(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カメラから取得された、生体の第1の部位および第2の部位を含む映像から前記生体の第1の部位の第1の映像、および、前記生体の前記第2の部位の第2の映像を取得する映像入力部と、
前記第1の映像および前記第2の映像に基づいて、前記生体の血圧情報を出力する血圧情報出力部と、
を備え、
前記第1の映像は、前記生体の鼻の映像である血圧情報出力装置。
カメラから取得された、生体の第1の部位および第2の部位を含む映像から前記第1の部位の第1の脈波情報、および、前記第2の部位の第2の脈波情報を光学的に取得する脈波情報入力部と、
前記第1の脈波情報および前記第2の脈波情報に基づいて、前記生体の血圧情報を出力する血圧情報出力部と、
を備え、
前記第1の部位は、前記生体の鼻である血圧情報出力装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1の血圧情報出力装置100を示す図である。血圧情報出力装置100は、スマートフォン内に実装されている。血圧情報出力装置100は、映像入力部101および血圧情報出力部102を備える。
【0009】
映像入力部101には、生体103の2箇所以上の映像が入力される。映像入力部101は、カメラを備えており、生体103の映像をカメラにより撮影して入力する。本例の映像入力部101は、生体103において離間した2箇所以上の部位を含む動画を取得する。これにより、生体103の脈波情報を有する映像が映像入力部101へ光学的に入力される。脈波とは、生体103の部位における血管の脈動を示す時間波形であり、脈波情報とは、当該時間波形に関する情報である。例えば脈波情報は、脈波がピークを示すタイミングに関する情報を含む。本例では、生体103の鼻104の映像と指先105の映像がカメラを介して映像入力部101へ入力される。
【0010】
血圧情報出力部102は、映像入力部101に入力された映像に基づいて、生体103の血圧情報を出力する。血圧情報出力部102は、血圧情報を表示するディスプレイを備える。ここで、血圧情報とは、血圧、高血圧状態、正常血圧状態、低血圧状態、動脈硬化等の血管の状態、または血管年齢等、血圧に関する情報である。本例において、血圧情報出力部102には生体103の最高血圧(Max130mmHg)、平均血圧(107mmHg)、最低血圧(Min85mmHg)が表示されている。
【0011】
生体103の血液は、ヘモグロビン濃度に応じて、光のRGB成分のうちG成分(緑色成分)の透過量が変化する。動脈血には、静脈血に比べてヘモグロビンが多く含まれている。脈波は、動脈血の血流量の変動に対応するので、生体103を透過または反射した光のG成分の変動は、生体103の脈波に対応する。すなわち、本例における生体103の鼻104の映像と指先105の映像には、脈波に応じたG成分の変動波形が含まれている。従って、鼻104と指先105の映像におけるG成分の波形の位相差から、心臓から鼻104までの脈波の伝搬時間と、心臓から指先105までの脈波の伝搬時間の差分がわかる。血圧情報出力装置100は、鼻104の映像から鼻104の毛細血管の脈波成分信号と、指先105の映像から指先105の毛細血管の脈波成分信号を抽出する。脈波成分信号は、脈波情報を含む映像のRGB信号もしくは、YCbCr信号である。
【0012】
血圧情報出力装置100は、2つの映像の相関から、脈波伝搬情報を算出する。脈波伝搬情報とは、脈波伝搬時間PTTまたは、その逆数に比例した脈波伝搬速度PWVを含む。血圧情報出力装置100は、予め算出された脈波伝搬情報と血圧BPとの関係式、および脈波伝搬情報から血圧BPを推定して出力する。血圧情報出力装置100は、ヘモグロビン濃度の変動に基づいて検出される同質の2つの脈波情報に基づいて、脈波伝搬情報を算出しているので、高精度に血圧BPを推定できる。
【0013】
映像入力部101は、2箇所の部位の動きを検出して、当該部位に追従して撮影してよい。映像入力部101は、脈波を検出している間に、2箇所の部位の少なくとも一方がカメラの撮像領域外に向かって移動している場合に、カメラのズーム等を制御して、2箇所の部位がカメラの撮像領域内となるように制御してよい。また、血圧情報出力装置100は、2箇所の部位の移動速度が所定の値以下である期間に取得した脈波情報に基づいて、脈波伝搬情報を算出してよい。本例では、1つのカメラから生体103の2箇所の映像を入力しているが、2つ以上のカメラからそれぞれの部位の映像を入力してよい。例えば、スマートフォンの裏面に設けられた光学式指紋センサを用いて、指先105の画像を取得してよい。また、鼻104と指先105に限らず、生体における互いに異なる領域の映像をそれぞれ入力してよい。しかし、鼻104および指先105は、毛細血管が集中しているため、ヘモグロビン濃度が高くなる。このため、鼻104の映像と指先105の映像を用いる方が、脈波情報の抽出感度と脈波伝搬情報の算出精度が高くなる。
【0014】
さらに、脈波情報は、2つの映像から抽出されてよく、指先に装着された光電容積脈波計を2つ以上用いて抽出されてもよい。また、脈波情報は、一方が映像から、他方が光電容積脈波計から抽出されてもよい。
【0015】
このように、実施形態1の血圧情報出力装置100は、光学的に脈波情報を抽出して血圧情報を出力するようにしたので生体への負担が小さい。また、カフを用いた場合の加圧および減圧のための時間が不要なので、連続的に血圧情報を出力できる。さらに、実施形態1の血圧情報出力装置100は、映像から脈波情報を抽出する構成であるため、生体と非接触かつ非拘束で血圧情報を推定できる。さらに、カメラの映像内に複数人存在すれば、複数人の血圧を同時に測定できる。
【0016】
(実施形態2)
図2は、実施形態2の血圧情報出力装置200を示す図である。血圧情報出力装置200は、トレッドミル206に備え付けられている。トレッドミル206は、フィットネスジム等におけるランニングマシン、ウォーキングマシン、エアロバイク等の運動機器である。本例のトレッドミル206は、ランニングマシンである。
【0017】
血圧情報出力装置200は、実施形態1と同様に、映像入力部201と血圧情報出力部202とを備える。ここで、血圧情報出力装置200は、トレッドミル206の内部に実装される。
【0018】
映像入力部201は、カメラを備えており、映像が入力される。具体的には、映像入力部201には、トレッドミル206上で運動をしている生体203の鼻204の映像と指先205の映像が入力される。
【0019】
血圧情報出力部202は、ディスプレイを備えて血圧情報をディスプレイに表示する。これにより、生体203は運動しながら自らの血圧情報を知ることができる。なお、血圧情報に加えて、脈拍数CPRを表示してもよい。
【0020】
(実施形態3)
図3は、実施形態3の血圧情報出力装置300を示す図である。血圧情報出力装置300は、実施形態1と同様に、映像入力部301と血圧情報出力部302とを備える。血圧情報出力装置300は、洗面台の鏡に実装される。
【0021】
映像入力部301は、カメラを備えており、映像が入力される。具体的には、映像入力部201には、洗面台で手洗いや歯磨き等をしている生体103の鼻104の映像と指先105の映像が入力される。
【0022】
ディスプレイを備えて血圧情報出力部302が血圧情報を出力する。血圧情報出力部302は、手洗いや歯磨き等をしている生体103の血圧情報をディスプレイに表示する。これにより、生体103は、手洗いや歯磨き等をしながら自らの血圧情報を知ることができる。本例の血圧情報出力装置300は、簡単でさりげない測定ができるので、恒常的に血圧をモニターできる。
【0023】
図4は、血圧情報出力装置100の構成の一例を示す。血圧情報出力装置100は、映像入力部110および血圧情報出力部120を備える。血圧情報出力装置100は、入力された生体の映像から、血圧BPを推定して出力する。なお、本例の血圧情報出力装置100の構成は、実施形態1〜3のいずれの場合においても、利用できる。
【0024】
生体103は、第1領域106および第2領域107を有する。第1領域106および第2領域107は、それぞれ異なる領域である。例えば、第1領域106は、生体103の部位である鼻104の映像であり、第2領域107は、生体103の部位である指先105の映像である。
【0025】
映像入力部110には、第1領域106および第2領域107の映像がそれぞれ、第1領域映像112および第2領域映像114として入力される。映像入力部110は、第1領域映像112および第2領域映像114を血圧情報出力部120に出力する。
【0026】
血圧情報出力部120は、第1領域映像112および第2領域映像114に基づいて、生体103の血圧情報を算出する。例えば、血圧情報出力部120は、算出した血圧情報を推定血圧値として出力する。
【0027】
図5は、血圧情報出力装置100の構成の一例を示す。
図4とは、映像入力部110がカメラ116を備えた点で異なる。映像入力部110は、カメラ116により生体103の第1の映像および第2の映像を取得する。
【0028】
カメラ116は、第1領域映像112および第2領域映像114を撮影する。カメラ116は、CCDセンサもしくは、CMOSセンサ等を撮像素子として備える。カメラ116は、撮影した第1領域映像112および第2領域映像114を血圧情報出力部120に出力する。
【0029】
図6は、血圧情報出力装置100の構成の一例を示す。
図4とは、血圧情報出力部120がディスプレイ122を備えた点で異なる。ディスプレイ122は、血圧情報出力部120において、第1領域映像112および第2領域映像114に基づく血圧情報を表示する。
【0030】
血圧情報出力部102は、ディスプレイ122の替わりにスピーカーを備えて音声信号として血圧情報を出力してよい。血圧情報出力部102は、ディスプレイ122の替わりに無線または有線により血圧情報をPC等の電子機器もしくは病院等の医療機関のデータベースに送信してよい。
【0031】
図7は、ディスプレイ122の表示形態の一例を示す。
図7に記載されたディスプレイ122の表示形態は、実施形態1〜3のいずれにおいても利用できる。
【0032】
図7(a)は、生体103の血圧そのものではなく、生体103の血圧BPが高血圧であるか、正常血圧であるか、低血圧であるか等の血圧状態を表示する例である。
図7(b)は、算出した脈波伝搬情報または推定した血圧BPに基づいて、動脈硬化があるかどうかを表示した例である。
図7(c)は、算出した脈波伝搬情報または推定した血圧BPに基づいて、血管年齢の推定結果を表示した例である。つまり、
図7(b)および(c)は、血管状態を示す。
【0033】
上記
図7(a)〜(c)の絶対評価の表示に加えて、ディスプレイ122は、個人ごとの平均値と比較した相対評価を表示してもよい。また、血圧情報出力装置100は、その内部に記憶部を設け、過去に推定した血圧情報を記憶部に記憶してよい。この場合、血圧情報出力装置100は、過去の血圧情報と現在の血圧情報を合わせてディスプレイ122に出力してよい。
【0034】
図7(d)は、血管の硬さ、血管年齢、ユーザーへのアドバイス、および血管の硬さと血管年齢との関係を示すグラフを表示する。実線は、年齢毎の平均的な血管の硬さである平均値ラインを示す。ユーザーは、グラフから、平均値ラインより高いか低いかを知ることができる。その他、例えば、「今回のあなたの血圧は、通常よりも高血圧です。」、「今回のあなたの血圧は、通常よりも低血圧です。」、「今回のあなたの血圧は、通常です。」等の情報を表示してよい。
【0035】
図8は、血圧情報出力装置100の構成の一例を示す。本例の血圧情報出力装置100は、脈波伝搬情報を算出して、推定血圧を出力する。血圧情報出力装置100は、第1の脈波情報取得部(第1の脈波情報入力部/第1の映像取得部)130、第2の脈波情報取得部(第2の脈波情報入力部/第2の映像取得部)135、脈波伝搬情報算出部140および血圧情報出力部150を備える。ここで、第1の脈波情報取得部130と第2の脈波情報取得部135が
図4〜
図6の映像入力部110に対応し、脈波伝搬情報算出部140と血圧情報出力部150が血圧情報出力部120に対応する。
【0036】
第1の脈波情報取得部130は、生体103の第1の部位から、第1の脈波情報を光学的に取得する。第1の脈波情報取得部130は、光学的に取得した第1の脈波情報から第1の映像を抽出する。つまり、第1の脈波情報取得部130は、生体103の第1の部位から、第1の映像を取得する。
【0037】
第2の脈波情報取得部135は、生体103の第1の部位と異なる第2の部位から、第2の脈波情報を光学的に取得する。第2の脈波情報取得部135は、光学的に取得した第2の脈波情報から第2の映像を抽出する。第2の脈波情報は、第1の脈波情報に対して時間差を有する。つまり、第2の脈波情報取得部135は、生体103の第2の部位から、第2の映像を取得する。
【0038】
第1の映像と第2の映像の取得は、周知の画像認識技術により実現できる。第1の映像および第2の映像は、1つの映像から取得されてもよく、互いに異なる複数の映像から取得されてもよい。第1の脈波情報取得部130および第2の脈波情報取得部135は、1つのカメラから映像を取得してもよく、互いに異なるカメラから映像をそれぞれ取得してもよい。
【0039】
脈波伝搬情報算出部140は、抽出した第1の映像および第2の映像に基づいて、生体103の脈波伝搬情報を算出する。例えば、脈波伝搬情報算出部140は、第1の脈波情報と第2の脈波情報の相関から、生体103の脈波伝搬情報を算出する。
【0040】
血圧情報出力部150は、脈波伝搬情報に基づいて、生体103の血圧情報を推定して出力する。血圧情報出力部150は、生体103の脈拍数にさらに基づいて、血圧情報を推定してよい。
【0041】
図9は、生体103の映像を抽出する様子を示す。第1領域106および第2領域107は、それぞれ、生体103の異なる領域である。具体的には、第1領域106は、生体103の鼻の領域である。第2領域107は、生体103の指先の領域である。
【0042】
第1領域106および第2領域107の選択は、生体103の任意の領域であってよい。例えば、第1領域106は、生体103の心臓を挟んで、第2領域107と対称に位置してよい。なお、生体103の心臓を挟んで対称に位置するとは、心臓に対して完全に対称である必要はない。例えば、第1領域106および第2領域107は、それぞれ左右の指先領域であってよい。また、心臓を挟んで対称な位置は、心臓からの距離が等しい2つの位置を指してもよい。
【0043】
第1の脈波情報取得部130および第2の脈波情報取得部135は、画像認識技術により、鼻および指先の領域をそれぞれ特定する。また、第1の脈波情報取得部130および第2の脈波情報取得部135は、特定した領域から鼻の映像および指先の映像をそれぞれ抽出する。
【0044】
図10は、脈拍数検出アルゴリズムの一例を示す。本例のアルゴリズムを用いることで、生体103の映像から脈拍数を検出できる。脈波波形の安定的な抽出は、血圧BPを推定するために必要な基盤技術である。例えば、血圧情報出力装置100は、対象領域ROIとして、毛細血管の密集する鼻領域を選択すれば、高いS/N比を有する脈波を検出できる。
【0045】
ステップS100において、血圧情報出力装置100は、顔領域の抽出映像を取得する。その後、血圧情報出力装置100は、取得した顔領域抽出映像から、RGB信号を抽出する。一例では、顔領域抽出映像は、640×480画素である。
【0046】
ステップS101において、血圧情報出力装置100は、抽出したRGB信号をYCbCr信号に変換する。ここで、Yは輝度信号であり、Cb、Crは色差信号である。
【0047】
ステップS102において、血圧情報出力装置100は、輝度信号Yから顔領域および対象領域ROIを検出する。対象領域ROIは、輝度信号Yに基づいて特定される。ここで、対象領域ROIは、脈波情報を含む色差信号の変化が検出できる程度に血管が集中している領域であれば、鼻領域に限定されない。
【0048】
ステップS103において、血圧情報出力装置100は、ステップS102で特定した対象領域ROIを抽出する。また、血圧情報出力装置100は、抽出された対象領域ROIにおけるCb+Cr信号を取得する。
【0049】
ステップS104において、血圧情報出力装置100は、取得したCb+Cr信号に基づいて、対象領域ROIをガウシアンフィルタリングする。ガウシアンフィルタリングとは、対象領域ROIの中心部分の強度を大きくして、対象領域ROIの周辺部を抑え込む処理のことである。
【0050】
例えば、対象領域ROIが、50×50画素の領域とした場合、対象領域ROIの周辺部は、生体103の動作に伴い対象領域ROI以外の領域の信号が混入する。ガウシアンフィルタリングは、信頼性の低い対象領域ROIの周辺の信号をフィルタリングする。
【0051】
ステップS105において、フィルタリングされた信号に基づいて、任意の時刻における値をプロットしたCb+Crトレース信号を作成する。Cb+Crトレース信号を採用することで、演算量を低減して、脈波波形を安定的に抽出できる。例えば、Cb+Crトレース信号は、各画素のCb+Crを対象領域ROI全域において合計された値である。あるいはCb+Crトレース信号は、各画素のCb+Cr信号の平均であってよい。これにより、Cb+Crトレース信号は、対象領域ROIにおいて一つの値が得られる。
【0052】
ステップS106において、バンドパスフィルタBPFを通して0.75Hz〜4Hzの波長領域以外をカットする。一般的な生体103の脈拍数CPRは、0.75Hz〜4Hz(脈拍数45〜240)の範囲に対応するため、脈拍の帯域以外のノイズをカットできる。
【0053】
ステップS107において、周波数の分析を行う。ステップ106でノイズがカットされたCb+Crトレース信号には、外部環境もしくは生体103の運動に対応する低い周波数の信号と、脈拍数CPRに対応する高い周波数の信号が含まれる。血圧情報出力装置100は、周波数の分析結果に基づいて、脈拍数CPRを検出して出力する。
【0054】
図11は、脈拍数検出結果を示す。各グラフは、時刻[秒](横軸)に対する心拍数HR(縦軸)の変化を示す。実線は、カメラ映像からの脈拍数検出値であり、プロットは、光電式脈波モニター測定値 (正解値)である。
図11に示されたグラフは、時刻0秒における心拍数HRの大きさが異なる。例えば、
図11(a)、(b)では、測定開始前に運動することによって、時刻0秒における心拍数HRを上げている。
図11(c)〜(f)は、測定開始時点において、ほぼ平常状態の心拍数HRである。
【0055】
測定開始後は、運動を停止してから平常時の値に落ち着く心拍数HRが測定される。このときの、本実施形態に係る脈拍検出方法は、光電式の脈波モニターの測定結果と誤差が少なく、心拍数HRの時間に対する変化をとらえている。つまり、心拍数HRは、カメラ映像からであっても精度良く検出できる。
【0056】
図12は、脈波伝搬時間の検出アルゴリズムの一例を示す。本例の脈拍伝搬情報算出部140は、第1の脈波成分信号抽出部141、第2の脈波成分信号抽出部142、相関算出部143を備える。脈拍伝搬情報算出部140は、第1の脈波情報取得部130および第2の脈波情報取得部135から入力されたYCbCr信号に基づいて、脈波伝搬時間PTTを算出する。
【0057】
脈拍伝搬情報算出部140は、抽出した映像から脈波伝搬情報を算出する。本例の第1の脈波成分は、顔領域の映像であり、第2の脈波成分は、指先領域の映像である。
【0058】
第1の脈波成分信号抽出部141は、第1の映像から生体103の第1の脈波成分信号を抽出する。第1の脈波成分信号抽出部141には、第1の脈波情報取得部130により取得された顔領域の抽出映像が、YCbCr信号として入力される。
【0059】
第2の脈波成分信号抽出部142は、第2の映像から生体103の第2の脈波成分信号を抽出する。第2の脈波成分信号抽出部142には、第2の脈波情報取得部135により取得された指先領域の抽出映像が、YCbCr信号として入力される。
【0060】
相関算出部143は、第1の脈波成分信号と第2の脈波成分信号との相関を算出して脈波伝搬情報を出力する。相関算出部143は、第1の脈波成分信号の微分値と第2の脈波成分信号の微分値との相関を算出して脈波伝搬時間PTTを出力する。
【0061】
脈波伝搬時間PTTは、心臓から鼻までの血管の距離と心臓から指先までの血管の距離は異なるので、心臓から鼻までの脈波伝搬時間PTTと心臓から指先までの脈波伝搬時間PTTが異なる。このため、鼻領域の脈波成分信号と指先領域の脈波成分信号との間には、心臓から鼻までの血管の距離と心臓から指先までの血管の距離との差に応じた時間差(位相差)が生じる。
【0062】
ステップ200において、第1の脈波情報取得部130は、鼻領域抽出映像を取得して、鼻の毛細血管の脈波成分信号を出力する。ここで、鼻の映像は、輝度Y、色差信号Cb、Crで構成される。
【0063】
また、第2の脈波情報取得部135は、指先領域抽出映像を取得して、指先領域のYCbCr信号を第2の脈波成分信号抽出部142に出力する。第2の脈波情報取得部135は、映像を取得する領域が、第1の脈波情報取得部130とは異なるものの、信号の処理方法は第1の脈波情報取得部130と同様である。
【0064】
ステップS201において、第1の脈波成分信号抽出部141は、入力された色差信号Cb、Crに基づいてCb+Crトレース信号を生成する。第1の脈波成分信号抽出部141は、鼻領域に対応するCb+Crトレース信号を生成して、第2の脈波成分信号抽出部142は、指先領域に対応するCb+Crトレース信号を生成する。Cb+Crトレース信号を生成することにより、脈波成分の振幅が大きくなる。
【0065】
ステップS202において、第1の脈波成分信号抽出部141および第2の脈波成分信号抽出部142は、脈波帯域である帯域0.75Hz〜4Hzのバンドパスフィルタにトレース信号を通す。これにより、鼻領域および指先領域の脈波成分信号が、トレース信号から抽出される。つまり、ステップS202は、ステップS106と同様に、脈拍の帯域以外のノイズを除去する。
【0066】
ステップS203において、相関算出部143は、鼻領域の脈波成分信号と指先領域の脈波成分信号とをそれぞれスプライン補間によりインターポレーション(補間)する。具体的には、スプライン補間とは、カメラ映像(30Hz)から抽出した脈波を補間して、1KHzの連続データに変換することである。スプライン補間は、微分演算の精度を高くして、誤差を小さくする。なお、補間方法は、スプライン補間に限らず、ラグランジュ補間でもよいし、線形補間でもよいが、スプライン補間は演算量が小さくかつ精度が良いため好ましい。
【0067】
ステップS204において、スプライン補間後の出力波形を1階微分する。光電容積脈波は、モーション・アーチファクトもしくは光の拡散などにより、最大点および最小点が安定しない場合がある。脈波の1次微分波形を用いることにより、変曲点をより明確に検出することができる。
【0068】
ステップS205において、相関算出部143は、鼻領域の脈波成分信号と指先領域の脈波成分信号との相関を算出する。また、相関算出部143は、2つの映像情報から直接相関を算出してよい。相関算出部143は、脈波波形の1次微分波形に対する相互相関位相差を検出して、1ms単位で脈波伝搬時間PTTを正確に算出する。
【0069】
図13は、ステップS201で得られた脈波成分信号の波形を示す図である。具体的には、第1の脈波情報取得部130および第2の脈波情報取得部135で取得された鼻領域の脈波成分信号および指先領域の脈波成分信号の波形を示す。横軸は、フレーム数を示して、縦軸は、Cb+Cr信号のトレース強度を示す。各フレームは、1秒間の間に30回フレームが更新される(30fps)。上の波形が鼻領域の脈波成分信号であり、下の波形が指先領域の脈波成分信号である。
【0070】
図14は、ステップS202で得られた脈波成分信号の波形を示す図である。具体的には、ステップS202で生成されたトレース信号をバンドパスフィルタBPFに通して、脈波帯域のみを抽出した場合の波形を示す。横軸は、フレーム数を示して、縦軸は、Cb+Cr信号のトレース強度を示す。各フレームは、1秒間に30回フレームが更新される(30fps)。上の波形が鼻領域の脈波成分信号であり、下の波形が指先領域の脈波成分信号である。バンドパスフィルタBPFを通過したCb+Cr信号は、
図14のバンドパスフィルタBPFを通過していないCb+Cr信号と比較して、ノイズが低減されている。
【0071】
図15は、ステップS203で得られた鼻領域のスプライン補間後の出力波形を示す。横軸はサンプル(サンプリング周波数1kHz)を示して、縦軸はCb+Crトレース信号の強度を示す。また、指先領域のスプライン補間後のCb+Crトレース強度は、
図15の波形の位相をずらした波形に相当する。鼻領域と指先領域の位相差は、
図15のスプライン補間後のグラフからも検出できる。
【0072】
図16は、ステップS204で得られたスプライン補間後の出力波形を1階微分した信号波形を示す。横軸はサンプル(サンプリング周波数1kHz)を示して、縦軸はCb+Crトレース1階微分信号の強度を示す。Cb+Crトレース1階微分強度は、鼻領域の脈波成分信号のピークと指先領域の脈波成分信号のピークの時刻において、ゼロクロスする波形となる。つまり、相関算出部143は、脈波成分信号を1階微分することにより鼻領域の脈波成分信号のピークと、指先領域の脈波成分信号のピークとの時間差を算出できる。このため、相関算出部143は、脈波伝搬情報を精度よく算出できる。つまり、より正確な血圧情報推定を行うことができる。なお、相関算出部143は、1階微分の出力波形(脈波速度波形)に限らず、2階微分の出力波形(脈波加速度波形)を用いてもよい。
【0073】
図17は、2階微分(脈波加速度波形)の出力波形を示す。横軸はサンプル(サンプリング周波数1kHz)を示して、縦軸はCb+Crトレース2階微分信号の強度を示す。2階微分の出力波形は、脈波成分信号の変曲点、つまり凹凸の切り替わりポイントにおいて、ゼロクロスする波形となる。したがって、相関算出部143は、脈波成分信号を2階微分することにより鼻領域の脈波成分信号の変曲点と、指先領域の脈波成分信号の変曲点との時間差を算出できる。これにより、相関算出部143は、脈波伝搬情報を精度よく算出できる。
【0074】
図18は、相互相関をとって位相差を検出した後の、ステップS205で得られた出力波形である。横軸はサンプル(サンプリング周波数1kHz)を示して、縦軸は相互相関係数を示す。相関算出部143は、鼻領域と指先領域に基づく信号の相互相関を算出する。鼻領域および指先領域の脈波成分信号の位相差は、相関算出部143の算出した相互相関から算出される。
【0075】
図19は、脈波伝搬時間PTTと血圧BPの関係を示す。横軸は時刻(秒)を示して、縦軸は脈波伝搬時間PTT(ms)、および、血圧BP(mmHg)を示す。また、実線が脈波伝搬時間PTTを示して、白抜きの四角が血圧計で測定した血圧BPを示す。
【0076】
相関算出部143は、鼻領域および指先領域の脈波成分信号の位相差から脈波伝搬時間PTTを算出できる。
図19のグラフから、血圧BPが低いと、脈波伝搬時間PTTが大きくなる傾向にあることが分かる。一方、血圧BPが高いと、脈波伝搬時間PTTが小さくなる傾向にあることが分かる。
【0077】
図20は、脈波伝搬に関する血管モデルを示す。脈波伝搬速度PWVは、Moens−Kortewegの式として[数1]で表される。
[数1]
ここで、Lは血管の長さ、ρは血液密度、Rは血管内径、Eは血管壁弾性(ヤング率)、hは血管壁厚さを指す。
【0078】
血管壁弾性(ヤング率)Eと血圧BPの関係は、[数2]式で表される。
[数2]
E
0は血管壁弾性(ヤング率)の公称値、BP
0は血圧公称値、αは定数である。
【0079】
[数1]および[数2]から脈波伝搬時間PTTまたは脈波伝搬速度PWVと血圧BPとの関係式を導くことができる。関係式は、近似を含むものでも含まないものでもよい。
【0080】
血圧情報出力部150は、算出した脈波伝搬時間PTTから予め導いた上記関係式に基づいて、血圧BPを算出する。[数1]と[数2]より、例えば、次の関係式[数3]〜[数5]が導かれる。
[数3]
BP=αPTT+b
[数4]
BP=α/(PTT)
2+b
[数5]
BP=αln(bPTT)
[数3]〜[数5]において、変数である脈波伝搬時間PTT以外のパラメータ(a、b、α)は、以下の通り算出できる。
【0081】
血圧情報出力部150は、鼻領域および指先領域の映像と血圧計による真の血圧BP(正解血圧)を予め同期して収録する。そして、血圧情報出力部150は、鼻領域と指先領域の映像から算出した脈波伝搬時間PTTと血圧BPの組み合わせ群が得られる。血圧情報出力部150は、脈波伝搬時間PTTと血圧BPの組み合わせ群から、複数の連立方程式を解いてパラメータ(a、b、α)を算出する。
【0082】
血圧情報出力部150は、取得した映像から脈波伝搬時間PTTを算出して、血圧BPを推定できる。つまり、血圧情報出力部150は、脈波伝搬時間PTTが算出されると予め算出されたパラメータ(a、b、α)および[数3]〜[数5]のいずれかに基づいて、血圧BPを推定できる。
【0083】
なお、パラメータ(a、b、α)は、最小二乗法で求められてよい。また、血圧情報出力部150は、複数の連立方程式からパラメータ(a、b、α)の数ごとに連立方程式を解き、解いた各パラメータ(a、b、α)の重心または中心値を求めて、重心または中心値をそれぞれのパラメータ(a、b、α)としてもよい。
【0084】
[数3]〜[数5]は、血圧BPが脈波伝搬時間PTTの関数であるが、さらに心拍数HRに基づいた関係式に書き換え、血圧BPを算出してもよい。例えば、[数3]は、心拍数HRを含む関係式に書き換えると[数6]になる。
[数6]
BP=aPTT+bHR+c
【0085】
血圧情報出力部150は、脈波伝搬情報を算出するために抽出した脈波成分信号を周波数解析して、振幅特性が最大となる周波数を心拍数HRとして算出する。血圧情報出力部150は、脈波伝搬情報のみから血圧情報を推定する場合に比べて心拍数HRを用いた方が、正確に血圧情報を推定できる。なお、[数6]のパラメータ(a、b、c)は、[数3]〜[数5]でパラメータ(a、b、α)を求めた場合と同様の手法により予め求められてよい。
【0086】
図21は、パラメータ(a、b、c)の分布を示したベクトル図である。血圧情報出力部150は、ベクトルの重心の各成分をパラメータ(a、b、c)として、予め用意する。また、血圧情報出力部150は、予め用意したパラメータ(a、b、c)と、入力される脈波伝搬時間PTTおよび心拍数HRから[数6]を計算して、血圧BPを算出できる。
【0087】
パラメータ(a、b、c)は、分散が生じるものの、まとまった分布となっている。また、血圧情報出力部150は、顔画像から性別および年齢等を割出して、性別および年齢等に応じたパラメータ(a、b、c)を選択してもよい。これにより、血圧推定の精度が向上する。
【0088】
なお、脈波伝搬時間PTTおよび心拍数HRから最高血圧および最低血圧を算出する場合の方程式は以下の通りである。
最高血圧(SystolicBP)=a
1PTT+b
1HR+c
1
最低血圧(DiastolicBP)=a
2PTT+b
2HR+c
2
つまり、血圧情報出力部150は、最高血圧および最低血圧それぞれに対応するパラメータ(a
1、b
1、c
1)とパラメータ(a
2、b
2、c
2)とをそれぞれ予め算出する。これにより、[数6]を用いて、血圧を推定する場合と同様に最高血圧および最低血圧を同時に推定できる。ここで、最高血圧とは、心臓が収縮した時に、全身に血液が送り出された時の圧力であり、最低血圧とは、心臓が拡張して、心臓内に血液が戻ってきた時の圧力である。
【0089】
図22は、生体103の最高血圧の推定結果を示す。横軸は測定回数(回)を示しており、縦軸は、最高血圧(mmHg)を示す。実線が本例のカメラ映像からの最大血圧推定値(mmHg)を示し、破線が血圧計の最大血圧測定値(mmHg)を示す。ここで、正解値は、血圧計により測定した最大血圧とする。
【0090】
図22において、カメラ映像からの最大血圧推定値と血圧計の最大血圧測定値との間では、5%程度の誤差が生じている。しかしながら、血圧測定は、カフで測定した場合であっても5〜10%程度の誤差は生じるといわれている。そのため、本例の血圧情報出力装置100は、カフと同程度の精度のよい血圧推定ができていることがわかる。本例では、パラメータは、それぞれa1=−0.26、b1=−0.11、c1=106.55である。
【0091】
図23は、最高血圧と最低血圧の推定結果を示す。横軸は測定回数(回)を示して、縦軸は血圧(mmHg)を示す。実線が本例のカメラ映像からの血圧推定値(mmHg)を示して、破線が血圧計の血圧測定値(mmHg)を示す。カメラ映像からの血圧推定方法であっても、血圧計で測定した最高血圧および最低血圧と非常に近い推定結果が得られた。例えば、最高血圧と最低血圧の同時推定において、パラメータは、それぞれa1=−0.26、b1=−0.11、c1=106.55、a2=−0.17、b2=−0.11、c2=64.00である。
【0092】
図24から
図27に、3つの映像から血圧推定する場合を示す。生体103の3箇所の領域からの映像を取得し、3箇所の映像領域の中から2領域間の脈波伝搬情報をそれぞれ出力し、それら複数の2領域間脈波伝搬情報から1つの脈波伝搬情報を算出することで安定した高精度な脈波伝搬情報を獲得し、その脈波伝搬情報に基づいて血圧推定を行なう。つまり、相関の情報が増えて脈波伝搬情報をより正確に算出することができるため、さらに正確な血圧情報推定を行うことができる。なお、血圧情報出力装置100は、2つの映像または3つの映像に基づいて、血圧情報を推定して出力する形態に限らず、4以上の映像から血圧情報を推定して出力してもよい。
【0093】
図24は、血圧情報出力装置100の構成の一例を示す。血圧情報出力装置100は、第1領域映像取得部160、第2領域映像取得部162、第3領域映像取得部164、脈波伝搬情報算出部140および血圧推定部170を備える。本例の血圧情報出力装置100は、第3の脈波情報を含む第3領域映像を取得する第3領域映像取得部164を備える点、脈波伝搬情報算出部140が3つの映像を入力して脈波伝搬情報を出力する点が
図8の血圧情報出力装置と異なる。ここで、第1領域映像取得部160と第2領域映像取得部162と第3領域映像取得部164が
図4〜
図6の映像入力部110に対応し、脈波伝搬情報算出部140と血圧推定部170が
図4〜
図6の血圧情報出力部120に対応する。なお、血圧推定部170がその他の血圧情報を推定して出力する血圧情報出力部であってもよいことは、言うまでもない。
【0094】
第1領域映像取得部160、第2領域映像取得部162および第3領域映像取得部164は、それぞれ生体103の異なる3箇所の領域から映像を抽出して取得する。例えば、鼻を含む領域(鼻領域)と、右手の指先を含む領域(右手指先領域)と、左手の指先を含む領域(左手指先領域)の3箇所の領域から映像を取得する。
【0095】
脈波伝搬情報算出部140は、第1領域映像取得部160および第2領域映像取得部162が取得した領域間の脈波伝搬情報と、第1領域映像取得部160および第3領域映像取得部164が取得した領域間の脈波伝搬情報とを算出する。
【0096】
脈波伝搬情報算出部140は、抽出した2つの脈波伝搬情報の平均をとることで脈波伝搬情報を算出する。例えば、脈波伝搬情報算出部140は、鼻領域と右手指先領域間、および、鼻領域と左手指先領域間の脈波伝搬情報の平均を取ることにより脈波伝搬情報を算出する。
【0097】
血圧推定部170は、脈波伝搬情報算出部140が算出した脈波伝搬情報に基づいて血圧を推定する。このような構成により、血圧情報出力装置100は、安定かつ高精度に血圧を推定できる。
【0098】
図25は、血圧情報出力装置100の構成の一例を示す。本例の血圧情報出力装置100は、脈波伝搬情報算出部140が、第1‐2領域間脈波伝搬情報算出部144および第1‐3領域間脈波伝搬情報算出部145を有して、血圧推定部170が、第1‐2領域間血圧推定部172、第1‐3領域間血圧推定部174および推定血圧値平均部176を有する点で
図24と異なる。ここで、第1領域映像取得部160と第2領域映像取得部162と第3領域映像取得部164が
図4〜
図6の映像入力部110に対応し、脈波伝搬情報算出部140と血圧推定部170が
図4〜
図6の血圧情報出力部120に対応する。なお、血圧推定部170がその他の血圧情報を推定して出力する血圧情報出力部であってもよいことは、言うまでもない。
【0099】
第1‐2領域間脈波伝搬情報算出部144は、第1領域映像取得部160および第2領域映像取得部162が取得した映像が入力される。第1‐2領域間脈波伝搬情報算出部144は、入力された映像に基づいて、脈波伝搬情報を算出する。
【0100】
第1‐3領域間脈波伝搬情報算出部145には、第1領域映像取得部160および第3領域映像取得部164が取得した映像が入力される。第1‐3領域間脈波伝搬情報算出部145は、入力された映像に基づいて、脈波伝搬情報を算出する。
【0101】
第1‐2領域間血圧推定部172には、第1‐2領域間脈波伝搬情報算出部144が算出した脈波伝搬情報が入力される。第1‐2領域間血圧推定部172は、入力された脈波伝搬情報に基づいて血圧を推定する。
【0102】
第1‐3領域間血圧推定部174には、第1‐3領域間脈波伝搬情報算出部145が算出した脈波伝搬情報が入力される。第1‐3領域間血圧推定部174は、入力された脈波伝搬情報に基づいて血圧を推定する。
【0103】
推定血圧値平均部176は、第1‐2領域間血圧推定部172および第1‐3領域間血圧推定部174が推定した血圧の平均値を算出する。推定血圧値平均部176は、求めた平均値を推定血圧として出力する。これにより、血圧情報出力装置100は、安定かつ高精度に血圧を推定できる。
【0104】
図26は、血圧情報出力装置100の構成の一例を示す。本例の血圧情報出力装置100は、動脈閉塞指標算出部210を備える点で
図25と異なる。ここで、第1領域映像取得部160と第2領域映像取得部162と第3領域映像取得部164が
図4〜
図6の映像入力部110に対応し、脈波伝搬情報算出部140と血圧推定部170と動脈閉塞指標算出部210が
図4〜
図6の血圧情報出力部120に対応する。
【0105】
第1‐2領域間脈波伝搬情報算出部144には、第1領域映像取得部160および第2領域映像取得部162が取得した映像が入力される。第1‐2領域間脈波伝搬情報算出部146は、入力された映像に基づいて、第1領域および第2領域間の脈波伝搬情報を算出して、第1‐2領域間血圧推定部172に出力する。
【0106】
第1‐3領域間脈波伝搬情報算出部145には、第1領域映像取得部160および第3領域映像取得部164が取得した映像が入力される。第1‐3領域間脈波伝搬情報算出部147は、入力された映像に基づいて、第1領域および第3領域間の脈波伝搬情報を算出して、第1‐3領域間血圧推定部174に出力する。
【0107】
動脈閉塞指標算出部210には、第1‐2領域間血圧推定部172および第1‐3領域間血圧推定部174が推定した血圧値がそれぞれ入力される。動脈閉塞指標算出部210は、入力された複数の血圧値を比較して、動脈閉塞の診断指標を出力する。
【0108】
例えば、動脈閉塞指標算出部210には、鼻領域および右手指先領域間の血圧推定結果と、鼻領域および左手指先領域間の血圧推定結果が入力される。これにより、動脈閉塞指標算出部210は、右側と左側の血圧推定値を比較して、上腕動脈の閉塞診断の指標にする。また、動脈閉塞指標算出部210は、左右の脈波伝搬情報が違っているかどうかを調べることでも上腕動脈の閉塞診断の指標にすることができる。さらに、動脈閉塞指標算出部210は、左右の手指先の代わりに左右の下肢を抽出領域として、股動脈の閉塞診断の指標としてよい。なお、本例では、動脈閉塞指標算出部210への入力は、第1‐2領域間血圧推定部172が推定した血圧値と、第1‐3領域間血圧推定部が推定した血圧値であるが、血圧値でなくぞれぞれの脈波伝搬時間PTTを入力として動脈閉塞指標を算出してもよい。
【0109】
図27は、血圧情報出力装置100の構成の一例を示す。本例の血圧情報出力装置100は、相関算出部143を備える点で
図24と相違する。相関算出部143は、第1‐2領域間相関算出部146、第1‐3領域間相関算出部147および第2‐3領域間相関算出部148を備える。ここで、第1領域映像取得部160と第2領域映像取得部162と第3領域映像取得部164が
図4〜
図6の映像入力部110に対応し、相関算出部143と脈波伝搬情報算出部140と血圧推定部170が
図4〜
図6の血圧情報出力部120に対応する。なお、血圧推定部170がその他の血圧情報を推定して出力する血圧情報出力部であってもよいことは、言うまでもない。
【0110】
第1‐2領域間相関算出部146には、第1領域映像取得部160および第2領域映像取得部162が取得した映像が入力される。第1‐2領域間相関算出部146は、第1領域および第2領域間の相関を算出して、脈拍伝搬情報算出部140に出力する。
【0111】
第1‐3領域間相関算出部147には、第1領域映像取得部160および第3領域映像取得部164が取得した映像が入力される。第1‐3領域間相関算出部147は、第1領域および第3領域間の相関を算出して、脈拍伝搬情報算出部140に出力する。
【0112】
第2‐3領域間相関算出部148には、第2領域映像取得部162および第3領域映像取得部164が取得した映像が入力される。第2‐3領域間相関算出部148は、第2領域および第3領域間の相関を算出して、脈拍伝搬情報算出部140に出力する。
【0113】
脈波伝搬情報算出部140は、生体103の異なる3箇所の映像から3つの2領域間の相関が入力される。本例の脈波伝搬情報算出部140は、複数の2領域間の相関から1つの脈波伝搬情報を算出する。これにより、血圧情報出力装置100は、安定かつ高精度に血圧推定を行う。
【0114】
例えば、脈波伝搬情報算出部140には、鼻領域および右手指先領域間の相関と、鼻領域および左手指先領域間の相関と、右手指先領域および左手指先領域間の相関とが入力される。脈波伝搬情報算出部140は、これら3つの相関に基づいて脈波伝搬情報を算出する。具体的には、脈波伝搬情報算出部140は、3つの相関の平均を取って脈波伝搬情報を出力してよい。また、脈波伝搬情報算出部140は、3つの相関の平均をとる代わりに、3つの相関の中から相関の高いものを選択して脈波伝搬情報を出力してよい。そして、出力された脈波伝搬情報が血圧推定部170に入力される。これにより、血圧情報出力装置100は、安定して高精度に血圧BPの推定を行う。
【0115】
(動脈硬化の推定)
血圧情報出力装置100は、算出した血圧BPから動脈硬化を推定できる。閉塞性動脈硬化症は、血管壁が肥厚し、硬く、狭くなった症状を指す。閉塞性動脈硬化症は、抹消動脈硬化が進んだ状態で、血管の搾取が高度になると脈波が伝搬されにくくなり、脈波伝搬時間PTTが短くなる。すなわち、脈波伝搬時間PTTは、動脈硬化が進んで血管壁が肥厚し、硬く、狭くなった血管ほど小さくなる。従来のカフを用いた上腕動脈から心臓を含む足首動脈の間の脈波伝搬時間PTTの測定に準じて、手指先領域から足首領域間の脈波伝搬情報に基づいて脈波伝搬時間PTTを算出することにより、動脈硬化の推定を手軽に行うことができる。
【0116】
また、血圧情報出力装置100は、手指先領域、足首領域に加えて、鼻領域の脈波伝搬情報も同時に算出することで、鼻領域から手指先領域間の相関および鼻領域から足首領域間の相関から、手指先血圧と足首血圧も同時に推定することができる。例えば、足首血圧および手指先血圧比も考慮することで、より正確に動脈硬化を推定できる。
【0117】
(血管年齢の推定)
また、血圧情報出力装置100は、血管の硬さの統計データからあてはまる年齢を割り出して、動脈硬化の推定結果を推定血管年齢として表示する。これにより、血圧情報出力装置100は、ユーザーにとってより分かりやすく表示できる。
【0118】
図28は、本実施形態に係るコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD−ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部とを備える。
【0119】
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0120】
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ2060は、CD−ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
【0121】
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び/又は、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続すると共に、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
【0122】
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
【0123】
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を血圧情報出力装置として機能させるプログラムは、第1領域映像取得モジュール、第2領域映像取得モジュール、第3領域映像取得モジュール、脈拍伝搬情報算出モジュールおよび血圧推定モジュールとを備える。これらのプログラム又はモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、血圧情報出力装置としてそれぞれ機能させる。
【0124】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である第1領域映像取得部160、第2領域映像取得部162、第3領域映像取得部164、脈拍伝搬情報算出部140および血圧推定部170として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の血圧情報出力装置100が構築される。
【0125】
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、又はCD−ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置又は通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0126】
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060(CD−ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記憶部、または記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
【0127】
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合(又は不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
【0128】
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0129】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0130】
以上に示したプログラム又はモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095の他に、DVD又はCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
【0131】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。