特許第6308941号(P6308941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6308941制御システム、車両、および車両の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308941
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】制御システム、車両、および車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/10 20120101AFI20180402BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20180402BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20180402BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20180402BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20180402BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20180402BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20180402BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20180402BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20180402BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20180402BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20180402BHJP
   B60W 40/107 20120101ALI20180402BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   B60W50/10ZHV
   B60K6/48
   B60K6/52
   B60K6/54
   B60K31/00 Z
   B60L15/20 J
   B60L15/20 K
   B60W10/02
   B60W10/04
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60W30/14
   B60W40/107
   B60W50/04
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-519534(P2014-519534)
(86)(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公表番号】特表2014-525866(P2014-525866A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】EP2012063574
(87)【国際公開番号】WO2013007746
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2014年3月4日
【審判番号】不服2016-11739(P2016-11739/J1)
【審判請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】1111798.3
(32)【優先日】2011年7月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ラフトリー
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 西山 智宏
【審判官】 松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−9815(JP,A)
【文献】 特開平8−85373(JP,A)
【文献】 特開2002−218605(JP,A)
【文献】 特開2007−55493(JP,A)
【文献】 特開2002−365085(JP,A)
【文献】 特開2008−120268(JP,A)
【文献】 特開2010−234920(JP,A)
【文献】 特開2004−125689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W10/00-50/16
B60K6/20-6/547
B60K31/00
B60L15/20
F16D11/00-23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御システムであって、
車両のアクセル制御信号をモニタし、主要動力手段を有する車両のパワートレインを制御して、アクセル制御信号に応じてパワートレインがトルク量を車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるように動作可能な制御手段と、
車両の加速度およびヨーレートを測定するように動作可能な加速度デバイスと、
車両のヨーレート測定値を参照して補正された車両の測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有するか否かを判断する手段とを備え、
制御手段は、測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有しない場合、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の変更を命令するように動作可能であることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
アクセル制御信号に応じて、さらに車速に呼応して、パワートレインが与えるべきトルク量を決定するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
アクセル制御信号に応じて、さらにパワートレインの少なくとも一部の速度に呼応して、パワートレインが与えるべきトルク量を決定するように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
主要動力手段により生じたトルク量の変更を命令することにより、車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量を変更するように動作可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項5】
1つまたはそれ以上の車輪に加える制動力量の変更を命令することにより、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量を変更するように動作可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項6】
測定された加速度がアクセル制御信号に対して予想される加速度より大きい値に相当する場合、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の低減を命令するように動作可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項7】
1つまたはそれ以上の車輪と主要動力手段の接続の解除を命令するか、または1つまたはそれ以上の車輪と主要動力手段との間にあるクラッチ手段の滑動を命令することにより、1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の低減を命令するように動作可能であることを特徴とする請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
少なくとも1つの主要動力手段を停止するようにパワートレインに命令することにより、1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の低減を命令するように動作可能であることを特徴とする請求項6または7に記載の制御システム。
【請求項9】
測定された加速度がアクセル制御信号に対して予想される加速度より小さい値に相当する場合、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の増大を命令するように動作可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項10】
主要動力手段は、複数の主要動力システムからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項11】
車両の測定された加速度は、外部ソースから制御システムに供給され、
外部ソースは、加速度を測定する手段を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項12】
車両の測定された加速度は、車両の走行方向に平行な加速度であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項13】
アクセル制御信号および走行方向に平行な方向で測定された加速度が予想した相関性を有するか否か判断するように動作可能であり、走行方向に平行な方向で測定される加速度は車両姿勢の測定値を参照して補正されることを特徴とする請求項12に記載の制御システム。
【請求項14】
アクセル制御信号は、ドライバが操作するフットペダルおよび手操作制御のうちから選択した1つの位置に基づいて出力されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項15】
アクセル制御信号を出力するように動作可能なクルーズコントロールシステムを有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項16】
パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の変化は、車両の加速度がアクセル制御信号により密接に相関するように調整可能であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1に記載の制御システムを有することを特徴とする車両。
【請求項18】
制御手段を用いて、車両のアクセル制御信号をモニタするとともに、主要動力手段を有する車両のパワートレインを制御して、アクセル制御信号に応じてパワートレインがトルク量を車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるステップと、
加速度デバイスを用いて車両の加速度およびヨーレートを測定するステップと、
車両のヨーレート測定値を参照して補正された車両の測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有するか否かを判断するステップと、
測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有しない場合、制御手段を用いて、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の変更を命令するステップとを有することを特徴とする車両を制御する方法。
【請求項19】
車両のシステムであって、
車両のアクセル制御信号をモニタし、主要動力手段を有する車両のパワートレインを制御して、アクセル制御信号に応じてパワートレインがトルク量を車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるように動作可能な制御デバイスまたはこれと同様のものと、
車両の加速度およびヨーレートを測定するように動作可能な加速度デバイスと、
車両のヨーレート測定値を参照して補正された車両の測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有するか否かを判断するセンサまたはこれと同様のものとを備え、
制御デバイスは、測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有しない場合、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の変更を命令するように動作可能であることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御する装置および方法に関する。本発明は、これに限定するものではないが、とりわけ車両がドライバの制御コマンド(制御指令)に適正に応答しているか否かを検知する装置および方法に関する。本発明の態様は、装置、方法、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにより生じたトルク量が、車両のドライバにより指定(命令)されたトルク量に相当するか否かをチェックするように構成されたコントローラをエンジン動力車両に設けることが知られている。両者が一致しないと判断されたとき、コントローラは、エンジンにより生じるトルク量を低減するように構成される。
【0003】
既知の車両において、エンジンにより生じるトルク量は、通常、エンジンの回転速度、および空気(ガソリンエンジンの場合)または燃料(ディーゼルエンジンの場合)の流速を参照することにより測定する。エンジンの回転速度および流速の値は、コントローラにより処理され、エンジンにより発生させるトルク量を決定する。トルクを測定するこの手法は、エンジンのクランクシャフトに対する歪ゲージ等の直接的なトルク測定手段を用いるより安価であり、信頼性が高いことが確認されてきた。エンジンと電気マシンを含む複数の主要な動力源を備えたハイブリッド車(HEV)が市場に出回るようになって、車両が生じるトルク量がドライバの要求するトルク量に相当するか否かを判断するために、各主要動力源により生じるトルクを測定する必要が生じてきた。
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る態様は、添付クレームで定義された装置、システム、方法、および車両に関するものである。
【0005】
保護を求めようとする本発明に係る1つの態様によれば、車両の制御システムが提供される。この制御システムは、車両のアクセル制御信号をモニタし、主要動力手段を有する車両のパワートレインを制御して、アクセル制御信号に応じてパワートレインがトルク量を車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるように動作可能な制御手段と、車両の測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有するか否かを判断する手段とを備え、制御手段は、測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有しない場合、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の変更を命令するように動作可能である。
【0006】
本発明に係る実施形態は、車両のパワートレインが車両を走行させるために適正な(予想された)トルク量を供給するか否かを判断するために、トルク量ではなく、加速度が測定されるという利点を有する。加速度は、直接的に測定され、他の測定値により干渉されない。これに対し、車両のエンジンにより生じるトルク量の測定は、エンジン内に流れる流体(空気またはディーゼル燃料)の流速およびエンジンの回転速度に基づいた計算を含むことが知られている。すなわち車両の予想される加速度は、エンジンにより生じるトルク量の計算値に応じて決定される。
【0007】
いくつかの実施形態において、モニタ手段は、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の変更を命令するように動作可能であってもよい。モニタ手段は、制御手段による不具合が生じた場合でも正常に機能し続けることができるように、制御手段から独立したものとしてもよい。
【0008】
所与のアクセル制御信号に対して供給することが要求されるトルク量は、さらに車両の速度に依存してもよい。すなわち制御システムは、アクセル制御信号に応じて、さらに車速に呼応して、パワートレインが与えるべきトルク量を決定するように構成してもよい。
【0009】
任意的には、制御システムは、アクセル制御信号に応じて、さらにパワートレインの少なくとも一部の速度、任意的にはパワートレインの主要動力手段の速度に呼応して、パワートレインが与えるべきトルク量を決定するように構成してもよい。すなわち制御システムは、所与のアクセル制御信号に応じて、さらにパワートレインの少なくとも一部の速度を参酌してトルク量を決定するように構成してもよい。
【0010】
主要動力手段が、エンジンおよび電気推進モータ等の主要動力システムを含む場合、制御システムがトルクを決定するために採用する速度は、エンジンもしくは電気推進モータまたはこれらの両方の回転速度に相当するものであってもよい。いくつかの実施形態において、エンジンを停止させた場合、制御システムは、トルクを決定するための仮想的なエンジン回転速度を採用してもよく、仮想的なエンジン回転速度とは、エンジンが作動し、車両の車輪に駆動可能に接続された場合に回転するときの回転速度である。
【0011】
有利なことに、この制御システムは、主要動力手段により生じたトルク量の変更を命令することにより、車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量を変更するように動作可能であってもよい。
【0012】
さらに有利なことに、この制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪に加える制動力量の変更を命令することにより、1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量を変更するように動作可能であってもよい。発電機として動作する電気マシンを用いて、制動力を電気的に加えてもよい。たとえばいくつかの実施形態では、クランクシャフト一体型モータ/発電機(CIMG)または他の任意の適当な電気マシンを用いてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の車輪に隣接して配置した1つまたはそれ以上の電気マシン、たとえば各車輪に一体化された電気マシンを用いて、車両を「電気的に制動」または原則させてもよい。択一的または追加的に、摩擦による制動システムを用いて制動力を与えてもよい。
【0013】
有利なことに、測定された加速度がアクセル制御信号に対して予想される加速度より大きい値に相当する場合、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の低減を命令するように動作可能である。
【0014】
パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の低減とは、たとえば
少なくとも1つの主要動力源が供給する過剰トルクに起因して、車両速度の増大を防止するためにトルク量を抑制するということを意味するものである。
【0015】
いくつかの実施形態では、これは、制御システムが主要動力手段により生じるトルク量を抑制するようにパワートレインに命令することにより実現することができる。いくつかの実施形態では、主要動力手段は負のトルクを車輪に与えるように動作可能であってもよい。内燃エンジンの場合、これは、圧縮または制圧ブレーキ(エンジンブレーキ)により実現することができる。電気推進モータの場合、これは、モータを発電機として動作させることにより実現することができる
【0016】
理解されるように、本願の目的において、負のトルクの大きさが正のトルクの大きさより大きい場合であっても、負のトルクは正のトルクより小さいと考えられる。
【0017】
いくつかの実施形態では、制御システムは、主要動力手段により生じるトルク量の低減に加え、またはこれに代えて1つまたはそれ以上の制動力を与えることにより、1つまたはそれ以上の車輪に与えられるトルク量を小さくするようにパワートレインに命令するように動作可能であってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪と主要動力手段の接続の解除を命令するか、または1つまたはそれ以上の車輪と主要動力手段との間にあるクラッチ手段の滑動を命令することにより、1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の低減を命令するように動作可能であってもよい。
【0019】
制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪と主要動力手段の接続の解除を命令することにより、1つまたはそれ以上の車輪に与えられるトルク量を低減するように動作可能であってもよい。
【0020】
主要動力手段の接続の解除には、意図せず加速される場合において、車両が惰性走行することを可能にする(必要ならば、ドライバによるブレーキ操作により車両の減速を可能にする)という利点がある。
【0021】
制御システムは、少なくとも1つの主要動力手段を停止するようにパワートレインに命令することにより、1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の低減を命令するように動作可能であってもよい。
【0022】
任意的には、制御システムは、測定された加速度がアクセル制御信号に対して予想される加速度より小さい値に相当する場合、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の増大を命令するように動作可能であるように構成してもよい。
【0023】
この特徴は、制御手段が十分なトルクを命令しなかった場合、交差点で加速し、または別の車両を追い越すときに、ドライバが車両を加速するように緊急でパワートレインのトルクを要求した場合等において特に有益である。
【0024】
任意的には、主要動力手段は、1つまたは複数の主要動力システムからなる。
【0025】
主要動力システムとしては、内燃エンジン、電気推進モータ、または他の任意の適当な主要動力源が含まれる。
【0026】
エンジンおよび発電機または推進モータして動作可能な電気マシンを含む(ハイブリッド車両等の)発明に係る実施形態において、制御システムは、エンジンを停止させ、および/または車輪とエンジンの接続を解除して、電気マシンを用いて車輪に負のトルクを与えて、1つまたはそれ以上の車輪に与えられるトルク量を低減するように動作可能であってもよい。
【0027】
本発明に係る実施形態は、複数の主要動力システムを有する車両において、各主要動力システムにより生じるトルク量を測定するために複数のトルク測定手段を設ける必要がない、という利点を有する。ただし、主要動力システムが必要なトルク量を供給していることを認証するための別体の独立した認証手段、すなわち車両の加速度を測定する手段が設けられる。
【0028】
好都合には、車両の加速度を測定する手段は、制御システムとは独立したものであり、測定された加速度に相当する信号を制御システムに出力するように構成されたものであってもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、車両の測定された加速度は、外部ソースから制御システムに供給される。
【0029】
制御システムは、加速度測定値を得るために、加速度を測定する手段からの信号を処理することが求められ、たとえばノイズフィルタ処理、信号平滑化処理、またはその他の適当な信号処理方法を実行することが求められる。
【0030】
加速度を測定する手段が制御システムから独立しているという特徴により、制御システムに不具合が生じた場合に、パワートレインにより生じる実際のトルク量がドライバの要求するトルク量を超え、制御システムが不具合を検出しないため、応答しないというリスクを低減することができる、という利点が得られる。その理由は、部分的には、制御システムの不具合に起因して、測定された加速度に関するデータが破損するか、利用できないというリスクが低減されるためである。
【0031】
いくつかの実施形態において、車両の測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有するか否かを判断する手段は、アクセル制御信号をモニタし、アクセル制御信号に相当する1つまたはそれ以上の車輪にトルク量を与えるようにパワートレインを制御する制御手段とは独立したハードウェアにより実現されるものであってもよい。これは、アクセル制御信号をモニタする制御手段が故障した場合に、その結果として、予想した相関性を有するか否かを判断する手段が故障し得ないとするリスクを低減するものである。
【0032】
択一的には、制御システムは、車両の加速度を測定する手段を有するものであってもよい。
【0033】
好都合には、車両の加速度を測定する手段は、加速度計を含むものであってもよい。択一的または追加的に、加速度を測定する手段は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)等の位置測定システム、またはジェネラル・パケット・ラジオ・サービス(GPRS)のセルラー通信ネットワークシステム等の他の任意の適当なシステムであるか、これを含むものであってもよい。理解されるように、加速度計デバイスは、現在利用可能な技術を用いたGPSシステムやGPRSシステムより高い応答性を有する測定を提供するものと期待されている。
【0034】
車両の測定された加速度は、車両の走行方向に平行な加速度であってもよい。すなわち車両の測定された加速度は、縦方向加速度であってもよい。
【0035】
好都合には、制御システムは、車両が傾斜した路面上にあるときに車両加速度に対する重力の影響を補償するために、アクセル制御信号が走行方向と平行な方向における測定された加速度に相当するか否か、車両姿勢を参酌して決定するように動作可能であってもよい。車両姿勢とは、車両のピッチ角を意味する。すなわち、車両が実質的に水平な路面上にあるとき、ピッチは、「水平姿勢」または実質的にゼロピッチに相当する。車両が坂道の上方に向いているとき、ピッチ角は正の値となり、正の車両姿勢に相当し、車両の前方部分が上向いている。
【0036】
任意的には、制御システムは、アクセル制御信号が測定された加速度に相当するか否か、車両のヨーレートを参酌して決定するように動作可能であってもよい。
【0037】
好都合には、アクセル制御信号は、ドライバが操作するフットペダルおよび手操作制御のうちから選択した1つの位置に基づいて出力されるものであってもよい。
【0038】
任意的には、車両は、アクセル制御信号を出力するように動作可能なクルーズコントロールシステムを有する。
【0039】
制御システムは、アクセル制御信号を出力するように動作可能なクルーズコントロールシステムを有していてもよい。
【0040】
保護を求めようとする本発明に係る別の態様によれば、上記複数のパラグラフのうちの1つまたはそれ以上に記載した制御システムを有する車両が提供される。
【0041】
保護を求めようとする本発明に係る別の態様によれば、車両を制御する方法が提供され、この方法は、制御手段を用いて、車両のアクセル制御信号をモニタするとともに、主要動力手段を有する車両のパワートレインを制御して、アクセル制御信号に応じてパワートレインがトルク量を車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるステップと、車両の測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有するか否かを判断するステップと、測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有しない場合、制御手段を用いて、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の変更を命令するステップとを有するものである。
【0042】
保護を求めようとする本発明に係るさらに別の態様によれば、車両が提供され、この車両は、少なくとも1つの主要動力源と、車両のアクセル制御信号をモニタし、少なくとも1つの主要動力源を制御して、アクセル制御信号に応じたトルク量を発生させ、車両の加速度を測定し、測定された車両の加速度がアクセル制御信号に相当するか否かを判断する手段とを備え、測定された車両の加速度がより大きい加速度に相当する場合、車両はその1つまたは複数の車輪に与えられるトルク量を低減するように構成されるものである。
【0043】
保護を求めようとする本発明に係るさらに別の態様によれば、車両の制御システムが提供され、この制御システムは、車両のアクセル制御信号をモニタし、車両のパワートレインがアクセル制御信号に応じてトルク量を車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるようにパワートレインを制御するように動作可能な制御手段と、車両の測定された加速度がアクセル制御信号による予想される加速度と一致するか否か判断する手段とを備え、測定された加速度が予想される加速度より大きい加速度に相当する場合、制御手段は、パワートレインが車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の低減を命令するように動作可能であるものである。
【0044】
保護を求めようとする本発明に係るさらに別の態様によれば、車両を制御する方法が提供され、この方法は、車両のアクセル制御信号をモニタするステップと、アクセル制御信号に応じたトルク量を発生させるように少なくとも1つの主要動力源を制御するステップと、車両の加速度を測定するステップと、アクセル制御信号が車両の測定された加速度に相当するか否か判断するステップと、測定された加速度が予想される加速度より大きい加速度に相当する場合、車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量を低減するステップとを有するものである。
【0045】
保護を求めようとする本発明に係るさらに別の態様によれば、車両の制御システムが提供され、この制御システムは、車両のアクセル制御信号をモニタし、車両の測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有するか否かを判断するように動作可能な制御手段を備え、測定された加速度およびアクセル制御信号が予想した相関性を有しない場合、パワートレインが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルク量の変更を命令するように動作可能である。
【0046】
本明細書の範囲内において、上記パラグラフ、クレーム、および/または以下の詳細な説明、ならびに図面(特にこれらの個々の構成要素)に記載した、さまざまな態様、実施形態、実施例、及び変更例を独立して、または組み合わせて実施できることは明らかである。たとえば1つの実施形態に関連した特徴は、互換性を有さないものでなければ、すべての実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
添付図面を参照しながら、単なる例示として、いくつかの実施形態について以下説明する。
図1】本発明に係る実施形態による車両の概略図である。
図2図1に示す車両の制御信号のフローを示す概略図である。
図3図1に示す車両のD−チェック機能ブロック内の制御信号のフローを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の実施形態は、とりわけハイブリッド車に適したものであるが、本発明は、ハイブリッド車に限定されるものと解釈すべきではない。たとえば、本発明に係る実施形態は、内燃エンジンを有さない電気自動車等のハイブリッド車以外の車両にも有用であり得る。本発明の択一的な実施形態は、内燃エンジン、ガスタービンエンジン、または任意の他の好適なエンジン等の燃料点火アクチュエータのみを有する従来式の車両に用いることができる。
【0049】
図1は、本発明に係る実施形態によるハイブリッド車(HEV)100を示す。ハイブリッド車100は、パワートレイン(動力伝達機構)129を有し、パワートレインは、クラッチ122を介してクランクシャフト一体型モータ/発電機(CIMG)123に解放自在に連結される内燃エンジン121を含む。またCIMG123は、パワートレイン129の自動変速装置124に接続される。自動変速装置124は、一対の前輪ドライブシャフト118を介してパワートレイン129の一対の前輪111,112を駆動するように構成されている。同様に、パワートレイン129は、一対の後輪ドライブシャフト132およびディファレンシャル(差動装置)135を介して、一対の後輪114,115を駆動するように構成された補助ドライブライン(動力伝達装置)130を有する。
【0050】
CIMG123がモータとして作動するとき、トルクを発生させることができるように、CIMG123に接続可能なバッテリ150が設けられている。択一的には、CIMG123が発電機として作動するとき、バッテリ150を充電するために、CIMG123から電力を受けるように、バッテリ150をCIMG123に接続される。
【0051】
パワートレイン129は、並行モードまたはEV(電気車両)モードで作動するように構成されている。
【0052】
並行動作モードにおいて、クラッチ122は閉じ、エンジン121は、CIMG123を介して実質的に直接的に接続して自動変速装置124にトルクを与えるように構成されている。このモードでは、CIMG123は、モータまたは発電機のいずれかとして動作させることができる。CIMG123は、自動変速装置124に伝達するトルクを「ブースト(増大させる)」ためのモータとして動作させることができ、これを「並行ブースト」モード動作と呼ぶことがある。択一的には、CIMG123は、電荷を生成してバッテリ150を充電するための発電機として動作させることができる。エンジン121が自動変速装置124にトルクを与えているときに、CIMG123がバッテリ150を充電するための発電機として動作する場合、車両は、「並行充電」モードで動作しているということがある。電荷を生成してバッテリ150を充電するためには、CIMG123はエンジン121に負のトルクを与えるものと理解する必要がある。
【0053】
EV動作モードでは、クラッチ122を閉じ、エンジンを停止させる。CIMG123は、再び、モータまたは発電機のいずれかとして動作する。CIMG123は、車両100の回生可能な制動エネルギを回収するために、EVモードで発電機として機能するように構成される。車両100は、アクセルペダル162を有し、ドライバは、アクセルペダルにより車両100を運転するために必要なトルク量を設定することができる。コントローラ140は、これにより実行されるエネルギ管理プログラム(EMP)に基づいて、エンジン121および/またはCIMG123が要求トルクを与えるように車両100を制御する。
【0054】
ブレーキペダル161が設けられ、これによりドライバは車輪111〜115に負のトルクを与えることができる。回生ブレーキ装置により負のトルクを与えることができ、必要時、CIMG123は負のエネルギを車輪に与える。CIMG123から得られる回生ブレーキ量がドライバにより要求されるブレーキトルクに十分に見合わない場合、パワートレイン129は、車両100を減速するために摩擦ブレーキを作動させることができる。
【0055】
コントローラ140は、アクセルペダル162の位置を参照して、ドライバが要求するトルク量をモニタし、エンジン121およびCIMG123により生じるトルク量がドライバの要求トルク量に対応するものであることを認証するように構成されている。
【0056】
図2は、車両100の制御アーキテクチャ(制御構造)の一部の制御フロー図である。
【0057】
ドライバが車両100の加速ペダル162を踏み込んだ量(踏込量)に相当する「ドライバ加速ペダル・デマンド(Driver-Acc-Pedal-Demand)」信号が、車両100のパワートレイン制御モジュール(PCM)201に入力される。この信号は、ドライバが要求する車両100を推進するためのトルク値に相当することを理解すべきである。
【0058】
パワートレイン制御モジュール201は、クルーズコントロールシステム(CCS)のトルク・デマンド信号(クルーズトルク信号、Cruise_Tq)、アンチロックブレーキシステム(ABS)のトルク・デマンド信号(ABSトルク信号、ABS_Tq)、およびパワートレイン上限トルク信号(PT上限トルク信号、PT-Derate-Torque-Limit)を受信する。いくつかの実施形態において、パワートレイン制御モジュール201は、「その他」の入力ラインと示す1つまたはそれ以上の他の信号を受信するように構成されていてもよい。
【0059】
クルーズトルク信号は、クルーズコントロールシステムが要求するトルク量を示す指標である。ABSトルク信号は、車輪のスピンまたはロックを回避するように車輪速度を制御するデマンド・トルク増減量を示す指標である。この信号に呼応して、パワートレイン制御モジュール201は、車両100の1つまたそれ以上の車輪に正のトルクを与えることにより、静止しているか、きわめてゆっくりと回転している車輪をスピン回転させて、スリップを減らし、またはトルクを抑えてスピンを抑制することができる。しかし、この信号は、車両レスポンス、すなわち車両の加速度または速度の変化をもたらすことを意図したものではない。
【0060】
PT上限トルク信号は、エンジン121およびCIMG123により生じ得る全体トルク量の上限値を示す指標である。エンジン121およびCIMG123の一方または両方により生じ得る全体トルク量は、所定の状況下においては抑制することができる。たとえば自動変速装置124が、その不具合に起因してトルク上限値を要求してもよい。さらにCIMG123の温度が所定の閾値温度を超えるとき、車両100は、CIMG123の損傷、および/またはその寿命の短縮を防止するために必要なCIMG123のトルク量を抑制するように構成することができる。その結果、このような不具合がなければCIMG123により得られた要求トルクを調整したトルク(調整トルク:balance)が供給される。ただしエンジン121が、この調整トルクを供給できる場合に限る。
【0061】
パワートレイン制御モジュール201は、入力信号に呼応した調整済パワートレイン・トルク・リクエスト信号(調整PTトルク・リクエスト信号、Arb-PwrTrn-Tq-Req)を出力する。調整PTトルク・リクエスト信号は、パワートレイン制御モジュール201に入力され、パワートレイン129に加えるべき実際のトルク値に呼応するものである。すなわち全体トルク量は、エンジン121および/またはCIMG123により与えられるものである。調整PTトルク・リクエスト信号は、Pチェック機能ブロック203、車両安定制御(VSC)トルク調整機能ブロック205、およびDチェック機能ブロック291に出力される。
【0062】
Pチェック機能ブロック203はコントローラ140により実行される。Pチェック機能ブロック203は、上記パワートレイン制御モジュール(PCM)201に入力される信号(ドライバ加速ペダル・デマンド信号、クルーズトルク信号、ABSトルク信号、およびPT上限トルク信号を含む)を受信する。
【0063】
車両がクルーズコントロールモードで動作しているとき、Pチェック機能ブロック203は、パワートレイン制御モジュール201およびPチェック機能ブロック203に入力される他の信号を参照して、調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)の値がクルーズコントロールシステムの要求トルク値に対応するか否か、判断する。車両がクルーズコントロールモードで動作していないとき、Pチェック機能ブロック203は、これに入力されるその他の信号を参酌して、調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)の値がドライバの要求するトルクの値に対応するか否か、すなわちドライバ加速ペダル・デマンド信号(Driver-Acc-Pedal-Demand)の値に対応するか否か、判断する。
【0064】
調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)の値が予想値を超えたとき、Pチェック機能ブロック203は、エンジン121およびCIMG123により生じるトルク量を制限するように構成される。いくつかの実施形態において、調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)の値がこれらの値を超えたとき、エンジン121およびCIMG123を停止させる。追加的または択一的に、いくつかの実施形態では、Pチェック機能ブロック203は、コントローラ140を強制的にリセットするように構成してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、Pチェック機能ブロック203は、たとえばパワートレイン129の1つまたはそれ以上のクラッチを滑らせることにより、エンジン121および/またはCIMG123から車両100の1つまたはそれ以上の車輪に伝達される正のトルク量を制限するように構成される。同様に、Pチェック機能ブロック203は、調整PTトルク・リクエスト信号の値がパワートレイン上限トルク信号による任意の規制値を超えないことをチェックする。
【0066】
上記実施形態で説明したように、ABSコントローラ209は、ブレーキトルク・リクエスト信号(Regen-Tq-Req(再生トルク・リクエスト信号)、「電気ブレーキトルク・リクエスト信号」ともいう。)を、VSC(車両安定制御)トルク調整機能ブロック205およびDチェック機能ブロック291に出力する。ABSコントローラ209から出力される信号は、遅延トルク・リクエスト信号であって、パワートレイン120がCIMG123を介して加える負のトルク量である。他の構成も同様に有用である。
【0067】
VSCトルク調整機能ブロック205は、調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)の値をブレーキトルク・リクエスト信号(Regen-Tq-Req)と比較し、エンジン121およびCIMG123の一方または両方がトルクを供給すべきか否かに基づき、エンジン121および/またはCIMG123からの要求トルク全体量を決定する。エンジン121およびCIMG123のいずれがトルクを供給すべきか、およびその供給されるトルク量についての判断は、VSC(車両安定制御)トルク配分機能ブロック207により行われる。VSC(車両安定制御)トルク配分機能ブロック207は、エンジン121が与えるトルク量に相当する出力値207Eと、CIMG123が与えるトルク量に相当する出力値207EMとを出力する。
【0068】
理解されるように、VSCトルク調整機能ブロック205は、ABSコントローラ209から出力されるブレーキトルク・リクエスト信号(Regen-Tq-Req)を参照して、調整PTトルク・リクエスト信号を出力するために、エンジン121およびCIMG123のそれぞれに要求されるトルク量を決定する(以下参照)。換言すると、VSCトルク調整機能ブロック205は、ドライバの要求、クルーズトルク・デマンド信号、および車輪速度を制御し、またはパワートレイン出力を規制するために用いられる任意の過渡的なトルク・デマンド信号を参照して、エンジン121およびCIMG123が供給すべきトルク量を決定する。上述のように、CIMG123またはエンジン121が所定のタイミングで供給するトルク量に課せられる任意の制限を参照して、パワートレイン出力が規制される。
【0069】
理解されるように、VSCトルク調整機能ブロック205は、ABSコントローラ209のブレーキトルク・リクエスト信号(Regen-Tq-Req)に応じて、負のトルク要求信号をCIMG123に出力する場合がある。たとえばドライバがブレーキペダル161を踏み込んで、車両の減速を要求したと、ABSコントローラ209が判断した場合、こうした要求信号が出力される。摩擦ブレーキを択一的または追加的に使用すると同時に、CIMG123を用いて負のトルクを加えると、車両を減速させることができる。コントローラ140およびパワートレイン制御モジュール(PCM)201とは独立したモジュールでDチェック機能ブロック291を実行する。
【0070】
Dチェック機能ブロック291は、加速度計デバイス142から入力信号を受信するように構成され、加速度計デバイスは自身の適正な加速度、すなわち車両100の適正な加速度を測定するものである。加速度計デバイス142は、ジャイロスコープタイプの加速度計デバイス、圧電素子タイプの加速度計デバイス、微小電気機械システム(MEMS)タイプの加速度計デバイス、または任意のタイプの加速度計デバイスであってもよい。
【0071】
Dチェック機能ブロック291は、調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)およびブレーキトルク・リクエスト信号(Regen-Tq-Req)に呼応して、所望される(期待される)車両の加速度を計算するように構成されている。またDチェック機能ブロック291は、車両姿勢およびヨーレートを示す1つまたはそれ以上の信号を参照して、加速度計デバイス142により出力される加速度値を補正することにより、車両の実際の前方加速度を決定する。すなわちDチェック機能ブロック291は、予想される加速度を決定する際に車両姿勢を参照する。
【0072】
理解されるように、所定のパワートレイントルクに対する予想される車両加速度値は、車両100が走行している路面勾配に少なくとも部分的に依存し、たとえば車両100が坂を上っているか、下っているか、または比較的に平坦な路面上を走行しているかに依存する。
【0073】
ABSトルク信号がDチェック機能ブロック291に送信され、必要に際して、負の値となるドライバの加速度要求を抑制する。
【0074】
Dチェック機能ブロック291は、車両100の実際の加速度が予想された値に対応するか否か判断するために、予想される車両加速度値と、加速度計デバイス142から受信した信号に呼応して決定した前方加速度値とを比較する。
【0075】
たとえば調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)の値が300Nmのトルクに相当し、ブレーキトルク・リクエスト信号(Regen-Tq-Req)が100Nmのトルクに相当する場合、エンジン121が供給する正味の正のトルクは200Nmとなる。したがってDチェック機能ブロック291は、パワートレインからの正味のトルク200Nmに基づいて車両の所望または期待される加速度を計算し、トランスミッションのギア比を参照して車輪に加わるトルクを決定する。理解されるように、100Nmの回生トルクは、CIMG123を介してエンジン121に加わる負荷トルクであって、電気エネルギを生成し、バッテリ50を充電するものである。
【0076】
加速度計デバイス142から受信した信号に応じて測定された加速度が、調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)およびブレーキトルク・リクエスト信号(Regen-Tq-Req)に基づいて予想された加速度より大きい場合、Dチェック機能ブロック291は、エンジン121および/またはCIMG123により供給されるトルク量を抑制するための警告信号を出力するように構成されている。いくつかの実施形態では、Dチェック機能ブロック291は、エンジン121およびCIMG123により得られるトルク量をゼロになるまで抑制し、エンジン121およびCIMG123を車両100の車輪に対する接続を解除するように構成されている。いくつかの実施形態では、Dチェック機能ブロック291は、エンジン121およびCIMG123がトルクを発生できないような状態にするように構成されている。いくつかの実施形態では、Dチェック機能ブロック291は、エンジン121およびCIMG123が動作しないように停止状態にするように構成されている。他の構成も同様に有用である。
【0077】
本発明に係る実施形態によれば、車両100の実際の加速度が調整PTトルク・リクエスト信号(Arb-PwrTrn-Tq-Req)およびブレーキトルク・リクエスト信号(Regen-Tq-Req)に基づいて予想された加速度より大きい場合、車両100が車輪に加えるトルク量を抑制して、ドライバに不便さを与えるというリスクを低減するという利点が得られる。本発明に係る実施形態によれば、車両加速度を独立して直接的にチェックするために、車両100の1つまたはそれ以上の原動力により生じるトルク量を独立して直接的に測定して、(ドライバまたはクルーズコントロールシステムから直接入力されたものであるか否かにかかわらず)車両100が加速度制御入力値に対して予想されたように反応していることを認証できるという利点が得られる。
【0078】
図3は、加速度計デバイス142およびDチェック機能ブロック291のより詳細な構成を示す。
【0079】
加速度計デバイス142は、3つの直交するX軸、Y軸、Z軸のそれぞれに沿って受けた加速度に相当する信号を出力するように構成された6軸加速度センサ142Aを有する。6軸加速度センサ142Aは、基準方向(車両が水平な表面上にある場合に相当する方向)に対する車両のピッチ角に相当する車両ピッチ信号(Veh-Pitch)を出力する。理解されるように、トルクと(動きに関する)車両反応との関係は、ピッチの関数である。
【0080】
いくつかの実施形態では、追加的または択一的には、この加速度センサ142Aは、その各軸の周りの回転速度(ロール、ピッチ、およびヨーのそれぞれの角速度に相当)に相当する信号を出力する。
【0081】
理解されるように、いくつかの実施形態では、6軸加速度計ではない加速度計が採用されることもある。たとえば3つのX軸、Y軸、Z軸のそれぞれに沿った加速度を出力する3軸加速度計が採用されることもある。
【0082】
X軸、Y軸、Z軸に沿った加速度は、縦方向加速度計算の機能ブロック142Bに入力され、この縦方向加速度計算機能ブロックは、(1)X軸、Y軸、Z軸のそれぞれに沿った加速度(すなわち各軸に平行な加速度ベクトル)に呼応する車両のベクトルピッチ(Vect-Pitch)の合力ピッチ角(ベクトルピッチ角)、および(2)車両の縦方向加速度(Long-Acc)の値を決定するように構成されている。縦方向加速度とは、車両が走行中の路面に対して平行な車両100の実際の全体的な加速度、すなわち(X軸に平行な)車両の長手方向軸Aに平行な加速度を、車両100の重心GOCを貫通する車両の横方向軸Lの周りのピッチで補正したものを意味する。
【0083】
加速度センサ142Aは、車両ピッチ角(Veh-Pitch)の測定値信号を確度(尤度)チェックの機能ブロック142Cに出力し、この確度チェック機能ブロックは、車両ピッチ角(Veh-Pitch)を、縦方向加速度計算機能ブロック142Bが計算したベクトルピッチ角(Vect-Pitch)と比較する。これは、上記ピッチ角が互いに一致していることをチェックするためである。上記ピッチ角が互いに一致していない場合、確度チェック機能ブロック142Cは、不具合コードに相当する信号を出力する。車両100は、不具合コードに応じて、たとえばサービスリクエスト信号(保守要請信号)等の信号をドライバに発する。いくつかの実施形態では、不具合コードに関連するコントローラ140の1つまたはそれ以上の部分を再構築するように車両を構成してもよい。
【0084】
理解されるように、車両ピッチ信号(Veh-Pitch)を出力するように構成された6軸加速度センサ142Aを有さない実施形態においては、機能ブロック142Cを具備しなくてもよい。
【0085】
機能ブロック142Cに入力される車両ピッチ信号(Veh-Pitch)は、認証車両ピッチ信号(Chkd-Veh-Pitch)として、Dチェック機能ブロック291の所望加速度決定の機能ブロック291Aに出力される。所望加速度決定機能ブロック291Aは、エンジン回転速度に相当する信号(Eng-Spd)、調整PTトルク・リクエスト(Arb-PwrTrn-Tq-Req)信号、および現在選択されているギア比に相当する信号であって、この実施例では現在選択されているギアに相当する信号(Gear-Pos)を入力信号として受信する。決定機能ブロック291Aは、車両のドライバが所望する加速度の推定値を入力信号に応じて決定するように構成されている。このドライバ所望の推定加速度に相当する信号(Des-Acc)が、加速度チェック機能ブロック291Dに出力される。
【0086】
理解されるように、決定機能ブロック291Aは、車両100が坂道上にある場合に、所望する(期待される)加速度が重力による正または負の力に応じて修正できるように、ドライバ所望の推定加速度(Des-Acc)を計算する際、認証車両ピッチ信号(Chkd-Veh-Pitch)を参酌する。すなわち、エンジン121および/またはCIMG123により供給される所与のトルク量に対する実際の加速度は、車両100が登坂走行している場合には、車両100が水平路面走行している場合に比して小さくなると予想される。同様に、車輪に加わる所与のトルクのための実際の加速度は、車両100が降坂走行している場合には、車両100が水平路面走行または登坂走行している場合に比して大きくなると予想される。理解されるように、ドライバ所望の推定加速度(Des-Acc)は、車両重量および牽引する任意の物の重量に起因してパワートレイン129に加わる実際の負荷をも参酌して求められる。負荷は、パワートレイン制御モジュール(PCM)201、またはその他の適当な手段を用いて決定することができる。いくつかの実施形態では、エンジン121に取り込まれる空気または燃料の流速に基づいて、車両負荷を計算することができる。いくつかの実施形態では、所望加速度決定機能ブロック291Aは、パワートレインに所定の(一定の)負荷が加わった状態で車両が動作しているものと仮定する。
【0087】
縦方向加速度計算機能ブロック142Bにより計算された車両の縦方向加速度(Long-Acc)が、Dチェック機能ブロック291の確度チェック機能ブロック291Bに出力される。確度チェック機能ブロック291Bは、縦方向加速度(Long-Acc)を、車輪速度チェックの機能ブロック291Cにより求められる車両加速度(Veh-Acc)と比較する。車輪速度チェック機能ブロック291Cは、4つの車輪111,112,114,115のそれぞれの速度を入力信号として受信し、測定された車輪速度に基づいて加速度を決定する。
【0088】
確度チェック機能ブロック291Bは、縦方向加速度(Long-Acc)を認証車両加速度(Chkd-Veh-Acc)として、加速度チェック機能ブロック291Dに出力する。
【0089】
確度チェック機能ブロック291Bは、(車輪速度に基づいて求めた)車両加速度(Veh-Acc)が、(加速度センサ142Aで測定した加速度に求めた)縦方向加速度(Long-Acc)と一致しないと判断した場合、チェック(認証)を中止し、警告信号を出力する。確度チェック機能ブロック291Bは、新しい入力データが利用可能になったとき、チェックを再開するように構成されている。
【0090】
いくつかの実施形態では、一致しない場合に、チェックを中止し、警告信号を出力した場合であっても、加速度チェック機能ブロック291Dが機能し続けられるように、確度チェック機能ブロック291Bは、認証車両加速度(Chkd-Veh-Acc)のパラメータとして縦方向加速度(Long-Acc)を出力し続ける。
【0091】
加速度チェック機能ブロック291Dは、ドライバ所望の推定加速度(Des-Acc)を、認証車両加速度(Chkd-Veh-Acc)と比較する。加速度チェック機能ブロック291Dは、認証車両加速度(Chkd-Veh-Acc)がドライバ所望の推定加速度(Des-Acc)より所定量以上大きいと判断した場合、車両コントローラー・エリア・ネットワーク(CAN)のバスに警告信号を出力し、これに基づいて、エンジン121およびCIMG123により生じるトルク量を実質的にゼロまで低減する。いくつかの構成では、エンジン121およびCIMG123と車両100の車輪111,112,114,115との接続を解除するように自動変速装置124を制御する。
【0092】
すなわち、理解されるように、いくつかの実施形態では、実際の認証車両加速度(Chkd-Veh-Acc)がドライバ所望の車両加速度(Des-Acc)より大きいとの判断に対して、比較的に劇的な手法で応答するように車両100が構成される。
【0093】
いくつかの択一的な実施形態において、実際の認証車両加速度(Chkd-Veh-Acc)がドライバ所望の車両加速度(Des-Acc)より大きく、両者が一致しない場合、車両100は、ドライバ所望の車両加速度(Des-Acc)に近づくように認証車両加速度(Chkd-Veh-Acc)を小さくするために、調整PTトルク・リクエスト(Arb-PwrTrn-Tq-Req)の値を小さくするように構成される。
【0094】
複数のトルク発生源を有するハイブリッド車両に対する注目が増大しているところ、車両の1つまたはそれ以上の動力源により生じた実際のトルクを、要求されるトルクに対してチェックする従来方法は、その実現がますます複雑になってきている。本発明に係る実施形態によれば、パワートレインが車両の車輪に与えるトルクに対する車両の応答を独立してチェックして、ドライバが意図しない手法で車両が加速するリスクを低減することができる。いくつかの実施形態によれば、車両の1つまたはそれ以上の動力源およびブレーキを有するパワートレインが車両の車輪に与えるトルクに対する車両の応答を独立してチェックして、ドライバが意図しない手法で車両が加速するリスクを低減することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、コントローラ140は、縦方向加速度の測定値が調整PTトルク・リクエスト(Arb-PwrTrn-Tq-Req)の値に比してあまりにも小さいと判断された場合、1つまたはそれ以上の車輪に供給されるトルク量を増大させるように、パワートレイン129に命令を与えるように動作可能である。これは、たとえば交差点で加速し、または別の車両を追い越すときに、ドライバが車両を加速するように緊急でパワートレインのトルクを要求した場合に特に有益である。パワートレインまたは車両コントローラに不具合があると、トルクの出力不足となり、コントローラ140は、その問題を検出し、パワートレイン129を介して1つまたはそれ以上の車輪に対するトルク出力を増大させるように命令を与える。
【0096】
本願明細書の詳細な説明およびクレームにおいて、「備える(comprise)」および「有する(contain)」の用語、ならびに「備え(comprising)」および「備える(comprises)」等のこれらを変形した用語は、「これに限定することなく有する(including but not limited to)」を意味するものであり、その他の部分、追記、小部分、整数、またはステップを排除する意図があるわけではない。
【0097】
本願明細書の詳細な説明およびクレームにおいて、単数名詞は、文脈上単数であることが必要である場合を除き、複数のものを含む。特に、不加算名詞を用いた場合、本願明細書は、文脈上単数であることが必要である場合を除き、単数である場合と同様、複数の場合も含むものと理解すべきである。
【0098】
本発明に係る特定の態様、実施形態、または実施例に関する特徴、整数、特性、成分、化学的塩基は、矛盾するものでない限り、本願に記載されたその他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であると理解すべきである。
【符号の説明】
【0099】
100…ハイブリッド車(HEV)、111,112…前輪、114,115…後輪、118…前輪ドライブシャフト、121…内燃エンジン、122…クラッチ、123…クランクシャフト一体型モータ/発電機(CIMG)、124…自動変速装置、129…パワートレイン(動力伝達機構)、132…後輪ドライブシャフト、135…ディファレンシャル(差動装置)、130…補助ドライブライン(動力伝達装置)、140…コントローラ、142…加速度計デバイス、142A…6軸加速度センサ、142B…縦方向加速度計算機能ブロック、142C…確度チェックの機能ブロック、150…バッテリ、161…ブレーキペダル、162…アクセルペダル、201…パワートレイン制御モジュール(PCM)、203…Pチェック機能ブロック、205…車両安定制御(VSC)トルク調整機能ブロック、207…VSC(車両安定制御)トルク配分機能ブロック、209…ABSコントローラ、291…Dチェック機能ブロック、291A…所望加速度決定機能ブロック、291B…確度チェック機能ブロック、291C…車輪速度チェック機能ブロック、291D…加速度チェック機能ブロック。
図1
図2
図3