(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥脱水装置を備えた汚泥処理装置の概略図である。
図1に示される汚泥処理装置で処理される汚泥には、上水、下水、またはし尿の処理時に発生する汚泥のみならず、食料品、化粧品、紙などの工業製品の製造時に発生する産業廃棄物としての汚泥も含まれる。
【0017】
図1に示されるように、この汚泥処理装置では、汚泥は、まず凝集槽30に供給される。凝集槽30には、凝集剤などの薬品が投入され、モータなどの駆動源32により回転される攪拌羽根31によって薬品と汚泥とが攪拌される。凝集槽30内で薬品と汚泥を攪拌することにより、汚泥内の懸濁物質が集合した凝集フロックが形成される。
図1に示される凝集槽30は2段であるが、凝集槽30は、1段であってもよいし、3段以上の複数段であってもよい。
【0018】
凝集フロックが形成された汚泥は、次に、濃縮装置35に供給される。濃縮装置35は、汚泥内の水分量を減少させることにより、汚泥を濃縮する装置である。濃縮装置35として、ベルト型濃縮機のような公知の濃縮装置を用いることができる。濃縮装置35は、省略されてもよい。
【0019】
濃縮装置35で濃縮された汚泥は、汚泥脱水装置40に搬送される。
図2は、本発明の一実施形態に係る汚泥脱水装置40を示す模式図である。以下、
図2を参照して、汚泥脱水装置40を説明する。
【0020】
図2に示す汚泥脱水装置40は、汚泥を加熱しながら脱水するスクリュープレス式脱水機(加熱脱水機)41と、スクリュープレス式脱水機41で形成された脱水汚泥が移送される真空チャンバー42と、真空チャンバー42に配管45を介して接続される真空源44と、脱水汚泥を真空チャンバー42から排出するためのスクリュー式搬送コンベア(搬送装置)20とを備える。真空源44は、例えば真空ポンプである。真空源44を駆動することにより、真空チャンバー42内の空気が排気され、真空チャンバー42内に真空が形成される。真空源44により達成される真空チャンバー42内の真空圧力は、例えば、−90kPaである。なお、以下では、加熱脱水機としてスクリュープレス式脱水機41が説明される。しかしながら、加熱脱水機として、スクリュープレス式脱水機41に代えて、ベルトプレス式脱水機を用いてもよい。
【0021】
図2に示すように、スクリュープレス式脱水機41は、円筒状のスクリーンケーシング(ろ過筒)1と、スクリーンケーシング1内に同心状に配置されたスクリュー軸3と、スクリュー軸3の外面に固定されたスクリュー羽根4と、スクリュー羽根4を回転させて汚泥を真空チャンバー42に向かって送る回転機構7とを有している。スクリーンケーシング1は、スクリュー羽根4を囲む円筒スクリーン1Aと、円筒スクリーン1Aの下流側端部に接続された脱水汚泥通過管1Bとを備えている。円筒スクリーン1Aは、パンチングメタルなどの多孔板から構成されているが、脱水汚泥通過管1Bは孔のない板から構成されている。脱水汚泥通過管1Bは、真空チャンバー42に接続されており、脱水汚泥通過管1Bは円筒スクリーン1Aと真空チャンバー42との間に位置している。
【0022】
スクリュー軸3は、スクリーンケーシング1(円筒スクリーン1Aおよび脱水汚泥通過管1B)、および真空チャンバー42内を貫通して延びている。円筒スクリーン1A内のスクリュー軸3は、下流側に向かってその径が徐々に大きくなる円錐台形状を有している。円筒スクリーン1Aの上流側の端部は閉塞壁8によって密封されている。スクリュー軸3はこの閉塞壁8を貫通して延びており、スクリュー軸3の端部は回転機構7に連結されている。回転機構7は、モータおよび減速機構などから構成されている。なお、回転機構7として、ディーゼルエンジンなどの他の駆動源を用いてもよい。
【0023】
閉塞壁8には、スクリュー軸3を回転自在に支持し、かつシール機能を有する軸受10が設置されている。スクリュー軸3の他方の端部は、真空チャンバー42の側壁42aに設置された軸受11により回転自在に支持されている。この軸受11もシール機能を有しており、スクリュー軸3と側壁42aとの隙間は軸受11によりシールされている。
【0024】
スクリュー羽根4は、スクリュー軸3の長手方向に沿って螺旋状に延びる一枚羽根であり、スクリュー羽根4の軸方向の長さは、多孔板から構成された円筒スクリーン1Aの軸方向の長さとほぼ同じである。円筒スクリーン1Aの内面とスクリュー羽根4との間には微小な隙間が形成されており、スクリュー羽根4は円筒スクリーン1Aに接触することなく回転することができる。スクリーンケーシング1の上流側端部には、汚泥投入口2が形成されている。汚泥投入口2に投入された汚泥は、回転するスクリュー羽根4により円筒スクリーン1A内を脱水汚泥通過管1Bおよび真空チャンバー42に向かって移送される。
【0025】
汚泥が円筒スクリーン1A内で移送される空間は、円筒スクリーン1Aの内面と、スクリュー羽根4と、スクリュー軸3とによって形成される。この移送空間の容積は、
図2に示すように、汚泥の進行方向に沿って漸次減少する。したがって、この空間をスクリュー羽根4によって移動されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。円筒スクリーン1Aを通過したろ液は、円筒スクリーン1Aの下方に配置されたろ液受け14によって回収される。
【0026】
スクリュー軸3は中空に構成され、スクリュー軸3の内部空間に蒸気、加温水、または加熱された油脂などの加熱媒体を供給するための供給配管3aが該スクリュー軸3の下流側端部に接続される。供給配管3aを介して供給された加熱媒体により、スクリュー軸3が加熱されるので、該スクリュー軸3に接触している汚泥を加熱することができる。スクリュー軸3の内部空間に供給された加熱媒体は、スクリュー軸3の上流側端部に接続された排出配管3bを介して、スクリュー軸3の外部に排出される。
【0027】
スクリュー軸3の上流側端部に接続された排出配管3bの代わりに、スクリュー軸3の下流側端部に接続された排出配管3cを設けてもよい。この場合、スクリュー軸3の内部には、スクリュー軸3の上流側で互いに連通する外側流路と内側流路とで構成される2重管構造が設けられる。供給配管3aは、外側流路に接続される一方で、排出配管3cは、内側流路に接続される。供給配管3aを介して外側流路に供給された加熱媒体は、内側流路を通って、スクリュー軸3の下流側端部に接続される排出配管3cからスクリュー軸3の外部に排出される。
【0028】
スクリュー軸3の内部空間を満たした加熱媒体は、スクリュー軸3に接触している汚泥を間接的に加熱し、汚泥に含まれる水分を蒸発させることができる。また、汚泥を加熱すると、汚泥の粘性が低下して汚泥からろ液が分離しやすくなると共に、汚泥の熱変性が起こって汚泥の保水力が低下するので、汚泥の含水率を効率良く低下させることができる。円筒スクリーン1Aに投入された汚泥は、スクリュー軸3を介して加熱媒体により加熱されながら、スクリュー羽根4により圧搾され、脱水されて、脱水汚泥を形成する。
【0029】
円筒スクリーン1Aは脱水汚泥通過管1Bに接続され、脱水汚泥通過管1Bは真空チャンバー42に接続される。脱水汚泥通過管1Bは、円筒状の形状を有しており、脱水汚泥通過管1Bの内径は、円筒スクリーン1Aの内径と等しい。スクリュー軸3は、脱水汚泥通過管1B内を貫通して延びているが、脱水汚泥通過管1B内にスクリュー羽根4は設けられていない。脱水汚泥は、スクリュー軸3の外面と脱水汚泥通過管1Bの内面で形成される空間を通過して真空チャンバー42に移送される。
【0030】
脱水汚泥通過管1Bの下流側端部は、真空チャンバー42の脱水汚泥入口42cに接続されている。この脱水汚泥入口42cに対向して環状の背圧板16が配置されている。この背圧板16は、ステンレスや真鍮などの金属または樹脂から形成されており、脱水汚泥通過管1B内を移送される脱水汚泥を受けるためのテーパ面16aを有する円錐台の形状を有している。背圧板16の中央部には、スクリュー軸3が貫通する貫通孔が形成されており、背圧板16はスクリュー軸3と同心状に配置されている。背圧板16はスクリュー軸3に固定されておらず、背圧板16は回転しない。
【0031】
背圧板16は、背圧板駆動装置18に連結されている。この背圧板駆動装置18は、背圧板16を、スクリュー軸3の軸方向に移動させるように構成されている。したがって、背圧板16と真空チャンバー42の脱水汚泥入口42cとの間の隙間は、背圧板駆動装置18によって調整される。背圧板駆動装置18は、例えば油圧シリンダーまたは電動シリンダーなどから構成されている。背圧板16は、スクリュー羽根4に接触しない範囲内で軸方向に移動するように構成されている。なお、図に示す例では、背圧板16の外径はスクリーンケーシング1の内径よりも大きく、背圧板16がスクリーンケーシング1内に進入できないようになっているが、本発明はこの例に限られず、背圧板16が、スクリュー羽根4に接触しない範囲内でスクリーンケーシング1内に進入可能としてもよい。
【0032】
真空源44と真空チャンバー42の間には、凝集装置49が配置される。真空チャンバー42は、配管45に配置された凝集装置49を介して真空源44に接続されている。凝集装置49には冷却水が流通している。この冷却水は、真空源44により排気される空気と熱交換を行い、該空気中に含まれる水蒸気を凝集させて水を生成する。生成された水は、凝集装置49からドレインを通じて排出される。
【0033】
真空チャンバー42は、脱水汚泥を真空チャンバー42から排出するためのスクリュー式搬送コンベア(搬送装置)20に接続されている。より具体的には、スクリュー式搬送コンベア20の脱水汚泥排出管21は、真空チャンバー42の下端に接続されている。真空チャンバー42は、スクリュープレス式脱水機41とスクリュー式搬送コンベア20との間に配置されている。脱水汚泥排出管21には、脱水汚泥が投入される脱水汚泥投入口22が形成されている。この脱水汚泥投入口22は、真空チャンバー42の脱水汚泥出口42dに接続されている。脱水汚泥出口42dは、真空チャンバー42の下端に位置している。本実施形態の脱水汚泥排出管21は、水平方向に対して傾斜して配置されている。具体的には、脱水汚泥排出管21は、脱水汚泥の搬送方向に沿って上向きの勾配を有している。脱水汚泥排出管21は、水平に配置されてもよい。
【0034】
図3は、
図2のA−A線断面図である。
図3に示されるように、脱水汚泥排出管21は、1対の平行な直線部と、外側に凸となって対向する1対の円弧部とからなる楕円形状の断面を有する。脱水汚泥排出管21内には、2本のスクリュー軸23が配置されており、各スクリュー軸23の外面には、スクリュー羽根24が固定されている。スクリュー軸23およびスクリュー羽根24は、脱水汚泥排出管21と同様に、脱水汚泥の搬送方向に沿って上向きの勾配を有している。脱水汚泥排出管21が水平に配置される場合、スクリュー羽根24は、脱水汚泥排出管21と同様に、水平方向に延びる。
【0035】
図2に示されるように、脱水汚泥排出管21の上流側の端部は閉塞壁25によって密封されている。スクリュー軸23はこの閉塞壁25を貫通して延びており、スクリュー軸23の端部は回転機構27に連結されている。閉塞壁25には、スクリュー軸23を回転自在に支持し、かつシール機能を有する軸受26が設置されている。脱水汚泥排出管21の下流側の端部は閉塞壁28によって密封されており、スクリュー軸23の他方の端部は閉塞壁28に設置された軸受29により回転自在に支持されている。回転機構27は、モータおよび減速機構などから構成されている。なお、回転機構27として、ディーゼルエンジンなどの他の駆動源を用いてもよい。
【0036】
脱水汚泥排出管21は、脱水汚泥投入口22を有する上流部21aと、断面積が漸次減少していく縮小部21bと、縮小部21bで減少した断面積を有する下流部21cとを有する。真空チャンバー42は上流部21aに接続され、上流部21aは縮小部21bに接続され、縮小部21bは下流部21cに接続されている。下流部21cは、脱水汚泥が排出される脱水汚泥排出口21dが備えられている。スクリュー軸23は、上流部21a、縮小部21b、および下流部21cを貫通して延びている。スクリュー羽根24は、上流部21a内にのみ設けられており、縮小部21bおよび下流部21c内には設けられていない。
【0037】
スクリュー羽根24は、スクリュー軸23の長手方向に沿って螺旋状に延びる一枚羽根である。脱水汚泥排出管21の内面とスクリュー羽根24との間には微小な隙間が形成されており、スクリュー羽根24は脱水汚泥排出管21に接触することなく回転することができる。
【0038】
スクリュー軸23の上流側部位は中空に構成される。すなわち、脱水汚泥排出管21の上流部21a内に位置する、スクリュー軸23の上流側部位は中空に形成されている。
図2に示されるように、スクリュー軸23の上流側部位の内部空間には、蒸気、加温水、または加熱された油脂などの加熱媒体を供給するための供給配管37と、加熱媒体を排出する排出配管38が接続されている。
【0039】
次に、汚泥の加熱脱水工程および真空蒸発工程について説明する。
図4は、
図2に示す汚泥脱水装置40の動作を説明する図である。汚泥は、汚泥投入口2からスクリーンケーシング1の円筒スクリーン1A内に投入される。汚泥は、スクリーン軸3内を流れる加熱媒体によって加熱されながら、回転するスクリュー羽根4により円筒スクリーン1A内を脱水汚泥通過管1Bに向かって移送される。円筒スクリーン1A内を移動されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。円筒スクリーン1Aを通過したろ液は、円筒スクリーン1Aの下方に配置されたろ液受け14によって回収される。汚泥は、円筒スクリーン1A内で加熱脱水されて、脱水汚泥を形成する(加熱脱水工程)。
【0040】
円筒スクリーン1A内を移動してきた脱水汚泥は、スクリュー羽根4が設けられていない脱水汚泥通過管1Bに達する。この脱水汚泥通過管1B内では、脱水汚泥はスクリュー羽根4により移送される後続の脱水汚泥によって脱水汚泥通過管1B内を移動され、さらに背圧板16に押し付けられる。脱水汚泥は、背圧板16によって移動を妨げられることで圧縮される。この圧縮された脱水汚泥は、真空チャンバー42の脱水汚泥入口42cをシールするシールプラグを脱水汚泥通過管1B内に形成する。脱水汚泥通過管1B内に存在する脱水汚泥は、スクリュー軸3の外周面に接触しているので、このスクリュー軸3内を流れる加熱媒体により加熱される。
【0041】
真空源44を駆動すると、真空チャンバー42内に真空が形成される。真空チャンバー42の脱水汚泥入口42cは、背圧板16に押し付けられた脱水汚泥通過管1B内の脱水汚泥によりシールされる。脱水汚泥は、脱水汚泥通過管1B内でシールプラグを形成しながら、背圧板16と脱水汚泥入口42cとの間の隙間を通過して、真空チャンバー42内に導入される。真空チャンバー42内の脱水汚泥は、真空下に置かれ、脱水汚泥に含まれる水分が蒸発する(真空蒸発工程)。
【0042】
脱水汚泥は、脱水汚泥投入口22を通ってスクリュー式搬送コンベア20の脱水汚泥排出管21に投入される。脱水汚泥は、回転するスクリュー羽根24により脱水汚泥排出管21内を排出口21dに向かって移送される。加熱媒体は、供給配管37を通ってスクリュー軸23の上流側部位内に供給され、スクリュー軸23に接触している脱水汚泥を加熱する。スクリュー軸23内に供給された加熱媒体は、スクリュー軸23に接続された排出配管38を介して、スクリュー軸23の外部に排出される。
【0043】
脱水汚泥が脱水汚泥排出管21内で移送される空間の断面積は、縮小部21bで漸次減少する。したがって、縮小部21bでは、脱水汚泥に作用する抵抗が増加する。この縮小部21b内では、脱水汚泥は、スクリュー羽根24によって移送される後続の脱水汚泥によって圧縮されて下流部21c内でシールプラグを形成する。真空源44を動作させたとき、真空チャンバー42の脱水汚泥出口42dは、このシールプラグとなった脱水汚泥によりシールされる。脱水汚泥は、スクリュー式搬送コンベア20内でシールプラグを形成しながら、後続の脱水汚泥により押されて少しずつ排出口21dから排出される。このように、真空チャンバー42の脱水汚泥入口42cおよび脱水汚泥出口42dが脱水汚泥によって連続的にシールされるので、真空チャンバー42のシール状態を維持しながら、脱水汚泥を連続的に真空チャンバー42に移送し、かつ真空チャンバー42から連続的に排出することができる。
【0044】
加熱脱水工程で加熱された脱水汚泥を真空チャンバー42内で真空下に置くことにより、脱水汚泥からの水の蒸発が促進される。さらに、真空チャンバー42に連通する脱水汚泥排出管21の上流部21a内の脱水汚泥からも水分が蒸発する。蒸発した水分は、真空源44により排気され、その結果、脱水汚泥の含水率を大きく低下させることができる。
【0045】
図4に示されるスクリュー式搬送コンベア20の代わりに、搬送装置として、一軸ねじ式ポンプまたはピストン式ポンプなどの容積式ポンプを用いてもよい。このような容積式ポンプに供給された脱水汚泥は、スクリュープレス式脱水機41で形成されたシールプラグが有する脱水汚泥の圧密状態を維持しながら圧縮および搬送される。したがって、これら容積式ポンプを用いても、真空チャンバー42の脱水汚泥出口42dをシールするシールプラグを形成することができる。
【0046】
本実施形態では、汚泥は、最初に、スクリュープレス式脱水機41で加熱されながら脱水される(加熱脱水工程)。汚泥を加熱すると、汚泥の粘性が低下して汚泥からろ液が分離しやすくなると共に、汚泥の熱変性が起こって汚泥の保水力が低下するので、生成される脱水汚泥の含水率を効率良く低下させることができる。さらに、汚泥を加熱しながら脱水すると、汚泥に含まれる水は、汚泥の加熱が完了する前から速やかにろ液として汚泥から分離する。したがって、ろ液の分離に、余計なエネルギーが消費されることを防止することができる。さらに、真空チャンバー42では、スクリュープレス式脱水機41で形成された脱水汚泥の水分を真空下で蒸発させる真空蒸発工程を実施する。真空蒸発工程では、加熱脱水工程で加熱された脱水汚泥を真空下に置くことにより、脱水汚泥からの水の蒸発が促進されるので、脱水汚泥の含水率を著しく低下させることができる。この真空蒸発工程は、加熱脱水工程で十分脱水された汚泥から水分を蒸発させる。したがって、水分の蒸発過程で消費されるエネルギー(蒸発潜熱)を最小限にすることができる。また、汚泥を加熱しながら脱水する加熱脱水工程を実施するスクリュープレス式脱水機41と、スクリュープレス式脱水機41で形成された脱水汚泥の水分を真空下で蒸発させる真空蒸発工程を実施する真空チャンバー42とが1台の汚泥脱水装置40に設けられる。特に、真空チャンバー42の脱水汚泥入口42cおよび脱水汚泥出口42dが脱水汚泥によって連続的にシールされながら、真空チャンバー42内に脱水汚泥が連続的に移送される。したがって、含水率が低下した脱水汚泥を連続処理で生成することができる。
【0047】
加熱脱水工程で加熱された脱水汚泥の温度が高いまま搬送装置(例えば、スクリュー式搬送コンベア20)を用いて該脱水汚泥を搬送すると、搬送装置内で脱水汚泥が冷やされて結露水が生成され、この結露水が搬送装置の腐食の原因となることがある。また、高温の脱水汚泥をそのまま貯留すると、脱水汚泥が発酵してしまうことがある。本発明によれば、加熱脱水工程で加熱された脱水汚泥内の水分を真空蒸発工程で蒸発させるので、蒸発潜熱としてのエネルギーが脱水汚泥から奪われ、脱水汚泥の温度を低下させることができる。その結果、低温の脱水汚泥が生成され、搬送装置の腐食および脱水汚泥の発酵を防止することができる。
【0048】
し尿処理場で発生する余剰汚泥を使用して、汚泥脱水方法の比較実験を行った。実験では、汚泥を加熱しながら脱水する加熱脱水工程で脱水汚泥を生成した後、この脱水汚泥に対して真空蒸発工程を実施して、真空蒸発工程後の脱水汚泥の含水率を測定した(実験1:本実施形態の汚泥脱水方法)。実験1における真空蒸発工程の真空圧は、−97kPaであった。さらに、汚泥を加熱しないで脱水した脱水汚泥を真空蒸発させない場合(比較例1)の脱水汚泥の含水率と、汚泥を加熱しながら脱水する加熱脱水工程を実施した脱水汚泥に対して、真空蒸発工程を行わない場合(比較例2)の脱水汚泥の含水率を測定した。実験1、比較例1、および比較例2の脱水汚泥は、
図2に示されるようなスクリュープレス式脱水機41および真空チャンバー42を用いて生成された。汚泥の固形物乾物重量(処理固形物量)は、7kg−DS/hであり、スクリュープレス式脱水機41に汚泥を投入する前に、濃縮機で汚泥を10%まで濃縮している。また、濃縮汚泥には、ポリマと無機凝集剤(ポリ鉄)が添加されている。
【0049】
比較例1の脱水汚泥の含水率は80%であり、比較例2の脱水汚泥の含水率は73%であった。比較例1と比較例2の結果から、汚泥を加熱しながら脱水すると、脱水汚泥の含水率を大幅に低減できることが分かる。
【0050】
実験1の脱水汚泥の含水率は71%であった。実験1と比較例2の結果から、加熱脱水工程を実施した後に、真空蒸発工程を実施した脱水汚泥は、さらに含水率を低減できることが分かる。
【0051】
このように、汚泥を加熱しながら脱水して脱水汚泥を形成する加熱脱水工程を行い、この加熱脱水工程後に、脱水汚泥に含まれる水分を真空下で蒸発させる真空蒸発工程を行うと、脱水汚泥の含水率を著しく低減できる。しかしながら、低含水率の脱水汚泥を得るための汚泥脱水方法で必要なエネルギー量が多ければ、その汚泥脱水方法は、省エネルギーの観点から不利益である。そこで、加熱脱水工程および真空蒸発工程を行う本実施形態の汚泥脱水方法で得られた脱水汚泥の含水率を基準として、この汚泥脱水方法で必要とされる熱エネルギーと、以下の比較汚泥脱水方法で必要とされる熱エネルギーとを比較する。
【0052】
比較汚泥脱水方法1は、汚泥を加熱しないで脱水した後に、脱水汚泥を加熱しながら該脱水汚泥に含まれる水分を真空蒸発させる汚泥脱水方法である。比較汚泥脱水方法2は、汚泥を所望の温度まで昇温させた後に汚泥を脱水して脱水汚泥を生成し、この脱水汚泥を真空蒸発させる汚泥脱水方法である。
【0053】
最初に、本実施形態の汚泥脱水方法で必要な熱エネルギーを検討する。固形物乾物重量(処理固形物量)が50kg−DS/hで、汚泥濃度が2.5%の汚泥を想定する。この場合、処理されるべき汚泥量は、4000kg/hとなる。4000kg/hの汚泥をスクリュープレス式脱水機41で20℃から60℃まで加熱しながら脱水する場合、必要な熱エネルギーは503MJ/hである。4000kg/hの汚泥を加熱しながら脱水する場合に必要とされる熱量は、4000kg/hの汚泥全量を加熱するのに必要な熱量の50%程度である。放熱により消費される熱エネルギーの割合は、50%と仮定している。汚泥を加熱しないでスクリュープレス式脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は80%であり、汚泥を60℃まで加熱してスクリュープレス式脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は72%である。汚泥を加熱しながら脱水することで低減できる水分量は、142.9kg/hとなる。さらに、60℃まで加熱された脱水汚泥が−97kPaの真空下に置かれる。脱水汚泥の温度が−97kPaの水の飽和温度である30℃まで低下すると仮定すると、脱水汚泥から奪われる熱量は44.89MJ/hである。蒸発潜熱は、2.35MJ/kgとした。この熱量によって、蒸発させることのできる水分量は、19.1kg/hである。したがって、真空蒸発工程を実施することにより、脱水汚泥の含水率を、72%から70.4%に低下させることができる。また、本実施形態の汚泥脱水方法で必要とされる熱エネルギーは、上記したように、503MJ/hである。
【0054】
次に、汚泥を加熱しないで脱水した後に、脱水汚泥を加熱しながら該脱水汚泥に含まれる水分を真空蒸発させる比較汚泥脱水方法1を検討する。汚泥を加熱しないでスクリュープレス式脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は80%である。脱水汚泥の含水率を、80%から70.4%まで低減させるには、162kg/hの水分量を蒸発させる必要がある。脱水汚泥を加熱しながら該脱水汚泥に含まれる水分を真空蒸発させて、162kg/hの水分を蒸発させるには、585.5MJ/hの熱エネルギーが必要となる。熱効率は、間接蒸気乾燥機の一般的な値である0.65を使用した。したがって、比較汚泥脱水方法1で必要とされる熱エネルギーは、585.5MJ/hである。
【0055】
次に、汚泥を60℃まで昇温させた後に汚泥を脱水して脱水汚泥を生成し、この脱水汚泥を真空蒸発させる比較汚泥脱水方法2を検討する。この比較汚泥脱水方法2の場合、4000kg/hの汚泥全量を60℃まで加熱する必要がある。4000kg/hの汚泥を60℃まで昇温するのに必要な熱量は、1006MJ/hである。放熱により消費される熱エネルギーの割合は、50%と仮定している。この昇温された汚泥をスクリュープレス式脱水機41を用いて脱水すると、得られる脱水汚泥の含水率は72%である。この脱水汚泥が−97kPaの真空下に置かれると、脱水汚泥の含水率を、72%から70.4%に低下させることができる。したがって、比較汚泥脱水方法2で必要とされる熱エネルギーは、1006MJ/hである。
【0056】
本実施形態の汚泥脱水方法で必要とされる熱エネルギー(503MJ/h)を、比較汚泥脱水方法1で必要とされる熱エネルギー(585.5MJ/h)、および比較汚泥脱水方法2で必要とされる熱エネルギー(1006MJ/h)と比較すると、本実施形態の汚泥脱水方法で必要とされる熱エネルギーが最も少ない。したがって、本実施形態の汚泥脱水方法は、省エネルギーの観点から最も有効であることが分かる。このように、本実施形態の汚泥脱水方法では、加熱脱水工程で十分脱水された汚泥から、真空蒸発工程で水分を蒸発させる。したがって、水分の蒸発過程で消費されるエネルギー(蒸発潜熱)を最小限にすることができる。
【0057】
図2および
図4に示されるように、脱水汚泥通過管1Bの外面を覆う加温ジャケット46を設けてもよい。加温ジャケット46は、蒸気、加温水、または加熱された油脂などの加熱媒体を加温ジャケット46に供給するための供給配管47と、加温ジャケット46から加熱媒体を排出するための排出配管48とに接続される。加熱媒体は供給配管47を通じて加温ジャケット46内に供給されて該加温ジャケット46を満たし、排出配管48を通じて加温ジャケット46から排出される。加温ジャケット46の内部を通過する加熱媒体は、真空チャンバー42に導入される前の脱水汚泥に熱エネルギーを与えることができる。
【0058】
図2に示されるように、背圧板16は中空に構成されてもよい。背圧板16の内部空間は、蒸気、加温水、または加熱された油脂などの加熱媒体を背圧板16に供給するための供給配管17aと、背圧板16から加熱媒体を排出するための排出配管17bとに接続される。加熱媒体は供給配管17aを通じて背圧板16内に供給されて該背圧板16の内部空間を満たし、排出配管17bを通じて背圧板16から排出される。背圧板16の内部を通過する加熱媒体は、背圧板16に接触している脱水汚泥に熱エネルギーを与えることができる。
【0059】
スクリュー軸3、加温ジャケット46、および背圧板16を介して加熱媒体から脱水汚泥に与えられた熱エネルギーは、真空チャンバー42内に移送された脱水汚泥中の水の蒸発に使用される。その結果、含水率が極めて低下した脱水汚泥を生成することができる。脱水汚泥から水が蒸発するとき、蒸発潜熱として熱エネルギーが脱水汚泥から奪われるので、真空チャンバー42内では、温度の低下した脱水汚泥が形成される。
【0060】
脱水汚泥排出管21内を搬送される脱水汚泥は、脱水汚泥排出管21の下流部21c内でシールプラグを形成する。したがって、真空チャンバー42に連通する脱水汚泥排出管21の上流部21a内には真空が形成される。スクリュー軸23の上流側部位に供給された加熱媒体は、該スクリュー軸23の上流側部位に接触する脱水汚泥に熱エネルギーを与える。この熱エネルギーは、脱水汚泥排出管21の上流部21a内を搬送される脱水汚泥中の水の蒸発に使用される。脱水汚泥排出管21内で脱水汚泥に与えられた熱エネルギーは、蒸発潜熱として脱水汚泥から奪われるので、脱水汚泥排出管21内の脱水汚泥の温度はほとんど上昇しない。したがって、低温の脱水汚泥をスクリュー式搬送コンベア20から排出することができる。
【0061】
スクリュー軸3、加温ジャケット46、背圧板16、およびスクリュー軸23の内部に供給される加熱媒体として、消化槽から取り出した消化ガスを燃焼させる燃焼炉から発生する蒸気や温水を使用することができる。また、消化ガスを用いて発電する発電機から発生する廃熱の蒸気や温水を使用してもよい。この消化槽は、汚泥を発酵させるための設備である。加熱媒体として、汚泥脱水装置40から排出された脱水汚泥を焼却する焼却炉から発生する蒸気を使用してもよい。
【0062】
図5は、背圧板16の変形例を示す正面図である。
図5に示されるように、背圧板16のテーパ面16a上に、複数のカッター19が設けられる。これらカッター19は、環状の背圧板16の円周方向に沿って等間隔で配置され、背圧板16の半径方向に延びている。
【0063】
図6(a)は、
図5に示すカッター19の側面図であり、
図6(b)は、
図5に示すカッター19の斜視図である。
図6(a)および
図6(b)に示されるように、本実施形態のカッター19は、三角柱の形状を有し、三角柱を構成する3つの四角面(三角柱の側面)のうちの1つの四角面19aが背圧板16のテーパ面16aに固定される。他の2つの四角面19b,19cは、辺19dで互いに接し、これら四角面19b,19cは、刃面を構成する。辺19dは、背圧板16の半径方向に延びる。三角柱を構成する2つの三角面(三角柱の頂面および底面)19e,19fは、辺19dと垂直に接続される。背圧板16のテーパ面16aは水平方向に対して傾斜しているので、四角形19b,19cは、台形となる。
【0064】
背圧板16に押し付けられた脱水汚泥は、これらカッター19により細かく分断される。その結果、脱水汚泥内の水分がより真空圧力に近づきやすくなり、脱水汚泥から蒸発する水分量を増加させることができる。本実施形態のカッター19は16個設けられている(
図5参照)。しかしながら、カッター19の個数は、16個よりも少なくてもよく、または16個よりも多くてもよい。
【0065】
図7は、真空チャンバー42を真空排気する真空源44として水駆動のエゼクタ装置が用いられた汚泥脱水装置40の変形例を示す模式図である。
図7に示されるように、真空源44として使用されるエゼクタ装置は、エゼクタ50と、該エゼクタ50の駆動流体としての水(以下、駆動水という)を貯留する駆動水タンク51と、駆動水を昇圧するための駆動ポンプ52と、を有する。エゼクタ50は、配管45に配置された凝集装置49を介して真空チャンバー42に接続される。駆動水タンク51内の駆動水は、駆動ポンプ52により昇圧されて、エゼクタ50に供給される。高圧の駆動水がエゼクタ50を通過する過程で、真空チャンバー42内の空気が吸い込まれる。エゼクタ50から排出される駆動水と真空チャンバー42内の空気は、駆動水タンク51に戻され、該駆動水タンク51で水と空気とに分離される。分離された空気は、駆動水タンク51から排気され、分離された水は、駆動水タンク51に貯留されて、駆動水として再度使用される。
【0066】
本実施形態では、汚泥は、スクリュープレス式脱水機41で加熱されながら脱水される。汚泥を加熱すると、揮発性臭気成分が増大する。真空チャンバー42を減圧するための真空源44として、水駆動のエゼクタ装置を用いた場合、真空チャンバー42から排気される空気に含まれる揮発性臭気成分を、駆動水に溶解させることができる。その結果、駆動水タンク51から排気される空気に含まれる臭気成分を低減させることができるので、汚泥から発生する臭気成分を処理する脱臭装置の負荷が低減される。駆動水に溶解した臭気成分は、使用済み駆動水が移送される排水処理設備で処理される。
【0067】
図8は、別の実施形態に係る汚泥脱水装置40を示す模式図である。
図8に示される汚泥脱水装置40では、真空源44は、脱水汚泥通過管1Bに連通し、脱水汚泥通過管1Bを減圧する。本実施形態では、スクリュープレス式脱水機41に接続された
図2に示す真空チャンバー42の代わりに、スクリュープレス式脱水機41とスクリュー式搬送コンベア20とを連通する連通チャンバー60が設けられる。連通チャンバー60の側壁60aには、上記した軸受11が設置されており、スクリュー軸3の端部が該軸受11に回転自在に支持される。上記した脱水汚泥通過管1Bは、連通チャンバー60の脱水汚泥入口60cに接続される。また、スクリュー式搬送コンベア20の脱水汚泥投入口22は、連通チャンバー60の脱水汚泥出口60dに接続される。脱水汚泥は、脱水汚泥通過管1Bから脱水汚泥入口60cを通って連通チャンバー60に供給される。連通チャンバー60に供給された脱水汚泥は、脱水汚泥出口60dを通って、脱水汚泥投入口22からスクリュー式搬送コンベア20に供給される。連通チャンバー60に真空源44は接続されていないので、連通チャンバー60内の圧力は、大気圧である。また、上述の実施形態とは異なり、スクリュー式搬送コンベア20の脱水汚泥排出管21の断面積は一定である。それ以外の構成は、
図2に示した汚泥脱水装置40と同じである。
【0068】
脱水汚泥通過管1Bの外面には、環状の真空チャンバー55が設けられる。真空チャンバー55は、配管45の一方の端部に接続され、真空源44は、配管45の他方の端部に接続されている。配管45には、凝集装置49が配置される。脱水汚泥通過管1Bの外面には、真空チャンバー55に連通する多数の開口(図示せず)が設けられている。真空源44を作動させると、真空チャンバー55内に真空が形成され、真空チャンバー55に連通する脱水汚泥通過管1Bの内部が真空排気される。真空源44として、真空ポンプを用いてもよいし、
図7に示すエゼクタ装置を用いてもよい。
【0069】
上述したように、脱水汚泥通過管1Bの内部には、シールプラグとなった脱水汚泥が存在している。したがって、真空チャンバー55の上流側と下流側に存在する脱水汚泥によって、脱水汚泥通過管1Bの内部空間はシールされ、脱水汚泥通過管1B内に真空を形成することができる。
【0070】
加熱脱水工程で加熱された脱水汚泥を真空下に置くことにより、脱水汚泥からの水の蒸発が促進される。蒸発した水分は、真空源44により排気される。その結果、脱水汚泥の含水率をさらに低下させることが可能となり、著しく含水率が低下した脱水汚泥を得ることができる。さらに、本実施形態では、汚泥を加熱しながら脱水する加熱脱水工程と、脱水汚泥の水分を真空蒸発させる真空蒸発工程は、スクリュープレス式脱水機41のスクリーンケーシング1内で連続して行われる。したがって、含水率が著しく低下した脱水汚泥を連続処理で生成することができる。
【0071】
図8に示した実施形態において、脱水汚泥通過管1Bは、蒸気、加温水または加熱された油脂などの加熱媒体が供給される加温ジャケット46により加熱される。加温ジャケット46は、真空チャンバー55の上流側に配置される上流側加温ジャケット46aと、真空チャンバー55の下流側に配置される下流側加温ジャケット46bとから構成され、上流側加温ジャケット46aと下流側加温ジャケット46bにそれぞれ加熱媒体が供給される。
【0072】
上述した
図1に示す実施形態では、汚泥脱水装置40で汚泥を脱水する前に、濃縮装置35で汚泥を濃縮している。汚泥を濃縮することで、汚泥に含まれる水分量が減少するので、汚泥脱水装置40に含まれる加熱脱水機41で加熱される汚泥量を低減することができる。したがって、加熱脱水機41で消費される熱エネルギーを低減することができる。一方で、間接蒸気乾燥機を用いて汚泥をそのまま加熱し、汚泥内の水分を蒸発させる汚泥乾燥方法が従来から知られている。以下では、間接蒸気乾燥機を用いた汚泥乾燥方法により消費される熱エネルギーと、濃縮されていない汚泥および濃縮装置35によって濃縮された汚泥を加熱脱水機41で加熱することにより消費される熱エネルギーとを比較する。
【0073】
まず、濃縮されていない汚泥を検討する。固形物乾物重量(処理固形物量)が100kg−DS/hの汚泥を想定する。一般的な下水消化汚泥の場合、汚泥濃度は2%である。この場合、処理されるべき汚泥量は、5000kg/hとなる。5000kg/hの汚泥を汚泥脱水装置40で20℃から80℃まで加熱しながら脱水する場合、必要な熱エネルギーは943MJ/hである。5000kg/hの汚泥を加熱しながら脱水する場合に必要とされる熱量は、5000kg/hの汚泥全量を加熱するのに必要な熱量の50%程度である。放熱により消費される熱エネルギーの割合は、50%と仮定している。汚泥を加熱しないで加熱脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は80%であり、汚泥を80℃まで加熱して加熱脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は70%である。汚泥を加熱しながら脱水することで低減できる水分量は、166.7kg/hとなる。これに対して、166.7kg/hの水分量を間接蒸気乾燥機で蒸発させた場合、乾燥に必要な熱エネルギーは、579.5MJ/hである。熱効率は、間接蒸気乾燥機の一般的な値である0.65を使用した。これらの熱エネルギーを比較すると、間接蒸気乾燥機で汚泥を乾燥させた方が消費される熱エネルギーが少ない。したがって、省エネルギーの観点からは、間接蒸気乾燥機の方が優位であることが分かる。
【0074】
濃縮装置35で汚泥濃度を6%まで濃縮した場合、処理されるべき汚泥量は、1667kg/hとなる。1667kg/hの汚泥を加熱脱水機41で20℃から80℃まで加熱しながら脱水する場合、必要な熱エネルギーは、314MJ/hである。1667kg/hの汚泥を加熱しながら脱水する場合に必要とされる熱量は、1667kg/hの汚泥全量を加熱するのに必要な熱量の50%程度である。汚泥を加熱しないで加熱脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は80%であり、汚泥を80℃まで加熱して加熱脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は70%である。汚泥を加熱しながら脱水することで低減できる水分量は、166.7kg/hとなる。これに対して、166.7kg/hの水分量を間接蒸気乾燥機で蒸発させた場合、乾燥に必要な熱エネルギーは、579.5MJ/hである。熱効率は、間接蒸気乾燥機の一般的な値である0.65を使用した。これらの熱エネルギーを比較すると、濃縮装置35によって6%まで濃縮された汚泥を汚泥脱水装置40で加熱しながら脱水する方が消費される熱エネルギーが少ない。したがって、省エネルギーの観点からは、濃縮装置35によって6%まで濃縮された汚泥を加熱脱水機41で加熱しながら脱水する方が優位であることが分かる。
【0075】
濃縮装置35で汚泥濃度を8%まで濃縮した場合、処理されるべき汚泥量は、1250kg/hとなる。1250kg/hの汚泥を加熱脱水機41で20℃から80℃まで加熱しながら脱水する場合、必要な熱エネルギーは、236MJ/hである。1250kg/hの汚泥を加熱しながら脱水する場合に必要とされる熱量は、1250kg/hの汚泥全量を加熱するのに必要な熱量の50%程度である。汚泥を加熱しないで加熱脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は80%であり、汚泥を80℃まで加熱して加熱脱水機41で汚泥を脱水したときの脱水汚泥の含水率は70%である。汚泥を加熱しながら脱水することで低減できる水分量は、166.7kg/hとなる。これに対して、166.7kg/hの水分量を間接蒸気乾燥機で蒸発させた場合、乾燥に必要な熱エネルギーは、579.5MJ/hである。熱効率は、間接蒸気乾燥機の一般的な値である0.65を使用した。これらの熱エネルギーを比較すると、濃縮装置35によって8%まで濃縮された汚泥を加熱脱水機41で加熱しながら脱水する方が消費される熱エネルギーが少ない。したがって、省エネルギーの観点からは、濃縮装置35によって8%まで濃縮された汚泥を加熱脱水機41で加熱しながら脱水する方が優位であることが分かる。
【0076】
以上の結果から、汚泥脱水装置40で加熱しながら脱水する汚泥は、濃縮装置35で6%以上に濃縮されているのが好ましいことが分かる。濃縮装置35で濃縮される汚泥の、さらに好ましい濃度は、8〜14%である。
【0077】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。