(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
雨押え役物は、少なくとも傾斜屋根と壁体との隣接部分に顕出する主板と、該主板が前記壁体と隣接する端部のもう一方の端部から前記傾斜屋根の表面に延長して接するツバ部を有し、
誘導板は、前記主板と対向する部分においては前記主板の軒方向端縁若しくは前記壁体の下端から、前記ツバ部と対向する部分においては前記ツバ部の軒方向端縁から、前記傾斜屋根の勾配に沿って前記誘導板まで軒方向へ延長させた位置より上側に、上側延長部を有することを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の壁止り役物を備えた屋根構造。
誘導板は、雨押え役物のツバ部の先端から誘導板まで軒方向へ延長した位置から、前記ツバ部の延長方向と同じ方向に延長し、前記ツバ部の先端まで若しくはそれよりも延長した横側延長部を有することを特徴とする請求項2、3または4のいずれかに記載の壁止り役物を備えた屋根構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に関する屋根構造及び壁止り役物は、風雨が激しい場合に、隣接部分105、105に流れる流水を適切に樋106に導くことができない場合があった。特に、壁体108に通気口を有する通気構造では、通気口(外壁)の下端を雨水が伝って流れる小口流下水が発生することがあり、この小口流下水が樋106を超えてしまったり、壁体の通気層に浸入することもあった(
図11参照)。
また、従来、通気構造の壁体108に壁止り役物を配置する場合に、その誘導板を配置する部分の外壁102を切り欠き、その下端102aを養生テープ等で堰止めしてシーリングをしていたが、手間がかかる手法であったため、ヘラ押さえなどの工程できれいに納められなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の壁止り役物は、構造物の壁体と、その軒方向側に樋が配置される傾斜屋根との隣接部分樋側に取り付けられるものであって、少なくとも、底板と、該底板の軒方向側縁と対向して立設する誘導板を有し、前記誘導板は、その全部または一部から前記底板側へ向いた庇部をもつ防御壁を有
し、前記防御壁は、前記庇部の先端若しくはその周辺から下方へ垂下する垂下壁を有することを特徴とするものである。
【0007】
また、壁体と、その軒方向側に樋が配置される傾斜屋根との隣接部分に取り付けられる雨押え役物と、該雨押え役物の軒方向側に壁止り役物を配置するものであって、前記壁止り役物の誘導板は、前記雨押え役物の軒方向端縁と対向する位置に立設し、防御壁は前記雨押え役物の主板の表面より上方に位置する屋根構造を有することが好ましい。
【0008】
また、
本発明の壁止り役物を備えた屋根構造
は、壁体と、その軒方向側に樋が配置される傾斜屋根との隣接部分に取り付けられる雨押え役物と、該雨押え役物の軒方向側に壁止り役物を配置するものであって、壁体は、外壁と構造壁とからなり、前記外壁と前記構造壁との間に通気層を有し、前記構造壁は傾斜屋根と接合し、前記外壁の下端はその一部又は全部が前記雨押え役物の上面から所定間隔を空けた通気口を有する通気構造であって、
前記壁止り役物は、少なくとも、底板と、該底板の軒方向側縁と対向して立設する誘導板を有し、前記誘導板は、その全部または一部から前記底板側へ向いた庇部をもつ防御壁を有し、前記防御壁は、前記外壁の下端よりも上方に位置する
ことを特徴とするものである。
【0009】
また、雨押え役物は、少なくとも傾斜屋根と壁体との隣接部分に顕出する主板と、該主板が前記壁体と隣接する端部のもう一方の端部から傾斜屋根の表面に延長して接するツバ部を有し、誘導板は、前記主板と対向する部分においては前記主板の軒方向端縁若しくは前記壁体の下端から、前記ツバ部と対向する部分においては前記ツバ部の軒方向端縁から、前記傾斜屋根の勾配に沿って前記誘導板まで軒方向へ延長させた位置より上側に、上側延長部を有することが好ましい。
【0010】
また、誘導板は、雨押え役物のツバ部の先端から誘導板まで軒方向へ延長した位置から、前記ツバ部の延長方向と同じ方向に延長し、前記ツバ部の先端まで若しくはそれよりも延長した横側延長部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項
1に記載の発明により、誘導板の防御壁で流水の跳ね返りを防止し、流水を適切に樋に誘導することができる。特に外壁の下端を伝って流水する小口流下水を適切に樋に誘導することができ、壁体への浸入を防止することができる。
また、防御壁の庇部により、シーリングの受け及びガイドの役割を果たすことができ、シーリングを施し易い。シーリングを施す場合に、ヘラおさえをすることができ、きれいにシーリングを納めることが可能になる。
【0012】
請求項
2に記載の発明により、雨押え役物を流れる流下水等を適切に樋に誘導し、壁体への浸入を防止する屋根構造とすることができる。
【0013】
請求項
3に記載の発明により、
雨押え役物を流れる流下水等を適切に樋に誘導し、壁体への浸入を防止する屋根構造とすることができる。
また、外壁と構造壁との間に通気層を有する通気構造であっても、適切に流水を樋に誘導することにより、通気層内に流水の浸入を防止することができる。
【0014】
請求項
4に記載の発明により、雨押え役物の主板の表面を流れる主板流下水を適切に樋に誘導することができる。
【0015】
請求項
5に記載の発明により、雨押え役物のツバ部の軒先側から拡散して流水する拡散流下水を適切に樋に誘導することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面に沿って説明する。
図1、9は本発明の壁止り役物を用いた状態の全体を、
図2〜4は本発明の壁止り役物1を、
図5は本発明の壁止り役物1を用いる屋根構造に使用する雨押え役物を、
図6〜8は本発明の壁止り役物を用いる屋根構造の施工方法の一例を、
図10は施工において外壁を切り欠いてシーリングを施す状態の一例を、
図11は本発明の壁止り役物を用いた場合の流水の状況を、
図12は本発明に用いる構造物101の一例を示す。
【0018】
図12に示すように、本発明の壁止り役物1を用いた屋根構造は、構造物101の張り出し部分104において、壁体108と傾斜屋根103との隣接部分105、105であって、その軒側で、樋106に雨水を誘導するために壁止り役物1を取り付ける。
【0019】
図1、9に示すように、近年の壁体108は、外壁102と構造壁107との間に通気層111を確保し、外壁102の下端102aと、傾斜屋根103に取り付けられた雨押え役物31の主板32の上面と、の間に所定間隔を空けた通気口112が形成され、この通気口112から通気層111を通じて通気する通気構造を用いることが多い。この通気構造は、気密性が高い近年の建築物において、壁体108の内部で結露の発生を防止するために用いられる。このような壁体108の通気構造であっても、通気層111内に雨水が流入せずに、適切に雨水を樋106に導く屋根構造が必要である。なお、本発明の壁止り役物1は、この通気構造を有しない壁体108にも使用可能である。
【0020】
本発明の屋根構造に用いる壁止り役物1は、
図2に示すように、主に底板2と、底板2の側方から立ち上がる縦板3と、底板2の軒方向側(
図2(a)の右手前側、
図2(b)の左手前側)から立ち上がる誘導板4と、底板2と誘導板4との間に形成される溝部5とからなる。本実施形態における壁止り役物1はガルバニウム鋼板を用いるものであるが、この材質でなくとも他の材質でもよい。
【0021】
本実施形態に係る壁止り役物1は、
図3に示すように、一枚の鋼板を所定寸法のもとに切断したうえ、各々折曲して形成する。具体的には、切断した鋼板のうち底板2と縦板3との間の折線を谷折りして縦板3を立ち上げる。折り返し板7aと縦板3との折線を山折りし、折り返し板7aと7bとの間の折線を谷折りして、2つの折り返し板7a、7bが縦板3の裏側に重なるようにし、係止片7cと押し返し板7bとの間の折線を谷折りして、縦板3の上縁に重ね合わせ、折り返し板7a、7bと縦板3との重なりを係止する。
【0022】
また、底板2と傾斜面6との間の折線を山折りし、傾斜面6と溝部5との間の折線を谷折りすることにより、底板2から傾斜する三角形状の傾斜面6及び溝部5を形成することができる。そして、溝部5と誘導板4との間の折線を谷折りし、誘導板4を立ち上げる。 本発明の壁止り役物1は、上記の通り、所定寸法に裁断された鋼板を各々折曲して形成するものであるが、必ずしもこれに限定するものではなく、例えば誘導板4や溝部5を溶接固定するものやその他の成型方法であってもよい。
【0023】
図2に示すように、折り曲げ状態を係止した壁止り役物1の底板2は、傾斜屋根103の上面に配置される平板状の部分であり、その軒方向側(
図2(a)の右手前側、
図2(b)の左手前側)には、傾斜面6及び溝部5が形成される。傾斜面6は、いったん底板2の軒方向側一部を斜め下方に折り曲げて略三角形状にした部分であり、更にその軒方向側を平坦にした溝部5を形成される。傾斜面6により溝部5が底板2より低く位置することになり、溝部5は壁止り役物1を施工した場合に樋106の上方に位置し、流水を樋に誘導する。(
図1参照)
【0024】
壁止り役物1の縦板3は、底板2の一方の側縁から、上方へ立ち上がる面である。折り返し板7a、7bは縦板3の裏側に位置し、折り曲げた状態を係止片7cで係止している。後述の通り、この縦板3は構造壁107に接合するように配置される。
【0025】
折り曲げ状態を係止した壁止り役物1の誘導板4は、溝部5の軒方向側縁を下辺とし、縦板3の軒方向側縁を側辺として、底板2の軒方向側の縁と略対向するように位置する。 略対向するとは、誘導板4は、底板2の上を流れる流下水と正対するように向ける(対向する)ように形成するが、必ずしも正確に正対するものではなく、それよりも誘導板4の向きを
図2(a)の右側へ開くようにしてもよい。これにより、底板2の上に配置される雨押え役物31の表面を流れる流水の誘導時に発生する跳ね返りを少なくすることができる。
【0026】
折り曲げ状態を係止した壁止り役物1の底板2のうち縦板3のない側方縁、縦板3の上方縁、誘導板4の上方縁を、それぞれ折り返したカエシ2a、3a、4aを折り曲げて形成する。このカエシ2a、3a、4aにより、施工者が手を切る等の負傷を避けることができるとともに、流水の一部が流れ出ることを防止することができる。
【0027】
誘導板4の一部を延長して防御壁11を形成する。誘導板4の上方縁のうち縦板3付近の一部を下方に延長し、いったん雨押え役物31の方向へ折曲する庇部12を形成し、さらに下方に折曲して垂下壁13を形成する。これにより、誘導板4の表面の一部が底面2側に位置することになる。本実施形態では、誘導板4の上方縁の一部を延長して防御壁11を形成するが、誘導板4の上端縁全部を延長して防御壁を形成するものであってもよい。
【0028】
図4に示すように、防御壁11は、その他の実施形態として、防御壁11自体を誘導板4とは別部材として成型し、誘導板4の上端縁に嵌め込んで使用するものであってもよい。 これは、防御壁11の上端縁にフック状の固定部14を形成し、その固定部14を誘導板4に設置するその上端の配置部分に嵌め込む。その他、溶接やビス等により配置、固定するものであってもよい。
【0029】
防御壁11のその他の実施形態として、図示しないが、誘導板4の上端縁から下方へ延長せず、誘導板4の上端縁と同じ高さで雨押え役物31の方向へ延長する庇部12を有するものであってもよい。
【0030】
また、防御壁11の庇部12の先端から延長して折曲する垂下壁13との折曲は、直角よりも10度程度の角度をつけた鋭角に折曲するものであるが、これに限定されず、直角に折曲したり、若干鈍角に折曲するものであってもよい。なお、その他の実施態様として、垂下壁13を有しない庇部12のみである実施形態であってもよい。
【0031】
防御壁11の庇部12、垂下壁13の横方向(幅方向・
図4の左右方向)の長さは、40mm程度が好ましいが、これに限定されない。その他の実施形態の防御壁の横方向長さとして、誘導板4の横方向長さの3分の1ないし4分の1程度の長さを有するものであってもよく、誘導板4の横方向長さと同じものや、その2分の1程度、さらには6分の1程度の長さのものであってもよい。
【0032】
防御壁11の位置は少なくとも、外壁102の下端102aから、傾斜屋根103の傾斜方向に沿って延長した部分にあって、外壁102と対向する位置にある。これは後述の通り、防御壁11の主たる目的が、小口流下水C1の跳ね返りを防ぎ、樋106へ適切に誘導することにあるためである(
図11参照)。
【0033】
また、誘導板4は従来の誘導板に比べて、上下方向(
図2(a)、(b)の上下方向)の上側に延長する上側延長部21が形成され、横方向(
図2(a)、(b)の左右方向)の左側に延長する横側延長部22が形成される。この上側延長部21、横側延長部22については後述する。
【0034】
図2(a)に示す本発明の壁止り役物1を用いた屋根構造の施工について、
図6〜
図8、
図9に示して説明する。各部材の配置、固定手段は、釘打ち、ネジ固定、接着等の通常行われる手段を用いる。
図2(b)に示す本発明の壁止り役物1は左右対称の位置に施工するものであり、その施工方法は同じである。
なお、
図12に示す隣接部分105、105では、壁体108は、壁止り役物1を配置する位置より、更に軒方向(
図12の左右方向)へ延長されている。しかし、
図1、
図6〜
図9、
図11においては施工説明のため、壁止り役物1の配置する位置に壁体108の一端が位置するものを示す。壁体108が更に軒方向へ延長される場合に、壁止り役物1の配置部分を確保するための壁体108の外壁102の切り欠き部分41及びシーリング42は
図10に示して後述する。
【0035】
図6に示すように、傾斜屋根103の野地板121から構造壁107の下端部分にかけて、シート状の下葺き材122を張り付ける。そして、壁止り役物1は、下葺き材122を張った状態において、傾斜屋根103と構造壁107との隣接付近で、その軒側に取り付ける。壁止り役物1の溝部5は傾斜屋根103の軒側から露出して、樋106(省略)の上側となるように位置させる。本実施形態では、壁止り役物1の構造壁107側と傾斜屋根103側に取り付けた吊り子留め部材8、8を用いて固定するが、この吊り子留め部材8、8を用いずに直接ネジや釘留めして固定してもよい。
【0036】
図6、7に示すように、傾斜屋根103に張り付けた下葺き材122の上から、構造壁107との接合付近に角木の受桟123を配置する。次に、受桟123を覆うように、捨板水切124を配置する。捨板水切124は、中央部分124bが受桟123を覆い、その側方から上方に立ち上がる部分が構造壁107に張り付けられた下葺き材122側に配置され、もう一方の側方に延長したツバ部124aが傾斜屋根103の野地板121に張り付けられた下葺き材122の上に配置される。
【0037】
傾斜屋根103の下葺き材122の上から、屋根材125を敷き詰めて固定する。この屋根材125は、壁体108の付近では、捨板水切124のツバ部124aの上に重なるように位置するが、捨板水切124の中央部分124bには重ならない。
【0038】
この捨板水切124の中央部分124bの上側に位置するように、角木の笠木126を配置する。そして、笠木126を覆うように、雨押え役物31を配置する。雨押え役物31は、その主板32が笠木126の上側を覆うようにし、その側方から立ち上がる縦板33が構造壁107に張り付けられた下葺き材122と接し、もう一方の側方から延長するツバ部34が屋根材125の上面に接する。
【0039】
この雨押え役物31は、
図5に示すように、長手方向に所定長さを有する主板32と、主板32の側方縁を上方に折曲して延長形成する縦板33と、主板32の縦板33がない側方縁をいったん下方に折曲し、さらに主板32と並行する方向に折曲して延長するツバ部34が形成される。縦板33の上縁とツバ部34の端縁を折り返したカエシ33a、34aがそれぞれ形成され、施工者が負傷しないように配置されている。
【0040】
図8、9に示すように、外壁102は、雨押え役物31の主板32の上方に位置するが、外壁102の下端102aは、雨押え役物31の主板32と接するものではなく、両者の間は解放されており、この部分が通気層111に通じる通気口112となる。外壁102と構造壁107との間の通気層111には、雨押え役物31の縦板33、壁止り役物1の縦板3が構造壁107に接した状態で、組み込まれるよう配置される。
【0041】
壁止り役物1の配置する部分に壁体108の外壁102を一部切り欠き、通気層に雨水や流水が浸入しないように施すシーリングについて説明する。
図10に示すように、壁止り役物1を配置し、特に誘導板4の配置部分を確保するために、外壁102を一部切り欠いて、切欠部分41を形成する。壁止り役物1を配置した後に、切欠部分41にバックアップ材を充填し、シーリング42を施す。このシーリング42は、従来、外壁102の切り欠いた部分全体に施すために、養生テープ等により下に垂れ下がらないように堰止めをする等、手間がかかっていた。しかし、本実施形態の壁止まり役物1の防御壁11の庇部12がシーリング42の受け及びバックアップ材のガイドの役割を果たすため、ヘラ押さえの工程も含め、容易かつきれいにシーリング42を施すことが可能になる。
【0042】
本発明の壁止り役物1を用いた屋根構造における流水の誘導について説明する。
図11に示すように、雨押え役物31の主板32の表面は、一般的には金属板であるため、屋根材125よりも風雨が抵抗なく流れやすい。そのため、激しい風を伴い、大量の風雨が伴うような激しい気象環境下では、風雨が矢印線A1の方向に流れる主板流下水A1が発生する。この主板流下水を適切に樋106に誘導し、構造壁107側に流入することを防ぐ必要がある。
【0043】
主板流下水A1のみならず、ツバ部34の表面も風雨が流れるツバ部流下水B1の発生が判明している。ツバ部34も、主板32と同様に一般的には金属板であり、屋根材25よりも抵抗が少なく、風雨が流れやすいためである。
【0044】
また、ツバ部流下水B1は、雨押え役物31の軒先側において、右手前側に広がって流れる拡散流下水B2が発生する。これは、通常は、ツバ部流下水B1は、樋106までツバ部34の表面を流れ、樋106に流入し、矢印線Dの方向へ沿って流れる。しかし、気象条件が悪化し、流量が多くなると、矢印線D方向に流れる流水に沿って、樋106への流入付近で、放射状に拡散することが判明している。この拡散流下水B2も適切に樋106に誘導する必要がある。
【0045】
さらに、下屋根が勾配屋根の場合、外壁102からの流下水で小口流下水C1が発生することが判明した。この小口流下水とは、通気層111を有する壁体108では、外壁102の下端102aを伝って、多くの風雨が軒方向(C1の矢印方向)に向かって流れることをいう。
【0046】
これらの雨水を適切に樋106に誘導するため、壁止り役物1の誘導板4は、従来の誘導板と比べて、上側延長部21、横側延長部22、防御壁11を形成した形態とする。つまり、その高さ(
図11の上下方向)は、少なくとも、流量が大幅に増加した主板流下水A1に対処するため、雨押え役物31の主板32の表面から、傾斜屋根103の勾配角度に沿って軒方向へ延長し、誘導板4の表面に当たる部分A3より高いことが必要である。
【0047】
また、小口流下水C1に対処するため、誘導板4の高さは、少なくとも、外壁102の下端102aから、傾斜屋根103の勾配角度に沿って軒方向(C1の矢印方向)へ延長し、誘導板4の表面に当たる部分C3より高いことが必要である。このC3の位置は、一般的な誘導板であればA3の位置より高くなるが、誘導板の形態によってはこの条件を満たすことが必要である。
【0048】
主板流下水A1と同じく、ツバ部流下水B1に対処するため、ツバ部34の表面から傾斜屋根103の勾配角度に沿って軒方向へ延長し、誘導板4の表面に当たる部分B3より高いことが必要である。
【0049】
誘導板4は、これらA3、B3、C3の位置よりも高い位置になるように、上側延長部21を形成する。この上側延長部21の存在により、流量が増加した主板流下水A1、ツバ部流下水B1、小口流下水C1が、誘導壁4を乗り越えず、適切に樋106に誘導することができる。
【0050】
上側延長部21の高さ、供給水量、樋誘導率について、流下水量を分けて実験した結果を表1に示す。なお、同表における誘導板高さとは雨押え役物31の主板32の表面からの誘導板4の高さを示し、外装材差込高さとは外壁102の下端102aから誘導板4の高さを示す。この実験では、傾斜屋根に対して均等な散水がされるよう小孔を10mm間隔で配置した1200mmのパイプを軒先から200mm離して上方に配置し、流下水量を一定に保つため水圧を制御し、線状に流下させた。流下水量は1分当たり4リットル(一般的な雨に相当)及び8リットル(夏の夕立に相当)の2種類を行い、計測時間は5分間とした。
【0052】
上記実験結果から、所定の高さを有する上側延長部21がない場合には、水量が多い場合に誘導板4を超えて、樋106に適切に流入しないことが分かる。誘導板高さは、通気口幅を15mmとした場合、25mmの高さがあることが好ましい。一般に通気口112は10〜15mm程度の高さを取ることから、C3から10〜15mmの上側延長部21が形成されることとなる。
【0053】
また、ツバ部34の拡散流下水B2に対処するため、誘導板4の横方向(
図11の右手前方向)の長さを、雨押え役物31のツバ部34が延長する方向と同じ方向に延長した横側延長部22を形成する。
【0054】
従来の誘導板は、その横方向が雨押え役物のツバ部の先端に対応する位置まで及んでいなかった。これは、拡散流下水B2の存在を意識せず、対応する意図がなかったためであるが、拡散流下水B2に対処する必要から、雨押え役物31のツバ部34の先端34aに対応する位置B4よりも、誘導板4の横方向長さを延長する横側延長部22を形成する。
【0055】
具体的には、一般的な雨押え役物31の縦壁33が形成される端部からツバ部34の先端までの幅方向長さが130mmであるところ、誘導板4の幅方向長さは150mmの長さを形成し、20mmの横側延長部22を形成することが好ましい。
【0056】
防御壁11は、流下水の適切な樋106へ誘導が可能になる効果がある。つまり、防御壁11の庇部12が誘導板4より雨押え役物31の方向へ形成されていることから、流量が多い場合に、樋106からの跳ね上がりを防止することができる。また、防御壁11の垂下壁13の下端13aが、外壁102の下端102aから傾斜屋根の傾斜方向に沿って誘導板4まで延長した位置(C3)よりも、上方に位置する。これにより、小口流下水C1が流れてきた場合であっても、防御壁11の下端13aが水切りのように機能し、適切に樋106に誘導することができ、誘導板4で跳ね返って通気層111へ流水の浸入を防止することができる。このように、小口流下水C1は主板流下水A1よりも上方にあり、外壁102の下端102aを伝って流れるものであるため、通気層111内への浸入の可能性が高かったが、これを適切に樋106に流入させることで通気層111内への浸入を防ぐことができる。