特許第6308472号(P6308472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308472
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】排気ガスダクト、船舶
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/02 20060101AFI20180402BHJP
   F01N 3/05 20060101ALI20180402BHJP
   F01N 3/04 20060101ALI20180402BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20180402BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   F01N3/02 101J
   F01N3/05
   F01N3/04 A
   F01N3/24 N
   B63H21/32 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-9571(P2015-9571)
(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公開番号】特開2016-133091(P2016-133091A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎輔
(72)【発明者】
【氏名】川北 千春
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩司
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−077093(JP,U)
【文献】 特開2009−168381(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111118(WO,A1)
【文献】 特開2007−211632(JP,A)
【文献】 特開2013−224608(JP,A)
【文献】 特開2014−190174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−13/20
B63H 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流れる第一流路を形成するとともに、前記第一流路の途中に冷却液を噴射する噴射部を有する噴射ダクト部と、
前記噴射ダクト部の上流側に設けられて、前記第一流路に連通されて少なくとも一部が湾曲する第二流路を形成するとともに、前記第二流路を流れる排気ガスの旋回を促進させる旋回促進部を具備する湾曲ダクト部と、
を備え
前記旋回促進部は、
前記湾曲ダクト部のうち前記第二流路が湾曲する外周側にのみ配され、前記湾曲ダクト部の内周面から突出する凸部を備える排気ガスダクト。
【請求項2】
前記凸部は、
前記排気ガスの流れる方向における下流側に向かうに従って、その断面積が減少する請求項に記載の排気ガスダクト。
【請求項3】
排気ガスが流れる第一流路を形成するとともに、前記第一流路の途中に冷却液を噴射する噴射部を有する噴射ダクト部と、
前記噴射ダクト部の上流側に設けられて、前記第一流路に連通されて少なくとも一部が湾曲する第二流路を形成するとともに、前記第二流路を流れる排気ガスの旋回を促進させる旋回促進部を具備する湾曲ダクト部と、
を備え、
前記旋回促進部は、
前記湾曲ダクト部のうち前記第二流路が湾曲する外周側にのみ配され、前記湾曲ダクト部の内周面から突出するとともに、前記排気ガスを旋回させる旋回方向に延びる案内壁部を有する排気ガスダクト。
【請求項4】
前記第一流路と前記第二流路との少なくとも一方に流れる排気ガスに対して、他の排気ガスを合流させるノズル部を備える請求項1からの何れか一項に記載の排気ガスダクト。
【請求項5】
前記ノズル部は、
前記第一流路と前記第二流路との少なくとも一方の周方向に向かって前記他の排気ガスを噴射する請求項に記載の排気ガスダクト。
【請求項6】
前記ノズル部は、
前記第一流路と第二流路との少なくとも一方の軸線方向の下流側に向かって前記他の排気ガスを噴射する請求項又はに記載の排気ガスダクト。
【請求項7】
前記ノズル部は、
前記軸線方向の下流側で、且つ、前記軸線に対して傾斜する方向に向かって前記他の排気ガスを噴射する請求項に記載の排気ガスダクト。
【請求項8】
前記噴射部の上流側の内壁面形成されるとともに対辺が前記第一流路の下流側を向き、隣辺が上流側から下流側に向かって延びる三角形の板状に形成され、前記第一流路を流れる排気ガスに乱流を生じさせるボルテックスジェネレータを備える請求項1からの何れか一項に記載の排気ガスダクト。
【請求項9】
内燃機関と、
前記内燃機関から排出される排気ガスを導く請求項1からの何れか一項に記載の排気ガスダクトと、
を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガスダクト、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、主機関としてはガスタービンなどの内燃機関を備えたものがある。このような内燃機関からは、一般に高温の排気ガスが排出される。高温の排気ガスを大気中などに放出すると、環境に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、排気ガスを冷却する排ガス冷却促進装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、排気ガスの配管の中に冷却水を噴霧することで、冷却水の気化熱により排気ガスの温度を低下させる技術が記載されている。この特許文献1においては、さらに螺旋状の一対のガイド板を設けることで、排気ガスを旋回させて、この旋回させた排気ガスの流れの中に冷却水を噴霧することで、冷却水を排気ガスに対して均一に混合させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−168381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術を用いたとしても、排気ガスに対する冷却水の混合が十分ではなく、例えば、排気ガス中に高温の部分が残存して、排気ガスに温度分布が生じてしまう場合がある。更に、排気ガスに温度分布が生じてしまうと冷却水が蒸発するまでの蒸発距離が長くなる部分が生じ、意図した通りの温度低減効果が得られない場合がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、排気ガスに対して冷却液をより均一に混合させて、排ガス温度の均一度を向上して、意図した通りの温度低減効果を得られる排気ガスダクト、船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第一態様によれば、排気ガスダクトは、排気ガスが流れる第一流路を形成するとともに、前記第一流路の途中に冷却液を噴射する噴射部を有する噴射ダクト部と、前記噴射ダクト部の上流側に設けられて、前記第一流路に連通されて少なくとも一部が湾曲する第二流路を形成するとともに、前記第二流路を流れる排気ガスの旋回を促進させる旋回促進部を具備する湾曲ダクト部と、を備え、前記旋回促進部は、前記湾曲ダクト部のうち前記第二流路が湾曲する外周側にのみ配され、前記湾曲ダクト部の内周面から突出する凸部を備える。
ここで、湾曲した第二流路に流入する排気ガスは、その遠心力により湾曲ダクト部の外周側の内面に衝突して周方向成分を含む流れである旋回流(二次流れ)となるが、上記第一態様のように構成することで、第二流路に流れる排気ガスの旋回を更に旋回促進部によって促進させることができる。また、旋回が促進された排気ガスに対して噴射部から冷却液を噴射して、排気ガスと冷却液とを混合させることができる。その結果、排気ガスに対して冷却液をより均一に混合させて、排ガス温度の均一度を向上して、意図した通りの温度低減効果を得ることができる。
【0007】
さらに、湾曲ダクト部に形成される第二流路の流路断面を、周方向で非対称形状とすることができる。その結果、周方向の非対称形状により旋回流を生じさせることができるとともに、上述した第二流路の湾曲によって生じる旋回流と、非対称形状による旋回流との旋回する方向をずらすことができるため、これら複数の旋回流によって第二流路から第一流路に流入する排気ガスの流れを乱すことができる。その結果、排気ガスに対する冷却液の混合を、より均一化させることができる。
【0008】
さらに、排気ガスを凸部に衝突させることができる。これにより、排気ガスを凸部の両側に分かれさせて、それぞれ旋回流とすることができる。
【0009】
この発明の第態様によれば、排気ガスダクトは、第態様における凸部が、前記排気ガスの流れる方向における下流側に向かうに従って、その断面積が減少するようにしてもよい。
このように構成することで、第二流路の下流側に向かうに従って、流路断面積が増加する。そのため、第二流路をディフューザとして機能させることができる。その結果、旋回流を形成しつつ、流路断面積が排気ガスの流れる方向で変化しない場合と比較して圧力損失を低減することができる。
【0010】
この発明の第態様によれば、排気ガスダクトは、排気ガスが流れる第一流路を形成するとともに、前記第一流路の途中に冷却液を噴射する噴射部を有する噴射ダクト部と、前記噴射ダクト部の上流側に設けられて、前記第一流路に連通されて少なくとも一部が湾曲する第二流路を形成するとともに、前記第二流路を流れる排気ガスの旋回を促進させる旋回促進部を具備する湾曲ダクト部と、を備え、前記旋回促進部は、前記湾曲ダクト部のうち前記第二流路が湾曲する外周側にのみ配され、前記湾曲ダクト部の内周面から突出するとともに、前記排気ガスを旋回させる旋回方向に延びる案内壁部を有する。
このように構成することで、湾曲ダクト部が形成する第二流路の内部に流入した排気ガスを案内壁部によって旋回方向に案内することができる。その結果、効率よく旋回流を発生させることができる。
【0011】
この発明の第態様によれば、排気ガスダクトは、第一から第態様の何れか一つの態様において、前記第一流路と前記第二流路との少なくとも一方に流れる排気ガスに対して、他の排気ガスを合流させるノズル部を備えていてもよい。
このように構成することで、ノズル部から他の排気ガスを合流させて、第一流路又は第二流路を流れる排気ガスの流れを乱すことができる。その結果、排気ガスに対する冷却液の混合を、より一層均一にすることができる。
【0012】
この発明の第態様によれば、排気ガスダクトは、第態様におけるノズル部が、前記第一流路と前記第二流路との少なくとも一方の周方向に向かって前記他の排気ガスを噴射するようにしてもよい。
このように構成することで、ノズル部から合流する他の排気ガスによって、第一流路と第二流路との少なくとも一方に流れる排気ガスの流れの向きを周方向に変更することができる。その結果、旋回流をより積極的に促進させることができるため、排気ガスに対する冷却液の混合を、更に均一化することができる。
【0013】
この発明の第態様によれば、排気ガスダクトは、第または第態様におけるノズル部が、前記第一流路と第二流路との少なくとも一方の軸線方向の下流側に向かって前記他の排気ガスを噴射するようにしてもよい。
このように構成することで、軸線方向に流れる排気ガスに対して速度分布を形成させることができる。この速度分布によって第一流路と第二流との少なくとも一方の排気ガスの流れを乱すことができる。その結果、排気ガスに対して冷却液を均一に混合することができる。
【0014】
この発明の第態様によれば、排気ガスダクトは、第態様におけるノズル部が、前記軸線方向の下流側で、且つ、前記軸線に対して傾斜する方向に向かって前記他の排気ガスを噴射するようにしてもよい。
このように構成することで、軸線方向に対して傾斜する方向に他の排気ガスを噴射することができるため、軸線方向に流れる排気ガスに対して速度分布を形成させつつ、軸線方向に流れる排気ガスの流れを大きく乱すことができる。
【0015】
この発明の第態様によれば、排気ダクトは、第一から第態様の何れか一つの態様において、前記噴射部の上流側の内壁面形成されるとともに対辺が前記第一流路の下流側を向き、隣辺が上流側から下流側に向かって延びる三角形の板状に形成され、前記第一流路を流れる排気ガスに乱流を生じさせるボルテックスジェネレータを備えていてもよい。
このように構成することで、噴射部の上流側における第一流路と第二流路との少なくとも一方の内周面近傍に小さな渦流を形成することができる。その結果、境界層領域を小さくして、冷却液の液滴が内周面に衝突することによる熱衝撃を緩和することができる。
【0021】
この発明の第態様によれば、船舶は、内燃機関と、前記内燃機関から排出される排気ガスを導く第一から第態様の何れか一つの態様における排気ガスダクトと、を備える。
このように構成することで、排ガス温度の均一度を向上して、意図した通りの温度低減効果を得ることができるため、周囲環境の負担軽減を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
上記排気ガスダクト、船舶によれば、排気ガスに対して冷却液をより均一に混合させて、排ガス温度の均一度を向上して、意図した通りの温度低減効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の第一実施形態における船舶の模式図である。
図2】この発明の第一実施形態における排気ガスダクトを示す模式図である。
図3図2のIII−III線に沿う断面図である。
図4図2のIV−IV線に沿う断面図である。
図5図2のV−V線に沿う断面図である。
図6】この発明の実施形態における排気ガスダクトの軸線に沿う断面図である。
図7】この発明の第二実施形態における図2に相当する模式図である。
図8】この発明の第二実施形態における図6に相当する断面図である。
図9図7のIX−IX線に沿う断面図である。
図10】この発明の第三実施形態における図2に相当する模式図である。
図11図10のノズル部近傍の速度分布を示す拡大図である。
図12】この発明の第三実施形態の第一変形例における図11に相当する断面図である。
図13】この発明の第三実施形態の第二変形例における図11に相当する断面図である。
図14】この発明の第四実施形態における図2に相当する模式図である。
図15】この発明の第四実施形態におけるボルテックスジェネレータによる境界層の状態を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の一実施形態に係る排気ガスダクト、および、船舶を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この発明の第一実施形態における船舶の模式図である。
この第一実施形態における船舶110は、推力を得るための推力源として、ガスタービンエンジン1を備えている。ガスタービンエンジン1は、燃料を燃焼したエネルギーを回転エネルギーに変換して出力する。この回転エネルギーは、プロペラ軸を介してプロペラ(図示せず)に伝達される。これにより船舶110は、船首102側すなわち図1中矢印Dで示す前方側に向かって進むことができる。ガスタービンエンジン1は、船体100の内部に設けられており、使用済みの燃焼ガスである排気ガスGを、排気ガスダクト2を介して船尾側から大気中に排出するようになっている。ここで、ガスタービンエンジン1から排出される排気ガスGは非常に高温になっている。
【0025】
図2は、この発明の第一実施形態における排気ガスダクトを示す模式図である。
排気ガスダクト2は、噴射ダクト部3と、湾曲ダクト部4とを備えている。
噴射ダクト部3は、排気ガスGが流れる第一流路5を形成する。この噴射ダクト部3により形成される第一流路5は、湾曲ダクト部4と排気ガスダクト2の船尾側の開口部2aとの間に配索されている。この第一実施形態における噴射ダクト部3は、直線状に延びる断面円形の配管からなる。この噴射ダクト部3は、第一流路5の途中に冷却液Wを噴射する噴射部6を有している。この第一実施形態における冷却液は、例えば、船底等から導入される海水W(図1参照、以下冷却液Wと称する)であり、噴射部6によって第一流路5の内部に噴霧される。
【0026】
湾曲ダクト部4は、噴射ダクト部の上流側に設けられている。この湾曲ダクト部4は、第二流路7を形成している。この第二流路7は、第一流路5に連通されて少なくともその一部が湾曲している。この実施形態における第二流路7は、全体が一定な曲率半径で湾曲する円弧状に形成されている。さらに、この実施形態における湾曲ダクト部4は、断面円環状で、入口部4aの向きと出口部4bの向きとが90°異なる、いわゆる90°エルボの形状となっている。
【0027】
図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。図4は、図2のIV−IV線に沿う断面図である。図5は、図2のV−V線に沿う断面図である。図6は、この発明の実施形態における排気ガスダクトの軸線に沿う断面図である。
図2から図5に示すように、湾曲ダクト部4は、旋回促進部10を有している。この旋回促進部10は、第二流路7を流れる排気ガスGの旋回を促進させる。ここで、湾曲ダクト部4の第二流路7においては、入口部4aから流入した排気ガスGが、湾曲ダクト部4を直進すると外周側の内壁部4cに衝突する。すると、排気ガスGは、衝突点から内壁部4cに沿って周方向両側に流れる2つの旋回流(二次流れ;図3中、破線で示す)となる。上述した旋回促進部10は、この第二流路7を流れる排気ガスGの旋回を促進させる機能を有している。
【0028】
第一実施形態における旋回促進部10は、湾曲ダクト部4のうち第二流路7が湾曲する外周側に配されている。この旋回促進部10は、湾曲ダクト部4の内壁部4cから湾曲ダクト部4の中心に向かって突出する凸部11を備えている。すなわち、旋回促進部10は、湾曲ダクト部4の中心軸C周りに非対称に配されている。より具体的には、凸部11は、第二流路7が湾曲する外周側のうち、第二流路7の湾曲により生じる2つの旋回流のうちの一方と重なる位置に配されている。
【0029】
図3に示す入口部4aの近傍の断面において、凸部11の内側面12は、湾曲ダクト部4の周方向における両端部11bから中心部11aに向かう凸状の緩やかな第一曲面12aを備えている。さらに、凸部11の内側面12は、その中心部11aに、第一曲面12aよりも曲率半径が小さい第二曲面12bを有している。つまり、凸部11は、入口部4aの近傍においては、中心部11aが、最も湾曲ダクト部4の中心(軸線C)に向かって突出する部分となっている。
【0030】
また、図4に示す湾曲ダクト部4の長さ方向の中間部の断面において、凸部11の内側面12は、両端部11bを渡るように形成されて実質的に一様な曲率半径を有した凸状の第三曲面12cを備えている。この第三曲面12cの曲率半径は、上述した第二曲面12bの曲率半径よりも大きくなるように形成されている。
【0031】
さらに、図5に示す出口部4b近傍の断面において、凸部11の内側面12は、凹状に形成された第四曲面12dを有している。この第四曲面12dの曲率半径は、湾曲ダクト部4の内壁部4cの曲率半径よりも僅かに大きくなるように形成されている。
つまり、凸部11は、入口部4aから出口部4bに向かうに従って、その断面積が徐々に減少するように形成されている。言い換えれば、図6に示すように、湾曲ダクト部4の流路断面積は、入口部4aから出口部4bに向かうに従って拡大している。
【0032】
図3に示すように、第二流路7に流入した排気ガスGは、周方向で非対称形状な旋回促進部10の凸部11に衝突して旋回流S1(図3中、実線で示す)となる。さらに排気ガスGは、湾曲ダクト部4の第二流路7の湾曲によって旋回流S2(図3中、破線で示す)となる。これら2つの旋回流S1,S2は、それぞれ旋回する方向が異なるため、湾曲ダクト部4の第二流路7の湾曲による旋回流S2のみが生じている場合と比較して、より排気ガスGの流れを乱すことができる。さらに、これら2つの旋回流S1,S2の向きの重なる部分Bにおいては、その部分Bの旋回方向への排気ガスGの流速を増加させることができる。つまり旋回流を促進することができる。
【0033】
したがって、上述した第一実施形態によれば、周方向で非対称形状な旋回促進部10の凸部11によって旋回流S1を形成することができる。そのため、第二流路7に流れる排気ガスGの旋回を促進させることができる。さらに、この旋回が促進された排気ガスGに対して噴射部6から冷却液Wを噴射して、排気ガスGと冷却液Wとを混合させることができるため、排気ガスGに対して冷却液Wをより均一に混合させることができる。その結果、排ガス温度の均一度を向上して、意図した通りの温度低減効果を得ることができる。
【0034】
また、湾曲ダクト部4に形成される第二流路7の流路断面を、周方向で非対称形状とすることができるため、流れる向きが異なる旋回流S1と旋回流S2とを生じさせることができる。そのため、排気ガスGの流れを乱すことができる。その結果、排気ガスGに対する冷却液Wの混合を、より均一化させることができる。
【0035】
さらに、湾曲ダクト部4の外周側に凸部11を形成すればよいため、単純な形状で、効果的に排気ガスGの温度を低減することができる。
また、第二流路7の下流側に向かうに従って、流路断面積を増加させることができるため、第二流路7をディフューザとして機能させることができる。その結果、旋回流を形成しつつ、流路断面積が排気ガスGの流れる方向で変化しない場合と比較して、圧力損失を低減することができる。
【0036】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態に係る排気ガスダクト、および、船舶を図面に基づき説明する。この第二実施形態は、上述した第一実施形態と旋回促進部の構成が異なるだけである。そのため、同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0037】
図7は、この発明の第二実施形態における図2に相当する模式図である。図8は、この発明の第二実施形態における図6に相当する断面図である。図9は、図7のIX−IX線に沿う断面図である。
図7に示すように、この第二実施形態の排気ガスダクト2は、第一実施形態と同様に、噴射ダクト部3と、湾曲ダクト部4と、を備えている。
【0038】
湾曲ダクト部4は、旋回促進部10を有している。この第二実施形態における旋回促進部10は、排気ガスGの旋回流を促進するための案内壁部20を有している。
案内壁部20は、湾曲ダクト部4に流入した排気ガスGを、内壁部4cに沿って上流側から下流側に向かって螺旋状に流れるように導く。
【0039】
図8に示すように、案内壁部20は、内壁部4cから軸線Cに向かって径方向に突出する平板状に形成されている。案内壁部20は、軸線C方向に間隔をあけて複数形成されている。これら案内壁部20の全ては、軸線Cに垂直な仮想平面に対して、周方向の第一端部が、周方向で第一端部と反対側に配される第二端部よりも上流側又は下流側にずれるように配されることで傾斜している。つまり、湾曲ダクト部4の第二流路7に流入した排気ガスGは、案内壁部20に衝突することで、案内壁部20に沿って流れる。言い換えれば排気ガスGは、案内壁部20の第一端部から第二端部、又は、第二端部から第一端部に向かって流れる。これにより、排気ガスGは、軸線C周りに旋回しながら上流側から下流側に向かって流れる。ここで、案内壁部20の第一端部が第二端部よりも上流側に配される場合と、下流側に配される場合とは、軸線C周りに旋回する方向が異なるだけである。
【0040】
この第二実施形態の案内壁部20は、第一実施形態の凸部11と同様に、湾曲ダクト部4における第二流路7の湾曲の外周側にのみ形成されている。
【0041】
図9に示すように、第二流路7に流入した排気ガスGは、周方向で非対称形状な旋回促進部10の案内壁部20に衝突して案内され旋回流S3(図9中、実線で示す)となる。さらに排気ガスGは、第一実施形態と同様に、湾曲ダクト部4の第二流路7の湾曲によって旋回流S2(図9中、破線で示す)となる。これら2つの旋回流S,S3は、それぞれ旋回する方向が異なるため、湾曲ダクト部4の第二流路7の湾曲による旋回流S2のみが生じている場合と比較して、より排気ガスGの流れを乱すことができる。さらに、これら2つの旋回流S,S3の向きの重なる部分B2においては、その部分B2の旋回方向への排気ガスGの流速を増加させることができる。つまり旋回流を促進することができる。
【0042】
したがって、上述した第二実施形態によれば、湾曲ダクト部4が形成する第二流路7の内部に流入した排気ガスGを案内壁部20によって旋回方向に案内することができる。その結果、効率よく旋回流S3を発生させることができる。
また、湾曲ダクト部4のうち第二流路7が湾曲する外周側に旋回促進部10が設けられていることで、第二流路7の湾曲によって生じる旋回流S2と、案内壁部20による旋回流S3との旋回方向をずらすことができる。そのため、これら複数の旋回流S2,S3によって第二流路7から第一流路5に流入する排気ガスGの流れを乱すことができる。その結果、排気ガスGに対する冷却液Wの混合を、より均一化させることができる。
【0043】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態における排気ガスダクト、および、船舶を図面に基づき説明する。この第三実施形態は、上述した第一、第二実施形態と、旋回流を生じさせる構成が異なる。そのため、第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図10は、この発明の第三実施形態における図2に相当する模式図である。図11は、図10のノズル部近傍の速度分布を示す拡大図である。
【0044】
図10に示すように、この第三実施形態における排気ガスダクト2は、噴射ダクト部3と、湾曲ダクト部4と、を備えている。噴射ダクト部3は、ノズル部30を備えている。
ノズル部30は、噴射ダクト部3の第一流路5を流れる排気ガスGに対して、他の排気ガスG2を噴射して合流させる。この第三実施形態の他の排気ガスG2は、例えば、発電機を駆動するためのディーゼル機関等の排気ガスを用いている。このノズル部30は、噴射部6の上流側に配置されている。第三実施形態におけるノズル部30は、噴射ダクト部3の周方向に間を空けて複数配置され、それぞれ軸線Cに沿って下流側を向いている。これらノズル部30から噴射される他の排気ガスG2は、第一流路5を流れる排気ガスGよりも流速が高い状態とされている。
【0045】
したがって、上述した第三実施形態によれば、図11に示すように、軸線C方向に第一流路5を流れる排気ガスGに対して、流速の高い他の排気ガスG2を合流させていることで、噴射部6の上流側において速度分布(図11中、細線で示す。)を形成することができる。この速度分布によって、湾曲ダクト部4で生じた排気ガスGの旋回流に、例えば、小さな渦流等を生じさせて更に乱すことができる。その結果、排気ガスG(合流した他の排気ガスG2を含む)に対して冷却液Wを均一に混合することができる。
【0046】
(第三実施形態の変形例)
図12は、この発明の第三実施形態の第一変形例における図11に相当する断面図である。図13は、この発明の第三実施形態の第二変形例における図11に相当する断面図である。
ここで、上述した第三実施形態においては、ノズル部30の向きを軸線Cに沿って下流側に向ける場合について説明した。しかし、ノズル部30の向きは、第三実施形態で例示した向きに限られない。
【0047】
例えば、図12に示す第三実施形態の第一変形例のように、ノズル部30は、軸線C方向の下流側で、且つ、軸線Cに対して傾斜する方向に向かって他の排気ガスG2を噴射するようにしても良い。併せて、ノズル部30を周方向に傾斜させるようにしても良い。
【0048】
この第三実施形態の第一変形例のように構成することで、軸線C方向に対して傾斜する方向に他の排気ガスG2を噴射することができるため、軸線C方向に流れる排気ガスGに対して速度分布を形成させつつ、ノズル部30が向く方向に流れる旋回流を形成することができるため、噴射部6の上流側で軸線C方向に流れる排気ガスGの流れを大きく乱すことができる。
【0049】
また、図13に示す第三実施形態の第二変形例のように、ノズル部30の向きを、軸線Cと垂直な方向、言い換えれば排気ガスダクト2の周方向の一方に向けるようにしても良い。
この第三実施形態の第二変形例のように構成することで、湾曲ダクト部4の第二流路7の湾曲により生じる旋回流に対して、軸線C周りの旋回流を更に加えることができる。その結果、噴射部6の上流側で軸線C方向に流れる排気ガスGの流れを大きく乱すことができる。また、軸線C周りの旋回流を加えることで、第二実施形態と同様に、部分的に排気ガスGの旋回を促進することができる。
【0050】
(第四実施形態)
次に、この発明の第四実施形態の排気ガスダクト、および、船舶を図面に基づき説明する。この第四実施形態は、上述した第三実施形態のノズル部30の代わりに、ボルテックスジェネレータを設けたものである。そのため、第三実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0051】
図14は、この発明の第四実施形態における図2に相当する模式図である。図15は、この発明の第四実施形態におけるボルテックスジェネレータによる境界層の状態を示すコンター図である。
図14に示すように、この第四実施形態における排気ガスダクト2は、噴射部6の上流側にボルテックスジェネレータ40を有している。このボルテックスジェネレータ40は、第一流路5を流れる排気ガスGに乱流を生じさせる。
【0052】
ボルテックスジェネレータ40は、噴射ダクト部3のうち噴射部6の上流側の内壁面3cに形成されている。ボルテックスジェネレータ40は、内壁面3cの周方向に間隔をあけて複数設けられている。図14に示すように、これらボルテックスジェネレータ40は、それぞれ三角形、より具体的には直角三角形の板状に形成されている。ボルテックスジェネレータ40の三角形の対辺41は、第一流路5の下流側を向き、隣辺42が上流側から下流側に向かって延びている。これらボルテックスジェネレータ40は、隣り合う2つを一組として、上流側から下流側に向かうに従って隙間L1が徐々に狭くなるように形成されている。
【0053】
したがって、上述した第四実施形態によれば、図15に示すように、噴射部6の上流側における第一流路5の内周面(内壁面3c)近傍に、小さな渦流を形成することができる。この小さな渦流は、ボルテックスジェネレータ40の対辺41側において一組のボルテックスジェネレータ40の並ぶ方向の外側で内壁面3cに向かう渦流となる。その結果、渦流により境界層領域を圧縮して内壁面3cの表面に形成される境界層領域を小さくすることができる。そのため、冷却液Wの液滴が内壁面3cに衝突することによる熱衝撃を緩和することができる。
【0054】
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0055】
例えば、上述した各実施形態においては、湾曲ダクト部4の第二流路7の全体が湾曲するように形成される場合について説明した。しかし、湾曲ダクト部4は、全体が湾曲するものに限られず、例えば、軸線C方向の一部のみが湾曲するように形成するようにしても良い。また、噴射ダクト部3は直線状に限られない。
【0056】
上述した第二実施形態においては、湾曲ダクト部4のうち第二流路7の湾曲する方向における外周側に案内壁部20を設ける場合について説明した。しかし、案内壁部20は、軸線C周りの全周に連続するように設けるようにしても良い。この場合案内壁部20は、らせん状に形成される。
【0057】
また、上述した第三実施形態、その各変形例、および、第四実施形態、においては、湾曲ダクト部4に、旋回促進部10を備えていない場合について説明したが、第一実施形態や第二実施形態の旋回促進部10を組み合わせて用いるようにしても良い。
【0058】
さらに、第三実施形態においては、他の排気ガスG2がディーゼル機関など、第二流路7に流入する排気ガスGとは異なる内燃機関から排出される排気ガスを用いる場合について説明した。しかし、この構成に限られるものではなく、例えば、同一の内燃機関から排出される排気ガスGを分流させて、ノズル部30に供給するようにしても良い。
【0059】
また、第三実施形態においては、噴射ダクト部3にノズル部30を設ける場合について説明した。さらに、第四実施形態においては、噴射ダクト部3にボルテックスジェネレータ40を設ける場合について説明した。しかし、ノズル部30、および、ボルテックスジェネレータ40は、噴射部6の上流側に配置されていればよく、例えば、湾曲ダクト部4の途中に設けても良い。また、第三実施形態、および、第四実施形態においては、湾曲ダクト部4に対して、旋回促進部10を設けない場合を一例にして説明した。しかし、例えば、第一実施形態や第二実施形態の旋回促進部10を備える排気ガスダクト2に対して、ノズル部30や、ボルテックスジェネレータ40を設けるようにしても良い。
【0060】
さらに、ノズル部30とボルテックスジェネレータ40を併用するなど、上述した第一実施形態から第四実施形態の構成を適宜組み合わせて用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 ガスタービンエンジン
2 排気ガスダクト
2a 開口部
3 噴射ダクト部
3c 内壁面
4 湾曲ダクト部
4a 入口部
4b 出口部
4c 内壁部
5 第一流路
6 噴射部
7 第二流路
10 旋回促進部
11 凸部
11a 中心部
11b 端部
12 内側面
12a 第一曲面
12b 第二曲面
12c 第三曲面
12d 第四曲面
20 案内壁部
30 ノズル部
40 ボルテックスジェネレータ
41 対辺
42 隣辺
100 船体
110 船舶
C 中心軸
G 排気ガス
G2 他の排気ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15