(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309007
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】粒子状発泡性ポリマー、その生産方法、及びその応用
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20180402BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20180402BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20180402BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20180402BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20180402BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20180402BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20180402BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20180402BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20180402BHJP
【FI】
C08J9/16CFD
C08F2/44 C
C08L101/16
C08L67/04
C08L53/02
C08K3/04
C08K5/01
C08K5/49
C08K3/00
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-527417(P2015-527417)
(86)(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公表番号】特表2015-524874(P2015-524874A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】NL2013050598
(87)【国際公開番号】WO2014027888
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】2009320
(32)【優先日】2012年8月14日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】509287913
【氏名又は名称】シンブラ・テクノロジー・ベスローテン・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ノーデグラーフ、ジャン
(72)【発明者】
【氏名】クイスターマンズ、フランシスカス ペトラス アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】ゲブラード、マティース
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−254831(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/073141(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/082332(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/133035(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/055198(WO,A1)
【文献】
特表2013−514397(JP,A)
【文献】
特表2013−545872(JP,A)
【文献】
特表2013−525538(JP,A)
【文献】
特表2013−510065(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/133034(WO,A1)
【文献】
特表2013−525537(JP,A)
【文献】
特表2009−516019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08F 2/00−2/60
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性能を向上させるために炭素系断熱性能向上材を含む、微細多孔質構造及び低密度を有する難燃性発泡体に加工可能な粒子状発泡性ポリマーであって、
前記粒子状発泡性ポリマーは、前記断熱性能向上材として粒径が1μm未満の炭素系断熱性能向上材を含み、難燃剤として臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)を含むポリ乳酸である
ことを特徴とする粒子状発泡性ポリマー。
【請求項2】
炭素系断熱性能向上材のD50粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項3】
炭素系断熱性能向上材のD50粒径が0.8μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項4】
粒径が0.1〜0.8μmで、アスペクト比が10:1以上で、平板状の炭素の構造を有する膨張黒鉛が炭素系断熱性能向上材として使用されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項5】
膨張黒鉛のアスペクト比が100:1以上であることを特徴とする請求項4に記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項6】
炭素系断熱性能向上材の量が、粒子状発泡性ポリマーの量を基準として、1〜15重量%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項7】
炭素系断熱性能向上材の量が2〜8重量%であることを特徴とする請求項6に記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項8】
粒径が0.1〜0.8μmの膨張黒鉛は、炭素源の機械的せん断により得られることを特徴とする請求項4又は5に記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項9】
炭素系断熱性能向上材の粒径の下限値は0.1μmより大きいことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項10】
前記臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)は、ポリスチレン及び臭素化ポリブタジエンのブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項11】
臭素の重量百分率が、臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)を基準として、60〜70重量%であることを特徴とする請求項10に記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項12】
スチレンの重量百分率が、臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)を基準として、30〜50重量%であることを特徴とする請求項10又は11に記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項13】
前記臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)の分子量が、60000〜150000であることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項14】
臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)の量が、前記粒子状発泡性ポリマーの総重量を基準として、0.7〜2.2重量%であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項15】
ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)の量が、前記粒子状発泡性ポリマーの総重量を基準として、1.0重量%未満であることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマー。
【請求項16】
ポリマーが押出機に供給され、少なくとも発泡剤、臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、粒径が1μm未満の炭素、及び1以上の他の所望の助剤と混合された後、押出され、冷却され、更に粒子に縮小されることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマーの生産方法。
【請求項17】
モノマー、発泡剤、臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、及び粒径が1μm未満の炭素、及び1以上の他の所望の助剤が反応器内で重合され、後続のステップにおいてオプションで冷却され、更に粒子に縮小されることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマーの生産方法。
【請求項18】
グラファイト、カーボンブラック、粉末アルミニウム、Al(OH)3、Mg(OH)2、Al2O3、鉄、亜鉛、銅、及びこれらの合金を含む群から選択された1以上の断熱性能向上材が前記助剤として更に添加されることを特徴とする請求項16又は17に記載の粒子状発泡性ポリマーの生産方法。
【請求項19】
ポリホスホネート、ジフェニルホスホネート、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、及びレゾルシノール芳香族ポリホスフェート化合物、又はこれらの組合せを含む群から選択されたリン化合物が前記助剤として添加されることを特徴とする請求項16から18のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマーの生産方法。
【請求項20】
請求項1から15のいずれかに記載の粒子状発泡性ポリマー系のポリマー発泡材。
【請求項21】
難燃剤として臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)を含む、ポリ乳酸の粒子状発泡性ポリマー系の難燃性発泡材の断熱性能向上のために、その中への、粒径が1μm未満の炭素系断熱性能向上材の利用。
【請求項22】
建設業における請求項21に記載の利用。
【請求項23】
包装業における請求項21に記載の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を向上させるために断熱性を向上させる炭素系材料を含む、微細多孔質構造及び低密度を有する難燃性発泡材に加工可能な粒子状発泡性ポリマーに関する。本発明は、さらに、粒子状発泡性ポリマーの生産方法と、その方法で得られる発泡材に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥重量を基準とした百分率で、それぞれ80〜99%、3.0〜12%、0.05〜5.0%の範囲の濃度の発泡性ポリマー材料、唯一の望ましい発泡剤としての1,1,2,2−テトラフルオロエタン、及びナノグラファイトを含む熱可塑性ポリマー発泡体を生成するための組成物が、国際公開第2008/119059号により知られている。用いられるナノグラファイトは、少なくとも一つの次元が100nm未満の厚さを有し、好ましくはキャリア、すなわちポリエチレン−アクリル酸メチル共重合体に含まれる多層ナノグラファイトとされる。ナノグラファイトの添加は、最終的な発泡生成物の熱的特性、機械的特性、及び難燃性を改善すると主張されている。
【0003】
国際公開第2007/058736号は、熱的に安定な臭素化共重合体に関する。ここで重合される共重合体は、ブタジエン部分と芳香族ビニル部分を含む。このような共重合体は、燃焼を抑制する量でポリスチレンに添加され、最終的に、混合物の重量で0.1〜25%の範囲の臭素含有量を有する混合物が得られる。
【0004】
米国特許出願公開第2002/0117769号明細書は、熱伝導性を低下させるために、カーボンブラック、酸化チタン、アルミニウム、及びグラファイトなどの添加剤を添加可能な発泡多孔質ポリマー粒子に関する。
【0005】
米国特許出願公開第2012/0123007号明細書は、臭素化難燃剤が添加されたスチレンポリマー組成物に関する。
【0006】
ポリスチレン粒子内に断熱性を向上させる材質として活性炭を含む発泡性ポリスチレン(EPS)が、本出願人による欧州特許第1486530号明細書(NL第1023638号に対応)により知られている。適切な活性炭は、12μm以下の粒度を有する。このような断熱性を向上させる材質の使用により得られる発泡体は、B2試験、すなわちDIN 4102 part2に準じた耐火性要件に適合する。
【0007】
断熱性を向上させる手段として、特定の粒度分布を示す活性炭を使用した発泡性ポリスチレン(EPS)が、本出願人による国際公開第2010/041936号により知られている。
【0008】
スチレンポリマーに対して0.05〜25重量%のグラファイトが添加されたグラファイト含有EPSの生産方法が、米国特許第6130265号明細書により知られている。
【0009】
スチレンポリマーが平均粒径1〜50μmの均質に分散されたグラファイト粒子を0.05〜8重量%含む発泡性ポリスチレンが、米国特許第6340713号明細書により知られている。
【0010】
EPSの断熱性能を向上させる方法自体も、国際公開第00/43442号により知られている。この方法では、スチレンポリマーが押出機内で融解され、少なくとも発泡剤、及び、主にプレートの形態をした6重量%以下のアルミニウム粒子と混合されて共に押し出され、押出物が冷却されて粒子に縮小される。このようなポリマーは、断熱特性を向上させるために、均一に分散され赤外線を反射する材料として組み込まれた粒子の形態のアルミニウムを少なくとも含む。アルミニウム粒子は、大きさが1〜15μmのプレート状の形状を有する。
【0011】
発泡性ポリスチレン(EPS)の製造に使用される出発原料は、前述の国際特許出願により知られている押出プロセスだけでなく、懸濁重合によっても得られる。こうして得られたEPS顆粒は、包装業及び建設業において出発原料として広く使用される。更なる加工のための方法は、膨張容器内で、ある量の蒸気をEPS顆粒層に通すことにより、EPS顆粒に含まれる通常はペンタンである発泡剤を蒸発させて、顆粒を発泡させる予備発泡処理を含む。硬化とも呼ばれる約4〜48時間の保管期間の後、このように予備発泡された顆粒が金型に導入され、蒸気の影響下で更に膨張される。使用される金型は、顆粒が所望の形状に融解する間、まだ存在している発泡剤を膨張の間に逃がすことができるようにする小さな開口を有する。この形状の大きさには原理的には制限がなく、建設業のためのブロックや、食品及び非食品産業のための包装材を得ることが可能である。上述した方法は、国際公開第2008/119059号により知られている、連続的な押出機における単一のステップの処理において連続的に発泡された発泡体に関する方法とは本質的に異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
多くの場合、発泡体の製品には難燃剤が添加される。このような発泡材は、更に製品及び物体に加工されるが、それらの難燃性能は国家当局により規定された要件を満たす必要がある。このような難燃剤は、人間及び環境に対する容認できない化学的影響を有すると推測される。したがって、特定の難燃剤は廃止されている。
【0013】
本発明の一つの目的は、更なる加工後に、所期の断熱特性のための使用に適した、実用的に望まれる十分に低い熱伝導率を有する発泡体が得られるような、粒子状発泡性ポリマー顆粒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の別の態様は、スチレンポリマーを、1以上の更なる成分の存在下で、発泡及び成形後に高い断熱性能を有する材料に変換することが可能な発泡性ポリマー顆粒の製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の態様は、人間及び動物に対して安全で、建設業における現行の安全基準を満たす、低い生体毒性を示す難燃剤が使用される発泡性ポリマー顆粒の製造方法を提供することである。
【0016】
プリアンブルにおいて言及される本発明は、ポリマー粒子が、粒径が1μm未満の炭素を、断熱性能を向上させる材料として含み、難燃剤として臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)を含むことを特徴とする。
【0017】
断熱性能を向上させる材料として、このような種類の炭素を使用することにより、本発明の1以上の態様が満たされる。上述の難燃剤は、建設業における現行の安全基準を満たすための手段とされる上、人間及び環境に対してほとんど影響を与えない。
【0018】
粒径の下限値として好適な値は0.1μmである。本発明は、とくに、炭素源としてのカーボンブラックの使用を除外する。
【0019】
D50粒径は、1μm以下、より具体的には0.8μm以下であることが特に望ましい。
【0020】
D90値及びD50値は、それぞれ、全体のそれぞれ90%及び50%の粒度がこの値より小さいような、90番目及び50番目の百分位数であると理解される。D10(全体の10%がこの粒径よりも小さい)、D50(全体の半分がこの粒径よりも小さい)、及びD90(全体の90%がこの粒径よりも小さい)は、マルバーン社(Malvern Instruments)の製品であるマスターサイザー(登録商標)(Mastersizer)及びLazersizerの使用によって得られる累積分布曲線から容易に推測でき、これらの3つの値(D10、D50、及びD90)は、粉末の粒径分布を特徴付けるために使用されうる。とくに、(D90−D10)/D50(これも粒径分布と呼ばれる)は、粉末に含まれる粒径の広がりについて良好な指標を提供する。
【0021】
言い換えれば、10パーセント点は、10%の粒子の粒径がこの値以下であり、したがって、90%の粒径がこの値より大きいような粒径である。
【0022】
言い換えれば、50パーセント点は、50%の粒子の粒径がこの値以下であり、したがって、50%の粒径がこの値より大きいような粒径である。D50は、好ましくは1.0μm以下であり、とくに好ましくは0.8μm以下である。
【0023】
言い換えれば、90パーセント点は、90%の粒子の粒径がこの値以下であり、したがって、10%の粒径がこの値より大きいような粒径である。
【0024】
ポリスチレン及び臭素化ポリブタジエンのブロック共重合体が、本発明の粒子状発泡性ポリマーにおいて臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)として用いられることが好ましい。
【0025】
臭素の重量パーセントは、臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)を基準として、60〜70重量%の範囲であることが好ましい。臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)を基準とした30〜50重量%の好ましい範囲が、スチレンの重量パーセントとして規定される。
【0026】
特別の実施の形態において、臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)の分子量は、60000〜150000の範囲であることが好ましい。
【0027】
臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)の量は、粒子状発泡性ポリマーの総重量を基準として、0.7〜2.2重量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
特別の実施の形態において、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)の量は、粒子状発泡性ポリマーの総重量を基準に計算して1.0重量%未満であり、とくに0.6重量%未満であり、より具体的には0.2重量%未満であり、好ましくは0.05重量%未満である。
【0029】
上述した値は、ポリマーの互換性、要求される難燃特性、生体毒性、熱安定性、及び持続可能性の観点から、とくに好適であると判明した。
【0030】
本発明において使用されるポリマーは、ポリスチレン、発泡ポリプロピレン(EPP)、発泡多孔性ポリエチレン(EPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリプロピレンオキシド、及びポリ乳酸、又はこれらの組合せを含む群から選択される。
【0031】
ポリ乳酸(PLA)は、乳酸モノマー系ポリマーの集合名であり、その構造は、その組成に依存して、完全なアモルファスから半結晶性又は結晶性まで変化する。ポリ乳酸は、例えば、乳製品、デンプン、小麦粉、及びトウモロコシから製造可能である。乳酸は、ポリ乳酸を構成するモノマーであり、このモノマーには、L−乳酸およびD−乳酸の2つの立体異性体が存在する。そのために、ポリ乳酸には、ある比率のL−乳酸モノマーと、ある比率のD−乳酸モノマーとが含まれる。ポリ乳酸中のL−乳酸モノマーとD−乳酸モノマーの比率によって、ポリ乳酸の特性が決定される。この文脈では、「D値」及び「D含量」(D−乳酸モノマーの百分率)という語も使用される。現在市販で入手可能なポリ乳酸のL:D比は100:0〜75:25であり、言い換えれば、D含量は0〜25%又は0〜0.25である。
【0032】
PLA顆粒の更なる加工の例は以下の通りである。PLA顆粒を、例えば6〜8%の二酸化炭素で含浸後、例えば20barの圧力で発泡させる。その後、PLAを発泡体として再度、例えば6%の二酸化炭素で含浸し、金型内で0.2〜0.5barの圧力の蒸気中で成形する。EPS顆粒に関連して上述した方法と同様に、この方法で成形品が得られる。
【0033】
PLA顆粒は、押出機のダイプレートを使用して製造される。この目的のために、固体のPLAが押出機に導入され、融解される。つづいて、融解されたPLAは、例えば、いわゆる水中造粒機などの金型でプレスされ、PLA顆粒がダイプレートによりカットされる。インライン重合プロセスで、液体のPLAを押出機に直接供給することも可能であり、この場合には、最初に融解させる必要はない。押出機として二軸押出機を用いることが好ましい。押出機中で、ポリ乳酸、又は、ポリ乳酸と、1以上の鎖延長剤、成核剤、及び潤滑剤を選択的に有する選択的な1以上の他の生分解性ポリマーとの混合物を顆粒に加工することができる。こうした粒子状ポリ乳酸も、本発明者らによる国際出願PCT/NL2008/000109号明細書に記載されている。
【0034】
ポリ乳酸の押出後、PLA顆粒を含浸させて発泡剤を添加し、発泡性PLA(EPLA)を得る。使用可能な発泡剤の例として、二酸化炭素、MTBE、窒素、空気、(イソ)ペンタン、プロパン、ブタンなど、又はこれらの1以上の組合せがある。第1の方法は、例えば押出によってポリ乳酸を粒子に成形し、次に、その粒子を発泡剤に含浸させて発泡性とするものである。第2の方法は、ポリ乳酸を発泡剤と混合し、次に、例えば押出によって直接発泡性粒子に成形するものである。
【0035】
本発明者らは、とくに、特定の断熱性能を得るために、ハニカム状の平坦な結晶格子状に配列されたsp2結合炭素原子の一原子厚の平坦な層と考えられるグラフェン又は膨張黒鉛を、通常の最新技術の断熱性能向上材、特にグラファイトや活性炭などの他の炭素源より少ない量で使用することができると考える。追試験によって、本明細書において「グラフェン」と呼ぶ材料は、粒径が0.1〜0.8μmの膨張黒鉛とみなしてもよいことが示された。したがって、本明細書において、「グラフェン」は、粒径が0.1〜0.8μmの膨張黒鉛と理解されるものである。このような断熱性能向上材の添加量の低減によって、元々白色であるEPSの最終的な色に好ましい効果がもたらされる。前述の添加物によって、元々白色のEPSは、多少グレーに「変色」する。
【0036】
したがって、本発明は、とくに、断熱要件及び耐火要件の双方を満たすために、特別な難燃剤と組み合わせられた特別な炭素源、とくに膨張黒鉛の使用に着目する。膨張黒鉛は、少ない量で目立った効果を発揮することができる。この驚くべき結果は、膨張黒鉛の特別な幾何学的デザインのためであると考えられる。特別な炭素源と特定の難燃剤との上述の組み合わせが本発明の本質であると考えられるべきである。
【0037】
本明細書において使用される「膨張黒鉛」という語は、次元及び次元構造に関する限り、国際公開第2008/119059号により知られている「ナノグラファイト」という語と混同しないようにされるべきである。
【0038】
特別の実施形態において、アスペクト比が10:1以上、とくに100:1以上の膨張黒鉛を使用することがとくに望ましい。このような層状構造は、断熱性能の向上にとくに良好な影響を与える。
【0039】
ポリマーを基準として、炭素量が1〜15重量%であることがとくに望ましく、好ましくはポリマーを基準として2〜8重量%である。
【0040】
ある実施形態において、グラファイト、カーボンブラック、粉末アルミニウム、Al(OH)
3、Mg(OH)
2、及び、Al
2O
3、鉄、亜鉛、銅、及びこれらの合金を含む群から選択された1以上の断熱性能向上材が粒子状発泡性ポリマー中に更に存在することが望ましいことは明らかであろう。
【0041】
かつては、良好な難燃効果を得るために、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が難燃剤として用いられた。本発明は、とくに火災の要件に関して、HBCDを含むポリマー生成物に匹敵する最終生成物をもたらす、HBCDの代替物の使用にとくに着目する。とくに、本発明の目的は、HBCDの量を最小限にすることであり、より具体的には、HBCDの量をゼロに減らすことである。
【0042】
得られた生成物が厳格な防火要件を満たす必要がある場合、ジクミルパーオキシド、臭素化ポリマー化合物、とくにポリスチレン化合物、及び2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを含む群から選択された1以上の難燃剤を、ポリマー量を基準として、1.0〜8重量%の範囲で更に補充することが望ましい。また、ポリホスホネート、ジフェニルホスホネート、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノール芳香族ポリホスフェート化合物、及びこれらの組合せを含む群から選択されたリン化合物を助剤として添加することも可能である。
【0043】
本出願で言及される膨張黒鉛は、炭素源に機械的せん断力をかけることによって、とくに、グラファイトにそのような処理を行うことによって得られる。このような処理の一例として押出法があり、この方法によって、グラファイトは、押出機内で大きなせん断力を受け、平坦な炭素プレート、とくに膨張黒鉛に変換される。本発明者らは、上述の平坦な炭素プレートについて、このようなプレートがミラー効果により熱輻射を反射する原因となっていると考える。このため、所期のミラー効果を実現するために、使用される炭素は、やや平坦な次元又は幾何学的形状を有することが望まれる。ある実施形態では、炭素源はマスターバッチとして添加されてもよいし、特許請求の範囲で特定されているような所望の粒径を得るために前処理された粉末材として直接添加されてもよい。
【0044】
本発明は、ポリマーが押出機に供給され、少なくとも発泡剤、臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、炭素源、及びサブクレームにおいて言及される1以上の他の助剤と混合された後、押出され、冷却され、更に粒子に縮小される、粒子状発泡性ポリマーの製造方法にも関する。
【0045】
特別な実施の形態において、本発明は、モノマー、臭素化SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、発泡剤、断熱性能向上剤、及びサブクレームにおいて言及される1以上の他の助剤が反応器内で重合される、粒子状発泡性ポリマーの製造方法にも関する。とくに、好適なポリマーとしてのEPSの密度は、850〜1050kg/m
3であることが望ましい。好適な発泡剤は、(イソ)ペンタンである。発泡剤としては、フッ素を含む炭化水素化合物を除外することが望ましい。したがって、フッ素を含む炭化水素化合物の量が最小化され、好ましくは、粒子状発泡性ポリマーの量を基準として2.0重量%未満、とくに1.0重量%未満、より具体的には0.5重量%未満である粒子状発泡性ポリマーを製造することが好ましい。粒子状発泡性ポリマー内の上述のフッ素含有炭化水素化合物を最小限にすることにより、最終的に得られる発泡体製品が基本的にはフッ素含有炭化水素化合物を含まないようにされる。
【0046】
本発明は、さらに、例えば建設業界において、さらには食品及び非食品業界での包装材としても、断熱目的で好適に使用される、上述したような粒子状発泡性ポリマーをベースとしたポリマー発泡材に関する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下、いくつかの実施例を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されないことに留意されなければならない。
【
図2】
図2は、様々なEPS材料の密度とλ値の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
様々な製品の粒径分布を測定した。結果を以下の表に示す。
【表1】
【0049】
D50値が1μm以下、より具体的には0.8μm以下であることがとくに望ましい。
【0050】
多数の市販品について多数の機械的特性を測定し、燃焼試験を行った。測定結果から、グラフェン又は膨張黒鉛を添加することによって、最終的なEPS系発泡成形品の熱伝導率に好ましい影響がもたらされることが明らかに推測できる。
【0051】
以下に含まれる表中の数字は、以下の意味を有する。
1=難燃剤としてHBCD
2=難燃剤なし
3=難燃剤としてレゾルシノール
4=難燃剤としてエメラルド3000(ケムチュラ社により市販)
5=難燃剤としてFR122P(ICI社により市販)
6=難燃剤としてXP−7720 FR122P(アルベマール社により市販)
【0052】
表の列は、順に、原材料の種類、難燃剤の重量%、ジクミルパーオキシドの重量%、密度(g/l)、λ(W/mK)、密度(g/l)、圧縮強度(kPa)、密度(g/l)、破断時の引張強さ(kPa)、及び、燃焼試験DIN 4102−1 B2を示す。表中、「nt」は未測定を示し、「Pass」は合格したことを示す。
【表2】
【0053】
5.5%のペンタンを含む、粒径が0.7〜1.0mmの、シンブラ・テクノロジー社の材料EPS 710Fを、0.1%のP1000ポリエチレン(ベーカー・ヒューズ社)と、グラフェンマスターバッチ及びグラフェン濃縮物と共に、処理能力が125kg/時の二軸押出機で溶融した。このグラフェンマスターバッチ及びグラフェン濃縮物により、4%のグラフェンがポリスチレン中に効果的に導入される。押出機の温度は150℃〜230℃が好ましく、この実施形態では、発泡剤として、更なるペンタンを0.8%追加した。この混合物を温度が60℃〜150℃の冷却押出機に通して、グレーのXPSプレートを製造した。
【0054】
得られた発泡体は、35kg/m
3の密度を有していた。発泡体の断熱値はマスターバッチでは31.1mW/mK、濃縮物では30.9mW/mKであり、両生成物とも、燃焼試験DIN 4102 B2に合格した。
【0055】
図2は、多数の測定値を示すグラフであり、横軸は密度を、縦軸はλ値(W/mK)を示す。このグラフから、ある重量%の膨張黒鉛(粒径0.1〜0.8μm)を添加したEPSよりも、4重量%のグラファイト(粒径は主に1μm超、とくに1〜50μm)を含み、同じ密度の市販のネオポールの方が高いλ値が得られることが明らかに推測できる。
【0056】
膨張黒鉛の粒径測定
グレーの発泡EPS10gをトルエン28mlに溶解し、そのスラリーを分析した。残渣は更にトルエンを追加して超音波で分散させ、ALV測定装置で分析した。マルバーン(Malvern)社のゼータサイザー(Zetasizer)を使用して粒径を測定した。必要な場合は、更にトルエンで希釈した。ゼータサイザーGMAは、以下の仕様を有する、いわゆる動的光散乱装置である。相関器:ALV5000/60X0、外部ゴニオメータ相関器:ALV−125、検知器:静的/動的エンハンサーALVレーザーファイバーオプティクス(Cobolt Samba 300 DPSS Laser)を備えたALV/SO SIPD単光子検知器、波長:532nm、300mW出力温度調節:静的熱浴:Haake F8−C35。特別の基準は使用しなかった。この装置は粒子のブラウン運動を測定するものであり、溶媒は水、粒子は概ね球形であるとの仮定のもとで、アインシュタイン−ストークスの式を用いて測定値を粒径に変換した。半径を測定した。
【表3】
【0057】
グラファイトの参照物質は、粒径が大きく、凝集していることが明らかであり、これは視覚的にも観察できた。EPSに含まれる膨張黒鉛は、はるかに微粒子であり、グラファイトの粒径より平均で3〜5倍小さい。いくつかの小さな粒子の凝集が存在していたが、凝集はグラファイトの場合ほど顕著ではなかった。その結果を
図1のグラフに示す。