特許第6308963号(P6308963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308963
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】重量部品の脱着治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20180402BHJP
【FI】
   B66B5/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-57660(P2015-57660)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-175749(P2016-175749A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥平
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 実用新案登録第2589944(JP,Y2)
【文献】 実開昭62−057505(JP,U)
【文献】 特開2014−012436(JP,A)
【文献】 特開2006−226295(JP,A)
【文献】 特開2012−197814(JP,A)
【文献】 特開平11−090922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り付け部に形成された複数のねじ穴のそれぞれに適合する挿通穴が形成され、前記挿通穴に挿入され前記ねじ穴に螺合する固定ねじによって、前記取り付け部に固定され、上下方向に配設される重量部品の前記取り付け部に対する脱着に際して用いられ、
一端に設けられ、前記ねじ穴に螺合するねじ部と、このねじ部に連設される胴部とを有し、前記ねじ部と前記胴部を前記挿通穴の径寸法よりも小さな径寸法に設定し、全体が棒状に形成された重量部品の脱着治具において、
前記一端の反対側に位置する他端に設けられ、前記挿通穴の径寸法よりも小さな外形に形成され、前記胴部から離れるに従って先細となるように形成された先細部と、
前記胴部と前記先細部との間に設けられ、前記重量部品の前記挿通穴の縁部の落ち込みが可能であって、当該落ち込みが発生したときには、前記重量部品の重量を支持し、当該重量部品の落下を防止するための溝と、
を備えたことを特徴とする重量部品の脱着治具。
【請求項2】
請求項1に記載の重量部品の脱着治具において、
前記先細部は、截頭円錐部から成ることを特徴とする重量部品の脱着治具。
【請求項3】
請求項1に記載の重量部品の脱着治具において、
前記溝は、前記先細部に近づくに従って径寸法が小さくなるテーパ形状の溝から成ることを特徴とする重量部品の脱着治具。
【請求項4】
請求項1に記載の重量部品の脱着治具において、
前記溝は、各部分の径寸法が同じ径寸法の溝から成ることを特徴とする重量部品の脱着治具。
【請求項5】
請求項1に記載の重量部品の脱着治具において、
前記胴部に、前記重量部品の滑りを抑える滑り止め部を設けたことを特徴とする重量部品の脱着治具。
【請求項6】
請求項5に記載の重量部品の脱着治具において、
前記滑り止め部を、前記溝の近傍位置に設けたことを特徴とする重量部品の脱着治具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の重量部品の脱着治具において、
前記取り付け部は、エレベータに関係する要素から成ることを特徴とする重量部品の脱着治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの保全作業時等に際して使用される重量部品の脱着治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエレベータの保全作業では、故障のために、または故障を防止するために、制御盤などに取り付けられた部品を交換する際などに、部品に設けられた複数の挿通穴と、制御盤の複数のねじ穴のうちの対応するものの位置合せを行いながら、挿通穴に挿入され、ねじ穴に螺合される複数の固定ねじの取り外し作業が生じる。
【0003】
ここで交換する部品が重量部品であって、しかも上下方向に配設され、壁面に取り付けられる構造の場合には、壁面から重量部品を取り外すために最後の固定ねじを抜き取る際に、作業者は片手で重量部品を支えながら、もう片方の手で固定ねじを抜き取ることになる。
【0004】
また逆に、壁面に重量部品を取り付けるために、作業者は片手で重量部品を支えながら、もう片方の手で重量部品の挿通穴と壁面のねじ穴との位置合せを行ない、位置合せ後にその片方の手で固定ねじを挿入することになる。したがって、従来は重量部品の着脱作業を行う作業者の負担が大きくなり、着脱作業に時間がかかっていた。また、着脱作業中に重量部品を落下させてしまう虞もあった。
【0005】
このような状況から特許文献1に、前述した複数の固定ねじのうちの1本、または複数本を、仮固定用治具に付け替え、重量部品の重量をこの仮固定用治具で支持させることにより、重量部品の脱着を円滑に行わせる技術が開示されている。
【0006】
この特許文献1に開示された仮固定用治具は、全体が棒状に形成され、重量部品の取り付け部に形成されたねじ穴に螺合するねじ部と、このねじ部に連設された胴部と、この胴部に連設された他端に設けられ、重量部品に形成された挿通穴に係止可能な係止部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2589944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された仮固定用治具は、重量部品を取り外す際の当該重量部品の脱落防止には有効であるが、重量部品の着脱作業時に、この仮固定用治具の係止部と重量部品の挿通穴とが干渉するため、干渉を回避させる特別な作業が必要になり、この重量部品の脱着作業の能率の向上を見込めない問題があった。
【0009】
本発明は、前述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、取り付け部に対して重量部品を脱着させる際に、重量部品に形成された挿通穴との干渉を生じさせずに脱着させることができる重量部品の脱着治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、取り付け部に形成された複数のねじ穴のそれぞれに適合する挿通穴が形成され、前記挿通穴に挿入され前記ねじ穴に螺合する固定ねじによって、前記取り付け部に固定され、上下方向に配設される重量部品の前記取り付け部に対する脱着に際して用いられ、一端に設けられ、前記ねじ穴に螺合するねじ部と、このねじ部に連設される胴部とを有し、前記ねじ部と前記胴部を前記挿通穴の径寸法よりも小さな径寸法に設定し、全体が棒状に形成された重量部品の脱着治具において、前記一端の反対側に位置する他端に設けられ、前記挿通穴の径寸法よりも小さな外形に形成され、前記胴部から離れるに従って先細となるように形成された先細部と、前記胴部と前記先細部との間に設けられ、前記重量部品の前記挿通穴の縁部の落ち込みが可能であって、当該落ち込みが発生したときには、前記重量部品の重量を支持し、当該重量部品の落下を防止するための溝とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る重量部品の脱着治具は、取り付け部に対して重量部品を脱着させる際に、胴部と先細部との間に設けられ、重量部品の挿通穴の縁部が落ち込み可能な溝によって、重量部品の落下を防ぐことができる。また、取り付け部に形成されたねじ穴に螺合するねじ部とは反対側に位置する他端に、重量部品に形成された挿通穴の径寸法よりも小さな外形に形成された先細部を備えていることから、取り付け部に対して重量部品を脱着させる際に、重量部品に形成された挿通穴との干渉を生じさせずに脱着させることができる。これにより本発明は、重量部品の脱着作業の能率を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る脱着対象の一例として挙げた重量部品の取り付け形態を示す斜視図である。
図2】本発明に係る重量部品の脱着治具の第1実施形態を示す拡大側面図である。
図3】重量部品の取り外し作業時の状態を示す図で、上側の2本の固定ねじを抜き取った状態を示す斜視図である。
図4】重量部品の取り外し作業時の状態を示す図で、固定ねじを抜き取った重量部品の挿通穴のそれぞれに、第1実施形態に係る脱着治具を挿入する直前の状態を示す斜視図である。
図5】重量部品の取り外し作業時の状態を示す図で、第1実施形態に係る脱着治具の挿入後、下側の2本の固定ねじを抜き取った状態を示す斜視図である。
図6図5に対応する要部縦断面図である。
図7図5に示す状態から重量部品の取り外しのために重量部品を移動させ始めた状態を示す要部縦断面図である。
図8図7に示す状態からさらに重量部品を移動させ、滑り止め部に至った状態を示す要部縦断面図である。
図9】移動させた重量部品が溝に引っ掛かった状態を示す要部縦断面図である。
図10】重量部品を取り外した状態を示す要部縦断面図である。
図11】本発明の第2実施形態を示す拡大側面図である。
図12】本発明の第3実施形態を示す拡大側面図である。
図13】本発明の第4実施形態を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る重量部品の脱着治具の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明に係る重量部品5の脱着治具の第1実施形態が取り付けられる取り付け部は、例えばエレベータに関係する要素を構成する壁面1から成っている。
【0015】
保全作業時等に脱着される重量部品5には、図6等に示すように、壁面1に形成された複数、例えば4つのねじ穴2のそれぞれに適合する4つの挿通穴3が形成され、これらの挿通穴3に挿入され、ねじ穴2に螺合する図1に示す固定ねじ4によって、重量部品5は壁面1に上下方向に配設されて固定されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、第1実施形態に係る重量部品5の脱着治具10は、一端に設けられ、壁面1のねじ穴2に螺合するねじ部11と、このねじ部11に連設される胴部12とを有し、ねじ部11と胴部12を重量部品5の挿通穴3よりも小さな径寸法に設定し、全体が棒状に形成してある。
【0017】
また、この第1実施形態は、他端に設けられ、挿通穴3の径寸法よりも小さな外形に形成され、胴部12から離れるに従って先細となるように形成された先細部、例えば截頭円錐部13と、胴部12と截頭円錐部13との間に設けられ、重量部品5の挿通穴3の縁部の落ち込みが可能な溝、例えば截頭円錐部13に近づくにしたがって径寸法が小さくなるテーパ形状の溝14とを備えている。
【0018】
また、この第1実施形態は、胴部12に、重量部品5の滑りを抑える例えばローレット加工によって形成された滑り止め部15を設けてある。この滑り止め部15は、溝14の近傍位置に設けてある。
【0019】
前述のように構成した第1実施形態に係る脱着治具10を用いて、例えば図1に示すように壁面1に取り付けられていた重量部品5を取り外す手順を、図3〜10を用いて説明する。
【0020】
図1に示す4本の固定ねじ4のうちの、例えば上側の2本の固定ねじ4を図3の矢印20で示すように取り外し、図4の矢印21で示すように、第1実施形態に係る2本の脱着治具10のそれぞれを重量部品5の挿通穴3に挿入し、壁面1のねじ穴2に螺合させる。
【0021】
次に、図5の矢印22及び図6に示すように、重量部品5を壁面1に固定していた下側の2本の固定ねじ4を取り外すと、重量部品5は、2本の脱着治具10のみによって壁面1のねじ穴2に支持された状態となる。
【0022】
次に、図7に示すように、重量部品5を脱着治具10に案内させて、図中右方向に移動させる。このとき図8に示すように、重量部品3は、滑り止め部15により右方向へ滑って移動しないように規制される。また、このとき、重量部品3が滑って移動したとしても、図9に示すように、この重量部品3の縁部が溝16に落ち込み、引っ掛かることによって落下を防止することができる。
【0023】
重量部品3を脱着治具10で取り外す作業者の準備が整った後、図10に示すように、重量部品3を脱着治具10から取り外すようにすれば、落下を防止しながら重量部品3を取り外すことができる。
【0024】
なお、重量部品3を再度取り付ける場合には、前述した図3から図10に示す手順を逆に行えばよい。その際には、脱着治具10の截頭円錐部13に重量部品3の挿通穴5を挿通させることにより、容易に脱着治具10へ重量部品3を支持させることができる。また、この際に、前述した截頭円錐部13とともに、胴部12及びねじ部11も、重量部品5の挿通穴3よりも小さな径寸法に設定してあることから、脱着治具10に対して重量部品5の挿通穴3を容易に挿入させることができる。
【0025】
以上のように構成した第1実施形態によれば、壁面1に対して重量部品5を脱着させる際に、胴部12と截頭円錐部13との間に設けられ、重量部品5の挿通穴3の縁部が落ち込み可能な溝14によって、重量部品5の落下を防ぐことができる。
【0026】
また、壁面1に形成されたねじ穴2に螺合するねじ部11とは反対側に位置する他端に、重量部品5に形成された挿通穴3の径寸法よりも小さな外形、すなわち径寸法に形成された截頭円錐部13を備えていることから、壁面1に対して重量部品3を脱着させる際に、重量部品5に形成された挿通穴3との干渉を生じさせずに脱着させることができる。
【0027】
すなわち、作業者は重量部品5の重量を、2本の脱着治具10に支持させた状態で、この重量部品5の脱着を行うことができるので、作業者が重量部品5の重量を支えることを要せずに、自身の両手を用いて、重量部品5の脱着作業を円滑に行うことができる。これにより、この第1実施形態は、重量部品5の脱着作業の能率を向上させることができる。
【0028】
なお、前述した第1実施形態では、壁面1から重量部品5を脱着させる際に、2本の固定ねじの取り外し後に、2本の脱着治具10を重量部品5の挿入穴3に挿入し、壁面1のねじ穴2に螺合させるようにしたが、1本の固定ねじ4の取り外し後に、取り外した箇所に1本の脱着治具10を取り付け、以下同様に、1本の固定ねじ4の取り外しと、取り外した箇所への1本の脱着治具10の取り付けを順に繰り返して、重量部品5の脱着を行うようにしてもよい。このようにすれば、より確実に重量部品5の落下を防止でき、安全性の高い重量部品5の脱着作業を行うことができる。
【0029】
また、前述した第1実施形態は、壁面1に対して重量部品5を脱着させる際に、截頭円錐部13の周面によって、円滑に案内させながら重量部品5を脱着させることができ、重量部品5の脱着作業の能率向上に貢献する。
【0030】
また、第1実施形態にあっては、重量部品5が落下しようとする際に、溝14のテーパ形状に案内されることにより、溝14の縁部に重量部品5の挿通穴3の縁部が引っ掛かり、この重量部品5の落下を確実に防ぐことができる。
【0031】
また、重量部品5が落下しようとする際に、胴部12に設けた滑り止め部15によって前述したように重量部品5の滑りを規制し、落下しにくい状態に保つことができる。
【0032】
また、第1実施形態は、滑り止め部15を溝14の近傍位置に設けたことから、重量部品5が落下しようとする際に、前述したように滑り止め部15によって重量部品5の移動を規制できるが、それでも重量部品5が移動して落下しようとしたときには、溝14によって重量部品5の落下を確実に防ぐことができる。
【0033】
また、エレベータに関係する要素を構成する重量部品5の取り付け部の一例として、壁面1を挙げたが、エレベータにあっては重量部品5が取り付けられる取り付け部が上下方向に延設形成されているものが多い。このことから、第1実施形態に係る脱着治具10は、エレベータに関係する要素を構成する取り付け部に取り付けられた各種の重量部品の着脱作業に好適である。
【0034】
図11に示す第2実施形態に係る脱着治具10は、第1実施形態に係る脱着治具10の構成から、胴部12に形成される滑り止め部15を除いた構成にしてある。その他の構成は、第1実施形態と同等である。このように構成した第2実施形態も、重量部品5の脱着作業に際し、溝14によって重量部品5の落下を防ぐことができ、また重量部品5を脱着させる際に、重量部品5に形成された挿通穴3との干渉を生じさせずに脱着させることができる。
【0035】
図12に示す第3実施形態に係る脱着治具10は、溝16の形状を第1実施形態の溝14の形状と異ならせてある。この第2実施形態の溝16は、各部分の径寸法が同じ径寸法の溝から成っている。その他の構成は、第1実施形態と同等である。このように構成した第3実施形態も、第1実施形態と同等の作用効果が得られる他、溝16の形成を比較的容易に行うことができる。
【0036】
図13に示す第4実施形態に係る脱着治具10は、基本形状が截頭円錐体を形成する先端部17が、例えば両側部に平坦面17aを有する構成にしてある。その他の構成は、第3実施形態と同等である。このように構成した第4実施形態も、第3実施形態と同等の作用効果が得られる他、重量部品5の挿通穴3との干渉をより確実に防ぎ、重量部品5の脱着作業の能率向上に貢献する。
【符号の説明】
【0037】
1 壁面(取り付け部)
2 ねじ穴
3 挿通穴
4 固定ねじ
5 重量部品
10 脱着治具
11 ねじ部
12 胴部
13 截頭円錐部(先細部)
14 溝
15 滑り止め部
16 溝
17 先細部
17a 平坦面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13