特許第6308519号(P6308519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308519
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】モータ駆動装置及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/12 20060101AFI20180402BHJP
【FI】
   H02P6/12
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-247663(P2013-247663)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-106980(P2015-106980A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】會澤 敏満
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−246387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正側及び負側半導体スイッチング素子の直列回路からなる複数のアームを並列に接続して構成され、モータを駆動する電力変換回路と、
前記モータを制御するため、前記電力変換回路を構成する各半導体スイッチング素子に対するオンオフ信号を生成して出力する制御回路と、
前記電力変換回路に流れる電流を検出する電流検出手段とを備え、
前記制御回路は、前記半導体スイッチング素子のオンオフ制御をPWM制御周期に基づいて行い、前記電流検出手段により検出された電流値が制限値以上になると、前記電力変換回路を構成する正側半導体スイッチング素子をオフさせると共に、
前記オフさせた正側半導体スイッチング素子と同じアームの負側半導体スイッチング素子を、前記制御周期より正負短絡防止期間を減じた時間だけオンさせ、
そこから前記制御周期相当の時間が経過すると、前記制限値以上の電流値が検出される前の通電パターンに復帰させ
各アームに対応して個別に設けられ、前記制御周期を計時する制御周期カウンタを備え、
前記検出された電流値が前記制限値を超えると、その際にオンしている正側半導体スイッチング素子が属するアームに対応する制御周期カウンタをリセットスタートさせて、当該制御周期カウンタにより計時される制御周期に基づいて、同じアームの負側半導体スイッチング素子をオンする時間を決定すること特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
正側及び負側半導体スイッチング素子の直列回路からなる複数のアームを並列に接続して構成され、モータを駆動する電力変換回路と、
前記モータを制御するため、前記電力変換回路を構成する各半導体スイッチング素子に対するオンオフ信号を生成して出力する制御回路と、
前記電力変換回路に流れる電流を検出する電流検出手段とを備え、
前記制御回路は、前記半導体スイッチング素子のオンオフ制御をPWM制御周期に基づいて行い、前記電流検出手段により検出された電流値が制限値以上になると、前記電力変換回路を構成する正側半導体スイッチング素子をオフさせると共に、
前記オフさせた正側半導体スイッチング素子と同じアームの負側半導体スイッチング素子を、前記制御周期より正負短絡防止期間を減じた時間だけオンさせ、
そこから前記制御周期相当の時間が経過すると、前記制限値以上の電流値が検出される前の通電パターンに復帰させ、
記電流検出手段により検出された電流値に基づいて前記モータへの通電時間を決定するための演算を行い、前記電流値が前記制限値以上になると、前記演算に使用する電流値を前記制限値に置き換えること特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
前記電流検出手段は、前記電力変換回路に駆動用電源を供給するための電源ラインに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
正側及び負側半導体スイッチング素子の直列回路からなる複数のアームを並列に接続して構成される電力変換回路を介してモータを制御する方法であって、
前記電力変換回路に流れる電流を検出し、
前記半導体スイッチング素子のオンオフ制御をPWM制御周期に基づいて行い、前記検出された電流値が制限値以上になると、前記電力変換回路を構成する正側半導体スイッチング素子をオフさせると共に、
前記オフさせた正側半導体スイッチング素子と同じアームの負側半導体スイッチング素子を、前記制御周期より正負短絡防止期間を減じた時間だけオンさせ、
そこから前記制御周期相当の時間が経過すると、前記制限値以上の電流値が検出される前の通電パターンに復帰させ
前記検出された電流値に基づいて前記モータへの通電時間を決定するための演算を行い、前記電流値が前記制限値以上になると、前記演算に使用する電流値を前記制限値に置き換えること特徴とするモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、正側及び負側半導体スイッチング素子の直列回路からなる複数のアームを並列に接続して構成された電力変換回路を備えるモータ駆動装置及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン等のコンプレッサ用モータやファン用モータ,電気自動車の駆動用モータを制御するシステムでは、モータやインバータを保護するために過電流保護機能が付加される。インバータ駆動では、直流電源ラインに流れる電流を検知し、この電流が一定以上になった場合,インバータの動作を停止させるようになっている。例えば、インバータと直流電源との電源ラインに挿入されたシャント抵抗の端子電圧から、モータに流れる電流を検出できる。そして、予め設定した過電流の基準値をコンパレータの反転入力端子(−)に与え、シャント抵抗の端子電圧をコンパレータの非反転入力端子(+)に与えれば、コンパレータの出力信号が過電流検出情報となり、ロウレベルのときは正常で、ハイレベルのときは過電流状態を示すことになる。
【0003】
例えば特許文献1では、コンパレータの出力信号をラッチ回路に入力し、このラッチ回路の出力信号をインバータの制御ドライブ回路に入力して、ラッチ回路の出力信号がハイレベルのときにインバータの正側スイッチング素子をオフしている。ラッチ回路にはリセット手段である発振回路が接続されており、この発振回路は所定周期でリセット信号を出力する。この場合、ラッチ回路は発振回路からリセット信号が与えられると出力信号がロウレベルにリセットされるので、制御ドライブ回路の出力は通電信号の通りになる。これらはハードウェアで制御されるので、制御の遅延を考慮して余裕をもった過電流基準値に設定する必要がなく、モータのトルクを十分に出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−284289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ラッチ回路におけるラッチを所定周期のリセット信号で解除するため、過電流を検出してから通電パターンが通常の状態に復帰するまでの時間が一定とならない。すると、過電流を検出した後に、インバータにフリーホイール電流が流れる期間が一定にならず、過電流のエネルギーを消費し切れなくなるおそれがある。
そこで、過電流を検出してから通常の通電パターンに復帰するまでの時間を一定にできるモータ駆動装置及びモータ制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のモータ駆動装置によれば、モータを駆動する電力変換回路は、正側及び負側半導体スイッチング素子の直列回路からなる複数のアームを並列に接続して構成されている。制御回路は、半導体スイッチング素子のオンオフ制御をPWM制御周期に基づいて行い、電流検出手段により検出された電流値が制限値以上になると、電力変換回路を構成する正側半導体スイッチング素子をオフさせると共に、前記オフさせた正側半導体スイッチング素子と同じアームの負側半導体スイッチング素子を、制御周期より正負短絡防止期間を減じた時間だけオンさせる。その後、制御周期相当の時間が経過すると、前記制限値以上の電流値が検出される前の通電パターンに復帰させる。
また、制御回路は、各アームに対応して個別に設けられ、前記制御周期を計時する制御周期カウンタを備え、前記検出された電流値が前記制限値を超えると、その際にオンしている正側半導体スイッチング素子が属するアームに対応する制御周期カウンタをリセットスタートさせて、当該制御周期カウンタにより計時される制御周期に基づいて、同じアームの負側半導体スイッチング素子をオンする時間を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態であり、モータ制御装置の構成を示す回路図及び機能ブロック図
図2】過電流発生時の各信号波形を示すタイミングチャート
図3】通常動作時のA/D変換タイミングを示す図
図4】過電流検出時の図3相当図
図5】過電流割り込み処理を示すフローチャート
図6】通電割り込み処理を示すフローチャート
図7】A/D変換完了割り込み処理を示すフローチャート
図8】電流ピーク制御処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。図1において、直流電源1には、平滑コンデンサ2,抵抗素子3及び4の直列回路と、インバータ回路5(電力変換回路)が並列に接続されている。インバータ回路5は、4つのNチャネルMOSFET(半導体スイッチング素子;以下、単にFETと称す)Q1〜Q4がHブリッジ接続されて構成されている。そして、FET_Q1及びQ2の直列回路(アーム)の共通接続点と、FET_Q3及びQ4の直列回路(アーム)の共通接続点との間に、DCモータ6(単相ブラシレスDCモータ)の固定子巻線(図示せず)が接続されている。尚、FET_Q1及びQ3は正側半導体スイッチング素子に対応し、FET_Q2及びQ4は負側半導体スイッチング素子に対応する。
【0009】
FET_Q1〜Q4は、制御マイクロコンピュータ(以下、制御マイコンと称す)7によりスイッチング制御され、制御マイコン7は、各FET_Q1〜Q4のゲートに、それぞれゲート駆動回路8〜11を介してゲート駆動信号を出力する。抵抗素子3及び4の共通接続点は制御マイコン7(制御回路)の入力端子に接続されており、制御マイコン7は、直流電源1の分圧された電圧をA/D変換して読み込む。
【0010】
また、モータ6にはホールセンサ12(回転位置検出手段)が配置されており、ホールセンサ12の出力端子は制御マイコン7の入力端子に接続されている。ホールセンサ12は、モータ6のロータに配置されている永久磁石の磁界を検出して、位置検出信号を制御マイコン7に出力する。制御マイコン7は、前記位置検出信号に応じて、モータ6の固定子巻線に対する通電方向,つまりモータ6の回転方向を切り替える。
【0011】
インバータ回路5と、直流電源1の負側端子(グランド)との間を接続する電源線には、抵抗素子13(電流検出手段)が挿入されている。制御マイコン7は、コンパレータ14を内蔵しており、上記抵抗素子13のインバータ回路5側の端子は、コンパレータ14の非反転入力端子に接続されている。コンパレータ14の反転入力端子には、過電流を検出するための電流制限値に相当する基準値電圧が与えられており、抵抗素子13の端子電圧が上記基準値を上回ると、コンパレータ14の出力信号はハイレベルとなる。
【0012】
制御マイコン7は、第1PWM回路15及び第2PWM回路16を備えており、第1PWM回路15はFET_Q1及びQ2側にゲート信号を出力し、第2PWM回路16はFET_Q3及びQ4側にゲート信号を出力する。第1,第2PWM回路15,16は、内部にそれぞれPWMタイマ17(タイマ1),18(タイマ2)を備えており、これらのPWMタイマ(制御周期カウンタ)17,18は、例えば周波数10kHzの鋸歯状波をキャリアとして生成出力する。そして、第1,第2PWM回路15,16は、それぞれのキャリアに基づいて、各FET_Q1〜Q4のゲートに対するゲート信号をPWM信号として出力する。
【0013】
コンパレータ14の出力端子は、エッジ検出回路19を介して第1,第2PWM回路15,16に入力されている。第1,第2PWM回路15,16は、過電流が検出されてコンパレータ14の出力信号がハイレベルになると、その時点でオンさせているFET_Q1,Q3の何れかを直ちにオフさせる。また、A/Dコンバータ(ADC)20は、分圧された直流電源1の電圧及び抵抗素子13の端子電圧をA/D変換する。
【0014】
次に、本実施形態の作用について図2から図8を参照して説明する。制御マイコン7の図示しないCPUには、モータ6の固定子巻線に対して一方向への通電を開始してから経時を開始し、所定の通電時間が経過すると通電割り込みが発生する。するとCPUは、図6に示す通電割り込み処理を実行する。
【0015】
先ず、その時点でA/Dコンバータ20が実行中であるA/D変換処理を停止させると(S1)、モータ電流に相当する抵抗素子13の端子電圧のA/D変換を開始する(S2)。それから、A/D変換完了割り込みフラグをクリアすると(S3)、電流ピークA/D変換フラグをON(セット)にする(S4)。続いて、A/D変換におけるサンプル時間を確保するため、A/D変換時間を調整すると(S5)、モータ6への通電方向を逆方向に切り換える(S6)。尚、モータ6への通電は、基本的にはPWMデューティ100%での通電を複数周期に亘って行う連続通電であり、デューティが100%未満に設定されるのは、以下に述べる過電流が検出された異常時だけである。
【0016】
図5は、コンパレータ14による過電流割り込みが発生した場合の処理である。先ず、モータ6に対する現在の通電方向がFET_Q3→Q2方向か、FET_Q1→Q4方向かを判別し(S11)、前者であればステップS12〜S15を、後者であればステップS19〜S22を実行する。以下、FET_Q1→Q4方向の場合について、図2と併せて説明する。
【0017】
図2(a),(b)に示すように、初期状態として、2つのPWMタイマ17及び18は位相同期しているものとする(但し、必ずしもその必要はない)。FET_Q1及びQ4はデューティ100%の連続通電状態であり、FET_Q2及びQ3はデューティ0%のオフ状態である(図2(c)〜(f)参照)。この時、モータ電流が上昇して抵抗素子13の端子電圧が基準値を超えると(図2(g)参照)過電流が検知され(1)、直ちにFET_Q1及びQ3がオフされる(2)。この時点で、モータ6への通電は停止される。そして、所定の遅延時間の経過後に過電流割り込みが発生する(3)。
【0018】
すると、PWM回路15は、過電流検出時の通電パターンとしてFET_Q1をオフにし(デューティ0%)、FET_Q2のゲート信号のデューティを99%にする(S19)。そして、PWMタイマ17をリセットスタートさせる(S20,S21;図2(c),(d)参照)。それから、次の通電パターンとして、過電流検出前の通電パターンと同じくFET_Q1はデューティ100%,FET_Q2はデューティ0%を設定する。
【0019】
次に、上側,ここではFET_Q1側の出力停止機能を解除すると(S16)、過電流割り込み(電流)フラグ及び過電流割り込み(PI)フラグをONにして(S17,S18)処理を終了する。そして、PWMタイマ17が制御周期100μsを計時すると、ステップS22で設定した次の通電パターンが実行され、通常の通電状態に復帰する。尚、ステップS12〜S15の処理は、ステップS19〜S22の処理をFET_Q3及びQ4,PWM回路16について同様に実行するものである。
【0020】
ここで、FET_Q1及びQ2が同時にオンすることを回避するためのデッドタイム(正負短絡防止期間)は1μs;デューティ1%に設定されており、ステップS19でFET_Q2について設定したデューティ99%は、100%より1%を減じたものである。したがって、次の通電パターンに切り替わる直前に、デッドタイムが確保されることになる。
【0021】
また、FET_Q2がデューティ99%でオンしている期間は、
モータ6→FET_Q4→FET_Q2→モータ6
というループで、モータ6の固定子巻線からの遅れ電流がフリーホイール電流として流れる。これにより、FET_Q2の寄生ダイオードにおいて損失が発生することが回避される。
【0022】
ここで、図3に示すように、図6で行うモータ電流のA/D変換のタイミングは、モータ6への通電方向を切り替える間のフリーホイール電流の通電期間に移行する直前となるように設定されており(図3(g)参照)、モータ電流のピークを検出するようにしている。しかしながら、図2に示したように過電流が検出されると、その時点でPWMタイマ17がリセットスタートされるため、図4(a)に示すように、FET_Q1のオフタイミングが早まる。すると、A/D変換タイミングがデッドタイム期間にずれ込んで、電流が検出できなくなる(図4(g)参照)。
【0023】
そこで、図7に示すように、A/D変換完了割り込み処理を行う。先ず、A/D変換中か否かを判断するが(S31)通常は「NO」であり、続いて電流ピークA/D変換フラグがONか否かを判断する(S32)。ここでモータ電流以外の電源電圧をA/D変換している場合は(NO)、現在のA/D変換結果を、例えばワークエリアのRAMにおける所定の領域などに保存する(S33)。そして、A/Dコンバータ20の入力チャネルを切り替えるように指定する(S34)。
【0024】
ステップS4で電流ピークA/D変換フラグがONになっていれば(S32:YES)、次に過電流割り込み(電流)フラグがONか否かを判断する(S35)。前記フラグがONでなければ(NO)、現在のA/D変換結果を「電流ピーク」として格納し(S36)、ピークA/D変換フラグをOFF(リセット)にする(S37)。
一方、ステップS17で過電流割り込み(電流)フラグがONになっていれば(S35:YES)、コンパレータ14に基準値として与えられている過電流閾値を「電流ピーク」として格納し(S38)、ステップS37に移行する。すなわち、この場合はモータ電流値を通常制御範囲の上限に置き換える。
【0025】
図8は、制御マイコン7による電流ピーク制御処理を示すフローチャートであり、検出したモータ電流に基づいてPI(比例積分)制御を行うものである。先ず、制御マイコン7が実行するモータ制御ソフトより与えられる電流ピーク指令と、検出した電流ピーク値の所定期間に亘る平均値との差を「電流ピーク差分」として求める(S41)。それから、通電時間を決定するための積分項を演算する(S42)。
【0026】
次に、過電流割り込み(PI)フラグがONか否かを判断し(S43)、前記フラグがONでなければ(NO)、通電時間を決定するための比例項を演算する(S44)。そして、演算した比例項を、ステップS42で演算した積分項と加算して(S45)処理を終了する。一方、ステップS18で過電流割り込み(PI)フラグがONになっていれば(S43:YES)、ステップS41で求めた「電流ピーク差分」がゼロより大きいか否かを判断する(S46)。「電流ピーク差分」がゼロであれば(NO)過電流割り込み(PI)フラグをOFFしてから(S47)ステップS44に移行する。また、「電流ピーク差分」がゼロより大きければ(YES)、今回の演算に使用する積分項に、前回に求めた積分項を使用して応答性を向上させる(S48)。そして、ステップS47に移行する。
【0027】
以上のように本実施形態によれば、制御マイコン7は、FET_Q1〜Q4のオンオフ制御を一定のPWM制御周期に基づいて行い、電源線に挿入された抵抗素子13により検出された電流値が制限値以上になると、インバータ回路5を構成するFET_Q1又はQ3をオフさせると共に、前記オフさせたFET_Q1又はQ3正側半導体スイッチング素子と同じアームのFET_Q2又はQ4を、PWM制御周期よりデッドタイムを減じた時間だけオンさせる。その後、PWM制御周期相当の時間が経過すると、前記制限値以上の電流値が検出される前の通電パターンに復帰させるようにした。
【0028】
具体的には、制御マイコン7は、各アームに対応して個別に設けられたPWMタイマ17,18を備え、過電流が検出されると、その際にオンしているFET_Q1又はQ3が属するアームに対応するPWMタイマ17,18をリセットスタートさせて、PWMタイマ17,18により計時される制御周期に基づいて、同じアームのFET_Q2又はQ4をオンする時間を決定する。
【0029】
これにより、過電流が検出された際に、インバータ回路5においてフリーホイール電流を流す期間を、PWM制御周期に応じた一定時間で確保することができる。また、過電流が検出された際に設定するPWM制御デューティの設定を変えるだけでデッドタイムが設けられるため、所定のデッドタイムを設定しつつフリーホイール電流を流す期間を一定にする処理を、制御マイコン7内部のハードウェアロジックで実現できる。したがって、余計な割込み処理が不要となり、制御マイコン7のソフトウェア処理負担を軽減できる。
【0030】
また、制御マイコン7は、抵抗素子13により検出された電流値が制限値以上になると、検出された電流値を前記制限値に置き換えるので、過電流が検出された場合でも、モータの電流ピーク値を極力正しく検出でき、PI制御により電流ピークを制御することでモータ6による消費電力を抑制することができる。
【0031】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0032】
抵抗素子13を、正側の電源線に配置しても良い。また、抵抗素子13に替えて、電流トランスを用いても良い。
半導体スイッチング素子は、正側にPチャネルMOSFETを用いても良い。また、MOSFETに限らず、IGBTやバイポーラトランジスタを用いても良い。
PWM制御のキャリア周波数は10kHzに限ることなく、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い
【符号の説明】
【0033】
図面中、5はインバータ回路(電力変換回路)、6はモータ、7は制御マイクロコンピュータ(制御回路)、Q1〜Q4はNチャネルMOSFET(半導体スイッチング素子)、13は抵抗素子(電流検出手段)、17,18はPWMタイマ(制御周期カウンタ)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8