(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308979
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
B65D 8/04 20060101AFI20180402BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
B65D8/04 H
A45D34/00 510Z
A45D34/00 510
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-125809(P2015-125809)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-6421(P2017-6421A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】501153108
【氏名又は名称】株式会社マルエム
(74)【代理人】
【識別番号】100103654
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 豊一
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−029538(JP,A)
【文献】
特開2010−274950(JP,A)
【文献】
特開2006−111271(JP,A)
【文献】
特開2004−217311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 8/04
A45D 34/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身容器と肩部材で構成し、該身容器と肩部材はそれぞれ別箇に射出成型によって成型する合成樹脂製容器であって、前記身容器は上端が開放される自立可能な有底筒状とし、下底部の肉厚変化によって内周面を底部に向けて先細りとなる傾斜面に形成し、
肩部材は、上方に突出する細径の首部を備え、該首部の下端に外鍔を形成し、該外鍔を身容器の上端内周部に形成した段部に支受させ、身容器の段部に支受させた状態で身容器と肩部材を超音波溶接によって一体化したものであって、
前記身容器の上端に形成する段部には、段部の一部に周溝を形成するとともに、肩部材の外鍔底面に前記身容器の周溝に嵌合する突条を形成し、
肩部材の底面には周溝に嵌合する突条の内方に、段部の内周突起が嵌合する凹所を形成するとともに、該凹所の内周に前記内周突起の内周面に位置する保護突起を形成し、
周溝と突条及び内周突起と凹所を嵌合させた状態で超音波溶接によって接合したことを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
身容器の上端に形成する段部には、段部の一部に周溝を形成し、段部の内周突起の上面を内向きの傾斜面となるように面取りするとともに、肩部材の外鍔底面に前記身容器の周溝に嵌合する突条を形成し、周溝と突条を嵌合させた状態で超音波溶接によって接合したことを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
身容器及び肩部材は、透明なPET樹脂によって成型し、美容液を収容する化粧品用容器である請求項1又は2記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてエッセンスなどの化粧液を収容するのに適した合成樹脂製容器、特にポンプやスポイト、あるいはストローによって内容液を吐出させるのに有効な合成樹脂製容器に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
容器に収容した液体をポンプやスポイトによって吸引する場合、吸引管の開口端より上の液を吸引し排出することはできるが、開口端より下方に位置する内容液を吸引することができない。すなわち、吸引管の開口部より下方の容積はデッドスペースとなる。このデッドスペースをなるべく少なくするには、特許文献1に開示されているように容器内底部の中心を深く形成し、液溜りとなるようにすることによってデッドスペースを少なくすることができる。すなわち、内部空間を底部に向けて先細り形状とすることによってデッドスペースを少なくすることができる。
【0003】
液体を収容する合成樹脂製容器、例えば首部を備えた容器では、金型構造等を考慮すると、一度の射出成型によって一体に成型することが困難である。したがって、例えばPET樹脂を用いる飲料容器などの合成樹脂製容器は、そのほとんどはブロー成形で成型されるのが一般的である。ブロー成形の場合、膨張させたプリフォームを外側の型に密着させるようにして成型するため、肉厚が変化する容器を成型することが困難である。
特許文献1に記載された発明は、ブロー成形に際し底型を上昇させる特殊な方法によって底部の肉厚を大きくし、中央部が深い形状となる構造の容器を実現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−274950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器内の下部空間が先細りとなるように肉厚が変化する容器を実現しようとする場合、身容器である有底の筒状容器のみは射出成型で成型することができるが、細径の首付きの容器を一体に成型することはできない。細径の首付きの肩部材だけであれば、射出成型で成型することはできる。そこで、例えばPET樹脂で成型した身容器と肩部材を接合して一体化することによって射出成型の首付きの容器を製造することができる。ところが、従来PET樹脂のような合成樹脂材で成型された身容器と肩部材を接合して一体化することが困難であった。
【0006】
特許文献1に記載されたように、特殊なブロー成形によって底部形状を形成する場合、プリフォームの成型を含めて複雑な成型工程を必要とし、正確に一定した内部形状を成型することは困難である。
上記従来技術の欠点に鑑み、首付きの合成樹脂製容器であって、その内部構造を肉厚の変化によって、正確に一定した先細り状態の形状を容易に製造することができる合成樹脂製容器を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、身容器2と肩部材3で構成し、この身容器2と肩部材3はそれぞれ別箇に射出成型によって成型して、一体に接合する合成樹脂製容器1に関するものである。身容器2は上端が開放される自立可能な有底筒状の容器とし、下底部の肉厚変化によって内周面4を底部に向けて先細りとなる傾斜面5に形成する。
肩部材3は、上方に突出する細径の首部6を備え、該首部6の下端に外鍔7を形成している。そして、外鍔7を身容器2の上端内周部に形成した段部8に支受させ、身容器2の段部8に支受させた状態、すなわち一種嵌合状態で身容器2と肩部材3を超音波溶接によって一体化
したものであって、前記身容器2の上端に形成する段部8には、段部8の一部に周溝9を形成するとともに、肩部材3の外鍔7底面に前記身容器2の周溝9に嵌合する突条10を形成し、肩部材3の底面には周溝9に嵌合する突条10の内方に、段部8の内周突起12が嵌合する凹所13を形成するとともに、該凹所13の内周に前記内周突起12の内周面に位置する保護突起14を形成し、周溝9と突条10及び内周突起12と凹所13を嵌合させた状態で超音波溶接によって接合したことを特徴とする合成樹脂製容器である。
【0008】
請求項2記載の発明は、身容器2の上端に形成する段部8には、段部の一部に周溝9を形成
し、段部8の内周突起12の上面を内向きの傾斜面となるように面取りするとともに、肩部材3の外鍔7底面に前記身容器2の周溝9に嵌合する突条10を形成し、周溝9と突条10を嵌合させた状態で超音波溶接によって接合
したことである。
請求項3記載の発明は、身容器2及び肩部材3を、透明なPET樹脂によって成型し、美容液を収容する化粧品用容器とすることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、身容器2と肩部材3を別箇に射出成型によって成型することによって、身容器2の内周面を多彩な任意形状に成型することが可能となる。例えば身容器2の内底面形状を先細りの一定した「涙」形状や「漏斗」形状に、正確に成型することができる。成型をした身容器2と肩部材3を超音波溶接することによって、首付きの合成樹脂製容器を容易に、効率的に製造することができる。また、本発明では、PET樹脂など首付き容器としての製造が比較的製造が困難であった材質の合成樹脂製容器を、嵌合状態で超音波溶接することによって容易に製造することができる効果がある。
【0010】
請求項1記載の発明では、身容器2の内周面の底部形状を、先細りの「涙」形状や「漏斗」形状に成型することによって、吸引管の開口部を容器の内底部にまで差し込んで、ポンプによって吐出させる容器や、スポイトによって吸引させる容器として使用する場合に、できるだけ吐出できない残量、すなわちデッドスペースが少ない容器を実現することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、身容器2の上端に形成する段部8において、段部8に形成した周溝9と、肩部材3に形成した突条10を嵌合させた状態で超音波溶接によって接合し、液漏れなどを生じる可能性のない、確実できれいな接合状態を実現することができる。なお、周溝9と突条10の嵌合状態は効果的な超音波振動を伝えることができるとともに、摩擦熱による合成樹脂材の溶融分をあふれさせない程度の隙間、例えば0.1mm程度の隙間で嵌合させておくのが好ましい。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、透明度に優れたPET樹脂によって身容器の内周面の正確な肉厚変化である合成樹脂製容器を実現することができる。したがって、特に容器内底部の「涙」形状などによって視覚的に優れた容器を実現することができるため、例えば化粧品用の容器や装飾的効果を目的とした容器に使用すると効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態を示す合成樹脂製容器の縦断面図、
【
図2】
図2は、
図1に示す合成樹脂製容器の、身容器と肩部材を分離させた状態の縦断面図、
【
図3】
図3は、身容器と肩部材の接合の過程を示す略図、
【
図4】
図4は、容器にポンプを装着した使用状態を示す概略図、
【
図5】
図5は、容器にスポイトを装着した使用状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る合成樹脂製容器の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る合成樹脂製容器の縦断面図、
図2は、身容器と肩部材を分離させた状態の縦断面図である。
【0015】
本発明の合成樹脂製容器は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなど任意の合成樹脂材の射出成型によって製造することができる、首付きの容器である。首付き容器の場合、一般的にはブロー成形によって成型されるが、ブロー成形の場合には身容器の一部を肉厚に成型し、肉厚変化による任意構造を実現することが困難であった。すなわち、肉厚の変化によって必要な構造の身容器を成型することはできなかった。また、射出成型によっては、内型を抜くことができないため細径の首付き容器を、一体として成型することができない。したがって、首付きの合成樹脂製容器は、ブロー成形によって成型し、肉厚の変化による特殊構造の容器は一般化されていなかった。
【0016】
本発明は、首付きの合成樹脂製容器を射出成型によって成型することによって、肉厚を変化させる構造の首付きの容器を、能率的にかつ一定した高品質の容器として製造ことができる容器を実現するものである。
本発明に係る合成樹脂製容器1は、
図2に示すように身容器2と肩部材3をそれぞれ射出成型によって成型し、別箇に成型した身容器2と肩部材3を一体的に接合することによって首付きの容器を完成させる。
【0017】
身容器2は、外型と内型によって成型する、少なくとも上方(開口方向)に向けて抜き勾配を保持した、自立可能な有底筒状であって、下底部には、内型形状によって底部に向けて先細りとなる傾斜面5を形成している。図示実施形態の傾斜面5は、「涙」形状としている。傾斜面5によって形成される先細り形状は、半球面状や直線的な円錐形などとすることができる。
図2に示すように、身容器2の上端部には、上端内周部分を切除して段部8を形成している。さらに段部8の外周縁部分に、下方に向けて細い幅で周溝9を刻設している。
【0018】
上記、身容器2とは別に、細径の首部6を備えた肩部材3を射出成型によって成型する。肩部材3は、外周面に雄ネジ11を成型した細径の首部6を備え、首部6の下端に外鍔7を形成している。外鍔7は平板状で、その平面形状は身容器2の上端に形成した段部8の平面形状と一致する。そして、外鍔7を身容器2の段部8に支受させた状態で超音波溶接によって一体的に接合する。
【0019】
身容器2の上端部及び肩部材3の具体的構造は、
図3(イ)に示すように外鍔7の外周縁部分に、前記身容器2の周溝9に嵌合する突条10を形成している。身容器2の上面に、周溝9を形成することによって段部8の内周部分には内周突起12が形成される。一方、肩部材3の底面には周溝9に嵌合する突条10の内方に、内周突起12が嵌合する凹所13を形成するとともに、凹所13の内周に前記内周突起12の内周面に位置する保護突起14を形成している。
【0020】
上記構造の身容器2の上端に肩部材3の外鍔7を配置すると、
図3(ロ)に示すように身容器2上端部の周溝9に肩部材3の突条10が嵌合するとともに、身容器2の内周突起12が肩部材3の凹所13に嵌合して安定する。この状態で、身容器2の上端部と肩部材3の外鍔7上面に、超音波溶接機のホーン15を当接すると、ホーン15の超音波振動が外鍔7と身容器2に伝わり、超音波振動の摩擦熱によって身容器2と肩部材3が溶着される。すなわち、身容器2と肩部材3の接触面が溶着し一体的に固定される。溶着面は、
図3(ハ)において太線で示している。
【0021】
周溝9と突条10は、密接状態で嵌合するものであってもよいが、
図3(ロ)に示すように突条10と周溝9の間に例えば0.1mm程度の微小な隙間Xを形成しておくのが好ましい。このように、隙間Xを形成しておくと、溶着作業時の組立を能率的に行うことができるとともに、適度な相対的な超音波振動を身容器2と肩部材3に伝えることができる、良好な溶接状態を実現することができる。このとき、溶着が完了した状態では、溶けた材質が両部材の隙間Xを充填し、きれいな溶着状態を実現することができる。
【0022】
図3に示す、実施形態においては、内周突起12の上面を内向きの傾斜面となるように面取りし、周溝9と突条10の嵌合接着が、より円滑で確実なものとなり、作業性を向上させるとともに、溶着部分の接合強度を向上させ凹所13と内周突起12との接合状態によって、液漏れの可能性がないものとしている。
【0023】
本発明に係る合成樹脂製容器1は、
図4に示すように、雄ネジ11を形成した首部にポンプ16や、
図5に示すようにスポイト17を差し込んで、吸引管18の開口端から内容液を吸引して使用する容器に適している。このとき、身容器2は下底部の肉厚変化によって内周面を底部に向けて先細りとなる傾斜面に形成しているため、吸引管18の開口端18aより下方のデッドスペースZが僅かな量となり、内容液をできるだけ有効に利用することができる。
【0024】
本発明に係る合成樹脂製容器は、任意の合成樹脂材によって成型するものであっても、内容液を有効に利用することができることを目的とするデッドスペースが少ない容器を実現することができる。しかしながら、本発明に係る合成樹脂製容器を、例えば透明なPET樹脂によって成型することによって、意匠的な効果の大きな用途に活用することができる。透明度の高い合成樹脂製容器であると、内容液の色や質感を強調する意匠的効果を発揮することができる。この時、身容器の肉厚変化による傾斜面部分の形状が強調され、液体の化粧品用の容器として際立った意匠的効果を発揮することができる。そのため、身容器下底部の先細りとなる内周面の傾斜面の断面形状も種々変化させて、複雑な光反射をする化粧品容器を実現することができる。
その他、薬品容器として利用する場合は内容液の色や質感を視認し易い容器として実施することができる。
【0025】
本発明に係る合成樹脂製容器は、任意大きさの容器に実施することができるが、液状の化粧品や薬品用容器として、例えば10cc〜30cc程度の比較的小さな容器として実施するのが好ましい。比較的小さな容器であると、部分的に肉厚となる底部において、射出成型による変形、引けの影響を最小限にとどめることができ、多彩な肉厚変化の合成樹脂製容器を実現することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…合成樹脂製容器、 2…身容器、 3…肩部材、 4…内周面、 5…傾斜面、 6…首部、 7…外鍔、 8…段部、 9…周溝、 10…突条、 11…雄ネジ、 12…内周突起、 13…凹所、 14…保護突起、 15…ホーン、 16…ポンプ、 17…スポイト、 18…吸引管、 18a…開口端、 X…隙間、Z…デッドスペース。