(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐火被覆材は、前記構造柱材の両側に配置された前記燃えしろ用添え柱材の端面部に向けて、固定ビス又は固定くぎを各々打ち込むことによって取り付けられている請求項1記載の耐火柱。
前記燃えしろ用添え柱材は、カラマツ、ダフリカカラマツ、ベイマツ、エゾマツ、トドマツ、オウシュウアカマツ、ヒノキ、スプルース、或いはスギの集成材、製材、又は単板積層材を用いて形成されている請求項4記載の耐火柱。
前記耐火被覆材は、せっこうボード、強化せっこうボード、ケイ酸カルシウム板、サイディング、モルタル、コンクリート、軽量気泡コンクリート、木片セメント板、木材、難燃木材、グラスウール、ロックウール、又はフェノールフォームを用いて形成されている請求項1〜5のいずれか1項記載の耐火柱。
前記耐火被覆材は、前記構造梁材の両側に配置された前記燃えしろ用添え梁材の下面部に向けて、固定ビス又は固定クギを各々打ち込むことによって取り付けられている請求項7記載の耐火梁。
前記燃えしろ用添え梁材は、カラマツ、ダフリカカラマツ、ベイマツ、エゾマツ、トドマツ、オウシュウアカマツ、ヒノキ、スプルース、或いはスギの集成材、製材、又は単板積層材を用いて形成されている請求項10記載の耐火梁。
前記耐火被覆材は、せっこうボード、強化せっこうボード、ケイ酸カルシウム板、サイディング、モルタル、コンクリート、軽量気泡コンクリート、木片セメント板、木材、難燃木材、グラスウール、ロックウール、又はフェノールフォームを用いて形成されている請求項7〜11のいずれか1項記載の耐火梁。
【背景技術】
【0002】
例えば日本の住宅建築物では、伝統的に木製の柱や梁を現した真壁造となっているように、構造材である木製の柱や梁の木の表面を、室内に露出させて現したデザインが好まれている。このような柱や梁を現した木質空間は、火災時に構造材である柱や梁の露出した部分が直接加熱を受けて燃焼し易い状態にあることから、防耐火性能上の非損傷性(火災加熱を受けても建物を支える荷重に耐えたまま、崩壊しない性能)を確保する必要がある。
【0003】
このため、例えば木造の準耐火構造物で柱や梁の現し設計を行う場合、建築基準法「H12年建設省告示第1358号第二項のハ」に示す、燃えしろ設計を行うのが一般的である。燃えしろ設計は、地震時の短期構造耐力に対して必要な断面に、所定の燃えしろ分(例えば準耐火構造45分における集成材では35mmの燃えしろ分)を足す設計であるが、この足した燃えしろ分は構造計算に入れることはできないため、構造計算が非効率になる。
【0004】
また、燃えしろ設計した後の柱や梁の断面は仕上げ幅が大断面になりやすく、一般的に流通している、幅が例えば120mmの構造用木材の断面幅を超えて、構造用木材が特注扱いとなることがほとんどあることから、仕口加工を含めた構造用木材の製作に、多くの手間や時間がかかることになる。
【0005】
これらの課題に対して、例えば木造の準耐火構造物で例えば現し梁を設計する際に、燃えしろ設計によることなく、準耐火構造45分以上の耐火性能を保持できるようにした構造が開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、一般的に流通している構造用木材を組み合わせることで、大断面の構造用木材を特注して形成することなく、燃えしろ設計を行えるようした構造も開発されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構造では、現し梁の露出する部分が、もとの梁せいの半分以下に制限されることになるため、梁せいが小さいと現せる部分が少なくなって、梁を現した木質空間としての意匠性を十分に発揮できなくなる。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の構造では、燃しろ部分を考慮した柱や梁を、一般的に流通している構造用木材を組み合わせて形成することが可能であるが、柱や梁の燃えしろ部分となる化粧柱や化粧梁と、構造用部材との間に隙間が保持されていて、化粧柱や化粧梁は、拘束されていない状態にあるため、火災加熱を受けた際に化粧柱や化粧梁が変形や開きを生じ易くなって、燃えしろ部分としての機能を十分に発揮できなくなる場合がある。さらに、上記非特許文献1に記載の構造では、例えば75mm幅の構造用単板積層材(LVL)による梁材を3本横に並べて配置して、ボルトを用いてつづり合わせることで断面幅を225mmとすることにより、大断面の構造用木材と同様の構造耐力を保持できるようになっているが、二次接着の代わりにボルトを用いて接合していることから、ボルト孔による断面欠損により、仕上げ断面を構造計算にフルに算入することが難しくなって、効率の良い燃えしろ設計を行うことできなくなる。
【0010】
このようなことから、防耐火性能上の非損傷性を備える、燃えしろ部分を考慮した柱や梁を、一般的に流通している構造用木材を用いて、安価に且つ効率良く形成できるようにする新たな技術の開発が望まれている。
【0011】
本発明は、防耐火性能上の非損傷性を備える、燃えしろ部分を考慮した柱や梁を、一般的に流通している構造用木材を用いて、安価に且つ効率良く形成することのできる耐火柱及び耐火梁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、45分準耐火構造以上の耐火性能を備える建築物において用いる耐火柱であって、矩形の断面形状を有する構造柱材と、該構造柱材の対向する一方の一対の側面部を覆って各々配置された、前記側面部の幅と同様の幅の側面部を備え、矩形の断面形状を有する一対の燃えしろ用添え柱材と、前記構造柱材の対向する他方の一対の側面部及び両側の前記燃えしろ用添え柱材の端面部を、連続して覆い隠すようにして取り付けられた、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える耐火被覆材とを含んで構成される耐火柱を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
本発明の耐火柱は、前記耐火被覆材は、前記構造柱材の両側に配置された前記燃えしろ用添え柱材の端面部に向けて、固定ビス又は固定くぎを各々打ち込むことによって取り付けられていることが好ましい。
【0014】
本発明の耐火柱は、前記耐火被覆材の前記構造柱材及び前記燃えしろ用添え柱材を覆い隠す面以外の外周面を覆って、化粧用木板材が取り付けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の耐火柱は、前記燃えしろ用添え柱材が、比重が0.4以上の木材を用いて形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の耐火柱は、前記燃えしろ用添え柱材が、カラマツ、ダフリカカラマツ、ベイマツ、エゾマツ、トドマツ、オウシュウアカマツ、ヒノキ、スプルース、或いはスギの集成材、製材、又は単板積層材を用いて形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明の耐火柱は、前記耐火被覆材が、せっこうボード、強化せっこうボード、ケイ酸カルシウム板、サイディング、モルタル、コンクリート、軽量気泡コンクリート、木片セメント板、木材、難燃木材、グラスウール、ロックウール、又はフェノールフォームを用いて形成されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、45分準耐火構造以上の耐火性能を備える建築物において用いる耐火梁であって、矩形の断面形状を有する構造梁材と、該構造梁材の対向する一対の側面部を覆って各々配置された、前記側面部の縦幅と同様の縦幅の側面部を備え、矩形の断面形状を有する一対の燃えしろ用添え梁材と、前記構造梁材の下面部及び両側の前記燃えしろ用添え梁材の下面部を、連続して覆い隠すようにして取り付けられた、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える耐火被覆材とを含んで構成される耐火梁を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0019】
本発明の耐火梁は、前記耐火被覆材が、前記構造梁材の両側に配置された前記燃えしろ用添え梁材の下面部に向けて、固定ビス又は固定くぎを各々打ち込むことによって取り付けられていることが好ましい。
【0020】
本発明の耐火梁は、前記耐火被覆材の前記構造梁材及び前記燃えしろ用添え梁材を覆い隠す面以外の外周面を覆って、化粧用木板材が取り付けられていることが好ましい。
【0021】
本発明の耐火梁は、前記燃えしろ用添え梁材が、比重が0.4以上の木材を用いて形成されていることが好ましい。
【0022】
本発明の耐火梁は、前記燃えしろ用添え梁材が、カラマツ、ダフリカカラマツ、ベイマツ、エゾマツ、トドマツ、オウシュウアカマツ、ヒノキ、スプルース、或いはスギの集成材、製材、又は単板積層材を用いて形成されていることが好ましい。
【0023】
本発明の耐火梁は、前記耐火被覆材が、せっこうボード、強化せっこうボード、ケイ酸カルシウム板、サイディング、モルタル、コンクリート、軽量気泡コンクリート、木片セメント板、木材、難燃木材、グラスウール、ロックウール、又はフェノールフォームを用いて形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の耐火柱又は耐火梁によれば、防耐火性能上の非損傷性を備える、燃えしろ部分を考慮した柱や梁を、一般的に流通している構造用木材を用いて、安価に且つ効率良く形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る耐火柱10及び耐火梁20は、45分準耐火構造以上の耐火性能を備える建築物として、例えば軸組構法による木造建築物において、建物自体の重量、風荷重、地震荷重等を支える骨組み構造を構成する、骨組み部材である柱や梁として用いられる。本実施形態では、耐火柱10及び耐火梁20は、耐火柱10が、耐火梁20から上方及び下方に向けて立設した状態で接合された、柱と梁の梁勝ち接合部を形成している。本実施形態の耐火柱10及び耐火梁20は、一般的に流通している幅が例えば45mm〜120mmの構造用木材を用いて、簡易に形成できると共に、3面或いは4面の全体又は略全体を室内に露出させて配置することができ、また火災時に露出した部分が直接加熱を受けて燃焼した場合でも、防耐火性能上の非損傷性(火災加熱を受けても建物を支える荷重に耐えたまま、崩壊しない性能)を十分に確保できるようにする機能を備える。
【0027】
そして、本実施形態の耐火柱10は、45分準耐火構造以上の耐火性能を備える建築物として、例えば木造の住宅建築物において用いる柱部材であって、
図1及び
図2に示すように、矩形の断面形状を有する構造柱材11と、構造柱材11の対向する一方の一対の側面部11a,11aを覆って各々配置された、これらの側面部11a,11aの幅b3と同様の幅の側面部12aを備え、矩形の断面形状を有する一対の燃えしろ用添え柱材12と、構造柱材11の対向する他方の一対の側面部11b,11b及び両側の燃えしろ用添え柱材12の端面部12bを、連続して覆い隠すようにして取り付けられた、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える耐火被覆材13とを含んで構成されている。
【0028】
本実施形態では、耐火柱10は、耐火被覆材13の構造柱材11及び燃えしろ用添え柱材12を覆い隠す面13b以外の外周面13cを覆って、化粧用木板材14が取り付けられている。
【0029】
また、本実施形態の耐火梁20は、45分準耐火構造以上の耐火性能を備える建築物として、例えば木造の住宅建築物において用いる梁部材であって、
図1及び
図3に示すように、矩形の断面形状を有する構造梁材21と、構造梁材21の対向する一対の側面部21a,21aを覆って各々配置された、これらの側面部21a,21aの縦幅b2と同様の縦幅の側面部22aを備え、矩形の断面形状を有する一対の燃えしろ用添え梁材22と、構造梁材21の下面部21b及び両側の燃えしろ用添え梁材22の下面部22bを、連続して覆い隠すようにして取り付けられた、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える耐火被覆材23とを含んで構成されている。
【0030】
本実施形態では、耐火梁20は、耐火被覆材23の構造梁材21及び燃えしろ用添え梁材22を覆い隠す面23b以外の外周面23cを覆って、化粧用木板材24が取り付けられている。
【0031】
本実施形態では、耐火柱10を構成する構造柱材11は、骨組み構造を構成する構造用木材として公知の、種々の材質の柱材を用いて形成することができる。構造柱材11は、好ましくは、例えば特開2007−268731号公報に記載されるような、小径木の丸太から製材した帯状の板材を、接着剤を介して複数重層することによって得られる集成材を用いて形成することができる。構造柱材11は、構造用木材として一般的に流通している、幅が例えば45mm〜120mmの構造用木材を、単独で、又は幅方向に重ね合わせて用いることで、例えば構造用木材の幅方向の幅(横幅)b2が45mm〜2000mm程度、構造用木材の幅方向と垂直な方向の幅(縦幅)b1が90〜2000mm程度の大きさの、矩形(正方形を含む)の断面形状を有すると共に、例えば200mm〜13000mm程度の長さを有するように形成されている。
【0032】
より具体的には、構造柱材11は、
図2に示すように、本実施形態では、高さが555mmとなるように加工された、例えば幅が105mmの3本の第1構造用木材11cと、例えば幅が120mmの2本の第2構造用木材11dとを、構造用木材の幅方向に重ね合わせて配置することで、例えば横幅b2が555mm、縦幅b1が555mm程度の大きさの、矩形の断面形状を有すると共に、3000mmの長さを有するように形成されている。第1構造用木材11cと第2構造用木材11dは、側面同志を互いに密着させた状態で、例えば公知の接着剤や、くぎ、ビス等を用いて、一体として接合できる他、これらの接着剤や、くぎ、ビス等を用いて接合されていない状態で、設けることもできる。
【0033】
また、構造柱材11は、耐火柱10が火災加熱を受けた際に、当該構造柱材11のみによって、建物自体の重量や、風荷重等を支持するのに十分な大きさの断面形状を備えるように断面設計されて、形成されている。
【0034】
構造柱材11と共に本実施形態の耐火柱10を構成する燃えしろ用添え柱材12は、構造柱材11を挟んだこれの横幅b2方向の両側に配置される角材であって、火災加熱時に耐火柱10の燃えしろ領域を形成するのに十分な厚さ(幅)を有している。また、燃えしろ用添え柱材12は、燃えしろ領域としての機能が確実にかつ効果的に発揮されるようにすると共に、火災加熱時に構造柱材11に損壊や熱劣化が生じないよう強固に防護できるように、比重が0.4以上の木材を用いて形成されていることが好ましい。燃えしろ用添え柱材12は、このような木材として、カラマツ、ダフリカカラマツ、ベイマツ、エゾマツ、トドマツ、オウシュウアカマツ、ヒノキ、スプルース、或いはスギの集成材、製材、又は単板積層材を用いて形成することができ、特に、入手が容易なカラマツ集成材を用いて形成することができる。
【0035】
さらに、燃えしろ用添え柱材12は、構造柱材11の対向する一方の一対の側面部11a,11aである、構造柱材11の横幅b2方向(構造用木材の幅方向)に対向する一対の側面部11a,11aの全体を各々覆うことができるように、これらの側面部11a,11aの縦幅b1と同様の縦幅の側面部12aを備えると共に、矩形(正方形を含む)の断面形状を有するように形成されている。すなわち、燃えしろ用添え柱材12は、本実施形態では、好ましくはカラマツ集成材等の比重が0.4以上の木材からなる構造用木材として一般的に流通している、幅が例えば45mm〜120mmの構造用木材を、構造柱材11の側面部11a,11aの縦幅b1と同様の、90mm〜2000mm程度の高さとなるように加工して用いられている。
【0036】
より具体的には、燃えしろ用添え柱材12は、本実施形態では、高さが、構造柱材11の側面部11a,11aの縦幅b1と同様の、555mmとなるように加工された、例えば幅が105mmの、好ましくはカラマツ集成材によって形成されている。燃えしろ用添え柱材12は、これの側面部12aを構造柱材11の側面部11a,11aに密着させた状態で、例えば公知の接着剤や、くぎ、ビス等を用いて、構造柱材11に一体として接合できる他、これらの接着剤や、くぎ、ビス等を用いて接合されていない状態で、設けることもできる。
【0037】
また、燃えしろ用添え柱材12は、耐火柱10が火災加熱を受けた際に、建物自体の重量や風荷重等を支持しない部分として取り扱って、耐火柱10の断面設計が行われる。また燃えしろ用添え柱材12は、火災加熱を受けていない平常時においては、構造柱材11を補助して地震荷重等を支持することが可能な部分として取り扱って、耐火柱10の断面設計を行なうことができる。これによって、より効率の良い耐火柱10の断面設計を行なうことが可能になる。
【0038】
構造柱材11及び燃えしろ用添え柱材12と共に耐火柱10を構成する耐火被覆材13は、構造柱材11を挟んだこれの縦幅b1方向(構造用木材の幅方向と垂直な方向)の両側に配置されて、火災加熱時に火災加熱による影響が、構造柱材11の他方の一対の側面部11b,11bに及ばないように防護する部材である。耐火被覆材13は、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備えている。耐火被覆材13は、構造柱材11の対向する他方の一対の側面部11b,11bである、構造柱材11の縦幅b1方向に対向する一対の側面部11b,11bと、両側の燃えしろ用添え柱材12の端面部12bとを、連続して覆い隠すようにして、当該耐火被覆材13が勝った状態で取り付けられている。本実施形態では、耐火被覆材13は、両側の燃えしろ用添え柱材12の端面部12bの外側角部分に、後述する化粧用木板材14の厚さ分の取付けしろ12cを残した状態で、構造柱材11の側面部11b,11bと両側の燃えしろ用添え柱材12の端面部12bとに跨るようにして連続して取り付けられている。
【0039】
また、耐火被覆材13は、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える部材として、好ましくはせっこうボード、強化せっこうボード、ケイ酸カルシウム板、サイディング、モルタル、コンクリート、軽量気泡コンクリート、木片セメント板、木材、難燃木材、グラスウール、ロックウール、又はフェノールフォームを用いて形成ることができる。より具体的には、耐火被覆材13は、本実施形態では、好ましくは厚さが21mmの強化せっこうボード13aを、3枚重ねした状態で取り付けて設けられている。これによって、強化せっこうボード13aの目地をずらした状態で重ね合わせることが可能になって、目地からの熱の流入を低減させることが可能になる。
【0040】
さらに、本実施形態では、耐火被覆材13は、構造柱材11の両側に配置された燃えしろ用添え柱材12の端面部12bに向けて、固定ビス又は固定くぎ(図示せず)を各々打ち込むことによって取り付けられている。これによって、耐火柱10の燃えしろ用添え柱材12が、火災時に熱応力を受けて変形することで、構造柱材11に対して外側に開こうとするのを、耐火被覆材13により拘束することによって抑止して、燃えしろ用添え柱材12と構造柱材11との間に、隙間が生じないようにすることが可能になる。またこれによって、構造柱材11が燃焼により損壊したり熱劣化したりするのを、さらに効果的に回避することが可能になる。
【0041】
本実施形態では、上述のように、構造柱材11の対向する他方の一対の側面部11b,11bと燃えしろ用添え柱材12の端面部12bとに跨るように連続して取り付けられた耐火被覆材13の、構造柱材11及び燃えしろ用添え柱材12を覆い隠す面13b以外の外周面13cを覆って、化粧用木板材14が取り付けられている。化粧用木板材14は、耐火被覆材13が、好ましくは強化せっこうボード13a等の、木材ではない部材によって形成されている場合に、耐火被覆材13を覆い隠して、耐火柱10の4方の周面の全体を、木質材料による外周面とするために取り付けられる。これによって、耐火柱10の意匠性を向上させることが可能になる。化粧用木板材14は、例えば5mm〜20mm程度の厚さの公知の化粧用の木板材として、好ましくは集成材、製材、合板、単板積層材等を用いて形成することができる。
【0042】
化粧用木板材14は、耐火被覆材13の、構造柱材11及び燃えしろ用添え柱材12を覆い隠す面13b以外の外周面13cを同時に覆う形状として、長辺部14aと長辺部14aに対して垂直に張り出した両側の短辺部14bとからなる、横長のコの字断面形状を有している。化粧用木板材14は、例えば接着剤等を介して、耐火被覆材13の外周面13cに沿わせて一体として取り付けられる。上述のように、耐火被覆材13は、両側の燃えしろ用添え柱材12の端面部12bの外側角部分に、取付けしろ12cを残した状態で設けられており、この取付けしろ12cの部分に、化粧用木板材14のコの字断面形状の両側の短辺部14bが装着されることになる。これによって、化粧用木板材14の短辺部14bを、燃えしろ用添え柱材12の外側の側面部12aと面一に配置した状態で、化粧用木板材14を取り付けることが可能になる。またこれによって、耐火柱10の意匠性を、さらに向上させることが可能になる。
【0043】
化粧用木板材14は、横長のコの字断面形状の長辺部14aと、両側の短辺部14bとが、取り付け前に予め一体となって形成されている必要は必ずしも無く、長辺部14aと短辺部14bとを、各々構造柱材11の外周面13cに沿わせるようにして、別々に取り付けることもできる。また、化粧用木板材14のコの字断面形状の両側の短辺部14bにおける、燃えしろ用添え柱材12の外側の側面部12aと面一に配置された接合箇所に、当該接合箇所に沿って周方向に延設させて、凹状の断面形状を有する細長いアクセント用の切欠きを設けておくこともできる。これによって、耐火柱10の木質材料による外周面に、アクセントを加えることが可能になって、耐火柱10の意匠性を、さらに向上させることが可能になる。
【0044】
本実施形態では、耐火梁20を構成する構造梁材21は、構造柱材11と同様に、骨組み構造を構成する構造用木材として公知の、種々の材質の柱材を用いて形成することができる。構造梁材21は、構造柱材11と同様に、好ましくは、例えば特開2007−268731号公報に記載されるような、小径木の丸太から製材した帯状の板材を、接着剤を介して複数重層することによって得られる集成材を用いて形成することができる。構造梁材21は、構造用木材として一般的に流通している、幅が例えば45mm〜120mmの構造用木材を、単独で、又は幅方向に重ね合わせて用いることで、例えば構造用木材の幅方向の幅(横幅)b4が45mm〜2000mm程度、構造用木材の幅方向と垂直な方向の幅(縦幅)b3が90mm〜2000mm程度の大きさの、矩形(正方形を含む)の断面形状を有すると共に、例えば200〜13000mm程度の長さを有するように形成されている。
【0045】
より具体的には、構造梁材21は、
図3に示すように、本実施形態では、高さが1110mmとなるように加工された、例えば幅が105mmの3本の第3構造用木材21cと、例えば幅が120mmの2本の第4構造用木材21dとを、構造用木材の幅方向に重ね合わせて配置することで、例えば横幅b4が555mm、縦幅b3が1110mm程度の大きさの、矩形の断面形状を有すると共に、4000mmの長さを有するように形成されている。第3構造用木材21cと第4構造用木材21dは、側面同志を互いに密着させた状態で、例えば公知の接着剤や、くぎ、ビス等を用いて、一体として接合できる他、これらの接着剤や、くぎ、ビス等を用いて接合されていない状態で、設けることもできる。
【0046】
また、構造梁材21は、耐火梁20が火災加熱を受けた際に、当該構造梁材21のみによって、建物自体の重量や、風荷重等を支持するのに十分な大きさの断面形状を備えるように断面設計されて、形成されている。
【0047】
構造梁材21と共に本実施形態の耐火梁20を構成する燃えしろ用添え梁材22は、構造梁材21を挟んだこれの横幅b4方向の両側に配置される角材であって、火災加熱時に耐火柱20の燃えしろ領域を形成するのに十分な厚さ(幅)を有している。また、燃えしろ用添え梁材22は、燃えしろ用添え柱材12と同様に、燃えしろ領域としての機能が確実にかつ効果的に発揮されるようにすると共に、火災加熱時に構造梁材21に損壊や熱劣化が生じないよう強固に防護できるように、比重が0.4以上の木材を用いて形成されていることが好ましい。燃えしろ用添え梁材22は、燃えしろ用添え柱材12と同様に、このような木材として、カラマツ、ダフリカカラマツ、ベイマツ、エゾマツ、トドマツ、オウシュウアカマツ、ヒノキ、スプルース、或いはスギの集成材、製材、又は単板積層材を用いて形成することができ、特に、入手が容易なカラマツ集成材を用いて形成することができる。
【0048】
さらに、燃えしろ用添え梁材22は、構造梁材21の横幅b4方向(構造用木材の幅方向)に対向する一対の側面部21a,21aの全体を各々覆うことができるように、これらの側面部21a,21aの縦幅b3と同様の縦幅の側面部22aを備えると共に、矩形(正方形を含む)の断面形状を有するように形成されている。すなわち、燃えしろ用添え梁材12は、本実施形態では、好ましくはカラマツ集成材等の比重0.4が以上の木材からなる構造用木材として一般的に流通している、幅が例えば45mm〜120mmの構造用木材を、構造梁材21の側面部21a,21aの縦幅b3と同様の、90mm〜2000mm程度の高さとなるように加工して用いられている。
【0049】
より具体的には、燃えしろ用添え梁材22は、本実施形態では、高さが、構造梁材21の側面部21a,21aの縦幅b3と同様の、1110mmとなるように加工された、例えば幅が105mmの、好ましくはカラマツ集成材によって形成されている。燃えしろ用添え梁材22は、これの側面部22aを構造梁材21の側面部21a,21aに密着させた状態で、例えば公知の接着剤や、くぎ、ビス等を用いて、構造柱材21に一体として接合できる他、これらの接着剤や、くぎ、ビス等を用いて接合されていない状態で、設けることもできる。
【0050】
燃えしろ用添え梁材22は、耐火梁20が火災加熱を受けた際に、建物自体の重量や風荷重等を支持しない部分として取り扱って、耐火梁20の断面設計が行われる。また燃えしろ用添え梁材22は、火災加熱を受けていない平常時においては、構造梁材21を補助して地震荷重等を支持することが可能な部分として取り扱って、耐火梁20の断面設計を行なうことができる。これによって、より効率の良い耐火梁20の断面設計を行なうことが可能になる。
【0051】
構造梁材21及び燃えしろ用添え梁材22と共に耐火梁20を構成する耐火被覆材23は、構造梁材21の下面部21bに配置されて、火災加熱時に火災加熱による影響が、構造梁材21の下面部21bに及ばないように防護する部材である。耐火被覆材23は、耐火柱10の耐火被覆材13と同様に、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備えている。耐火被覆材23は、構造梁材21の下面部21bと、両側の燃えしろ用添え梁材22の下面部22bとを、連続して覆い隠すようにして、当該耐火被覆材23が勝った状態で取り付けられている。本実施形態では、耐火被覆材23は、両側の燃えしろ用添え梁材22の下面部22bの外側角部分に、後述する化粧用木板材24の厚さ分の取付けしろ22cを残した状態で、構造梁材21の下面部21bと両側の燃えしろ用添え梁材22の下面部22bとに跨るようにして連続して取り付けられている。
【0052】
なお、本実施形態では、耐火梁20の上面部分には、耐火梁20の上面を覆い隠すようにして、所定の耐火性能を備える公知の床部材(図示せず)が取り付けられることで、火災加熱時に火災加熱による影響が、上面側からは構造梁材21に及ばないようになっている。これによって、耐火梁20の上面部分には、耐火被覆材を設けなくても、構造梁材21が燃焼により損壊したり熱劣化したりするのを、効果的に防止することができるようになっている。
【0053】
また、耐火被覆材23は、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える部材として、耐火柱10の耐火被覆材13と同様に、好ましくはせっこうボード、強化せっこうボード、ケイ酸カルシウム板、サイディング、モルタル、コンクリート、軽量気泡コンクリート、木片セメント板、木材、難燃木材、グラスウール、ロックウール、又はフェノールフォームを用いて形成ことができる。より具体的には、耐火被覆材13は、本実施形態では、好ましくは厚さが21mmの強化せっこうボード23aを、3枚重ねした状態で取り付けて設けられている。これによって、強化せっこうボード23aの目地をずらした状態で重ね合わせることが可能になって、目地からの熱の流入を低減させることが可能になる。
【0054】
さらに、本実施形態では、耐火被覆材23は、構造梁材21の両側に配置された燃えしろ用添え梁材22の下面部22bに向けて、固定ビス又は固定ビス(図示せず)を各々打ち込むことによって取り付けられている。これによって、耐火梁20の燃えしろ用添え梁材22が、火災時に熱応力を受けて変形することで、構造梁材21に対して外側に開こうとするのを、耐火被覆材23により拘束することによって抑止して、燃えしろ用添え梁材22と構造梁材21との間に、隙間が生じないようにすることが可能になる。またこれによって、構造梁材21が燃焼により損壊したり熱劣化したりするのを、さらに効果的に回避することが可能になる。耐火被覆材23は、燃えしろ用添え梁材22に対して勝った状態で配置されて、当該燃えしろ用添え梁材22の下面部22bに向けて固定ビス又は固定ビスを打ち込むことにより取り付けることができるので、施工現場において先行して設置された構造梁材21や燃えしろ用添え梁材22の下方からの作業によって、スムーズに耐火被覆材23の取付け作業を行うことが可能になる。
【0055】
本実施形態では、上述のように、構造梁材21の下面部21bと燃えしろ用添え柱材22の下面部22bとに跨るように連続して取り付けられる耐火被覆材23の、構造梁材21及び燃えしろ用添え梁材22を覆い隠す面23b以外の外周面23cを覆って、化粧用木板材24が取り付けられている。化粧用木板材24は、耐火柱10の化粧用木板材14と同様に、耐火被覆材23が、好ましくは強化せっこうボード23a等の、木材でない部材によって形成されている場合に、耐火被覆材23を覆い隠して、耐火梁20の上面を除く3方の周面の全体を、木質材料による外周面とするために取り付けられる。これによって、耐火梁20の意匠性を向上させることが可能になる。化粧用木板材24は、例えば5mm〜20mm程度の厚さの公知の化粧用の木板材として、好ましくは集成材、製材、合板、単板積層材等を用いて形成することができる。
【0056】
化粧用木板材24は、耐火被覆材23の、構造梁材21及び燃えしろ用添え梁材22を覆い隠す面23b以外の外周面23cを同時に覆う形状として、長辺部24aと長辺部24aに対して垂直に張り出した両側の短辺部24bとからなる、横長のコの字断面形状を有している。化粧用木板材24は、例えば接着剤等を介して、耐火被覆材23の外周面23cに沿わせて一体として取り付けられる。上述のように、耐火被覆材23は、両側の燃えしろ用添え梁材22の下面部22bの外側角部分に、取付けしろ22cを残した状態で設けられており、この取付けしろ22cの部分に、化粧用木板材24のコの字断面形状の両側の短辺部24bが装着されることになる。これによって、化粧用木板材24の短辺部24bが、燃えしろ用添え梁材22の外側の側面部22aと、面一に配置されるように取り付けることが可能になる。こまたれによって、耐火梁20の意匠性をさらに向上させることが可能になる。
【0057】
化粧用木板材24は、横長のコの字断面形状の長辺部24aと、両側の短辺部24bとが、取り付け前に予め一体として形成されている必要は必ずしも無く、長辺部24aと短辺部24bとを、各々構造梁材21の外周面23cに沿わせるようにして、別々に取り付けることもできる。また、化粧用木板材24のコの字断面形状の両側の短辺部24bにおける、燃えしろ用添え柱材22の外側の側面部22aと面一に配置された接合箇所に、当該接合箇所に沿って周方向に延設させて、凹状の断面形状を有する細長いアクセント用の切欠きを設けておくこともできる。これによって、耐火梁20の木質材料による外周面に、アクセントを加えることが可能になって、耐火梁20の意匠性をさらに向上させることが可能になる。
【0058】
そして、上述の構成を備える本実施形態の耐火柱10又は耐火梁20によれば、防耐火性能上の非損傷性を備える、燃えしろ部分を考慮した柱や梁を、一般的に流通している構造用木材を用いて、安価に且つ効率良く形成することが可能になる。
【0059】
すなわち、本実施形態の耐火柱10は、矩形の断面形状を有する構造柱材11と、構造柱材11の対向する一方の一対の側面部11a,11aを覆って各々配置された、矩形の断面形状を有する一対の燃えしろ用添え柱材12と、構造柱材11の対向する他方の一対の側面部11b,11b及び両側の燃えしろ用添え柱材12の端面部12bを、連続して覆い隠すようにして取り付けられた、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える耐火被覆材13とを含んで構成されている。また本実施形態の耐火梁20は、矩形の断面形状を有する構造梁材21と、構造梁材21の対向する一対の側面部21a,21aを覆って各々配置された、矩形の断面形状を有する一対の燃えしろ用添え梁材22と、構造梁材21の下面部21b及び両側の燃えしろ用添え梁材22の下面部22bを、連続して覆い隠すようにして取り付けられた、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える耐火被覆材23とを含んで構成されている。
【0060】
したがって、本実施形態の耐火柱10又は耐火梁20によれば、矩形の断面形状を有する構造柱材11や構造梁材21、及び矩形の断面形状を有する燃えしろ用添え柱材12や燃えしろ用添え梁材22を、一般的に流通している、幅が例えば45mm〜120mmの構造用木材を用いて、これらの構造用木材を単独で、或いは複数重ね合わせて用いて、簡易に形成することが可能になる。また、構造柱材11や構造梁材21は、耐火柱10や耐火梁20が火災加熱を受けた際に、当該構造柱材11や当該構造梁材21のみによって、建物自体の重量や、風荷重等を支持するのに十分な強度を備えるように断面設計されており、燃えしろ用添え柱材12や燃えしろ用添え梁材22は、火災加熱時に耐火柱20の燃えしろ領域を形成するのに十分な厚さ(幅)を有しており、耐火被覆材13,23は、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備ているので、これらの部材を組み合わせて断面設計することによって、火災時に露出した部分が直接加熱を受けて燃焼した場合でも、防耐火性能上の非損傷性を備える、燃えしろ部分を考慮した耐火柱10又は耐火梁20を、安価に且つ効率良く形成することが可能になる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、耐火被覆材は、燃えしろ用添え柱材の端面部に向けて固定ビス又は固定くぎを各々打ち込むことによって取り付けられている必要は必ずしも無く、接着剤等を用いて取り付けられていても良い。耐火被覆材が例えば木質材等によって形成されている場合には、耐火被覆材の外周面を覆って化粧用木板材を取り付ける必要は必ずしも無い。本発明の耐火柱や耐火梁が用いられる45分準耐火構造以上の耐火性能を備える建築物は、木造建築物である必要は必ずしも無く、鉄骨製や鉄筋コンクリート製等の建築物において、例えば和風の居室空間を設ける際に、本発明の耐火柱や耐火梁を採用することもできる。
【0062】
また、本発明の耐火柱や耐火梁は、上記実施形態のような断面形状を有している必要は必ずしも無い。例えば
図4に示すように、構造柱材11’を正方形の断面形状を備える単独の構造用木材を用いて形成すると共に、燃えしろ用添え柱材12’を構造柱材11’と同様の正方形の断面形状を備える構造用木材を用いて形成することもできる。例えば
図5に示すように、構造梁材21’を単独の構造用木材を用いて形成すると共に、燃えしろ用添え梁材22’を構造柱材21’と同様の断面形状を備える構造用木材を用いて形成することもできる。例えば
図6に示すように、構造梁材21”の上端部分を天井裏部分30に配置すると共に、天井裏部分には火災加熱が及ばないようにして、天井裏部分の燃えしろ用添え梁材や耐火被覆材を省略することもできる。