特許第6308840号(P6308840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コルグの特許一覧

特許6308840充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータ
<>
  • 特許6308840-充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータ 図000004
  • 特許6308840-充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータ 図000005
  • 特許6308840-充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータ 図000006
  • 特許6308840-充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータ 図000007
  • 特許6308840-充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータ 図000008
  • 特許6308840-充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308840
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータ
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/057 20060101AFI20180402BHJP
   H03G 3/00 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   G10H1/057 Z
   H03G3/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-71267(P2014-71267)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194531(P2015-194531A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130329
【氏名又は名称】株式会社コルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】池内 順一
【審査官】 鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−181091(JP,A)
【文献】 実開昭51−024130(JP,U)
【文献】 特開昭55−012901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H1/00−1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッファの入力に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサに電荷を充電する充電回路であって、
eを自然対数の底、^をべき乗を示す記号、kを実数とし、
指数変換部と、充電後の電圧に対応した充電レベル電圧(Vボルト)を入力する充電レベル点と、充電時間に対応した充電時間電圧(Vボルト)を入力する充電時間点と、前記バッファの出力電圧(VEGボルト)を入力する帰還点と、前記コンデンサに充電する電流が通過する充電電流通過点と、前記指数変換部と前記帰還点の間に接続された電流調整用抵抗(REGオーム)を有し、
前記充電電流通過点に、
((V−VEG)/REG)・e^(k・V
の電流を流す
ことを特徴とする充電回路。
【請求項2】
バッファの入力に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサに電荷を充電する充電回路であって、
充電後の電圧に対応した電圧(充電レベル電圧)を入力する充電レベル点、充電時間に対応した電圧(充電時間電圧)を入力する充電時間点、前記バッファの出力電圧を入力する帰還点、前記コンデンサに充電する電流が通過する充電電流通過点、正の電源と接続される正バイアス点、NPN型トランジスタ、PNP型トランジスタ、レベル用抵抗、バイアス用抵抗、時間用抵抗、コレクタ用抵抗、電流調整用抵抗を有し、
前記NPN型トランジスタのコレクタと前記PNP型トランジスタのエミッタと前記充電レベル点が接続され、
前記NPN型トランジスタのエミッタと前記PNP型トランジスタのベースが接続され、
前記NPN型トランジスタのベースと前記NPN型トランジスタのコレクタの間に、前記レベル用抵抗が接続され、
前記NPN型トランジスタのベースと前記正バイアス点の間に、前記バイアス用抵抗が接続され、
前記NPN型トランジスタのベースと前記充電時間点の間に、前記時間用抵抗が接続され、
前記PNP型トランジスタのコレクタと前記充電電流通過点との間に、前記コレクタ用抵抗が接続され、
前記PNP型トランジスタのベースと前記帰還点との間に、前記電流調整用抵抗が接続される
ことを特徴とする充電回路。
【請求項3】
バッファの入力に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサから電荷を放電する放電回路であって、
eを自然対数の底、^をべき乗を示す記号、kを実数とし、
指数変換部と、放電後の電圧に対応した放電レベル電圧(Vボルト)を入力する放電レベル点と、放電時間に対応した放電時間電圧(Vボルト)を入力する放電時間点と、前記バッファの出力電圧(VEGボルト)を入力する帰還点と、前記コンデンサから放電する電流が通過する放電電流通過点と、前記指数変換部と前記帰還点の間に接続された電流調整用抵抗(REGオーム)を有し、
前記放電電流通過点に、
((VEG−V)/REG)・e^(k・V
の電流を流す
ことを特徴とする放電回路。
【請求項4】
バッファの入力に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサから電荷を放電する放電回路であって、
放電後の電圧に対応した電圧(放電レベル電圧)を入力する放電レベル点、放電時間に対応した電圧(放電時間電圧)を入力する放電時間点、前記バッファの出力電圧を入力する帰還点、前記コンデンサから放電する電流が通過する放電電流通過点、負の電源と接続される負バイアス点、PNP型トランジスタ、NPN型トランジスタ、レベル用抵抗、バイアス用抵抗、時間用抵抗、コレクタ用抵抗、電流調整用抵抗を有し、
前記PNP型トランジスタのコレクタと前記NPN型トランジスタのエミッタと前記放電レベル点が接続され、
前記PNP型トランジスタのエミッタと前記NPN型トランジスタのベースが接続され、
前記PNP型トランジスタのベースと前記PNP型トランジスタのコレクタの間に、前記レベル用抵抗が接続され、
前記PNP型トランジスタのベースと前記負バイアス点の間に、前記バイアス用抵抗が接続され、
前記PNP型トランジスタのベースと前記放電時間点の間に、前記時間用抵抗が接続され、
前記NPN型トランジスタのコレクタと前記放電電流通過点との間に、前記コレクタ用抵抗が接続され、
前記NPN型トランジスタのベースと前記帰還点との間に、前記電流調整用抵抗が接続される
ことを特徴とする放電回路。
【請求項5】
請求項1または2記載の充電回路と、
請求項3または4記載の放電回路である第1放電回路と、
請求項3または4記載の放電回路である第2放電回路と、
前記充電回路が電荷を充電し、前記第1放電回路が電荷を放電し、前記第2放電回路が電荷を放電する共通のコンデンサと、
入力が前記コンデンサの一端に接続され、前記充電回路の帰還点と、前記第1放電回路の帰還点と、前記第2放電回路の帰還点に出力電圧を入力する共通のバッファと、
前記充電回路の充電電流通過点と、前記第1放電回路の放電電流通過点と、前記第2放電回路の放電電流通過点と、前記コンデンサの一端と接続された選択部と
を備え、
前記充電回路の充電レベル電圧がアタックレベルを示す電圧、前記充電回路の充電時間電圧がアタック時間を示す電圧、前記第1放電回路の放電レベル電圧がサステインレベルを示す電圧、前記第1放電回路の放電時間電圧がディケイ時間を示す電圧、前記第2放電回路の放電レベル電圧が0ボルト、前記第2放電回路の放電時間電圧がリリース時間を示す電圧とし、
前記選択部は、前記充電回路が前記コンデンサに電荷を充電する状態、前記第1放電回路が前記コンデンサから電荷を放電する状態、前記第2放電回路が前記コンデンサから電荷を放電する状態を選択する
エンベローブジェネレータ。
【請求項6】
請求項5記載のエンベローブジェネレータであって、
前記選択部は、
第1ダイオードと、第2ダイオードと、第3ダイオードと、第4ダイオードと、第5ダイオードと、第6ダイオードと、
制御部と
を備え、
前記制御部は、出力電圧が高い状態と低い状態の2つの状態を選択できるアタック制御端子、ディケイ・サステイン制御端子、リリース制御端子を有し、
前記第1ダイオードのアノードと前記第2ダイオードのアノードと前記充電回路の充電電流通過点が接続され、
前記第3ダイオードのカソードと前記第4ダイオードのカソードと第1放電回路の放電電流通過点が接続され、
前記第5ダイオードのカソードと前記第6ダイオードのカソードと第2放電回路の放電電流通過点が接続され、
前記第1ダイオードのカソードと前記第3ダイオードのアノードと前記第5ダイオードのアノードと前記コンデンサの一端とが接続され、
前記第2ダイオードのカソードが前記制御部のアタック制御端子に接続され、
前記第4ダイオードのアノードが前記制御部のディケイ・サステイン制御端子に接続され、
前記第6ダイオードのアノードが前記制御部のリリース制御端子に接続され、
前記アタック制御端子と前記ディケイ・サステイン制御端子と前記リリース制御端子の出力電圧のすべてが高い状態のときに、前記充電回路が前記コンデンサに電荷を充電し、
前記アタック制御端子と前記ディケイ・サステイン制御端子の出力電圧が低い状態で、前記リリース制御端子の出力が高い状態のときに、前記第1放電回路が前記コンデンサから電荷を放電し、
前記アタック制御端子と前記リリース制御端子の出力電圧が低い状態で、前記ディケイ・サステイン制御端子の出力電圧が高い状態のときに、前記第2放電回路が前記コンデンサから電荷を放電する
ことを特徴とするエンベローブジェネレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽音のエンベローブを生成するための充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示された電圧制御可変振幅増幅器(VCA)を用いて楽音のエンベローブを生成する技術が、アナログ技術を用いた従来技術として知られておいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−155396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が出願された時期は、アナログ技術を用いてエンベローブを生成することが主流であり、特許文献1に示されたような電圧制御可変振幅増幅器(VCA)を用いたチップが流通していた。その後、ディジタル技術の進歩に伴って、ディジタル技術を用いてエンベローブを生成する技術が主流となり、アナログ技術を用いたものはほとんど存在しなくなった。近年は、アナログ技術への魅力から、アナログ技術を用いたエンベローブジェネレータが再び求められるようになった。しかし、既に楽音用の電圧制御可変振幅増幅器を用いたチップは流通しておらず、新しくチップを製造するまでの需要はない。
【0005】
また、生成する1つのエンベローブの時間は、操作者の指示に応じて2ミリ秒〜20秒程度の幅で可変にする必要がある。つまり、時間変化を1万倍の範囲で可変にする必要がある。そして、操作しやすい時間変化ためには、操作者の指示を示す入力電圧に対して指数的に時間を変化させることが求められる。このような条件を満たさなければならないので、従来のアナログ技術を用いたエンベローブジェネレータは構成が複雑であり、ディスクリート回路で構成したのでは、合理的なコストでは生産できない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも素子数の少ないアナログ回路による充電回路、放電回路、エンベローブジェネレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
eを自然対数の底、^をべき乗を示す記号、kを実数とする。本発明の充電回路は、入力された電圧を示す電圧を出力するバッファの入力に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサに電荷を充電する。本発明の充電回路は、指数変換部と、充電後の電圧に対応した充電レベル電圧(Vボルト)を入力する充電レベル点と、充電時間に対応した充電時間電圧(Vボルト)を入力する充電時間点と、バッファの出力電圧(VEGボルト)を入力する帰還点と、コンデンサに充電する電流が通過する充電電流通過点と、指数変換部と帰還点の間に接続された電流調整用抵抗(REGオーム)を有する。そして、充電電流通過点に、
((V−VEG)/REG)・e^(k・V
の電流を流す。
【0008】
本発明の放電回路は、入力された電圧を示す電圧を出力するバッファの入力に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサから電荷を放電する。本発明の放電回路は、指数変換部と、放電後の電圧に対応した放電レベル電圧(Vボルト)を入力する放電レベル点と、放電時間に対応した放電時間電圧(Vボルト)を入力する放電時間点と、前記バッファの出力電圧(VEGボルト)を入力する帰還点と、前記コンデンサから放電する電流が通過する放電電流通過点と、前記指数変換部と前記帰還点の間に接続された電流調整用抵抗(REGオーム)を有する。そして、放電電流通過点に、
((VEG−V)/REG)・e^(k・V
の電流を流す。
【0009】
本発明のエンベローブジェネレータは、上述の充電回路1つと放電回路2つ(第1放電回路、第2放電回路)とコンデンサとバッファと選択部を備える。コンデンサは、充電回路が電荷を充電し、第1放電回路が電荷を放電し、第2放電回路が電荷を放電する共通のコンデンサである。バッファは、入力がコンデンサの一端に接続され、充電回路の帰還点と、第1放電回路の帰還点と、第2放電回路の帰還点に出力電圧を入力する共通のバッファである。選択部は、充電回路の電流通過点と、第1放電回路の電流通過点と、第2放電回路の電流通過点と、コンデンサの一端と接続されている。選択部は、充電回路がコンデンサに電荷を充電する状態、第1放電回路がコンデンサから電荷を放電する状態、第2放電回路がコンデンサから電荷を放電する状態、充電も放電もしない状態を選択する。本発明のエンベローブジェネレータにおいては、充電回路の充電レベル電圧がアタックレベルに対応した電圧、充電回路の充電時間電圧がアタック時間に対応した電圧、第1放電回路の放電レベル電圧がサステインレベルに対応した電圧、第1放電回路の放電時間電圧がディケイ時間に対応した電圧、第2放電回路の放電レベル電圧が0ボルト、第2放電回路の放電時間電圧がリリース時間に対応した電圧である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の充電回路と放電回路であれば、電流調整用抵抗をバッファの出力と指数変換部との間に挿入し、充放電時のエンベローブの形状を整えている。したがって、指数変換部は簡易なアンチログ回路で構成でき、素子数を少なくできる。また、本発明のエンベローブジェネレータも、本発明の素子数を少なくできる充電回路と放電回路で構成できるので、全体の素子数を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】楽音のエンベローブを示す図。
図2】本発明の充電回路の機能構成例を示す図。
図3】バッファの構成例を示す図。
図4】本発明の放電回路の機能構成例を示す図。
図5】本発明のエンベローブジェネレータの機能構成例を示す図。
図6】選択部の内部構造の例も示した本発明のエンベローブジェネレータの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。また、eを自然対数の底、^をべき乗を示す記号、kを実数とする。さらに、図中で配線同士が交差している場合、点が示されているときは接続されており、点が示されていないときは接続されていないことを示している。
【実施例1】
【0013】
図1に、楽音のエンベローブを示す。エンベローブは、アタックA1,ディケイD1,サステインS1,リリースR1で構成される。電子楽器(シンセサイザやエフェクタ)のエンベローブジェネレータでは、操作者の操作(操作パネル上のツマミやキーボードへの入力)に従ったアタックレベルに対応した電圧VAL、アタック時間ATに対応した電圧VAT、ディケイ時間DTに対応した電圧VDT、サステインレベルに対応した電圧VSL、リリース時間RTに対応した電圧VRT、および、キーボードを押している時間に対応したサステインレベルを維持する時間などを入力とし、エンベローブを示す電圧VEGを生成する。エンベローブジェネレータは、バッファ、バッファの入力に一端が接続されて他端が接地されたコンデンサ、コンデンサの電圧を制御する充放電回路で構成され、バッファの出力が生成されたエンベローブを示す電圧VEGである。
【0014】
以下では、アタックを生成する充電回路と、ディケイ、サステイン、リリースを生成する放電回路とを説明し、その後で充電回路と放電回路を組み合わせたエンベローブジェネレータについて説明する。
【0015】
<充電回路>
図2に本発明の充電回路の機能構成例を示す。充電回路100は、入力された電圧を示す電圧を出力するバッファ160の入力に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサ150に電荷を充電する。充電回路100は、指数変換部105と、充電後の電圧に対応した充電レベル電圧(Vボルト)を入力する充電レベル点131と、充電時間に対応した充電時間電圧(Vボルト)を入力する充電時間点133と、バッファ160の出力電圧(VEGボルト)を入力する帰還点135と、コンデンサ150に充電する電流が通過する充電電流通過点134と、正の電源101と接続される正バイアス点132と、指数変換部105と帰還点135の間に接続された電流調整用抵抗125(REGオーム)を有する。なお、充電レベル点131、正バイアス点132、充電時間点133、充電電流通過点134、帰還点135は、「点」と表現しているが、端子のように識別できるものでもよいし、配線上の一部のように明確な「点」として識別できないものでもよい。また、充電回路100の説明では表現を一般化しているが、充電レベル電圧Vがアタックレベルを示す電圧VALに対応し、充電時間電圧Vがアタック時間ATを示す電圧VATに対応している。ただし、通常はV>VALに設定しており、制御手段によってアタック時間ATの間充電する(図1参照)。また、電圧VATはアタック時間ATを決めるものではなく、電圧VATはアタック時間ATに対応したエンベローブを生成するための充電時の時定数を決めるものである。時定数については、後述する。
【0016】
指数変換部105は、いわゆるアンチログ回路であり、充電時間に対応した充電時間電圧(Vボルト)を指数変換する。具体的には、次のように構成すればよい。指数変換部105は、NPN型トランジスタ111、PNP型トランジスタ112、レベル用抵抗121、バイアス用抵抗122、時間用抵抗123、コレクタ用抵抗124を有する。そして、NPN型トランジスタ111のコレクタとPNP型トランジスタ112のエミッタを充電レベル点131に接続する。NPN型トランジスタ111のエミッタとPNP型トランジスタ112のベースを接続する。NPN型トランジスタ111のベースとコレクタの間に、レベル用抵抗121を接続する。NPN型トランジスタ111のベースと正バイアス点132の間に、バイアス用抵抗122を接続する。NPN型トランジスタ111のベースと充電時間点133の間に、時間用抵抗123を接続する。PNP型トランジスタ112のコレクタと充電電流通過点134との間に、コレクタ用抵抗124を接続する。PNP型トランジスタ112のベースと帰還点135との間に、電流調整用抵抗125が接続される。
【0017】
このように構成すると、充電電流通過点134には、
((V−VEG)/REG)・e^(k・V
の電流が流れる。なお、kはボルツマン定数や温度などから決まる値である。また、バッファの出力電圧(VEGボルト)がエンベローブの形状を示す電圧であり、端子190からの出力電圧がエンベローブの形状を示している。ここで、コンデンサ150の静電容量をC(ファラッド)、充電開始時のコンデンサの電圧VEGを0(ボルト)、充電開始時からの時間をt(秒)とすると、
【0018】
【数1】
【0019】
のように出力電圧は変化する。つまり、時定数はREGC/(e^(k・V))である。よって、充電時間電圧Vに対して、エンベローブの形状を指数的に変化させることができる。なお、「指数的に変化させることができる」とは、例えば充電時間電圧を1ボルトから2ボルトに変化させたときには、時定数が100ミリ秒から1秒に変化し、充電時間電圧を2ボルトから3ボルトに変化させたときには、時定数が1秒から10秒に変化させることができることを意味している。また、電流調整用抵抗125の抵抗値REGで、時定数をリニアに調整できる。そして、充電レベル電圧Vと抵抗値REGを調整すれば、アタックレベルを示す電圧VALとアタック時間ATとを維持しながら(同じに保ちながら)、エンベローブの形状(曲がり具合)を調整できる。例えば、図1のアタックA1とアタックA2のように、アタックレベルとアタック時間とが同じで、形状が異なるエンベローブの中から、望ましい形状のエンベローブを選ぶことができる。言い換えると、充電レベル電圧Vと抵抗値REGを適宜設計することで、充電時(アタック時)のエンベローブをどのような曲線にするのかを調整できる。したがって、充電回路100であれば、時定数を指数的に大きく変化させることと、リニアに変化させること(調整すること)が容易にでき、指数変換部105を簡易なアンチログ回路で構成できるので、充電回路全体の素子数を少なくできる。
【0020】
図3に、バッファの構成例を示す。バッファ160は、図3(A)に示すようにオペアンプ161で構成してもよいし、図3(B)に示すように電界効果トランジスタ162とダイオード163と抵抗164で構成してもよい。
【0021】
<放電回路>
図4に本発明の放電回路の機能構成例を示す。放電回路200は、入力された電圧を示す電圧を出力するバッファ160の入力に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサ150から電荷を放電する。放電回路200は、指数変換部205と、放電後の電圧に対応した放電レベル電圧(Vボルト)を入力する放電レベル点231と、放電時間に対応した放電時間電圧(Vボルト)を入力する放電時間点233と、バッファ160の出力電圧(VEGボルト)を入力する帰還点235と、コンデンサから放電する電流が通過する放電電流通過点234と、負の電源201と接続される負バイアス点232と、指数変換部205と帰還点235の間に接続された電流調整用抵抗225(REGオーム)を有する。なお、放電レベル点231、負バイアス点232、放電時間点233、放電電流通過点234、帰還点235は、「点」と表現しているが、端子のように識別できるものでもよいし、配線上の一部のように明確な「点」として識別できないものでもよい。放電回路200の説明では表現を一般化しているが、図1のディケイD1のときは放電レベル電圧Vがサステインレベルを示す電圧VSL、リリースR1のときは放電レベル電圧Vが0ボルトに対応している。また、放電時間電圧Vがディケイ時間DTを示す電圧VDTやリリース時間RTを示す電圧VRTに対応している。ただし、必ずしもV=VSLやV=0でなくてもよく、V<VSLやV<0に設定してもよい。図1には、VSLよりも低い放電レベル電圧VDLをサステインレベルに対応した電圧、負の放電レベル電圧VRLをリリースレベル(0ボルト)に対応した電圧として設定した例も示している。このように放電レベル電圧を放電後の電圧(サステインレベルの電圧や0ボルト)よりも低く設定し、放電時間(DTまたはRT)のタイミングで放電後の電圧になるように設定してもよい。放電レベル電圧を放電後の電圧よりも低くした場合のディケイとリリースがD2,R2である。また、放電時間電圧Vは、ディケイ時間DTやリリース時間RTに対応した放電時の時定数を決めるものである。
【0022】
指数変換部205は、いわゆるアンチログ回路であり、放電時間に対応した放電時間電圧(Vボルト)を指数変換する。具体的には、次のように構成すればよい。指数変換部205は、PNP型トランジスタ211、NPN型トランジスタ212、レベル用抵抗221、バイアス用抵抗222、時間用抵抗223、コレクタ用抵抗224を有する。そして、PNP型トランジスタ211のコレクタとNPN型トランジスタ212のエミッタを放電レベル点231に接続する。PNP型トランジスタ211のエミッタとNPN型トランジスタ212のベースを接続する。PNP型トランジスタ211のベースとコレクタの間に、レベル用抵抗221を接続する。PNP型トランジスタ211のベースと負バイアス点232の間に、バイアス用抵抗222を接続する。PNP型トランジスタ211のベースと放電時間点233の間に、時間用抵抗223を接続する。NPN型トランジスタ212のコレクタと放電電流通過点234との間に、コレクタ用抵抗224を接続する。NPN型トランジスタ212のベースと帰還点235との間に、電流調整用抵抗225を接続する。
【0023】
このように構成すると、放電電流通過点234には、
((VEG−V)/REG)・e^(k・V
の電流が流れる。なお、kはボルツマン定数や温度などから決まる値である。また、バッファの出力電圧(VEGボルト)がエンベローブの形状を示す電圧であり、端子190からの出力電圧がエンベローブの形状を示している。ここで、コンデンサ150の静電容量をC(ファラッド)、放電開始時のコンデンサの電圧VEGをV(ボルト)、放電開始時からの時間をt(秒)とすると、
【0024】
【数2】
【0025】
のように出力電圧は変化する。つまり、時定数はREGC/(e^(k・V))である。よって、放電時間電圧Vに対して、エンベローブの形状を指数的に変化させることができる。また、電流調整用抵抗225の抵抗値REGで、時定数をリニアに調整できる。そして、放電レベル電圧Vと抵抗値REGを調整すれば、サステインレベルを示す電圧VSLとディケイ時間DTとを維持しながら(同じに保ちながら)、エンベローブの形状(曲がり具合)を調整できる。例えば、図1のディケイD1とディケイD2のように、サステインレベルとディケイ時間とが同じで、形状が異なるエンベローブの中から、望ましい形状のエンベローブを選ぶことができる。言い換えると、放電レベル電圧Vと抵抗値REGを適宜設計することで、放電時(ディケイやリリースの時)のエンベローブをどのような曲線にするのかを調整できる。したがって、放電回路200であれば、時定数を指数的に大きく変化させることと、リニアに変化させること(調整すること)が容易にでき、指数変換部205を簡易なアンチログ回路で構成できるので、放電回路全体の素子数を少なくできる。
【0026】
<充電回路と放電回路の共通点>
充電回路100と放電回路200では、電流調整用抵抗125,225は、指数変換部205(いわゆるアンチログ回路)の絶対値を調整する部分であり、放電電流通過点134,234に流れる電流は、電流調整用抵抗125,225の抵抗値REGに反比例して変化する。そして、出力(コンデンサ150の電圧と同じ)につながっているので、電圧の変化は指数カーブとなる。言い換えると、電流調整用抵抗125,225の抵抗値REGを大きくしたときの回路の振る舞いと、コンデンサ150の容量を大きくしたときの回路の振る舞いは同じである。したがって、電流調整用抵抗125,225の抵抗値REGを大きくすることで、コンデンサ150を小さくすることも可能である。また、充電回路100と放電回路200では、充電レベル電圧または放電レベル電圧と電流調整用抵抗125,225の抵抗値REGを調整することで、上述のようにエンベローブの形状を変えることができる。
【0027】
<エンベローブジェネレータ>
図5に本発明のエンベローブジェネレータの機能構成例を示す。エンベローブジェネレータ10は、バッファ160、バッファ160の入力に一端が接続されて他端が接地されたコンデンサ150、1つの充電回路100と2つの放電回路200−1,200−2と選択部300とを備える。選択部300は、制御部310を備えている。コンデンサ150は、充電回路100が電荷を充電し、放電回路200−1が電荷を放電し、放電回路200−2が電荷を放電する共通のコンデンサである。バッファ160は、充電回路100の帰還点135と、放電回路200−1の帰還点235−1と、第2放電回路200−2の帰還点235−2に出力電圧を入力する共通のバッファである。エンベローブジェネレータ10では、充電回路100の充電レベル電圧がアタックレベルに対応した電圧、充電回路100の充電時間電圧がアタック時間に対応した電圧、放電回路200−1の放電レベル電圧がサステインレベルに対応した電圧、放電回路200−1の放電時間電圧がディケイ時間に対応した電圧、放電回路200−2の放電レベル電圧がリリースレベル(0ボルト)に対応した電圧、放電回路200−2の放電時間電圧がリリース時間に対応した電圧である。
【0028】
選択部300は、充電回路100の充電電流通過点134と、放電回路200−1の放電電流通過点234−1と、放電回路200−2の放電電流通過点234−2と、コンデンサ150の一端と接続される。選択部300は、充電回路100がコンデンサ150に電荷を充電する状態、放電回路200−1がコンデンサ150から電荷を放電する状態、放電回路200−2がコンデンサ150から電荷を放電する状態、充電も放電もしない状態を選択する。制御部310は、バッファ160の出力を監視しながら、操作者の操作に従って、上述の制御を行えばよい。選択する具体的な手段は、アナログスイッチのような電子的なスイッチまたはリレーのような機械的なスイッチによる切り替えでもよいし、ダイオードなどを組み合わせた電気的な切り替えでもよい。
【0029】
図6に、選択部300の内部構造の例も示した本発明のエンベローブジェネレータの構成例を示す。選択部300は、6つのダイオード321〜326と制御部310を備える。制御部310は、出力電圧が高い状態と低い状態の2つの状態を選択できるアタック制御端子311、ディケイ・サステイン制御端子312、リリース制御端子313を有する。ダイオード321のアノードとダイオード322のアノードと充電回路100の充電電流通過点134が接続される。ダイオード323のカソードとダイオード324のカソードと放電回路200−1の放電電流通過点234−1が接続される。ダイオード325のカソードとダイオード326のカソードと放電回路200−2の放電電流通過点234−2が接続される。ダイオード321のカソードとダイオード323のアノードとダイオード325のアノードとコンデンサ150の一端とが接続される。ダイオード322のカソードが制御部310のアタック制御端子311に接続される。ダイオード324のアノードが制御部310のディケイ・サステイン制御端子312に接続される。ダイオード326のアノードが制御部310のリリース制御端子313に接続される。
【0030】
アタック制御端子311とディケイ・サステイン制御端子312とリリース制御端子313の出力電圧のすべてが高い状態のときに、充電回路100がコンデンサ150に電荷を充電する。アタック制御端子311とディケイ・サステイン制御端子312の出力電圧が低い状態で、リリース制御端子313の出力が高い状態のときに、放電回路200−1がコンデンサ150から電荷を放電する。アタック制御端子311とリリース制御端子313の出力電圧が低い状態で、ディケイ・サステイン制御端子312の出力電圧が高い状態のときに、放電回路200−2がコンデンサ150から電荷を放電する。また、アタック制御端子311の出力電圧が低い状態で、ディケイ・サステイン制御端子312とリリース制御端子313の出力電圧が高い状態のときに、コンデンサ150には充電も放電もされない。
【0031】
出力電圧が「高い状態」、「低い状態」とは、ダイオード321〜326に順方向の電流が流れるか流れないかを切り替える程度の「高い状態」と「低い状態」を意味している。具体的には、コンデンサ150の一端が取り得る電圧以上の電圧が「高い状態」であり、取り得る電圧以下の電圧が「低い状態」である。例えば、アタック制御端子311の出力電圧が低い状態では、ダイオード322には順方向に電流がなられる状態なので、ダイオード321のアノードの電圧も低い状態になる。したがって、ダイオード321には電流が流れないので、スイッチを切った状態と同じになる。つまり、アタック制御端子311の出力電圧を低い状態にすると、充電回路100は切り離されて状態と等価になる。逆に、アタック制御端子311の出力電圧を高い状態にすると、ダイオード322には電流が流れない(切断されたのと等価になる)。したがって、ダイオード321に流れる電流は充電回路100でコントロールできる。ディケイ・サステイン制御端子312の出力電圧を高い状態にすると、ダイオード324に電流が流れ、ダイオード323のカソードの電圧が高い状態になる。したがって、ダイオード323には電流が流れない。つまり、放電回路200−1は切り離された状態と等価になる。逆に、ディケイ・サステイン制御端子312の出力電圧を低い状態にすると、ダイオード324には電流は流れない(切断されたのと等価になる)。したがって、ダイオード323に流れる電流は放電回路200−1でコントロールできる。リリース制御端子313は、ディケイ・サステイン制御端子312と同じである。
【0032】
本発明のエンベローブジェネレータによれば、本発明の素子数を少なくできる充電回路と放電回路で構成できるので、全体の素子数を少なくできる。よって、ディスクリート回路で構成してもコストを低減できる。また、選択部300を、ダイオードを用いた構成にすれば、機械的な構成品を用いる必要もなくなる。したがって、ディスクリート回路で構成したときでも、小型かつ低コストに製造しやすい。
【符号の説明】
【0033】
10 エンベローブジェネレータ 100 充電回路
101,201 電源 105,205 指数変換部
111,212 NPN型トランジスタ 112,211 PNP型トランジスタ
121,221 レベル用抵抗 122,222 バイアス用抵抗
123,223 時間用抵抗 124,224 コレクタ用抵抗
125,225 電流調整用抵抗 131 充電レベル点
132 正バイアス点 133 充電時間点
134 充電電流通過点 135,235 帰還点
150 コンデンサ 160 バッファ
161 オペアンプ 162 電界効果トランジスタ
163,321,322,323,324,325,326 ダイオード
164 抵抗 190 端子
200 放電回路 231 放電レベル点
232 負バイアス点 233 放電時間点
234 放電電流通過点 300 選択部
310 制御部 311 アタック制御端子
312 ディケイ・サステイン制御端子 313 リリース制御端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6