特許第6308545号(P6308545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308545
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】暫間補綴物の作製方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/20 20060101AFI20180402BHJP
   A61C 5/77 20170101ALI20180402BHJP
【FI】
   A61C13/20 A
   A61C5/77
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-190057(P2013-190057)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-54152(P2015-54152A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000181217
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚史
(72)【発明者】
【氏名】石塚 創
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−238854(JP,A)
【文献】 特開昭63−158215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/20
A61C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つが印象材からなる部材である複数の部材を組み合わせて鋳型を形成する工程、及び前記鋳型内でコンポジットレジンを重合硬化させる工程、を含む暫間補綴物を作製する方法において、
前記鋳型の印象材表面に触媒含有液を塗布する工程を含み、
前記触媒含有液は、第3級アミン、スルフィン酸及びその塩、有機過酸化物、ピリミジントリオン、及び有機金属化合物と有機ハロゲン化合物の組み合わせ、からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合触媒を含有することを特徴とする暫間補綴物の作製方法。
【請求項2】
前記複数の部材のうち少なくとも1つにコンポジットレジンを乗せた状態で、前記複数
の部材を組み合わせて鋳型を形成することを特徴とする請求項1に記載の暫間補綴物の作
製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野において最終補綴物を装着するまでに仮装着される暫間補綴物の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラウン,ブリッジ等の歯科用補綴物において、天然歯に近似した審美性が要求される症例の場合には、レジン前装鋳造冠,陶材焼付前装鋳造冠,レジン前装ブリッジ,陶材焼付ブリッジやオールセラミッククラウン等が用いられている。これ等の歯科用補綴物の製作は、支台歯形成を行った患者の口腔内から印象(歯牙の陰型)を採得し、さらにこの印象から樹脂や石膏等によって支台歯模型(歯牙の複製)を作製した後、かかる模型に基づいて、例えばロストワックス鋳造法により作製されている。ロストワックス法は、先ず支台歯模型の支台歯上にワックスを用いてコア部の蝋型を作製し、この蝋型を耐火埋没材中に埋没させ、埋没材が硬化した後に電気炉中に入れ加熱して蝋型を焼却させ、得られた鋳型に金属を鋳造し、この鋳造物を埋没材から掘り出した後、切削・研磨して金属製の補綴物を作製する。あるいは、金属製のコーピングを作製し、その後、得られたコーピング部に歯冠用硬質レジンを築盛・重合することによって作製されている。また、オールセラミッククラウンの場合は、耐火模型材を用いて複模型を作製し、この複模型上に陶材を築盛・焼成した後、耐火複模型を除去し、形態修正,研磨を行うことによって作製されている。
【0003】
通常これ等の作業は歯科技工士により行われ、最終補綴物を患者の口腔内に装着するまでには3日〜1週間程度の時間が必要となる。その間、形成された支台歯が生活歯の場合は食事中に食物が当たる物理的,酸味等の化学的,あるいは食物の温度による刺激を防ぐために最終補綴物を装着するまでに仮装着される暫間補綴物が歯科医師により作製されている。暫間補綴物はその他にも、咬合機能の維持や審美性の回復等重要な機能を有している。
【0004】
暫間補綴物の作製方法としては、粉液型の歯科用常温重合レジンを用い、筆に液剤を先に充分に浸み込ませ、粉剤の中に筆先を接触させることで重合反応が開始し、目的形状の硬化体を形成する筆積み法と呼ばれる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また別の作製方法として、患者の歯型と同一のスタディーモデルを製造し、支台歯形成後の患者の歯型と同一の支台歯形成モデルを製造し、上記スタディーモデルを加工して治療後の完治歯形モデルを製造し、該完治歯形モデルから注入用メス型を製造し、該注入用メス型を上記支台歯形成モデルに被せて両者間に注入用空間を形成し、かつ該注入用空間に流動性材料を注入して固化させることにより人工歯冠を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
このように、複数の部材(上記文献においては、注入用メス型及び支台歯形成モデル。以下も同様。)を組み合わせて鋳型(注入用空間)を形成し、該鋳型内で流動性材料を重合硬化させる方法によれば、筆積み作業を伴うことがないので、容易かつ短時間で暫間補綴物を作製することができる。さらに、型さえあればいつでも再度作製することができる利点もある。
【0007】
しかしこの方法は、流動性材料としてペースト状のコンポジットレジンを使用した場合に、該鋳型の印象材からなる部材(注入用メス型)の表面と接したコンポジットレジンが十分に重合硬化せず、表面に未重合層が形成されやすかった。これにより、得られる暫間補綴物の表面がベタつくことや、残留モノマーによる歯髄刺激の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−219919号公報
【特許文献2】特開平1−238854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、少なくとも1つが印象材からなる部材である複数の部材を組み合わせて鋳型を形成する工程、及び該鋳型内でコンポジットレジンを重合硬化させる工程、を含む暫間補綴物を作製する方法において、該鋳型の印象材表面と接したコンポジットレジンを十分に重合硬化させることが可能な暫間補綴物の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、該鋳型の印象材表面と接したコンポジットレジンの重合反応を促進させるため、該鋳型の印象材表面に触媒含有液を塗布する工程を入れれば、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、少なくとも1つが印象材からなる部材である複数の部材を組み合わせて鋳型を形成する工程、及び該鋳型内でコンポジットレジンを重合硬化させる工程、を含む暫間補綴物を作製する方法において、該鋳型の印象材表面に触媒含有液を塗布する工程を含み、前記触媒含有液は、第3級アミン、スルフィン酸及びその塩、有機過酸化物、ピリミジントリオン、及び有機金属化合物と有機ハロゲン化合物の組み合わせ、からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合触媒を含有する、暫間補綴物の作製方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法によれば、該鋳型の印象材表面と接したコンポジットレジンも十分に重合硬化し、ベタつきのない暫間補綴物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る暫間補綴物の作製方法について詳細に説明する。
先ず、暫間補綴物を適用する形状に成型された歯牙、即ち支台歯形成あるいは窩洞形成等が行われた歯牙を含む口腔内を再現した支台歯模型を通常の方法により作製する。支台歯模型は従来からの歯科用石膏で作製されることが好ましいが、樹脂等の重合,切削,三次元プリンティング等の方法で作製してもよい。
【0014】
この支台歯模型上に、ワックスや合成樹脂等の附形性材料を用いて目的形状の成形体を作製する。この成形体は通常、暫間補綴物として用いることはできない。
次いで印象材を用いて該成形体を含む支台歯模型の印象採得を行い、印象材からなる部材を作製する。印象材としては、歯牙の形状を正確に再現できるものであれば特に限定されないが、歯科分野で使用されている印象材が精度及び信頼性に優れていることから好ましく、中でもシリコーン印象材が特に好ましい。
尚、印象材から成る部材の作製方法は上記方法に限定されず、例えば、特許文献2に記載されているように、最初に患者の歯型と同一の作業用模型を作製し、この作業用模型を加工して目的形状の歯形模型を作製し、該歯形模型の印象を採得することにより作製してもよい。また、CAD/CAM等を利用して作製することもできる。
【0015】
次に、支台歯模型から該成形体を取り外し、この支台歯模型と該印象材からなる部材と組み合わせる。これにより、該成形体の形状が転写された鋳型が形成される。
【0016】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法においては、鋳型の内面の印象材表面に触媒含有液を塗布する。この操作により内面が重合触媒で覆われることとなる。尚、塗布方法は特に限定されず、筆等による塗布、霧吹きやスプレー等による噴射等が例示される。また、印象材表面以外の表面に塗布してもよい。
【0017】
その後、該鋳型内にコンポジットレジンを入れ、重合硬化させた後、該鋳型から取り出し、形態修正、研磨等の調整を行うことで、暫間補綴物が作製される。
【0018】
尚、暫間補綴物の作製方法は上記方法に限定されず、例えば、該印象からなる部材の鋳型となる面に触媒含有液を塗布した後、コンポジットレジンを乗せ、これを該成形体が取り外された支台歯模型に嵌め合わせ、コンポジットレジンを重合硬化させることにより暫間補綴物を作製してもよい。また、該支台歯模型の代わりに、支台歯を含む口腔内に嵌め合わせても同じ結果が得られる。
【0019】
本発明に使用される触媒含有液は、重合触媒と溶媒とを混合することにより調製される。重合触媒の配合量は、触媒含有液中に0.1〜30重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では効果が得られ難く、30重量%を超えるとコストが高くなってしまう。さらに好ましくは、5〜20重量%である。
【0020】
触媒含有液に配合される重合触媒としては、還元剤として第3級アミン、スルフィン酸及びその塩、有機過酸化物、ピリミジントリオン誘導体、及び有機金属化合物と有機ハロゲン化合物の組み合わせが挙げられる。
【0021】
触媒含有液に配合される第3級アミンとしては、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、及び、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチル−N−β−ヒドロキシアニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキプロピル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の芳香族第3級アミンが例示される。
【0022】
触媒含有液に配合されるスルフィン酸及びその塩としては、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が例示される。中でも、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0023】
スルフィン酸及びその塩を使用する場合には、系を酸性にする必要があるため酸を配合することが好ましい。この酸としては、クエン酸,コハク酸,シュウ酸,フマル酸,酒石酸,リンゴ酸,マレイン酸,エチレンジアミン四酢酸,ポリアクリル酸,アクリル酸マレイン酸共重合体,アクリル酸と不飽和二重結合を持つ有機酸との共重合体,リン酸,塩酸,硫酸,及び硝酸から選ばれる1種又は2種以上が使用できる。酸の配合量は、スルフィン酸及びその塩の配合量に対して、重量比で0.2〜1.5倍であることが好ましい。
【0024】
触媒含有液に配合される有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ペルオキソ二硫酸化合物、ペルオキソ二リン酸化合物が例示される。
【0025】
触媒含有液に配合されるピリミジントリオンとしては、1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン、1−ベンジル−5−フェニルピリミジントリオン、5−ブチルピリミジントリオン、5−フェニルピリミジントリオン、1,3−ジメチルピリミジントリオン、5−エチルピリミジントリオンが例示される。

【0026】
触媒含有液に配合される有機金属化合物と有機ハロゲン化合物の組み合わせとしては、有機金属化合物としては、アセチルアセトン銅、4−シクロヘキシル酪酸銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅、アセチルアセトンマンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸マンガン、アセチルアセトンコバルト、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトンリチウム、酢酸リチウム、アセチルアセトン亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトンニッケル、酢酸ニッケル、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンカルシウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトン鉄、ナフテン酸ナトリウム、レアアースオクトエートが例示される。
また、有機ハロゲン化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライドが例示され、これらを組み合わせて使用する。
【0027】
触媒含有液に配合される溶媒としては、重合触媒を適度に分散させる溶媒であれば特に限定されないが、水及び/または有機溶媒を挙げることができる。有機溶媒としては、エタノール、メタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、トルエン等の炭化水素類及びクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類等が例示される。中でも、水、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンは生体親和性に優れる点で好ましい。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明に係る暫間補綴物の作製方法において、コンポジットレジンとは歯科用のペースト状コンポジットレジンを指しており、これには1ペースト型及び2以上のペースト混合型のいずれも含まれる。また、流動性の低い狭義のコンポジットレジンも流動性の高い所謂フロアブルレジンのいずれも含まれる。コンポジットレジンは(メタ)アクリレート化合物及び重合触媒を含み、重合硬化することにより暫間補綴物となる。
【0029】
本発明に使用されるコンポジットレジンに配合される(メタ)アクリレート化合物は、メタクリレート若しくはアクリレートのモノマー,オリゴマー,プレポリマーであり、歯科用材料に用いる物質としては公知のものである。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート等が例示される。また、ウレタン結合を持つ(メタ)アクリレートとして、ジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオンが例示され、その他2,2’−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が例示される。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
コンポジットレジンに配合される重合触媒としては、光重合開始剤、常温重合開始剤のいずれも使用可能である。このうち光重合開始剤であれば光の照射により重合が開始されるため、コンポジットレジンを1成分とすることができる点で好ましい。常温重合開始剤を用いる場合には、2以上の成分に分割する必要がある。
【0031】
コンポジットレジンに配合される光重合開始剤としては還元剤と増感剤との組み合わせが一般に用いられる。還元剤としては、段落0020に記載した第3級アミン、スルフィン酸及びその塩、有機過酸化物、ピリミジントリオン誘導体、及び有機金属化合物と有機ハロゲン化合物の組み合わせ、から選ばれる1種または2種以上の還元剤を適宜組み合わせて使用することができる。
【0032】
増感剤としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物等が例示される。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
コンポジットレジンに配合される常温重合開始剤としては、段落0020に記載した第3級アミン、スルフィン酸及びその塩、有機過酸化物、ピリミジントリオン誘導体、及び有機金属化合物と有機ハロゲン化合物の組み合わせ、から選ばれる1種または2種以上の還元剤を適宜組み合わせて使用することができる。組み合わせの例としては、一方の成分に有機過酸化物を、もう一方の成分に芳香族第3級アミンを配合した有機過酸化物−芳香族第3級アミン系、及び、一方の成分にピリミジントリオン誘導体を、もう一方の成分に有機金属化合物と有機ハロゲン化合物を配合したピリミジントリオン誘導体−有機金属化合物−有機ハロゲン化合物系が例示される。
【0034】
本発明に使用されるコンポジットレジンには、得られる暫間補綴物の強度を向上させるため充填材が配合されることが好ましい。充填材の配合割合は、コンポジットレジン中に45〜80重量%であると、摩耗や破損の虞の少ない暫間補綴物を作製することができるので好ましい。45重量%未満では十分な強度を得ることができない虞があり、80重量%を超えると操作性が悪化する傾向がある。
【0035】
充填材としては、有機,無機,あるいは有機無機複合のいずれの充填材も使用可能である。無機充填材としては、石英粉末、アルミナ粉末,ガラス粉末,カオリン,タルク,炭酸カルシウム,バリウムアルミノシリケートガラス,酸化チタン,ホウケイ酸ガラス,コロイダルシリカ粉末,コロイダルシリカが、有機充填材としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体,架橋型ポリ(メタ)アクリ酸メチル,エチレン−酢酸ビニル共重合体等の粉末が、有機無機複合充填材としては、上記無機充填材を(メタ)アクリレート化合物で固めた後に粉砕したものが例示される。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
無機充填材は充填材と(メタ)アクリレート化合物との混合を行う前に、充填材と(メタ)アクリレート化合物の両方に反応することのできるカップリング剤を用いて処理することが好ましい。カップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等を用いることができる。あるいは無機充填材の表面をグラフト化しバインダーレジンとの結合を図ることもできる。
【0037】
シランカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエトキシ)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレノイドプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
以下に具体的に例を挙げて本発明に係る暫間補綴物の作製方法について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
プラスチックで作製された歯牙模型(下顎右側)と石膏で作製された支台歯模型を準備し、石膏模型の歯牙部分は支台歯の形状に削り、分離材(製品名:シュアセップ,株式会社ジーシー社製)を塗布し、エアーにて溶剤を蒸発させた。
次に、シリコーン印象材を用いて歯牙模型の印象を採得し、作製された鋳型について、下記の操作を行った後、鋳型の中にコンポジットレジンを注入した。尚、印象材及びコンポジットレジンは複数種類を試験した。
注入後、ただちに石膏模型に印象材を圧接し、注入開始から5分間かけてコンポジットレジンを硬化させた。尚、全ての操作は室温23±1℃、湿度50±5%下で実施した。
【0040】
<実施例1〜8>
表1に示した組成で重合触媒及び溶媒を混合し、触媒含有液を調製した。この触媒含有液を鋳型の内面に塗布した後、エアーを噴射して溶剤を蒸発させた。
<比較例1〜3>
鋳型の内面には何も塗布しなかった。
<比較例4〜6>
鋳型の内面にエアーバリアー材(製品名:グラディアエアーバリアー材,株式会社ジーシー社製)を鋳型の内面に塗布した。
【0041】
<ベタつきの評価>
硬化後のコンポジットレジンを鋳型から取り出し、表面のベタつきを触感にて評価した。結果を表1に纏めて示す。
◎:ベタつき全くなし
○:ベタつきほぼなし
×:ベタつきあり
【0042】
【表1】
【0043】
表1中の略語はそれぞれ以下の通りである。
TSNa:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
AAC:アセチルアセトン銅
DEPT:N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
LMAC:ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド
EtOH:エタノール
(印象材)
IMP3:Imprint3 heavy body (3M ESPE社製)
ASU:Aquasil Ultra Rigid (DENTSPLY社製)
(コンポジットレジン)
PT4:Protemp4 (3M ESPE社製)
LTU:Luxatemp Ultra (DMG社製)
LTP:Luxatemp Automix Plus (DMG社製)
ST3:Structur3 (VOCO社製)
TLC:Telio CS C&B (Ivoclar Vivadent社製)
【0044】
表1に示した結果より、鋳型に何も塗布しなかった場合やエアーバリアー材を塗布した場合にはベタつきがみられた。これに対し、触媒含有液を使用することにより、硬化後コンポジットレジンの表面がどのシリコーン印象材、コンポジットレジンの組み合わせでもベタつきがみられなかった。よって本発明に係る暫間補綴物の作製方法は有用である。