(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308664
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】レール清掃具を備えているドア装置
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20180402BHJP
E05F 1/16 20060101ALI20180402BHJP
E05F 3/02 20060101ALI20180402BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20180402BHJP
E06B 7/28 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
E05D15/06 119
E05F1/16 C
E05F3/02
E05F5/02 E
E05D15/06 125Z
E06B7/28 K
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-113323(P2014-113323)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227564(P2015-227564A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 倫明
【審査官】
小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3091195(JP,U)
【文献】
実開昭54−133634(JP,U)
【文献】
特開2012−102604(JP,A)
【文献】
特開2010−024701(JP,A)
【文献】
実開昭56−100689(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0040214(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/06
E05F 1/16
E05F 3/02
E05F 5/02
E06B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠に設けられたガイドレール(1)に沿って、ドアパネル(2)を開閉移動させるドア装置であって、
ドア装置は、ガイドレール(1)内を走行する走行体(5)と、ガイドレール(1)とドアパネル(2)との間に設けられてドアパネル(2)の開閉を支援するアシスト装置と、ドアパネル(2)の開閉に連動して移動することにより、ガイドレール(1)のレール部(7)を清掃するレール清掃具(38)とを備えており、
レール清掃具(38)は、ベース部(49)と、ベース部(49)に密植されるパイル塊(50)とを有するモヘアシールを清掃要素とする清掃体(47)を備えており、
アシスト装置は、ドアパネル(2)の開き移動と閉じ移動の少なくともいずれか一方を支援する移動支援構造(18)と、移動支援構造(18)の移動支援動作に抗してドアパネル(2)を緩速移動させる制動構造(19)を備えており、
移動支援構造がばね体(18)で構成され、制動構造がエアーダンパー(19)で構成されており、
エアーダンパー(19)は、走行体(5)に同行して往復移動するシリンダー本体(20)と、ピストン(22)およびピストンロッド(21)と、シリンダー本体(20)の一端に固定されるシリンダーキャップ(24)とを備えており、
シリンダーキャップ(24)に、走行体(5)用の連結枠部(41)と、レール清掃具(38)用の装着座(42)とが一体に設けられており、
走行体(5)が、ランナーボディ(10)と、同ボディ(10)に配置したランナーローラー(12)とを備えており、
走行体(5)のランナーボディ(10)を連結枠部(41)に締結することで、シリンダー本体(20)がシリンダーキャップ(24)を介して走行体(5)に連結されており、
レール清掃具(38)を装着座(42)に装着することで、清掃体(47)のパイル塊(50)が走行体(5)に隣接されており、
ドアパネル(2)の開閉移動に同行して、清掃体(47)のパイル塊(50)がレール部(7)のレール表面(7a)に付着している塵埃および異物を払拭除去することを特徴とするレール清掃具を備えているドア装置。
【請求項2】
レール清掃具(38)が、清掃具ホルダー(46)と、清掃具ホルダー(46)に固定される清掃体(47)を備えており、
清掃体(47)が清掃具ホルダー(46)を介して前記装着座(42)に固定されている請求項1に記載のレール清掃具を備えているドア装置。
【請求項3】
ガイドレール(1)が、断面コ字形の金属条材で形成されて、その開口面の前後に走行体(5)を移行案内するリブ状のレール部(7)が設けられており、
走行体(5)は、ランナーボディ(10)と、ランナーボディ(10)の前後に配置したランナーローラー(12)を備えており、ランナーローラー(12)が前記一対のレール部(7)で転動案内されており、
レール清掃具(38)を装着座(42)に装着した状態において、清掃体(47)のパイル塊(50)が前後一対のレール部(7)のレール表面(7a)に同時に密着している請求項1又は2に記載のレール清掃具を備えているドア装置。
【請求項4】
清掃具ホルダー(46)は金属薄板で形成されて、その両端に折曲げ爪(48)が一体に形成されており、
折曲げ爪(48)を装着座(42)の両端に設けた切欠(45)に係合させながら折曲げて、レール清掃具(38)が切欠(45)で位置決めされた状態で装着座(42)に固定されている請求項2に記載のレール清掃具を備えているドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸や折り戸などに設けたガイドレール用の清掃具を備えているドア装置に関する
。
【背景技術】
【0002】
この種の清掃具として、スクレーパー型の清掃装置が先に提案されている(特許文献1)。そこでは装着部を備えた縦枠と、左右一対の清掃部を備えた横枠とを備えた逆T字状のプラスチック成型品で清掃装置を構成している。縦枠の上部にはランナー支持板に係止されるフック状の脱着部が設けてあり、縦枠の上下中途部には戸車軸に係合する取付けボスが設けてある。脱着部をランナー支持板に係止し、さらに、取付けボスを戸車軸に係合することにより、清掃装置を戸車(ランナー)と一体化して同行移動させることができる。左右の清掃部にはそれぞれ半円状の清掃溝が形成してあり、この清掃溝の端縁がレールの表面に密着した状態で移行することにより、レール表面に付着した塵埃を清掃溝で掻落とすことができる。なお、戸車に装着した状態における清掃装置は、その縦枠と横枠が、片持ち支持された戸車の平坦な戸車端面に隣接している。
【0003】
スクレーパー型の清掃装置以外に、ブラシを清掃要素とする清掃装置が特許文献2に開示されている。そこでは、ローラーを支持するブラケットにブラシホルダーを固定し、このブラシホルダーにブラシ体を固定している。ブラシ体は、四角ブロック状のブラシ台に一群のブラシ毛を植設して構成してある。ブラシホルダーに固定されたブラシ体は、ローラーの転動方向の一側においてガイドレールに接触しており、ドアの開閉に伴ってレール表面に付着した粉塵や落塵を掃き落とす。ブラシ毛のガイドレールに対する接触圧を増すために、ブラシホルダーは補助ばねでガイドレールの側へ向かって移動付勢してある。同様の清掃装置は、特許文献3にも開示されており、そこでは、プラスチック製のブラシベースに豚毛などの獣毛を植設してブラシ体を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4564552号公報(段落番号0015、
図1)
【特許文献2】特開平11−62407号公報(段落番号0007、
図2、
図3)
【特許文献3】登録実用新案第3091195号公報(段落番号0015、
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、引戸を構成するドアパネルが吊車型のランナーユニットで支持してある場合には、ドアパネルを開閉するごとに、ランナーユニットのローラー周面にガイドレールの塗膜やレール表面に付着した塵埃や異物が付着する。また、引戸の使用期間が長くなるのに伴って、ローラー周面に付着した塵埃や異物が堆積し、膠着することがある。こうした状況に陥ったランナーユニットは、走行抵抗が増加するためドアを軽快に開閉することが困難になる。また、ローラー周面における異物は真円状に膠着するわけではないので、転動騒音(ゴトゴト音)を生じやすい。さらに、ドアパネルの開閉動作を支援するアシスト装置を備えている引戸の場合には、戸車の走行抵抗が増加して、アシスト装置の開閉支援力より大きくなると、開閉支援機能を発揮できなくなるおそれがある。
【0006】
特許文献1の清掃装置においては、戸車の転動方向のそれぞれに半円状の清掃溝を備えた清掃部を配置するので、ドアが開き移動するときと、ドアが閉じ移動するときのいずれの場合にも、戸車の移動に先行してレール表面の塵埃を清掃溝で掻落として清掃できる。しかし、清掃装置がプラスチック成型品で構成してあり、しかもドアの開閉時には清掃溝がレール表面に圧接した状態で擦れあうので、清掃溝が摩耗しやすく清掃効果が早期に損なわれやすい。また、清掃溝がレール表面と擦れあうときに摩擦抵抗を生じるので、その分だけ走行抵抗が増加するうえ、擦過騒音が生じるのを避けられない。
【0007】
特許文献2、3のブラシ型の清掃装置は、ブラシ体のブラシ毛をガイドレールに接触させて、レール表面に付着した粉塵や落塵を掃き落とすので、特許文献1の清掃装置に比べて、ブラシ体の摩耗に伴う清掃効果の低下はさほどでもない。しかし、ブラシ毛はわずかな外力を受けて弾性変形するので、ブラシ毛をガイドレールに強い力で密着させるのが難しく、そのため、レール表面から除去できる対象が比較的軽い塵埃や異物などに限られる。補助ばねを併用して、ブラシ体をガイドレールに押付け付勢すると、ブラシ毛の接触圧を増加して除去できる対象をある程度は拡大できるが、ブラシ毛が早期にくせ付けされて清掃効果が長続きしない。
【0008】
以上のように、従来のスクレーパー型の清掃装置は、耐久性が低く比較的短い期間で清掃効果が低下する点と、清掃部とガイドレールとの間の摩擦抵抗の分だけ走行抵抗が大きくなる点に問題があった。また、ブラシ型の清掃装置は、レール表面に付着した塵埃や異物をブラシ毛で掃き落とすので、走行抵抗は小さいものの、除去できる対象が比較的軽い塵埃や異物などに限られる点に問題があった。
【0009】
本発明の目的は、耐久性に富み、長期にわたって清掃効果を維持できるうえ、比較的軽い塵埃や異物はもちろんのこと、レール表面に密着している異物でも払拭除去できる、清掃効果に優れたレール清掃具を備えているドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明
は、開口枠に設けられたガイドレール1に沿って、ドアパネル2を開閉移動させるドア装置を対象とする。ドア装置は、ガイドレール1内を走行する走行体5と、ガイドレール1とドアパネル2との間に設けられてドアパネル2の開閉を支援するアシスト装置と、ドアパネル2の開閉に連動して移動することにより、ガイドレール1のレール部7を清掃するレール清掃具38とを備える。レール清掃具38は、ベース部49と、ベース部49に密植されるパイル塊50
とを有するモヘアシールを清掃要素とする清掃体47を備え
る。アシスト装置は、ドアパネル2の開き移動と閉じ移動の少なくともいずれか一方を支援する移動支援構造18と、移動支援構造18の移動支援動作に抗してドアパネル2を緩速移動させる制動構造19を備える。移動支援構造がばね体18で構成され、制動構造がエアーダンパー19で構成されている。エアーダンパー19は、走行体5に同行して往復移動するシリンダー本体20と、ピストン22およびピストンロッド21と、シリンダー本体20の一端に固定されるシリンダーキャップ24とを備える。シリンダーキャップ24に、走行体5用の連結枠部41と、レール清掃具38用の装着座42とが一体に設けられている。走行体5が、ランナーボディ10と、同ボディ10に配置したランナーローラー12とを備えており、走行体5のランナーボディ10を連結枠部41に締結することで、シリンダー本体20がシリンダーキャップ24を介して走行体5に連結されている。レール清掃具38を装着座42に装着することで、清掃体47のパイル塊50が走行体5に隣接されている。ドアパネル2の開閉移動に同行して、清掃体47のパイル塊50が
レール部7のレール表面7aに付着している塵埃および異物を払拭除去することを特徴とする。
【0014】
レール清掃具38は、清掃具ホルダー46と、清掃具ホルダー46に固定される清掃体47を備えている。清掃体47は清掃具ホルダー46を介して前記装着座42に固定する。
【0015】
ガイドレール1は、断面コ字形の金属条材で形成されて、その開口面の前後に走行体5を移行案内するリブ状のレール部7を設ける。走行体5は、ランナーボディ10と、ランナーボディ10の前後に配置したランナーローラー12を備えていて、ランナーローラー12が前記一対のレール部7で転動案内されている。レール清掃具38を装着座42に装着した状態においては、清掃体47のパイル塊50が前後一対のレール部7のレール表面7aに同時に密着している。
【0017】
清掃具ホルダー46は金属薄板で形成されて、その両端に折曲げ爪48を一体に形成する。折曲げ爪48を装着座42の両端に設けた切欠45に係合させながら折曲げて、レール清掃具38を切欠45で位置決めされた状態で装着座42に固定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るドア装置においては、ドアパネル2の開閉に連動して移動するドア用付属品に設けた装着座42に、ガイドレール1のレール部7を清掃するレール清掃具38を装着した。レール清掃具38の清掃体47は、ベース部49と、ベース部49に密植されるパイル塊50とを備えたモヘアシールで形成するようにした。このように、耐久性と復元力に優れているモヘアシールを清掃要素とする清掃体47によれば、スクレーパー型の清掃装置に比べて、長期にわたって清掃効果を維持できるレール清掃具38を得ることができる。また、ブラシ型の清掃装置に比べて、レール部7に付着している塵埃や異物はもちろんのこと、レール表面7aに密着している異物でも払拭除去して、清掃効果に優れたレール清掃具38を得ることができる。従って、本発明のドア装置によれば、耐久性に富み、長期にわたって清掃効果を維持できるうえ、塵埃や異物はもちろんのこと、レール表面7aに密着している異物でも払拭除去できる、清掃効果に優れたレール清掃具38を備えたドア装置を提供できる。
【0019】
ガイドレール1とドアパネル2との間にアシスト装置が設けてあるドア装置においては、アシスト装置と走行体5のいずれか一方をドア用付属品として、ドア用付属品に設けた装着座42にレール清掃具38を固定することができる。従って、ドア装置の開閉構造の違いや、アシスト装置あるいは走行体5の構造の違いなどに応じて、レール清掃具38を好適な位置に配置し、あるいは複数位置に配置して、レール清掃具38による清掃効果を向上できる。
【0020】
移動支援構造をばね体18で構成し、制動構造をエアーダンパー19で構成したアシスト装置においては、シリンダー本体20をドア用付属品として、そのシリンダーキャップ24に設けた装着座42に清掃体47を装着することができる。このように、既存の部品を利用して、その構造の一部を変更して装着座42を設けるようにすると、新たな装着部品を追加する必要もなくレール清掃具38をドア用付属品に組付けることができる。従って、レール清掃具38を付加することに伴う構造変更や、取付け部材の追加などを最小限化して、レール清掃具38を備えているドア装置を低コストで提供できる。また、既存のアシスト装置を備えているドア装置であっても、シリンダーキャップ24を交換するだけでレール清掃具38を付加してレール部7を清掃できる。
【0021】
ランナーボディ10とランナーローラー12を備えている走行体5をドア用付属品として利用し、ランナーボディ10に設けた装着座42にレール清掃具38を固定するドア装置によれば、ランナーボディ10の構造の一部を変更することにより装着座42を設けて、そこにレール清掃具38を装着することができる。従って、新たな装着部品を追加する必要もなくレール清掃具38を走行体5に組付けることができる。また、レール清掃具38を付加することに伴う構造変更や、取付け部材の追加などを最小限化して、レール清掃具38を備えているドア装置を低コストで提供できる。
【0022】
清掃具ホルダー46と、同ホルダー46に固定される清掃体47を備えているレール清掃具38においては、清掃具ホルダー46を装着座42に装着することで、清掃体47を装着座42に固定できるので、レール清掃具38のドア用付属品に対する組付けを的確にしかも簡便に行える。また、モヘアシールで形成した変形しやすい清掃体47を清掃具ホルダー46でしっかりと保持して、常に適正な状態でレール表面7aの異物や塵埃を払拭除去できる。
【0023】
走行体5の前後一対のランナーローラー12を、断面コ字形のガイドレール1の前後一対のレール部7で転動案内するドア装置においては、装着座42に装着した清掃体47のパイル塊50を、前後一対のレール部7に同時に密着させるようにした。こうしたドア装置によれば、ドアパネル2の開閉時に、1個の清掃体47のみで前後のレール部7のレール表面7aを同時に払拭清掃することができる。また、前後のレール部7に対応して清掃体47を設ける場合に比べて、清掃構造を簡素化できるので、その分だけレール清掃具38を備えているドア装置のコストを削減できる。
【0024】
シリンダーキャップ24に連結枠部41と装着座42が一体に設けてあるドア装置においては、
走行体5のランナーボディ10を連結枠部41に締結することにより、シリンダー本体20を
走行体5に連結できる。さらに、レール清掃具38を装着座42に装着することにより、レール清掃具38をシリンダー本体20に同行して移動させることができる。このように、シリンダーキャップ24に連結構造と、レール清掃具38用の装着構造を設けると、これらの構造を個別に設ける場合に比べて、連結構造および装着構造がいたずらに複雑になるのを防止でき、その分だけ開閉支援装置の全体コストを削減できる。また、レール清掃具38を装着座42に装着するだけで、清掃体47のパイル塊50を
走行体5の近傍に隣接させて、レール清掃具38で清掃できる領域をランナーローラー12の転動面の近傍にまで近づけることができる。
【0025】
金属薄板で形成した清掃具ホルダー46の両端に折曲げ爪48を一体に形成すると、折曲げ爪48を装着座42の両端に設けた切欠45に係合させながら折曲げるだけで、レール清掃具38を装着座42に固定できる。従って、レール清掃具38の装着座42に対する組付けを、より少ない手間で簡便に行える。また、折曲げ爪48を装着座42の両端の切欠45に係合させながら折曲げることにより、レール清掃具38を切欠45で位置決めした状態で装着座42に固定することができるので、レール清掃具38の装着座42に対する組付けを常に適正に行って、清掃体47による清掃効果にばらつきが生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るレール清掃具
を備えているドア装置の要部を示す一部破断正面図である。
【
図3】開閉支援装置を備えているドア装置の正面図である。
【
図5】ランナーユニットとシリンダー本体の連結構造を示す横断平面図である。
【
図6】レール清掃具の装着構造を示す分解斜視図である。
【
図7】レール清掃具
を備えているドア装置の
参考例を示す正面図である。
【
図8】レール清掃具
を備えているドア装置の
別の参考例を示す縦断側面図である。
【
図10】レール清掃具
を備えているドア装置のさらに別の
参考例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施例1)
図1ないし
図6は、本発明に係るレール清掃具を
備えているドア装置を引戸に適用した実施例を示している。なお、本発明における前後、左右、上下とは、
図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0028】
図2において符号1は開口枠の上枠部に固定したガイドレール、符号2はドアパネル、符号3は床面側に配置した振止ローラーであり、この振止ローラー3でドアパネル2の下端に設けた振止溝4を移行案内している。ドアパネル2は、その上端の左右に装着したランナーユニット(走行体)5を介してガイドレール1に吊持されており、ガイドレール1に沿って開閉移動できる。符号6はドアパネル2を開閉操作する把手である。
図4においてガイドレール1は、下向きに開口する断面がコ字状のアルミニウム条材からなり、その下開口面の前後にランナーユニット5およびローラー16を転動案内する上突リブ状のレール部7が設けてある。レール部7の上端のレール表面7aは断面半円状に形成してある。
【0029】
図1に示すように、閉じ端側のランナーユニット5は、断面コ字状のランナーボディ10と、ランナーボディ10の前後に固定したローラー軸11で回転自在に支持される前後一対のランナーローラー12と、ランナーボディ10とドアパネル2に装着したランナー台13とを連結するランナー軸14を備えている。ランナーボディ10は、前後壁と底壁を一体に備えた、上向きに開口するプレス成型品からなる。ランナーローラー12は戸車状に形成してあり、その周囲には先のレール表面7a上を転動する断面V字状のローラー溝15が形成してある(
図5参照)。明示していないが、開放端側のランナーユニット5は、プラスチック製のランナーボディの前後に左右一対のランナーローラーを配置し、ランナーボディの左右中央にランナー台に連結されるランナー軸を設けて構成してある。
【0030】
閉じ位置から任意の開放位置まで開放操作されたドアパネル2を、自動的に閉じ操作するために、ガイドレール1の内部に閉じ支援装置(アシスト装置)を設けている。
図3において閉じ支援装置は、ドアパネル2の閉じ移動を支援する移動支援構造と、移動支援構造の移動支援動作に抗してドアパネル2を緩速移動させる制動構造を備えている。移動支援構造は、ドアパネル2を閉じ操作する左右一対の定荷重ばねユニット(ばね体)18からなる。制動構造は、定荷重ばねユニット18の閉じ操作力に抗してドアパネル2の移動動作を制動して減速させ、ドアパネル2を緩やかに閉止させるエアーダンパー19からなる。アシスト装置は閉じ支援装置以外に、開放支援装置、あるいは開閉支援装置のいずれであってもよい。
【0031】
エアーダンパー19は、シリンダー本体20と、シリンダー本体20に対して進出ないしは退入するピストンロッド21およびピストン22と、シリンダー本体20内から排出される空気量を調整する速度コントローラー(図示していない)などで構成する。シリンダー本体20の閉じ端側と開放端側には、それぞれシリンダーキャップ24・25が嵌合固定してあり、閉じ端側のシリンダーキャップ24が閉じ端側のランナーユニット5に連結され、開放端側のシリンダーキャップ25にシリンダー本体20の往復移動を円滑に行うためのローラー16が装着してある。速度コントローラーは開放端側のシリンダーキャップ25の内部に組込まれており、同キャップ25の外面に定荷重ばねユニット18を支持するブラケット27が締結してある。ピストンロッド21の突端には永久磁石28と、発泡プラスチック製の緩衝体29が固定してあり、ガイドレール1の閉じ端には永久磁石28で吸着される鉄板30が固定してある。
【0032】
閉じ位置にあるドアパネル2を開放操作すると、シリンダー本体20はドアパネル2に同行して開放移動するが、ピストンロッド21は永久磁石28を介して鉄板30に吸着保持されているため、その位置に保持される。シリンダー本体20の移動に伴って、定荷重ばねユニット18のばね帯体34が引出され、同時にシリンダーキャップ25に組付けた吸気弁が開弁されて外部の空気がシリンダー本体20内へ抵抗なく流入する。ドアパネル2が開放操作されて、ピストンロッド21が限界位置まで引出されると、永久磁石28が鉄板30から分離するので、ドアパネル2を開放端まで開放することができる。開放途中にドアパネル2に加えられていた開放操作力がなくなると、定荷重ばねユニット18のばね力がシリンダー本体20を介してドアパネル2に作用するので、ドアパネル2およびシリンダー本体20は閉じ側へ移動し、永久磁石28が鉄板30に再吸着する。以後は、シリンダー本体20の移動に伴って、シリンダー本体20の閉じ方向の速度を緩速化して、ドアパネル2をゆっくりと閉じ移動できる。
【0033】
定荷重ばねユニット18は、ブラケット27で回転自在に支持したスプール33と、スプール33に巻装されるステンレス製(金属製)のばね帯体34とを備えている。この実施例では、左右の定荷重ばねユニット18から繰出した2重のばね帯体34でドアパネル2を閉じ付勢することにより、定荷重ばねユニット18のばね出力と寿命時間とを充分なものとした。スプール33は、ブラケット27に固定したスプール軸35で回転自在に軸支されており、ばね帯体34の繰出し端は、ガイドレール1の上壁に固定した平板状の連結板36に連結してある。
【0034】
上記のように閉じ支援装置を備えている引戸において、レール部7のレール表面7aに付着ないしは密着している塵埃や異物を払拭除去して、ランナーユニット5やローラー16を常に適正に走行させるために、ドアパネル2の開閉に連動して移動するドア用付属品にレール清掃具38を設けている。ドアパネル2の開閉に連動して移動するドア用付属品としては、ランナーユニット5や、閉じ端側のランナーユニット5に連結したシリンダー本体20およびローラー16などがあるが、この実施例では、シリンダー本体20をドア用付属品として、その閉じ端側に固定されるシリンダーキャップ24にレール清掃具38を設けるようにした。
【0035】
図5において閉じ端側のシリンダーキャップ24は、シリンダー本体20の内部に固定されるキャップ基部39と、シリンダー本体20の端部から露出するガイドボス40と、ガイドボス40に連続するランナーユニット5用の連結枠部41と、ガイドボス40の下側に形成される装着座42を一体に備えたプラスチック成型品からなる。キャップ基部39は、シリンダー本体20の端部内面に嵌合固定されて、シリンダー筒壁を内向きにかしめ処理することによりシリンダー本体20と一体化される。連結枠部41は、前後壁と底壁を備えた上向きに開口する断面コ字状に形成してある。連結枠部41の内面にランナーユニット5のランナーボディ10を接合した状態で、連結枠部41の外面側からねじ込んだ3個のビス43を、ランナーボディ10の前後壁および底壁にねじ込むことにより、連結枠部41がランナーユニット5と連結してある。つまり、ランナーユニット5のランナーボディ10を連結枠部41に締結することにより、シリンダー本体20がシリンダーキャップ24を介してランナーユニット5と一体化してある。
図5に示すようにピストンロッド21は、ランナーボディ10および連結枠部41の前後壁の間の空間を通って、ガイドレール1の閉じ端側へ延びている。
【0036】
図1に示すように、装着座42は下向きに開口する断面コ字状の枠体からなり、ガイドボス40の下部に連続する状態で形成されて、その前後端の左右中央に位置決め用の切欠45が凹み形成してある。装着座42の前後長さは、レール部7の前後方向の対向隙間より大きく、ガイドレール1の前後壁の対向間隔より小さく設定してある。
図4において符号60は補強リブである。レール清掃具38は、装着座42の下面に固定される清掃具ホルダー46と、同ホルダー46の下面に接着固定される清掃体47とで構成する。清掃具ホルダー46は、アルミニウム薄板を打抜いて形成した帯状材からなり、長手方向両端に折曲げ爪48が一体に形成してある。
【0037】
清掃体47は、清掃具ホルダー46に両面テープで接着固定されるベース部49と、ベース部49に密植されるパイル塊50とを備えた、市販品のモヘアシールで形成されている。ベース部49の幅寸法は6mm、ベース部49を含むパイル塊50の高さ寸法は6mmとして、モヘアシールの縦横比が1対1になるようにした。清掃体47が固定された清掃具ホルダー46を、
図4に示すように装着座42の下面にあてがい、折曲げ爪48を先の切欠45に係合させながら上向きに折返すことで、レール清掃具38を位置決めした状態でシリンダーキャップ24と一体化できる。装着座42に固定された清掃具ホルダー46の折曲げ爪48は切欠45の左右内面で受止められるので、清掃体47が摺動抵抗を受けて左右にぐらつくのを規制できる。清掃体47を交換する場合には、折返された折曲げ爪48をまっすぐに伸ばすだけで、清掃体47を装着座42から簡単に取外すことができるので、清掃体47の交換をより少ない手間で簡便に行える。装着座42に装着した状態のレール清掃具38は、ランナーユニット5の開放端側に隣接する状態で、ガイドレール1の下開口を前後に跨いでおり、清掃体47のパイル塊50は前後のレール部7のレール表面7aに同時に密着している。モヘアシールの縦横比は1対1である必要はなく、レール構造の違いなどに応じて適宜変更するとよい。
【0038】
図5において、ランナーボディ10の底壁には、ドアパネル2の前後位置を調整するための前後調整機構が設けてある。前後調整機構は、ランナーボディ10の底壁に連結されて支軸52を中心にして前後揺動できる調整アーム53と、調整アーム53を調整範囲内の任意の位置で固定する調整ねじ54を備えている。調整アーム53の右端には、ランナー軸14に係合して同軸14を前後操作する操作部55が設けてある。ランナーボディ10の底壁には、調整ねじ54の前後移動を許す調整穴56と、ランナー軸14の前後移動を許す逃げ穴57がそれぞれ長穴状に形成してある。
【0039】
以上のように構成したドア装置によれば、ドアパネル2を開閉するごとに、レール表面7aに付着している塵埃や異物をレール清掃具38のパイル塊50で払拭除去して、レール表面7aを適正な状態に維持できる。また、レール表面7aに異物が密着していたとしても、ブラシ毛に比べて高密度に植設されたパイル塊50で密着した異物を繰返し払拭して、レール表面7aから除去することができる。従って、ブラシ毛を清掃要素にして構成した清掃具に比べて、レール清掃具38の清掃効果を大幅に向上できる。
【0040】
また、清掃具ホルダー46を装着座42に組付けた状態において、レール清掃具38のパイル塊50が前後のレール部7のレール表面7aに同時に密着するので、個々のランナーローラー12に対応して複数のレール清掃具38を設ける必要がなく、その分だけレール清掃構造を簡素化して低コスト化できる。また、閉じ端側のシリンダーキャップ24に連結枠部41と装着座42を集約して形成し、ランナーユニット5を連結枠部41に連結し、レール清掃具38を装着座42に固定するので、これらの構造を個別に設ける場合に比べて、連結構造および装着構造がいたずらに複雑になるのを防止でき、その分だけ開閉支援装置の全体コストを削減できる。
【0041】
モヘアシールは、従来からアルミニウムサッシュと窓、あるいは網戸との間の隙間を塞ぐ隙間封止用のシール材として多用されており、接触相手の形状にフィットしやすいにも拘らず、パイル塊50がしなやかであるため窓や網戸に対する摩擦抵抗が小さいこと、復元力に優れていて水や摩耗にも強く、耐久性に優れているなどの特性を備えている。従って、モヘアシールを清掃要素にして清掃体47を構成すると、ブラシ毛を清掃要素にして構成した清掃具に比べて、耐久性に富み、長期にわたって清掃効果を維持できるレール清掃具38を得ることができる。また、モヘアシールを清掃要素とすることにより、レール表面7aに付着した塵埃や異物はもちろんのこと、レール表面7aに密着している異物でも払拭除去することができるので、清掃効果に優れたレール清掃具38が得られる。
【0042】
ピストンロッド21の進退領域より下方の空きスペースを利用してシリンダーキャップ24に装着座42を設け、その下面側に清掃体47を固定するので、清掃体47を配置するための空間を別途確保する必要がなく、従って、レール清掃具38を付加することに伴う構造変更や、取付け部材の追加などを最小限化できる。上記の実施例においては、従来のシリンダーキャップの成型用金型の一部を変更することで、装着座42を一体に成型したので、装着座42を備えたシリンダーキャップ24をさらに低コストで製造することができる。なお、上記の実施例におけるレール清掃具38は、開放端側のランナーユニット5のランナーボディにも装着することができ、その場合には、閉じ端側のランナーユニット5の開閉領域と、開放端側のランナーユニット5の開閉領域にわたって、レール表面7aを一対のレール清掃具38で払拭清掃できる。
【0043】
図7はレール清掃具38を備えているドア装置の
参考例を示す。そこでは、ドアパネル2が左右一対のランナーユニット(走行体)5で吊持してある場合を示している。このドア装置では、例えばドアパネル2の閉じ端に設けたランナーユニット5をドア用付属品として、そのランナーボディ10にレール清掃具38を装着するようにした。詳しくは、ランナーボディ10の開放端側の端部に支持腕61を突設し、その下面に装着座42を形成してレール清掃具38を支持腕61の下面側に装着固定した。清掃体47は、上記の実施例と同様に、清掃具ホルダー46に接着固定されるベース部49と、ベース部49に密植されるパイル塊50とを備えたモヘアシールで形成してある。ランナーユニット5は、ランナーボディ10の前後それぞれに左右一対のランナーローラー12が配置してあり、ランナーボディ10の中央部にランナー軸14が設けてある。この
参考例におけるガイドレール1は断面C字状の条材で形成されて、その下開口の前後に一対のレール部7が形成してある。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の
参考例においても同じとする。
【0044】
上記のように、ランナーユニット5をドア用付属品として利用し、そのランナーボディ10に設けた装着座42にレール清掃具38を装着すると、ドアパネル2を開閉するごとに、レール表面7aに付着している塵埃や異物をレール清掃具38のパイル塊50で払拭除去することができる。また、ランナーボディ10の構造の一部を変更することにより装着座42を設けて、そこにレール清掃具38を装着することができるので、新たな装着部品を追加する必要もなくレール清掃具38をランナーユニット5に組付けることができる。従って、レール清掃具38を付加することに伴う構造変更や、取付け部材の追加などを最小限化して、レール清掃具38を備えているドア装置を低コストで提供できる。
【0045】
図8および
図9はレール清掃具38を備えているドア装置のさらに別の
参考例を示す。そこでは、ガイドレール1を断面J字状の金属条材で形成し、レール下壁の突端に上向きのレール部7を設けて、ランナーユニット5をレール部7に吊掛けるようにした。ランナーユニット5は、L字状に折り曲げられたブラケット62を備えており、このブラケット62のガイドレール1との対向面の側にランナーローラー12を配置し、同ローラー12をローラー軸11で回転自在に軸支している。また、ランナーローラー12に隣接する状態で装着座42をブラケット62に固定し、その下面に清掃具ホルダー46および清掃体47を装着した。装着座42は、清掃具ホルダー46を支持する断面C字状の本体部63と、本体部63の上壁に連続して上向きに折曲げられた締結壁64とを一体に備えている。清掃具ホルダー46は、板状のプラスチック成型品からなり、その一端に抜止爪を備えた弾性腕65が設けられ、他端にストッパー片66が設けてある。弾性腕65を弾性変形させながら、清掃具ホルダー46を装着座42の本体部63に差込み装着することにより、レール清掃具38を装着座42に固定することができる。この
参考例においては、ブラケット62をドア用付属品として利用し、独立した部品からなる装着座42をブラケット62に締結固定した。
【0046】
図10はレール清掃具38を備えているドア装置のさらに別の
参考例を示す。この
参考例におけるガイドレール1は、断面がC字状のアルミニウム条材からなり、下向きのレール開口の前後に水平の平坦なレール部7を設け、レールの前壁および後壁とレール部7との間に塵埃を受止める塵受け溝67を凹み形成した。ランナーユニット5は、
図7で説明したランナーユニット5と同様に、ランナーボディ10の前後それぞれに左右一対のランナーローラー12を設けて構成し、ランナーボディ10に設けた装着座42にレール清掃具38を装着した。この
参考例におけるランナーローラー12の周面は、平坦なレール表面7aに対応して円弧面状に形成してある。レール表面7aに付着している塵埃や異物は、清掃体47のパイル塊50で払拭されて塵受け溝67に排出される。
【0047】
上記の実施例では、ドアパネル2が吊車型のランナーユニット5で支持してある場合について説明したが、その必要はなく、走行体はローラーユニットや、ドアパネル2の下端に設けられる戸車などであってもよい。レール清掃具38は、個々のランナーローラー12に対応して設けてあってもよい。ドア装置は引戸以外に折戸であってもよい。また、上記の実施例では、折曲げ爪48を折曲げて清掃具ホルダー46を装着座42の下面に固定したがその必要はなく、ねじやリベットなどの締結部材を使用して、あるいは接着剤を使用して清掃具ホルダー46を装着座42に固定することができる。また、装着座42に設けた溶着ピンを清掃具ホルダー46のピン穴に係合したのち、溶着ピンの突端を熱変形させて清掃具ホルダー46を装着座42に固定することができる。
【0048】
移動支援構造18は、定荷重ばねユニットである必要はなく、引張りコイルばねや圧縮コイルばねなどのばね体であってもよい。また、制動構造19は、エアーダンパー以外にオイルダンパーやギヤポンプ式の油圧ブレーキ、あるいはロータリーダンパーなどであってもよい。移動支援構造は、開口枠の閉じ端ないし開放端へ向かって下り傾斜する状態で配置したガイドレール1と、ガイドレール1上を傾斜下端へ向かって転動する走行体5で構成することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ガイドレール
2 ドアパネル
5 ランナーユニット(走行体)
18 定荷重ばねユニット(移動支援構造)
19 エアーダンパー(制動構造)
20 シリンダー本体
24 シリンダーキャップ
38 レール清掃具
41 連結枠部
42 装着座
46 清掃具ホルダー
47 清掃体
49 ベース部
50 パイル塊