(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6308981
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】抵抗負荷に供給する三相交流電流の電力測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 21/06 20060101AFI20180402BHJP
【FI】
G01R21/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-137417(P2015-137417)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-20848(P2017-20848A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】高松 俊輔
【審査官】
越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−280654(JP,A)
【文献】
特開2000−266788(JP,A)
【文献】
特開2001−359297(JP,A)
【文献】
特開2005−189012(JP,A)
【文献】
特開2010−110936(JP,A)
【文献】
特開2014−008747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R線、S線、T線からなる三相3線式の三相交流電線において、R線−S線間、S線−T線間、T線−R線間のそれぞれに接続されて独立してON/OFFされる複数個の抵抗のみからなる負荷について、その電力を得る電力測定方法であって、
R線の線電流と、S線の線電流と、R線−T線間の線間電圧と、S線−T線間の線間電圧とから2電力法によって前記負荷の電力を得るとき、
前記R線の線電流と前記S線の線電流は、R線とS線のそれぞれに設けた電流センサによって検出するようにし、
前記R線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつR線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記R線の線電流にR線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる計算により得るようにし、その状態以外のときはこのように計算により得た電圧の波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにし、
前記S線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつS線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記S線の線電流にS線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる計算により得るようにし、その状態以外のときはこのように計算により得た電圧の波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにすることを特徴とする電力測定方法。
【請求項2】
R線、S線、T線からなる三相3線式の三相交流電線において、R線−S線間、S線−T線間、T線−R線間のそれぞれに接続されて独立してON/OFFされる複数個の抵抗のみからなる負荷について、その電力を得る電力測定方法であって、
R線の線電流と、S線の線電流と、R線−T線間の線間電圧と、S線−T線間の線間電圧とから2電力法によって前記負荷の電力を得るとき、
前記R線の線電流と前記S線の線電流は、R線とS線のそれぞれに設けた電流センサによって検出するようにし、
前記R線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつR線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記R線の線電流にR線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる第1の計算により得、その状態以外のときはR線−T線間の標準電圧波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにし、
前記R線−T線間の標準電圧波形は、前記第1の計算により得た前記R線−T線間の線間電圧の電圧波形においてその電圧値がゼロになる所定のゼロクロス点から次のゼロクロス点までの半周期分または所定のゼロクロス点から2個先のゼロクロス点までの1周期分について抽出したものであり、
前記S線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつS線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記S線の線電流にS線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる第2の計算により得、その状態以外のときはS線−T線間の標準電圧波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにし、
前記S線−T線間の標準電圧波形は、前記第2の計算により得た前記S線−T線間の線間電圧の電圧波形の電圧値がゼロになる所定のゼロクロス点から次のゼロクロス点までの半周期分または所定のゼロクロス点から2個先のゼロクロス点までの1周期分について抽出したものであることを特徴とする電力測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記負荷が複数の単相ヒータからなることを特徴とするヒータの電力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電流によって抵抗のみからなる負荷に電力を供給するとき、負荷における電力を計算する電力測定方法に関するものであり、より詳しくは、三相3線式の三相交流電線において、複数の単相ヒータ等の抵抗負荷が設けられ、これらがR線、S線、T線のいずれか2線間に接続されて電力が供給されるとき、これらの抵抗負荷の合計電力を測定する電力測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗のみからなる負荷に三相3線式の三相交流電線によって電力を供給することは広く実施されている。例えば抵抗のみからなる負荷として、射出成形機の加熱シリンダに設けられている複数のヒータをあげることができる。加熱シリンダには複数のヒータが巻かれているが、これらのヒータはいわゆる単相ヒータからなり、三相交流電線を構成しているR線、S線、T線のいずれか2線間に接続されている。そしてこれらの各ヒータにはソリッドステートリレーあるいは電磁接触器が設けられ、PWM制御によってON/OFFされるようになっている。PWM制御は、制御周期に対して電流を供給する通電時間の占める割合、すなわちデューティー比を調整する制御であり、ヒータへの電力供給を調整している。このようにして複数のヒータへ電力が供給されるとき、これらの合計の電力は、周知のように2組の線間における線間電圧と、2線における線電流を測定して、いわゆる2電力法によって計算することができる。この場合2個の電圧センサと、2個の電流センサとが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−359297号公報
【特許文献2】特開2000−266788号公報
【特許文献3】特開2005−189012号公報
【0004】
抵抗のみからなる負荷に限定されないが、一般的な負荷に対して三相交流電流を供給するとき、その電力を測定する方法が、色々な特許文献において提案されている。特許文献1に記載の電力測定方法も、特許文献2に記載の電力測定方法も類似した方法であり、いずれにおいても線電流については2線において測定するが線間電圧は1組の線間しか測定しない。例えば、S線とT線のそれぞれにおいては線電流を測定するが、線間電圧はT線−R線間についてのみ測定する。そしてT線−R線間の線間電圧についてはこれを測定せず、R線−S線間の線間電圧が2/3πだけ位相がずれていると仮定して線間電圧を仮想的に定める。このように定めると、2組の線間における線間電圧と2線における線電流が得られるので、2電力法によって電力を計算することができる。
【0005】
特許文献3に記載の電力測定方法は、主系統の三相3線式の三相交流電線から複数の三相交流電線が分岐し、それらの分岐のそれぞれに負荷が設けられているとき、分岐のそれぞれについて電力を測定する方法を対象としている。特許文献3に記載の方法では、主系統の三相交流電線に設ける主装置と、それぞれの分岐の三相交流電線に設ける個別計測装置とによって電力を測定するようにしているが、線間電圧の測定は主装置においてのみ、つまり主系統の三相交流電線においてのみ実施し、それぞれの個別計測装置においては、その分岐の三相交流電線の線電流のみ測定する。そして主装置は測定した線間電圧の波形から、そのゼロクロス点のタイミングと正負の極性を抽出してそれぞれの個別計測装置に送信する。個別計測装置においてはこれを受信して、仮の実効値を与えて仮想的な線間電圧の電圧波形を計算し、この仮想的な電圧波形と、実際に測定した線電流とから仮想的な電力を計算する。そして最後に、主装置で検出される三相交流電圧の実効値をもとに、仮想的な電力から正確な電力を計算する。このようにすると、線間電圧については主系統でのみ測定すればいいので、電圧センサの個数が少なくて済み、コストが小さくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の、2組の線間における線間電圧と2線における線電流とを測定して2電力法によって電力を計算する方法も、特許文献1または2に記載の電力測定方法も、特許文献3に記載の電力測定方法も、適切に電力を計算することができる。そして、いずれの方法も負荷の種類に拘わらずに電力を計算することができ、それぞれ優れている。しかしながら、特定の条件下においては解決すべき問題も見受けられる。具体的には、負荷が抵抗のみからなる場合において、電力計算に必要なコストをさらに小さくできる余地が見受けられる。例えば射出成形機の射出装置に設けられているヒータは、三相交流電線に接続されて電力が供給される負荷であり、抵抗のみからなる。このように負荷が抵抗のみからなる場合に、電力を測定するのに要するコストを小さくしたい。従来の電力測定方法においては、少なくとも2個の電圧センサと2個の電流センサが必要になり、センサ個数が多くコストは大きい。特許文献1または2に記載の電力測定方法では、1個の電圧センサと2個の電流センサだけで電力が測定できるので、センサの個数は従来の電力測定方法に比して1個少なくて済むが、さらにコストを小さくできる余地はありそうである。特許文献3に記載の電力測定方法では電圧センサは主装置にのみ設ければよく、個別計測装置では省略できるのでコストをある程度小さくすることはできるが、少なくとも主装置においては2組の線間電圧を測定するために2個の電圧センサは必要であるので、これもさらにコストを小さくできる余地がありそうである。
【0007】
本発明は、上記したような問題点を解決した、電力測定方法を提供することを目的としており、具体的には、三相交流電流によって抵抗のみからなる負荷に電力を供給するときに、小コストで電力を測定できる電力測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、R線、S線、T線からなる三相3線式の三相交流電線において、複数個の抵抗のみからなる負荷が接続されているときの電力測定方法として構成される。このような抵抗は、R線−S線間、S線−T線間、T線−R線間のそれぞれに接続されて独立してON/OFFされるようになっている。電力測定方法は、2電力法によって計算するようにし、まずR線の線電流とS線の線電流は、R線とS線のそれぞれに設けた電流センサによって検出する。しかしながらR線−T線間の線間電圧、S線−T線間の線間電圧は、センサによってではなく計算によって得るようにする。具体的には、R線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通のとき
であってかつR線−T線間の抵抗がONのときに、R線の線電流にR線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じて電圧波形を得る。そして
それ以外のときも該電圧波形が同位相と
同振幅で継続すると見なす。S線−T線間の線間電圧も同様に計算によって得るようにし、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通のとき
であってかつS線−T線間の抵抗がONのときはS線の線電流にS線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じて電圧波形を得る。そして
それ以外のときも該電圧波形が同位相と
同振幅で継続すると見なす。このようにして得られたR線の線電流とS線の線電流とR線−T線間の線間電圧とS線−T線間の線間電圧とから2電力法によって負荷の電力を得る。
【0009】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、R線、S線、T線からなる三相3線式の三相交流電線において、R線−S線間、S線−T線間、T線−R線間のそれぞれに接続されて独立してON/OFFされる複数個の抵抗のみからなる負荷について、その電力を得る電力測定方法であって、R線の線電流と、S線の線電流と、R線−T線間の線間電圧と、S線−T線間の線間電圧とから2電力法によって前記負荷の電力を得るとき、前記R線の線電流と前記S線の線電流は、R線とS線のそれぞれに設けた電流センサによって検出するようにし、前記R線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつR線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記R線の線電流にR線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる計算により得るようにし、その状態以外のときはこのように計算により得た電圧の波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにし、前記S線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつS線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記S線の線電流にS線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる計算により得るようにし、その状態以外のときはこのように計算により得た電圧の波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにすることを特徴とする電力測定方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、R線、S線、T線からなる三相3線式の三相交流電線において、R線−S線間、S線−T線間、T線−R線間のそれぞれに接続されて独立してON/OFFされる複数個の抵抗のみからなる負荷について、その電力を得る電力測定方法であって、R線の線電流と、S線の線電流と、R線−T線間の線間電圧と、S線−T線間の線間電圧とから2電力法によって前記負荷の電力を得るとき、前記R線の線電流と前記S線の線電流は、R線とS線のそれぞれに設けた電流センサによって検出するようにし、前記R線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつR線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記R線の線電流にR線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる
第1の計算により得
、その状態以外のときはR線−T線間の標準電圧波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにし、前記R線−T線間の標準電圧波形は、前記第1の計算により得た前記R線−T線間の線間電圧の電圧波形においてその電圧値がゼロになる所定のゼロクロス点から次のゼロクロス点までの半周期分または所定のゼロクロス点から2個先のゼロクロス点までの1周期分について
抽出したものであり、前記S線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつS線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記S線の線電流にS線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる
第2の計算により得
、その状態以外のときはS線−T線間の標準電圧波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにし、前記S線−T線間の標準電圧波形は、前記第2の計算により得た前記S線−T線間の線間電圧の電圧波形の電圧値がゼロになる所定のゼロクロス点から次のゼロクロス点までの半周期分または所定のゼロクロス点から2個先のゼロクロス点までの1周期分について
抽出したものであることを特徴とする電力測定方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の方法において、前記負荷が複数の単相ヒータからなることを特徴とするヒータの電力測定方法として構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本願発明によると、R線、S線、T線からなる三相3線式の三相交流電線において、R線−S線間、S線−T線間、T線−R線間のそれぞれに接続されて独立してON/OFFされる複数個の抵抗からなる負荷について、その電力を得る電力測定方法として構成されている。つまり本発明の電力測定方法は、三相3線式の三相交流電線によって、抵抗のみからなる負荷に電力を供給する場合を対象としている。そして本発明によると、R線の線電流とS線の線電流は、R線とS線のそれぞれに設けた電流センサによって検出するようにしている。つまり電流センサは2個必要になる。しかしながら本発明によると、R線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通のとき
でありかつR線−T線間の抵抗がONである状態のときはR線の線電流にR線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じ
る計算により得るようにし、
その状態以外のとき
はこのように計算により得た電圧の波形が同位相と
同振幅で継続すると見なす。つまりR線−T線間の線間電圧を測定するために格別に電圧センサを必要としない。同様にS線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通
でありかつS線−T線間の抵抗がONである状態のときは前記S線の線電流にS線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じ
る計算により得るようにし、その状態以外のとき
はこのように計算により得た電圧の波形が同位相と
同振幅で継続すると見なし
て得るようにする。つまりS線−T線間の線間電圧も、格別に電圧センナを必要とせずに得られる。本発明は、このようにして得られたR線の線電流と、S線の線電流と、R線−T線間の線間電圧と、S線−T線間の線間電圧とから2電力法によって負荷の電力を得るように構成されているので、必要とするセンサは2個の電流センサだけで済む。電力測定に要するコストが小さいという本発明に特有の効果が得られる。
【0011】
他の発明によると、R線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつR線−T線間の抵抗がONである状態のときはR線の線電流にR線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる
第1の計算により得
、その状態以外のときはR線−T線間の標準電圧波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにし、R線−T線間の標準電圧波形は、第1の計算により得たR線−T線間の線間電圧の電圧波形においてその電圧値がゼロになる所定のゼロクロス点から次のゼロクロス点までの半周期分または所定のゼロクロス点から2個先のゼロクロス点までの1周期分について
抽出したものであり、S線−T線間の線間電圧は、R線−S線間の抵抗がOFFでR線−S線間が不導通でありかつS線−T線間の抵抗がONである状態のときはS線の線電流にS線−T線間のON状態の抵抗の抵抗値を乗じる
第2の計算により得
、その状態以外のときはS線−T線間の標準電圧波形が同位相と同振幅で継続すると見なして得るようにし、S線−T線間の標準電圧波形は、第2の計算により得たS線−T線間の線間電圧の電圧波形の電圧値がゼロになる所定のゼロクロス点から次のゼロクロス点までの半周期分または所定のゼロクロス点から2個先のゼロクロス点までの1周期分について
抽出したものであるように構成されている。このようにすると、少なくとも標準電圧波形について記憶するようにするだけで、仮想的に電圧波形を生成することができるので、さらに電力測定方法がシンプルになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】複数の抵抗が接続された三相3線式の三相交流電線に設けられている、本発明の実施の形態に係る電力測定装置の一部を示す図で、その(ア)〜(エ)は、各抵抗のON/OFF状態が異なる4種類のケースのそれぞれについて示す、電力測定装置の一部を示す回路図である。
【
図2】複数の抵抗が接続された三相3線式の三相交流電線に設けられている、本発明の実施の形態に係る電力測定装置の一部を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電力測定方法において測定されるR線、S線の線電流と、計算によって得られるR線−T線間、S線−T線間の線間電流を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電力測定方法において計算によって得られるR線−T線間の線間電流を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係る電力測定装置1は、
図1の(ア)に示されているように、R線、S線、T線からなる三相3線式の三相交流電線に設けられている。そして、電力測定装置1が電力を測定する対象の負荷は、独立してON/OFFされる抵抗2、3、4のみからなる。本実施の形態において、抵抗2、3、4はいわゆるPWM制御によりON/OFFされるヒータ2、3、4からなる。つまり、本実施の形態に係る電力測定装置1は複数個のヒータからなる負荷の電力を測定する電力測定装置になっている。これらのヒータ2、3、4はR線、S線、T線のそれぞれ2線間、つまりR線−S線間、S線−T線間、T線−R線間に接続されている。ところで
図1の(ア)においては、任意の2線間に接続されているヒータは1個のみから構成されているように示されている。もちろんそれぞれの2線間にヒータが1個のみ接続されるようにしてもいいが、一般的にはそれぞれの2線間に複数個のヒータが並列に接続されている。例えば
図2に示されているように、R線−S線間に3個のヒータ2a、2b、2cが並列に接続され、S線−T線間に3個のヒータ3a、3b、3cが接続され、T線−R線間に2個のヒータ4a、4bが接続されている。
図1の(ア)に示されているヒータ2、3、4は、それぞれ
図2に示されているように並列に接続された複数個のヒータ2a、2b、…4a、4bを簡略化して示したものになっている。これらのヒータ2a、2b、…は、図に示されていないソリッドステートリレーによって独立してON/OFFされるようになっている。
図2において、ヒータ2a、2b、2c、3c、4bはOFFされている状態を、ヒータ3a、3b、4aはONされている状態が示されているが、これによってR線−S線間が不導通の状態に、S線−T線間、T線−R線間は導通した状態になっている。この状態を簡略的に示した図が
図1の(イ)である。つまり、ヒータ2がOFFでR線−S線間が不導通の状態に、ヒータ3、4がONでS線−T線間、T線−R線間が導通の状態になっている。
【0014】
本実施の形態に係る電力測定装置1は、R線とS線のそれぞれに設けられている2個の電流センサ6、7と、図に示されていないコントローラとから構成されている。コントローラは、電流センサ6、7によって検出されるR線、S線の線電流が入力され、そしてヒータ2、3、4、つまりヒータ2a、2b、…4a、4bのそれぞれの抵抗値が記憶されている。またコントローラは、ヒータ2a、2b、…4a、4bのON/OFF状態が検出できるようになっている。本実施の形態においてはヒータ2a、2b、…4a、4bをPWM制御しているのは、このコントローラでもあるので、コントローラは当然にON/OFF状態を検出できる。
【0015】
一般的に、三相3線式の三相交流電線から負荷に電力を供給するとき、合計の電力はいわゆる2電力法によって計算することができ、この場合2線における線電流と2組の線間電圧とが必要になる。本実施の形態に係る電力測定方法も2電力法により電力を計算するが、2組の線間電圧は直接測定せず、計算によって得るようにする点に特徴がある。計算によって得ることが可能であるのは、電力を測定する対象の負荷が抵抗のみから、つまりヒータ2、3、4のみからなるからである。負荷が抵抗のみから構成されているので、抵抗のON/OFFが所定の状態になっているときに電流と電圧の位相が一致する。具体的には、
図1の(イ)、
図2に示されているように、R線−S線間のヒータ2、つまりヒータ2a、2b、2cがOFFされてR線−S線間が不導通の状態において、R線の線電流とR線−T線間の線間電圧、そしてS線の線電流とS線−T線間の線間電圧のそれぞれが完全に位相が一致する。その理由は、R線−S線間が不導通の状態においては、R線の線電流はR線−T線間にのみ、S線の線電流はS線−T線間にのみそれぞれ流れ、負荷には位相の進みや遅れを生じさせるコンデンサやリアクタンスが含まれないからである。本実施の形態に係る電力測定方法では、このようにR線−S線間が不導通の状態のときに、R線、S線のそれぞれの線電流からR線−T線間とS線−T線間の線間電圧の電圧波形を計算で得るようにする。そしてR線−S線が導通状態になっているときには、計算で得た電圧波形が同位相と振幅で継続すると見なすようにする。これによって2電力法で電力を計算することができる。
【0016】
図3のグラフも参照して、本実施の形態に係る電力測定方法を詳しく説明する。本実施の形態に係る電力測定装置1では、電流センサ6、7によって常時R線の線電圧、S線の線電流がサンプリングされてコントローラに入力されている。サンプリングされているR線、S線の線電流は符号11、12のグラフで示されている。各ヒータ2、3、4は前記したようにPWM制御によりON/OFFされているので、
図1の(イ)、
図2に示されているように、ヒータ2つまりヒータ2a、2b、2cが全てOFFされる状態が発生する。もし、ヒータ2a、2b、2cが同時にOFFされる状態が発生しなければ、強制的に所定の時間だけこれらをOFFするようにする。このようにヒータ2つまりヒータ2a、2b、2cがOFFされているとき、R線−S線間が不導通の状態になる。
図3のグラフにおいて、符号14、15の区間がR線−S線間が不導通の状態になっている。この区間においてはR線の線電圧とR線−T線間の線間電圧、そしてS線の線電圧とS線−T線間の線間電圧のそれぞれの位相が一致する。そこでこの区間14、15において、次式によって線間電圧を得る。
R線−T線間の線間電圧=R線の線電流×ヒータ4の抵抗値
S線−T線間の線間電圧=S線の線電流×ヒータ3の抵抗値
ただし、ヒータ4の抵抗値は、R線−T線間の全てのヒータ4a、4bのうちON状態のヒータの合成抵抗値であり、ヒータ3の抵抗値はヒータ3a、3b、3cのうちON状態のヒータの合成抵抗値である。
図3において、上の式で得たR線−T線間の線間電圧の電圧波形が符号18の実線のグラフで、S線−T線間の線間電圧の電圧波形が符号19の実線のグラフで示されている。これらのグラフ18、19は曲線で示されているが、実際にはR線、S線の線電流はサンプリング値として検出されるので、R線−T線間の線間電圧もS線−T線間の線間電圧も
図4に示されているような複数個のサンプリング値として得られることになる。
【0017】
本実施の形態に係る電力測定方法では、このようにして計算で得られたR線−T線間の線間電圧の電圧波形とS線−T線間の線間電圧の電圧波形のそれぞれは、R線−T線間が導通状態になっても、同位相かつ同振幅で継続するものとみなす。そうすると、符号21、22の二点鎖線のグラフで示されているようにR線−T線間の線間電圧の電圧波形とS線−T線間の線間電圧の電圧波形が得られる。
【0018】
もちろん、このようにして符号21、22の二点鎖線のグラフのようなR線−T線間の線間電圧の電圧波形とS線−T線間の線間電圧の電圧波形を得てもいいが、本実施の形態に係る電力測定方法では、さらに工夫している。つまりこれらの符号21、22の電圧波形は、次のような標準電圧波形から得るようにする。標準電圧波形とはR線−S線間が不導通の期間において、R線−T線間の線間電圧やS線−T線間の線間電圧の電圧値がゼロになる所定のゼロクロス点から次のゼロクロス点までの半周期分の電圧波形、もしくは所定のゼロクロス点から2個先のゼロクロス点までの1周期分の電圧波形のことをいう。まず、区間14、15において、符号18、19で示されているR線−T線間の線間電圧とS線−T線間の線間電圧のそれぞれの電圧波形から標準電圧波形を抽出する。
図4のグラフは、S線−T線間の線間電圧の半周期分の標準電圧波形を示している。そして、本実施の形態に係る電力測定方法では、このような標準電圧波形が、R線−S線間が導通状態になっているときも同位相でかつ同振幅で継続するとみなし、符号21、22で示されているR線−T線間の線間電圧の電圧波形とS線−T線間の線間電圧の電圧波形を得る。
【0019】
符号16で示されているように、再びR線−S線間が不導通の状態になったら、前記した計算式によって、R線、S線の線電圧と、所定の抵抗値とからR線−T線間の線間電圧とS線−T線間の線間電圧とを得るようにし、それぞれの標準電圧波形を更新する。以後同様にしてR線−T線間の線間電圧とS線−T線間の線間電圧とを得る。このように繰り返し標準電圧波形を更新することによって、得られる線間電圧の精度を維持できることになる。
【0020】
本実施の形態に係る電力測定装置1は、電流センサ6、7から検出されるR線の線電流とS線の線電流と、上記のようにして得られるR線−T線間の線間電圧とS線−T線間の線間電圧とから2電力法によって負荷の電力を計算する。
【0021】
ところで、
図1の(ウ)に示されているように、ヒータ4がOFFでR線−T線間が不導通の状態のときには、R線−S線間が不導通であってもR線の線電流は検出できないのでR線−T線間の線間電圧はゼロになる。同様に
図1の(エ)に示されているように、ヒータ3がOFFでS線−T線間が不導通の状態のときには、R線−S線間が不導通であってもS線の線電流は検出できないのでS線−T線間の線間電圧はゼロになる。そうするとこれらのケースにおいては上で説明した標準電圧波形が得られないことになる。そこで、確実にR線−T線間の線間電圧の標準電圧波形を得るには、R線−
S線間のヒータ2がOFFでR線−
S線間が不導通状態であり、かつR線−T線間のヒータ4がONでR線−T線間が導通状態において得るようにすればよく、同様にS線−T線間の線間電圧の標準電圧波形を得るには、R線−
S線間のヒータ2がOFFでR線−
S線間が不導通状態であり、かつS線−T線間のヒータ3がONでS線−T線間が導通状態において得るようにすればよい。
【符号の説明】
【0022】
1 電力測定装置
2、3、4 ヒータ
6、7 電流センサ