(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来の装置では、ホッパの下方に運搬車両を停止させる必要があるが、斜面との干渉を避け、また作業上の利便性なども考慮すると、ある程度斜面から離れた位置で材料の積込み作業を行える方が良い。従って、ブームコンベアを備えた特許文献1に記載の装置の方が、特許文献2に記載の装置よりも有利と言える。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、急傾斜コンベアで搬送された材料が直接にブームコンベアに送られる構成であるため、断続的又は定期的に配車される運搬車両に応じて、例えば急傾斜コンベアの搬送速度を速くしたり遅くしたりして材料の供給量を制御する必要があった。しかし、急傾斜コンベアの搬送速度の変化に対して材料の供給量の変化が追従しづらい等、実際上は材料の供給制御が困難であった。
【0007】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、斜面から離れた位置に停止された運搬車両に対し、供給量を制御して堤体を構築するための材料を積み込み可能な積込み装置、積込みシステム、及び堤体の構築方法を提供し、堤体構築の効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、堤体を構築するための材料を運搬車両に積み込むための積込み装置であって、斜面に沿って配置された走行路と、走行路に沿って昇降可能な台車と、台車に設置され、材料を受け入れるホッパと、ホッパからの材料の排出量を制御する排出量制御部と、ホッパから排出された材料を移送して運搬車両に積み込むベルトコンベアと、を備える。
【0009】
この積込み装置によれば、ベルトコンベアを備えることで、斜面から離れた位置に停止された運搬車両に対して材料を積み込むことができる。また、材料は、ホッパによって一時的に貯留されると共に、排出量制御部によって適量の材料がベルトコンベアへ排出される。これにより、ベルトコンベアにおける材料の供給量が制御可能となり、供給量を制御して運搬車両に材料を積み込むことができる。また、ホッパに貯留されている材料に加えて、ホッパが受け入れる材料の双方を運搬車両へ供給することで、運搬車両に積み込むための所要時間を低減でき、運搬車両の待機時間を低減できる。その結果、堤体構築の効率を向上することができる。
【0010】
また、上記の積込み装置において、走行路に沿って昇降する台車の停止位置を制御して、ベルトコンベアを昇降させる昇降機構を更に備えてもよい。この場合、台車の位置を走行路の任意の位置に設定することができ、材料の積込みのためにベルトコンベアの高さを最適な位置とすることができる。
【0011】
また、上記の積込み装置において、ベルトコンベアの搬送方向が水平面に対して傾斜する角度を調整可能な傾斜角度調整機構を更に備えてもよい。この場合、ベルトコンベアの傾斜角度を容易に調整することができ、材料の積込みのために最適な傾斜角度とすることができる。
【0012】
また、上記の積込み装置において、ベルトコンベアは、搬送方向の上流側が排出量制御部の下方に配置されると共に、上流側の端部が台車に支持されて片持ち状に配置されており、ベルトコンベアの上流側の端部を台車に対して回転可能に支持してベルトコンベアを水平方向に旋回可能とする旋回機構を更に備えてもよい。この場合、ベルトコンベアは、上流側の端部が台車に支持されて片持ち状に配置されているため、堤体の掘削面側から運搬車両側に向かって片持ち梁状に延びることとなる。よって、ベルトコンベアの下方における堤体構築作業を妨げることなく、運搬車両を用いて材料の運搬作業を行うことができる。また、ベルトコンベアが水平方向に旋回することで、ベルトコンベアの下方における堤体構築作業を妨げることのない位置において運搬車両に材料を積み込むことができる。その結果、堤体構築の効率を向上することができる。
【0013】
本発明に係る積込みシステムは、上記の積込み装置と、材料を製造する製造設備と、製造設備で製造した材料をホッパに連続的に搬送する連続搬送装置と、を備える。この積込みシステムによれば、積込み装置における材料の供給量が制御可能であるため、連続搬送装置における材料の搬送量の制御が不要となり、ホッパへの材料の連続供給が実現される。その結果、効率良く堤体の構築作業をすることができる。
【0014】
本発明に係る堤体の構築方法は、上記の積込み装置を用いる堤体の構築方法であって、ベルトコンベアの下方の堤体面に堤体の軸方向に沿う縦継目を設け、縦継目により堤体面を2以上のブロックに分割し、2以上のブロックごとに堤体を別々に順次構築する。この堤体の構築方法によれば、縦継目により堤体面を2以上のブロックに分割することで、一のブロックにおける堤体構築作業の状況によっては、他のブロックの堤体構築作業を先にすることができる。従って、2以上のブロックごとに堤体を別々に順次構築することで、堤体構築作業の滞りを抑制でき、堤体構築の効率を向上することができる。
【0015】
本発明に係る堤体の構築方法は、上記の積込み装置を用いる堤体の構築方法であって、ベルトコンベアの下方の堤体面に堤体の軸方向に沿う縦継目を設け、縦継目により堤体面を2以上のブロックに分割し、一のブロックの堤体面上に位置するようにベルトコンベアを旋回させ、当該ブロックの堤体を構築し、他のブロックの堤体面上に位置するようにベルトコンベアを旋回させ、当該ブロックの堤体を構築するようにして、2以上のブロックごとに堤体を別々に順次構築する。
【0016】
この場合、片持ち梁状に延びるベルトコンベアが旋回することで、材料を運搬車両に積み込む位置は、一のブロックにおける堤体面から他のブロックにおける堤体面へ、容易に変更される。従って、2以上のブロックごとに堤体を別々に順次構築することが容易となる結果、堤体構築の効率を向上することができる。
【0017】
また、上記の堤体の各構築方法において、堤体の天端に設けられた製造設備によって材料を製造し、斜面に沿って配置された連続搬送装置によって、製造設備で製造した材料をホッパに連続的に搬送してもよい。この場合、積込み装置における材料の供給量が制御可能であるため、連続搬送装置における材料の搬送量の制御が不要となり、ホッパへの材料の連続供給が実現されることから、2以上のブロックごとに堤体を別々に順次構築することにより堤体構築作業の滞りを抑制できる作用効果が一層顕著なものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、堤体構築の効率を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。以下の説明において、図中のX方向は水平方向又は堤体の軸方向(縦方向)に対応し、Y方向は上流方向又は下流方向(横方向)に対応し、Z方向は天端方向又は上下方向に対応する。
【0021】
まず、
図1を参照して、積込み装置10を用いた積込みシステム1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る積込みシステムを示す概略図である。
【0022】
図1に示されるように、積込みシステム1は、例えばダムの堤体Bを構築するための材料Cを、構築作業場としての堤体面BS上の運搬車両Tに積み込むためのシステムである。積込みシステム1は、堤体Bを構築するために掘削されて岩盤面が露出された斜面ESに先行打設面2を設けた後に設置される。先行打設面2は、例えば、この岩盤面に材料Cを打設して、斜面ESに沿う平坦面として形成される。堤体面BSは、例えば、運搬車両Tによって運搬した材料Cを岩盤面に打設して、水平面に沿う平坦面として形成される。積込みシステム1は、製造設備3と、連続搬送装置4と、積込み装置10とを備える。
【0023】
製造設備3は、堤体Bを構築するための材料Cを製造する。材料Cとしては、例えば硬練りコンクリートが挙げられる。製造設備3は、例えばセメント並びに骨材の貯蔵サイロ、計量ホッパ、及び練混ぜ装置を有するバッチャープラントとして堤体Bの天端側に設けられる。製造設備3では、例えばセメント及び骨材が計量ホッパにより自動計量され、練混ぜ装置により練り混ぜられて、材料Cが製造される。製造設備3では、製造された材料Cがコンベア3aにより上部シュート3dへ搬送される。コンベア3aは、例えば支柱3b及び支持部材3cにより、上部シュート3dから連続搬送装置4の上端部に材料Cが排出されるように設置される。
【0024】
連続搬送装置4は、斜面ESに沿って設けられた搬送設備であり、製造設備3で製造した材料Cを積込み装置10のホッパ13(
図2参照)に連続的に搬送する。連続搬送装置4としては、例えばベルトコンベアが採用される。連続搬送装置4は、例えば先行打設面2に立設された支柱4aにより支持されている。連続搬送装置4は、堤体Bの構築が進んで堤体面BSの高さが高くなるにつれて、連続搬送装置4の一部を解体撤去することでその斜面ESに沿う長さを短縮可能とされている。
【0025】
積込み装置10は、連続搬送装置4により搬送された材料Cを運搬車両Tに積み込むための装置である。積込み装置10は、連続搬送装置4から材料Cを連続的に受け入れると共に、断続的又は定期的に配車される運搬車両Tに材料Cを積み込む。
【0026】
次に、
図2〜4を参照して、積込み装置10の構成について詳説する。
図2は、実施形態に係る積込み装置を示す側面図である。
図3は、
図2の積込み装置の昇降機構を示す斜視図である。
【0027】
図2及び
図3に示されるように、積込み装置10は、走行路11と、台車12と、ホッパ13と、ベルトフィーダ(排出量制御部)14と、ベルトコンベア15と、昇降機構16と、旋回機構17と、傾斜角度調整機構18とを備える。
【0028】
走行路11は、斜面ESに沿って移動(昇降)する積込み装置10の軌道を形成する。走行路11は、斜面ESの斜面勾配に応じて規定され、先行打設面2(斜面ES)上の所定の経路領域に直接設定されてもよく、又は先行打設面2に支柱11aを介して設置された一対の鋼製レール11dとして設置されてもよい。本実施形態では、斜面ESの斜面勾配が一定ではない場合の例として、斜面ESの上部の走行路11は鋼製レール11dとされ、斜面ESの中部の走行路11は先行打設面2とされ、斜面ESの下部の走行路11は鋼製レール11dとされる。鋼製レール11dでは、天端側端部に取付部11bが設けられている。取付部11bは、天端側ビーム11cを鋼製レール11dに取り付けるための部材である。取付部11bは、例えば鋼板が用いられて、略四角柱の中空ブロック体として形成される。
【0029】
台車12は、積込み装置10のフレーム体であり、走行路11に沿って昇降可能とされている。台車12は、上部フレーム12a、下部フレーム12b、縦フレーム12c、中段フレーム12d、台車側ビーム12e、突起部12f、及び車輪12gを有する。各フレーム12a〜12dは、Y方向に延びるビーム部材により適宜連結される。
【0030】
上部フレーム12aは、下部フレーム12bの上端側から水平方向に延びる梁材であり、例えばH型鋼が用いられる。上部フレーム12aでは、例えばその略中央部とX方向側端部とが縦フレーム12cによって下方から支持される。下部フレーム12bは、台車12の土台として機能し、走行路11に沿って延びる長尺部材である。下部フレーム12bとしては、例えば断面角型の鋼管が用いられてもよいし、複数のH型鋼を並べてもよい。下部フレーム12bの下端側には、中段フレーム12dが設けられる。
【0031】
中段フレーム12dは、旋回機構17を設置するための台と、当該台を支持するフレームとを含んでいる。中段フレーム12dは、例えば、上部フレーム12aにおけるX方向側端部を支持する縦フレーム12cと、下部フレーム12bとの間に介在する。中段フレーム12dとしては、例えばH型鋼、断面角型の鋼管及び鋼板が用いられる。
【0032】
図3に示されるように、台車側ビーム12eは、下部フレーム12bの天端側の端部において、当該下部フレーム12b同士を連結する。台車側ビーム12eの天端側の側面には、後述のバランスビーム16cを取り付けるための突起部12fが設けられている。突起部12fは、例えばY方向に沿って2個設けられている。
【0033】
車輪12gは、下部フレーム12bの内部に複数設けられている。車輪12gは、走行路11上を転動可能であり、台車12は、車輪12gの転動によって走行路11に沿った走行が可能となる。車輪12gは、例えば6輪設けられている。
【0034】
下部フレーム12bの側面には、揺れ防止部19と、あおり防止部20とが設けられている。揺れ防止部19は、例えばZ方向を軸とするローラを含んでおり、このローラが鋼製レール11dの側面に近接して軸支されている。揺れ防止部19は、例えば台車12がZ方向を軸として回転するように揺れた場合、ローラが鋼製レール11dの側面に当接することで、台車12の揺れを抑制する。あおり防止部20は、例えば断面L字状の部材であり、このL字状部材と下部フレーム12bとで鋼製レール11dの一部を挟むようにして取り付けられる。あおり防止部20は、例えば台車12がY方向を軸として天端側が持ち上がった場合、あおり防止部20が鋼製レール11dに引っ掛かることで、台車12の持ち上がりを抑制する。
【0035】
ホッパ13は、連続搬送装置4から排出された材料Cを受け入れると共に、一時的に貯留する。本実施形態に係るホッパ13は、最大で9m
3以上の材料Cを貯留することができる。ホッパ13は、貯留した材料Cを下端部からベルトフィーダ14に排出する。ホッパ13は、支持台13aを介して台車12に設置されている。支持台13aは、例えば上部フレーム12a同士をY方向に連結するビーム部材上に立設される。ホッパ13には、例えば、材料Cが最大貯留量を超えないように、連続搬送装置4による搬送を停止させるためのセンサが設けられていてもよい。
【0036】
ベルトフィーダ14は、ホッパ13の下方に設置され、ホッパ13からの材料Cの排出量(切出し量)を制御(定量切出し)する。具体的には、ベルトフィーダ14では、ホッパ13の下端部との離間距離(ゲート高さ)と、ベルトフィーダ14の駆動部14aの運転速度とを適宜変更することで、切出し量が変更される。例えば、ベルトフィーダ14の有効幅が800mmの場合、ゲート高さを30cm、運転速度を25m/minとすることで、切出し量は600t/hとなる。
図2に示されるように、ベルトフィーダ14は、搬送方向の下流側の端部から材料Cをベルトコンベア15に排出する。
【0037】
ベルトコンベア15は、運搬車両Tに積み込む積込み用ベルトコンベアである。ベルトコンベア15は、例えば駆動部15aによりベルトが駆動され、ホッパ13から排出されてベルトフィーダ14で切り出された材料Cを移送する。ベルトコンベア15は、搬送方向の下流側(終点側あるいは荷卸し側)にガード15cと、シュート15dと、を有している。ガード15cが、搬送された材料Cを受け止めてシュート15dに案内する。シュート15dは、搬送された材料Cを運搬車両Tの荷台に積み込む。
【0038】
ベルトコンベア15は、搬送方向の上流側(基点側あるいは積荷側)がベルトフィーダ14の下方に配置されると共に、当該上流側の端部が台車12に支持されて片持ち状に配置されている。具体的には、ベルトコンベア15は、例えば鉄製のトラス構造を有するブーム15bを有している。ブーム15bは、例えば15mの長さとされ、台車12が位置する斜面ESから運搬車両Tを離間させる。
【0039】
図3に示されるように、昇降機構16は、走行路11に沿って昇降する台車12の停止位置を変更可能であり、台車12の停止位置を変更することで、ベルトコンベア15の高さ位置を調節する。昇降機構16は、複合滑車部16X、バランス部16Y、及び引上部16Zを備えている。なお、走行路11の鋼製レール11dには、複合滑車部16Xの一部が取り付けられる、天端側ビーム11cが固定されている。
【0040】
天端側ビーム11cは、鋼製レール11dの天端側端部において取付部11bを介して設けられている。天端側ビーム11cは、走行路11の鋼製レール11d同士を連結し、第1滑車16a及び第3滑車16eが取り付けられる。天端側ビーム11cとしては、例えばH型鋼が用いられる。
【0041】
複合滑車部16Xは、第1滑車16aと、第2滑車16bと、引上げワイヤ16wとを備えている。第1滑車16a及び第2滑車16bは、引上げワイヤ16wの一端側が第2滑車16bの軸部に固定される複合滑車構造になっている。第1滑車16aは、例えば天端側ビーム11cの天端とは反対側に取り付けられている。第2滑車16bは、例えば2台ずつバランスビーム16cの天端側に取り付けられている。
【0042】
複合滑車部16Xは、第1滑車16a及び第2滑車16bをそれぞれ4台備えている。複合滑車部16Xでは、引上げワイヤ16wがそれぞれの第1滑車16a及び第2滑車16bについて5本掛けとされ、複合滑車部16X全体として20本掛けとされている。これにより、台車12を昇降させるために引上部16Zが引き上げる力を低減することができる。引上げワイヤ16wとしては、例えば直径11.7mmのワイヤロープが用いられる。
【0043】
バランス部16Yは、バランスビーム16cと、支点16dとを備えている。バランスビーム16cは、2台の第2滑車16bに対して1個設けられ、当該2台の第2滑車16bからの引上げ力を台車側ビーム12eに伝達する。バランスビーム16cは、例えば断面角型の鋼管が用いられ、斜面ESに直交する方向から見て略T字型を呈している。
【0044】
バランスビーム16cには、2台の第2滑車16bが両端側にバランス良く取り付けられており、バランスビーム16cの略中央は、支点16dを介して突起部12fに軸支されている。これにより、バランスビーム16cは、2台の第2滑車16bから受ける力(天端方向に引き上げる力)をバランスさせながら台車側ビーム12eに伝達する(イコライザ構造)。
【0045】
引上部16Zは、第3滑車16eと、ウインチ16fと、アンカー16gとを備えている。第3滑車16eは、例えば天端側ビーム11cの天端側の側面に取り付けられ、引上げワイヤ16wの向きを変更する。第3滑車16eは、例えば第2滑車16bから延びる引上げワイヤ16wの向きを、走行路11に沿う方向から斜面ES(又は先行打設面2)に近付く方向へ変更する。引上げワイヤ16wは、ウインチ16fに接続されている。
【0046】
ウインチ16fは、引上げワイヤ16wを巻き取る装置であり、ここでは動力源としての油圧ユニットを含んでいる。ウインチ16fでは、例えば出力が1.5kWの油圧ユニットが用いられる。ウインチ16fの天端側は、アンカー16gに接続されている。
【0047】
アンカー16gは、引上力によるウインチ16fの移動を制止する。アンカー16gは、例えば逆U字状を呈する鋼製棒材であり、その両端側が先行打設面2に埋設されると共に、その中央部が先行打設面2の表面に露出される。アンカー16gとしては、例えば直径38mmの鉄製の丸棒が用いられる。
【0048】
図2、及び
図4に示されるように、旋回機構17は、ベルトコンベア15の上流側におけるブーム15bを台車12に対して回転可能に支持して、ベルトコンベア15を水平方向に旋回可能とする。旋回機構17は、上部フレーム17a、アウタレース17b、インナレース17c、下部フレーム17d、旋回モータM、フランジMf、ピニオンギアPG、及びリングギアRGを有している。
【0049】
上部フレーム17aは、ベルトコンベア15の上流側の端部が取り付けられる。上部フレーム17aの下面側には、アウタレース17bが固定されている。アウタレース17bは、Z方向を軸とする円環状を呈しており、内側にはボールBLを介してインナレース17cが配置されている。インナレース17cは、Z方向を軸とする円環状を呈しており、アウタレース17bに対して回転可能であると共に、下部フレーム17dに固定されている。インナレース17cの内側には、リングギアRGが形成されている。
【0050】
旋回モータMは、旋回機構17を回転させる動力源であり、例えば油圧モータが用いられる。旋回モータMは、図示しない電動油圧ポンプの油圧により駆動され、例えば出力が300W、最大吐出圧が70MPa、最大吐出量が2L/minとされている。旋回モータMは、例えばフランジMfを介して上部フレーム17aに固定されている。
【0051】
旋回モータMは、そのピニオンギアPGがリングギアRGと嵌合している。ピニオンギアPGは、リングギアRGを回転させることで、インナレース17c及び下部フレーム17dに対して上部フレーム17aを相対的に回転させる。これにより上部フレーム17aに取り付けられたベルトコンベア15が旋回可能となる。ベルトコンベア15が旋回可能な範囲としては、例えば水平面に沿って、X方向に対して上流方向及び下流方向にそれぞれ30°とされる。
【0052】
傾斜角度調整機構18は、ベルトコンベア15の搬送方向が水平面に対して傾斜する角度(傾斜角度)を調整する機構である。傾斜角度調整機構18は、吊りワイヤ18aと、手動ウインチ18bとを有している。吊りワイヤ18aは、上端側が首振り部18cに取り付けられると共に、下端側が取付部18dに取り付けられ、ブーム15bを吊って支持する。手動ウインチ18bは、吊りワイヤ18aを巻き取る装置であり、ここではレバーを手動で操作することで吊りワイヤ18aが巻き取られる。首振り部18cは、支持枠18eの上端部において水平方向に回転可能に軸支されている。支持枠18eは、例えば中段フレーム12dに立設された縦フレーム12cによって下方から支持されている。支持枠18eは、例えば断面角型の鋼管が用いられる。
【0053】
傾斜角度調整機構18では、手動ウインチ18bによって首振り部18cと取付部18dとの間の吊りワイヤ18aの長さが調整されることで、ベルトコンベア15の傾斜角度が調整される。なお、ベルトコンベア15は、上記傾斜角度の調整が可能な程度の遊びを有して旋回機構17に対して固定されている。
【0054】
以上のように構成された積込みシステム1では、製造設備3で材料Cが製造され、製造された材料Cが連続搬送装置4によりホッパ13に連続的に搬送される。ホッパ13では、連続搬送装置4から受け入れた材料Cが一時的に貯留される。
【0055】
ここで、従来の装置では、急傾斜コンベアで搬送された材料Cが直接にブームコンベアに送られる構成であったため、断続的又は定期的に配車される運搬車両Tに応じて、例えば急傾斜コンベアの搬送速度を速くしたり遅くしたりして材料Cの供給量を制御する必要があった。しかし、急傾斜コンベアの搬送速度の変化に対して材料Cの供給量の変化が追従しづらい等、実際上は材料Cの供給制御が困難であった。また、急傾斜コンベアによる輸送量をコントロールする際、材料Cの輸送量が実際に変化するまでには時間を要するため、例えば運搬車両Tの入替り期間等、輸送量をコントロールするたびに余計な待機時間が発生し、効率良く堤体Bの構築作業をすることができなかった。なお、運搬車両Tの入替り期間とは、例えば、シュート15dから材料Cを積み込まれた運搬車両Tが堤体面BSの打設位置へ材料Cを運搬するためにシュート15dの下方位置から離れてから、シュート15dの下方位置に次の運搬車両Tが停車するまでの期間である。
【0056】
この点、実施形態に係る積込みシステム1は、材料Cを連続的に製造すると共に、製造した材料Cをホッパ13に連続的に搬送し、ホッパ13によって連続搬送装置4から受け入れた材料Cが一時的に貯留される。これにより、シュート15dの下方における運搬車両Tの入替り期間においても、連続搬送装置4の運転を停止することなく連続的に材料Cを搬送でき、連続搬送装置4がホッパ13へ材料Cを連続供給することが可能となる。そして、連続搬送装置4が材料Cの輸送量をコントロールすることで生じる待機時間が抑制されると共に、材料Cがベルトフィーダ14によってベルトコンベア15へ適量排出されることより、供給量を制御して材料Cを運搬車両Tに滞りなく積み込むことができる。
【0057】
また、以上のように構成された積込み装置10では、走行路11に沿って昇降する台車12の停止位置が昇降機構16により制御され、ベルトコンベア15の高さ位置が調節される。堤体Bの構築が進むにつれて、堤体面BSのZ方向位置(堤体面BSの標高)が徐々に高くなるところ、台車12の位置を走行路11の任意の位置に設定することで、運搬車両Tに材料Cを積み込むために最適なベルトコンベア15の高さ位置とすることができる。
【0058】
また、積込み装置10では、傾斜角度調整機構18によりベルトコンベア15の傾斜角度が調整可能とされている。これにより、ベルトコンベア15の傾斜角度が容易に調整され、材料Cの積込みのために最適な傾斜角度とすることができる。特に、ベルトコンベア15の傾斜角度が調整されることで、材料Cを積み込む際におけるシュート15dの下端部と運搬車両Tの荷台との離間距離が調整され、材料Cがシュート15dから運搬車両Tの荷台に落下する高さを調整できる。ここで、材料Cがシュート15dから運搬車両Tの荷台に落下する高さが過剰となると、例えば材料Cの成分の分離等の不都合が発生することがある。この点、傾斜角度調整機構18により上記離間距離を容易に調整できるため、材料Cの成分の分離等を防止することができる。
【0059】
積込み装置10では、ベルトコンベア15により斜面ESから離れた位置に停止された運搬車両Tに対して材料Cが積み込まれる。このように斜面ESから離れた位置で材料Cの積込み作業を行うことで、運搬車両Tが斜面ESと干渉することが回避され、堤体BのZ方向の厚みが薄くなる斜面ES側に運搬車両Tが近付くことが回避される。そして、積込み装置10では、ベルトコンベア15が上流側の端部において台車12に支持されて片持ち状に配置され、斜面ES側から運搬車両T側に向かって片持ち梁状に延びている。つまり、積込み装置10では、ベルトコンベア15の下方の堤体面BSにブーム15bを支持する支柱等が設けられないため、運搬車両Tがベルトコンベア15の下方において走行又は停車することが容易となり、また、ベルトコンベア15の下方における堤体Bの構築作業が妨げられることがない。
【0060】
積込み装置10では、旋回機構17によりベルトコンベア15が水平方向に旋回可能とされている。ここで、例えば、堤体Bには内部構造物(例えば、監査廊)が設けられるところ、ベルトコンベア15の下方に内部構造物が位置する場合、堤体Bの構築作業が妨げられる。この点、積込み装置10では、ベルトコンベア15を水平方向に旋回させて、ベルトコンベア15の下方における堤体Bの構築作業を妨げることのない位置において、運搬車両Tに材料Cが積み込まれる。
【0061】
次に、
図1及び
図5を参照して、積込みシステム1(積込み装置10)を用いる堤体Bの構築方法について説明する。
図5(a)は、実施形態に係る堤体の構築方法を説明するための図である。
図5(b)は、実施形態に係る堤体の構築方法を説明するための別の図である。
図5(c)は、(a)のVc−Vc線に沿う一部断面図である。
図5(d)は、(b)のVd−Vd線に沿う一部断面図である。
【0062】
堤体Bの構築としては、例えば、
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、例えば、材料Cが運搬車両Tで打込み場所まで運搬され、堤体面BS上に材料Cが打設されて、打設面CSが形成される。打設面CSは、例えば、締固め機等により締め固められたZ方向の厚み25cmの層が4層重ねられ、Z方向の打込み高さが1mの層として形成される。
【0063】
打設面CSは、例えばY方向に沿う打ち継ぎ目(横継目)を介して水平面に沿ってX方向に延ばされる。打設面CSがX方向に延ばされることで、水平面に沿う平坦面として堤体面BSが形成される。このように、堤体面BSを順次積み重ねて構築することにより、堤体BはZ方向に延びるように構築される。
【0064】
ここで、打設面CSでは、材料Cが打設された後に所定の強度を発揮するために、打設後の材料Cが一定時間養生される。また、その打設面CSの上に更に材料Cを打設するための前処理として、打設面CSの表面処理(グリーンカット)が打設面CSの硬化前に行われる。グリーンカットは、例えば硬化前の打設面CSの表面が薄く削り取られると共に、薄くモルタルが敷かれる処理である。例えば、グリーンカットは、当該打設面CSの打設後、数時間経過後(コンクリートの硬化後)に行われる。つまり、材料Cの打設後一定時間、運搬車両Tは打設面CS上に進入することができない。
【0065】
また、運搬車両Tへ材料Cを積み込む位置に堤体Bの内部構造物(例えば、監査廊)が位置する場合、運搬車両Tは積込み位置に進入することができない。このように、運搬車両Tへの材料Cの積み込みが困難となる場合があり、堤体Bの構築作業の滞りが生じ得る。特に、運搬車両Tへの材料Cの積込み位置が容易に変更できない積込み装置にあっては、堤体Bの構築作業の長期化を招いていた。
【0066】
この点、積込みシステム1(積込み装置10)を用いる堤体Bの構築方法では、ベルトコンベア15が旋回可能な範囲について、ベルトコンベア15の下方の堤体面BSに堤体Bの軸方向に沿う縦継目Jを設け、縦継目Jにより堤体面BSを、例えば2つのブロックB1,B2に分割し、各ブロックB1,B2ごとに堤体Bを別々に順次構築する。縦継目Jとしては、例えば、
図5(c)に示されるように、アングル材の支柱と金網とで構成される柵としてもよく、
図5(d)に示されるように、打設面CSのZ方向の打込み高さを1としてY方向に2の長さとなる傾斜面としてもよい。
【0067】
このブロックB1,B2では、一のブロックにおける堤体構築作業の状況によっては、他のブロックの堤体構築作業を先にすることで、堤体構築作業の滞りが回避される。この際、片持ち梁状に延びるベルトコンベア15を旋回機構17で旋回することで、材料Cを運搬車両Tに積み込む位置は、一のブロックにおける堤体面BSから他のブロックにおける堤体面BSへ、容易に変更される。例えば、ブロックB1の打設面CSの養生中など、運搬車両Tが打設面CS上に進入することができない場合、ベルトコンベア15を旋回させることで、運搬車両Tが進入可能なブロックB2において、運搬車両Tへ材料Cを積み込んで堤体構築作業を継続することができる。
【0068】
また、この堤体Bの構築方法では、堤体Bの天端に設けられた製造設備3によって材料Cを製造し、斜面ESに沿って配置された連続搬送装置4によって、製造設備3で製造した材料Cをホッパ13に連続的に搬送することにより、ホッパ13への材料Cの連続供給が実現される。
【0069】
以上、本実施形態に係る積込み装置10によれば、ベルトコンベア15により、斜面ESから離れた位置に停止された運搬車両Tに対して材料Cが積み込まれる。また、材料Cはホッパ13によって一時的に貯留されると共に、ベルトフィーダ14によって適量の材料Cがベルトコンベア15へ排出される。これにより、ベルトコンベア15における材料Cの供給量が制御可能とされ、供給量が制御されて運搬車両Tに材料Cが積み込まれる。また、ホッパ13に貯留されている材料Cに加えて、ホッパ13が受け入れる材料Cの双方が運搬車両Tへ供給されることで、運搬車両Tに積み込むための所要時間が低減され、運搬車両Tの待機時間が低減される。その結果、堤体構築の効率を向上することができる。
【0070】
また、積込み装置10では、昇降機構16により台車12の位置が走行路11の任意の位置に設定される。これにより、材料Cの積込みのためにベルトコンベア15の高さを最適な位置とすることができる。
【0071】
また、積込み装置10では、傾斜角度調整機構18によりベルトコンベア15の傾斜角度が調整可能とされている。これにより、ベルトコンベア15の傾斜角度が容易に調整され、材料Cの積込みのために最適な傾斜角度とすることができる。
【0072】
また、積込み装置10では、ベルトコンベア15は、上流側の端部が台車12に支持されて片持ち状に配置され、斜面ES側から運搬車両T側に向かって片持ち梁状に延びている。これにより、ベルトコンベア15の下方における堤体Bの構築作業を妨げることなく、運搬車両Tを用いて材料Cの運搬作業を行うことができる。また、旋回機構17によりベルトコンベア15が水平方向に旋回することで、ベルトコンベア15の下方における堤体Bの構築作業を妨げることのない位置において運搬車両Tに材料Cを積み込むことができる。その結果、堤体構築の効率を向上することができる。
【0073】
本実施形態に係る積込みシステム1によれば、製造設備3により材料Cが製造されると共に、製造した材料Cが連続搬送装置4によりホッパ13に連続的に搬送される。これにより、積込み装置10における材料Cの供給量が制御可能であるため、連続搬送装置4における材料Cの搬送量の制御が不要となり、ホッパ13への材料Cの連続供給が実現される。その結果、効率良く堤体Bの構築作業をすることができる。
【0074】
本実施形態に係る堤体Bの構築方法によれば、ベルトコンベア15の下方の堤体面BSに堤体Bの軸方向に沿う縦継目Jを設け、縦継目Jにより堤体面BSをブロックB1,B2に分割し、ブロックB1,B2ごとに堤体Bを別々に順次構築する。この堤体Bの構築方法によれば、縦継目Jにより堤体面BSをブロックB1,B2に分割することで、一のブロックにおける堤体構築作業の状況によっては、他のブロックの堤体構築作業を先にすることができる。従って、ブロックB1,B2ごとに堤体Bを別々に順次構築することで、堤体構築作業の滞りを抑制でき、堤体構築の効率を向上することができる。
【0075】
本実施形態に係る堤体Bの構築方法によれば、一のブロックB1の堤体面BS上に位置するようにベルトコンベア15が旋回され、当該ブロックB1の堤体B(打設面CS)が構築され、他のブロックB2の堤体面BS上に位置するようにベルトコンベア15が旋回され、当該ブロックB2の堤体Bが構築されるようにして、ブロックB1,B2ごとに堤体が別々に順次構築される。これにより、片持ち梁状に延びるベルトコンベア15が旋回することで、材料Cを運搬車両Tに積み込む位置は、一のブロックB1における堤体面BSから他のブロックB2における堤体面BSへ、容易に変更される。従って、ブロックB1,B2ごとに堤体Bを別々に順次構築することが容易となる結果、堤体構築の効率を向上することができる。
【0076】
また、上記の堤体Bの構築方法において、堤体Bの天端に設けられた製造設備3によって材料Cが製造され、斜面ESに沿って配置された連続搬送装置4によって、製造設備3で製造された材料Cがホッパ13に連続的に搬送される。これにより、積込み装置10における材料Cの供給量が制御可能であるため、連続搬送装置4における材料Cの搬送量の制御が不要となり、ホッパ13への材料Cの連続供給が実現されることから、各ブロックB1,B2ごとに堤体Bを別々に順次構築することにより堤体構築作業の滞りを抑制できる作用効果が一層顕著なものとなる。
【0077】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、縦継目Jにより堤体面BSを2つのブロックB1,B2に分割する場合を例示したが、縦継目Jにより堤体面BSを2以上のブロックB1,B2,B3,・・・に分割してもよい。また、
図5(c)及び
図5(d)に示した縦継目Jの態様は、説明のための一例であって、これらに限定されるものではない。