(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記爪部は、前記弾性爪体の延在方向に傾斜し、且つ、前記止め具の幅方向の所定位置から両幅方向に傾斜するテーパ面を有することを特徴とする請求項1に記載の部品取付構造。
前記弾性爪体を前記差込部に接近するように撓ませた際に、前記爪部の先端が前記差込部の上面より下方側に位置可能な形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の部品取付構造。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1(a)および
図1(b)は、実施形態に係る止め具10の斜視図である。樹脂製の止め具10は、排水部品を車体側パネルに取り付けるために用いられる。排水部品は、車両に取り付けられる車両用部品であり、車両前方のフロントガラスの前縁に連結されるカウルトップの下方に取り付けられる。カウルトップは一対のワイパーを格納し、一対のワイパーはフロントガラス表面に付着した水を下方に払い落とす。カウルトップには格子溝が設けられ、格子溝から下方に水が落ちる。
【0012】
排水部品は、カウルトップの格子溝の下方に設けられ、フロントガラスの表面を伝う雨水や、ワイパーにより払い落とされた水を収集して排水し、フロントエンジンルームや車室に水が入ることを抑える。排水部品は、樋として機能する。排水部品は車両左右方向に並んで一対設けられる。排水部品が固定される車体側パネルは、車室とフロントエンジンルームを遮る金属板材である。
【0013】
排水部品は、車体側パネルに対して複数箇所で係止されるが、それらの係止箇所の一つが止め具10による係止である。止め具10は、まず排水部品に取り付けられる。そして、排水部品を車体側パネルの所定の位置に押しつけることで、止め具10が車体側パネルに係止し、排水部品が取り付けられる。
【0014】
止め具10は、排水部品52に取り付けるための差込部20と、車体側パネル56に係止するための弾性爪体22とを備える。車体側パネル56は、車体パネルでも、車体パネルに固定されたパネルであってもよい。
【0015】
差込部20は、弾性爪体22に対向する上面24において弾性爪体22との対向方向に突出するように形成された突部26と、突部26の周りに形成されたスリット34と、下面25で下方に延在するストッパ部28と、ストッパ部28を支持するリブ27と、差込部20の先端側にて下面25に形成される第1支持部30および第2支持部32と、差込部20の先端の角縁を切り欠くように形成される切欠部29と、を有する。差込部20において、上面24は弾性爪体22に対向し、下面25は上面24の裏側に位置する。上面24を止め具10の対向面とし、下面25を止め具10の対向面の裏面としてもよい。なお、対向とは、必ずしも平行に向かい合うことに限定されず、弾性爪体22と上面24のように傾斜して向かい合うことを含む。また、差込部20において弾性爪体22が連結する側を後端とし、後端とは逆側の自由端を先端とする。
【0016】
突部26は、上面24に形成され、弾性爪体22側に向かって突出し、周囲のスリット34によって撓み可能に設けられる。突部26は、差込部20が排水部品の差込口に差し込まれた又は差し込んだ際に、排水部品に係止し、止め具10を排水部品に取り付けるための係止手段として機能する。
【0017】
ストッパ部28は、下面25から突出するように形成され、下面25から下方に板状に延在する。リブ27は、差込部20の後端側の下面25に形成されてストッパ部28を支持し、差し込み時などに荷重を受けるストッパ部28の耐荷重を高める。
【0018】
第1支持部30および第2支持部32は、下面25に突出するように形成され、互いに平行に設けられる。第1支持部30と第2支持部32の下面25からの突出長さは異なる。第1支持部30は、第2支持部32より下方に板状に延在する。第1支持部30および第2支持部32は、差込部20が排水部品の差込口に差し込まれた又は差し込んだ際に、差込口内の下方向に張り出して止め具10の下方向の動きを規制し、ガタツキを抑える。第1支持部30および第2支持部32の突出方向の長さは、ストッパ部28より低い。止め具10の幅方向において、第1支持部30および第2支持部32の間に突部26が形成される。
【0019】
弾性爪体22は、差込部20に連結し、差込部20の縁から折り返すように延在して、撓み可能に形成される。弾性爪体22は、差込部20に対して傾斜する平板状の傾斜板部36と、傾斜板部36から屈曲し、傾斜板部36の上面の先端側に形成される爪部38と、を有する。
【0020】
傾斜板部36は、差込部20の上面24に対して傾斜して対向し、上面24に接近するように撓み可能である。傾斜板部36は、根元に上面24の縁から垂直に立設する立設部37を含む。立設部37により、ヒンジのように機能し、弾性爪体22の撓み可能な範囲を広くできる。爪部38は、弾性爪体22の先端側にテーパ状に形成され、且つ止め具10の幅方向の中央位置から両幅方向に傾斜して2つの面が形成されたテーパ面と、テーパ面から先端に延出する平板状の延出部40とを有する。
【0021】
爪部38の先端より根元側に形成されたテーパ面は、第1テーパ面38aおよび第2テーパ面38b(これらを区別しない場合は「テーパ面」という)を有し、延出部40に対して傾斜する。テーパ面は、爪部38が先細になるように弾性爪体22の延在方向に傾斜し、傾斜板部36との屈曲部分から延出部40に向かって傾斜する。
【0022】
爪部38は、テーパ面と延出部40とにより、弾性爪体22の上面に段状に形成され、その段部に車体側パネルの縁を当接させて係止する。第1テーパ面38aおよび第2テーパ面38bを両幅方向に山状に傾斜させることで、いずれかのテーパ面で湾曲する車体側パネルの異なる位置に当接できる。
【0023】
図2は、車両に排水部品52を取り付けた状態を説明する図であり、車両上方からみた斜視図である。また、
図3は、車両に排水部品52を取り付けた状態を説明する図であり、車両幅方向からみた図である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0024】
図2にはフロントガラス50の一部を示し、フロントガラス50の前縁50aの下方に排水部品52が配置されている。実際の車両では、排水部品52はフロントガラス50の前縁50aの下方に左右一対設けられるが、
図2では左側の排水部品52のみ示し、右側の排水部品は省略して示す。また、実際の車両では、排水部品52とフロントガラス50の前縁50aの間に、格子溝を有するカウルトップが設けられるが、排水部品52が見えるように省略して示す。
【0025】
樹脂製の排水部品52は、フロントガラス50等から落ちる液体を排水する排水路52aと、車体側パネル56に当接される立設板部52bと、排水部品52の下方に空間を形成する空間形成部52cと、裏側に形成された取付用壁面(不図示)とを有する。
【0026】
金属製の車体側パネル56は、エンジンルームと車室を遮るために形成され、
図2および
図3ではその一部を示す。車体側パネル56は、略上下方向に延在する第1板部56aと略水平方向に延在する第2板部56bとを有する。排水部品52は、車両前方側から車体側パネル56の第1板部56aに接近させられて取り付けられる。
【0027】
図4は、排水部品52を車体側パネル56に取り付けた状態を説明するための図である。
図4は、車両の後方側および車室側から前方側をみた図である。
【0028】
車体側パネル56の第1板部56aにはパネル開口部56cが形成され、パネル開口部56cの周囲に第1取付孔56dおよび第2取付孔56eが形成される。パネル開口部56cは、排水部品52の空間形成部52cが形成する下方空間と車室を連通する。第1取付孔56dおよび第2取付孔56eは、パネル開口部56cの下側で幅方向に離間するように形成される。
【0029】
排水部品52の裏側に突出するように形成された第1係止爪60および第2係止爪62が、第1取付孔56dおよび第2取付孔56eに挿入されて孔縁に掛かるように係止される。止め具10は、排水部品52の取付部54に取り付けられた状態で、パネル開口部56cの上縁に当接するように係止する。排水部品52は、下側を2つの第1係止爪60および第2係止爪62で抜けないように係止させ、上側を止め具10で弾接させて係止させる。これにより、先に排水部品52の下側の係止爪を取付孔に挿入して抜け止めし、後は止め具10をパネル開口部56cに押し込んで係止させることで取付作業を容易にできる。また、下側の係止爪と取付孔の取付位置のずれを、上側の弾性爪体を有する止め具10にて吸収することができる。排水部品52を3点で車体側パネル56に留めることでガタツキを抑えることができる。
【0030】
パネル開口部56cの縁にはスポンジ状またはゴム状のクッション58が緩衝のため設けられる。クッション58は、排水部品52の立設板部52bと車体側パネル56の第1板部56aに挟まれる。止め具10が差し込まれる取付部54は、取付用壁面52dから立設する。取付用壁面52dは、第1係止爪60および第2係止爪62が設けられた立設板部52bと略平行であって、車体側パネル56の第1板部56aと同じく上下左右方向に延在する。
【0031】
左側の排水部品52に取り付けられた止め具10は、第1テーパ面38aがパネル開口部56cの縁に当接する一方で、不図示の右側の排水部品52に取り付けられる止め具10は、第2テーパ面38bがパネル開口部56cの縁に当接する。このように第1テーパ面38aおよび第2テーパ面38bを形成することで、止め具10を左側の排水部品52の取付にも右側の排水部品52の取付にも使用でき、コストを抑えることができる。
【0032】
図5は、取付部54について説明するための図である。取付部54は、取付用壁面52dから壁状に突出した4つの壁状部を有して形成される。4つの壁状部として、上側の第1壁状部72と、下側の第2壁状部76と、第1壁状部72および第2壁状部76を連結する一対の側壁部78とが形成される。4つの壁状部により、取付部54は四角筒状に形成され、先端に止め具10の差込口70が画成される。
【0033】
第1壁状部72は、取付用壁面52dから突出する一対の突出部72bと、一対の突出部72bの先端を連結する連結部72aと、連結部72aおよび突出部72bに囲われる開口部74と、を有する。連結部72aは、第1壁状部72の壁部となり、止め具10を差込口70に差し込むと、差込部20および弾性爪体22に挟まれる。
【0034】
第2壁状部76は、第1壁状部72により取付用壁面52dからの突出長さが短くなるように形成される。第2壁状部76には第2支持部32が当接する段部80が形成される。
【0035】
図6は、取付部54に止め具10を取り付けた部品取付構造12を説明するための図である。なお、取付部54に止め具10を取り付けて車体側パネル56に取り付けていない状態をサブアッシー状態といい、止め具10を取り付けた取付部54をさらに車体側パネル56に取り付けた状態を取付完了状態という。
【0036】
止め具10は、差込部20を取付部54の差込口70に差し込まれ、突部26が開口部74に入り込み、ストッパ部28が差込口70の下側の縁、つまり第2壁状部76の縁に当接して差し込みが止まり、排水部品52の取付部54に取り付けられる。
【0037】
突部26は、開口部74に入り込んで、開口部74の縁、つまり連結部72aの縁に係止し、取付部54からの抜け止めとなる。ストッパ部28は、下側の第2壁状部76の縁に当接して、止め具10の差込方向の移動を制限する。突部26およびストッパ部28により、止め具10の抜き方向および差込方向の移動が制限される。
【0038】
突部26を差込部20の上面24に、ストッパ部28を差込部20の下面25に形成することで、突部26を開口部74に入らせる一方で、それ以外の構成を差込部20の上面24から除いて下面25側に形成でき、上面24の形状を簡素化することができる。これにより、差込部20に接近するように撓む弾性爪体22の撓み範囲がストッパなどの構成に制限されることを回避できる。つまり、弾性爪体22が撓み可能な範囲を広くすることができる。
【0039】
差込部20の下面25に形成された第1支持部30および第2支持部32は、第1壁状部72と第2壁状部76の間に収まり、止め具10の下方向のガタツキを抑えることができる。
【0040】
図7は、排水部品52を車体側パネル56に取り付ける際の止め具10の動作を説明するための図である。
図7では、止め具10を車体側パネル56のパネル開口部56cに押し込む際の3段階の状態を示し、第1状態A、第2状態B、第3状態Cの順に止め具10と車体側パネル56が相対移動する。なお、実際には車体側パネル56が移動するのではなく、止め具10が移動するが、
図7では、止め具10を固定した視点で車体側パネル56が移動するように示す。
【0041】
第1状態Aは、止め具10を車体側パネル56のパネル開口部56c内に押し込んで、パネル開口部56cの縁と弾性爪体22が当接を開始した状態である。第2状態Bは、止め具10の押し込みにより弾性爪体22が差込部20に最も接近した状態である。第3状態Cは、パネル開口部56cの縁が爪部38に当接して係止された取付完了状態である。
【0042】
図7に示すように車体側パネル56と止め具10が相対移動する際、車体側パネル56は固定されているため、パネル開口部56cの縁の位置Sは変化せず、パネル開口部56cの縁が傾斜板部36の上面を押しつける。これにより止め具10の弾性爪体22が差込部20に接近するように撓んで、パネル開口部56cの縁の乗り越える。
【0043】
ここで、車体側パネル56のパネル開口部56cの縁の位置Sは車両による寸法バラツキによって変化する。また、排水部品52は左右に一対設けられるため、それぞれの排水部品52に対してパネル開口部56cの縁の位置Sが変化することがある。これにより、
図7に示すパネル開口部56cの縁の位置Sの寸法公差を吸収するように、弾性爪体22の撓み可能な範囲を広くすることが好ましい。
【0044】
そこで、実施形態の部品取付構造12では、取付部54の第1壁状部72に開口部74を形成しており、
図7に示す第2状態Bのように、弾性爪体22が差込部20に接近するように撓んだ際、開口部74に爪部38の先端が入り込み可能となっている。開口部74の幅は爪部38の幅より大きく、爪部38を受け入れ可能となっている。第1壁状部72に爪部38の先端が入る開口部74を形成することで、弾性爪体22の撓み可能な範囲を広くでき、パネル開口部56cの縁の位置Sのずれを吸収できる。
【0045】
弾性爪体22を差込部20に接近するように最大限撓ませた際、爪部38の先端は上面24より下方側に位置するように形成される。また、上面24の先端の角縁を切り欠くように形成された切欠部29により、弾性爪体22を差込部20に接近するように最大限撓ませた際、爪部38の先端は上面24よりいっそう下方側に位置することができる。
【0046】
図7に示すようにストッパ部28が差込部20の下面25から突出するように形成されることで、上面24側が簡素な形状となり、弾性爪体22の動きを制限しないように構成されている。突部26を差込部20の上面24に突出するように形成し、開口部74内に入り込ますことで、爪部38の可動域となる開口部74と、抜け止めとなる開口部74の縁を共通化することができ、部品取付構造12をシンプルな形状にでき、製造コストを抑えることができる。
【0047】
上面24に突部26を形成して下面25にストッパ部28を形成することで、弾性爪体22とパネル開口部56cの縁との当接により生じるトルクを、ストッパ部28を第2壁状部76に当接させて受け止め、突部26を連結部72aに当接させて受け止めることができる。
【0048】
爪部38のテーパ面により、テーパ面の途中の位置でパネル開口部56cの縁を当接させて係止することができ、パネル開口部56cの縁の位置Sのずれ吸収できる。
【0049】
本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0050】
実施形態では、車両用部品として排水部品52を車体側パネル56に取り付ける態様を示したが、この態様に限られない。例えば、車両用部品として内装部品を車体側パネルに取り付ける態様であってもよい。
【0051】
実施形態では、止め具10の爪部38が車体側パネル56のパネル開口部56cの縁に当接する態様を示したが、パネル開口部56cの縁に限られず、車体側パネル56の端に当接する態様であってもよい。
【0052】
実施形態の爪部38は、延出部40に対して切り立ったテーパ面(第1テーパ面38aおよび第2テーパ面38b)を有する態様を示したが、この態様に限られない。爪部38は、弾性爪体22の延出方向に沿って階段状にテーパ面が複数形成されてよい。つまり、第1テーパ面38aおよび第2テーパ面38bが階段状に複数形成される。これにより、各段のテーパ面で係止することが可能である。
【0053】
実施形態では、ストッパ部28を差込部20の下面25に形成する態様を示したが、この態様に限られず、差込部20の側面に形成してもよい。この場合、ストッパ部は取付部54の側壁部78の縁に当接する。また、突部26を差込部20の上面24に形成する態様を示したが、この態様に限られず、差込部20の側面に突部を形成してもよい。この場合、側面の突部は、側壁部78に形成された凹部に入り込み、差込部20の抜け止めとなる。これらの態様であっても、差込部20の上面24を簡素化して、差込部20に接近する弾性爪体22が撓み可能な範囲を広くできる。
【0054】
実施形態では、排水部品52を車体側パネル56に取り付けるため、2つの係止爪と2つの取付孔を下側に設け、パネル開口部56cの上縁に止め具10を係止させる態様を示したが、この態様に限られない。例えば、2つの係止爪と2つの取付孔を上側に設け、パネル開口部56cの下縁に止め具10を係止させる態様であってもよい。
【0055】
実施形態では、第1テーパ面38aおよび第2テーパ面38bが山状に両幅方向に傾斜する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、第1テーパ面38aおよび第2テーパ面38bが、延出部40から切り立って、谷状に両幅方向に傾斜してもよい。