(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術文献には、シートクッションをシートフレームから取り外す構成が開示されていない。一般的に、シートクッションはシートフレームから容易に外れることが無い様に取り付けられている。したがって、シートクッションの表皮の破れや汚れ等が発生したことによってシートクッションを取り外す必要がある場合には、シートクッションの取り外し作業及び取り付け作業が困難となる。
【0005】
本発明は上記問題を考慮し、車両前後位置調整機能が設けられたシートクッションが交換時には容易に取り外し及び取り付けすることができると共に交換時以外にはシートフレームに確実に係合される車両用シートクッション固定機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る車両用シートクッション固定機構は、シートクッションの車両上下方向下側に設けられると共に前記シートクッションを支持するシートフレームと、前記シートクッションを前記シートフレームに係合させると共に、前記シートクッションを車両前後方向に沿って移動可能としかつ移動範囲における一部に前記シートクッションが前記シートフレームに対して着脱可能となるセット位置が設定された着脱機構と、平面視で矩形の板状かつ長手方向が車両前後方向に沿うように車両前後方向後側の端部が前記シートクッションの裏面に取り付けられ
た板バネとされ、当該板バネ自体の付勢力によって車両上下方向下側に向かって付勢された操作レバーと、前記操作レバーの長手方向に沿って複数設けられると共に、車両上下方向下側に向けて開口する嵌合穴と、前記シートフレームに取り付けられると共に、車両上下方向上側へ突出しかつ前記セット位置以外で前記嵌合穴に嵌合可能とされた嵌合部を含んで構成されたロックプレートと、を有している。
請求項2記載の発明に係る車両用シートクッション固定機構は、請求項1に記載の車両用シートクッション固定機構において、前記操作レバーは、前記端部に設けられる車両上下方向に沿った軸を中心に回転可能とされており、前記シートクッションが前記シートフレームに取り付けられる際には、前記操作レバーが平面視で反時計回りに回転させられた位置に保持される。
【0007】
請求項
3記載の発明に係る車両用シートクッション固定機構は、請求項1
又は請求項2に記載の車両用シートクッション固定機構において、前記操作レバーは、前記端部に設けられる車両上下方向に沿った軸を中心に回転可能とされていると共に、短手方向における一方の端部の車両前後方向後側に車両幅方向外側に向かって延出した延出部が設けられており、前記嵌合穴は、前記操作レバーにおける前記延出部が形成されない範囲で設けられており、前記ロックプレートにおける前記嵌合部の車両幅方向の一方の端部と対向した位置には、車両上下方向上側へ突出しかつ車両上下方向上側に設けられる上面が前記嵌合部の車両上下方向上側に設けられる嵌合部上面より高い位置に設定されかつ前記セット位置で前記操作レバーの前記延出部と当接可能な位置に配置されている支持部が設けられており、前記ロックプレートの前記嵌合部の車両幅方向の他方の端部と対向した位置には、車両上下方向上側へ突出した上下延出部と、前記上下延出部の車両上下方向上側の端部から前記嵌合部側へ車両幅方向で延出された幅延出部と、を有するストッパ部が設けられており、前記セット位置において前記操作レバーを前記軸中心に前記ストッパ部へ向けて回転させると、前記操作レバーの長手方向が車両前後方向に沿った位置で前記操作レバーの前記一方の端部に対して反対側に設けられる他方の端部が前記ストッパ部の前記幅延出部における前記嵌合部と対向する端部と当接する。
請求項4記載の発明に係る車両用シートクッション固定機構は、シートクッションの車両上下方向下側に設けられると共に前記シートクッションを支持するシートフレームと、前記シートクッションを前記シートフレームに係合させると共に、前記シートクッションを車両前後方向に沿って移動可能としかつ移動範囲における一部に前記シートクッションが前記シートフレームに対して着脱可能となるセット位置が設定された着脱機構と、平面視で矩形の板状かつ長手方向が車両前後方向に沿うように車両前後方向後側の端部が前記シートクッションの裏面に取り付けられると共に、車両上下方向下側に向かって付勢された操作レバーと、前記操作レバーの長手方向に沿って複数設けられると共に、車両上下方向下側に向けて開口する嵌合穴と、前記シートフレームに取り付けられると共に、車両上下方向上側へ突出しかつ前記セット位置以外で前記嵌合穴に嵌合可能とされた嵌合部を含んで構成されたロックプレートと、を有し、前記操作レバーは、前記端部に設けられる車両上下方向に沿った軸を中心に回転可能とされていると共に、短手方向における一方の端部の車両前後方向後側に車両幅方向外側に向かって延出した延出部が設けられており、前記嵌合穴は、前記操作レバーにおける前記延出部が形成されない範囲で設けられており、前記ロックプレートにおける前記嵌合部の車両幅方向の一方の端部と対向した位置には、車両上下方向上側へ突出しかつ車両上下方向上側に設けられる上面が前記嵌合部の車両上下方向上側に設けられる嵌合部上面より高い位置に設定されかつ前記セット位置で前記操作レバーの前記延出部と当接可能な位置に配置されている支持部が設けられており、前記ロックプレートの前記嵌合部の車両幅方向の他方の端部と対向した位置には、車両上下方向上側へ突出した上下延出部と、前記上下延出部の車両上下方向上側の端部から前記嵌合部側へ車両幅方向で延出された幅延出部と、を有するストッパ部が設けられており、前記セット位置において前記操作レバーを前記軸中心に前記ストッパ部へ向けて回転させると、前記操作レバーの長手方向が車両前後方向に沿った位置で前記操作レバーの前記一方の端部に対して反対側に設けられる他方の端部が前記ストッパ部の前記幅延出部における前記嵌合部と対向する端部と当接する。
【0008】
請求項
5記載の発明に係る車両用シートクッション固定機構は、請求項
3又は請求項4に記載の車両用シートクッション固定機構において、前記セット位置は、前記シートクッションが前記着脱機構の移動範囲における車両前後方向前端に位置するときに設定されており、前記操作レバーにおける前記延出部の車両前後方向前側に設けられる前端部は、前記操作レバーの前記延出部が形成されない範囲内で前記嵌合部の前記嵌合部上面と前記操作レバーとが当接した状態において、前記セット位置に対し車両前後方向後側で前記支持部における車両前後方向後側の側面と当接可能とされている。
【0009】
請求項1
及び請求項4記載の本発明によれば、シートクッション及びそれに付随する操作レバーは着脱機構を介してシートフレームに取り付けられる。着脱機構はシートクッションを車両前後方向に沿って移動可能とされていることから、シートクッションは単独で車両前後方向に沿って移動させることが可能となる。この移動範囲における一部には、セット位置が設定されており、このセット位置のみでシートクッションはシートフレームと着脱可能とされている。そして、シートクッションをシートフレームに取り付けた状態で車両前後方向に沿って動かすと、操作レバーの嵌合穴とロックプレートの嵌合部とが重なる位置では操作レバーの付勢力によって嵌合穴と嵌合部とが嵌合される。したがって、シートクッションの車両前後方向の移動が抑制されて、シートクッションは固定状態となる。また、この状態から操作レバーを付勢力に抗して車両上下方向上側に持ち上げると、嵌合部から嵌合穴が離脱する。これによって、車両前後方向に沿って移動が可能となると共に複数設けられた嵌合穴のいずれかに嵌合部を嵌合させることで、シートクッションの車両前後方向における固定位置を選択することができる。このシートクッションの固定状態における嵌合穴と嵌合部との嵌合は、セット位置以外で嵌合されることから、シートクッションは、シートフレームから着脱できない状態、すなわちシートフレームに確実に取り付けられた状態となる。
【0010】
また、シートクッション交換時、シートクッションをシートフレームから取り外す際は、操作レバーを付勢力に抗して車両上下方向上側に持ち上げてシートクッションを車両前後方向で着脱機構のセット位置まで移動させる。これによって、シートクッションはシートフレームから離脱可能となることからシートクッションをシートフレームから容易に取り外すことが可能となる。
【0011】
請求項
3及び請求項4記載の本発明によれば、着脱機構におけるセット位置でシートクッションをシートフレームへ取り付けると、シートクッションに取り付けられた操作レバーの延出部とシートフレームに取り付けられた支持部の上面とが当接する。そして、操作レバーを車両上下方向に沿った軸中心に回転させると、回転によって操作レバーの短手方向における他方の端部とストッパ部の幅延出部の端部とが当接し、操作レバーの回転が止められる。この状態で、シートクッションを車両前後方向後側へ移動させると、操作レバーは操作レバーの延出部と支持部の上面とが当接した状態で車両後方へと移動する。そして、支持部の上面に対し延出部が形成されない部位まで操作レバーが動かされると、操作レバーは支持部による支持が失われるため付勢力によって車両上下方向下側へと変位する。この変位によって、支持部の上面より低い位置に設定されている嵌合部の嵌合部上面と操作レバーとが当接する。この状態からさらにシートクッションを車両前後方向後側へ移動させると、嵌合部と操作レバーの嵌合穴とが重なる位置で操作レバーの付勢力により操作レバーがさらに車両上下方向下側へと変位することで、嵌合穴と嵌合部とが嵌合される。これによって、シートクッションの車両前後方向での移動が抑制されてシートクッションが固定される。
【0012】
請求項
5記載の本発明によれば、操作レバーが操作レバーの延出部が形成されていない箇所、すなわち嵌合穴が設けられている範囲内で嵌合部の嵌合部上面と当接している場合は、嵌合部から嵌合部が離脱していることからシートクッションを車両前後方向に移動させることが可能となる。そして、シートクッションをセット位置が設定されている着脱機構の移動範囲における車両前後方向前端へ移動させると、セット位置に対し車両前後方向後側、すなわち、セット位置手前で延出部の車両前後方向前側の前端部と支持部の後側の側面とが当接する。したがって、それ以上のシートクッションの車両前後方向前側への移動が抑制されて着脱機構におけるセット位置への移動が抑制される。このため、シートクッションの固定位置を選択する目的でシートクッションを車両前後方向に沿って移動させる場合に不用意に着脱機構のセット位置へと移動してシートクッションとシートフレームとが離脱するのが抑制される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1
及び請求項4記載の本発明に係る車両用シートクッション固定機構は、車両前後位置調整機能が設けられたシートクッションが交換時には容易に取り外し及び取り付けすることができると共に交換時以外にはシートフレームに確実に係合されるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項
3及び請求項4記載の本発明に係る車両用シートクッション固定機構は、より具体的に車両前後位置調整機能が設けられたシートクッションが交換時には容易に取り外し及び取り付けすることができると共に交換時以外にはシートフレームに確実に係合されるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項
5記載の本発明に係る車両用シートクッション固定機構は、シートクッション操作時における意図しないシートクッションの離脱を抑制できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートを車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す立体分解図である。
【
図2】(A)は一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートにおけるシートクッションを示す側面図であり、(B)は(A)に対し車両上下方向上側から車両上下方向下側へ向かって見た状態を示す平面図である。
【
図3】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートにおけるシートフレームを示す平面図である。
【
図4】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートにおけるセットピンを車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す斜視図である。
【
図5】(A)は一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートにおけるロックプレートを示す正面図であり、(B)は(A)に対しさらに操作レバーとの関係を表す平面図である。
【
図6】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第一段階の状態を車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す斜視図である。
【
図7】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第二段階の状態を車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す斜視図である。
【
図8】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第三段階の状態を車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す斜視図である。
【
図9】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第四段階の状態を車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す斜視図である。
【
図10】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第五段階の状態を車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す斜視図である。
【
図11】一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第六段階の状態を車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す斜視図である。
【
図12】(A)は一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートのシートクッションがセット位置に位置する状態を示す平面図であり、(B)は(A)に対してシートクッションが車両前後方向後側へと移動した状態を示す平面図である。
【
図13】(A)は一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第一段階から第二段階の状態を示す平面図であり、(B)は(A)に示されるロックプレートと操作レバーとを示す拡大正面図である。
【
図14】(A)は一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第三段階から第四段階の状態を示す平面図であり、(B)は(A)に示されるロックプレートと操作レバーとを示す拡大正面図である。
【
図15】(A)は一実施形態に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートの操作における第六段階の状態を示す平面図であり、(B)は(A)に示されるロックプレートと操作レバーとを示す拡大正面図である。
【
図16】対比例に係る車両用シートクッション固定機構を備えた車両用シートを車両前後方向で斜め前方から斜め後方に向かって見た状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1〜
図15を用いて、本発明に係る車両用シートクッション固定機構の一実施形態について説明する。
【0018】
図1には、車両における車室内に設けられる車両用シート10が示されている。この車両用シート10は、骨格を形成するシートフレーム12を有しており、このシートフレーム12に座面であるシートクッション14と、このシートクッション14の車両前後方向後側に設けられるシートバック16が取り付けられている。また、シートバック16の上端部にはヘッドレスト18が形成されている。
【0019】
シートフレーム12におけるシートクッション14が取り付けられる部分には、スライドベース20が設けられている。このスライドベース20は、車両前後方向前側に設けられる前フレーム22と、前フレーム22の車両前後方向後側かつ前フレーム22と離間して設けられた後フレーム24と、前フレーム22及び後フレーム24の車両幅方向外側の端部をそれぞれ繋ぐように取り付けられた横フレーム26とを有している。これにより、スライドベース20は平面視で略矩形状に形成されている(
図3参照)。また、スライドベース20は、2本のリンクアーム28をX字状に組んだリンク機構30を介してロアフレーム32に固定されている。ロアフレーム32は、車両の床面に固定されると共に車両前後方向に沿ってスライド可能とされたスライドレール34の車両上下方向上側に固定されている。
【0020】
図3に示されるように、スライドベース20には、車両上下方向上側の上面36にセットピン38が取り付けられている。このセットピン38は、左右それぞれの横フレーム26に2つずつ取り付けられると共に、左右それぞれの横フレーム26におけるセットピン38同士は車両前後方向で離間するように取り付けられている。
【0021】
図4に示されるように、このセットピン38は、平面視で略矩形の板状に形成されたベースプレート40と、このベースプレート40の車両前後方向後側に設けられると共に車両上下方向上側へ突出された突出部42とを含んで構成されている。突出部42は、略円柱状に形成された柱部44と、この柱部44の車両上下方向上側の端部に設けられると共に平面視で柱部44の径よりも大きい略方形状とされた傘部46とで構成されている。そして、セットピン38は、ベースプレート40の長手方向を車両前後方向としてスライドベース20に取り付けられている(
図3参照)。
【0022】
また、
図5(B)に示されるように、前フレーム22の車両前後方向後側の端部48における車両幅方向略中央部には、ロックプレート50が取り付けられている。このロックプレート50は、中央部に設けられる嵌合部56と、この嵌合部56の車両幅方向における一方の端部51と対向する位置に配置される支持部52と、嵌合部56の一方の端部51の反対側の端部53と対向する位置に配置されるストッパ部54とを有している。なお、支持部52及び嵌合部56は、車両前後方向の位置が略同一の位置に設定されている。ストッパ部54は、車両前後方向の位置が支持部52及び嵌合部56に対し後方の位置に設定されている。
【0023】
支持部52は、
図5(A)に示されるように、正面視で略矩形の板状に形成されており、長手方向が車両幅方向となるよう配置されている。また、車両幅方向左側、すなわち嵌合部56と対向する長手方向における端部48と反対側の端部58と支持部52の車両上下方向上側に設けられる上面59とは円弧形状で繋げられている。
【0024】
ストッパ部54は、正面視で略L字の板状に形成されており、前フレーム22から車両上下方向上側へ延出されている上下延出部60と、上下延出部60の車両上下方向上側の端部62から嵌合部56側に向かって車両幅方向で延出されている幅延出部64とを有している。幅延出部64の車両上下方向下側に設けられる下面66は、車両上下方向における位置が支持部52の上面59よりも上側に位置する。また、幅延出部64における嵌合部56と対向する端部104は、後述する操作レバー68が支持部52の上面59と当接した状態でこの操作レバー68と当接する位置に配置されている(
図13(B)参照)。
【0025】
嵌合部56は、正面視で略矩形の板状に形成されており、長手方向が車両幅方向となるよう配置されている。嵌合部56は後述する操作レバー68の嵌合穴92と嵌合可能とされている。また、嵌合部56の車両上下方向上側に設けられる嵌合部上面57は、支持部52の上面59よりも車両上下方向で下側かつ操作レバー68の嵌合穴92と嵌合部56とが嵌合した状態において操作レバー68よりも上側に位置するように設定されている(
図15(B)参照)。
【0026】
シートクッション14は、
図2(A)に示されるように、着座者を支持するクッションパッド70と、クッションパッド70の裏面側に設けられてクッションパッド70を保持するクッションパン72と、クッションパン72に取り付けられる操作レバー68と、を有している。
【0027】
図2(B)に示されるように、操作レバー68は、平面視で略矩形の板状に形成されていると共に、長手方向における一方の端部74がクッションパン72の平面視における略中央部へボルト76によって締結されている。なお、操作レバー68はボルト76の締結された位置を通る図示しない車両上下方向に沿った軸を中心に車両幅方向へ回転可能とされている。また、操作レバー68はいわゆる板バネとされており、車両上下方向下側に向かって弾性的に付勢されている。
【0028】
操作レバー68は、短手方向における一方の端部78のうち車両前後方向後側に操作レバー68の車両幅方向外側へ延出された延出部としての第一延出部80を有している。具体的には、端部78における操作レバー68の略中央部から端部74までの範囲で第一延出部80が形成されている。
【0029】
同様に、操作レバー68は、短手方向における他方の端部82のうち車両前後方向前側に操作レバー68の車両幅方向外側へ延出された第二延出部84を有している。具体的には、端部82における操作レバー68の略中央部から端部74と反対側の端部86までの範囲に第二延出部84が形成されている。操作レバー68における略中央部に形成される第一延出部80の前端部88と第二延出部84の後端部90とは、車両前後方向で重ならない位置に設定されている。
【0030】
また、操作レバー68には、略中央部から車両前後方向前側に車両上下方向下側に向けて開口された嵌合穴92が形成されている。この嵌合穴92は、操作レバー68の板厚方向に貫通されていると共に操作レバー68の長手方向に沿ってかつ第一延出部80が設けられない範囲に複数設けられている。さらに、それぞれの嵌合穴92同士は等間隔で離間されている。
【0031】
操作レバー68の端部78には、車両前後方向前側に操作レバー68の車両幅方向外側へ延出された第三延出部94が形成されている。この第三延出部94の車両前後方向における位置は、複数設けられた嵌合穴92のうち車両前後方向で最前側に設けられる嵌合穴92と略同一の位置に形成されている。
【0032】
操作レバー68の端部86には、操作者が把持する把持部96が取り付けられている。これにより、操作者が把持部96を把持して操作レバー68を車両上下方向に沿って操作したり、車両幅方向へ回転させて操作することが可能とされている。
【0033】
クッションパン72には、板厚方向に貫通された着脱機構としてのセット溝98が形成されている。このセット溝98は、矩形状かつ長手方向が車両前後方向とされたスライド部100と、スライド部100の車両前後方向後側の端部に形成される挿入部102と、を有している。また、スライド部100の短手方向の寸法は、セットピン38の柱部44の車両幅方向における寸法と略同一とされている。さらに、挿入部102の平面視における寸法は、セットピン38の傘部46の平面視における大きさより大きくされている。なお、セット溝98近傍のクッションパン72の板厚は、セットピン38の柱部44の車両上下方向における寸法以下とされている。そして、セットピン38とセット溝98とで着脱機構99が構成されている。
【0034】
次に、シートクッション14をシートフレーム12へ取り付ける操作及び車両前後方向における位置の調整方法について説明する。
【0035】
図12(A)に示されるように、シートフレーム12へシートクッション14を取り付ける際は、スライドベース20のセットピン38における傘部46にシートクッション14のセット溝98における挿入部102を挿入させる。この挿入されたときのシートクッション14の位置がシートクッション14をシートフレーム12へ取り付けるセット位置とされている。そして、傘部46を挿入させるときベースプレート40と図示しないクッションパン72とが当接するまで挿入させる。これにより、シートクッション14を車両前後方向後方へスライドさせた際に傘部46とベースプレート40との間にクッションパッド70が挟まれることでシートクッション14がシートフレーム12から外れないようにすることができる。また、シートクッション14の操作レバー68は、長手方向が車両前後方向とされかつ把持部96が平面視で車両前後方向前側に位置する状態(以下、前後調整位置と称する)からあらかじめ反時計回りに約15°回転させられた位置で保持された状態とされている。
【0036】
シートフレーム12のセットピン38における傘部46にシートクッション14のセット溝98における挿入部102を挿入させた状態、すなわちセット位置では、
図6に示されるように、操作レバー68の車両上下方向下側のレバー下面89が支持部52の上面59に配置される(
図13(B)の鎖線参照)。このとき、操作レバー68は車両上下方向下側に付勢されていることから、支持部52の上面59と操作レバー68のレバー下面89とは当接されている。なお、この状態が車両用シート10の操作における第一段階に相当する。
【0037】
この状態から、
図7に示されるように、操作レバー68を平面視で時計回りに前後調整位置へと回転させると、操作レバー68の端部82がストッパ部54の幅延出部64における端部104と当接する(
図13(B)参照)。これにより、操作レバー68はそれ以上の回転が抑制されると共に、操作者は操作レバー68が前後調整位置にセットされたことを認識することができる。また、支持部52はセット位置で操作レバー68の第一延出部80と当接可能な位置に配置されていることから、支持部52の上面59と操作レバー68の第一延出部80におけるレバー下面89とが当接された状態とされている。なお、この状態が車両用シート10の操作における第二段階に相当する。
【0038】
操作レバー68が前後調整位置に位置した状態で、シートクッション14を車両前後方向後方へ向かって移動させると、
図8に示されるように、シートクッション14の移動に伴って操作レバー68が移動し、操作レバー68の第二延出部84における後端部90とストッパ部54の車両前後方向前側の側面106とが当接される(
図14(A)参照)。このとき、操作レバー68の移動によって支持部52の上面59に操作レバー68の第一延出部80が当接しない状態となる。なお、この状態が車両用シート10の操作における第三段階に相当する。
【0039】
図9に示されるように、操作レバー68の第一延出部80と支持部52の上面59とが当接されなくなったことから、操作レバー68の付勢力によって車両上下方向下側へと変位する。したがって、操作レバー68のレバー下面89と嵌合部56の嵌合部上面57とが当接される(
図14(B)参照)。なお、この状態が車両用シート10の操作における第四段階に相当する。
【0040】
シートクッション14をさらに車両
前後方向後方へ向かって移動させると、嵌合部56の位置に操作レバー68の嵌合穴92が移動されて嵌合部56と嵌合穴92とが重なる。この状態になると、嵌合部上面57と操作レバー68のレバー下面89とが当接されなくなることにより、
図10に示されるように、操作レバー68は付勢力によって車両上下方向下側へとさらに変位される。したがって、操作レバー68の嵌合穴92に嵌合部56が嵌合される(
図15(B)参照)。これにより、シートクッション14が固定される。なお、この状態が車両用シート10の操作における第五段階に相当する。
【0041】
シートクッション14の車両前後方向における位置を調整する際は、操作レバー68の把持部96を把持して操作レバー68の第二延出部84とストッパ部54の幅延出部64の下面66とが当接するまで車両上下方向上方へと持ち上げる(
図15(B)参照)。これにより、操作レバー68の嵌合穴92から嵌合部56が離脱してシートクッション14の固定が解除され、シートクッション14が車両前後方向に移動可能となる。そして、操作レバー68に複数設けられた嵌合穴92のそれぞれの位置で嵌合部56と嵌合させることで、シートクッション14の車両前後方向の位置を選択的に変更することが可能となる。なお、シートクッション14を車両前後方向後側へ移動させ続けると、
図11、
図15(A)に示されるように、操作レバー68の第三延出部94と支持部52の車両前後方向前側の側面107とが当接する。これにより、シートクッション14の車両前後方向後側へのさらなる移動が制限される。なお、この状態が車両用シート10の操作における第六段階に相当する。また、シートクッション14を車両前後方向前側へ移動させると、操作レバー68の第一延出部80の前端部88と支持部52の車両前後方向後側の側面108とが当接可能とされている(
図14(A)参照)。これにより、シートクッション14の車両前後方向前側へのさらなる移動が制限される。
【0042】
シートクッション14をシートフレーム12から取り外す際は、
図15(B)の鎖線で示されるように、操作レバー68の把持部96を把持して操作レバー68の第二延出部84とストッパ部54の幅延出部64の下面66とが当接するまで車両上下方向上方へと持ち上げる。この状態で、シートクッション14を車両前後方向前側へと移動させる。そして、操作レバー68の第一延出部80の前端部88と支持部52の車両前後方向後側の側面108とが当接されるまで移動させると、
図14(A)に示されるように、ストッパ部54に対し第二延出部84が設けられない位置まで移動されるので、操作レバー68の第二延出部84とストッパ部54の幅延出部64の下面66との当接状態が解除されて、操作レバー68の車両上下方向上側への変位が制限されなくなり、さらに操作レバー68を車両上下方向上方へ移動させることが可能となる。これに伴って、
図14(B)の鎖線で示されるように、操作レバー68の第一延出部80の前端部88が支持部52よりも車両上下方向で上側に配置されることから、操作レバー68の第一延出部80の前端部88と支持部52の車両前後方向後側の側面108との当接状態が解除されてシートクッション14がさらに車両前後方向前側へと移動可能となる。これにより、シートクッション14はセット位置まで移動可能となり、シートクッション14をシートフレーム12から取り外すことが可能となる。
【0043】
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0044】
ここで、
図16に示される対比例を用いながら、本実施形態の作用並びに効果を説明することにする。なお、対比例中、本実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
この対比例では、車両用シート201におけるシートクッション200は、シートクッション200の車両上下方向下側に設けられるスライドレール202の車両上下方向上側に固定されている。この場合、シートクッション200はスライドレール202から容易に外れることが無い様に図示しないボルト締結手段によって容易に外れないように取り付けられている。そして、スライドレール202は、シートフレーム204に車両前後方向で移動可能な状態で取り付けられている。したがって、シートクッション200は単独で車両前後方向で移動させることが可能とされている。
【0046】
しかしながら、シートクッション200はスライドレール202に容易に外れないように取り付けられているため、シートクッション200の表皮の破れや汚れ等が発生したことによってシートクッション200をシートフレーム204及びスライドレール202から取り外す必要がある場合では、取り外し作業及び組み付け作業が困難となる。
【0047】
しかし、本実施形態に係る車両用シートクッション固定機構によれば、シートクッション14及びそれに付随する操作レバー68は着脱機構99を介してシートフレーム12に取り付けられる。着脱機構99はシートクッション14を車両前後方向に沿って移動可能とされていることから、シートクッション14は単独で車両前後方向に沿って移動させることが可能となる。この移動範囲における一部には、セット位置が設定されており、このセット位置のみでシートクッション14はシートフレーム12と着脱可能とされている。そして、シートクッション14をシートフレーム12に取り付けた状態で車両前後方向に沿って動かすと、操作レバー68の嵌合穴92とロックプレート50の嵌合部56とが重なる位置では操作レバー68の付勢力によって嵌合穴92と嵌合部56とが嵌合される。したがって、シートクッション14の車両前後方向の移動が抑制されて、シートクッション14は固定状態となる。また、この状態から操作レバー68を付勢力に抗して車両上下方向上側に持ち上げると、嵌合部56から嵌合穴92が離脱する。これによって、車両前後方向に沿って移動が可能となると共に複数設けられた嵌合穴92のいずれかに嵌合部56を嵌合させることで、シートクッション14の車両前後方向における固定位置を選択することができる。このシートクッション14の固定状態における嵌合穴92と嵌合部56との嵌合は、セット位置以外で嵌合されることから、シートクッション14は、シートフレーム12から着脱できない状態、すなわちシートフレーム12に確実に係合された状態となる。
【0048】
また、シートクッション交換時、シートクッション14をシートフレーム12から取り外す際は、操作レバー68を付勢力に抗して車両上下方向上側に持ち上げてシートクッション14を車両前後方向で着脱機構99のセット位置まで移動させる。これによって、シートクッション14はシートフレーム12から離脱可能となることからシートクッション14をシートフレーム12から容易に取り外すことが可能となる。これらのことから、車両前後位置調整機能が設けられたシートクッション14が交換時には容易に取り外し及び取り付けすることができると共に交換時以外にはシートフレーム12に確実に係合される。
【0049】
さらに、着脱機構99におけるセット位置でシートクッション14をシートフレーム12へ取り付けると、シートクッション14に取り付けられた操作レバー68の第一延出部80とシートフレーム12に取り付けられた支持部52の上面59とが当接する。そして、操作レバー68を車両上下方向に沿った軸中心に回転させると、回転によって操作レバー68の短手方向における他方の端部82とストッパ部54の幅延出部64の端部104とが当接し、操作レバー68の回転が止められる。この状態で、シートクッション14を車両前後方向後側へ移動させると、操作レバー68は操作レバー68の第一延出部80と支持部52の上面59とが当接した状態で車両後方へと移動する。そして、支持部52の上面59に対し第一延出部80が形成されない部位まで操作レバー68が動かされると、操作レバー68は支持部52による支持が失われるため付勢力によって車両上下方向下側へと変位する。この変位によって、支持部52の上面59より低い位置に設定されている嵌合部56の嵌合部上面57と操作レバー68とが当接する。この状態からさらにシートクッション14を車両前後方向後側へ移動させると、嵌合部56と操作レバー68の嵌合穴92とが重なる位置で操作レバー68の付勢力により操作レバー68がさらに車両上下方向下側へと変位することで、嵌合穴92と嵌合部56とが嵌合される。これによって、シートクッション14の車両前後方向での移動が抑制されてシートクッション14が固定される。これにより、より具体的に車両前後位置調整機能が設けられたシートクッション14が交換時には容易に取り外し及び取り付けすることができると共に交換時以外にはシートフレーム12に確実に係合される。
【0050】
さらにまた、操作レバー68が操作レバー68の第一延出部80が形成されていない箇所、すなわち嵌合穴92が設けられている範囲内で嵌合部56の嵌合部上面57と当接している場合は、嵌合部56から嵌合部56が離脱していることからシートクッション14を車両前後方向に移動させることが可能となる。そして、シートクッション14をセット位置が設定されている着脱機構99の移動範囲における車両前後方向前端へ移動させると、セット位置に対し車両前後方向後側、すなわち、セット位置手前で第一延出部80の車両前後方向前側の前端部88と支持部52の後側の側面108とが当接する。したがって、それ以上のシートクッション14の車両前後方向前側への移動が抑制されて着脱機構99におけるセット位置への移動が抑制される。このため、シートクッション14の固定位置を選択する目的でシートクッション14を車両前後方向に沿って移動させる場合に不用意に着脱機構99のセット位置へと移動してシートクッション14とシートフレーム12とが離脱するのが抑制される。これにより、シートクッション操作時における意図しないシートクッション14の離脱を抑制できる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る車両用シートクッション固定機構によれば、操作レバー68自体が付勢力を有する構成とされているため、コイルスプリング等の付勢手段を操作レバー68に取り付ける必要がない。したがって、操作レバー68の省スペース化を図ることが可能となる。これにより、部品レイアウトの自由度を向上させることができる。また、機構が単純化されて部品数が削減されることから、コストを抑制することが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態では、スライドベース20は、2本のリンクアーム28をX字状に組んだリンク機構30を介してロアフレーム32に固定されているが、これに限らず、乗用車等で採用される構成であるリンク機構30を介さずにロアフレーム32等に固定される構成とされてもよい。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。