特許第6308675号(P6308675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308675
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】紙幣処理機
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20180402BHJP
   B65H 1/02 20060101ALI20180402BHJP
   B65H 3/56 20060101ALI20180402BHJP
   B65H 3/54 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   G07D9/00 403C
   B65H1/02 A
   B65H3/56 330S
   B65H3/54 310Z
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-231572(P2014-231572)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-95685(P2016-95685A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】島田 健一
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−039393(JP,A)
【文献】 特開2007−094665(JP,A)
【文献】 特開2009−116463(JP,A)
【文献】 特開2003−281601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
B65H 1/02
B65H 3/54
B65H 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣が長辺を上端および下端とする姿勢で上方から上端開口部を介して挿入される入金部と、
該入金部に挿入され下端縁部が繰出支持部に支持された状態の紙幣を側方に繰り出す繰出機構と、を有し、
前記入金部は、
前記上端開口部を介して挿入された紙幣の下端縁部を前記繰出支持部よりも上方で支持して当該紙幣を前記上端開口部よりも上方に突出させる進退可能なストッパ部材と、
該ストッパ部材に支持された紙幣を厚さ方向両側から挟持して下方に引き込んで前記繰出支持部に受け渡す引込機構と、を備え、
前記ストッパ部材は、前記引込機構による紙幣の引き込み動作に連動して退避することになり、
前記引込機構は、
回転することにより回転中心から離れた端部が下降しつつ紙幣を厚さ方向一側から押圧するレバー部材と、
紙幣の厚さ方向他側にあって前記レバー部材で押圧された紙幣を該レバー部材とで挟持する回転可能な引込ローラと、を有し、
前記ストッパ部材は、回転する前記レバー部材により押圧されて退避することを特徴とする紙幣処理機。
【請求項2】
紙幣が長辺を上端および下端とする姿勢で上方から上端開口部を介して挿入される入金部と、
該入金部に挿入され下端縁部が繰出支持部に支持された状態の紙幣を側方に繰り出す繰出機構と、を有し、
前記入金部は、
前記上端開口部を介して挿入された紙幣の下端縁部を前記繰出支持部よりも上方で支持して当該紙幣を前記上端開口部よりも上方に突出させる進退可能なストッパ部材と、
該ストッパ部材に支持された紙幣を厚さ方向両側から挟持して下方に引き込んで前記繰出支持部に受け渡す引込機構と、を備え、
前記ストッパ部材は、前記引込機構による紙幣の引き込み動作に連動して退避することになり、
前記引込機構は、
回転することにより回転中心から離れた端部が下降しつつ紙幣を厚さ方向一側から押圧するレバー部材と、
紙幣の厚さ方向他側にあって前記レバー部材で押圧された紙幣を該レバー部材とで挟持する回転可能な引込ローラと、を有し、
前記ストッパ部材と前記レバー部材とが同軸上に配置されていることを特徴とする紙幣処理機。
【請求項3】
紙幣が長辺を上端および下端とする姿勢で上方から上端開口部を介して挿入される入金部と、
該入金部に挿入され下端縁部が繰出支持部に支持された状態の紙幣を側方に繰り出す繰出機構と、を有し、
前記入金部は、
前記上端開口部を介して挿入された紙幣の下端縁部を前記繰出支持部よりも上方で支持して当該紙幣を前記上端開口部よりも上方に突出させる進退可能なストッパ部材と、
該ストッパ部材に支持された紙幣を厚さ方向両側から挟持して下方に引き込んで前記繰出支持部に受け渡す引込機構と、を備え、
前記ストッパ部材は、前記引込機構による紙幣の引き込み動作に連動して退避することになり、
前記引込機構は、
回転することにより回転中心から離れた端部が下降しつつ紙幣を厚さ方向一側から押圧するレバー部材と、
紙幣の厚さ方向他側にあって前記レバー部材で押圧された紙幣を該レバー部材とで挟持する回転可能な引込ローラと、を有し、
前記引込機構は、前記レバー部材が前記引込ローラとで紙幣を挟持する位置で前記レバー部材を一旦停止させた後に、前記レバー部材を再回転させることを特徴とする紙幣処理機。
【請求項4】
前記ストッパ部材と前記レバー部材とが同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理機。
【請求項5】
前記引込機構は、前記レバー部材が前記引込ローラとで紙幣を挟持する位置で前記レバー部材を一旦停止させた後に、前記レバー部材を再回転させることを特徴とする請求項1,2,4のいずれか一項記載の紙幣処理機。
【請求項6】
前記入金部には、前記上端開口部を介して挿入された紙幣を検知する検知手段が設けられており、
該検知手段による紙幣の検知に基づいて前記引込機構の前記引き込み動作を開始させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の紙幣処理機。
【請求項7】
前記上端開口部を介して前記入金部に挿入された紙幣の下端縁部を前記ストッパ部材で支持した後、前記引込機構による前記引き込み動作を行う第1の設定と、
前記ストッパ部材を予め退避させるとともに前記引込機構による前記引き込み動作を行わずに前記上端開口部を介して前記入金部に挿入された紙幣の下端縁部を前記繰出支持部に直接支持する第2の設定と、が切り替え可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の紙幣処理機。
【請求項8】
動作モード毎に前記第1の設定および前記第2の設定のうちのいずれか一方が選択設定されていることを特徴とする請求項7記載の紙幣処理機。
【請求項9】
前記入金部は、前記上端開口部を開閉可能なシャッタを備えており、
前記繰出機構は、前記繰出支持部に下端縁部が支持された紙幣を厚さ方向一側から押圧する進退可能なビルプレスと、紙幣の厚さ方向他側にあって前記ビルプレスで押圧された紙幣を側方に蹴り出す蹴出ローラと、を備えていて、
前記ビルプレスが前記シャッタの閉作動と連動して前記蹴出ローラ側に移動することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項記載の紙幣処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣処理機において挿入部にセットされた集積紙幣を集積状態のまま一括して機内に取り込むものがある。この種の紙幣処理機は、集積紙幣が上下に集積された姿勢でセットされることになり、このようにセットされた紙幣を集積状態のまま水平方向に移動させて機内に取り込むようになっている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−222623号公報
【特許文献2】特開平7−315612号公報
【特許文献3】特許第3751519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紙幣処理機においては、一枚あるいは複数枚の紙幣が長辺を上端および下端とする姿勢で上方から上端開口部を介して入金部に挿入されるものがある。このような紙幣処理機では、操作者が紙幣を入金部に挿入すると、挿入された紙幣は、上端開口部よりも下側まで進入することになる。このため、操作者は紙幣を入金部に挿入し手を離して落下させることになり、確実に入れたというセット感が得られない。また、セット状態を目視で確認することができず、不安に感じてしまう。
【0005】
したがって、本発明は、操作者が安心感をもって使用可能な紙幣処理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1〜3に係る発明は、紙幣が長辺を上端および下端とする姿勢で上方から上端開口部を介して挿入される入金部と、該入金部に挿入され下端縁部が繰出支持部に支持された状態の紙幣を側方に繰り出す繰出機構と、を有し、前記入金部は、前記上端開口部を介して挿入された紙幣の下端縁部を前記繰出支持部よりも上方で支持して当該紙幣を前記上端開口部よりも上方に突出させる進退可能なストッパ部材と、該ストッパ部材に支持された紙幣を厚さ方向両側から挟持して下方に引き込んで前記繰出支持部に受け渡す引込機構と、を備え、前記ストッパ部材は、前記引込機構による紙幣の引き込み動作に連動して退避することを特徴とする。
【0007】
請求項1〜3に係る発明は、前記引込機構は、回転することにより回転中心から離れた端部が下降しつつ紙幣を厚さ方向一側から押圧するレバー部材と、紙幣の厚さ方向他側にあって前記レバー部材で押圧された紙幣を該レバー部材とで挟持する回転可能な引込ローラと、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項に係る発明は、前記ストッパ部材は、回転する前記レバー部材により押圧されて退避することを特徴とする。
【0009】
請求項に係る発明は、前記ストッパ部材と前記レバー部材とが同軸上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項に係る発明は、前記引込機構は、前記レバー部材が前記引込ローラとで紙幣を挟持する位置で前記レバー部材を一旦停止させた後に、前記レバー部材を再回転させることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ストッパ部材と前記レバー部材とが同軸上に配置されていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1,2,4のいずれか一項に係る発明において、前記引込機構は、前記レバー部材が前記引込ローラとで紙幣を挟持する位置で前記レバー部材を一旦停止させた後に、前記レバー部材を再回転させることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に係る発明において、前記入金部には、前記上端開口部を介して挿入された紙幣を検知する検知手段が設けられており、該検知手段による紙幣の検知に基づいて前記引込機構の前記引き込み動作を開始させることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に係る発明において、前記上端開口部を介して前記入金部に挿入された紙幣の下端縁部を前記ストッパ部材で支持した後、前記引込機構による前記引き込み動作を行う第1の設定と、前記ストッパ部材を予め退避させるとともに前記引込機構による前記引き込み動作を行わずに前記上端開口部を介して前記入金部に挿入された紙幣の下端縁部を前記繰出支持部に直接支持する第2の設定と、が切り替え可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において、動作モード毎に前記第1の設定および前記第2の設定のうちのいずれか一方が選択設定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に係る発明において、前記入金部は、前記上端開口部を開閉可能なシャッタを備えており、前記繰出機構は、前記繰出支持部に下端縁部が支持された紙幣を厚さ方向一側から押圧する進退可能なビルプレスと、紙幣の厚さ方向他側にあって前記ビルプレスで押圧された紙幣を側方に蹴り出す蹴出ローラと、を備えていて、前記ビルプレスが前記シャッタの閉作動と連動して前記蹴出ローラ側に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜3に係る発明によれば、入金部に、紙幣を長辺を上端および下端とする姿勢で上方から上端開口部を介して挿入すると、ストッパ部材が紙幣を上端開口部よりも上方に突出させる状態で支持する。よって、操作者は、入金部に紙幣を挿入した際に底を感じることができて、確実に入れたというセット感が得られる。また、紙幣のセット状態を目視で確認することができる。そして、このようにストッパ部材に支持された紙幣を引込機構が厚さ方向両側から挟持して下方に引き込んで、繰出機構による繰り出しが行われる際に紙幣の下端縁部を支持する繰出支持部に受け渡す。したがって、操作者が安心感をもって使用可能となる。
【0016】
請求項1〜3に係る発明によれば、引込機構は、レバー部材が回転することにより回転中心から離れた端部を下降させてこの端部で紙幣を厚さ方向一側から押圧すると、紙幣の厚さ方向他側にある引込ローラが紙幣をレバー部材とで挟持しレバー部材とともに回転して引き込む。引込機構は、このように紙幣を引き込んで、繰出機構による繰り出しが行われる際に紙幣の下端縁部を支持する繰出支持部に受け渡す。これにより、簡素な構造で紙幣を引き込むことができる。
【0017】
請求項に係る発明によれば、ストッパ部材が、回転するレバー部材により押圧されて退避するため、ストッパ部材およびレバー部材用の駆動源を含む駆動系部品を共用化でき、駆動系部品の小型化および低コスト化が図れる。
【0018】
請求項2,4に係る発明によれば、ストッパ部材とレバー部材とが同軸上に配置されているため、ストッパ部材およびレバー部材用の駆動系部品のさらなる小型化および低コスト化が図れる。
【0019】
請求項3,5に係る発明によれば、引込機構は、レバー部材が引込ローラとで紙幣を挟持する位置でレバー部材を一旦停止させた後に、レバー部材を再回転させるため、紙幣の挟持および引き込みの動きにメリハリをつけることができる。したがって、操作者がさらに安心感をもって使用可能となる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、入金部に上端開口部を介して紙幣が挿入されると、検知手段が紙幣を検知し、この検知に基づいて引込機構の引き込み動作が開始されることになる。よって、入金部に紙幣を挿入すれば、自動的に引き込み動作が行われることになるため、引き込み動作を開始させるためだけの操作が不要になる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、第1の設定では、上端開口部を介して入金部に挿入された紙幣の下端縁部をストッパ部材で支持した後、引込機構による引き込み動作を行うことになる。第2の設定では、ストッパ部材を予め退避させるとともに引込機構による引き込み動作を行わずに上端開口部を介して入金部に挿入された紙幣の下端縁部を繰出支持部に直接支持することになる。したがって、操作者の要望や動作モードに応じて設定を切り替えることができる。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、動作モード毎に第1の設定および第2の設定のうちのいずれか一方が選択設定されているため、使い勝手性を向上させることができる。
【0023】
請求項9に係る発明によれば、入金部の上端開口部を開閉可能なシャッタと、繰出支持部に下端縁部が支持された紙幣を厚さ方向一側から蹴出ローラに向け押圧するビルプレスとが連動する。よって、シャッタおよびビルプレスの駆動源を含む駆動系部品の共用化が図れ、駆動系部品の小型化および低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機を示す斜視図である。
図2】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の内部構成を概略的に示す平面図である。
図3】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の入金部を示す側面図である。
図4】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の引込機構の一部を示す斜視図である。
図5】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の後壁部の一部を示す斜視図である。
図6】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の引込機構の動作を示す側面図であって、(a)は待機状態を、(b)は引き込み動作の初期の状態、(c)は紙幣を挟持した状態を示すものである。
図7】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の引込機構の動作を示す側面図であって、(a)は引き込み動作の終期の状態、(b)は引き込み動作の終了状態を示すものである。
図8】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の入金部の上部の断面図である。
図9】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の入金部の後壁部を示す斜視図である。
図10】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の繰出機構の動作を示す側断面図であって、(a)は待機状態を、(b)は繰り出し準備動作の初期の状態を示すものである。
図11】本発明に係る一実施形態の紙幣処理機の繰出機構の動作を示す側断面図であって、(a)は繰り出し準備動作の終了状態を、(b)は繰り出し準備戻り動作の途中の状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る一実施形態の紙幣処理機を図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の紙幣処理機11は例えばPOSレジに図示略の硬貨処理機とともに接続されて売上金の入金および釣銭の出金等を行うものであり、図1に示すように、略直方体の外観形状となっている。この紙幣処理機11は、最も短い辺部を高さ方向に配し、次に短い中間長さの辺部を幅方向(左右方向)に配し、最も長い辺部を奥行方向(前後方向)に配して設置され使用される。なお、紙幣処理機11の奥行方向を機体前後方向とし、その操作者側を機体前側、操作者とは反対側を機体後側とする。また、操作者から見て左右方向を機体左右方向とし、操作者から見て左側を機体左側、操作者から見て右側を機体右側とする。
【0026】
紙幣処理機11には、機体前側の前面12の近傍に入金部15が設けられている。入金部15には、一枚あるいは集積状態の紙幣Bが機外から上端開口部15aを介して挿入される。また、この入金部15の機体後側に隣り合って、機内からの紙幣Bが上端開口部16aから取り出し可能に突出される出金部16が設けられている。
【0027】
紙幣処理機11の内部には、図2に示すように、機体前側から順に、入金部15、出金部16、紙幣Bを収納可能な着脱式の回収庫18、部品配置スペース19、紙幣Bを収納するとともに収納した紙幣Bを出金部16に出金させる複数具体的には三つの着脱不可な還流庫20、還流庫21、還流庫22、出金リジェクト紙幣を収納する着脱不可な出金リジェクト庫23が設けられている。回収庫18は還流庫20〜22からの紙幣Bを収納可能となっている。
【0028】
入金部15、出金部16、回収庫18、還流庫20、還流庫21、還流庫22および出金リジェクト庫23は、いずれも機体左右方向に長い横長の形状をなしており、すべて、長辺が上端および下端で機体左右方向に沿う姿勢の紙幣Bを受け入れるようになっている。言い換えれば、これらの入金部15、出金部16、回収庫18、還流庫20〜22および出金リジェクト庫23は、受け入れた紙幣Bの厚さ方向が同方向となるようにしてこの方向(機体前後方向と一致)に並設されている。
【0029】
上記した入金部15、出金部16、回収庫18、還流庫20〜22および出金リジェクト庫23は、紙幣処理機11の内部の機体左右方向における一側(具体的には機体右側)に寄せられて設けられており、これにより紙幣処理機11の内部の機体左右方向逆側(具体的には機体左側)にはスペースが形成されている。このスペースに、これら入金部15、出金部16、回収庫18、還流庫20〜22および出金リジェクト庫23を接続させて紙幣Bのやり取りを行う搬送部27が配置されている。なお、この搬送部27も紙幣Bを常に長辺が上端および下端となる姿勢で搬送する。
【0030】
搬送部27は、最も前面12側の入金部15と最も前面12とは反対側の出金リジェクト庫23とを結ぶ主搬送路28と、主搬送路28の出金部16の近傍から分岐して出金部16に接続される分岐搬送路29と、主搬送路28の回収庫18の近傍から分岐して回収庫18に接続される分岐搬送路30と、主搬送路28の還流庫20の近傍から分岐して還流庫20に接続される分岐搬送路32と、主搬送路28の還流庫21の近傍から分岐して還流庫21に接続される分岐搬送路33と、主搬送路28の還流庫22の近傍から分岐して還流庫22に接続される分岐搬送路34と、を有している。
【0031】
主搬送路28は、入金部15の前面12側と、出金リジェクト庫23の前面12側とに接続されている。分岐搬送路29は出金部16の前面12側に、分岐搬送路30は回収庫18の前面12とは反対側に、分岐搬送路32は還流庫20の前面12とは反対側に、分岐搬送路33は還流庫21の前面12とは反対側に、分岐搬送路34は還流庫22の前面12とは反対側に、それぞれ接続されている。
【0032】
また、搬送部27は、主搬送路28を介して還流庫20〜22側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路29に案内して出金部16に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部29Gと、分岐搬送路29の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ29Sとを有している。分岐搬送路29は、出金部16に向けて回転して紙幣Bを出金部16に送り込むローラ対29Rを有している。
【0033】
また、搬送部27は、主搬送路28を介して還流庫20〜22側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路30に案内して回収庫18に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部30Gと、分岐搬送路30の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ30Sとを有している。分岐搬送路30は、回収庫18に向けて回転して紙幣Bを回収庫18に送り込むローラ対30Rを有している。
【0034】
また、搬送部27は、主搬送路28を介して入金部15側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路32に案内して還流庫20に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部32Gと、分岐搬送路32の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ32Sとを有している。分岐搬送路32は、還流庫20に向けて回転して紙幣Bを還流庫20に送り込むローラ32Ra,32Rbを有している。還流庫20には、ローラ32Ra,32Rbに向けて紙幣Bを蹴り出す蹴出ローラ20Rが設けられている。一方のローラ32Raは、還流庫20から紙幣Bを繰り出す際に回転し、他方のローラ32Rbは、還流庫20から紙幣Bを繰り出す際には停止して紙幣Bを一枚ずつに分離する。
【0035】
また、搬送部27は、主搬送路28を介して入金部15側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路33に案内して還流庫21に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部33Gと、分岐搬送路33の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ33Sとを有している。分岐搬送路33は、還流庫21に向けて回転して紙幣Bを還流庫21に送り込むローラ33Ra,33Rbを有している。還流庫21には、ローラ33Ra,33Rbに向けて紙幣Bを蹴り出す蹴出ローラ21Rが設けられている。一方のローラ33Raは、還流庫21から紙幣Bを繰り出す際に回転し、他方のローラ33Rbは、還流庫21から紙幣Bを繰り出す際には停止して紙幣Bを一枚ずつに分離する。
【0036】
また、搬送部27は、主搬送路28を介して入金部15側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路34に案内して還流庫22に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部34Gと、分岐搬送路34の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ34Sとを有している。分岐搬送路34は、還流庫22に向けて回転して紙幣Bを還流庫22に送り込むローラ34Ra,34Rbを有している。還流庫22には、ローラ34Ra,34Rbに向けて紙幣Bを蹴り出す蹴出ローラ22Rが設けられている。一方のローラ34Raは、還流庫22から紙幣Bを繰り出す際に回転し、他方のローラ34Rbは、還流庫22から紙幣Bを繰り出す際には停止して紙幣Bを一枚ずつに分離する。
【0037】
入金部15は、主搬送路28に向けて紙幣Bを蹴り出す蹴出ローラ15Raと、蹴出ローラ15Raで蹴り出された紙幣Bを主搬送路28に繰り出す繰出ローラ15Rbと、繰出ローラ15Rbで繰り出される紙幣Bを、停止することにより一枚ずつに分離する分離ローラ15Rcとを有している。入金部15には、挿入された紙幣Bを検知する紙幣検知センサ15S(検知手段)が設けられている。蹴出ローラ15Ra、繰出ローラ15Rbおよび分離ローラ15Rcは、入金部15に挿入された紙幣Bを機体左右方向一側(機体左側)の側方にある主搬送路28に向けて繰り出す繰出機構38を構成している。
【0038】
主搬送路28には、分岐搬送路29,30間に紙幣Bを識別する識別部40が設けられている。主搬送路28には、入金部15の繰出ローラ15Rbおよび分離ローラ15Rcと分岐搬送路29との間に搬送ローラ対R1が、分岐搬送路29と識別部40との間に搬送ローラ対R2が、識別部40と分岐搬送路30との間に搬送ローラ対R3が、分岐搬送路30,32間に、搬送ローラ対R4、搬送ローラ対R5および搬送ローラ対R6が、分岐搬送路32,33間に搬送ローラ対R7が、分岐搬送路33,34間に搬送ローラ対R8が、分岐搬送路34と出金リジェクト庫23との間に搬送ローラ対R9および搬送ローラ対R10が、それぞれ設けられている。搬送ローラ対R10は、出金リジェクト庫23に紙幣Bを送り込む。
【0039】
主搬送路28には、入金部15の繰出ローラ15Rbおよび分離ローラ15Rcと搬送ローラ対R1との間に、紙幣Bを検知する紙幣検知センサS1が、搬送ローラ対R9と搬送ローラ対R10との間に、紙幣Bを検知する紙幣検知センサS2が設けられている。
【0040】
搬送部27には、主搬送路28の搬送ローラ対R5および搬送ローラ対R6の間に、紙幣Bを検知するとともに紙幣Bの重送を検知する重送検知センサS3が、主搬送路28の分岐搬送路32と搬送ローラ対R7との間に、同様の重送検知センサS4が、主搬送路28の分岐搬送路33と搬送ローラ対R8との間に、同様の重送検知センサS5が、それぞれ設けられている。
【0041】
上記した振分部29G,30G,32G,33G,34Gは、通常は非駆動状態となっており、必要により制御部50で駆動される。
【0042】
回収庫18と還流庫20との間の部品配置スペース19には、搬送部27を駆動するための搬送メインモータや、回収庫18を紙幣処理機11内に収納しセットするための回収庫収納機構、回収庫18を紙幣処理機11に固定するための電磁ロック機構等が配置されている。
【0043】
図1に示すように、入金部15は、挿入された紙幣Bを受け入れる受入空間55を有しており、受入空間55は、機体前側の前壁部51と、機体後側の後壁部52と、機体左側の側壁部53と、機体右側の側壁部54とで囲まれて形成されている。前壁部51には、機体左右方向の中央に下方に凹む凹部56が形成されており、この凹部56は受入空間55から前面12側に抜けている。入金部15の上端開口部15aは、受入空間55の上端部であり、前壁部51、後壁部52、側壁部53,54のそれぞれの受入空間55側の上端縁部によって囲まれて形成されている。入金部15は、後壁部52側に上端開口部15aを開閉可能なシャッタ57を有している。
【0044】
図3に示すように、入金部15は、受入空間55の下端部を形成する底部58(繰出支持部)を有している。入金部15は、上端開口部15aを介して挿入された紙幣Bの下端縁部を底部58よりも上方で支持する進退可能なストッパ部材61と、ストッパ部材61に支持された紙幣Bを厚さ方向両側から挟持して下方に引き込んで底部58に受け渡す引込機構62と、を備えている。
【0045】
引込機構62は、前壁部51内に位置固定で回転可能に設けられる支持軸71と、前壁部51内の支持軸71の上方に位置固定で設けられる駆動源である駆動モータ72とを有している。支持軸71および駆動モータ72はいずれも機体左右方向に沿って設けられている。引込機構62は、図4に示すように、駆動モータ72の回転軸73に取り付けられるトルクリミッタ74と、トルクリミッタ74に取り付けられるタイミングプーリ75と、タイミングプーリ75に一側が掛けられるはタイミングベルト76と、このタイミングベルト76の他側が掛けられるタイミングプーリ77とを有しており、タイミングプーリ77が支持軸71に固定されている。これにより、駆動モータ72の駆動によりトルクリミッタ74を介して支持軸71が回転する。
【0046】
引込機構62は、支持軸71に固定される一対のレバー部材81を有している。一対のレバー部材81は、それぞれ、支持軸71に固定される略円形の固定ベース部82と、固定ベース部82の外周部から固定ベース部82の半径線上で径方向外方に延出する延出部83と、固定ベース部82の延出部83とは反対側の部分から軸方向に突出する押圧突起部84とを有している。一対のレバー部材81は、互いに位相を合わせて支持軸71に固定されている。
【0047】
支持軸71には、一対のレバー部材81と軸方向に隣り合って一対のストッパ部材61が回転可能に取り付けられている。よって、一対のレバー部材81と一対のストッパ部材61とは、同軸上に配置され、同一の支持軸71にこの支持軸71を中心に回転するように支持されている。一対のストッパ部材61は、それぞれ、支持軸71に回転可能に支持される略円形の支持ベース部92と、支持ベース部92の外周部からほぼ接線方向に沿って延出する支持部93と、支持ベース部92の支持部93とは反対側から支持部93とほぼ平行をなして反対方向に突出する受側突起部94とを有している。
【0048】
一方のストッパ部材61は、支持部93と受側突起部94との間に一方のレバー部材81の押圧突起部84を配置した状態で、この一方のレバー部材81に隣接して配置されており、他方のストッパ部材61は、支持部93と受側突起部94との間に他方のレバー部材81の押圧突起部84を配置した状態で、この他方のレバー部材81に隣接して配置されている。
【0049】
引込機構62は、図5に示すように、後壁部52内に位置固定で設けられるローラ軸101と、ローラ軸101の両端に支持される一対の回転可能な引込ローラ102とを有している。ローラ軸101は機体左右方向に延在しており、一対の引込ローラ102は、図4に示す一対のレバー部材81と機体左右方向および高さ方向の位置を合わせている。図3に示すように、一対の引込ローラ102は、受入空間55に一部突出しており、一対のレバー部材81に対して、受入空間55を挟んで対向配置されている。一対のレバー部材81および一対の引込ローラ102のうちの少なくともいずれか一方は互いに近接する部分が弾性変形可能な材料で形成されている。
【0050】
引込機構62は、図3に示す待機状態にあるとき、一対のレバー部材81が延出部83を支持軸71から上方に延出させた姿勢で前壁部51内に収容されており、全体として受入空間55から退避した状態にある。また、引込機構62がこの待機状態にあるとき、一対のストッパ部材61は、前壁部51から支持部93を受入空間55内に突出させた状態にある。ここで、一対のストッパ部材61は、図示略のストッパバネによって受側突起部94をレバー部材81の押圧突起部84に当接させる方向(図3の反時計回り方向)に回転付勢されており、図示略の回転ストッパに当接して支持部93を図3に示すように水平に配置した状態で停止している。この状態で、押圧突起部84は支持部93の近傍で支持部93から離間している。
【0051】
引込機構62は、図4に示すように支持軸71に固定される検出部材104を有しており、検出部材104には支持軸71の径方向に突出する二箇所の第1検知片105および第2検知片106が形成されている。引込機構62は、第1検知片105および第2検知片106を検出可能な位置固定の回転位置検出センサ108を有しており、この回転位置検出センサ108は、図4に示すように、引込機構62が待機状態にあるとき第1検知片105を検出している。言い換えれば、引込機構62を待機状態にするときには、制御部50が、回転位置検出センサ108で第1検知片105を検出するまで駆動モータ72を駆動する。
【0052】
図6(a)に示すように、引込機構62が待機状態にあるとき、入金部15の受入空間55に紙幣Bが挿入されることになる。上記したように入金部15には一枚の紙幣Bあるいは複数枚の集積状態の紙幣Bが挿入されることになる。受入空間55に挿入された紙幣Bは、下端縁部が一対のストッパ部材61の支持部93上に支持される。このとき、図8に示すように、紙幣Bは、入金部15の上端開口部15aの全体よりも上方に突出する状態となる。なお、このように待機状態にある引込機構62のストッパ部材61に支持された状態で、紙幣Bは、上端開口部15aの少なくとも機体前側の前部から上方に突出していれば良い。ここでは、具体的に、前壁部51の凹部56の底面56Aよりも上方に25mm程度突出する状態となる。紙幣Bが入金部15の上端開口部15aよりも上方に突出する状態となることから、操作者は、入金部15に紙幣Bを挿入する際に入金部15の底となる一対のストッパ部材61を紙幣Bを介して感じることができて、紙幣Bを確実に入れたというセット感が得られる。また、操作者は紙幣Bのセット状態を目視で確認することができる。
【0053】
図6(a)に示すように、入金部15に紙幣Bが挿入されると、これを紙幣検知センサ15Sが検知することになる。制御部50は、紙幣検知センサ15Sが紙幣Bを検知したタイミングに基づいて、引込機構62による以下の引き込み動作を開始させる。
【0054】
制御部50は、駆動モータ72を正転駆動させる。すると、引込機構62は、支持軸71と一体に一対のレバー部材81が回転し、図6(b)に示すように、延出部83の回転中心から離れた先端部83aを受入空間55内に進入させて受入空間55内で下降させ、一対の引込ローラ102に近接させる。これにより、一対のレバー部材81は、延出部83の先端部83aが紙幣Bを厚さ方向一側から厚さ方向他側の一対の引込ローラ102に向けて押圧することになる。その途中で、図示略のストッパバネの付勢力により図示略の回転ストッパに当接して停止している一対のストッパ部材61の受側突起部94に、図6(b)に示すように押圧突起部84を当接させて一対のストッパ部材61の押圧を開始する。これにより、その後は一対のレバー部材81と一対のストッパ部材61とが一体に回転する。
【0055】
この回転の途中で、図6(c)に示すように一対のレバー部材81の先端部83aが一対の引込ローラ102とで紙幣Bを挟持する。そして、制御部50は、一対のレバー部材81が一対の引込ローラ102とで紙幣Bを挟持するタイミングで、駆動モータ72つまり一対のレバー部材81を一旦停止させる。このとき、一対のレバー部材81の後壁部52側の端部よりも一対のストッパ部材61の後壁部52側の端部は後壁部52側に位置しており、よって、一対のストッパ部材61により紙幣Bの下端縁部は引き続き支持されている。ここで、入金部15に挿入された紙幣Bが一枚であれば一枚の紙幣Bが一対のレバー部材81と一対の引込ローラ102とに挟持される。また、入金部15に挿入された紙幣Bが複数枚であれば集積状態の紙幣Bが集積方向の両側から一対のレバー部材81と一対の引込ローラ102とに挟持される。
【0056】
次に、制御部50は再び駆動モータ72を正転駆動し一対のレバー部材81を再回転させる。つまり、引込機構62は、一対のレバー部材81が一対の引込ローラ102とで紙幣Bを挟持する位置で、一対のレバー部材81を一旦停止させた後に再回転させることになる。一対のレバー部材81を再回転させると、一対のレバー部材81の延出部83の下降が進み、図6(c)から図7(a)に示すように、一対の引込ローラ102が紙幣Bを一対のレバー部材81とで挟持した状態のまま回転し、紙幣Bとレバー部材81の延出部83の先端部83aとの一体の下降を許容する。よって、一対のレバー部材81が一対の引込ローラ102とで紙幣Bを挟持した状態のまま下方に引き込む。この引き込み過程で、一対のストッパ部材61は、一対のレバー部材81と一体に回転し、一対のレバー部材81つまり紙幣Bと同様に受入空間55内で下降しつつ、後壁部52側の端部が、一対のレバー部材81の後壁部52側の端部よりも前壁部51側に移動して紙幣Bの支持位置から退避する。
【0057】
その後、一対のレバー部材81の延出部83が一対の引込ローラ102から離れる。これにより、一対のレバー部材81および一対の引込ローラ102による挟持が解除されて、図7(b)に示すように紙幣Bが底部58に落下し載置される。このようにして、引込機構62は、入金部15に挿入された紙幣Bが一枚であれば一枚の紙幣Bを機内に引き込み、入金部15に挿入された紙幣Bが複数枚であれば集積状態の紙幣Bを一括して機内に引き込む。
【0058】
最終的に、図7(b)に示すように一対のレバー部材81が延出部83を支持軸71から下方に延出させた姿勢となり、一対のレバー部材81および一対のストッパ部材61が、前壁部51内に収容され全体として受入空間55から退避した状態になる。この状態になると図4に示す検出部材104の第2検知片106が回転位置検出センサ108で検知されることになる。よって、制御部50は、回転位置検出センサ108で第2検知片106が検知されると、駆動モータ72の駆動を停止させる。これにより、図7(b)に示すように引込機構62の引き込み動作が終了する。なお、一対のレバー部材81および一対のストッパ部材61が、前壁部51内に収容され全体として受入空間55から退避した状態になると、それ以上の回転をこれらのいずれかに当接して規制する回転ストッパを設けても良い。
【0059】
以上により、一対のストッパ部材61は、引込機構62による紙幣Bの引き込み動作に連動して紙幣Bの下端縁部を支持する位置から支持しない位置に退避することになり、より詳しくは、回転する一対のレバー部材81により押圧されて紙幣Bの下端縁部を支持する位置から支持しない位置に退避する。よって、一対のストッパ部材61および一対のレバー部材81は共用の駆動モータ72で駆動されることになる。また、一対のストッパ部材61および一対のレバー部材81は、共通の支持軸71に同軸上に支持されており、駆動モータ72および支持軸71と、これらの間の駆動系部品であるトルクリミッタ74、タイミングプーリ75、タイミングベルト76およびタイミングプーリ77が、一対のストッパ部材61および一対のレバー部材81に共用化されている。
【0060】
ここで、受入空間55に異物が入り込む等の何らかの理由でレバー部材81あるいはストッパ部材61が回転中に停止してしまうことがあっても、トルクリミッタ74が滑ることで、過負荷がかかることを防止する。
【0061】
図2に示す蹴出ローラ15Ra、繰出ローラ15Rbおよび分離ローラ15Rcを有する繰出機構38は、図7(b)に示すように引込機構62で機内に引き込まれて底部58に載置された紙幣Bを、側方にある図2に示す主搬送路28に向けて繰り出す。紙幣Bが複数枚の集積状態にあれば、これを一枚ずつ分離して主搬送路28に繰り出す。
【0062】
繰出機構38は、図9に示すように、後壁部52の機体左右方向一側(具体的には搬送部27が設けられた機体左側)を構成するビルプレス121を有している。ビルプレス121は、上記した引込機構62の一対の引込ローラ102の側方に配置されており、底部58に下端縁部が支持された紙幣Bを厚さ方向一側(機体後側)から押圧するため、機体前後方向(紙幣Bの厚さ方向)に沿って進退可能となっている。図2に示すように、繰出機構38の蹴出ローラ15Raは、紙幣Bの厚さ方向他側(機体前側)にあってビルプレス121で押圧された紙幣Bに接触してこれを側方に蹴り出す。繰出ローラ15Rbは蹴出ローラ15Raで蹴り出された紙幣Bに接触してこれを側方(具体的には搬送部27が設けられた機体左側)に繰り出すことになり、分離ローラ15Rcは、紙幣Bが複数枚ある場合に、繰出ローラ15Rbで繰り出される以外の紙幣Bを停止させることにより、繰出ローラ15Rbで繰り出される紙幣Bを一枚ずつに分離する。
【0063】
図10(a)に示すように、ビルプレス121を含む後壁部52の上方には上記したシャッタ57が配置されている。このシャッタ57は、機体左右方向に沿う位置固定のシャッタ軸131と、シャッタ軸131からその径方向外方に延出するように延出するシャッタ本体132と、シャッタ軸131からその径方向外方にシャッタ本体132とは反対に延出する作動アーム133とからなっている。シャッタ本体132および作動アーム133は、シャッタ軸131を中心に一体に回転する。シャッタ57は、図10(a)に示すようにシャッタ本体132がシャッタ軸131から上方に延びる姿勢で入金部15の上端開口部15aを開放し、シャッタ軸131から図11(a)に示すように機体前側に延びる姿勢で上端開口部15aを閉塞する。また、シャッタ57は、紙幣Bが他の紙幣Bとの摩擦等により底部58から浮いた状態にあるときに、閉作動すると、この浮いた状態にある紙幣Bの上端縁部を下方に押圧して、紙幣Bの上端縁部を揃える。シャッタ57は、図示略のシャッタバネにより閉方向(図10図11の時計回り方向)に回転付勢されており、図11(a)に示す閉状態で停止する。
【0064】
後壁部52内の上記シャッタ軸131よりも下側かつ機体後側には、リンクアーム軸141が機体左右方向に沿って位置固定で設けられている。リンクアーム軸141にはこれを中心に回転するようにリンクアーム142が連結されている。リンクアーム142は、リンクアーム軸141から上方に延出して図10(a)に示すようにシャッタ57の作動アーム133の機体後側に当接可能な押圧部143と、リンクアーム軸141から下方に延出するフォロア部144とを有している。リンクアーム142には、押圧部143を機体後側に付勢するリンクバネ145が連結されている。
【0065】
後壁部52内のリンクアーム軸141よりも下側には、駆動モータ151が位置固定で設けられている。駆動モータ151の回転軸152には、回転軸152に対し径方向にオフセットするカムピン153を備えたカム部材154が固定されている。カムピン153は、リンクアーム142のフォロア部144の機体前側に当接可能となっている。
【0066】
ビルプレス121は、図示略のビルプレスバネで前壁部51に近接する方向に付勢されている。ビルプレス121は、図11(a)に示すように、紙幣Bに当接してこれを蹴出ローラ15Raに向けて押圧するビルプレス本体部161と、ビルプレス本体部161の機体後側に一体に設けられた枠状部162とを有している。枠状部162はビルプレス本体部161と平行をなすフォロア部163を有している。ビルプレス121は、フォロア部163が、図10(a)に示すようにカム部材154のカムピン153の機体後側に当接可能となっている。
【0067】
駆動モータ151は、図10(a)に示すようにカムピン153を機体後側に配置した状態が待機状態となっている。この待機状態では、カムピン153がビルプレス121のフォロア部163に当接し、ビルプレス121を図示略のビルプレスバネの付勢力に抗して機体後側の端位置に位置させている。また、この待機状態で、カムピン153はリンクアーム142のフォロア部144に当接し、リンクバネ145の付勢力に抗してフォロア部144を機体後側の端位置に、押圧部143を機体前側の端位置に位置させている。機体前側の端位置に位置する押圧部143は、作動アーム133に当接し図示略のシャッタバネの付勢力に抗してシャッタ57をシャッタ本体132が上方に延出する開状態としている。
【0068】
この待機状態で、上記した引込機構62による引き込み動作が終了すると、制御部50は、繰り出し準備動作を開始する。つまり、図10(a)から図10(b)に示すように駆動モータ151を駆動してカム部材154を回転させる。すると、カムピン153が機体前側に移動することになり、このカムピン153にフォロア部144で当接するリンクアーム142は、リンクバネ145の付勢力でフォロア部144が機体前側に押圧部143が機体後側に移動するように回転する。すると、押圧部143に作動アーム133で当接していたシャッタ57は、図示略のシャッタバネの付勢力で作動アーム133が機体後側にシャッタ本体132が機体前側に移動するように回転することになる。カムピン153が機体前側の所定位置まで移動すると、シャッタ57は、シャッタ本体132が水平状態となって入金部15の上端開口部15aを閉じる。カムピン153は、機体前側にさらに移動するとリンクアーム142から離れる。繰り出し準備動作では、制御部50は、図11(a)に示すようにカムピン153が最も機体前側に位置するように、駆動モータ151を回転させる。
【0069】
また、待機状態から上記のようにカムピン153が機体前側に移動すると、このカムピン153にフォロア部163で当接するビルプレス121は、図示略のビルプレスバネの付勢力で機体前側に移動する。ビルプレス121は、紙幣量に応じた位置で紙幣Bを蹴出ローラ15Raとで挟持する状態となり、紙幣Bを蹴出ローラ15Raに押し付ける。カムピン153は、機体前側にさらに移動するとビルプレス121から離れる。なお、図11(a)に示すようにカムピン153が最も機体前側に位置した状態では、一枚の紙幣Bであっても、これをビルプレス121が蹴出ローラ15Raとで挟持できるようにカム部材154および枠状部162の形状等が設定されている。
【0070】
以上により、ビルプレス121がシャッタ57の閉作動と連動して蹴出ローラ15Ra側に移動することになる。また、ビルプレス121およびシャッタ57は、駆動モータ151およびカム部材154が共用化されている。
【0071】
図11(a)に示すようにカムピン153が最も機体前側に位置した状態で、制御部50は、駆動モータ151を停止させて、繰り出し準備動作を終了する。次に、制御部50は、蹴出ローラ15Ra、繰出ローラ15Rbおよび分離ローラ15Rcによって入金部15の紙幣Bを搬送部27に繰り出す繰り出し動作を行う。入金部15のすべての紙幣Bが搬送部27に繰り出されたことが、紙幣検知センサ15Sの検出結果からわかると、制御部50は、引込機構62の駆動モータ72を待機位置まで逆転駆動する引き込み戻し動作を行うとともに、繰出機構38の駆動モータ151を待機位置まで駆動する繰り出し準備戻し動作を行う。
【0072】
引き込み戻し動作で、引込機構62の駆動モータ72を逆転駆動すると、図7(b)に示す一対のレバー部材81が上記引き込み動作とは逆に回転し、図示略のストッパバネの付勢力により受側突起部94を押圧突起部84に当接させた状態の一対のストッパ部材61も一対のレバー部材81と一体に回転する。そして、回転の途中で、一対のストッパ部材61が図示略の回転ストッパに当接して支持部93を図3に示すように水平に配置した状態で停止する。一対のレバー部材81はさらに回転することになり、検出部材104の第1検知片105が回転位置検出センサ108で検出されると、制御部50は駆動モータ72が待機位置まで回転したと判断して駆動モータ72を停止させる。すると、図3に示すように一対のレバー部材81は、延出部83を支持軸71から上方に延出させた姿勢で前壁部51内に収容され、全体として受入空間55から退避した状態になって待機状態に戻る。
【0073】
繰り出し準備戻し動作で、繰出機構38の駆動モータ151を待機位置まで駆動すると、図11(b)に示すようにカムピン153が機体後側に移動することになってフォロア部144を機体後側に押圧する。すると、リンクアーム142は、リンクバネ145の付勢力に抗してフォロア部144が機体後側に、押圧部143が機体前側に移動するように回転する。これにより、押圧部143がシャッタ57の作動アーム133に当接し、シャッタ57を図示略のシャッタバネの付勢力に抗して作動アーム133が機体前側にシャッタ本体132が機体後側に移動するように回転させることになる。駆動モータ151が待機位置まで回転して停止すると、図10(a)に示すようにカムピン153は機体後側の端部位置に位置し、シャッタ57は、シャッタ本体132が鉛直状態となって入金部15の上端開口部15aを開く待機状態に戻る。
【0074】
また、繰り出し準備戻し動作で、上記のようにカムピン153が機体後側に移動すると、このカムピン153にフォロア部163で当接するビルプレス121は、図示略のビルプレスバネの付勢力に抗して機体後側に移動する。駆動モータ151が待機位置まで回転して停止すると、カムピン153は機体後側の端部位置に位置し、ビルプレス121は最も機体後側に位置して受入空間55を最も拡げる待機状態に戻る。
【0075】
以上に述べた構成の本実施形態の紙幣処理機11の各処理別の作動を説明する。
「入金処理」
入金処理時は、POSレジからの指令に基づいて、紙幣処理機11が入金処理を行うための入金動作モードとなり、この状態で、紙幣Bが、長辺を上端および下端とする姿勢で、上端開口部15aから入金部15に挿入されることになる。紙幣Bが複数枚ある場合には厚さ方向および集積方向を機体前後方向にして集積させた状態で、上端開口部15aから入金部15に挿入される。そして、上端開口部15aから入金部15に紙幣Bが挿入されたことを紙幣検知センサ15Sが検出すると、制御部50は、上記した引き込み動作と繰り出し準備動作とを順に行った後、繰り出し動作を行って入金部15から紙幣Bを一枚ずつ分離して側方の図2に示す主搬送路28に送り出す。制御部50は、各紙幣Bの入金部15から主搬送路28への送り出し完了を紙幣検知センサS1の検出結果から判断する。
【0076】
主搬送路28に送り出された紙幣Bは、搬送ローラ対R1〜R10の正転駆動によって主搬送路28上を入金部15から還流庫20〜22に向かって搬送され、その途中、分岐搬送路29を越えた位置(還流庫20〜22よりも手前)で識別部40により入金の可不可および金種が識別されることになる。識別部40で入金可能と識別された紙幣Bは、制御部50が還流庫20〜22用の振分部32G〜34Gのうち該当する金種用のものを駆動して、金種の還流庫20〜22のうちの該当する金種のものに収納させる。
【0077】
具体的には、紙幣Bが入金可能な千円券紙幣であった場合、制御部50は、この紙幣Bが重送検知センサS3で検出されるタイミングに基づいて振分部32Gを駆動して、この紙幣Bを搬送ローラ対R6の駆動で分岐搬送路32に送り込み、ローラ32Ra,32Rbの駆動で還流庫20に収納する。制御部50は、この還流庫20への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサ32Sの検出結果から判断する。
【0078】
また、紙幣Bが入金可能な五千円券紙幣であった場合、制御部50は、この紙幣Bが重送検知センサS4で検出されるタイミングに基づいて振分部33Gを駆動して、この紙幣Bを搬送ローラ対R7の駆動で分岐搬送路33に送り込み、ローラ33Ra,33Rbの駆動で還流庫21に収納する。制御部50は、この還流庫21への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサ33Sの検出結果から判断する。
【0079】
また、紙幣Bが入金可能な万円券紙幣であった場合、制御部50は、この紙幣Bが重送検知センサS5で検出されるタイミングに基づいて振分部34Gを駆動して、この紙幣Bを搬送ローラ対R8の駆動で分岐搬送路34に送り込み、ローラ34Ra,34Rbの駆動で還流庫22に収納する。制御部50は、この還流庫22への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサ34Sの検出結果から判断する。
【0080】
他方、識別部40で入金不可と識別された紙幣Bは、搬送ローラ対R1〜R10の逆転駆動によって主搬送路28上を上記とは逆方向に搬送される。制御部50は、識別部40の検出に基づくタイミングで振分部29Gを駆動してこの紙幣Bを搬送ローラ対R2の駆動で分岐搬送路29に送り込んでローラ対29Rの駆動で出金部16に搬送する。制御部50は、この出金部16への各紙幣Bの送り込みの完了を紙幣検知センサ29Sの検出結果から判断する。
【0081】
入金部15の紙幣Bがすべて、還流庫20〜22および出金部16のいずれかに搬送されると、制御部50は、出金部16に紙幣Bがある場合には、出金部16により紙幣Bを上端開口部16aから機外に取り出し可能に突出させる。
【0082】
「出金処理」
出金処理時には、POSレジからの指令に基づいて、紙幣処理機11が出金処理を行うための出金動作モードとなり、搬送ローラ対R1〜R10の逆転駆動によって、還流庫20〜22のいずれか一つから紙幣Bを分岐搬送路32〜34の対応するものおよび主搬送路28を介して出金部16に向けて搬送することになる。還流庫20から紙幣Bを繰り出す場合、紙幣Bを、蹴出ローラ20Rがローラ32Ra,32Rbに向け蹴り出し、ローラ32Rbで一枚に分離しながらローラ32Raが分岐搬送路32に繰り出す。還流庫21から紙幣Bを繰り出す場合、紙幣Bを、蹴出ローラ21Rがローラ33Ra,33Rbに向け蹴り出し、ローラ33Rbで一枚に分離しながらローラ33Raが分岐搬送路33に繰り出す。還流庫22から紙幣Bを繰り出す場合、蹴出ローラ22Rが紙幣Bをローラ34Ra,34Rbに向け蹴り出し、ローラ34Rbで一枚に分離しながらローラ34Raが分岐搬送路34に繰り出す。
【0083】
そして、紙幣Bは、主搬送路28での搬送中に、重送検知センサS3〜S5のうちの通過するもので重送の有無が検知されることになる。制御部50は、重送でない紙幣Bを、識別部40の検出に基づくタイミングで振分部29Gを駆動することにより分岐搬送路29を介して出金部16に送り込む。制御部50は、この出金部16への各紙幣Bの送り込みの完了を紙幣検知センサ29Sの検出結果から判断する。
【0084】
他方、制御部50は、重送の紙幣Bを、搬送ローラ対R1〜R10の正転駆動によって、主搬送路28で出金リジェクト庫23の方向に搬送し出金リジェクト庫23に収納させる。制御部50は、この出金リジェクト庫23への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサS2の検出結果から判断する。
【0085】
還流庫20〜22から出金部16への紙幣Bの搬送を適宜繰り返すことで、出金する全金種の全枚数の紙幣Bが出金部16に送り込まれると、制御部50は、出金部16により紙幣Bを上端開口部16aから突出させて機外に取り出し可能な状態とする。
【0086】
「回収処理」
回収処理時には、図示略の操作部へ回収処理を行うことを選択する操作入力がなされる。すると、紙幣処理機11が回収処理を行うための回収処理モードとなる。紙幣処理機11が回収処理を行うための回収動作モードとなると、制御部50は、還流庫20〜22のいずれか一つの回収対象庫から紙幣Bを出金処理と同様にして主搬送路28に繰り出し、主搬送路28を介して回収庫18側に向けて搬送する。主搬送路28の搬送中に重送検知センサS3〜S5のうち紙幣Bが通過するものが紙幣Bの重送を検知することになり、制御部50は、重送でない紙幣Bを、搬送ローラ対R4および振分部30Gで分岐搬送路30に送り込み、ローラ対30Rで回収庫18に収納する。制御部50は、この回収庫18への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサ30Sの検出結果から判断する。
【0087】
他方、制御部50は、重送の紙幣Bを、搬送ローラ対R1〜R10の正転駆動によって、主搬送路28で出金リジェクト庫23に向けて搬送し出金リジェクト庫23に収納する。制御部50は、この出金リジェクト庫23への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサS2の検出結果から判断する。
【0088】
還流庫20〜22のうちの一つの回収対象庫のすべての紙幣Bが、回収庫18または出金リジェクト庫23に送り込まれると、この回収対象庫についての回収処理を終了する。これにより、回収対象庫の金種の紙幣が、紙幣検知センサ30Sで計数された枚数だけ回収庫18に送り込まれて回収される。必要により、回収対象庫を変更して回収処理を行う。
【0089】
「装填処理」
すべての還流庫20〜22から紙幣Bを回収する全回収があった場合や還流庫20〜22の紙幣Bが不足した場合に、釣銭準備金を装填する装填処理が行われるが、この装填処理は、上記した入金処理とほぼ同様に行われる。装填処理時には、図示略の操作部へ装填処理を行うことを選択する操作入力がなされることになり、これにより紙幣処理機11が装填処理を行うための装填動作モードとなる。
【0090】
ここで、制御部50は、図示略の操作部への操作入力に応じて、上端開口部15aを介して入金部15に挿入された紙幣Bの下端縁部をストッパ部材61で支持した後、引込機構62による上記した引き込み動作を行う第1の設定と、ストッパ部材61を予め退避させるとともに引込機構62による引き込み動作を行わずに上端開口部15aを介して入金部15に挿入された紙幣Bの下端縁部を底部58に直接支持する第2の設定と、を切り替えるようになっている。第2の設定は、引込機構62の回転位置検出センサ108が検出部材104の第2検知片106を検出した状態(引き込み動作終了後の状態)を待機状態として紙幣Bを入金部15に受け入れることになり、その際に引込機構62を動作させることはない。
【0091】
また、制御部50は、図示略の操作部への操作入力に応じて、動作モード毎に第1の設定および第2の設定のうちのいずれか一方が選択設定されている。例えば、一度の紙幣Bの挿入量が少ない入金動作モードでは第1の設定とし、入金動作モードよりも一度の紙幣Bの挿入量が多い装填動作モードでは第2の設定としている。
【0092】
以上に述べた本実施形態の紙幣処理機11によれば、入金部15に、紙幣Bを長辺を上端および下端とする姿勢で上方から上端開口部15aを介して挿入すると、ストッパ部材61が紙幣Bを上端開口部15aよりも上方に突出させる状態で支持する。よって、操作者は、入金部15に紙幣Bを挿入した際に紙幣Bを介して底を感じることができて、確実に入れたというセット感が得られる。また、操作者は紙幣Bのセット状態を目視で確認することができる。そして、このようにストッパ部材61に支持された紙幣Bを引込機構62が厚さ方向両側から挟持して下方に引き込んで底部58に受け渡す。したがって、操作者が安心感をもって使用可能となる。
【0093】
また、引込機構62は、レバー部材81が回転することにより回転中心から離れた先端部83aを下降させて先端部83aによって紙幣Bを厚さ方向一側から押圧すると、紙幣Bの厚さ方向他側にある引込ローラ102が紙幣Bをレバー部材81とで挟持しレバー部材81とともに回転して引き込む。引込機構62は、このように紙幣Bを引き込んで、紙幣Bを底部58に受け渡す。これにより、簡素な構造で紙幣Bを引き込むことができる。
【0094】
また、ストッパ部材61が、回転するレバー部材81により押圧されて紙幣Bの下端縁部を支持する位置から支持しない位置に退避するため、レバー部材81およびストッパ部材61の駆動源である駆動モータ72を含む、支持軸71、駆動モータ72、トルクリミッタ74、タイミングプーリ75、タイミングベルト76およびタイミングプーリ77等の駆動系部品を共用化でき、これら駆動系部品の小型化および低コスト化が図れる。
【0095】
また、ストッパ部材61とレバー部材81とが同軸上に配置されているため、レバー部材81およびストッパ部材61用の駆動系部品のさらなる小型化および低コスト化が図れる。
【0096】
また、引込機構62は、レバー部材81が引込ローラ102とで紙幣Bを挟持する位置でレバー部材81を一旦停止させた後に、レバー部材81を再回転させるため、紙幣Bの挟持および引き込みの動きにメリハリをつけることができる。したがって、操作者がさらに安心感をもって使用可能となる。
【0097】
また、入金部15に上端開口部15aを介して紙幣Bが挿入されると、紙幣検知センサ15Sが紙幣Bを検知し、この検知に基づいて制御部50が引込機構62の引き込み動作を開始させることになる。よって、入金部15に紙幣Bを挿入すれば、自動的に引き込み動作が行われることになるため、引き込み動作を開始させるためだけの操作が不要になる。
【0098】
また、第1の設定では、上端開口部15aを介して入金部15に挿入された紙幣Bの下端縁部をストッパ部材61で支持した後、引込機構62による引き込み動作を行うことになる。第2の設定では、ストッパ部材61を紙幣Bの下端縁部を支持する位置から予め退避させるとともに引込機構62による引き込み動作を行わずに上端開口部15aを介して入金部15に挿入された紙幣Bの下端縁部を底部58に直接支持することになる。したがって、操作者の要望や動作モードに応じて設定を切り替えることができる。
【0099】
また、動作モード毎に第1の設定および第2の設定のうちのいずれか一方が選択設定されているため、使い勝手性を向上させることができる。
【0100】
また、入金部15の上端開口部15aを開閉可能なシャッタ57と、底部58に支持された紙幣Bを厚さ方向一側から蹴出ローラ15Raに向け押圧するビルプレス121とが連動する。よって、シャッタ57およびビルプレス121の駆動源である駆動モータ151を含む駆動モータ151およびカム部材154等の駆動系部品の共用化が図れ、これら駆動系部品の小型化および低コスト化が図れる。
【符号の説明】
【0101】
11 紙幣処理機
15 入金部
15a 上端開口部
15Ra 蹴出ローラ
15Rb 繰出ローラ
15Rc 分離ローラ
15S 紙幣検知センサ(検知手段)
38 繰出機構
57 シャッタ
58 底部(繰出支持部)
61 ストッパ部材
62 引込機構
81 レバー部材
102 引込ローラ
121 ビルプレス
B 紙幣
図1
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