると共に一定濃度の特定色を有する一定濃度領域を有するシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記測定対象物の測定領域を撮影する撮影手段と、
当該撮影した画像に含まれる前記一定濃度領域の濃度の差から測定領域における光量の変動を取得すると共に、この光量変動に基づいて前記測定領域内の色の濃度を補正する光量補正手段と、
を備えたことを特徴とする濃度測定システム。
【請求項9】
着色した測定対象物に、測定領域を特定する形状を有すると共に基準色とこの基準色をデータで表示した基準色データとを有し当該基準色データが二次元コード、三次元コード又は数字により撮影表面に印刷されたシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記測定対象物の測定領域を撮影する撮影手段と、
当該撮影した画像に含まれる前記基準色と、基準色データから認識した基準色との差に基づいて色補正値を取得すると共に、この色補正値に基づいて前記測定領域内の色を補正する色補正手段と、
を備えたことを特徴とする濃度測定システム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力、熱、紫外線等により発色する感圧シートを用いて当該圧力値等を測定する、又は濃度自体を測定するエネルギー測定システム、シートマーカ及び濃度測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から圧力、熱、紫外線等を測定するための各機能性フィルムが知られている。各機能性フィルムでは、圧力、熱、紫外線がそのそれぞれの機能性フィルムに加わることで特定の発色を生じ、その圧力等の強さにより発色の濃度が異なるものとなる。この濃度を測定し、所定の関数等により変換することで、機能性フィルムに加えられた圧力値等を取得できる。このような機能性フィルムとしては、圧力用としてPrescale(富士フィルム株式会社 登録商標)、熱用としてThermoscale、紫外線用としてUVscale(富士フィルム株式会社 商品名)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】富士フィルム株式会社 商品紹介 オンライン [平成26年3月12日検索]インターネット(http://fujifilm.jp/business/material/prescale/prescalefilm/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記Prescaleを例に挙げると、現在、このPrescaleの色濃度を測定する測定機器が各種提供されている。このような測定機器として、例えばハンディタイプの濃度計及び圧力換算機が富士フィルム株式会社より販売されている(品番FPD-305、FPD-306)。この濃度計では、測定部として1mm径のウインドを設け、LED光をウインドから測定スポットへ照射し、その反射光をセンサで検出することで、Prescale上の濃度を測定する。測定された濃度は、A‐D変換され圧力値に変換される。しかしながら、この測定機器は測定領域が1mmと狭いため、広範囲に確認して、希望する点の圧力を測定するのが難しいという問題点があった。また、Prescale用に開発された測定機器であるため、Prescale以外の機能性フィルムに用いる場合、キャリブレーション用の色見本が必要になるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエネルギー測定システムは、印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに、測定領域を特定する形状を有すると共に複数の基準点を一定間隔で設けたシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記発色シートの測定領域を撮影する撮影手段と、この撮影した画像から前記複数の基準点の間の距離をそれぞれ取得してこれらを比較し、前記撮影手段の前記発色シートに対する撮影時の傾き又は距離を取得すると共に、この傾き又は距離から前記測定領域の濃度を補正する傾き・距離補正手段と、当該補正した測定領域における色の濃度を、所定の関数又はテーブルに基づいて発色シートに印加したエネルギー値に変換するエネルギー値変換手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明のエネルギー測定システムは、印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに、測定領域を特定する形状を有すると共に一定濃度の特定色を有する一定濃度領域を有するシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記発色シートの測定領域を撮影する撮影手段と、当該撮影した画像に含まれる前記一定濃度領域の濃度の差から測定領域における光量の変動を取得すると共に、この光量変動に基づいて前記測定領域内の色の濃度を補正する光量補正手段と、当該補正した測定領域における色の濃度を、所定の関数又はテーブルに基づいて発色シートに印加したエネルギー値に変換するエネルギー値変換手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のエネルギー測定システムは、印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに、測定領域を特定する形状を有すると共に基準色とこの基準色をデータで表示した基準色データとを有するシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記発色シートの測定領域を撮影する撮影手段と、当該撮影した画像に含まれる前記基準色と、基準色データから認識した基準色との差に基づいて色補正値を取得すると共に、この色補正値に基づいて前記測定領域内の色を補正する色補正手段と、当該補正した測定領域における色の濃度を、所定の関数又はテーブルに基づいて発色シートに印加したエネルギー値に変換するエネルギー値変換手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のシートマーカは、印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに重ねた状態で撮影の際の発色シートの測定領域を特定する形状を有すると共に複数の基準点を一定間隔で設けたシート状に形成されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のシートマーカは、印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに重ねた状態で撮影の際の発色シートの測定領域を特定する形状を有すると共に一定濃度の特定色を有する一定濃度領域を有するシート状に形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のシートマーカは、印加したエネルギー値と一定関係で発色が生じる発色シートに重ねた状態で撮影の際の発色シートの測定領域を特定する形状を有すると共に基準色とこの基準色をデータで表示した基準色データとを有するシート状に形成されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の濃度測定システムは、着色した測定対象物に、測定領域を特定する形状を有すると共に複数の基準点を一定間隔で設けたシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記測定対象物の測定領域を撮影する撮影手段と、この撮影した画像から前記複数の基準点の間の距離をそれぞれ取得してこれらを比較し、前記撮影手段の前記測定対象物に対する撮影時の傾き又は距離を取得すると共に、この傾き又は距離から前記測定領域の濃度を補正する傾き・距離補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の濃度測定システムは、着色した測定対象物に、測定領域を特定する形状を有すると共に複数の基準点を一定間隔で設けたシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記測定対象物の測定領域を撮影する撮影手段と、当該撮影した画像に含まれる前記一定濃度領域の濃度の差から測定領域における光量の変動を取得すると共に、この光量変動に基づいて前記測定領域内の色の濃度を補正する光量補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の濃度測定システムは、着色した測定対象物に、測定領域を特定する形状を有すると共に複数の基準点を一定間隔で設けたシート状のマーカを重ねて置き、その重ねた状態で前記測定対象物の測定領域を撮影する撮影手段と、当該撮影した画像に含まれる前記基準色と、基準色データから認識した基準色との差に基づいて色補正値を取得すると共に、この色補正値に基づいて前記測定領域内の色を補正する色補正手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態に係る濃度測定システムを示す構成図である。
図2図1に示した濃度測定システムに用いるリングマーカを示す平面図である。
図3】この濃度測定システムの動作を示すフローチャートである。
図4】この濃度測定システムにおける撮影方法を示す説明図である。
図5】傾き・距離補正の方法を示す説明図である。
図6】光量補正の方法を示す説明図である。
図7】圧力値と濃度値との相関関係の概念を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係る濃度測定システムを示す構成図である。図2は、図1に示した濃度測定システムに用いるリングマーカを示す平面図である。この濃度測定システム100は、発色シートである感圧フィルムFをリングマーカ50ごと撮影するカメラを備えた撮影部1と、撮影画像等を記憶する記憶部2と、液晶表示パネル等からなる表示部3aと、タッチパネルやキーボード等から構成する入力部3bと、無線又は有線ネットワークを通じて外部コンピュータとの間のデータ通信を行う通信部4と、感圧フィルムFの撮影画像の画像処理を行う画像処理部5と、撮影画像から取得した濃度値を圧力値に変換する圧力変換部6と、撮影時の撮影部1の傾きや距離に起因した変動を補正する傾き・距離補正部7と、感圧フィルムFやリングマーカ50のうねりを判定するうねり判定部8と、撮影画像の色を補正する色補正部9と、撮影画像の光量に起因した変動を補正する光量補正部10とを備えている。
【0016】
上記濃度測定システム100は、コンピュータを内蔵する市販の携帯端末に所定のプログラムをインストールすることで構成しても良い。また、カメラ等から構成される前記撮影部1、記憶部2、表示部3a、入力部3b、通信部4を携帯端末で構成し、画像処置部、圧力変換部6、各補正部をネットワークで接続した別のコンピュータ及びプログラムにより構成しても良い。また、この濃度測定システム100では、測定するエネルギーとして圧力を例示する。
【0017】
リングマーカ50は、紙又は樹脂からなるリング状の薄板であり、その表面には、90度間隔で4個設けられた黒色円形の基準点51と、複数の円が周方向に6個を組として180度間隔で二組設けられ、各円は、灰色で濃度が段階的に変化するステップウェッジを構成する濃度パターン52と、周方向にリング状に一定幅をもって形成され、一様の濃度の灰色の環状領域からなる光量変動検出リング53と、リングマーカ50のナンバー、基準点51、濃度パターン52を構成するステップウェッジの各パターン、光量変動検出リング53の濃度値等がデータとして印刷されているデータ領域54と、筆記具により自由に記述できるメモエリア55と、携帯端末の特定の機能を選択するように指示するソフトウェア識別マーク56とを備えている。
【0018】
また、リングマーカ50は、リング内が測定領域60となる。濃度パターン52の円は6個に限定されない。リングマーカ50の外径及び内径は、感圧フィルムFや被測定対象の大きさにより適切な寸法を決定する。前記被測定対象は、加圧により色が変化した部分をいう。リングマーカ50のナンバーは、異なる内外径のリングマーカ50毎に付与されて前記記憶部2に記憶されている。なお、L字、U字等の測定領域を特定できる形状のマーカであれば、前記リングマーカ50に限定されない。
【0019】
次に、この発明の濃度測定システム100の動作を説明する。図3は、この濃度測定システム100の動作を示すフローチャートである。
【0020】
まず、ユーザが所定のプログラムを起動する。このとき、携帯端末の入力部から感圧フィルムFの種類、タイプその他の各種条件を入力する。これにより、感圧フィルムFに特有の条件が濃度測定システム100にセットされる(ステップS1)。ユーザは、図4に示すように、シリンダーヘッド等の加圧状態の測定対象である被測定物において加圧した後の当該感圧フィルムFを机等の平らな面に置く。当該感圧フィルムFは、加圧状態によって場所により異なる色濃度を示す。例えば図4の例では、加圧により発色した部分C1が生じ、その左下の部分C2の圧力が高かったため、濃度が高くなっている。次に、この感圧フィルムFの上の測定したい位置にリングマーカ50を載せる(図4中、リングマーカ50を黒円で示す)。このリングマーカ50は、当該感圧フィルムF上の複数の任意の箇所に複数枚置いても良い。
【0021】
ユーザは、前記リングマーカ50を含めて撮影部1により感圧フィルムFの撮影を行う。当該撮影画像は、前記記憶部2に記憶される(ステップS2)。なお、複数のリングマーカ50を用いる場合、全てのリングマーカ50を一度に撮影して処理することもできる。
【0022】
続いて、この撮影画像のリングマーカ50の画像及びリングマーカ50内の濃度値を検出し、当該濃度値を圧力値に変換する。濃度値から圧力値への変換は、最小二乗法を用いた関数や濃度値と圧力値との相関データからなる変換テーブルにより行う。ここでは、リングマーカ50内の操作者が指定する点において、当該濃度値から圧力値への変換を行っても良い。また、撮影画像の濃度は周囲の環境により誤差が生じているので、以下のように各補正部により補正処理を行う。
【0023】
[傾き・距離補正]
前記傾き・距離補正部7は、測定可能なリングマーカ50の中で指定された一つに対し、4個の基準点51を検出する。検出した4個の基準点51のうち対向する2組の基準点間距離を計算し、その距離を比較する。図5(a)に示すように、2組の基準点間距離が同じであれば撮影された画像は円であり、最適な撮影状態であると判断できる。また、基準点間距離の長さから撮影距離を所定の演算により取得できる。図5(b)に示すように、2組の基準点間距離が異なる場合、楕円と判断する。この場合、図5(c)に示すように、斜めから撮影されたものとして当該基準点間距離の差から角度θを取得する。例えば、記憶部2に、基準点間距離の差に対応する撮影角度を変換テーブルとして記憶しておき、傾き・距離補正部7が当該変換テーブルを参照して角度を取得しても良い。また、傾き・距離補正部7が、所定の演算処理により前記角度を取得しても良い。また、斜めから撮影された場合、前記撮影角度及び基準点間距離から撮影距離が所定の演算により取得できる(ステップS3)。
【0024】
この傾き・距離補正部7は、取得した撮影角度及び撮影距離に基づいて、撮影画像に対して伸張、縮小等の補正を行う。また、撮影角度及び撮影距離により反射光の強度が変化して濃度が異なるものとなるため、撮影角度及び撮影距離に応じて所定の濃度補正を行う。これにより、撮影画像の傾き及び距離に起因する誤差が補正される。リングマーカ50は、大きさ及び形状が予め規定されると共に測定位置も重要であるから、撮影角度及び撮影距離による補正によって正確な判定ができるようになる。
【0025】
[うねり判定]
うねり判定部8は、リングマーカ50上の複数のパターン形状を用いて判定する。撮影画像に表示されているパターン形状は、前記傾き・距離補正部7により既定の角度及び距離から撮影した状態に補正されている。リングマーカ50のパターン形状は、予め規定されており、前記データ領域54に情報として印刷されている。うねり判定部8は、比較の基準としてデータ領域54からリングマーカ50のパターン形状の形状、大きさ及び位置を取得する。そして、前記撮影画像中のパターン形状の大きさ、形状及び位置を前記基準となるパターン形状のデータと比較する。うねり判定部8は、例えば前記パターン形状が円である場合、撮影画像中のリングマーカ50上にある円の形状、大きさ及び位置が基準となるそれと同じであれば、うねりがないものと判断する。一方、形状、大きさ又は位置が異なる場合であって予め設定した所定値を超えるとき、うねりがあるものと判断する。うねりが所定値より大きい場合、測定精度の低下等を考慮して、「エラー」として測定を中止するか又は警告メッセージを表示部3aに表示する(ステップS4)。
【0026】
[色補正]
次に、色補正部9は、リングマーカ50のデータ領域54に印刷された基準色データを撮影画像から読み込む。前記データ領域54には、基準色データが二次元コードや三次元コードや数値等により印刷されている。この基準色データは、例えばRGB値等で表示される。また、リングマーカ50には、基準色としてステップウェッジ状の濃度パターン52が印刷されている。このため、前記データ領域54には、濃度パターン52の段階毎に前記基準色データが印刷されている。なお、光量変動検出リング53を基準色として用いても良い。
【0027】
色補正部9は、実際に撮影した前記基準色の画像の色と、データ領域54に印刷されている色データとを比較し、撮影した画像が周囲の環境によりどの程度変化を起こしているかを判断し、補正値を生成する。前記補正値は、例えば基準色データと基準色を比較して補正曲線を高次関数により作成しておき、この高次関数に、実際に撮影部1で取得した基準色データと基準色とを当てはめて生成する。そして、色補正部9は、前記生成した補正値に基づいて、前記取得した感圧フィルムFの画像の色を補正し、感圧フィルムFの実際の色を取得する(ステップS5)。
【0028】
なお、ソフトウェア識別マーク56には、携帯端末にインストールされた専用のプログラムに対して所定の指示を行う情報が記録されている。この情報をソフトウェア指示部11が撮像部1を用いて取得し、例えば次のような処理を行う。濃度が規定範囲を外れている場合に、撮影した画像データの削除を行う。規定範囲は、例えば入力部3bから閾値の上限下限を入力できる。また、そのリングマーカ50を用いる場合に必要となるソフトウェアの携帯端末へのダウンロード処理を行う。また、携帯端末に専用ソフトウェア及び汎用ソフトウェアの起動処理や、所定のサーバへの接続処理を行わせる。
【0029】
[光量補正]
続いて、光量補正部10により撮影した画像の光量補正を行う。撮影位置や周囲の光の状態等により撮影時の光量は異なるものとなる。まず、光量補正部10は、撮影した状態の光量変動検出リング53の濃度変動を検出する。光量変動検出リング53は、一定径、形状、位置及び灰色の一定濃度を有する環状領域である。一様な光量の環境下で撮影すれば光量変動検出リング53の濃度は一定になるはずであるが、実際には、光の方向、強さ、影等により、光量変動検出リング53の場所によって撮影画像の濃度に変動が生じる。
【0030】
図6に、光量変動検出リング53の濃度変動の例を示す。11時方向から平面に対して斜めに光が当たっている場合、光量変動検出リング53の濃度は11時方向で低く、5時方向で高くなる。光量補正部10は、リング内の測定領域において、撮影画像の濃度変動を光量変動のRGB値に変換し、当該RGB値に基づいて前記撮影画像のRGB値を増減させて補正を行う(ステップS6)。図6の例では、11時から5時の方向を軸として左右対称に濃度変化が生じているから、この濃度が11時から5時方向で均一になるように補正を行う。これにより、周囲の光の具合による撮影環境に左右されることなく正確に撮影画像を取得できる。
【0031】
続いて、感圧フィルムFの濃度値から圧力値を求める(ステップS7)。圧力変換部6は、前記取得した濃度値を、既に入力された感圧フィルムFの種類、タイプ、各種の条件等を考慮した上、予め用意してある変換式に基づいて圧力値への変換を行い、圧力値を濃度値と共に表示部3aに表示する。図7は、圧力値と濃度値との相関関係の概念を示すグラフ図である。圧力値と濃度値とは、最小二乗法を用いて近似した関数により関係付けられる。両者の変換は、圧力変換部6によりその都度演算により行われる。測定者は、携帯端末の表示部3aに表示された圧力値及び濃度値を見ながら測定を継続する。これにより、測定者は、圧力値を現場ですぐに判断できる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、感圧シートの濃度値を圧力値に変換したが、熱により色が変化するシートや紫外線により色が変化するシートに対しても適用可能である。熱により色が生じるシートでは、加熱して発色したシートに上記リングマーカ50を載せ、上記同様に測定領域の画像を撮影する。そして、各補正処理を行い、最後に濃度値を熱値に変換する。紫外線の場合も同様に、紫外線により発色したシートに上記リングマーカ50を載せ、上記同様に測定領域の画像を撮影する。そして、各補正処理を行い、最後に濃度値を紫外線値に変換する。その他、振動、ガス、光等により色が変化するシートに対して適用可能である。
【0033】
また、上記では感圧シートの色味・濃度値を用いて圧力の変化を測定したが、機能性フィルムに限定されない。即ち、上記発明において、ステップS7の濃度値から圧力値への変換を省略して、濃度値のみを求めることで、濃度や色味を測定する必要がある被測定対象に適用範囲を拡大できる。例えば、工事現場などでペイントされた部分、印刷された媒体等の色味や濃度に対してリングマーカ50を用いて所定の値になっているかの判断に用いることができる。更に、色味や濃度が経時的に変化するものに対し、リングマーカ50を用いて時間を置いて撮影を行い、色味等の変化を測定しても良い。
【符号の説明】
【0034】
100 濃度測定システム
1 撮影部
2 記憶部
3a 表示部
3b 入力部
4 通信部
5 画像処理部
6 圧力変換部
7 傾き・距離補正部
8 うねり判定部
9 色補正部
10 光量補正部
50 リングマーカ
51 基準点
52 濃度パターン
53 光量変動検出リング
54 データ領域
55 メモエリア
56 ソフトウェア識別マーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7