(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308512
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】浚渫時の水底近傍の汚濁拡散防止工法
(51)【国際特許分類】
E02B 15/00 20060101AFI20180402BHJP
【FI】
E02B15/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-156063(P2011-156063)
(22)【出願日】2011年7月14日
(65)【公開番号】特開2013-23810(P2013-23810A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月26日
【審判番号】不服2016-12693(P2016-12693/J1)
【審判請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【合議体】
【審判長】
小野 忠悦
【審判官】
井上 博之
【審判官】
前川 慎喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭51−73738(JP,A)
【文献】
特許第2516742(JP,B2)
【文献】
特開昭55−101614(JP,A)
【文献】
特開2006−247504(JP,A)
【文献】
特開昭60−261837(JP,A)
【文献】
特開昭55−86505(JP,A)
【文献】
特開2005−207135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B15/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浚渫・掘削の行われる工事前に、水底の汚濁拡散物質上に遅延溶解性の固形凝集剤を散布し、前記汚濁拡散物質と混ぜ合わせることを特徴とする、浚渫時の水底近傍の汚濁と排泥時の汚濁を拡散防止する工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫時の水底近傍の汚濁を拡散防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年湖沼、河川、ダム湖、港湾等の水床の浚渫が行われている。このような浚渫時に汚濁の拡散を抑える方法としてグラブ枠が使用されている。グラブ枠は、水面に浮力体で区画されたフロート部を、水中には囲繞されたカーテン膜部を設けたもので、グラブ枠の区画内にグラブバケットを投入し、浚渫しているが、水深が深い場合、該カーテン膜部の丈が水深より短かく、揚泥時に該カーテン膜部下から汚濁が拡散してしまうのが実状であった。
【0003】
そこで従来浚渫時に汚濁の拡散を抑える方法として、例えば該カーテン膜部に凝集剤を含み水でこの凝集剤が溶出可能の凝集剤充填体を水平方向及び垂直方向に間隔をおいて取付け、汚濁水を該凝集剤充填体を取り付けた該カーテン膜部に接触させ、汚濁物質を上記溶出可能の凝集剤により凝集させる方法が提案されている。
また、グラブバケットに該凝集剤充填体を直接取付け、該グラブバケットの水中投入時、浚渫時、揚泥時等の水流攪拌により、汚濁水を凝集剤充填体に接触・攪拌させ、汚濁物質を上記溶出可能の凝集剤により凝集させる方法が提案されている。該カーテン膜部に該凝集剤充填体を取り付けた工法は、常に該凝集剤を水に接触しているので、溶出時間は速いが、凝集に必要な攪拌が不足する為、凝集効果が悪くなる。また該グラブバケットに該凝集剤充填体を直接取り付けた工法は、該グラブバケットの水中投入時、浚渫時、揚泥時等グラブバケットの水中での作業が多く、攪拌効果は十分あるが、該グラブバケットが常に水中に有る訳でなく、凝集剤充填体の溶出時間が少ない為、凝集効果が悪くなる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許第2516742号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、
固形凝集剤の散布により、浚渫時の水底近傍の汚濁拡散防止ができる工法について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、水底の汚濁物質に
固形凝集剤を事前に散布させて浚渫する事により、浚渫時の水底近傍の汚濁と排泥時の汚濁を拡散防止する工法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の浚渫時の水底近傍の汚濁を拡散防止する方法によれば、底泥濁質に事前に
固形凝集剤を散布させ、溶解後にグラブバケットまたはポンプ浚渫ラダー等で撹拌し揚泥する方法により、浚渫時の濁質物質に凝集剤を高濃度凝集させ、汚濁発生源の小規模高濁度時に汚濁を効果的に防止させることができる。
【0008】
また本発明は汚濁物質と
固形凝集剤が高濃度で接触する事により、確実な凝集をさせることができる。
【0009】
さらに本発明は凝集粒子が沈降し再び濁質に接触凝集され、水中の清澄化が図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】グラブ式浚渫船にグラブ枠を固着し、凝集剤を含み水で凝集剤が溶出可能の凝集剤充填体を取り付けたグラブバケットを水中に下げた浚渫を示す斜視図。
【
図2】水底にダイバーが
固形凝集剤を散布している事を示す斜視図。
【
図3】水底に
固形凝集剤を散布した後に、グラブ式浚渫船の
固形凝集剤を含み水で
固形凝集剤が溶出可能の
固形凝集剤充填体を取り付けたグラブバケットを水中に下げた浚渫を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明を図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。
図1は、グラブ式浚渫船1にグラブ枠3を固着し、凝集剤を含み水で該凝集剤が溶出可能の凝集剤充填体7を取り付けたグラブバケット6を水中に下げた浚渫を示す斜視図であり、該グラブバケット6を水中に下げた時の水中投入時、浚渫時、揚泥時等は水流攪拌により、汚濁水を該凝集剤充填体7に接触・攪拌させ、汚濁物質を上記溶出可能の該凝集剤により凝集させるが、該グラブバケット6は常に水中に有る訳でなく、該凝集剤充填体7の溶出時間が少ない為、凝集が悪くなり、カーテン膜部5の丈が水深より短かい場合は、未凝集な汚濁拡散物質が、揚泥時に該カーテン膜部5下から汚濁が拡散してしまうことを意味するものである。
【0012】
図2は、浚渫・掘削の行われる工事前にダイバー8が潜り、水底9に
固形凝集剤10を散布するものである。該水底9に
固形凝集剤10を散布することにより、時間と共に
固形凝集剤10は水を吸収しジェル状になり、底流で飛散・拡散しないで、凝集作用が促進され、汚濁物質と凝集剤が高濃度で接触する事により、確実な凝集をさせることができる。
【0013】
本発明の該
固形凝集剤10を散布する方法としては、浚渫・掘削の行われる工事前に該ダイバー8が潜り、該
固形凝集剤10の1個の大きさにもよるが、該
固形凝集剤10を縦横方向に1m程度間隔をあけて配置することが望ましいが、作業工程上或いは、現況状況によっては、水上または水中から100m
2当たり100個程度散布しても良い。
【0014】
図3は、該
固形凝集剤10を散布した該水底9を、該グラブ式浚渫船1に、該凝集剤充填体7を取り付けた該グラブバケット6を水中に下げて浚渫するものである。該グラブバケット6が該水底9で該
固形凝集剤10と浚渫土砂を掴み、汚濁物質と凝集剤が高濃度で接触する事により、確実な凝集が出来る。汚濁物質と該
固形凝集剤10が接触する事により、出来た凝集粒子は沈降し再び汚濁物質に接触凝集され、水中濁水の清澄化を図り、水中透明度を増すことができる。
【0015】
また本発明は浚渫・掘削の行われる工事前に、該水底9に該
固形凝集剤10を据えて、該グラブバケット6によって浚渫したことにより発生する浚渫時の機械的な衝撃による汚濁拡散を瞬時の再接触凝集により小範囲にとどめるだけでなく、浚渫土砂の排出濁水の沈降分離水も清澄化が図れる。
【0016】
該グラブバケット6によって浚渫した土砂は、該グラブ式浚渫船1と併設された土運船2に移される。該土運船2には、浚渫土砂の他に、大量の排出濁水を蓄えており、前述固・液分離水の清澄化が図れた沈降分離水は、該グラブ枠3内に戻すことにより、該土運船2にさらに泥土の積み込み量を多くして浚渫土砂を蓄える事ができる為に、該土運船2の貯泥量が増したことによる作業効率を高める事ができる。
【0017】
更に
図3に示すように該グラブバケット6に該凝集剤充填体7を取り付けたことで、該グラブ枠1内の拡散汚濁物質は該グラブバケット6の水中投入時、浚渫時、揚泥時等の水流攪拌により、凝集沈殿し、水中の透明化が図れる。
【0018】
本発明の該
固形凝集剤10は、液体の凝集剤と異なり、遅延溶解性で凝集剤のライフが永くとれるので、あらかじめ浚渫予定の底泥土上に据えておけば、浚渫時には周辺に高濃度で泥土と混ざり合っており、浚渫時の撹拌汚濁の拡散も防止できる、その粒子は、新たな泥土により、再凝集効果があり、さらなる拡散防止となるので最適である。
【0019】
本発明の用途としては、事前に該水底9に該
固形凝集剤10を散布することにより、災害水域やダム等の水深下の懸濁水中の透視度を高める事も好適である。
【符号の説明】
【0020】
1・・・・グラブ式浚渫船
2・・・・土運船
3・・・・グラブ枠
4・・・・フロート部
5・・・・カーテン部
6・・・・グラブバケット
7・・・・凝集剤充填体
8・・・・ダイバー
9・・・・水底
10・・・
固形凝集剤